説明

流体サンプルの迅速なフィルタ解析方法及び装置

体積Vの流体18を解析する装置10が、面積Aのフィルタ表面14を有するフィルタ12であって、フィルタは、流体がフィルタ表面を通過することを可能にし、フィルタ表面にわたって平均される流体の体積流量密度がjmeanである、フィルタと、フィルタ表面をスキャンレートBでスキャンするスキャナと、を有し、面積Aが、Aopt=√VB/jmeanとして規定される最適面積Aoptと実質的に一致する。これによって、フィルタリング時間及びスキャニング時間の合計が最小にされることができる。別の見地において、装置10は、少なくとも2つのフィルタの組であって、フィルタの組の各フィルタは、面積Aのフィルタ表面を有し、流体がフィルタ表面を通過することを可能にし、面積Aは、フィルタの各々について異なる値を有する、フィルタの組と、フィルタの1つ(12)を選択し、選択されたフィルタ12を動作位置に配置する機構と、選択されたフィルタ12のフィルタ表面14をスキャンするスキャナと、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、第1の見地において、体積Vの流体を解析する装置であって、
−面積Aのフィルタ表面を有するフィルタであって、フィルタは、流体がフィルタ表面を通過することを可能にし、フィルタ表面にわたって平均される流体の体積流量密度がjmeanである、フィルタと、
−フィルタ表面をスキャンレートBでスキャンするスキャナと、
を有する装置に関する。
【0002】
本発明は、第2の見地において、体積Vの流体を解析する方法であって、
−流体を、フィルタのフィルタ表面を通過させるステップであって、フィルタ表面にわたって平均される流体の体積流量密度がjmeanである、フィルタと、
−フィルタ表面をスキャンレートBでスキャンするステップと、
を含む方法に関する。
【0003】
本発明は、第3の見地において、流体を解析する装置であって、
−面積Aのフィルタ表面を有するフィルタであって、流体がフィルタ表面を通過することを可能にするフィルタと、
−フィルタ表面をスキャンするスキャナと、
を有する装置に関する。
【0004】
本発明は、第4の見地において、流体を解析する装置に関する。
【背景技術】
【0005】
流体サンプルの微生物学的解析は、重要な生物学的、医学的、及び産業アプリケーションを有し、例えばクリニックにおいて、食品及び飲料において、医薬、パーソナルケア製品及び環境セクタにおいて、利用されている。一般に、このような解析は、サンプル中の微生物の存在又は不存在を決定し、存在する微生物の量を定量化し、場合によって、詳細な各種レベルに未知の微生物を識別することを目的とする。テスティングの今日の標準の方法は、多くの場合、細胞培養に基づくものであり、サンプル及び微生物のタイプに依存して、結果を得るまでに数日乃至数週間の時間を要する。増大されたスループットを伴う微生物学的解析の大きなニーズがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような迅速な方法の一例は、AES Chemunex(http://www.aeschemunex.com/)によって提案されているものである。それらのFDA認可のScanRDI−システムは、フィルタリングされた生成物のレーザスキャニングサイトメトリによる解析を実施する。この方法におけるステップは、流体サンプルをフィルタリングし、存在する可能性のある微生物学的な汚染物質を蛍光染料で染色し、存在する可能性のある微生物学的な汚染物質を検出するために、大きいレーザスポット(5−10mm)によりフィルタの表面を光学的にスキャンし、自動化されたステージを有する高解像度(0.5mm)顕微鏡により、汚染物質を囲むエリアを撮像することを含む。上述の技法の態様は、欧州特許第0713087B1号明細書に記述されている。
【0007】
改善されたフィルタ技術が、fluXXion(http://www.fluxxion.com/)によって提供されている。この技法は、リソグラフィにより規定されるマイクロシーブ(micro-sieves)に基づくものであり、マイクロシーブは、良好に規定された単一の孔径(0.2mmまで)を有し、光学的にフラットであり(次の光学スキャニングステップの観点から有利であり、更に低減された後方散乱をもたらす)、薄いので、例えばセルロース、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリスルホン、ポリカーボネート及びポリエステルのような多孔質材料から作られる通常のメンブレンフィルタと比較して、低い流れ抵抗及びゆえにより高い濾過スループットを提供する。
【0008】
既存の装置及び方法は、概して、予め規定された寸法を有するフィルタを用い、例えば流体通過速度のようなフィルタリングプロセスのパラメータ並びにスキャニングスピード及びビーム直径のようなスキャンプロセスのパラメータのみを最適化する。例えば、AES ChemunexのScanRDI−システムは、通常は0.45μmの孔径を有するポリエステルChemFiltersCB04である標準の25mmのメンブレンフィルタを使用する。
【0009】
本発明の目的は、所与の量の流体をフィルタリングし、その後フィルタをスキャンするための特に高速な方法及び特に高速な装置を提供することである。特に、本発明の目的は、上述の従来技術より高速な方法及び装置を提供することである。
【0010】
この目的は、独立請求項の特徴によって達成される。他の仕様及び好適な実施形態は、従属請求項に記述される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1の見地によれば、フィルタ表面の面積Aは、

