説明

流体の流れに添加剤を分散するための装置

流体の流れに添加剤を分散するための装置が開示される。また、流体取り扱い装置と、流体の流れに添加剤を分散するように構成される添加剤ポッドと、が開示される。いくつかの実施形態では、添加剤ポッドは、流体取り扱い装置の出口部分に容易に設置され、かつ特別なトレーニング又は工具の使用を要求しない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は流体を取り扱うシステムに関する。より具体的には、本開示は、流体を取り扱うシステムの流体の流れに添加剤を分散するための方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
工業用途及び住宅用途の両方において多様な添加剤を流体の流れに分散することは既知である。そのような用途の一例は、飲用水分配システムの維持における用途である。そのようなシステムでは、不要な物質が水道設備内、特に水フィルタのような何らかの調整デバイスの下流にある水道設備内に形成される可能性がある。例えば水フィルタは、上流の水道設備を源とする不要な物質のほとんど又は全てを取り除くことができるが、そのようなフィルタの水道設備の下流は比較的保護されないままである場合がある。そのような不要な物質は、消費されるために下流水道設備を通って流れる水に、感知され得る臭い又は味を付与する場合がある。
【0003】
そのような不要な物質を削減又は除去するための努力として、保守作業員は定期的に、多くの場合はフィルタ交換時に、そのような下流水道設備の接続を外して、消毒剤のような添加剤を含有する流体をそのような影響を受けた流体の通路にフラッシュする必要がある場合がある。このような作業は時間がかかる場合があり、また、保守作業員が多数の工具を運搬及び使用することを要求する場合がある。例えば、作業員は、バケツから消毒液を下流水道設備にポンプで注入して通すために流体のバケツ及びポンプを必要とし、それらを現場の電源に接続しなくてはならない場合がある。
【0004】
工業用流体取り扱いシステムを含むその他のシステムは、例えば、香味剤又は他の水質改善用薬品及び工業処理用薬品を含む、消毒剤以外の添加剤の連続導入による便益を受けることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
添加剤をそのような工業用及び住宅用の流体取り扱いシステムに導入するための効率的な方法を提供する必要は引き続きある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、概して、添加剤を流体の流れに導入するための装置、装置を備えるシステム、及びシステムの使用方法に関する。より具体的には、本開示は、流体取り扱い装置の出口部分に配置されるように構成される、かつ少なくとも1つの添加剤を流体の流れに分散するように更に構成される、添加剤ポッドに関する。本開示の装置は、例えば消毒剤を流体の流れ及びそれに付随する下流水道設備に導入するために必要な時間及び設備の量を削減することが可能である。
【0007】
本出願は流体の流れに添加剤を導入するための装置を開示するものであり、装置は、少なくとも1つの添加剤が配置される添加剤保有チャンバを画定する少なくとも1つの側壁を有する添加剤ポッドを備える。添加剤保有チャンバは、添加剤を流体の流れに分散するように構成され、かつ流体取り扱い装置の出口部分に配置されるように構成される。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの側壁の少なくとも一部は多孔質である。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの側壁は、閉じた円筒壁を有する実質的に円筒形の管と、少なくとも部分的に開いた第1及び第2の軸方向の端とを備える。少なくとも一実施形態では、添加剤ポッドは、流体取り扱い装置の出口部分の少なくとも1つの受け取り部材と協調的に係合するように構成された少なくとも1つの係合ツメを更に備える。いくつかの実施形態では、流体取り扱い装置はフィルタカートリッジを備える場合がある。
【0008】
少なくとも1つの添加剤は、例えば丸薬、錠剤、又はカプセル形態など多様な形態で提供され得る。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの添加剤は、それ自体を流体の流れに分散する前に添加剤保有チャンバに添加剤を保持するように構成され得る。少なくとも1つの添加剤は、消毒剤又は他の物質、例えば香味剤を含む場合がある。消毒剤を使用する場合、そのような消毒剤は、例えば、塩素、二酸化塩素、ヨウ素、次亜ヨウ素酸、臭素、次亜臭素酸、次亜塩素酸、フッ素、アルコール、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択してよい。その他の可能な消毒剤のリスト及びそれらの詳細は例えばWO 01/60750 A2号(PCT/US01/05002号)に見出すことができ、その開示は、本開示と矛盾しない範囲で参照により本明細書に組み込まれる。いくつかの実施形態では、消毒剤は比較的揮発性であり、周囲条件に曝露されたときに短い貯蔵寿命を有する。非消毒剤を使用する場合、そのような物質は、例えば、香味剤、ビタミン、染料、スケール抑制剤、処理用薬品、及びこれらの組み合わせからなる群から選択してよい。
