説明

活魚運搬装置

【課題】
活魚等を活きたまま傷つけずに運搬でき、大きさの異なる活魚等を複数ないし数匹ずつであっても効率よく運搬でき、かつ、運搬用容器から傷つけることなく容易に運搬先の水槽等に移しかえることができる運搬装置、その装置を用いた運搬方法及びその装置に用いる運搬用具を提供すること。
【解決手段】
運搬用容器と、
容器の対向する側壁上部間に架け渡された一対の支持材と、
面材の一方側を一方の支持材に取着して垂れ下げ、そして折り返し、面材の他方側を他方の支持材に取着して垂れ下げてなる活魚収容面材とを備えてなる、活魚運搬装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、活魚等の運搬時に用いる活魚運搬装置、それを用いた活魚運搬方法及びそれに用いる活魚運搬用具に関し、より詳細には活魚等を一匹づつ仕分けて収容して、傷つけることなく運搬し、運搬先で簡易に他の水槽等へ移しかえることを可能とする活魚運搬装置、それを用いた活魚運搬方法及びそれに用いる活魚運搬用具に関する。
【背景技術】
【0002】
魚、海老等の魚介類の鮮度を保つために、魚介類を活きたままの状態で運搬することが望まれている。しかし、活魚、活海老等を氷水を入れた運搬用容器の中で車両等により運搬する場合、運搬時の振動等により魚、海老等が暴れて動き回ることが多い。そのため、魚同士の接触又は魚が壁にぶつかることで、鱗のはがれ、ひれ等の傷により魚表面が傷ついてしまう、又は同様に衝突により海老の触覚や脚が折れてしまうなどの事態が生じ、運搬した活魚、活海老等の価値が低下してしまう場合があるという問題があった。
また、活魚、活海老等を氷水を入れた運搬用容器の中で長時間運搬すると、活魚等が泳ぎ回ることによる疲労、若しくは水中の酸素不足により死んでしまうという問題も生じていた。
そこで、活魚、活海老等が泳ぎ回って傷がつく或いは死んでしまわないように一匹ずつ区分けして運搬する方法が提案されている。
【0003】
例えば、仕切り板を設けた箱状の運搬ケース(図7参照)に魚を仕分けて収容し、トラックの荷台に設置した運搬用の大型水槽内に積載する方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、水、酸素発生剤及びアンモニア吸収体を入れたビニール製の耐水袋に魚1匹をいれて、外容器に並べて運搬する方法も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−127204号公報
【特許文献2】実開平7−30044号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、区画された運搬ケースを用いて活魚を運搬する方法では、数匹程度の魚を輸送するにも運搬用大型水槽を設置したトラックで運搬する必要が有り、個人、鮨屋、料亭若しくは旅館等に数匹程度を輸送するのには手間と費用がかかりすぎる。それに、区画の容積以上に大きい魚は入れられず、また区画の容積より相当小さい魚を入れた場合、かえって魚が暴れてしまい魚が仕切り板にぶつかり傷つくことになるので、魚の大きさにちょうど合うように区画された運搬ケースが必要となる。そのため、種々の大きさの魚に対応する仕切り板又は運搬ケースを準備しておき、運搬する活魚ごとに運搬ケース及び仕切り板の種類を選択する必要があり、作業の手間とコストがかかる。さらに、運搬先の要望に応じて大きさの異なる活魚を数匹づつ運搬する場合、活魚の大きさごと、それぞれ区画された運搬ケースにいれて運搬することが必要とされ、その作業は大変面倒で非効率であり、費用も著しく掛かる。また、魚をその大きさに丁度合わせた容積の区画に入れているため、魚を運搬ケースから出し入れする際に網で魚を傷つけてしまいやすいという問題があった。
【0006】
また、魚1匹を氷水とともに入れたビニール製耐水袋により運搬する方法は、運搬中又
は移しかえる作業中に魚の歯、鰭、鱗等若しくは海老の触覚、甲殻等によって袋に切れ目が入り、水が流出してしまい、活魚、活海老等が死んでしまうという事故が起きるという問題があった。さらに、運搬する際に一匹ずつ袋詰めにして酸素発生剤等を準備する必要があり、加えて運搬先で活魚等を店舗の容器に移すのに、一袋ずつ開けて魚を取り出す必要があるので、費用と手間がかかるという問題があった。
