説明

流し台用柄付き天板の製造方法

【課題】 折曲成形加工による柄崩れ部分を無くすことができて研磨すべき面積を可及的に小さくできて、製造コストを低く抑えることのできる流し台用柄付き天板の製造方法を提供する。
【解決手段】 柄が付けられていないステンレス平板からなる所定寸法の長方形基板1Aを用意し、この基板1Aにおける、後で行われる折曲成形加工により大きく延びてしまう部分(前後左右の端部)を除いたワークトップ面部10となる部位に、エッチング装飾処理を施して柄5としてのエッチングパターンを形成し、その後、シンク15やコンロ・レンジ等を取付配備するための開口12、14、その他流し台用天板に仕上げるために必要とされる穴、切欠16等を形成し、しかる後、基板1Cの左右方向両端部23、24及び前後方向両端部21、22に所要の折曲、溶接等の成形加工を施すようにされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流し台用天板の製造方法に係り、特に、ステンレス製の柄付き天板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ステンレス製の流し台用柄付き天板を製造するにあたっては、まず、図2(A)に示される如くに、表面全体に適宜の柄6(網掛け部分)が付けられたステンレス平板からなる所定寸法の長方形基板2Aを用意し、次に、図2(B)に示される如くに、基板2Aに、シンクを取付配備するための開口12やコンロ・レンジ類を取付配備するための開口14、その他流し台用天板に仕上げるために必要とされる切欠16(四隅)等を打ち抜きプレス加工等により形成し(基板2B)する。
【0003】
続いて、基板2Bの左右(長手)方向両端部23、24及び前後方向両端部21、22に折曲成形加工を施して、図2(C)及び図3(A)、(B)、(C)に示される如くに、左右方向両端部23、24及び前端部21には、ワークトップ面部10(前後左右の端部より内方の平坦面部分)から若干上方に凸となるとともに下方に向けて折り曲がる断面概略7字状ないし鍵状の横垂れ部33、34及び前垂れ部31を、また、後端部22には、上方に向けて折り曲がる断面概略7字状ないし鍵状のバックガード部32を形成し、さらに、四隅を溶接接合(溶接部分35)する等の所要の成形加工を施すとともに、前記開口12にシンク15を取付配備する。これにより、基板2Bから一応の形が整えられた流し台用天板2Cが得られる。
【0004】
ここで、図2(C)に示される天板2Cでは、ワークトップ面部10だけでなく、前記折曲成形加工により形成された前垂れ部31、バックガード部32、及び横垂れ部33、34にも柄が付けられているが、かかる折曲成形加工が施されている部分(特に、立ち下がり辺部が湾曲せしめられている前垂れ部31)は、その折曲成形加工によりステンレス素材が大きく延び、これに伴って柄が崩れてしまい、意匠性が悪くなり、美観が損なわれる。
【0005】
そこで、従来においては、前記折曲成形加工によって柄が崩れている部分(特に、前垂れ部31)を研磨して柄を落とすとともに、四隅の溶接部分35も研磨するようにしている(図2(D)参照)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記した如くの、従来のステンレス製流し台用柄付き天板の製造方法では、素材となる基板の表面全体に柄が付けられているので、折曲成形加工によって柄崩れが生じる部分が多く、そのため、研磨すべき面積が大きくなり、多大な手間と時間がかかり、製造コストが高くなってしまうとともに、研磨度合い等が均一にならず、品質が低下する等の問題があった。
【0007】
かかる問題を解消するための一つの方策として、例えば、下記特許文献1に所載のように、素材基板として、前後方向両端部を除く中央部分(左右方向両端部を含むワークトップ面部となる部位)に柄としてのエンボスが設けられたエンボス平板を用い、柄の付いていない(無柄の)前後方向両端部に折曲成形加工を施して前記前垂れ部31及びバックガード部32を形成した後、左右方向両端に前記横垂れ部33、34に相当するキャップ(端部当金)を被せる方法が考えられる。この方法の場合、前垂れ部31及びバックガード部32は無柄であるので、後で研磨する必要はないが、別途にキャップを製造してそれを左右方向両端に取り付ける必要が生じるので、コスト面で不利であるとともに、左右方向両端部が別体のキャップであることから意匠的、機能的(シール性等)にも良いとは言えない。