【0009】
いくつかの実施形態では、装置は、流体の流れに添加剤を分散する前に添加剤保有チャンバ内に添加剤を保持するように構成される少なくとも1つの添加剤保持部材を更に備える。少なくとも1つの添加剤保持部材を使用する場合、流体の流れにそれを通過させるように少なくとも1つの添加剤保持部材を構成することができる。
【0010】
一実施形態では、装置は、分散されていない添加剤の一部が添加剤保有チャンバから抜け出ることを防止するように構成される下流トラップ部材を更に備える。
【0011】
適宜、装置は囲まれた体積を画定する少なくとも1つの側壁を備える保管容器を更に備えることができ、囲まれた体積内に添加剤ポッドを配置することができる。いくつかの実施形態では、添加剤ポッドは囲まれた体積内で気密封止される(hermetically sealed)。
【0012】
いくつかの実施形態では、添加剤ポッドは、流体取り扱い装置の出口部分とのシールを形成するように構成された少なくとも1つの上流密封部材と、下流物品とのシールを形成するように構成された少なくとも1つの下流密封部材とを更に備える。与えられた用途の要求に応じて1つ又は両方の密封部材を省略してよい。追加的な密封部材を、与えられた用途に応じて適宜更に提供してよい。
【0013】
本出願は添加剤を流体の流れに導入するためのシステムを更に開示する。そのようなシステムは、流体取り扱い装置及び添加剤ポッドを備えることができる。いくつかの実施形態では、添加剤ポッドは保管容器の囲まれた体積内に配置される。他の実施形態では、添加剤ポッド及び流体取り扱い装置の両方が保管デバイスの囲まれた体積内に配置される。囲まれた体積は適宜、気密に密封される。
【0014】
本出願は、添加剤を流体の流れに導入するための装置の使用方法を更に開示する。いくつかの実施形態では、これらの方法は、工具を使用せずに流体取り扱い装置の出口部分に添加剤ポッドを設置する工程を含む。流体の流れ及び付随する下流水道設備の消毒方法が更に開示される。本開示のこれらの態様及び他の態様は、以下の「発明を実施するための形態」から明らかとなるだろう。しかしながら、上記要約は、所有権が主張される主題への限定として決して解釈されるべきでなく、主題は、手続処理中に補正され得る添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
【0015】
本開示において、
「錠剤の形態」とは、例えば、固体又は液体の物質の用量をコンパクトかつ実質的に固体のパッケージにて運ぶために典型的に使用される任意の形態である。例えば、医薬品分野で使用され得るような錠剤、ペレット、又はカプセルなどである。
【0016】
「下流物品」とは、下流方向に機能的に配置される任意の好適な物品又は機械を指す。下流物品の例としては、パイプ又は他の流体導管、ポンプ、弁、多岐管、リザーバ、スピガット、ノズル、及び同様のものが挙げられるが、これらに限定されない。
【0017】
「出口部分」とは、抜け出ること又は放出を可能にする開口部(又は複数の開口部)であり、典型的には、例えばフィルタカートリッジの入り口部分又は内部容積の下流方向に機能的に配置される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
本明細書全体にわたって、類似の参照数字が類似の要素を指す添付図面が参照される。
【図1】添加剤を流体の流れに導入するための装置の代表的な実施形態を示す図。
【図1a】添加剤を流体の流れに導入するための装置の代表的な実施形態を示す図。
【図1b】保管容器の囲まれた容積内に装置が配置されている、添加剤を流体の流れに導入するための装置の一実施形態を示す図。
【図2】流体の流れに添加剤を導入するための装置の一実施形態を示す図。
【図3】流体取り扱い装置の出口部分に配置され得る、流体の流れに添加剤を導入するための装置の分解図。
【図4】流体取り扱い装置の出口部分に配置され得る、流体の流れに添加剤を導入するための装置の分解図。
【図5】流体取り扱い装置の出口部分に配置された、流体ストリームに添加剤を導入するための装置の断面図。
【図6】出口部分から添加剤ポッドを解除することを可能にするために添加剤ポッドと協調するように構成された少なくとも1つの解放部材を備える流体取り扱い装置の出口部分を示す図。
【図6A】出口部分から添加剤ポッドを解除することを可能にするために添加剤ポッドと協調するように構成された少なくとも1つの解放部材を備える流体取り扱い装置の出口部分を示す図。