【0007】
本発明は、係る事情を鑑みてなされたものであって、その目的とするところは、活魚等を活きたまま傷つけずに運搬でき、大きさの異なる活魚等を複数ないし数匹ずつであっても効率よく運搬でき、かつ、運搬用容器から傷つけることなく容易に運搬先の水槽等に移しかえることができる運搬装置、その装置を用いた運搬方法及びその装置に用いる運搬用具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、本発明者が上記の課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、考案されたものであって、その要旨は以下の通りである。
即ち、本発明は、
運搬用容器と、
容器の対向する側壁上部間に架け渡された一対の支持材と、
面材の一方側を一方の支持材に取着して垂れ下げ、そして折り返し、面材の他方側を他方の支持材に取着して垂れ下げてなる活魚収容面材とを備えてなる、活魚運搬装置に関する。
前記活魚運搬装置において、さらに、一対の支持材を容器の側壁上部上に固定する固定部材を備えてなることが好ましい。
もしくは、前記活魚運搬装置において、容器の対向する側壁上部に、支持材の端部を嵌め入れて一対の支持材を支える嵌め凹部を形成してなることが好ましい。
また、前記活魚運搬装置において、前記活魚収容面材がポリオレフィン繊維とレーヨン繊維を混成した不織布であることが好ましい。
また、前記活魚運搬装置において、前記活魚収容面材は、その折り返し部の左右の側方のうち少なくとも一方が収容された活魚又は活海老の脱出を防止するように閉じられていることが好ましい。
また、運搬用容器の内側上部に、棚、箱又は袋体からなる氷を収容するための有孔部材を取り付けてなることが好ましい。
さらに、本発明は前記活魚運搬装置を用いた活魚又は活海老の運搬方法であって、
運搬用容器に海水、真水、氷入りの海水又は氷入りの真水をいれること、必要により氷を有孔部材に収容すること、
折り返された活魚収容面材を該容器中に垂れ下げ、一対の支持材を容器の対向する側壁上部上に架け渡すこと、
前記活魚収容面材の折り返し部に活魚又は活海老を、該面材の垂れ下がり部とこれに対向する垂れ下がり部との間に挟まれるように収容すること、
該容器中の水面の高さを、収容された活魚又は活海老が水中に没する高さに調節すること、並びに
必要により、該支持材を固定部材で固定すること
を含む方法に関する。
また、海水又は真水に入れる氷又は有孔部材に収容する氷として、酸素含有氷を用いることが酸素発生剤等の薬品を使用することなく、安価で安全に運搬できるので好ましい。
本発明はまた、前記活魚収容面材と前記一対の支持材とからなる活魚運搬用具に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の活魚運搬装置並びにこの装置を用いた活魚又は活海老の運搬方法は、活魚又は
活海老を活かしたまま、傷つけることなく運搬することができる。
また、本発明の活魚運搬装置は、活魚又は活海老を収容する部分の大きさを調節することができ、大きさの異なる活魚等を複数ないし数匹ずつであっても同じ容器で効率よく運搬できる。そして、活魚運搬装置に設置された活魚運搬用具によって、活魚運搬装置から魚を傷つけることなく容易に運搬先の水槽等に移しかえることができる。
また、本発明の活魚運搬装置は、魚の大きさにかかわらず、運搬用容器の大きさに合わせた活魚運搬用具を準備し、既存の運搬用容器に設置すればよく、新たに容器や酸素発生機器等の準備や活魚ごとに活魚運搬用具を揃える必要がないので導入コストと手間を抑えられる。
また、本発明の活魚運搬方法は、運搬用容器に氷入りの或いは低温の海水又は真水を入れて活魚等を運搬することで、活魚等が低温状態に保たれて動きが抑えられるので、活魚等が容器の壁面等に接触し傷つくことを防止でき、かつ水中の酸素の消費も抑えることができる。さらに、運搬用容器内に氷を収容した有孔部材を取り付けて活魚等を運搬する場合は、容器内の海水又は真水に氷を直接入れた場合とは異なり、長期間にわたって氷融け水が容器内に少しずつ滴り落ちることにより、容器内の海水又は真水をより長い時間にわたって一定の低温に保つことができる。