として規定される最適面積Aoptと実質的に一致する。
【0012】
これは、後述するように、総アッセイ時間を大幅に低減することを可能にする。好適には、面積Aは、Aoptと多くとも20%異なる。より好適には、面積Aは、Aoptと多くとも10%異なる。より一層好適には、面積Aは、Aoptと多くとも5%異なる。流体を解析することは、特に、小さい物質対象、具体的には細菌又は菌類のような生物学的対象の存在を検出することを含みうる。しかしながら、原則的に、本発明は、所与の体積の流体が、一定の(時間非依存の)フローレートでフィルタリングされ、その後、フィルタ表面が、一定の(時間非依存の)スキャンレートでスキャンされる、すべてのアプリケーションに適用可能である。
【0013】
装置は更に、流体を保持するための容器を有することができ、容器は、フィルタに接続される出口を有し、容器の容量は、体積Vと一致する。これは、総アッセイ時間が、選ばれた体積に関して最小になる又はほとんど最小になるように、流体の体積を選択することを容易にする。
【0014】
装置は更に、流体をフィルタを通過させる駆動手段を有することができる。駆動手段は、例えばフィルタの上流又は下流に位置するポンプを有することができる。フィルタの下流にポンプを設けることは、流体に含まれる不純物がフィルタによってフィルタ除去される場合、それら不純物によってポンプが受ける影響が少なくてすむという点で、有利でありえる。駆動手段は、代替として、フィルタより高いレベルに、流体を含む容器を配置することによって、提供されることができる。従って、地球の重力場の流体位置エネルギが、流体をフィルタを通過させるために使用されることができる。
【0015】
流体の体積流量密度jmean及びスキャンレートBはそれぞれ、具体的には、装置によって達成されることができる最大体積流量密度及び最大スキャンレートでありうる。許容される体積流量密度jmeanは、通常、流体及びフィルタの特性によって制限される。特定の閾値を超えてポンピング圧力を増大させることは、フィルタに損傷を生じさせる。同様に、スキャナは、容易に増大されることができない特定の最大スキャンレートを有する。当然ながら、jmeanより小さい流量密度で及び/又はBより小さいスキャンレートで装置を動作させることが企図されうるが、実際には、装置は、その最大フローレート及びその最大スキャンレートで動作される。このようなシステムの場合、フィルタ表面の面積を、最大流量密度及び最大スキャンレートに適応させることが特に有利である。
【0016】
スキャナは、以下のうちの少なくとも1つを含むことができる:
−フィルタ面積を段階的にメカニカルスキャンし、各段階において画像を取得し、ソフトウェアにおいて画像をつなぎ合わせて(stitching)全体の画像を形成する、自動化された顕微鏡;
−連続してフィルタ表面をスキャンする機構、及びストロボスコープ照明手段;
−連続してフィルタ表面をスキャンする機構、及びラインカメラ又は時間遅延積分カメラ;
−単一の連続スキャンでフィルタ面積全体をスキャンするマイクロ対物レンズのアレイ;
−フィルタ面積を横切って集束レーザをスキャンする手段;及び
−フィルタ面積を横切って集束レーザスポットのアレイをスキャンする手段。
これらの見地は、より詳しく以下に記述される。
【0017】
フィルタは、流体のフローと平行に配置される複数の基本フィルタ(elementary filters)を含むことができ、基本フィルタの各々は、基本フィルタ表面を有し、フィルタ表面の面積Aは、基本フィルタ表面の総面積である。
【0018】
スキャナは、フィルタ表面を同時にスキャンするための複数の基本スキャナを含むことができ、各々のスキャナは、基本スキャンレートを有し、スキャンレートBは、基本スキャンレートの合計である。基本スキャナは、互いに独立して移動することができ、又はそれらは結合されていてもよい。例えば、単一のモータが、フィルタ表面に対し基本レーザビームのアレイ全体を移動させるために、使用されることができる。
【0019】
装置は更に、フィルタ表面の面積Aを調整する機構を有することができる。こうして、総アッセイ時間は、流体体積V、スキャンレートB及び平均体積流量密度jmeanの関数として、最小にされることができる。
【0020】
装置は更に、体積V、スキャンレートB及び平均体積流量密度jmeanの関数として機構を制御するコントローラを有することができる。
【0021】
同様に、本発明の第2の見地による方法において、面積Aは、