【0008】
また、前記エンボス平板は、通常、長尺帯状のステンレス鋼板をエンボス成形ロールに通して連続的にエンボスを成形するようにされるので、小ロット生産に向かず(コストが高くなる)、また、基板の左右両端部にも必然的にエンボス(柄)が付けられることになり、この左右方向両端部に折曲成形加工を施すと、前記のように柄崩れが生じるため、研磨することが必要となる。
【0009】
本発明は、前記した如くの従来の問題を解消すべくなされたもので、その目的とするところは、折曲成形加工による柄崩れ部分を無くすことができて研磨すべき面積を可及的に小さくでき、もって、製造コストを低く抑えながら品質の向上を図ることができ、さらに、意匠的にも機能的にも優れたステンレス製流し台用柄付き天板を得ることのできる製造方法を提供することにある。
【特許文献1】実開平5−71266号公報
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成すべく、本発明に係る流し台用柄付き天板の製造方法は、柄が付けられていないステンレス平板からなる所定寸法の長方形基板を用意し、この基板における、後で行われる折曲成形加工により大きく延びてしまう部分を除いたワークトップ面部となる部位に、エッチング装飾処理を施し、その後、好ましい態様では、シンクやコンロ・レンジ等を取付配備するための開口、その他流し台用天板に仕上げるために必要とされる穴、切欠、開口等を形成し、しかる後、前記基板の左右方向両端部及び前後方向両端部に所要の折曲、溶接等の成形加工を施すようにされる。
【0011】
かかる製造方法により、ステンレス平板からなる素材の状態から、左右方向両端部及び前後方向両端部に折曲、溶接等の成形加工が施され、かつ、前記左右方向両端部及び前後方向両端部を除くワークトップ面部となる部位にエッチングパターンが形成されている流し台用柄付き天板を得ることができる。
【0012】
なお、本発明において、後で行われる折曲成形加工により大きく延びてしまう部分を除いたワークトップ面部となる部位、あるいは左右方向両端部及び前後方向両端部を除くワークトップ面部となる部位の全面あるいはほぼ全面に前記エッチングパターンを形成するようにしてもよく、その任意の部分にのみエッチングパターンを形成するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0013】
本発明に係る製造方法では、柄付けとしてエッチング装飾処理を施すようにされるので、柄付けとしてエンボス加工等を施すようにした場合とは異なり、前後方向両端部だけでなく、左右方向両端部も無柄とすることができる。そして、基板における、少なくとも後で行われる折曲成形加工により大きく延びてしまう部分(具体的には、基板の前後左右の端部の全部もしくは一部)には、エッチング装飾処理による柄が付けられていないので、基板の左右方向両端部及び前後方向両端部に折曲成形加工を施しても柄崩れは生じない。これにより、従来の製造方法に比して研磨すべき面積を小さくでき、その結果、製造コストを低く抑えることができるとともに、意匠的にも機能的にも優れた高品質の流し台用柄付き天板を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら説明する。
本発明に係る流し台用柄付き天板の製造方法の一実施形態では、まず、図1(A)に示される如くに、柄が付けられていないステンレス平板からなる所定寸法の長方形基板1Aを用意し、次に、図1(B)に示される如くに、前記基板1Aにおける左右方向両端部及び前後方向両端部を除いたワークトップ面部10となる部位に、エッチング装飾処理を施して柄5となるエッチングパターン(網掛け部分)を形成する(基板1B)。なお、図示の例では前記ワークトップ面部10となる部位の全面にエッチングパターンが形成されている。しかし、特に図示しないか、前記ワークトップ面部10の任意の一部にのみエッチング装飾処理を施して柄5となるエッチングパターンを形成するようにしてもよい。
【0015】
続いて、図1(C)に示される如くに、基板1Bに、シンクを取付配備するための開口12やコンロ・レンジ類を取付配備するための開口14、その他流し台用天板に仕上げるために必要とされる切欠16(四隅)等を打ち抜きプレス加工等により形成する(基板1C)。
【0016】