また、海水若しくは真水に入れる氷又は有孔部材に収容する氷を酸素含有氷にすることで、運搬中に徐々に氷が融けて酸素ガスが溶解した水となり、容器内の水中の酸素濃度を運搬の間、高水準に保つことができる。従って、運搬中に活魚が酸素不足になって弱ってしまう又は死んでしまうことなく、活魚を運搬することができる。
また、酸素含有氷を用いる本発明の活魚運搬方法によればエアバブリング装置等の酸素供給機器を備え付けなくても活魚等を運搬できる。これにより、活魚運搬装置を軽量化でき、しかも電源若しくはバッテリー等を備えず運搬できるだけでなく、電気機器の使用が好ましくない空輸等も行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例1の活魚運搬用具の斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施例2の活魚を収容する前の活魚運搬装置の斜視図である。
【図3】図3は、本発明の実施例2の活魚を収容した状態の活魚運搬装置の断面図(図2におけるa−a´断面図)である。
【図4】図4は、本発明の実施例3の活魚を収容する前の活魚運搬装置の斜視図である。
【図5】図5は、本発明の実施例3の活魚を収容した状態の活魚運搬装置の断面図(図4におけるb−b´断面図)である。
【図6】図6は、本発明の実施例の活魚運搬装置から活魚を取り出した様子を示す図である。
【図7】図7は、従来の仕切り板で区分けされた運搬ケースの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
単に、運搬用容器に活魚等を入れて、トラックの荷台又は飛行機の貨物室等に積載して運搬すると、活魚は運搬時の振動に驚いて激しく泳ぎ回るため、活魚に傷がつく或いは死んでしまうことがある。
一般に海、河等に生息する魚等は常に危険にさらされているので、身を守るために海、河の中を頻繁に泳ぎ回っている。しかし、マグロ等の一部の回遊魚を除いて、多くの魚は海や河の中に海草、海藻、水草、流木、岩壁等の身を隠せる隙間の空間を見つけると、その空間内に入り込み、そしてその中では安心してか、鰭等を休め、じっとしていることが知られている。
本発明は、この魚の生態、即ち身が触れるほどの隙間内におかれたときは殆ど泳がず、じっとしているという生態に注目し、そのような隙間を作り出す運搬用具を用いた活魚運
搬装置及び方法により、トラック等による運搬途中でも活魚がそのような隙間の中で殆ど泳がず、じっとしているようにすることで、運搬途中に活魚等が暴れて傷がつくこと、或いは死んでしまうこと等の事態の発生を防ぐことができる活魚運搬装置及びそれを用いた運搬方法を提供するものである。
【0012】
まず、本発明の活魚運搬装置について説明する。
本発明は、運搬用容器の対向する側壁上部間に架け渡された一対の支持材と、面材の一方側を一方の支持材に取着して垂れ下げ、そして折り返し、面材の他方側を他方の支持材に取着して垂れ下げてなる活魚収容面材とを備えてなる、活魚運搬装置に関する。
【0013】
前記運搬用容器は従来の魚の運搬に使用されているものを利用でき、例えば発泡スチロール製の容器、樹脂製のコンテナ等、水とともに活魚、活海老等を収容して運搬できるものであればよい。運搬時に水温が上昇しにくく、軽量で耐水性がある安価な発泡スチロール製の容器が好ましい。
容器の大きさとしては、支持材を架け渡す対向する側壁の間隔が魚の全長以上であればよく、特に魚の全長と略等しい場合は魚の動きを制限できるので好ましい。
【0014】
前記支持材は運搬用容器の対向する側壁上部間に架け渡すことができれば良く棒状、軸状、管状、アーチ形状のいずれでもよい。
支持材の材質としては合成樹脂、ガラス繊維や炭素繊維で補強した繊維強化樹脂、ステンレス、防錆加工したアルミ等の金属が挙げられ、水又は海水によって錆の発生や変形等しない材料であればより好ましい。