【図7】流体取り扱い装置の出口部分に配置され得る、流体の流れに添加剤を導入するための装置の分解図。
【図8】流体取り扱い装置の出口部分に配置され得る、流体の流れに添加剤を導入するための装置の分解図。
【図9】このシステムは、保管容器の囲まれた容積内に配置された流体取り扱い装置と、添加剤ポッドとを備える、添加剤を流体の流れに導入するためのシステムの一実施例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1及び1aは、添加剤120を流体の流れに導入するための装置の代表的な実施形態の断面図を示す。一実施形態では、添加剤ポッド100は、添加剤保有チャンバ110を画定する少なくとも1つの側壁と、添加剤保有チャンバ110内に配置された少なくとも1つの添加剤120とを備える。
【0020】
少なくとも1つの添加剤は、例えば丸薬、錠剤、又はカプセル形態など多様な形態で提供することができる。そのような形態では、添加剤を固体又は流体の状態で、例えば溶解性ケーシング内に封入された流体として提供することができる。流体中の固体懸濁液もまた想定される。
【0021】
一実施形態では、添加剤は消毒液を含む。いくつかの実施形態では、添加剤は例えば香味剤を含む。添加剤は染料もまた含んでよい。消毒剤として提供されるとき、添加剤は、例えば、流体の流れ及び付随する下流水道設備において微生物を実質的に削減するために好適な任意の消毒剤を含んでよい。
【0022】
いくつかの実施形態では、添加剤ポッドは、分散されていない添加剤の一部が添加剤保有チャンバから抜け出ることを防止するように構成される下流トラップ部材112を更に備える。添加剤120が流体の流れに溶解及び分散するいくつかの実施形態では、添加剤は、外れて下流水道設備に移動された場合に望ましくない状態を引き起こし得る比較的大きい片に分解される場合があると想定される。下流トラップ部材112を使用すると、下流トラップ部材112はそのような外れた片が添加剤保有チャンバ110から抜け出ることを防ぎ、それによって、添加剤ポッドの内部で十分な添加剤の分解が生じることを可能にすることができる。図1aの実施形態に示されるように、下流トラップ部材は、添加剤保有チャンバの下流端の開口部を横切る少なくとも1つの横材を備える場合があり、流体が通過できるように開口部を少なくとも部分的に開いて残す。
【0023】
いくつかの実施形態では、図1に示されるように、添加剤ポッド100は、流体の流れに添加剤120を分散する前に添加剤保有チャンバ内に添加剤を保持するように構成される少なくとも1つの添加剤保持部材160を更に備える。使用される場合、添加剤保持部材160は、少なくとも部分的に多孔質であり得る表面を備え、流体がそこを通ることを可能にする。いくつかの実施形態では、添加剤保持部材はツバのような保持構造物を備え、添加剤保有チャンバ内の対応する構造物の内部にそれが捉えられることを可能にする。図1に示されるように、それぞれの添加剤保持部材は、添加剤保有チャンバの少なくとも1つの側壁にある対応する溝に嵌るように構成された比較的可撓性の、周囲方向に配置されたツバを備えることができる。添加剤保持部材を使用する場合は、添加剤保持部材を縦一列に、それぞれ上流及び下流の位置に並べて、少なくとも1つの添加剤を添加剤保有チャンバの2つの端からの定位置に保持することができる。
【0024】
一実施形態では、図1aに示されるように、添加剤120は、それ自体を添加剤保有チャンバ内に保持するように構成される。代表的な自己保持式機能は、添加剤の周辺に沿った凹みと、それと協調する、添加剤保有チャンバの側壁に沿った隆起した凸部との組み合わせを備えることができる。あるいは、添加剤120が凸部を備え、協調する凹みを添加剤保有チャンバが備えてもよい。代替方法として、摩擦嵌め合いによって自己保持を実現してもよく、この場合、添加剤は添加剤保有チャンバの少なくとも1つの側壁と緊密に接触する関係で適応するように構成される。
【0025】
図1bは、添加剤を流体の流れに導入するための装置の一実施形態を示すものであり、保管容器の囲まれた容積の内部に装置が配置されている。保管容器は、添加剤が消毒剤又は他の物質のどちらを含んでいても使用してよい。多くの場合、消毒剤は高揮発性であり、周囲空気に曝されたときに極めて短い貯蔵寿命を有する。揮発性の消毒剤が使用される実施形態では、添加剤ポッド100を、図1bに示されるように、気密封止し得る囲まれた容積192を有する保管容器190にて出荷及び保管することができる。したがって、保守作業員は使用の直前に添加剤ポッド100を保管容器190から取り出すことができ、それによって周囲条件への消毒剤の曝露を最低限にすることができる。いくつかの実施形態では、揮発性の消毒剤を含む添加剤ポッドを環境制御された条件下で製造し、そのような制御された条件を去る前に保管容器内に迅速に密封できるものと想定される。そのような制御された条件としては、例えば、低湿度又は真空を挙げることができる。保管容器の例としては、密封されたプラスチック袋、再密封可能なプラスチック袋、金属フォイル袋、プラスチックキャニスター(例えば、フィルムキャニスター及び同様のもの)、及び選択された用途に好適な任意の材料で作製された同様の容器が挙げられる。そのような揮発性が懸念とならない用途では、保管容器190は気密封止されていない囲まれた容積を含む場合があり、例えば、穿孔を備える場合がある。いくつかの実施形態では、添加剤ポッド100を保管容器に配置する必要がない。
