流れの中の多数の成分の分離
ガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法であり、以下の複数のステップ、即ち、流れを処理容器中の離間した電極の間に導くステップと、電圧源から少なくとも1つの基本周波数F1を持つAC電圧を少なくとも1つの電極に加えるステップと、容器中に電界を確立して、その中を流れが通過するようにし、変調周波数F2においてAC電圧の周波数F1を変調するステップと、容器の上部から分離されたガス状成分を、容器の下部から重い液体成分を、さらに、容器の中間部分から軽い液体成分を引き抜くステップの、複数のステップを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連する出願のクロスリファレンス)
この出願は、“Multiple Frequency Electrostatic Coalescence”と題する2005年2月15日に出願された米国特許出願11/057,900である米国特許第7,351,320号に基づくものであり、これは、“Dual Frequency Electrostatic Coalescence”と題する米国特許出願10/214,295である米国特許第6,860,979号に基づく、一部継続出願である。
【0002】
本発明は、エマルジョンの不混和性成分(immiscible component)の静電凝集(electrostatic coalescence)の分野であり、特に、原油において一般的な油性エマルジョン(oil emulsion)中の水滴の凝集に関する。
【背景技術】
【0003】
(開発に関する連邦支援研究に関する一文)
本願の主題は、開発に関して存続する連邦支援研究のいずれにも関連がなく、本願はいずれのマイクロフィッシュ・アペンディクス(microfiche appendix)においても引用されていない。
【0004】
(関連技術に関する説明)
石油工業の創成以来、油と水との分離は課題であり続けている。世界で生産される原油の殆ど全ては、油と水との組み合わせとして地表に到達する。一部の原油においては、水はどちらかと言うと少量成分である場合もあるが、殆どにおいてそれは厄介な成分である。更に、ベース流体(base fluid)がエマルジョンであり、水が小さな液滴となって油性ベース(oil base)中に懸濁している場合には、油と水との分離はさらに難しくなる。
【0005】
水を油から分離する基本的メカニズムは、重力を用いることによる。殆どの油の生産は、地表に到達した後、分離装置(separator)、即ち、原油を導入する容器を通される。容器は、比較的静態な領域(quiescence zone)を確立し、水を下部に沈降させ、牛乳からクリームを浮き上がらせるのと同様に、油を上部まで浮き上がらせる。水は分離装置の下部から引き出され、油は分離装置の上部から引き出される。原油によっては、重力分離(gravitation separation)が効果的に働く場合もあるが、他の原油ではそれが難しくなる場合もある。水と油とが高度に乳化(emulsified)されていない場合、即ち、水が非常に小さい液滴、あるいは顕微鏡サイズの液滴の形状にもなっていない場合、重力分離は効果的である。しかしながら、多くのアプリケーションでは、水は非常に微細に油性ベース中に分散しているので、重力分離は完全に効果的ではなく、その場合、追加の処理技術が必要となる。
【0006】
油/水分離の有効性を高める標準的な技法の1つに、凝集の使用がある。種々の技術により、油に懸濁する小さな水滴を凝集させる、即ち、小さな水滴は互いに結び付き、大きな水の沈殿物(deposit)を形成する。水滴のサイズが大きくなるに連れて、重力分離のダイナミクスが改善し、即ち、大きな水滴は、小さな水滴と比較して、エマルジョンから自由降下し易い。凝集により、水と油とのエマルジョンを処理することは、石油業界において長年採用されている技術である。
【0007】
基本的な凝集のコンセプトは、確立した電界にエマルジョンを通過させることである。電界を確立する典型的な方法は、離間した電極、通常は金属板である、を容器(vessel)の内部に位置付け、エマルジョンが容器を移動して通り抜ける際に、エマルジョンの少なくとも一部が電極の間を通過するように、容器に配置する。容器が静電凝集による分離を促進するような構造となっている場合、容器内部では実際の分離が行われないように、単一の入力(single input)と単一の出力(single output)とを有する。このような凝集用の装置は、実際に水及び油の分離が行われる別の装置よりも前に用いることができる。例えば、分離が行われない静電凝集は、液体サイクロン(hydrocyclone)よりも前に用いることができ、この液体サイクロンのことを、渦管(vortex tube)と呼ぶこともある。エマルジョンを処理するには、電界を加えて水滴のサイズを増大させた後に、エマルジョンを液体サイクロンに通して、サイズが大きくなった液滴がサイクロン作用によって一層効率的に分離されるようにする。同じ装置を用いてエマルジョンを電界に通し、次いでこのエマルジョンを分離容器に移送し、ここで重力による分離が行われる。しかしながら、エマルジョンを電界で処理するために最も頻繁に用いられる装置は、容器内に離間した板を設けており、その容器はエマルジョンの入口と、軽い成分(油)用の上部出口と、重い成分(水)用の下部出口とを有する。このように、凝集と分離とが同じ容器内で行われる。
【0008】
エマルジョンの重い成分および軽い成分を凝集するための典型的なシステムは、1983年8月23日に発行され、"Voltage Control System for Electrostatic Oil Treater"と題する米国特許第4,400,253号に示されている。この開示においては、電界強度が周期的に増大および減少して、凝集を促進する。1983年11月29日に発行され、"Circuit for Maintaining the Strength of an Electrostatic Field Generated in a Fluid Mixture of Varying Dielectric Strength"と題する米国特許第4,417,971号は、電界を用いて凝集を促進するシステムについて教示しており、液体混合物の誘電強度(dielectric strength)が変化するに連れて、静電界の強さを維持するために、整流器(rectifier)を設けている。
【0009】
本発明は、エマルジョンの不混和性(immiscible)の重い成分及び軽い成分の分離を促進する方法およびシステムであり、内部に電界を有する容器内にエマルジョンを導入し、基本周波数において電界を変化させ及び変調させつつエマルジョンに電界をかけて、凝集を促進するステップを含む。変調は、振幅変調、周波数変調、又は、振幅及び周波数変調を組み合わせた形態とすることができる。
【0010】
エマルジョンの重い成分及び軽い成分の分離に関するその他の背景情報は、以下の米国特許から得ることができる。
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、エマルジョンの分離、即ち、エマルジョンの不混和性の重い成分と軽い成分との分離を促進する方法及びシステムを提供する。本方法は、エマルジョンを処理容器に導入するステップを含む。容器内部に電界を確立する。電界は、選択した基本周波数F1において変化させる。電界の強度を変調する。変調方法は以下から選択される:(a)振幅変調;(b)周波数変調;および(c)振幅及び周波数変調の組み合わせ。従って、電界は多重周波数(multiple frequency)であり、本方法は、多重周波数静電凝集(multiple frequency electrostatic coalescence)と見なすことができる。
【0012】
本発明の基本的システムは、エマルジョン入口と少なくとも1つの流体出口とを有する容器を含む。容器内部に設置した電極は処理領域を与え、この中を、エマルジョンの少なくとも一部が、エマルジョン入口と流体出口との間を流れる際に、通過する。電極に接続されている回路が、処理領域内に少なくとも1つの電界を与え、この回路は、基本周波数F1で電界を変化させるように機能し、基本周波数F1は、振幅、周波数、又は振幅及び周波数双方で変調する。
【0013】
本発明の更なる目的及び特徴は、当業者が、添付図面を参照し、以下の好ましい実施形態の説明を読むことによって明白にされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、処理容器内に離間して配置される電極に電気エネルギーを供給する回路を示す模式図である。エマルジョンが処理容器に流入すると、少なくともその一部が、電極間に形成する電界内を通過する。容器は、当該容器の下部に位置する重い成分(水)出口と、容器の上部に位置する軽い成分(油)出口とを含む。図1の回路は、多くの方法で変調する基本周波数F1において、容器内部の電極間に確立した電界を変化させる。
【図2】図2は、本発明のエマルジョンの不混和性の重い成分及び軽い成分の分離を促進する方法を実施するために用いられる処理容器内にある電極に印加される電位を表す波形パターンである。図2のグラフは、電界を発生するために離間した電極に印加することができる電圧パターンを示す。電圧パターンは、周波数F2で振幅変調された基本周波数F1を有する。
【図2A】図2Aは、本発明を実施する際に用いる高電圧トランスフォーマの二次側に供給される正電圧の波形を示す。
【図2B】図2Bは、本発明を実施する際に用いられる高電圧トランスフォーマの二次側における負電圧の波形を示す。図2Aおよび図2Bは、整流器を各電極と直列にして用いるときに得られる波形パターンを示す。
【図2C】図2Cは、変調周波数F2が方形波であるときのトランスフォーマの一次側に印加する電圧パターンを示すことを除いて、図2と同様である。
【図3】図3は、図1に示した発明の基本コンセプトを変更した実施形態である。この実施形態では、電圧波形が、グランドに対して、半波サイクル(half wave cycle)となり、一方の電極が正の半波サイクルを有し、他方の電極が負の半波サイクルを有するように、ダイオードが各電極と直列となっている。更に、図3は、エマルジョンの脱塩のために用いることができる発明を示し、淡水(fresh water)をシステム内に注入して、エマルジョンから過剰な塩分を排出しつつ、同時にシステムの静電凝集機構(electrostatic coalescing feature)が、システムから通る油に含有する水の量を減少させる。
【図4】図4は、図3に関して参照した、脱塩用途に特に適用する場合における本発明の方法を開示し、凝集環境において淡水を用いて、油性出力の塩分含有量を減少させる。複数の垂直に配置され離間したプレートが領域を与え、その領域において、基本波形を有する電圧の印加により静電界を発生する。基本周波数F1を変調して、エマルジョンに含有する水滴の凝集を促進する。
【図5】図5は、図2の波形と比べて異なる変調タイプを含む波形を示す。この波形においては、振幅は、基本周波数が順次変動する間、本質的に一定に留まる。特に、波形は周期的に周波数F1から周波数F3まで変化し、これは周波数変調器である。この変調のタイプを周波数変調と呼び、“FM”無線伝送において通常用いられている。
【図6】図6は、異なる波形であって、本質的に正弦波の基本周波数F1を示し、基本周波数の振幅を、“階段”パターンを形成するように変調する。図6において、基本周波数F1の振幅の強度は、周期的に急激に増加しゆっくり減少する。一般的には、エマルジョンが図6に示すタイプの電界を通過するとき、波形の振幅が増加する部分では水滴を不安定にし、一方、電圧波形の振幅が減少する部分では液滴の凝集が生ずる。
【図7】図7は、図6で観察される波形の一例を示し、F1の振幅が徐々に増加し、次いで急激に減少する。この実施形態では、エマルジョンの水滴が不安定になるのを遅くし、凝集が生ずるまでの時間を短縮する。このタイプの波形は、低導電率の原油を処理する際に、効果的に用いられる。
【図8】図8は、立ち上がり部分が立ち下がり部分と比べて急激であることを除いて、図6と同様の波形パターンである。
【図9】図9は、エマルジョンの凝集のために、離間した電極に印加することができる電気信号の変調パターンを示し、基本電圧F1の強度が指数関数的に増加し、同様に指数関数的に減少する。図9において、増加及び減少の指数関数的速度は、実質的に同一である。
【図10】図10は、静電凝集システムの電極に印加する基本周波数F1を示すという点で、図9に相当し、波形の強度又は振幅は、急激な指数関数的速度で増加し、遅い指数関数的速度で減少する。
【図11】図11は、図10での観察を示し、基本電圧の強度は遅い指数関数的速度で増加し、急激な指数関数的速度で減少する。典型的には、図11の波形は、高い導電率を有する原油性エマルジョンと共に用いられ、図10の波形は、原油の導電率が低いときに用いられる。図9の波形は、典型的には、原油が中程度の導電率を有するときに用いられる。
【図12】図12は、エマルジョン内にある電極に印加することができる電圧波形であり、基本波形F1が正弦波であり、周波数変調されて、比較的低い周波数から比較的高い周波数まで変化し、同時に振幅変調する。図12は、振幅変調及び周波数変調を組み合わせた一例である。
【図13】図13は、静電凝集において用いられる波形のしきい値電圧及び臨界電圧の重要性に関するものである。油性エマルジョンにおける水の凝集を促進するために静電界を確立するように印加する電圧波形パターンにおける変化に加えて、これら2つの特性も重要である。しきい値電圧は、凝集が生ずる最小電圧であり、一方、臨界電圧は、エマルジョンにおいて水滴を粉砕(shattering)せずに用いることができる最大電圧である。典型的には、交流電流信号(alternating current signal)によるエマルジョンの静電処理では、信号強度は、しきい値電圧及び臨界電圧によって確定される範囲内で変化する必要がある。図13は、液滴直径及びエマルジョンの界面張力に応じて臨界電圧がどのように変化するかを示す。この図は、3つの異なる界面張力、即ち、界面張力が1センチメートル当たり10ダイン、1センチメートル当たり20ダイン、および1センチメートル当たり30ダインとしたときのエマルジョンを示す。
【図14】図14は、液滴のサイズに基づいた水滴の自然周波数とエマルジョンの界面張力との関係を示す。
【図15】図15は、最大液滴凝集について、さらに応用物理に従って、変調周波数“Fa”は、最大水滴について計算した自然周波数“Fn”よりも低くなければならないことを示す。印加する変調周波数Faが液滴の自然周波数Fnを超えると、液滴は過度に長くなって粉砕し、即ち、さらに小さな液滴に分解し、所望の凝集とは逆となる。この図は、界面張力が1センチメートル当たり10ダイン、液滴直径“d”が500ミクロンのときの、ミクロン単位の液滴伸張と、液滴自然周波数に対する変調周波数の割合(ration)、即ち、Fa/Fnとの関係を示す。
【図16】図16は、基本周波数を電圧の振幅と同時に変化させることができるコンセプトを示す。この図では、電圧信号は、最大振幅において低い周波数を持ち、振幅が減少するにつれて高い周波数となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