活魚収容面材はそれに吸収された水分量及び収容した活魚等の重さで破損しない水準以上の強度が少なくとも必要とされる。活魚収容面材と支持材は取り外し、取り付けが容易であると、活魚等を簡単に運搬することができるので好ましい。ポリプロピレン製の管形状の支持材が、耐水性が良く、軽くて充分な強度を有するので取り扱い易い。
また、支持材には、側壁上部の壁面に当接するようなフランジ部を設けてもよい。これにより運搬時に支持材がずれ動いて側壁の上面から外れて、運搬用容器の中に落ちることを防ぐことができる。
【0015】
上記一対の支持材を運搬用容器の対向する側壁上部間に架け渡す際、架け渡す一対の支持材の数及び相互の間隔は、運搬する容器の大きさ、活魚等の種類や数によって適宜調節される。
【0016】
上記の活魚収容面材としては、布状、網状の面材が用いられ、例えば、不織布又は織布等の布状の面材又は不織布、合成繊維若しくは天然繊維から形成される網状の面材、樹脂フィルム等の面材が挙げられる。
布状の面材としては従来知られている、アラミド繊維、ガラス繊維、セルロース繊維、ナイロン繊維、ビニロン繊維、ポリエステル繊維、ポリオレフィン繊維、レーヨン繊維若しくはこれらを組合わせた不織布、木綿、絹、麻等を撚り合せた天然繊維又はポリエチレン、ポリエチレン、ナイロン等の合成繊維を織合わせた織布等が挙げられる。これら不織布又は織布は通水用の孔等を設けてもよい。孔の形状、大きさに特に制限はないが、細かい孔の方が、魚の鱗や鰭又は海老の触覚や脚が引っかからず傷がつきにくいので好ましい。また、この多孔不織布は、吸水して面材が湿りやすく、水中への出し入れが容易であり、更に面材が吸水したとしても面材が重くなりすぎず、作業が容易である。
網状の面材としては、天然繊維及び合成繊維を編み込んだ網等が挙げられる。網としては、脚が太く、網目及び結節が小さい網が好ましい。脚が細く網目が大きい場合若しくは結節が大きい場合は、鱗や鰭が引っかかり傷つくおそれがある。
不織布、織布、網の製造方法としては特に制限がなく、公知の方法を用いることができる。
【0017】
とりわけ、活魚収容面材としては製造の容易さ、及び使用時に目のほつれ等が生じにくいので、不織布又は多孔不織布が好ましい。特に、ポリエチレン繊維若しくはポリプロピレン繊維等のポリオレフィン繊維とレーヨン繊維とを混成して製造した不織布又は多孔不織布は、充分な引張・引裂強度、耐切裂き性及び良好な吸水性を有するので、好適に用いることができる。
【0018】
面材を軟質の不織布又は多孔不織布にすることで、硬質の樹脂製の仕切り板と異なり、活魚又は活海老等が接触しても魚の鰭や鱗又は海老の触覚や脚が傷つきにくい。また、ポリビニール製又はポリオレフィン製のフィルムのように、魚の歯や鰭、海老の触覚や甲殻等で切裂かれることがないので、運搬途中に面材が破れて魚がその破れで傷つくこともない。軟質の布又は網は活魚を腹部及び側部に接するように収容できるので、収容した活魚は上述したとおり泳がずじっとしており、動き回って鱗や鰭が損傷するのが抑えられる。
【0019】
本発明の活魚収容面材の形状及び大きさ等は、運搬用容器の大きさによって適宜調製される。
活魚収容面材の形状としては特に制限されず、長方形、長円形等の形状を用いることができる。
【0020】
活魚収容面材の大きさは、魚を収容できればよい。例えば、面材の幅は活魚の全長より長ければよく、容器の側壁間の幅と略同じ長さにすることが好ましい。また、面材の垂れ下がる部分の長さは、面材が容器の底面に達しない程度のものが好ましい。これにより、収納した活魚の腹部が容器の底に接しないので、より魚に傷がつかなくなる。
【0021】
上記面材は運搬途中に外れないように支持材に取着される。例えば、面材の両端を折り返して縫い合わせるか又は融着して筒状部を設けてその筒状部に支持材を挿通させる方法、面材の両端に不織布又は織布の輪を縫い付けておき該輪に支持材を挿通させる方法、面材の両縁部に樹脂製若しくは金属製の環を取り付けて、その環に支持材を挿通させる方法、面材の両縁部を支持材に巻きつけて挟持部材等で取り付ける方法、面材の両端に複数の紐を取り付けておき支持材に結び着ける方法等が挙げられる。