として規定される最適面積Aoptと実質的に一致する。
【0022】
方法は更に、面積Aを、体積V、スキャンレートB及び平均体積流量密度jmeanに適応させるように、フィルタ表面を調整するステップを含むことができる。ここで及び全体を通じて、フィルタ表面は、流体をフィルタリングするために効果的に使用されるフィルタ表面の部分であることが理解される。それゆえ、その面積Aは、例えば、フィルタの物理的な表面の一部をシールすることによって、又は物理的な表面を所望のサイズを有する開口に接続することによって、フィルタの物理的な表面の一部のみを流体と接触させることにより変更されることができる。
【0023】
本発明の第3の見地による装置は、面積Aを変更するようにフィルタ表面を調整する機構を有する。
【0024】
装置は更に、フィルタリング時間及びスキャニング時間の合計を最小にするように面積Aを変更するために機構を制御するコントローラを有することができ、フィルタリング時間及びスキャニング時間は、それぞれ、流体をフィルタリングするために必要な時間及びフィルタ表面をスキャンするために必要な時間である。
【0025】
本発明の第4の見地によれば、流体を解析する装置は、
−少なくとも2つのフィルタの組であって、フィルタの組の各フィルタは、面積Aのフィルタ表面を有し、流体がフィルタ表面を通過することを可能にし、面積Aは、フィルタの各々について異なる値を有する、フィルタの組と、
−フィルタのうちの1つを選択し、選択されたフィルタを動作位置に配置する機構と、
−選択されたフィルタのフィルタ表面をスキャンするスキャナと、
を有する。
【0026】
装置は更に、フィルタリング時間及びスキャニング時間の合計を最小にするようにフィルタを選択するために機構を制御するコントローラを有することができ、フィルタリング時間及びスキャニング時間は、それぞれ、流体をフィルタリングするために必要な時間及びフィルタ表面をスキャンするために必要な時間である。コントローラは、電子制御ユニットを含むことができる。
【0027】
流体サンプル中の微生物の存在は、一般に、濾過、染色及び光学的検出の3ステッププロセスによって検出される。提案される方法の目立った特徴は、総アッセイ時間を最小にするために、フィルタの面積が、サンプル体積並びにフィルタ及びスキャナの両方の特性に基づいて最適化されることである。以下に示すように、フィルタリング及びスキャニングステップがほとんど同じ時間を要する場合、最小のアッセイ時間が達成されることができる。
【0028】
本発明は、プロセスのそれぞれ異なるステップの各々が、特定の態様でフィルタの断面積Aに依存する時間を要するという洞察に基づく。フィルタが、「オープン」な割合η(孔の面積を総面積で除算したもの)を有し、流体通過速度uにより体積Vの濾過をサポートするものとする。濾過は、
filt=V/ηuA
の時間を要する。
【0029】
孔中の流体通過速度uは、j=ηuによって、平均体積流量密度j(すなわち単位時間当たりの単位面積を通る体積流量)に関連付けられ、ここで、jは、フィルタの孔と比較して大きい領域にわたって平均され、流体通過速度uは、平均化が行われたすべての孔において同じであるものとする。フィルタの断面積全体にわたって平均される体積流量密度はjmeanと示される。
【0030】
流体通過速度は、使用されるフィルタの特性によってのみならず、細胞の生存力を維持するためのニーズによっても制限される。染色ステップのために必要とされる時間は、フィルタの断面積に依存しないとすることができる。
【0031】
最後に、光学スキャナが、単位時間当たり面積Bをスキャンするものとする。スキャニングプロセスは、
scan=A/B
の時間を要する。
【0032】
従って、総時間(染色及び他の起こりうるステップに必要とされる一定の時間は別として)は、