しかる後、基板1Bの左右(長手)方向両端部23、24及び前後方向両端部21、22に折曲成形加工を施して、図1(D)及び図3(A)、(B)、(C)に示される如くに、左右方向両端部23、24及び前端部21には、ワークトップ面部10(前後左右の端部より内方の平坦面部分)から若干上方に凸となるとともに下方に向けて折り曲がる断面概略7字状ないし鍵状の横垂れ部33、34及び前垂れ部31を、また、後端部22には、上方に向けて折り曲がる断面概略7字状ないし鍵状のバックガード部32を形成し、さらに、前記開口12にシンク15を取付配備するとともに、四隅を溶接接合(溶接部分35)する等の所要の成形加工を施し、最後に、前記溶接部分35を研磨する。
【0017】
これにより、ステンレス平板からなる素材基板1Cの状態から、左右方向両端部及び前後方向両端部に折曲、溶接等の成形加工が施され、かつ、前記左右方向両端部及び前後方向両端部を除くワークトップ面部10となる部位にエッチングパターン(柄5)が形成されているステンレス製流し台用柄付き天板1Dが得られる。
【0018】
このように本実施形態の製造方法では、柄付けとしてエッチング装飾処理を施すようにされるので、柄付けとしてエンボス加工等を施すようにした場合とは異なり、前後方向両端部だけでなく、左右方向両端部も無柄とすることができる。そして、基板1A〜1Cにおける、後で行われる折曲成形加工により大きく延びてしまう部分、言い換えれば、基板の前後左右の端部21〜24には、柄が付けられていないので、基板1Cの左右方向両端部23、24及び前後方向両端部21、22に折曲成形加工を施しても柄崩れは生じない。これにより、研磨が必要なのは溶接部分35だけとなるので、従来の製造方法に比して研磨すべき面積を小さくでき、その結果、製造コストを低く抑えることができるとともに、意匠的にも機能的にも優れた高品質の流し台用柄付き天板を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る流し台用柄付き天板の製造方法の一実施形態の説明に供される図。
【図2】従来の流し台用柄付き天板の製造方法の一例の説明に供される図。
【図3】(A)は天板の横垂れ部を示す拡大断面図、(B)は天板の前垂れ部を示す拡大断面図、(C)は天板のバックガード部を示す拡大断面図。
【符号の説明】
【0020】
1A、1B、1C、1D…基板(天板)
5…柄(エッチングパターン)
10…ワークトップ面部
12、14…開口
15…シンク
16…切欠
21…前端部
22…後端部
23…左端部
24…右端部
31…前垂れ部
32…バックガード
33、34…横垂れ部
35…溶接部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステンレス製の流し台用柄付き天板の製造方法であって、柄が付けられていないステンレス平板からなる基板を用意し、この基板における、後で行われる折曲成形加工により大きく延びてしまう部分を除いたワークトップ面部となる部位に、エッチング装飾処理を施し、その後、前記基板に所要の折曲、溶接等の成形加工を施すことを特徴とする流し台用柄付き天板の製造方法。
【請求項2】
柄が付けられていないステンレス平板からなる所定寸法の長方形基板を用意し、この基板における左右方向両端部及び前後方向両端部を除いたワークトップ面部となる部位に、エッチング装飾処理を施し、しかる後、前記基板における左右方向両端部及び前後方向両端部に所要の折曲、溶接等の成形加工を施すことを特徴とする流し台用柄付き天板の製造方法。
【請求項3】
前記基板に、シンクやコンロ・レンジ等を取付配備するための開口、その他流し台用天板に仕上げるために必要とされる穴、切欠、開口等を形成した後、前記折曲、溶接等の成形加工を施すことを特徴とする請求項1又は2に記載の流し台用柄付き天板の製造方法。
【請求項4】
ステンレス平板を素材とする流し台用柄付き天板であって、前記素材の状態から、左右方向両端部及び前後方向両端部に折曲、溶接等の成形加工が施され、かつ、前記左右方向両端部及び前後方向両端部を除くワークトップ面部となる部位にエッチングパターンが形成されていることを特徴とする流し台用柄付き天板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−181042(P2006−181042A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−376706(P2004−376706)
【出願日】平成16年12月27日(2004.12.27)
【出願人】(000000413)永大産業株式会社 (243)