面材の両端に筒状部又は輪状部材を設けて支持材を挿通する方法が、着脱容易で、かつ運搬途中に外れるおそれが少ないので好ましい。
【0022】
本発明においては、活魚収容面材の一方側を支持材の一方に取着して垂れ下げ、そして折り返し、面材の他方側を他方の支持材に取着して垂れ下げるという構成を採ることで、折り返し部に、即ち活魚収容面材の垂れ下がり部とこれに対向する垂れ下がり部との間に挟まれるように活魚又は活海老等を収容することができる。
【0023】
一対の支持材相互の間隔を適宜調節することにより、活魚の腹部及び側部だけでなく背部をも活魚収容面材で覆うことができる。面材が吸水性であるとき、収容された活魚は体全体にわたって常に濡れた状態に保たれ、疲労衰弱を防止することができる。
【0024】
また、活魚収容面材は、その折り返し部の左右の側方のうち少なくとも一方を閉じてもよい。閉じ方としては、側縁に新たに面材を縫合若しくは融着するか、又はその側縁同士を縫合若しくは溶着する方法が挙げられる。
活魚は前方に動こうとするので、この閉じた側方が前方になるように活魚を収容することで、活魚の収容の際、活魚が動いたとしても、硬質の容器壁への衝突若しくは容器壁とシート本体の隙間から逃げることを防止できる。
また、活海老は車の揺れ等により驚いて後ろに下がるので、閉じた側方が後方になるように活海老を収容することで、活海老が動いたとしても硬質の容器壁への衝突若しくは容
器壁とシート本体の隙間から落ちることを防止できる。
【0025】
さらに本発明の活魚運搬装置は、必要により、固定部材によって、一対の支持材を運搬用容器の側壁上部上に固定することもでき、もしくは、容器の対向する側壁上部に形成した嵌め凹部に一対の支持材を嵌め入れて支持することもできる。
一対の支持材を運搬用容器の側壁の上部上に固定することで、或いは一対の支持材を運搬用容器の側壁上部の嵌め凹部に嵌め入れることで、運搬時に一対の支持材がずれ移動し、魚の側部から活魚収容面材が離れて活魚が泳ぎ出してしまう事態を防ぐことができる。
また、運搬中のトラックが急発進又は急制動したとしても、支持材が一方の端によらないので、収容した活魚が圧迫されて傷がつくこと或いは死ぬのを防止できる。
【0026】
固定部材を用いた一対の支持材の固定方法としては、例えば、容器の側壁上部面にアイプレートや丸カン等を取り付け固定し、その環に支持材を挿入して支持材を固定する方法、容器の側壁上部に一対のクリップ、クランプ等を固定し、それらで支持材を挟持する方法、若しくは容器の側壁上部面に釘、鋲、螺子等を間隔を開けて2箇所に取り付け、それらの間に支持材を固定する方法、又は一対の支持材をゴム、紐、Sカン等で束ねることで支持材間の間隔が広がらないようにする方法などがある。
【0027】
嵌め凹部を用いた固定方法には、例えば、容器の側壁上部に溝又は切欠き等を形成し、そこに支持材を嵌め入れて支持材を固定する方法、或いは容器側壁に窪み等を設けて、そこに支持材を嵌め入れて支持材を固定する方法がある。発泡スチロール製の活魚運搬用容器であれば、カッター等で容器内壁を切り取り、簡易に溝、切欠き及び窪み等を形成できる。また、それは、支持材を発泡スチロール面に押し付け、変形させて形成することもできる。
【0028】
さらに、本発明の活魚運搬装置は、必要により、運搬用容器の内側上部に、棚、箱又は袋体からなる氷を収容するための有孔部材を取り付けることができる。
有孔部材としては、収容した氷の氷融け水が好ましくは有孔部材内に溜まることなく、運搬用容器内の海水等に滴り落ちるように孔を設けてあるものでよい。例えば、棚や箱の底部に氷が落ちない程度の小さい孔を開けたもの、又は多孔不織布等からなる袋体などである。
取り付け方としては、例えば、棚や箱に脚をつけて運搬用容器内に設置する方法、棚や箱に係止具を設けて容器の側壁上部間に架け渡す方法、袋体に紐を付けて、これを側壁上部等に固定し袋体を吊り下げる方法等がある。有孔部材は運搬中に動いて活魚等に接触し、活魚等を傷つけないように固定することが好ましい。
【0029】