によって与えられる。
【0033】
明らかに、この方程式は、濾過時間とスキャニング時間との間のトレードオフを示す。小さいフィルタ面積は、遅い濾過及び高速なスキャニングをもたらし、大きいフィルタ面積は、高速な濾過及び遅いスキャニングをもたらす。これは、このトレードオフが明白な最適条件を有することを表す。総時間は、面積、

に関して最小である。この最適条件において、濾過のために必要とされる時間及びスキャニングのために必要とされる時間は等しく、

によって与えられる。
【0034】
例えば、体積V=100mlが、半径25mm、オープンな割合25%及び流体通過速度1mm/秒をもつ円形フィルタによってフィルタリングされる典型的なケースを考える。濾過のために必要とされる時間は、約3.4分である。4096ピクセル及び3kHzラインレートを有する一般的なラインスキャナは、0.25μm/ピクセルの解像度で0.768mm/secをスキャンし、従って、フィルタ面積全体をスキャンするために42.6分かかる。上述の議論によれば、最適フィルタ面積は、554mmであり、これは、半径13.3mmをもつ円に一致する。濾過及びスキャニングのための総時間は、現在12.0分であり、46分から24分へのアッセイ時間(染色時間を除く)の全体的な改善をもたらし、これはほぼ2のファクタである。
【0035】
流体サンプルの迅速な微生物学的解析の方法は、マイクロシーブにより流体サンプルをフィルタリングするステップと、(蛍光)染料により、マイクロシーブの表面上の存在する可能性のある微生物学的な汚染物質を染色するステップと、存在する可能性のある微生物学的な汚染物質を検出しイメージングするために、マイクロシーブの表面を光学的にスキャンするステップと、を含み、フィルタリングステップによって必要とされる時間が、スキャニングステップによって必要とされる時間に実質的に等しいことによって、特徴づけられる。
【0036】
この方法を実施する装置は、体積Vの流体サンプルを保持する容器と、流体サンプルをフィルタリングするためのフィルタであって、断面積Aと、孔によって占有されるフィルタ面積の割合ηと、流体通過速度uと、を有するフィルタと、フィルタの面積をスキャンする光学スキャナであって、単位時間当たり面積Bをスキャンする光学スキャナと、を有し、フィルタ断面積は、√(VB/ηu)に実質的に等しいように選択される。
【0037】
さまざまなスキャナ技法が使用されることができる。第1のタイプのスキャナは、フィルタ面積を段階的にメカニカルスキャンし、各段階において矩形のカメラ(x及びy方向のピクセルの数が1より大きい)によって撮像し、ソフトウェアで画像をつなぎ合わせて全体の画像を形成する、自動化された顕微鏡である。第2のタイプは、モーションブラーを防ぐために、連続するメカニカルスキャン及びストロボスコープ照明を使用する。第3のタイプのスキャナは、連続するメカニカルスキャン及びラインカメラ(x又はy方向のピクセルの数は1に等しい)を使用する。第4のタイプのスキャナは、サンプルの複数露光のために複数のラインを使用する矩形のカメラであるTDI(時間遅延積分)カメラを使用する。従って、カメラの出力は、ラインカメラの場合と同じである。しかしながら、このタイプのカメラは、照明光をより効率的に利用する。第5のタイプのスキャナは、単一の連続スキャンでフィルタ面積全体をスキャンすることを可能にするマイクロ対物レンズのアレイを使用する。第6のタイプのスキャナは、フィルタ面積全体を横切って集束されたレーザスポットをスキャンすることを利用する。第7のタイプのスキャナは、集束されたレーザスポットのアレイを使用し、これは、スキャニングスピードの観点から有利である。レーザは、一般的なフルオロフォアの場合の飽和強度よりも非常に高いパワーを焦点面積において与える。飽和状況でフルオロフォアを照明することは、信号の線形性及び相対的な光退色の出現の観点から、不利でありうる。従って、多数のスポットにわたって利用可能な全レーザパワーを分割することが有利でありえ、これにより、各スポットは、蛍光飽和レベル以下の強度になる。
【0038】
本発明の重要な考えは、多重化及びバッチ処理を使用する一実施形態に一般化されることができる。Nサンプルが、Nマイクロシーブによって同時にフィルタリングされ、同様に同時に染色され、最後に、Mスキャン素子を有する装置によって、スキャン素子当たりスループットBでスキャンされるものとする。濾過及び染色ステップのために必要とされる時間は、不変であるが、スキャニングステップのために必要とされる時間は、Tscan=NA/MBである。
【0039】
従って、サンプル当たりの総時間(染色及び起こりうる他のステップのために必要とされる一定の時間は別とする)は、