長年にわたって、エマルジョンの凝集を促進するために電界が用いられている。電界は、定常状態のDC電圧電位、交流電位、整流交流電位(rectified alternating current potential)、パルス状のDC電圧電位、及びこれらの組み合わせにより確立され、用いられる。凝集を促進するための電界の使用は、特に、水と油との分離を助けるために石油業界において採用されている。凝集は、小さな液滴を一緒に合わせて大きな液滴を形成することを意味する。
【0016】
近年、パルス状DC電圧場を用いることによって、凝集の改善された結果が得られている。この技術は、水の含有量が多いアプリケーションでは重要であり、即ち、典型的には、水はエマルジョンの30パーセント(30%)よりも多く、従来の静電プロセスでは一貫的かつ効果的に機能しない。水の含有量が多いエマルジョンにおいてパルス状DC場を確立するために、絶縁電極(insulated electrode)を利用することが通常有益である。
【0017】
図1を参照すると、本発明の典型的なアプリケーションが略図で示されている。容器が参照番号10で示されており、エマルジョン入口12、重い成分(水)の出口14、および軽い成分(油)の出口16を有する。凝集は、様々なエマルジョンの重い成分と軽い成分とを分離するために用いられるが、しかし、この技術が最も広く応用されているのは、石油業界であり、ここでは原油からの水及び油の分離を促進するために凝集が用いられている。地下構造において発見される原油の殆どは、地表に到達する際、油及び水の両方を含有するエマルジョンとなっている。地表において、及び原油の輸送と精製との様々な段階において、含有する水を分離することが重要となる。このため、重い成分の出口14は、通常、水成分の出口と見なすことができ、一方、軽い成分の出口16は、通常、油の出口と見なすことができる。本発明では、特に、原油のようなエマルジョンに適用可能であり、通常の状態において水を重い成分として、本発明を説明する。地球には、重油を生産する地域があり、重油とは、乳化した水成分が炭化水素成分よりも軽い原油エマルジョン(crude oil emulsion)のことである。ここに記載する方法及びシステムは、このような重油のアプリケーションにおいて、水滴の凝集を促進するために適用することができる。主な相違は、分離した水を容器の上部から引き出し、一方重油を下部から取り出すことにあるが、凝集を促進するために静電界を発生し用いる方法は同じである。
【0018】
容器10内部において、水/油界面18を形成する重力によって、入力したエマルジョンから水を分離する。界面18よりも上で分離した油は液位20まで上昇し、その上にガスが蓄積する。ガスはガス出口22から引き出される。
【0019】
エマルジョン入口12は、1つ以上の分配管(distributor pipe)24に接続され、分配管24には小径の出口開口26があり、ここを通ってエマルジョンが容器10内に入る。分配管24は、発生する乱流(turbulence)を最少に抑えつつ、エマルジョンを容器10に流入させるように設計された種々の流体搬入システムを示す。
【0020】
容器10内部には、第1電極28と、これと離間した第2の接地電極30とが位置付けられている。
【0021】
電極28及び30には、エマルジョンが入口12から出口14および16に進むときに通り抜けるような孔が設けられ(perforated)、そして電極28及び30は容器10内部に位置付けられている。電極28及び30は、油/水界面18よりも上に電界を形成する。水滴の形成を促進するために電気エネルギーを電極28と30と間に印加する。この目的のため、第1導体32が電極28まで達しており、第2導体34が第2電極30をグランドに接続する。容器10がグランド電位にある場合には、従って、第2電極30を容器内部に直接接続することができ、第2導体34の必要性を解消する。
【0022】
一次巻線38および二次巻線40を有するトランスフォーマ36によって、電極28と30との間に電位を印加する。二次巻線40にかかる電圧は、グランド電位と導体32との間に供給される。定常状態のAC電圧をトランスフォーマ36の一次巻線38に印加する場合、ここまで記載した電界を利用してエマルジョンの重い成分および軽い成分の分離を促進するシステムは、標準的な手順である。しかしながら、本発明のシステムは、本質的に、電気エネルギーをトランスフォーマの一次巻線38に印加する方法が異なる。
【0023】
トランスフォーマ36の一次側に印加する電気エネルギーの波形を制御する図1の要素について説明する前に、ここで図2を参照する。この図は、波形を示し、電圧を縦軸に、時間を横軸にとっており、即ち、基本周波数の振幅又は強度が時間とともにどのように変化するかを示す。電圧波形は、波形42によって示される基本周波数(以後波形42の周波数をF1と呼ぶ)から成り、基本周波数の強度又は振幅は周波数F2で変調する。F1の変調の振幅は、波形44となる。即ち、波形44の周波数はF2である。
【0024】
図2は、変調44の振幅(F2)が正弦波(sine wave)形状であるときに、図1のシステムのトランスフォーマ36の一次側に印加する基本信号42(F1)を示す。F1の周波数は、F2の周波数よりも実質的に高い。F2は、図2に示すように、正弦波の形状とするとよく、あるいは図2Cに見られるような方形波(square wave)の形状とすることもできる。変調信号44(F2)は、加えて、台形状波(trapezoidal wave)、三角形状波(triangular-shaped wave)、指数形状波(exponential wave)、対数形状波(logarithmic wave)、半円形状波(semi-circular wave)、逆半円形状波(inverse semi-circular wave)、あるいはその他の対称的又は非対称的形状の波とすることができる。F2の形状を変化させることができるだけでなく、一部の信号形状に関して、波の傾きも変化させることもできる。例えば、三角形状波形は、同率で上昇および降下するような対照的なものとすることができ、もしくは、その逆の、急激に上昇しゆっくり降下するような非対称的とすることもできる。アプリケーションによっては、非対称的波形F2の使用により、格別な利点が得られる。
【0025】
図2、図2A、図2B、および図2Cでは、基本信号42(F1)は、正弦波の形状となっている。これは一例に過ぎない。多くのアプリケーションでは、F1は本質的に方形波である。
【0026】
図1からわかるように、容器10の電極28及び30に供給される電気エネルギーは、周波数F1で変化し、同時に周波数F2で強度変調される電界から構成される。図1の構造は、エマルジョンの凝集を促進するために二重周波数(duel frequency)方法を用いた、二重周波数静電凝集システム(duel frequency electrostatic coalescence system)として動作する。
【0027】
図1に戻ると、図2に示したタイプの信号は、電圧バス50上にDC電圧を生成するために、整流器48に供給される三相電圧入力46を利用することにより、発生することができる。変調器52が、DC電圧を、図2に見られるような変調信号44(F2)に変換し、これを導体54に供給する。次いで、チョッパ回路56が、電圧信号F2を、図2に見られるような高い基本電圧信号F1に切り刻む。信号F2によって強度変調を受けた基本電圧信号F1は、導体58上に現れ、トランスフォーマ36の一次側38に供給される。
【0028】
高電圧トランスフォーマ36の二次巻線40に現れる二重周波数波形は、多くの方法で発生することができる。前述のような図1の回路部分は、変調波形F2を最初に発生させ、これを細断して、高い周波数基本波形F1を生成するシステムとなっている。あるいは、AM無線送信機と類似した回路システムを採用することもでき、この場合、基本周波数F1を発生し、信号F2によって強度変調する。図2、図2A、図2B、および図2Cに例示した高電圧二重周波数信号を供給するために利用される特有の電気回路システムは、本開示の主題ではない。代わりに、本開示は、二重周波数静電電圧電荷をエマルジョンに印加して凝集を促進するコンセプトに関するものであり、このような二重周波数電圧信号を得る特定の回路は、本発明の本質ではない。何故なら、二重周波数波形を達成する回路は、電気設計業務の技術範囲内のことであるからである。
【0029】
回路要素48、52及び56は、例示に過ぎず、図2に表した信号を供給するために用いることができる回路の一例として、その基本を示す。
【0030】
本発明を実施する際、処理容器内にある電極に印加する電気エネルギー信号は、処理するエマルジョンの特性に応じて選択する。基本周波数F1がエマルジョンの油成分の導電率に比例する場合には、水含有油性エマルジョン(water-in-oil emulsion)の凝集が改善することが確認されており、導電率はpS/mで表されている。例えば、油成分の導電率が75,000pS/mであるエマルジョンにおいては、好ましい基本周波数は約1450Hzである。
【0031】
更に、変調周波数F2が、エマルジョンにおける水滴のサイズが減少するに連れて増加する場合に、凝集が改善する、即ち、エマルジョン中の小さな水滴は、エマルジョンにおける液滴が大きい場合と比べて、高い変調周波数の使用が必要となることが確認されている。例えば、エマルジョンにおける水滴の直径が平均500ミクロンである場合、変調周波数、即ち、F2が約6.4Hzのときに、システムはさらに効果的に凝集を促進する。
【0032】
図1の凝集容器の入口12に入るエマルジョンの特性が、油成分の導電率が75,000pS/mであり、水滴の平均直径が500ミクロンであると仮定すると、トランスフォーマの一次側38、又は、これに対応するトランスフォーマの二次側40の出力に現れる信号は、基本周波数が約1450Hzであり、変調周波数F2は約6.4Hzを持つようにするとよい。
【0033】
凝集を促進するためには、電界にはしきい値電圧、即ち、凝集を開始する最少電圧が必要となる。ここで用いる“しきい値電圧”という用語は、油及び水のエマルジョンからの分散水(dispersed water)の凝集を開始するための十分なエネルギーを有する最低電圧レベルを意味する。この電圧は、界面張力及び導電率を含む、いくつかの油の性質に依存する。理論的なしきい値電圧は、その電極及び容器の幾何学的形状に対する依存性のために、計算することができず、経験的に決定するのが最良であるというのが一般的である。
【0034】
しきい値電圧と対照的であるのが“臨界電圧”、即ち、凝集している水滴を分離させる最も高い電圧である。臨界電圧を超過すると、水滴の直径が縮小し、油からの水の分離が停止する。臨界電圧は、水滴のストークス径および界面張力から推定することができる。
【0035】
“最小電圧”は、しきい値電圧に関係があり、変調周波数F2において電極に印加される最低電圧60である。実際には、最小電圧がしきい値電圧又はその近傍である場合、最大液滴直径が得られ、その結果、最大分離率が最大となり、流出物における残留水含有量(residual water content)が最低となる。“最大電圧”は、臨界電圧に関係があり、変調周波数F2において電極に印加される最高電圧62である。実際には、短い期間だけ最大電圧が臨界電圧を超過することができる。臨界電圧の一時的な超過は、小さな分散水滴を付勢し、凝集及び分離プロセスに関与させることを誘導する。
【0036】
本発明を実施する際、最小電圧60は、しきい値電圧またはそれよりも多少低くするとよく、最大電圧62は臨界電圧又はそれよりも多少高くするとよい。
【0037】
更に、ここで用いる“基本周波数”F1という用語は、分散水滴の最大放電を防止するために必要な最小周波数を意味する。この周波数は、主に、油の導電率による影響を受ける。基本周波数F1を増加させる(60Hzよりも高く)ことは、広範囲の原油に対して静電凝集プロセスを最適化することができる。“変調周波数”F2は、最小電圧において形成する最大水滴の自然周波数である。この周波数は、液滴直径、界面張力、及び液滴質量に対し計算することができるが、実際には、プロセス容器が異なることで水力効率(hydraulic efficiencies)が変化するため、経験から決定するのが最良である。
【0038】
本発明の方法を実施する際、F1は約60から約2500Hzまでの範囲の周波数であり、F2は約0.1から約100Hzまでの範囲の周波数である。一般に、本発明のシステムは、従来からの静電凝集装置において用いられてきた交流電場よりも高い基本周波数F1を利用する。
【0039】
一般に、原油の生産において発生するタイプの水及び油のエマルジョンに対しては、基本周波数F1は、エマルジョンにおける油の導電率を参照して選択し、変調周波数F2は、水滴の質量及び/又はエマルジョンの界面張力を参照して選択し、最小電圧60は、エマルジョンの油成分の界面張力及び導電率に関係するしきい値電圧近傍またはそれよりも僅かだけ低くなるように、選択する。最小電圧60は、容器の幾何学的形状に従って多少変化することがある。
【0040】
分離が停止する臨界電圧は、上昇する油蒸気(oil steam)内に懸濁している水滴のストークス径を参照して決定される。最大電圧62は、前述のように、臨界電圧近傍とするとよい。
【0041】
“しきい値電圧”および“臨界電圧”は、ここで用いる場合、物理法則によって決定される電圧であり、処理するエマルジョンの特性、処理容器の幾何学的形状、及びエマルジョンの流量によって制御される。“最小電圧”及び“最大電圧”は、F2の振幅を定義する電圧を意味し、ここに開示する二重周波数プロセスを実行するためにシステムを設計する技術者が選択する電圧である。前述のように、F2を定義する最小電圧は、しきい値電圧に近いとよいが、必ずしも一致しなくてもよく、F2を定義する最大電圧は、エマルジョンの臨界電圧に近いとよいが、必ずしも一致しなくてもよい。前述のように、アプリケーションによっては、最小電圧は、しきい値電圧に比べて多少低いほうが優位であり、最大電圧は、臨界電圧に比べて多少大きくても良い。
【0042】
図3は、本発明の方法及びシステムの他の実施形態である。場合によっては、地下構造から地表に搬出される原油には、混入塩水(entrained brine)の形態の過剰な塩分を伴う。輸送および精製の効率上、塩分含有量を減少させることは有利である。図3のシステムのフロー配列は、原油のような、水含有油性エマルジョンの凝集及び分離に特に適用可能であり、さらに原油の脱塩にも適用可能である。図3のシステムにおいて、淡水は原油と混合されている。淡水はエマルジョン(原油)から塩分を吸収する。淡水は、淡水入口68を通じてエマルジョンに加えられ、淡水入口68はエマルジョン入口管70と結合し(merge)、容器エマルジョン入口12に達する。淡水入口68における水制御弁72を用いて、入口70を通過するエマルジョンに添加する淡水の量を制御する。エマルジョン入口12を通過して容器10に流入する総体積は、エマルジョン入口弁74によって制御される。
【0043】
容器10内部では、エマルジョンが受ける静電界によって凝集が促進され、水滴が大きくなって、エマルジョンから落ちて、油/水界面18を形成する領域に達する。水は管14を通じて引き出される。これによって、塩分を溶解する淡水入口68から加えられた淡水を含む混入水の大部分を有する油は、エマルジョンの油成分が油出口16から流出される前に、除外される。
【0044】
従って、図3の構成は、二重周波数静電凝集によって強化された分離装置、又は二重周波数凝集によって強化された脱塩装置のいずれかとして機能する。