有孔部材は、運搬用容器内に入れた海水等の水面より高い位置に氷を収容できるように、運搬用容器の内側上部に取り付けることが好ましい。このように取り付けられた有孔部材に収容した氷は、時間とともに融けて容器内の海水又は真水に流れ込む。この滴り落ちた低温の氷融け水により、運搬用容器内の海水又は真水の水温を長期間にわたって当初の水温のまま一定の温度に保つことができる。すなわち、この有孔部材に氷を収容した場合は海水又は真水に氷を直接入れた場合とは異なり、少しずつ氷融け水が容器内の水に流れ込むので、相当に長い時間の間、運搬用容器内の海水又は真水の温度を一定に保つことができる。これにより、さらに長時間、活魚等を低温状態に保ったまま運搬することが可能となる。
【0030】
また、本発明は上述した活魚運搬装置を用いた活魚運搬方法に関する。詳しくは、運搬用容器に海水、真水、氷入りの海水又は氷入り真水を入れること、必要により氷を有孔部材に収容すること、
折り返された活魚収容面材を該容器中に垂れ下げ、一対の支持材を容器の対向する側壁
上部上に架け渡すこと、
前記活魚収容面材の折り返し部に活魚又は活海老を、該面材の垂れ下がり部とこれに対向する垂れ下がり部との間に挟まれるように収容すること、
該容器中の水面の高さを、収容された活魚又は活海老がほぼ水中に没する高さに調節すること、並びに
必要により、該支持材を固定部材で固定すること
を含む活魚運搬方法に関する。
【0031】
この運搬方法において、海水又は真水は活魚等の種類にあわせて温度を調節して使用される。例えば、氷水でも適応できる活魚等であれば氷を入れた海水又は真水を使用し、或いは氷水では冷たすぎて弱ってしまう活魚等であれば低温にした海水又は真水を使用し、必要に応じて氷を収容した有孔部材と併用することができる。
容器内の海水又は真水を氷或いは恒温冷却器等によって活魚が弱らない程度に低温に維持することで、魚の体温を低下させて活動を鈍らし、泳ぎ回れないようにすると、活魚等に傷がつきにくいばかりか水中の酸素の消費も抑えられて好ましい。
特に、氷を入れた有孔部材を併用することで、恒温冷却器等を用いずとも長時間の間、水温を当初の水温のまま一定に保つことができるので、例えば電子機器等の使用が好ましくない航空便での活魚等を運搬する方法として好適である。
【0032】
また、氷として、酸素ガスを封入した氷を使用することで、時間の経過とともに融けた氷から酸素が溶解した水が供給され、容器内の水中の酸素濃度を高い水準に保つことができる。酸素ガスを封入した氷は、水に酸素ガスをバブリングしながら凍らせる等の通常用いられる方法で製造できる。これにより、酸素発生剤を使わずとも、酸素不足によって魚が弱ってしまう或いは死んでしまうことを防止できる。活魚等の運搬量及び運搬時間に応じて酸素ガスを封入した氷の量は調節される。
【0033】
本発明では、折り返された活魚収容面材を運搬用容器中に垂れ下げ、一対の支持材を容器の対向する側壁上部上に架け渡すことで、容器中に、活魚収容面材の折り返し部の空間に活魚を一の垂れ下がり部と対向する垂れ下がり部の間に挟まれた状態で収容することができ、この際、魚が1匹ずつ活魚収容面材内に収容されるので、運搬する活魚、活海老同士の接触や、運搬用容器壁との接触が生じず、活魚の鱗や鰭又は活海老の触覚や脚が傷つくことを防ぐことができる。さらに、活魚の腹部及び側部が活魚収容面材に触れた状態で活魚は収容されるので、活魚が泳がずじっとしている点に特徴がある。
【0034】
また、本発明は上述した活魚収容面材と一対の支持材とからなる、活魚運搬用具に関する。
活魚運搬用具は、魚の大きさにかかわらず、運搬用容器の大きさに合わせて予め準備すればよい。そのため、魚の大きさごとに区分けされた運搬ケースを製造し準備する方法と比べて、手間と時間が掛からず、広い用具収納場所を必要としない。
【0035】
また、活魚等の運搬先で、運搬用容器から運搬先の水槽等に魚を移す際には、魚ごと活魚収容面材を持ち上げて移動させるだけで足りる。手若しくは網を用いて移す場合とは異なり、活魚の鱗や鰭或いは活海老の触覚や脚等に傷をつけずに簡易に移動させることができる。このとき、活魚等は湿った面材に包まれており、且つ低温状態であるため、水から取り出しても急に暴れ出したりはしない。
【実施例】
【0036】
以下に本発明の実施例を図面を用いて説明するが、本願請求項に係る発明は実施例の範囲に限定されるのものではない。