【0026】
図2は、流体の流れに添加剤220を導入するための装置の一実施形態を示し、添加剤は、添加剤ポッド200の添加剤保有チャンバ210に配置されており、添加剤ポッドは、少なくとも1つの係合ツメ250と、上流及び下流のそれぞれの密封部材230、232を更に備える。少なくとも1つの係合ツメの詳細については、図5及び6を参照して下記に詳述する。上流及び下流の密封部材については、図4を参照して下記に詳述する。いくつかの実施形態では、装置は、流体の流れに添加剤220を分散する前に添加剤保有チャンバ内に添加剤を保持するように構成される少なくとも1つの添加剤保持部材260を備える。
【0027】
図3及び4はそれぞれ、流体取り扱い装置の出口部分に配置され得る、流体の流れに添加剤を導入するための装置の分解図である。図3に示されるようないくつかの実施形態では、添加剤ポッド300は上流又は下流の密封部材を備えなくてよい。そのような実施形態では、添加剤ポッド300を、任意の必要な密封手段を既に備える流体取り扱い装置370の出口部分380に落下して入れるように構成することができる。いくつかの実施形態では、流体取り扱い装置は、ハウジング374、474を有するフィルタカートリッジ372、472を備える。図4に示されるような他の実施形態では、添加剤ポッド400は係合ツメ450と、上流及び下流のそれぞれの密封部材430、432とを備える場合がある。そのような実施形態では、添加剤ポッド400を流体取り扱い装置470の出口部分480に設置するように構成することができ、係合ツメ450は出口部分480の少なくとも1つの受け取り部材と係合し、上流密封部材430は出口部分480の内壁と密封係合する。使用される場合、下流密封部材432は、与えられた用途に適切であり得るように任意の対応する下流密封表面と密封係合するように構成される。流体取り扱い装置470が例えばフィルタカートリッジ472を備える場合、下流密封部材432は適合性のある多岐管アセンブリ上の密封表面と密封係合することができる。上流及び下流の密封部材430、432が使用される場合、それらは例えばOリング、ガスケット、又はオーバーモールドされたシールを備える場合があるものと想定される。更に、複数の密封部材が使用される場合、その用途に適切である限りそのような密封部材は同じ材料又は異なる材料を含んでよく、かつ同じサイズでも異なるサイズでもよいものと想定される。
【0028】
図5は、流体取り扱い装置570の出口部分に配置された、流体ストームに添加剤を導入するための装置の断面図である。図の実施形態では、流体取り扱い装置570はハウジング574及び内部フィルタ要素を有するフィルタカートリッジを備え、添加剤ポッド500はフィルタカートリッジの出口部分の受け取り部材552と係合される係合ツメ550を備える。この実施形態では、受け取り部材552は、張り出したそれぞれの係合ツメ550の遠位部分と係合可能な周辺の隆起を備える。この実施形態に更に示されているように、上流の密封部材530はフィルタカートリッジの密封表面と密封係合することができる。添加剤520は添加剤保有チャンバ510に配置されており、上流及び下流のそれぞれの添加剤保持部材560によって保持され得る。下流の密封部材532は、適合性のある多岐管アセンブリ上の対応する密封表面と密封係合するように構成され得る。
【0029】
図2、4、及び5に示されているように、使用される場合、少なくとも1つの係合ツメ250、450、550は添加剤ポッドの外側の半径方向の表面から突出するツメを備えることができる。そのようなツメは、添加剤ポッドを流体取り扱い装置570、670の出口部分580、680に挿入可能なようにばね仕掛けにされて添加剤ポッドの長手方向軸に対してある角度に張り出してよく、かつ遠位部分を有することができ、少なくとも1つの係合ツメ250、550のこの遠位部分は、図5及び6に更に示されるように、少なくとも1つの対応する受け取り部材552、652と協調して係合する。そのような実施形態では、添加剤ポッドは、適切な運動が添加剤ポッドに付与されてそれぞれの少なくとも1つの受け取り部材からそれぞれの少なくとも1つの係合ツメが有効に解除されるまでは流体取り扱い装置から容易に取り外すことができない。そのような解除は、図6に示されるように、それぞれの係合ツメ550と少なくとも1つの解放部材654との協調によって可能になり得る。