【0045】
図3の構成では、図1と比べて、第1及び第2電極76及び78は、垂直に方位付けられていることが示され、これらの間に空間があり、ここを通過するようにエマルジョンが流れ、エマルジョンは容器内部の下部から上部油出口16に向かって移動する。二重周波数静電界は、電極76と78との間に形成される。電極76及び78の実際の物理的構造は、エマルジョンの実質的全てがこれらの間を通過するように、又は、電極に印加した電気信号により発生する静電界を少なくとも受けるようなものとなっている。
【0046】
トランスフォーマの二次側40の出力は、導体80によって第1整流器82に供給され、これと並列に、第2整流器84に供給される。導体86は、整流器82を電極78と直列に接続し、導体88は、整流器84を電極76に接続する。従って、電極76及び78の各々に印加される電圧信号は、半波整流信号(half wave rectified signal)となる。図2Aは、電極76に現れる電圧の波形を示し、図2Bは、電極78に現れる電圧の波形を示す。更に、トランスフォーマの二次側40の一方の脚部は、グランド電位にあり、容器10は、示されるようにグランド電位にあるのが通常であり、容器10内部に確立した静電界は、対向する電極76と78との間のみに存在するのではなく、電極と容器10の壁との間にも存在する。
【0047】
図3の分離システムを脱塩のために用いる場合、先に論じたように淡水を導入することとなるが、エマルジョン(更に具体的には、過剰な塩分を内部に有する原油)が淡水と完全に混合し、その後に希釈したエマルジョンが容器10に入ることが重要である。エマルジョン入口弁74は、容器10内への入力流量を規制するために用いられ、更に、希釈エマルジョンが容器10に入る前に、エマルジョンを淡水と混合する機能としても働く。従って、弁74は、その混合機能を得るために、5から15psiの圧力降下を生ずることが好ましい。
【0048】
図4を参照すると、本発明の実施形態が示されており、凝集及び分離を組み合わせた原油脱塩用に特に適用可能である。図4の実施形態では、複数の電極板76A及び76Bの対が示されている。板は、これらの間に垂直な通路ができるように垂直に方位付けられており、通路を通過するエマルジョンは静電界を受ける。参照番号76Aで特定される板は電極を構成し、その電極には、整流器84を直列に有する導体88が接続し、板76Aを負に荷電するようになっており、即ち、板76Aに印加される信号は、図2に示す電圧波形の下半分によって表される。板76Bには、整流器82と直列の導体86とが接続し、正に荷電され、即ち、これらの板に印加される電圧波形は、図2の図の上半分における波形によって表される。
【0049】
エマルジョン入口管12はスプレッダ90と接続しているので、エマルジョンは、油/水界面18よりも上に分散し、エマルジョンは、板76A及び76Bの対の間を通って上に移動する。淡水が淡水供給管68を通じて導入され、淡水供給管68は、管68A及び68Bに分岐する。分岐管68A及び68Bは、小径の開口(図示せず)を内部に有するので、淡水が板76Aおよび76Bよりも上に導入されるようになっている。淡水は、エマルジョンを通過して下方に移動し、一方エマルジョン自体は上方に移動するので、エマルジョン及び淡水は、板の間の領域において、互いに混じり合う。
【0050】
本発明の回路は、整流器48、変調器52、チョッパ56、及び高電圧トランスフォーマ36によって例示されており、基本信号周波数F1を供給する。基本信号周波数F1は、変調器52によって振幅が制御され、板76A及び76Bの対の間の電圧は変調周波数F2で変化して、所定の率で電圧を上昇させ、エマルジョンにおける水滴を粉砕し、淡水と粉砕した水滴とを最初に混合させることにより、エマルジョンにおける過剰な塩分を淡水によって吸収させる。強度は順次変化して、エマルジョン内にある水滴を凝集させ、これによって、水をエマルジョンから降下させ、油/水界面18よりも下である容器の下部に集め、最終的に水出口14を通じて容器から排水する。一方、エマルジョンの油含量(content)は、油出口16を通じて放出される。分離装置の通常動作においては、油含量は、分離容器10Bの上部付近にある収集システムによって取り出される。このように、図4のシステムは、独自の二重周波数電気信号を採用し、これを導体86及び88に供給し、混合装置、凝集装置、及び分離装置として同時に機能することにより、一層効果的にエマルジョンを脱塩しつつ、エマルジョンを油及び水の軽い成分と重い成分とに分離する。
【0051】
Floyd Prestridge et al.による"Electrostatic Mixer/Separator"と題する米国特許第4,606,801号は、図4と同様の分離システムを図示し記載するが、この特許は、二重周波数電圧の使用という独自の利点について教示していない。米国特許第4,606,801号は、本発明の原理を適用することができる、多重板混合/分離装置に関する良い背景情報を提供する。
【0052】
別の分離技術と合わせた静電分離の使用の良い例が、Kerry L. Subletteに発行され"Method and Apparatus for Separating Oilfield Emulsion"と題する米国特許第4,581,120号に開示されている。
【0053】
本発明は、エマルジョンが本質的に垂直に1つ以上の電界を通過して流れる容器に関するものとして主に図示し説明してきた。しかしながら、本文において論じているような二重周波数静電凝集を採用するシステム及び方法は、エマルジョンが水平に流れる容器でも同様に等しく用いることができる。電極を互いに平行に配置すれば、確立される電界に対してエマルジョンは水平に通過する、即ち、小孔(foraminous)垂直電極を採用することができる。"Energy-Saving Heavy Crude Oil Emulsion-Treating Apparatus"と題する米国特許第6,391,268号は、水平容器及び処理システムのタイプを示しており、本発明の原理をこれに応用することができる。
【0054】
前述のように、混入水を油及び水エマルジョンから分離する基本メカニズムは重力によるものである。凝集は、水滴を凝集させることによって、即ち、互いに結合させることによって、大きな水滴を形成し、これらが周囲の油の表面張力を克服し、これによって、重力が水滴をエマルジョンから沈静させることにより重力分離を促進する。重力は、地球の重力場の結果として自然に発生するが、円周方向の流れ(circumferential flow)に、即ち、円形路(circular path)に、更に具体的には、螺旋状通路(spiral path)にエマルジョンを流すことにより、重力を誘起させることもできる。この技術を遠心分離器(centrifugal separator)に採用する。本発明の二重周波数凝集システムは、遠心分離と合わせて効果的に採用することができる。
Gary W. Sams et al.に発行され"Method for Augmenting the Coalescence of Water in a Water-In-Oil Emulsion"と題する米国特許第5,643,431号は、図11に示すシステムに類似した、エマルジョンの分離を促進する遠心システムについて詳細に記載している。
【0055】
Gary W. Sams et al.に発行され"Method and Apparatus for Oil/Water Separation Using a Dual Electrode Centrifugal Coalescer"と題する米国特許第5,575,896号は、図12に示すタイプの凝集/分離容器の使用について、詳細な説明を提供する。
【0056】
単一周波数静電界(single frequency electrostatic field)を利用する従来の静電凝集プロセスの結果を以下の表に示し、二重周波数静電凝集プロセスを用いた結果と比較する。
【表2】
【0057】
最終結果として、即ち、流出物(effluent)における水が0.5%に対して0.2%というのは劇的には見えないかもしれないが、この差は、石油生産及び精製プロセスのオペレーションにおいては非常に有意である。何故なら、この低下により、パイプラインや生産及び精製装置における腐食が大幅に減少するからである。また、精製コストも低減する。
【0058】
前述のように、本発明の原理にしたがって凝集を促進するために処理容器の電極に印加する基本周波数F1は、pS/m単位で表すエマルジョンの導電率と関係がある。F1は、pS/m単位でのエマルジョンの導電率の約0.01から0.04倍の範囲であることが好ましい。図示の例では、原油の導電率レベルがpS/m単位で75,000であり、F1を1450Hzに選択した、つまり、比率は0.0193であり、即ち、好ましい範囲の中間である。変調周波数F2は、エマルジョンの界面張力に関係があり、約10から60の範囲の値を、ダイン/cm単位で表した場合の界面張力で割り算した値が好ましい。図示の例では、原油の界面張力は15ダイン/cmと測定され、選択した変調周波数F2は2.7Hzであり、40の定数が得られた。この場合も、好適な範囲のほぼ中間である。
【0059】
二重周波数システムの選択可変な(selectably variable)F1及びF2に加えて、エマルジョンの凝集を促進するための処理容器の設計者は、最小および最大変調電圧も決定しなければならない。前述のように、最大電圧は、エマルジョンの臨界電圧程度であることが好ましく、従って、計算した臨界電圧の約0.8倍から1.2倍の範囲とするとよい。臨界電圧は、エマルジョンが原油である場合には、ダイン/cm単位で表したエマルジョン界面張力を、ミクロン単位の水滴直径で割り算した値の平方根の約255,000倍であることが好ましい。前述の表に示した例において用いられる原油に対してこの関係を用いると、臨界電圧は38,400V RMSと計算され、F2の最大電圧としてこれを選択した。
【0060】
理論的には、エマルジョンのしきい値電圧を計算することは可能であるが、実際には、エマルジョンのサンプルから直接測定することが最良である。この理由のため、ユーザが原油の凝集を促進するための処理容器を調達したい場合、通常、設計者にエマルジョンのしきい値電圧を提供するか、又はサンプルを供給し、設計者が実験室においてしきい値電圧を決定する。しきい値電圧は、エマルジョン内の水滴が大きいサイズに凝集されてエマルジョンから沈殿することが起きる、十分なエネルギーを有する最小電圧である。ここに教示する二重周波数凝集方法では、変調周波数F2の最小電圧は、測定したしきい値電圧の約0.8倍から1.2倍の範囲とするとよい。教示する二重周波数方法では、最小電圧は、1サイクルのいずれの実質的な割合(substantial percentage)についても、しきい値電圧よりも低くなければならない。何故なら、凝集はこのような時間において本質的に停止することがあるからである。場合によっては、F2の最小値をしきい値電圧よりも少し低く設定することが望ましい場合もある。図示の構成では、処理する原油のしきい値電圧は17,000V RMSであり、これをF2の最小電圧として選択した。
【0061】
油/水エマルジョンにおける水の凝集を促進するためのAC静電界の使用に関する基本コンセプトは、両方ともPresstridgeに発行された米国特許第3,772,180号および第4,400,253号、ならびに、Ferrin, et al.に発行された第4,417,971号に記載されている。
【0062】
以下の更に別の米国特許は、ここで引用することにより、本願にも含まれるものとする。第6,010,634号、第4,606,801号、第4,702,815号、第4,581,120号、第5,643,431、第5,575,896号、第3,772,180号、第4,400,253号、および第4,417,971号。
【0063】
他の分離技術と組み合わせて図示及び説明したものを含む、本発明の二重周波数静電凝集方法及びシステムのアプリケーションの例示は、限定ではなく一例として与えられたに過ぎない。これは、本発明のシステム及び方法を含む二重周波数静電凝集のコンセプトは、エマルジョンの重い成分及び軽い成分の分離の効率及び有効性の改善を達成するために他の独自で有用な組み合わせにも採用できるからである。
【0064】
この論点について本発明の技術を例示し論じたのは、これが特に“二重周波数”静電凝集に関するからである。場合によっては、ちょうど2つ、又は、二重周波数よりも多くの周波数を用いた場合に、静電凝集の改善が促進されることも確認されている。この改良技術は、“多重周波数静電凝集”と名付けることもできる。もちろん、“二重周波数”は、静電凝集技術を記述するために用いる場合には、“多重周波数”の一例となる。
【0065】
更に、変調周波数によって強度を変調する基本周波数、即ち、振幅変調ではなく、周波数変調や、振幅変調および周波数変調の組み合わせというような、別の種類の変調も、静電凝集を強化するために採用できることも習得した。このような技術を“多重周波数”静電凝集と呼ぶことにする。
【0066】
印加電圧を変調すると、油含有水性エマルジョン(oil-in-water emulsion)を不安定にするのを助ける。エマルジョンにおいて水滴を適当に不安定にすることができないのは、一般に、脱水性能(dehydration performance)が低いことが原因である。有効とするには、電圧を低いしきい値電圧から高い臨界電圧まで変調しなければならない。電圧がしきい値レベルよりも低い場合、静電凝集は本質的に停止する。電圧が臨界電圧よりも高い場合、液滴が粉砕され、従ってエマルジョンから沈静するのに必要な十分な直径まで成長しない。
【0067】
典型的な多重周波数分離プロセスは、高い周波数(800〜1600Hz)の電源を、低い周波数(1〜20Hz)の変調と組み合わせて利用する。このプロセスは、三相電圧をDCバス電圧に変換することによって実施することができる。次いで、DC電圧を変調して低周波電圧を供給し、更にこれを細分して所望の高周波を得る。このプロセスによって発生する波形は、静電凝集を成功させるために、5つの特性上の特徴を有していなければならない。第1に、最小電圧はしきい値電圧又はその近傍でなければならない。第2に、最大電圧は臨界電圧近傍でなければならない。臨界電圧はエマルジョンから沈殿する液滴サイズに依存する。第3に、基本周波数F1を、原油の導電率から決定する。第4に、変調周波数F2は、必要な液滴サイズ、ならびに原油及び水の混合物、即ち、エマルジョンの界面張力に依存する。振幅変調した際、高周波波長を1対のダイオードによって整流すると、正及び負の波形が生ずる。図2Aおよび図2Bを参照。第5に、波形特性、即ち、変調の形状が重要である。この形状は、正弦波又は方形波、あるいは図5から図12に示すような種々のその他の波形とすることができる。加えて、図12に示すような波形の組み合わせも用いることができる。
【0068】
正及び負の波形は、平行板状に配置し各々逆の電気極性を有する隣接した電極に印加することができる。この配置を図3に示す。
【0069】
この“多重周波数”方法は、高周波静電界を確立し、電界強度及び低周波変調場を最大にして分散水の凝集を促進し、最大液滴サイズにすることによって、静電凝集を促進する。この技術は、商業的に成功しており、従来の非変調凝集方法に対して、30から100%凝集性能を改善する。
【0070】