【0037】
実施例1:活魚運搬用具
本実施例は、図1に示される活魚運搬用具1に関する。
活魚収容面材3として、ポリエチレン樹脂及びレーヨン樹脂を混成してスパンボンド溶融法にて作製した35cm×50cmの長方形の不織布を使用し、その短手の両端部を夫々2.5cmの長さだけ折り返し、その折り返された端部を不織布の生地にミシンで縫い合わせて筒状の支持部4を作製した。この支持部4、4に、直径1cm、長さ41cmのポリプロピレン製の管状の支持材2、2を挿通して、活魚運搬用具1を作製した(図1)。
【0038】
実施例2:活魚運搬装置
本実施例は、図2及び図3に示す活魚運搬装置5aに関する。
活魚の運搬用容器6として、内径の長さ50cm、幅38cm、高さ25cmで厚みが5cmの発泡スチロール製容器を準備した。この運搬用容器6の対向する側壁上面の内縁をカッターで切り取り、長さ1.5cm、幅2cm、深さ1cmの嵌め凹部7を2組み設けた。この嵌め凹部7に、実施例1で作製した活魚運搬用具1の一対の支持材2、2を嵌め込むことで、一対の支持材2、2から垂れ下がり、中央で折り返された活魚収容面材3を運搬用容器6内に備えた活魚運搬装置5aを作製した(図2)。
【0039】
実施例3:活魚運搬装置
本実施例は、図4及び図5に示す活魚運搬装置5bに関する。
まず、係止具13を両側に設けた箱型容器からなる有孔部材11を、ポリプロピレン樹脂の成形加工により製造した(図4及び図5参照)。箱型容器としては、底部に一辺が1cmの正方形の多数の孔12を有し、上部が開口した長さ15cm、幅10cm、深さ6cmのものを使用した。
そして、実施例2の活魚運搬装置5aの対向する側壁上部間に上記の有孔部材11を取り付けて、活魚運搬装置5bを作製した(図4)。
【0040】
実施例4:活魚運搬方法
本実施例は、実施例2の活魚運搬装置5aを使用した活魚の運搬方法に関する。
活魚の運搬用容器6に半分程度の深さまで海水を注ぎいれ、酸素ガスを封入した氷8を1kg加えた。活魚運搬用具1の一方の支持材2を嵌め凹部7に嵌め込み、折り返された活魚収容面材3を一対の支持材2、2から運搬用容器6内に垂れ下げ、この活魚収容面材3の折り返し部に活きた活魚のキチジ9を収容し、他方の支持材2を嵌め凹部7に嵌め込んで固定した。同様に、もう一匹のキチジ9を収容した。そして、キチジ9の背部が僅かに水中から出る程度まで海水を注ぎ足した(図3)。これにより、キチジ9は腹部、側部及び背部が活魚収容面材3と接し、背部が僅かに水中から出ている状態に収容され、殆ど動かなくなった。そして、活魚運搬装置5aに蓋(図示せず)をして、容器と蓋の接合部をOPPテープで巻いて固定し、トラックのコンテナに積んで、約24時間の間運搬した。
運搬後、活魚運搬装置5aの蓋を開けたところ、キチジ9に鱗のはがれや鰭の傷などは生じてなかった。次いで、嵌め凹部7に嵌め込んだ活魚運搬用具1の一対の支持材2、2を持って運搬用容器6から取り出し(図6)、そのまま運搬先の水槽に移したところ、キチジ9に鱗のはがれや鰭の傷などつけることなく移すことができ、キチジ9は元気に泳ぎ回った。
また、運搬後の運搬用容器6内の海水中に酸素ガスを封入した氷8は残っていた。さらに24時間の間、運搬用容器6に蓋をして置いておいたところ、活魚運搬用容器6内の海水中に僅かに酸素ガスを封入した氷8が融けきらずに残っていた。
【0041】
実施例5:活魚運搬方法
本実施例は、実施例3の活魚運搬装置5bを使用した活魚の運搬方法に関する。
活魚の運搬用容器6に半分程度の深さまで5℃に冷却した海水を注ぎいれた。活魚運搬用具1の一方の支持材2を嵌め凹部7に嵌め込み、折り返された活魚収容面材3を支持材2、2から容器内に垂れ下げ、この活魚収容面材3の折り返し部に活魚の鯵10を収容し、他方の支持材2を嵌め凹部7に嵌め込んで固定した。同様に、もう一匹の鯵10を収容した。そして、鯵10の背部が僅かに水中から出る程度まで海水を注ぎ足し、取り付けられた有孔部材11に酸素ガスを封入した氷8を1kg収容した(図5)。これにより、鯵10は腹部、側部及び背部が活魚収容面材3と接し、背部が僅かに水中から出ている状態に収容され、殆ど動かなくなった。そして、活魚運搬装置5bに蓋(図示せず)をして、容器と蓋の接合部をOPPテープで巻いて固定し、トラックのコンテナに積んで、約24時間の間運搬した。