によって与えられる。
【0040】
この総時間は、面積、

の場合に最適(最小)である。
【0041】
この最適条件において、濾過のために必要とされる時間及びスキャニングのために必要とされる時間は等しく、

によって与えられる。
【0042】
サンプル当たりの総時間は、

である。
【0043】
この実施形態の第1の利点は、サンプル当たりの総時間についてファクタ1/√NMの利得である。第2の利点は、コストに関するものでありうる。この実施形態は、例えば、相対的に速いスキャナ(Bが大きい)によるバッチ処理(N>1、M=1)の例を記述する。サンプルが、このような高速スキャナにより連続的に処理される場合、フィルタの最適面積は、相対的に大きくなる。使い捨てフィルタのコストは、サイズ(及びゆえにフィルタ面積)とともに増大する見込みがあるので、バッチ処理を用いることによるコスト低下があり、すなわち、使い捨てのマイクロシーブ当たりファクタ1/√Nの低下である(コストがフィルタ面積に比例するものとする)。同様に、大きいフィルタ面積が、相対的に遅く安価なスキャナによってスキャンされる場合、多重化(N=1、M>1)が利益を与える。
【0044】
例えば、4096ピクセル及び50kHzラインレートを有する高速時間遅延積分(TDI)ラインスキャナは、0.25μm/ピクセルの解像度で12.8mm/secのスループットを与える。N=4サンプルを同時に処理し、このスキャナによりN=4サンプルを順次にスキャンすることは、1131mmの最適フィルタ面積を与え、これは、半径19.0mmをもつ円に一致する(以前のサンプルと同じサンプル体積、オープンな割合、及び流体通過速度であるとする)。総スキャニング及び濾過時間は、5.9分に等しく、従って、サンプル当たり3.0分のアッセイ時間である。
【0045】
多くのアプリケーションは、固定のスキャナ、フィルタタイプ及びサンプル体積を使用する。その場合、最適フィルタサイズは、一度だけ規定されればよく、同じサイズが、すべての後続のアッセイにおいて使用されることができる。可変のサンプル体積及び/又はフィルタ特性(例えばシーブサイズ、有孔率、その他)を要求するアプリケーションの例において、装置は、例えば可変サイズの複数の開口又は調整可能なサイズをもつ単一の開口を有する流体アダプタのように、アッセイにおいて使用されるフィルタの部分を変更する手段を有することができる。
【0046】