図1から図4までを参照しながら論じた波形は、高周波波形の振幅を制御することによって発生する低周波波形から成る。この多重周波数方法は、低いしきい値電圧と高い臨界電圧との間の印加電圧の強度を変調し、多数の試験的な試作に利用されており、少なくとも1つの現場試作において成功している。多重周波数波形のアプリケーションは、同一の流出水含有量(effluent water content)を維持しつつ、既設の静電分離器の処理能力の2倍であるような性能結果を得ている。
【0071】
多重周波数静電凝集装置が最大効率で作動しているとき、分散水は容易に凝集して非常に大きな液滴となり、この液滴は、臨界レベルよりも高い過大電圧で容易に粉砕することができる。これらの大きな液滴を維持するためには、臨界電圧を下げなければならない。図13を参照。臨界電圧の理論的限界は、しきい値電圧であるが、実用上の限界は、しきい値よりも約2kV上であると考えられる。数回の性能検査において、最良の結果が得られたのは、臨界電圧を、しきい値電圧よりも数千ボルト高く設定したときであった。
【0072】
多重周波数プロセスによって生成した大きな水滴のために、液滴の粉砕を防止するためには、最適な変調周波数を低下させなければならないことも観察されている。この観察は、液滴サイズ及び界面張力に基づく液滴の自然周波数とも一致する。図14を参照。変調周波数の理論的限界は、液滴の成長が最大のときには0である。最大の液滴凝集のため、そして応用物理にしたがうと、理想的な変調周波数は、計算した最大水滴の自然周波数未満でなければならない。図15に示すように、加えられる周波数Faが液滴の自然周波数Fnと一致する場合、液滴は過度に伸張し、粉砕される。参照する図15は、加える周波数が液滴の自然周波数に等しいときに、最大の液滴伸張が生ずることを示す。経験から決定される実用上の限界は、約0.1Hzであると考えられる。
【0073】
変調周波数は、液滴サイズ及び界面張力に基づいて選択するが、原油の導電率は、水滴の静電挙動(electrostatic behavior)を制御する。独自の波形を生成するために対称的な波形を歪ませて、2つの追加の周波数が得られる。図6から図11は、歪ませた波形を示す。原油では、導電率が低いと変調波形が歪み、図6、図8、及び図10に示すように、そして図8において最も分かりやすく示すように、電圧が急速に上昇し、次いでゆっくりとした電圧の低下が生じ、静電エネルギーを最大に高める。導電率が高い原油では、図7及び図11に示すように、電圧はゆっくりと上昇して液滴の粉砕を防止し、次いで急速な電圧の低下が生ずる。検査によって確認されたのは、図7及び図11に示すような高周波上昇電圧に最も良く応答する原油があり、他方図6、図8、及び図10に示すような高周波低下電圧を必要とする原油もある。
【0074】
多重周波数方法を原油における分散水の凝集に適用することによって、しきい値電圧と臨界電圧との間で電圧を変調すると、著しい液滴成長を促進することが実証されている。しかしながら、この凝集が達成される場合、液滴サイズを制御するために最大電圧を低下させなければならないことも観察されている。また、変調波形において正しい荷電周波数と別個の正しい凝集周波数とを設定することは、凝集プロセスには非常に有益であることも観察されている。図14及び図15に示すように、加える周波数と液滴の成長との間には、強い相関がある。液滴の凝集を最適化するためには、静電界強度の変調を最小に抑えなければならないことから、静電界周波数を変調することにより、さらなる液滴成長を達成できることが観察されている。図5及び図12に示す周波数変調波形の使用等によって、広いスペクトルにわたって周波数を掃引する(sweeping)ことにより、最大の液滴母集団(population)の顕著な不安定化が促進する。最小の分散水滴は、最高周波数において不安定となる。この周波数が減衰するに連れて、大きな液滴が不安定になり初め、周波数が最低レベルとなるまで凝集によりさらに大きな液滴が形成される。この“周波数変調”のコンセプトを図5及び図12に示す。
【0075】
図5及び図12に示すような、広いスペクトルにわたって周波数を掃引することは、しきい値と臨界レベルとの間で電圧強度を変調することに相当する。しかしながら、既に説明したように、液滴の母集団が大きな液滴サイズに移っていくと、しきい値電圧及び臨界電圧は互いに接近し合い、電圧レベルが一致すると破壊に至る。
【0076】
理論的には、全てのサイズの水滴が存在できるのは、しきい値電圧において変調周波数が0Hzのときのみである。変調周波数が上昇するに連れて、高調波破壊(harmonic destruction)により、大きな水滴が粉砕し始める。一方、一旦これらの液滴が不安定になると、これらは容易に凝集して大きな液滴となり、エマルジョンから分離する。周波数をほとんど0Hzからほとんど50Hzまで掃引すると、分散水滴の大きな母集団は不安定になる。図14を参照。外部水液滴膜(exterior water droplet film)を破壊すると、分散水滴が不安定となり、電圧変調のみで可能な液滴の成長(凝集)よりも大きく成長することが可能となる。
【0077】
周波数の変調を電圧の変調と組み合わせることにより、いずれかの変調のタイプを単独で用いる場合よりも、大きな水滴の不安定化及び凝集を達成することができる。上位(upper)及び下位(lower)周波数間の変動は、第3“周期”周波数において発生し、液滴の凝集を増加することができる。図12を参照。
【0078】
基本周波数は、効果的な凝集に必要であれば、0および2500Hzの間で変化させることができる。最適な範囲は100および1600Hzの間である。基本周波数は、電圧振幅と同時に変化させることができる。図12を参照。また、液滴の成長を促進する更なるツールを設けるために、基本周波数を0から180度までシフトすることもできる。変調周波数は、0Hzを含むいずれの周波数においても一定に保持することができる。変調周波数は、常に基本周波数F1未満でなければならないが、0Hzから100Hzまで変化することができる。最適変調周波数は0.1および60Hzの間である。
【0079】
図5から図11に示すように、変調波形を歪ませる場合、変調周波数は、高い及び低い周波数の組み合わせから成る平均である。高周波数は、波形の先端又は後端とするとよい。例えば、電圧が30Hzの周波数において徐々に上昇し、2Hzの周波数で徐々に低下する場合、平均周波数は3.75Hzとなる。振幅変調周波数が0Hzで、印加電圧がしきい値レベル近傍の場合、基本周波数は、図5の波形を用いることによるというように、液滴の凝集を促進するために、広い範囲にわたって変調した周波数とすることができる。0Hzよりも大きな振幅変調周波数においては、基本周波数は、低い基本周波数から更に高い基本周波数までの広い範囲にわたって変調した周波数とすることもできる。例えば、基本周波数は1600Hzと500Hzとの間で変更することができ、発振周波数は、変調周波数と同等とすることもできる。
【0080】
本発明は、熟練した技術者には周知であり、周波数変調比送信(frequency modulated ratio transmission)及び受信(reception)の実施において例示されている周波数変調回路の使用により、図5及び図12の波形において図示したように、周波数変調を含むように実施することができる。周波数変調は、図1及び図3の変調器52及びチョッパ56を、周波数変調装置と交換することによって行うことができる。これらの図における変調器52は、周波数変調を行う能力(capacity)を含む。
【0081】
特許請求の範囲および明細書は、提示した発明について記載したものであり、特許請求の範囲において用いた用語は、その意味を明細書におけるこのような用語の使用から引き出す。従来技術において用いられている同じ用語は、この中で具体的に用いている場合よりも意味が広い。従来技術において用いられているこのような用語の広い定義と、この中における用語の更に具体的な使用との間に疑問がある場合は、常に、更に具体的な意味を想定している。
【0082】
本発明は、ここに図示し説明した回路、波形、及びグラフに限定されるのではなく、各要素又はステップに与えられる均等の最大範囲を含む、ここに添付した特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【技術分野】
【0001】
(関連する出願のクロスリファレンス)
この出願は、“Multiple Frequency Electrostatic Coalescence”と題する2005年2月15日に出願された米国特許出願11/057,900である米国特許第7,351,320号に基づくものであり、これは、“Dual Frequency Electrostatic Coalescence”と題する米国特許出願10/214,295である米国特許第6,860,979号に基づく、一部継続出願である。
【0002】
本発明は、エマルジョンの不混和性成分(immiscible component)の静電凝集(electrostatic coalescence)の分野であり、特に、原油において一般的な油性エマルジョン(oil emulsion)中の水滴の凝集に関する。
【背景技術】
【0003】
(開発に関する連邦支援研究に関する一文)
本願の主題は、開発に関して存続する連邦支援研究のいずれにも関連がなく、本願はいずれのマイクロフィッシュ・アペンディクス(microfiche appendix)においても引用されていない。
【0004】
(関連技術に関する説明)
石油工業の創成以来、油と水との分離は課題であり続けている。世界で生産される原油の殆ど全ては、油と水との組み合わせとして地表に到達する。一部の原油においては、水はどちらかと言うと少量成分である場合もあるが、殆どにおいてそれは厄介な成分である。更に、ベース流体(base fluid)がエマルジョンであり、水が小さな液滴となって油性ベース(oil base)中に懸濁している場合には、油と水との分離はさらに難しくなる。
【0005】
水を油から分離する基本的メカニズムは、重力を用いることによる。殆どの油の生産は、地表に到達した後、分離装置(separator)、即ち、原油を導入する容器を通される。容器は、比較的静態な領域(quiescence zone)を確立し、水を下部に沈降させ、牛乳からクリームを浮き上がらせるのと同様に、油を上部まで浮き上がらせる。水は分離装置の下部から引き出され、油は分離装置の上部から引き出される。原油によっては、重力分離(gravitation separation)が効果的に働く場合もあるが、他の原油ではそれが難しくなる場合もある。水と油とが高度に乳化(emulsified)されていない場合、即ち、水が非常に小さい液滴、あるいは顕微鏡サイズの液滴の形状にもなっていない場合、重力分離は効果的である。しかしながら、多くのアプリケーションでは、水は非常に微細に油性ベース中に分散しているので、重力分離は完全に効果的ではなく、その場合、追加の処理技術が必要となる。
【0006】
油/水分離の有効性を高める標準的な技法の1つに、凝集の使用がある。種々の技術により、油に懸濁する小さな水滴を凝集させる、即ち、小さな水滴は互いに結び付き、大きな水の沈殿物(deposit)を形成する。水滴のサイズが大きくなるに連れて、重力分離のダイナミクスが改善し、即ち、大きな水滴は、小さな水滴と比較して、エマルジョンから自由降下し易い。凝集により、水と油とのエマルジョンを処理することは、石油業界において長年採用されている技術である。
【0007】
基本的な凝集のコンセプトは、確立した電界にエマルジョンを通過させることである。電界を確立する典型的な方法は、離間した電極、通常は金属板である、を容器(vessel)の内部に位置付け、エマルジョンが容器を移動して通り抜ける際に、エマルジョンの少なくとも一部が電極の間を通過するように、容器に配置する。容器が静電凝集による分離を促進するような構造となっている場合、容器内部では実際の分離が行われないように、単一の入力(single input)と単一の出力(single output)とを有する。このような凝集用の装置は、実際に水及び油の分離が行われる別の装置よりも前に用いることができる。例えば、分離が行われない静電凝集は、液体サイクロン(hydrocyclone)よりも前に用いることができ、この液体サイクロンのことを、渦管(vortex tube)と呼ぶこともある。エマルジョンを処理するには、電界を加えて水滴のサイズを増大させた後に、エマルジョンを液体サイクロンに通して、サイズが大きくなった液滴がサイクロン作用によって一層効率的に分離されるようにする。同じ装置を用いてエマルジョンを電界に通し、次いでこのエマルジョンを分離容器に移送し、ここで重力による分離が行われる。しかしながら、エマルジョンを電界で処理するために最も頻繁に用いられる装置は、容器内に離間した板を設けており、その容器はエマルジョンの入口と、軽い成分(油)用の上部出口と、重い成分(水)用の下部出口とを有する。このように、凝集と分離とが同じ容器内で行われる。
【0008】
エマルジョンの重い成分および軽い成分を凝集するための典型的なシステムは、1983年8月23日に発行され、"Voltage Control System for Electrostatic Oil Treater"と題する米国特許第4,400,253号に示されている。この開示においては、電界強度が周期的に増大および減少して、凝集を促進する。1983年11月29日に発行され、"Circuit for Maintaining the Strength of an Electrostatic Field Generated in a Fluid Mixture of Varying Dielectric Strength"と題する米国特許第4,417,971号は、電界を用いて凝集を促進するシステムについて教示しており、液体混合物の誘電強度(dielectric strength)が変化するに連れて、静電界の強さを維持するために、整流器(rectifier)を設けている。
【0009】
本発明は、エマルジョンの不混和性(immiscible)の重い成分及び軽い成分の分離を促進する方法およびシステムであり、内部に電界を有する容器内にエマルジョンを導入し、基本周波数において電界を変化させ及び変調させつつエマルジョンに電界をかけて、凝集を促進するステップを含む。変調は、振幅変調、周波数変調、又は、振幅及び周波数変調を組み合わせた形態とすることができる。
【0010】
エマルジョンの重い成分及び軽い成分の分離に関するその他の背景情報は、以下の米国特許から得ることができる。
【表1】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、エマルジョンの分離、即ち、エマルジョンの不混和性の重い成分と軽い成分との分離を促進する方法及びシステムを提供する。本方法は、エマルジョンを処理容器に導入するステップを含む。容器内部に電界を確立する。電界は、選択した基本周波数F1において変化させる。電界の強度を変調する。変調方法は以下から選択される:(a)振幅変調;(b)周波数変調;および(c)振幅及び周波数変調の組み合わせ。従って、電界は多重周波数(multiple frequency)であり、本方法は、多重周波数静電凝集(multiple frequency electrostatic coalescence)と見なすことができる。
【0012】