運搬後、活魚運搬装置5bの蓋を開けたところ、鯵10に鱗のはがれや鰭の傷などは生じてなかった。次いで、嵌め凹部7に嵌め込んだ活魚運搬用具1の一対の支持材2、2を持って運搬用容器6から取り出し(図6)、そのまま運搬先の水槽に移したところ、鯵10に鱗のはがれや鰭の傷などつけることなく移すことができ、鯵10は元気に泳ぎ回った。
また、運搬後の運搬用容器6内の有孔部材11に酸素ガスを封入した氷8は残っており、海水の温度は約5℃に保たれていた。さらに24時間の間、この運搬用容器6に蓋をして置いておいたところ、有孔部材11に収容した酸素ガスを封入した氷8は十分に残っており、活魚収容容器6内の海水の温度は約5℃に保たれていた。
【符号の説明】
【0042】
1 活魚運搬用具、 2 支持材、 3 活魚収容面材、 4 支持部、
5a、5b 活魚運搬装置、 6 運搬用容器、 7 嵌め凹部、
8 酸素ガスを封入した氷、 9、10 活魚、 11 有孔部材、
12 孔、 13 係止具、 14 運搬ケース、 15 仕切り板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
運搬用容器と、
容器の対向する側壁上部間に架け渡された一対の支持材と、
面材の一方側を一方の支持材に取着して垂れ下げ、そして折り返し、面材の他方側を他方の支持材に取着して垂れ下げてなる活魚収容面材とを備えてなる、活魚運搬装置。
【請求項2】
さらに、一対の支持材を容器の側壁上部上に固定する固定部材を備えてなる、請求項1に記載の活魚運搬装置。
【請求項3】
容器の対向する側壁上部に、支持材の端部を嵌め入れて一対の支持材を支える嵌め凹部を形成してなる、請求項1記載の活魚運搬装置。
【請求項4】
前記活魚収容面材がポリオレフィン繊維とレーヨン繊維を混成した不織布であることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の活魚運搬装置。
【請求項5】
さらに、前記活魚収容面材は、その折り返し部の左右の側方のうち少なくとも一方が収容された活魚又は活海老の脱出を防止するように閉じられていることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載の活魚運搬装置。
【請求項6】
さらに、運搬用容器の内側上部に、棚、箱又は袋体からなる氷を収容するための有孔部材を取り付けてなる、請求項1に記載の活魚運搬装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れか1項に記載の活魚運搬装置を用いた活魚又は活海老の運搬方法であって、
運搬用容器に海水、真水、氷入りの海水又は氷入り真水をいれること、必要により氷を有孔部材に収容すること、
折り返された活魚収容面材を該容器中に垂れ下げ、一対の支持材を容器の対向する側壁上部上に架け渡すこと、
前記活魚収容面材の折り返し部に活魚又は活海老を、該面材の垂れ下がり部とこれに対向する垂れ下がり部との間に挟まれるように収容すること、
該容器中の水面の高さを、収容された活魚又は活海老が水中に没する高さに調節すること、並びに
必要により、該支持材を固定部材で固定すること
を含む方法。
【請求項8】
前記氷が酸素ガスを封入した氷であることを特徴とする、請求項7に記載の運搬方法。
【請求項9】
請求項1、請求項4又は請求項5の何れか1項に記載の、活魚収容面材と一対の支持材とからなる、活魚運搬用具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−254062(P2012−254062A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130434(P2011−130434)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(598110219)株式会社アクシス (24)
【Fターム(参考)】