【0030】
図6は、出口部分680から添加剤ポッドを解除することを可能にするために添加剤ポッドと協調するように構成された少なくとも1つの解放部材654を備える流体取り扱い装置670の出口部分を示す。そのような実施形態では、少なくとも1つの解放部材654は、少なくとも1つの半径方向に内向きに面する弧状の傾斜部分を備え、この傾斜部分は、添加剤ポッドのその長手方向軸を中心とする回転によって、係合ツメのばね仕掛け部分の比例的押し下げを摺動式に可能にする。係合ツメ550が十分に押し下げられると、その遠位部分は受け取り部材652をクリアし、それによって、添加剤ポッドが出口部分680からその長手方向軸の方向に引かれるのを可能にする。
【0031】
添加剤ポッドの断面が円筒形でない場合のようないくつかの実施形態では、解放部材を例えば押しボタン解放式に提供して、解放ボタンを押すことが少なくとも1つの係合ツメを少なくとも1つの受け取り部材から解除するように作用し、それによって添加剤ポッドを流体取り扱い装置から取り出すことを可能にすることができる。
【0032】
特定の係合システムに関わらず、多くの用途において添加剤ポッドが容易に流体取り扱い装置に設置され、かつそれから手で、工具を使用せずに取り出されることが望ましい。いくつかの実施形態では、例えば添加剤ポッドを1回使用した後に流体取り扱い装置(例えばフィルタカートリッジ)を廃棄することが意図される場合、添加剤ポッドは取り外し式に設計されない。
【0033】
図7及び8はそれぞれ、流体取り扱い装置770、870の出口部分780、880に配置され得る、流体の流れに添加剤を導入するための装置の分解図である。いくつかの実施形態では、係合ツメ750、850及び受け取り部材752、852は、流体取り扱い装置770、870の添加剤ポッド700、800と出口部分780、880との間の単純なねじ入れ/ねじ外しを可能にするように構成される、適合する雄型と雌型の螺旋ねじを備える場合がある。
【0034】
図7において、添加剤ポッド700は流体取り扱い装置770の出口部分780にねじ式に挿入可能であり、ねじ式挿入は流体取り扱い装置770の長手方向軸に対して実質的に垂直な軸を有するポートを介して実行される。図7に示されるように、流体取り扱い装置はハウジング774を有するフィルタカートリッジ772を備える場合がある。
【0035】
図8において、添加剤ポッド800は流体取り扱い装置870の出口部分880にねじ式挿入可能であり、ねじ式挿入は、図中でフィルタ多岐管アセンブリとして示されている流体取り扱い装置870の内部導管の長手方向軸に対して実質的に垂直な軸を有するポートを介して実行される。そのような実施形態では、添加剤ポッド800は、例えばハウジング874を有するフィルタカートリッジ872と直接係合可能である必要はない。
【0036】
図7及び8に示されるような実施形態では、例えば、添加剤ポッド700、800の長手方向軸に実質的に垂直な方向に添加剤820をわたる流体の流れを可能にするために、添加剤保有チャンバ710、810の少なくとも1つの側壁を多孔質にすることができる。
【0037】
いくつかの実施形態では、図7及び8に図示され上述されている垂直の挿入と反対に、添加剤ポッドが流体取り扱い装置の内部導管の長手方向軸と同軸上に配置される同様のねじ式挿入を備えてもよいものと想定される。いくつかの実施形態では、ねじ式挿入可能かどうかに関わらず、流体はその長手方向軸に沿って添加剤ポッドに流入し、その長手方向軸に対して垂直に添加剤ポッドを出ることができる。その他の実施形態では、流体はその長手方向軸に垂直に添加剤ポッドに流入し、その長手方向軸に沿って添加剤ポッドを出ることができる。
【0038】
そのようなねじ式挿入可能な実施形態では、密封部材を添加剤保有チャンバ710、810の一端又は両端の周囲に提供して、流体取り扱い装置770、810の出口部分780、880の、対応する密封表面と密封係合することができる。
【0039】
図9は、添加剤を流体の流れに導入するためのシステムの一例を示し、システムは流体取り扱い装置970と、保管容器990の囲まれた容積992内に配置される添加剤ポッド900とを備えるものであり、添加剤ポッドは、流体取り扱い装置の出口部分980に設置されるように構成される。いくつかの実施形態では、流体取り扱い装置は、ハウジング974を有するフィルタカートリッジ972を備える。いくつかの実施形態では、添加剤ポッド900は囲まれた容積992内で気密封止される。
【0040】
図9は添加剤ポッド900から分離した流体取り扱い装置970を図示しているが、このシステムに、その出口部分に予め設置された添加剤ポッドを提供し、アセンブリ全体を保管容器の囲まれた容積内に配置することもまた可能であると想定される。添加剤の組成及び所望の用途に依存し、そのような保管容器を気密封止する場合としない場合がある。