本発明の基本的システムは、エマルジョン入口と少なくとも1つの流体出口とを有する容器を含む。容器内部に設置した電極は処理領域を与え、この中を、エマルジョンの少なくとも一部が、エマルジョン入口と流体出口との間を流れる際に、通過する。電極に接続されている回路が、処理領域内に少なくとも1つの電界を与え、この回路は、基本周波数F1で電界を変化させるように機能し、基本周波数F1は、振幅、周波数、又は振幅及び周波数双方で変調する。
【0013】
本発明の更なる目的及び特徴は、当業者が、添付図面を参照し、以下の好ましい実施形態の説明を読むことによって明白にされるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】図1は、処理容器内に離間して配置される電極に電気エネルギーを供給する回路を示す模式図である。エマルジョンが処理容器に流入すると、少なくともその一部が、電極間に形成する電界内を通過する。容器は、当該容器の下部に位置する重い成分(水)出口と、容器の上部に位置する軽い成分(油)出口とを含む。図1の回路は、多くの方法で変調する基本周波数F1において、容器内部の電極間に確立した電界を変化させる。
【図2】図2は、本発明のエマルジョンの不混和性の重い成分及び軽い成分の分離を促進する方法を実施するために用いられる処理容器内にある電極に印加される電位を表す波形パターンである。図2のグラフは、電界を発生するために離間した電極に印加することができる電圧パターンを示す。電圧パターンは、周波数F2で振幅変調された基本周波数F1を有する。
【図2A】図2Aは、本発明を実施する際に用いる高電圧トランスフォーマの二次側に供給される正電圧の波形を示す。
【図2B】図2Bは、本発明を実施する際に用いられる高電圧トランスフォーマの二次側における負電圧の波形を示す。図2Aおよび図2Bは、整流器を各電極と直列にして用いるときに得られる波形パターンを示す。
【図2C】図2Cは、変調周波数F2が方形波であるときのトランスフォーマの一次側に印加する電圧パターンを示すことを除いて、図2と同様である。
【図3】図3は、図1に示した発明の基本コンセプトを変更した実施形態である。この実施形態では、電圧波形が、グランドに対して、半波サイクル(half wave cycle)となり、一方の電極が正の半波サイクルを有し、他方の電極が負の半波サイクルを有するように、ダイオードが各電極と直列となっている。更に、図3は、エマルジョンの脱塩のために用いることができる発明を示し、淡水(fresh water)をシステム内に注入して、エマルジョンから過剰な塩分を排出しつつ、同時にシステムの静電凝集機構(electrostatic coalescing feature)が、システムから通る油に含有する水の量を減少させる。
【図4】図4は、図3に関して参照した、脱塩用途に特に適用する場合における本発明の方法を開示し、凝集環境において淡水を用いて、油性出力の塩分含有量を減少させる。複数の垂直に配置され離間したプレートが領域を与え、その領域において、基本波形を有する電圧の印加により静電界を発生する。基本周波数F1を変調して、エマルジョンに含有する水滴の凝集を促進する。
【図5】図5は、図2の波形と比べて異なる変調タイプを含む波形を示す。この波形においては、振幅は、基本周波数が順次変動する間、本質的に一定に留まる。特に、波形は周期的に周波数F1から周波数F3まで変化し、これは周波数変調器である。この変調のタイプを周波数変調と呼び、“FM”無線伝送において通常用いられている。
【図6】図6は、異なる波形であって、本質的に正弦波の基本周波数F1を示し、基本周波数の振幅を、“階段”パターンを形成するように変調する。図6において、基本周波数F1の振幅の強度は、周期的に急激に増加しゆっくり減少する。一般的には、エマルジョンが図6に示すタイプの電界を通過するとき、波形の振幅が増加する部分では水滴を不安定にし、一方、電圧波形の振幅が減少する部分では液滴の凝集が生ずる。
【図7】図7は、図6で観察される波形の一例を示し、F1の振幅が徐々に増加し、次いで急激に減少する。この実施形態では、エマルジョンの水滴が不安定になるのを遅くし、凝集が生ずるまでの時間を短縮する。このタイプの波形は、低導電率の原油を処理する際に、効果的に用いられる。
【図8】図8は、立ち上がり部分が立ち下がり部分と比べて急激であることを除いて、図6と同様の波形パターンである。
【図9】図9は、エマルジョンの凝集のために、離間した電極に印加することができる電気信号の変調パターンを示し、基本電圧F1の強度が指数関数的に増加し、同様に指数関数的に減少する。図9において、増加及び減少の指数関数的速度は、実質的に同一である。
【図10】図10は、静電凝集システムの電極に印加する基本周波数F1を示すという点で、図9に相当し、波形の強度又は振幅は、急激な指数関数的速度で増加し、遅い指数関数的速度で減少する。
【図11】図11は、図10での観察を示し、基本電圧の強度は遅い指数関数的速度で増加し、急激な指数関数的速度で減少する。典型的には、図11の波形は、高い導電率を有する原油性エマルジョンと共に用いられ、図10の波形は、原油の導電率が低いときに用いられる。図9の波形は、典型的には、原油が中程度の導電率を有するときに用いられる。
【図12】図12は、エマルジョン内にある電極に印加することができる電圧波形であり、基本波形F1が正弦波であり、周波数変調されて、比較的低い周波数から比較的高い周波数まで変化し、同時に振幅変調する。図12は、振幅変調及び周波数変調を組み合わせた一例である。
【図13】図13は、静電凝集において用いられる波形のしきい値電圧及び臨界電圧の重要性に関するものである。油性エマルジョンにおける水の凝集を促進するために静電界を確立するように印加する電圧波形パターンにおける変化に加えて、これら2つの特性も重要である。しきい値電圧は、凝集が生ずる最小電圧であり、一方、臨界電圧は、エマルジョンにおいて水滴を粉砕(shattering)せずに用いることができる最大電圧である。典型的には、交流電流信号(alternating current signal)によるエマルジョンの静電処理では、信号強度は、しきい値電圧及び臨界電圧によって確定される範囲内で変化する必要がある。図13は、液滴直径及びエマルジョンの界面張力に応じて臨界電圧がどのように変化するかを示す。この図は、3つの異なる界面張力、即ち、界面張力が1センチメートル当たり10ダイン、1センチメートル当たり20ダイン、および1センチメートル当たり30ダインとしたときのエマルジョンを示す。
【図14】図14は、液滴のサイズに基づいた水滴の自然周波数とエマルジョンの界面張力との関係を示す。
【図15】図15は、最大液滴凝集について、さらに応用物理に従って、変調周波数“Fa”は、最大水滴について計算した自然周波数“Fn”よりも低くなければならないことを示す。印加する変調周波数Faが液滴の自然周波数Fnを超えると、液滴は過度に長くなって粉砕し、即ち、さらに小さな液滴に分解し、所望の凝集とは逆となる。この図は、界面張力が1センチメートル当たり10ダイン、液滴直径“d”が500ミクロンのときの、ミクロン単位の液滴伸張と、液滴自然周波数に対する変調周波数の割合(ration)、即ち、Fa/Fnとの関係を示す。
【図16】図16は、基本周波数を電圧の振幅と同時に変化させることができるコンセプトを示す。この図では、電圧信号は、最大振幅において低い周波数を持ち、振幅が減少するにつれて高い周波数となる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
長年にわたって、エマルジョンの凝集を促進するために電界が用いられている。電界は、定常状態のDC電圧電位、交流電位、整流交流電位(rectified alternating current potential)、パルス状のDC電圧電位、及びこれらの組み合わせにより確立され、用いられる。凝集を促進するための電界の使用は、特に、水と油との分離を助けるために石油業界において採用されている。凝集は、小さな液滴を一緒に合わせて大きな液滴を形成することを意味する。
【0016】
近年、パルス状DC電圧場を用いることによって、凝集の改善された結果が得られている。この技術は、水の含有量が多いアプリケーションでは重要であり、即ち、典型的には、水はエマルジョンの30パーセント(30%)よりも多く、従来の静電プロセスでは一貫的かつ効果的に機能しない。水の含有量が多いエマルジョンにおいてパルス状DC場を確立するために、絶縁電極(insulated electrode)を利用することが通常有益である。
【0017】
図1を参照すると、本発明の典型的なアプリケーションが略図で示されている。容器が参照番号10で示されており、エマルジョン入口12、重い成分(水)の出口14、および軽い成分(油)の出口16を有する。凝集は、様々なエマルジョンの重い成分と軽い成分とを分離するために用いられるが、しかし、この技術が最も広く応用されているのは、石油業界であり、ここでは原油からの水及び油の分離を促進するために凝集が用いられている。地下構造において発見される原油の殆どは、地表に到達する際、油及び水の両方を含有するエマルジョンとなっている。地表において、及び原油の輸送と精製との様々な段階において、含有する水を分離することが重要となる。このため、重い成分の出口14は、通常、水成分の出口と見なすことができ、一方、軽い成分の出口16は、通常、油の出口と見なすことができる。本発明では、特に、原油のようなエマルジョンに適用可能であり、通常の状態において水を重い成分として、本発明を説明する。地球には、重油を生産する地域があり、重油とは、乳化した水成分が炭化水素成分よりも軽い原油エマルジョン(crude oil emulsion)のことである。ここに記載する方法及びシステムは、このような重油のアプリケーションにおいて、水滴の凝集を促進するために適用することができる。主な相違は、分離した水を容器の上部から引き出し、一方重油を下部から取り出すことにあるが、凝集を促進するために静電界を発生し用いる方法は同じである。
【0018】
容器10内部において、水/油界面18を形成する重力によって、入力したエマルジョンから水を分離する。界面18よりも上で分離した油は液位20まで上昇し、その上にガスが蓄積する。ガスはガス出口22から引き出される。
【0019】
エマルジョン入口12は、1つ以上の分配管(distributor pipe)24に接続され、分配管24には小径の出口開口26があり、ここを通ってエマルジョンが容器10内に入る。分配管24は、発生する乱流(turbulence)を最少に抑えつつ、エマルジョンを容器10に流入させるように設計された種々の流体搬入システムを示す。
【0020】
容器10内部には、第1電極28と、これと離間した第2の接地電極30とが位置付けられている。
【0021】
電極28及び30には、エマルジョンが入口12から出口14および16に進むときに通り抜けるような孔が設けられ(perforated)、そして電極28及び30は容器10内部に位置付けられている。電極28及び30は、油/水界面18よりも上に電界を形成する。水滴の形成を促進するために電気エネルギーを電極28と30と間に印加する。この目的のため、第1導体32が電極28まで達しており、第2導体34が第2電極30をグランドに接続する。容器10がグランド電位にある場合には、従って、第2電極30を容器内部に直接接続することができ、第2導体34の必要性を解消する。
【0022】
一次巻線38および二次巻線40を有するトランスフォーマ36によって、電極28と30との間に電位を印加する。二次巻線40にかかる電圧は、グランド電位と導体32との間に供給される。定常状態のAC電圧をトランスフォーマ36の一次巻線38に印加する場合、ここまで記載した電界を利用してエマルジョンの重い成分および軽い成分の分離を促進するシステムは、標準的な手順である。しかしながら、本発明のシステムは、本質的に、電気エネルギーをトランスフォーマの一次巻線38に印加する方法が異なる。
【0023】
トランスフォーマ36の一次側に印加する電気エネルギーの波形を制御する図1の要素について説明する前に、ここで図2を参照する。この図は、波形を示し、電圧を縦軸に、時間を横軸にとっており、即ち、基本周波数の振幅又は強度が時間とともにどのように変化するかを示す。電圧波形は、波形42によって示される基本周波数(以後波形42の周波数をF1と呼ぶ)から成り、基本周波数の強度又は振幅は周波数F2で変調する。F1の変調の振幅は、波形44となる。即ち、波形44の周波数はF2である。
【0024】
図2は、変調44の振幅(F2)が正弦波(sine wave)形状であるときに、図1のシステムのトランスフォーマ36の一次側に印加する基本信号42(F1)を示す。F1の周波数は、F2の周波数よりも実質的に高い。F2は、図2に示すように、正弦波の形状とするとよく、あるいは図2Cに見られるような方形波(square wave)の形状とすることもできる。変調信号44(F2)は、加えて、台形状波(trapezoidal wave)、三角形状波(triangular-shaped wave)、指数形状波(exponential wave)、対数形状波(logarithmic wave)、半円形状波(semi-circular wave)、逆半円形状波(inverse semi-circular wave)、あるいはその他の対称的又は非対称的形状の波とすることができる。F2の形状を変化させることができるだけでなく、一部の信号形状に関して、波の傾きも変化させることもできる。例えば、三角形状波形は、同率で上昇および降下するような対照的なものとすることができ、もしくは、その逆の、急激に上昇しゆっくり降下するような非対称的とすることもできる。アプリケーションによっては、非対称的波形F2の使用により、格別な利点が得られる。
【0025】
図2、図2A、図2B、および図2Cでは、基本信号42(F1)は、正弦波の形状となっている。これは一例に過ぎない。多くのアプリケーションでは、F1は本質的に方形波である。
【0026】
図1からわかるように、容器10の電極28及び30に供給される電気エネルギーは、周波数F1で変化し、同時に周波数F2で強度変調される電界から構成される。図1の構造は、エマルジョンの凝集を促進するために二重周波数(duel frequency)方法を用いた、二重周波数静電凝集システム(duel frequency electrostatic coalescence system)として動作する。
【0027】
図1に戻ると、図2に示したタイプの信号は、電圧バス50上にDC電圧を生成するために、整流器48に供給される三相電圧入力46を利用することにより、発生することができる。変調器52が、DC電圧を、図2に見られるような変調信号44(F2)に変換し、これを導体54に供給する。次いで、チョッパ回路56が、電圧信号F2を、図2に見られるような高い基本電圧信号F1に切り刻む。信号F2によって強度変調を受けた基本電圧信号F1は、導体58上に現れ、トランスフォーマ36の一次側38に供給される。
【0028】