【0041】
動作の際、添加剤ポッドを流体取り扱い装置の流体の流れに配置することができる。この流体取り扱い装置はフィルタカートリッジを備える場合があり、この場合の添加剤ポッドは典型的には濾材の下流に配置される。流体取り扱い装置の出口部分を通る流体の流れは、少なくとも1つの側壁によって画定される、少なくとも1つの添加剤が配置される添加剤保有チャンバを通って流れることになる。いくつかの実施形態では、少なくとも1つの側壁は多孔質であってよく、それによって、流体の流れが側壁を通過することが可能になる。他の実施形態では、添加剤保有チャンバは、流体の流れが流れて通ることができる対向する開いた端を備える場合がある。この添加剤保有チャンバを流れて通るとき、流体の流れはそのチャンバに配置された少なくとも1つの添加剤と接触する。流体の流れと接触すると、添加剤は徐々に溶解するかさもなければ解離することによって、通過する流体の流れと混合することになる。こうして添加剤と混合された流体の流れは添加剤保有チャンバを出て、続いて任意の付随する下流水道設備へと流れ込む。添加剤が消毒剤を備える場合、下流水道設備の内壁に沿って流れる流体の流れは、それによって消毒処理を受ける。場合によっては、下流水道設備は流体分配部分、例えば栓、噴水スピガット、又はピッチャー注水口を備えることになる。
【0042】
いくつかの実施形態では、添加剤ポッドは、例えば独立した下流の添加剤注入デバイスではなく、むしろ、流体取り扱い装置と機能的に一体化された部分を形成する場合があると想定される。添加剤ポッドが流体取り扱い装置と機能的に一体である(ただし機械的にそれから分離可能である)場合、添加剤ポッドは更に例えばキーイング機構としても働くことができる。流体取り扱い装置がフィルタカートリッジである場合、適合性のある多岐管アセンブリは相補的なキーイング機構を備えることができ、それによって、適正にキーイングされた添加剤ポッドを運ぶフィルタカートリッジのみが設置されるようにする。そのようなキーイング機構は数々の方法で製品の機能性を強化することができる。
【0043】
例えば、特定の添加剤を、関連付けられた一意のキーイング立体形状を有する添加剤ポッドに配置することができ、それによって、添加剤のタイプの視覚的な指示及び与えられた用途に対して誤った添加剤を分散することを機械的に防止する手段を提供することができると想定される。そのような実施形態では、エンドユーザーは、整備に応じた適正な添加剤の信頼できる再設置を可能にする、先に設置された添加剤のタイプを識別する迅速かつ効率的な手段を有する。
【0044】
そのようなキーイング機構は、適正に設計された添加剤ポッドのみが流体取り扱い装置に設置されることを確保することによって、製品の機能性を更に強化することができる。状況によっては、例えば、直接交換される添加剤ポッドのみが確実に設置されるようにすることが望ましい場合がある。そのような状況の一例は、不適切なサイズ又は許容範囲の添加剤ポッドによって流体シールの完全性が犯され得る状況である。適正な動作のためにそのような流体シールが重要である場合、キーイング機構は、適正な寸法の添加剤ポッドが選択及び設置されたことの視覚的及び機械的な指示によってシステムの完全性の確認を提供することができる。
【0045】
上述の製品機能性の改善に加えて、キーイング機構は製造効率上の利益を提供することができるものと想定される。例えば、製造業者は汎用のフィルタカートリッジハウジングを生産する一方で、与えられた用途又は顧客のためにキーイングされた添加剤ポッドと多岐管アセンブリとのセットを提供することができる。このようにすると、製造業者は、単一の工具類セットを使用する共通フィルタカートリッジハウジングの製造によるコスト削減を実現しながらも、キーイングされた添加剤ポッドと多岐管アセンブリによる製品のカスタマイゼーション及び差別化をなお提供することができる。
【0046】
キーイング機構を組み込むことによって実現可能な製品機能性の利益のもう1つの例は、流体取り扱い装置が適正に設置されていること及び動作可能であることの確認である。例えば、流体取り扱い装置は、適正な添加剤ポッドが欠如していると動作不能となるように構成され得る。このようにすると、例えば、エンドユーザーが整備の際に添加剤ポッドの交換又は再設置を忘れた場合、流体が装置を流れて通ることを、適正な添加剤ポッドの欠如によって防止することができる。例えば、流体取り扱い装置がフィルタカートリッジである場合、キーイング機構を伴う添加剤ポッドは、適合性のある多岐管アセンブリへのフィルタカートリッジの設置と同時に流体弁を作動するように構成される構造を備えることができる。例えば、添加剤ポッドなしにカートリッジが誤って設置された場合、弁は作動せず、流体は流れないので、適正な添加剤ポッドが不測に省略された際にシステムが動作することは防がれる。
【0047】