高電圧トランスフォーマ36の二次巻線40に現れる二重周波数波形は、多くの方法で発生することができる。前述のような図1の回路部分は、変調波形F2を最初に発生させ、これを細断して、高い周波数基本波形F1を生成するシステムとなっている。あるいは、AM無線送信機と類似した回路システムを採用することもでき、この場合、基本周波数F1を発生し、信号F2によって強度変調する。図2、図2A、図2B、および図2Cに例示した高電圧二重周波数信号を供給するために利用される特有の電気回路システムは、本開示の主題ではない。代わりに、本開示は、二重周波数静電電圧電荷をエマルジョンに印加して凝集を促進するコンセプトに関するものであり、このような二重周波数電圧信号を得る特定の回路は、本発明の本質ではない。何故なら、二重周波数波形を達成する回路は、電気設計業務の技術範囲内のことであるからである。
【0029】
回路要素48、52及び56は、例示に過ぎず、図2に表した信号を供給するために用いることができる回路の一例として、その基本を示す。
【0030】
本発明を実施する際、処理容器内にある電極に印加する電気エネルギー信号は、処理するエマルジョンの特性に応じて選択する。基本周波数F1がエマルジョンの油成分の導電率に比例する場合には、水含有油性エマルジョン(water-in-oil emulsion)の凝集が改善することが確認されており、導電率はpS/mで表されている。例えば、油成分の導電率が75,000pS/mであるエマルジョンにおいては、好ましい基本周波数は約1450Hzである。
【0031】
更に、変調周波数F2が、エマルジョンにおける水滴のサイズが減少するに連れて増加する場合に、凝集が改善する、即ち、エマルジョン中の小さな水滴は、エマルジョンにおける液滴が大きい場合と比べて、高い変調周波数の使用が必要となることが確認されている。例えば、エマルジョンにおける水滴の直径が平均500ミクロンである場合、変調周波数、即ち、F2が約6.4Hzのときに、システムはさらに効果的に凝集を促進する。
【0032】
図1の凝集容器の入口12に入るエマルジョンの特性が、油成分の導電率が75,000pS/mであり、水滴の平均直径が500ミクロンであると仮定すると、トランスフォーマの一次側38、又は、これに対応するトランスフォーマの二次側40の出力に現れる信号は、基本周波数が約1450Hzであり、変調周波数F2は約6.4Hzを持つようにするとよい。
【0033】
凝集を促進するためには、電界にはしきい値電圧、即ち、凝集を開始する最少電圧が必要となる。ここで用いる“しきい値電圧”という用語は、油及び水のエマルジョンからの分散水(dispersed water)の凝集を開始するための十分なエネルギーを有する最低電圧レベルを意味する。この電圧は、界面張力及び導電率を含む、いくつかの油の性質に依存する。理論的なしきい値電圧は、その電極及び容器の幾何学的形状に対する依存性のために、計算することができず、経験的に決定するのが最良であるというのが一般的である。
【0034】
しきい値電圧と対照的であるのが“臨界電圧”、即ち、凝集している水滴を分離させる最も高い電圧である。臨界電圧を超過すると、水滴の直径が縮小し、油からの水の分離が停止する。臨界電圧は、水滴のストークス径および界面張力から推定することができる。
【0035】
“最小電圧”は、しきい値電圧に関係があり、変調周波数F2において電極に印加される最低電圧60である。実際には、最小電圧がしきい値電圧又はその近傍である場合、最大液滴直径が得られ、その結果、最大分離率が最大となり、流出物における残留水含有量(residual water content)が最低となる。“最大電圧”は、臨界電圧に関係があり、変調周波数F2において電極に印加される最高電圧62である。実際には、短い期間だけ最大電圧が臨界電圧を超過することができる。臨界電圧の一時的な超過は、小さな分散水滴を付勢し、凝集及び分離プロセスに関与させることを誘導する。
【0036】
本発明を実施する際、最小電圧60は、しきい値電圧またはそれよりも多少低くするとよく、最大電圧62は臨界電圧又はそれよりも多少高くするとよい。
【0037】
更に、ここで用いる“基本周波数”F1という用語は、分散水滴の最大放電を防止するために必要な最小周波数を意味する。この周波数は、主に、油の導電率による影響を受ける。基本周波数F1を増加させる(60Hzよりも高く)ことは、広範囲の原油に対して静電凝集プロセスを最適化することができる。“変調周波数”F2は、最小電圧において形成する最大水滴の自然周波数である。この周波数は、液滴直径、界面張力、及び液滴質量に対し計算することができるが、実際には、プロセス容器が異なることで水力効率(hydraulic efficiencies)が変化するため、経験から決定するのが最良である。
【0038】
本発明の方法を実施する際、F1は約60から約2500Hzまでの範囲の周波数であり、F2は約0.1から約100Hzまでの範囲の周波数である。一般に、本発明のシステムは、従来からの静電凝集装置において用いられてきた交流電場よりも高い基本周波数F1を利用する。
【0039】
一般に、原油の生産において発生するタイプの水及び油のエマルジョンに対しては、基本周波数F1は、エマルジョンにおける油の導電率を参照して選択し、変調周波数F2は、水滴の質量及び/又はエマルジョンの界面張力を参照して選択し、最小電圧60は、エマルジョンの油成分の界面張力及び導電率に関係するしきい値電圧近傍またはそれよりも僅かだけ低くなるように、選択する。最小電圧60は、容器の幾何学的形状に従って多少変化することがある。
【0040】
分離が停止する臨界電圧は、上昇する油蒸気(oil steam)内に懸濁している水滴のストークス径を参照して決定される。最大電圧62は、前述のように、臨界電圧近傍とするとよい。
【0041】
“しきい値電圧”および“臨界電圧”は、ここで用いる場合、物理法則によって決定される電圧であり、処理するエマルジョンの特性、処理容器の幾何学的形状、及びエマルジョンの流量によって制御される。“最小電圧”及び“最大電圧”は、F2の振幅を定義する電圧を意味し、ここに開示する二重周波数プロセスを実行するためにシステムを設計する技術者が選択する電圧である。前述のように、F2を定義する最小電圧は、しきい値電圧に近いとよいが、必ずしも一致しなくてもよく、F2を定義する最大電圧は、エマルジョンの臨界電圧に近いとよいが、必ずしも一致しなくてもよい。前述のように、アプリケーションによっては、最小電圧は、しきい値電圧に比べて多少低いほうが優位であり、最大電圧は、臨界電圧に比べて多少大きくても良い。
【0042】
図3は、本発明の方法及びシステムの他の実施形態である。場合によっては、地下構造から地表に搬出される原油には、混入塩水(entrained brine)の形態の過剰な塩分を伴う。輸送および精製の効率上、塩分含有量を減少させることは有利である。図3のシステムのフロー配列は、原油のような、水含有油性エマルジョンの凝集及び分離に特に適用可能であり、さらに原油の脱塩にも適用可能である。図3のシステムにおいて、淡水は原油と混合されている。淡水はエマルジョン(原油)から塩分を吸収する。淡水は、淡水入口68を通じてエマルジョンに加えられ、淡水入口68はエマルジョン入口管70と結合し(merge)、容器エマルジョン入口12に達する。淡水入口68における水制御弁72を用いて、入口70を通過するエマルジョンに添加する淡水の量を制御する。エマルジョン入口12を通過して容器10に流入する総体積は、エマルジョン入口弁74によって制御される。
【0043】
容器10内部では、エマルジョンが受ける静電界によって凝集が促進され、水滴が大きくなって、エマルジョンから落ちて、油/水界面18を形成する領域に達する。水は管14を通じて引き出される。これによって、塩分を溶解する淡水入口68から加えられた淡水を含む混入水の大部分を有する油は、エマルジョンの油成分が油出口16から流出される前に、除外される。
【0044】
従って、図3の構成は、二重周波数静電凝集によって強化された分離装置、又は二重周波数凝集によって強化された脱塩装置のいずれかとして機能する。
【0045】
図3の構成では、図1と比べて、第1及び第2電極76及び78は、垂直に方位付けられていることが示され、これらの間に空間があり、ここを通過するようにエマルジョンが流れ、エマルジョンは容器内部の下部から上部油出口16に向かって移動する。二重周波数静電界は、電極76と78との間に形成される。電極76及び78の実際の物理的構造は、エマルジョンの実質的全てがこれらの間を通過するように、又は、電極に印加した電気信号により発生する静電界を少なくとも受けるようなものとなっている。
【0046】
トランスフォーマの二次側40の出力は、導体80によって第1整流器82に供給され、これと並列に、第2整流器84に供給される。導体86は、整流器82を電極78と直列に接続し、導体88は、整流器84を電極76に接続する。従って、電極76及び78の各々に印加される電圧信号は、半波整流信号(half wave rectified signal)となる。図2Aは、電極76に現れる電圧の波形を示し、図2Bは、電極78に現れる電圧の波形を示す。更に、トランスフォーマの二次側40の一方の脚部は、グランド電位にあり、容器10は、示されるようにグランド電位にあるのが通常であり、容器10内部に確立した静電界は、対向する電極76と78との間のみに存在するのではなく、電極と容器10の壁との間にも存在する。
【0047】
図3の分離システムを脱塩のために用いる場合、先に論じたように淡水を導入することとなるが、エマルジョン(更に具体的には、過剰な塩分を内部に有する原油)が淡水と完全に混合し、その後に希釈したエマルジョンが容器10に入ることが重要である。エマルジョン入口弁74は、容器10内への入力流量を規制するために用いられ、更に、希釈エマルジョンが容器10に入る前に、エマルジョンを淡水と混合する機能としても働く。従って、弁74は、その混合機能を得るために、5から15psiの圧力降下を生ずることが好ましい。
【0048】
図4を参照すると、本発明の実施形態が示されており、凝集及び分離を組み合わせた原油脱塩用に特に適用可能である。図4の実施形態では、複数の電極板76A及び76Bの対が示されている。板は、これらの間に垂直な通路ができるように垂直に方位付けられており、通路を通過するエマルジョンは静電界を受ける。参照番号76Aで特定される板は電極を構成し、その電極には、整流器84を直列に有する導体88が接続し、板76Aを負に荷電するようになっており、即ち、板76Aに印加される信号は、図2に示す電圧波形の下半分によって表される。板76Bには、整流器82と直列の導体86とが接続し、正に荷電され、即ち、これらの板に印加される電圧波形は、図2の図の上半分における波形によって表される。
【0049】
エマルジョン入口管12はスプレッダ90と接続しているので、エマルジョンは、油/水界面18よりも上に分散し、エマルジョンは、板76A及び76Bの対の間を通って上に移動する。淡水が淡水供給管68を通じて導入され、淡水供給管68は、管68A及び68Bに分岐する。分岐管68A及び68Bは、小径の開口(図示せず)を内部に有するので、淡水が板76Aおよび76Bよりも上に導入されるようになっている。淡水は、エマルジョンを通過して下方に移動し、一方エマルジョン自体は上方に移動するので、エマルジョン及び淡水は、板の間の領域において、互いに混じり合う。
【0050】
本発明の回路は、整流器48、変調器52、チョッパ56、及び高電圧トランスフォーマ36によって例示されており、基本信号周波数F1を供給する。基本信号周波数F1は、変調器52によって振幅が制御され、板76A及び76Bの対の間の電圧は変調周波数F2で変化して、所定の率で電圧を上昇させ、エマルジョンにおける水滴を粉砕し、淡水と粉砕した水滴とを最初に混合させることにより、エマルジョンにおける過剰な塩分を淡水によって吸収させる。強度は順次変化して、エマルジョン内にある水滴を凝集させ、これによって、水をエマルジョンから降下させ、油/水界面18よりも下である容器の下部に集め、最終的に水出口14を通じて容器から排水する。一方、エマルジョンの油含量(content)は、油出口16を通じて放出される。分離装置の通常動作においては、油含量は、分離容器10Bの上部付近にある収集システムによって取り出される。このように、図4のシステムは、独自の二重周波数電気信号を採用し、これを導体86及び88に供給し、混合装置、凝集装置、及び分離装置として同時に機能することにより、一層効果的にエマルジョンを脱塩しつつ、エマルジョンを油及び水の軽い成分と重い成分とに分離する。
【0051】
Floyd Prestridge et al.による"Electrostatic Mixer/Separator"と題する米国特許第4,606,801号は、図4と同様の分離システムを図示し記載するが、この特許は、二重周波数電圧の使用という独自の利点について教示していない。米国特許第4,606,801号は、本発明の原理を適用することができる、多重板混合/分離装置に関する良い背景情報を提供する。
【0052】
別の分離技術と合わせた静電分離の使用の良い例が、Kerry L. Subletteに発行され"Method and Apparatus for Separating Oilfield Emulsion"と題する米国特許第4,581,120号に開示されている。
【0053】
本発明は、エマルジョンが本質的に垂直に1つ以上の電界を通過して流れる容器に関するものとして主に図示し説明してきた。しかしながら、本文において論じているような二重周波数静電凝集を採用するシステム及び方法は、エマルジョンが水平に流れる容器でも同様に等しく用いることができる。電極を互いに平行に配置すれば、確立される電界に対してエマルジョンは水平に通過する、即ち、小孔(foraminous)垂直電極を採用することができる。"Energy-Saving Heavy Crude Oil Emulsion-Treating Apparatus"と題する米国特許第6,391,268号は、水平容器及び処理システムのタイプを示しており、本発明の原理をこれに応用することができる。
【0054】
前述のように、混入水を油及び水エマルジョンから分離する基本メカニズムは重力によるものである。凝集は、水滴を凝集させることによって、即ち、互いに結合させることによって、大きな水滴を形成し、これらが周囲の油の表面張力を克服し、これによって、重力が水滴をエマルジョンから沈静させることにより重力分離を促進する。重力は、地球の重力場の結果として自然に発生するが、円周方向の流れ(circumferential flow)に、即ち、円形路(circular path)に、更に具体的には、螺旋状通路(spiral path)にエマルジョンを流すことにより、重力を誘起させることもできる。この技術を遠心分離器(centrifugal separator)に採用する。本発明の二重周波数凝集システムは、遠心分離と合わせて効果的に採用することができる。
Gary W. Sams et al.に発行され"Method for Augmenting the Coalescence of Water in a Water-In-Oil Emulsion"と題する米国特許第5,643,431号は、図11に示すシステムに類似した、エマルジョンの分離を促進する遠心システムについて詳細に記載している。
【0055】
Gary W. Sams et al.に発行され"Method and Apparatus for Oil/Water Separation Using a Dual Electrode Centrifugal Coalescer"と題する米国特許第5,575,896号は、図12に示すタイプの凝集/分離容器の使用について、詳細な説明を提供する。
【0056】