代表的なキーイング機構としては、例えば、添加剤ポッド及び適合性のある多岐管アセンブリのいずれか又は両方に配置された1つの又は一連の相補的凸部及び凹部が挙げられる。そのような凸部は、容易な視覚的指示又は強化された機械的な整合性のために、例えば特定の形の輪郭を含むことができる。
【0048】
いくつかの実施形態で、特にキーイング機構が使用される場合は、所望により添加剤ポッドに添加剤を提供しなくてもよい。そのような実施形態では、流体の流れに添加剤を効率的に分散するための手段としてではなく、キーイング機構の使用によって実現可能な上述の及び他の製品機能性の利益を利用するために、添加剤ポッドを使用することができる。
【0049】
本出願によるシステムは、特別なトレーニング又は工具を人がほとんど又は全く必要とせずに非常に容易に設置及び交換されるように構成されるものと想定される。例えば、流体取り扱い装置がフィルタカートリッジである場合、機能的システムにおける添加剤ポッドの完全な交換は、(i)適合性のある多岐管からフィルタカートリッジを解除するための単一の運動と、(ii)使用済みの添加剤ポッドをフィルタカートリッジの出口部分から取り出すための単一の運動と、(iii)保管容器から新しい添加剤ポッドを取り出すことと、(iv)その新しい添加剤ポッドをフィルタカートリッジの出口部分に設置するための単一の運動と、(v)適合性のある多岐管アセンブリにフィルタカートリッジを再設置する単一の運動とを含む場合がある。
【0050】
構造の詳細及び本発明の機能と共に、上記記載及び実施例に記載される本発明の多数の特性及び利点においてさえ、本開示は具体例に過ぎないことを理解されたい。添加剤ポッドの詳細、特にその形状、寸法及び配置、並びに使用方法については、添付の請求項の範囲において表現された用語の意味によって示される本発明の原理及びそれらの構造及び方法の等価物の範囲内で変更を加えることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
添加剤を流体の流れに導入するための装置であって、
添加剤保有チャンバを画定する少なくとも1つの側壁を備える添加剤ポッドと、
前記添加剤保有チャンバに配置された少なくとも1つの添加剤と、
を備え、
前記添加剤保有チャンバが前記添加剤を前記流体の流れに分散するように構成され、かつ前記添加剤保有チャンバが流体取り扱い装置の出口部分に配置されるように構成される、
装置。
【請求項2】
前記少なくとも1つの側壁の少なくとも一部が多孔質である、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記少なくとも1つの側壁が、閉じた円筒壁と、少なくとも部分的に開いた第1及び第2の軸方向の端とを有する実質的に円筒形の管を備える、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記添加剤ポッドが、前記流体取り扱い装置の前記出口部分の少なくとも1つの受け取り部材と協調的に係合するように構成された少なくとも1つの係合ツメを更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記少なくとも1つの添加剤が錠剤の形態で提供される、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記流体の流れに前記添加剤を分散する前に前記添加剤保有チャンバ内に前記添加剤を保持するように構成される、少なくとも1つの添加剤保持部材を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの添加剤保持部材が、前記流体の流れがそれを通過することを可能にするように構成される、請求項6に記載の装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの添加剤が、前記流体の流れに前記添加剤を分散する前に前記添加剤保有チャンバ内にそれ自体を保持するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
分散されていない添加剤の一部が前記添加剤保有チャンバから抜け出ることを防止するように構成される、下流トラップ部材を更に備える、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
囲まれた容積を画定する少なくとも1つの側壁を備える保管容器を更に備え、前記囲まれた容積内に前記添加剤ポッドが配置される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の装置。
【請求項11】
前記添加剤ポッドが前記囲まれた容積内に気密封止される、請求項10に記載の装置。
【請求項12】
前記添加剤が消毒剤を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項13】