単一周波数静電界(single frequency electrostatic field)を利用する従来の静電凝集プロセスの結果を以下の表に示し、二重周波数静電凝集プロセスを用いた結果と比較する。
【表2】
【0057】
最終結果として、即ち、流出物(effluent)における水が0.5%に対して0.2%というのは劇的には見えないかもしれないが、この差は、石油生産及び精製プロセスのオペレーションにおいては非常に有意である。何故なら、この低下により、パイプラインや生産及び精製装置における腐食が大幅に減少するからである。また、精製コストも低減する。
【0058】
前述のように、本発明の原理にしたがって凝集を促進するために処理容器の電極に印加する基本周波数F1は、pS/m単位で表すエマルジョンの導電率と関係がある。F1は、pS/m単位でのエマルジョンの導電率の約0.01から0.04倍の範囲であることが好ましい。図示の例では、原油の導電率レベルがpS/m単位で75,000であり、F1を1450Hzに選択した、つまり、比率は0.0193であり、即ち、好ましい範囲の中間である。変調周波数F2は、エマルジョンの界面張力に関係があり、約10から60の範囲の値を、ダイン/cm単位で表した場合の界面張力で割り算した値が好ましい。図示の例では、原油の界面張力は15ダイン/cmと測定され、選択した変調周波数F2は2.7Hzであり、40の定数が得られた。この場合も、好適な範囲のほぼ中間である。
【0059】
二重周波数システムの選択可変な(selectably variable)F1及びF2に加えて、エマルジョンの凝集を促進するための処理容器の設計者は、最小および最大変調電圧も決定しなければならない。前述のように、最大電圧は、エマルジョンの臨界電圧程度であることが好ましく、従って、計算した臨界電圧の約0.8倍から1.2倍の範囲とするとよい。臨界電圧は、エマルジョンが原油である場合には、ダイン/cm単位で表したエマルジョン界面張力を、ミクロン単位の水滴直径で割り算した値の平方根の約255,000倍であることが好ましい。前述の表に示した例において用いられる原油に対してこの関係を用いると、臨界電圧は38,400V RMSと計算され、F2の最大電圧としてこれを選択した。
【0060】
理論的には、エマルジョンのしきい値電圧を計算することは可能であるが、実際には、エマルジョンのサンプルから直接測定することが最良である。この理由のため、ユーザが原油の凝集を促進するための処理容器を調達したい場合、通常、設計者にエマルジョンのしきい値電圧を提供するか、又はサンプルを供給し、設計者が実験室においてしきい値電圧を決定する。しきい値電圧は、エマルジョン内の水滴が大きいサイズに凝集されてエマルジョンから沈殿することが起きる、十分なエネルギーを有する最小電圧である。ここに教示する二重周波数凝集方法では、変調周波数F2の最小電圧は、測定したしきい値電圧の約0.8倍から1.2倍の範囲とするとよい。教示する二重周波数方法では、最小電圧は、1サイクルのいずれの実質的な割合(substantial percentage)についても、しきい値電圧よりも低くなければならない。何故なら、凝集はこのような時間において本質的に停止することがあるからである。場合によっては、F2の最小値をしきい値電圧よりも少し低く設定することが望ましい場合もある。図示の構成では、処理する原油のしきい値電圧は17,000V RMSであり、これをF2の最小電圧として選択した。
【0061】
油/水エマルジョンにおける水の凝集を促進するためのAC静電界の使用に関する基本コンセプトは、両方ともPresstridgeに発行された米国特許第3,772,180号および第4,400,253号、ならびに、Ferrin, et al.に発行された第4,417,971号に記載されている。
【0062】
以下の更に別の米国特許は、ここで引用することにより、本願にも含まれるものとする。第6,010,634号、第4,606,801号、第4,702,815号、第4,581,120号、第5,643,431、第5,575,896号、第3,772,180号、第4,400,253号、および第4,417,971号。
【0063】
他の分離技術と組み合わせて図示及び説明したものを含む、本発明の二重周波数静電凝集方法及びシステムのアプリケーションの例示は、限定ではなく一例として与えられたに過ぎない。これは、本発明のシステム及び方法を含む二重周波数静電凝集のコンセプトは、エマルジョンの重い成分及び軽い成分の分離の効率及び有効性の改善を達成するために他の独自で有用な組み合わせにも採用できるからである。
【0064】
この論点について本発明の技術を例示し論じたのは、これが特に“二重周波数”静電凝集に関するからである。場合によっては、ちょうど2つ、又は、二重周波数よりも多くの周波数を用いた場合に、静電凝集の改善が促進されることも確認されている。この改良技術は、“多重周波数静電凝集”と名付けることもできる。もちろん、“二重周波数”は、静電凝集技術を記述するために用いる場合には、“多重周波数”の一例となる。
【0065】
更に、変調周波数によって強度を変調する基本周波数、即ち、振幅変調ではなく、周波数変調や、振幅変調および周波数変調の組み合わせというような、別の種類の変調も、静電凝集を強化するために採用できることも習得した。このような技術を“多重周波数”静電凝集と呼ぶことにする。
【0066】
印加電圧を変調すると、油含有水性エマルジョン(oil-in-water emulsion)を不安定にするのを助ける。エマルジョンにおいて水滴を適当に不安定にすることができないのは、一般に、脱水性能(dehydration performance)が低いことが原因である。有効とするには、電圧を低いしきい値電圧から高い臨界電圧まで変調しなければならない。電圧がしきい値レベルよりも低い場合、静電凝集は本質的に停止する。電圧が臨界電圧よりも高い場合、液滴が粉砕され、従ってエマルジョンから沈静するのに必要な十分な直径まで成長しない。
【0067】
典型的な多重周波数分離プロセスは、高い周波数(800〜1600Hz)の電源を、低い周波数(1〜20Hz)の変調と組み合わせて利用する。このプロセスは、三相電圧をDCバス電圧に変換することによって実施することができる。次いで、DC電圧を変調して低周波電圧を供給し、更にこれを細分して所望の高周波を得る。このプロセスによって発生する波形は、静電凝集を成功させるために、5つの特性上の特徴を有していなければならない。第1に、最小電圧はしきい値電圧又はその近傍でなければならない。第2に、最大電圧は臨界電圧近傍でなければならない。臨界電圧はエマルジョンから沈殿する液滴サイズに依存する。第3に、基本周波数F1を、原油の導電率から決定する。第4に、変調周波数F2は、必要な液滴サイズ、ならびに原油及び水の混合物、即ち、エマルジョンの界面張力に依存する。振幅変調した際、高周波波長を1対のダイオードによって整流すると、正及び負の波形が生ずる。図2Aおよび図2Bを参照。第5に、波形特性、即ち、変調の形状が重要である。この形状は、正弦波又は方形波、あるいは図5から図12に示すような種々のその他の波形とすることができる。加えて、図12に示すような波形の組み合わせも用いることができる。
【0068】
正及び負の波形は、平行板状に配置し各々逆の電気極性を有する隣接した電極に印加することができる。この配置を図3に示す。
【0069】
この“多重周波数”方法は、高周波静電界を確立し、電界強度及び低周波変調場を最大にして分散水の凝集を促進し、最大液滴サイズにすることによって、静電凝集を促進する。この技術は、商業的に成功しており、従来の非変調凝集方法に対して、30から100%凝集性能を改善する。
【0070】
図1から図4までを参照しながら論じた波形は、高周波波形の振幅を制御することによって発生する低周波波形から成る。この多重周波数方法は、低いしきい値電圧と高い臨界電圧との間の印加電圧の強度を変調し、多数の試験的な試作に利用されており、少なくとも1つの現場試作において成功している。多重周波数波形のアプリケーションは、同一の流出水含有量(effluent water content)を維持しつつ、既設の静電分離器の処理能力の2倍であるような性能結果を得ている。
【0071】
多重周波数静電凝集装置が最大効率で作動しているとき、分散水は容易に凝集して非常に大きな液滴となり、この液滴は、臨界レベルよりも高い過大電圧で容易に粉砕することができる。これらの大きな液滴を維持するためには、臨界電圧を下げなければならない。図13を参照。臨界電圧の理論的限界は、しきい値電圧であるが、実用上の限界は、しきい値よりも約2kV上であると考えられる。数回の性能検査において、最良の結果が得られたのは、臨界電圧を、しきい値電圧よりも数千ボルト高く設定したときであった。
【0072】
多重周波数プロセスによって生成した大きな水滴のために、液滴の粉砕を防止するためには、最適な変調周波数を低下させなければならないことも観察されている。この観察は、液滴サイズ及び界面張力に基づく液滴の自然周波数とも一致する。図14を参照。変調周波数の理論的限界は、液滴の成長が最大のときには0である。最大の液滴凝集のため、そして応用物理にしたがうと、理想的な変調周波数は、計算した最大水滴の自然周波数未満でなければならない。図15に示すように、加えられる周波数Faが液滴の自然周波数Fnと一致する場合、液滴は過度に伸張し、粉砕される。参照する図15は、加える周波数が液滴の自然周波数に等しいときに、最大の液滴伸張が生ずることを示す。経験から決定される実用上の限界は、約0.1Hzであると考えられる。
【0073】
変調周波数は、液滴サイズ及び界面張力に基づいて選択するが、原油の導電率は、水滴の静電挙動(electrostatic behavior)を制御する。独自の波形を生成するために対称的な波形を歪ませて、2つの追加の周波数が得られる。図6から図11は、歪ませた波形を示す。原油では、導電率が低いと変調波形が歪み、図6、図8、及び図10に示すように、そして図8において最も分かりやすく示すように、電圧が急速に上昇し、次いでゆっくりとした電圧の低下が生じ、静電エネルギーを最大に高める。導電率が高い原油では、図7及び図11に示すように、電圧はゆっくりと上昇して液滴の粉砕を防止し、次いで急速な電圧の低下が生ずる。検査によって確認されたのは、図7及び図11に示すような高周波上昇電圧に最も良く応答する原油があり、他方図6、図8、及び図10に示すような高周波低下電圧を必要とする原油もある。
【0074】
多重周波数方法を原油における分散水の凝集に適用することによって、しきい値電圧と臨界電圧との間で電圧を変調すると、著しい液滴成長を促進することが実証されている。しかしながら、この凝集が達成される場合、液滴サイズを制御するために最大電圧を低下させなければならないことも観察されている。また、変調波形において正しい荷電周波数と別個の正しい凝集周波数とを設定することは、凝集プロセスには非常に有益であることも観察されている。図14及び図15に示すように、加える周波数と液滴の成長との間には、強い相関がある。液滴の凝集を最適化するためには、静電界強度の変調を最小に抑えなければならないことから、静電界周波数を変調することにより、さらなる液滴成長を達成できることが観察されている。図5及び図12に示す周波数変調波形の使用等によって、広いスペクトルにわたって周波数を掃引する(sweeping)ことにより、最大の液滴母集団(population)の顕著な不安定化が促進する。最小の分散水滴は、最高周波数において不安定となる。この周波数が減衰するに連れて、大きな液滴が不安定になり初め、周波数が最低レベルとなるまで凝集によりさらに大きな液滴が形成される。この“周波数変調”のコンセプトを図5及び図12に示す。
【0075】
図5及び図12に示すような、広いスペクトルにわたって周波数を掃引することは、しきい値と臨界レベルとの間で電圧強度を変調することに相当する。しかしながら、既に説明したように、液滴の母集団が大きな液滴サイズに移っていくと、しきい値電圧及び臨界電圧は互いに接近し合い、電圧レベルが一致すると破壊に至る。
【0076】
理論的には、全てのサイズの水滴が存在できるのは、しきい値電圧において変調周波数が0Hzのときのみである。変調周波数が上昇するに連れて、高調波破壊(harmonic destruction)により、大きな水滴が粉砕し始める。一方、一旦これらの液滴が不安定になると、これらは容易に凝集して大きな液滴となり、エマルジョンから分離する。周波数をほとんど0Hzからほとんど50Hzまで掃引すると、分散水滴の大きな母集団は不安定になる。図14を参照。外部水液滴膜(exterior water droplet film)を破壊すると、分散水滴が不安定となり、電圧変調のみで可能な液滴の成長(凝集)よりも大きく成長することが可能となる。
【0077】
周波数の変調を電圧の変調と組み合わせることにより、いずれかの変調のタイプを単独で用いる場合よりも、大きな水滴の不安定化及び凝集を達成することができる。上位(upper)及び下位(lower)周波数間の変動は、第3“周期”周波数において発生し、液滴の凝集を増加することができる。図12を参照。
【0078】
基本周波数は、効果的な凝集に必要であれば、0および2500Hzの間で変化させることができる。最適な範囲は100および1600Hzの間である。基本周波数は、電圧振幅と同時に変化させることができる。図12を参照。また、液滴の成長を促進する更なるツールを設けるために、基本周波数を0から180度までシフトすることもできる。変調周波数は、0Hzを含むいずれの周波数においても一定に保持することができる。変調周波数は、常に基本周波数F1未満でなければならないが、0Hzから100Hzまで変化することができる。最適変調周波数は0.1および60Hzの間である。
【0079】
図5から図11に示すように、変調波形を歪ませる場合、変調周波数は、高い及び低い周波数の組み合わせから成る平均である。高周波数は、波形の先端又は後端とするとよい。例えば、電圧が30Hzの周波数において徐々に上昇し、2Hzの周波数で徐々に低下する場合、平均周波数は3.75Hzとなる。振幅変調周波数が0Hzで、印加電圧がしきい値レベル近傍の場合、基本周波数は、図5の波形を用いることによるというように、液滴の凝集を促進するために、広い範囲にわたって変調した周波数とすることができる。0Hzよりも大きな振幅変調周波数においては、基本周波数は、低い基本周波数から更に高い基本周波数までの広い範囲にわたって変調した周波数とすることもできる。例えば、基本周波数は1600Hzと500Hzとの間で変更することができ、発振周波数は、変調周波数と同等とすることもできる。
【0080】
本発明は、熟練した技術者には周知であり、周波数変調比送信(frequency modulated ratio transmission)及び受信(reception)の実施において例示されている周波数変調回路の使用により、図5及び図12の波形において図示したように、周波数変調を含むように実施することができる。周波数変調は、図1及び図3の変調器52及びチョッパ56を、周波数変調装置と交換することによって行うことができる。これらの図における変調器52は、周波数変調を行う能力(capacity)を含む。
【0081】
特許請求の範囲および明細書は、提示した発明について記載したものであり、特許請求の範囲において用いた用語は、その意味を明細書におけるこのような用語の使用から引き出す。従来技術において用いられている同じ用語は、この中で具体的に用いている場合よりも意味が広い。従来技術において用いられているこのような用語の広い定義と、この中における用語の更に具体的な使用との間に疑問がある場合は、常に、更に具体的な意味を想定している。
【0082】
本発明は、ここに図示し説明した回路、波形、及びグラフに限定されるのではなく、各要素又はステップに与えられる均等の最大範囲を含む、ここに添付した特許請求の範囲によってのみ限定されるものとする。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法であって、
処理容器中において、離間した複数の電極の間に流れを導き、
少なくとも1つの基準周波数F1のAC電圧を、電圧源から少なくとも1つの前記電極に供給し、前記容器内に電界を形成して、前記流れを前記電界に通過させ、
前記流れが通過する電界を形成し、
変調周波数F2において、前記AC電圧の前記周波数F1を変調し、
前記容器の上部から分離されたガス状成分と、前記容器の下部から重い液体成分と、前記容器の中間部分から軽い液体成分とを抜き取る、
ことを備える方法。
【請求項2】
前記基準周波数F1と前記変調周波数F2とは、前記重い液体成分と前記軽い液体成分の分離に関する性質に従って、それぞれ選択されることを特徴とする、請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項3】
前記変調周波数F2は、選択されたしきい値周波数から変動することを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項4】
前記複数の電極の1つは、グランド電位であることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項5】
前記AC電圧は、正弦波、方形波、三角形状波、台形形状波、指数形状波、対数形状波、半円形状波、及び逆半円形状波、ならびにその組み合わせからなる群から選択した形状を有することを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項6】
前記基準周波数F1は、前記流れの導電率によって影響を受けることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項7】
前記変調周波数F2は、液滴の質量、及び/又は、液体成分の界面張力によって本質的に決定されることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項8】
前記変調周波数F2は、ほとんど0から約60Hzまでの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項9】
前記基本周波数F1は、約100から1600Hzの好ましい範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項10】
前記基本周波数F1は、強度及び周波数を同時に変調したものであることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項11】
各サイクルの前半部において前記AC電圧の強度が遅い指数関数的速度で増加し、且つ、各サイクルの後半部において前記AC電圧の強度が速い指数関数的速度で減少するような波形で、前記AC電圧を周期的に振幅変調させることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項12】
各サイクルの前半部において前記AC電圧の強度が高い指数関数的速度で増加し、且つ、各サイクルの後半部において前記AC電圧の強度が低い指数関数的速度で減少するような波形で、前記AC電圧を周期的に振幅変調させることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項13】
各サイクルの前半部において前記AC電圧の強度が指数関数的速度で増加し、且つ、各サイクルの後半部において前記AC電圧の強度が指数関数的速度で減少するような波形で、前記AC電圧を周期的に振幅変調させることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項14】
前記AC電圧は実質的に一定の強度に維持され、且つ、前記AC電圧の周波数F1は高い周波数と低い周波数との間で周期的に変化し、且つ、前記高い周波数と前記低い周波数との変化は選択した周波数F2において起きる、ことを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項15】
各サイクルの前半部において前記AC電圧の強度が高い線形速度で増加し、且つ、各サイクルの後半部において前記AC電圧の強度が低い線形速度で減少するような波形で、前記AC電圧を周期的に振幅変調させることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項16】
各サイクルの前半部において前記AC電圧の強度が低い線形速度で増加し、且つ、各サイクルの後半部において前記AC電圧の強度が高い線形速度で減少するような波形で、前記AC電圧を周期的に振幅変調させることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項17】
各サイクルの前半部において前記AC電圧の強度が実質的に線形増加し、且つ、各サイクルの後半部において前記AC電圧の強度が実質的に線形減少するような波形で、前記AC電圧を周期的に振幅変調させることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項18】
前記AC電圧の周波数は高い強度と低い強度との間で周期的に強度変化し、前記AC電圧の周波数は前記高い周波数と前記低い周波数との間で周期的に変化し、且つ、前記高い周波数と前記低い周波数との変化は選択した周波数F2において起きる、ことを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項19】
前記AC電圧は高い強度と低い強度との間で周期的に強度変化し、同時に、前記AC電圧の周波数は高い周波数と低い周波数との間で周期的に変化し、且つ、前記周波数の変化F2は前記AC電圧の周期的強度変化F1と一致して周期的に起きる、ことを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項20】
ガス状成分、水性成分、及び油性成分を有する塩を含む炭化水素の流れの脱塩方法であって、
分離容器へ前記塩を含む炭化水素の流れを流し、
前記容器中に、間隙を介して実質的に平行な複数の電極を設け、
選択された周波数を持つAC電圧源を設け、
前記流れの特性に応じて、前記AC電圧源から、基本周波数F1のAC電圧を用いて、
前記電極に周波数F1の前記AC電圧を印加して、隣り合う前記電極の間の電界を形成し、
変調周波数F2において、前記周波数F1を周期的に変調し、
前記隣り合う電極の間に、前記塩を含む炭化水素の流れを導き、
前記塩を含む炭化水素の流れとは逆向きの流れで、前記容器の前記隣り合う電極の間に淡水を流し、
前記容器の上部から分離されたガス状成分を抜き取り、
前記容器の下部から水性成分を抜き取り、
前記容器の中間部分から塩が除去された油性成分を抜き取ることを備える方法。
【請求項1】
ガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法であって、
処理容器中において、離間した複数の電極の間に流れを導き、
少なくとも1つの基準周波数F1のAC電圧を、電圧源から少なくとも1つの前記電極に供給し、前記容器内に電界を形成して、前記流れを前記電界に通過させ、
前記流れが通過する電界を形成し、
変調周波数F2において、前記AC電圧の前記周波数F1を変調し、
前記容器の上部から分離されたガス状成分と、前記容器の下部から重い液体成分と、前記容器の中間部分から軽い液体成分とを抜き取る、
ことを備える方法。
【請求項2】
前記基準周波数F1と前記変調周波数F2とは、前記重い液体成分と前記軽い液体成分の分離に関する性質に従って、それぞれ選択されることを特徴とする、請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項3】
前記変調周波数F2は、選択されたしきい値周波数から変動することを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項4】
前記複数の電極の1つは、グランド電位であることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項5】
前記AC電圧は、正弦波、方形波、三角形状波、台形形状波、指数形状波、対数形状波、半円形状波、及び逆半円形状波、ならびにその組み合わせからなる群から選択した形状を有することを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項6】
前記基準周波数F1は、前記流れの導電率によって影響を受けることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項7】
前記変調周波数F2は、液滴の質量、及び/又は、液体成分の界面張力によって本質的に決定されることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項8】
前記変調周波数F2は、ほとんど0から約60Hzまでの範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項9】
前記基本周波数F1は、約100から1600Hzの好ましい範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項10】
前記基本周波数F1は、強度及び周波数を同時に変調したものであることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項11】
各サイクルの前半部において前記AC電圧の強度が遅い指数関数的速度で増加し、且つ、各サイクルの後半部において前記AC電圧の強度が速い指数関数的速度で減少するような波形で、前記AC電圧を周期的に振幅変調させることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項12】
各サイクルの前半部において前記AC電圧の強度が高い指数関数的速度で増加し、且つ、各サイクルの後半部において前記AC電圧の強度が低い指数関数的速度で減少するような波形で、前記AC電圧を周期的に振幅変調させることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項13】
各サイクルの前半部において前記AC電圧の強度が指数関数的速度で増加し、且つ、各サイクルの後半部において前記AC電圧の強度が指数関数的速度で減少するような波形で、前記AC電圧を周期的に振幅変調させることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項14】
前記AC電圧は実質的に一定の強度に維持され、且つ、前記AC電圧の周波数F1は高い周波数と低い周波数との間で周期的に変化し、且つ、前記高い周波数と前記低い周波数との変化は選択した周波数F2において起きる、ことを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項15】
各サイクルの前半部において前記AC電圧の強度が高い線形速度で増加し、且つ、各サイクルの後半部において前記AC電圧の強度が低い線形速度で減少するような波形で、前記AC電圧を周期的に振幅変調させることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項16】
各サイクルの前半部において前記AC電圧の強度が低い線形速度で増加し、且つ、各サイクルの後半部において前記AC電圧の強度が高い線形速度で減少するような波形で、前記AC電圧を周期的に振幅変調させることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項17】
各サイクルの前半部において前記AC電圧の強度が実質的に線形増加し、且つ、各サイクルの後半部において前記AC電圧の強度が実質的に線形減少するような波形で、前記AC電圧を周期的に振幅変調させることを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項18】
前記AC電圧の周波数は高い強度と低い強度との間で周期的に強度変化し、前記AC電圧の周波数は前記高い周波数と前記低い周波数との間で周期的に変化し、且つ、前記高い周波数と前記低い周波数との変化は選択した周波数F2において起きる、ことを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項19】
前記AC電圧は高い強度と低い強度との間で周期的に強度変化し、同時に、前記AC電圧の周波数は高い周波数と低い周波数との間で周期的に変化し、且つ、前記周波数の変化F2は前記AC電圧の周期的強度変化F1と一致して周期的に起きる、ことを特徴とする請求項1に記載のガス状成分、重い液体成分、及び軽い液体成分の流れを分離する方法。
【請求項20】
ガス状成分、水性成分、及び油性成分を有する塩を含む炭化水素の流れの脱塩方法であって、
分離容器へ前記塩を含む炭化水素の流れを流し、
前記容器中に、間隙を介して実質的に平行な複数の電極を設け、
選択された周波数を持つAC電圧源を設け、
前記流れの特性に応じて、前記AC電圧源から、基本周波数F1のAC電圧を用いて、
前記電極に周波数F1の前記AC電圧を印加して、隣り合う前記電極の間の電界を形成し、
変調周波数F2において、前記周波数F1を周期的に変調し、
前記隣り合う電極の間に、前記塩を含む炭化水素の流れを導き、
前記塩を含む炭化水素の流れとは逆向きの流れで、前記容器の前記隣り合う電極の間に淡水を流し、
前記容器の上部から分離されたガス状成分を抜き取り、
前記容器の下部から水性成分を抜き取り、
前記容器の中間部分から塩が除去された油性成分を抜き取ることを備える方法。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2011−517425(P2011−517425A)
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−550794(P2010−550794)
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/036475
【国際公開番号】WO2009/114449
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(505047706)ナショナル・タンク・カンパニー (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月9日(2009.3.9)
【国際出願番号】PCT/US2009/036475
【国際公開番号】WO2009/114449
【国際公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【出願人】(505047706)ナショナル・タンク・カンパニー (7)
【Fターム(参考)】
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