前記消毒剤が、塩素、二酸化塩素、ヨウ素、次亜ヨウ素酸、臭素、次亜臭素酸、次亜塩素酸、フッ素、アルコール、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
前記添加剤が、香味剤、ビタミン、染料、スケール抑制剤、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される物質を含む、請求項1〜11のいずれか一項に記載の装置。
【請求項15】
添加剤を流体の流れに導入するための装置であって、
添加剤保有チャンバを画定する少なくとも1つの側壁を備える、前記少なくとも1つの側壁の少なくとも一部が多孔質である添加剤ポッドと、
前記添加剤保有チャンバに配置された少なくとも1つの添加剤と、
を備え、
前記添加剤保有チャンバが前記添加剤を前記流体の流れに分散するように構成され、かつ前記添加剤保有チャンバが流体取り扱い装置の出口部分に配置されるように構成され、
前記添加剤ポッドが、
前記流体取り扱い装置の前記出口部分とシールを形成するように構成される少なくとも1つの上流密封部材と、
下流物品とシールを形成するように構成される少なくとも1つの下流密封部材と、
を更に備える、装置。
【請求項16】
前記添加剤ポッドが、前記流体取り扱い装置の前記出口部分の少なくとも1つの受け取り部材と協調的に係合するように構成された少なくとも1つの係合ツメを更に備える、請求項15に記載の装置。
【請求項17】
前記流体の流れに前記添加剤を分散する前に前記添加剤保有チャンバ内に前記添加剤を保持するように構成される少なくとも1つの添加剤保持部材を更に備える、請求項15に記載の装置。
【請求項18】
囲まれた容積を画定する少なくとも1つの側壁を備える保管容器を更に備え、前記囲まれた容積内に前記添加剤ポッドが気密封止される、請求項15〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項19】
前記添加剤が、塩素、二酸化塩素、ヨウ素、次亜ヨウ素酸、臭素、次亜臭素酸、次亜塩素酸、フッ素、アルコール、過酸化水素、オゾン、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される消毒剤を含む、請求項15〜17のいずれか一項に記載の装置。
【請求項20】
添加剤を流体の流れに導入するためのシステムであって、
ハウジング及び出口部分を有する、出口流の流れが前記出口部分を通って前記ハウジングを出るフィルタカートリッジと、
添加剤保有チャンバを画定する少なくとも1つの側壁を備える添加剤ポッドと、
前記添加剤保有チャンバに配置された少なくとも1つの添加剤と、
を備え、
前記添加剤保有チャンバが前記添加剤を前記流体の流れに分散するように構成され、
前記添加剤保有チャンバが前記フィルタカートリッジの前記出口部分に配置されるように構成される、
システム。
【請求項21】
前記添加剤ポッドが、前記フィルタカートリッジの前記出口部分の少なくとも1つの受け取り部材と協調的に係合するように構成された少なくとも1つの係合ツメを更に備え、
前記出口部分が、前記出口部分から前記添加剤ポッドを解除することを可能にするために前記添加剤ポッドと協調するように構成された少なくとも1つの解放部材を更に備える、請求項20に記載のシステム。
【請求項22】
囲まれた容積を画定する少なくとも1つの側壁を備える保管容器を更に備え、前記囲まれた容積内に前記添加剤ポッドが配置される、請求項20に記載のシステム。
【請求項23】
前記添加剤保有チャンバが前記フィルタカートリッジの前記出口部分に配置されるように構成される、請求項20に記載のシステム。

【図1】
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【図1a】
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【図1b】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図6a】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2011−528619(P2011−528619A)
【公表日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−520073(P2011−520073)
【出願日】平成21年7月2日(2009.7.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/049473
【国際公開番号】WO2010/011483
【国際公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【出願人】(505005049)スリーエム イノベイティブ プロパティズ カンパニー (2,080)
【Fターム(参考)】