要するに、流体サンプルの迅速な微生物学的解析のための手段及び方法が提案される。方法は、一般に、マイクロシーブにより流体サンプルをフィルタリングするステップと、例えば蛍光染料のような染料により、マイクロシーブの表面上の存在する可能性のある微生物学的な汚染物質を染色するステップと、シーブによって捕捉された、存在する可能性のある微生物学的な汚染物質又は他の粒子若しくは対象を検出し撮像するために、マイクロシーブの表面を光学的にスキャンするステップと、を含む。マイクロシーブの面積は、総アッセイ時間を最小にするために、サンプル体積(又は物質の量)並びにフィルタ及びスキャナの両方の特性に基づいて、最適化されることができる。特に、フィルタリングステップ及びスキャニングステップが実質的に同じ時間を要する場合、最小のアッセイ時間が達成されることが示される。
【0047】
更に、この方法を実施する装置が提案される。例示の実施形態によれば、装置は、体積Vの流体サンプルを保持する容器と、断面積A、孔によって占有されるフィルタ面積の割合η及び流体通過速度uをもつ、流体サンプルをフィルタリングするフィルタと、フィルタの面積をスキャンする光学スキャナであって、単位時間当たり面積Bをスキャンする光学スキャナと、を有する。好適には、フィルタの断面積は、それが多くとも5%、又は10%、又は20%、又は30%だけ最適値と異なる意味において、最適値√(VB/ηu)に実質的に等しい。この概念は更に、Nサンプルが、Nマイクロシーブによって同時にフィルタリングされ、同様に同時に染色され、最後に、Mスキャン素子を有する装置によってスキャンされるケースにも当てはまる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】フィルタ及びフィルタを通過する流体を概略的に示す図。
【図2】フィルタ、及びフィルタの入口側からフィルタ表面上に集束されるレーザビームを概略的に示す図。
【図3】フィルタ、及びフィルタの出口側からフィルタ表面上に集束されるレーザビームを概略的に示す図。
【図4】フィルタの概略的な斜視図。
【図5】基本シーブのアレイを有するフィルタの概略的な斜視図。
【図6】フィルタの断面積を適応させる機構を概略的に示す図。
【図7】流体を解析するステップを示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0049】
特に明記しない限り、それぞれ異なる図面に現れる同一又は同様の参照数字は、同一又は同様の構成要素を示す。
【0050】
図1は、フィルタ12、及びフィルタ12を通過する流体18の概略側面図である。流体は、具体的には水溶液でありうる。流体は、一般に液相でありうるが、気相であってもよい。フィルタ12は、入口表面14及び出口表面16を有する。入口表面14及び出口表面16は、図の平面に対し垂直に延在する平行な平面を形成する。流体18は、入口表面14を通ってフィルタ12に入り、出口表面16を通ってフィルタ12を去る。フィルタを去る流体は、20と示されている。フィルタ12は、例えば、メンブレンフィルタ又はマイクロシーブでありうる。フィルタ12及び流体18、20は、z方向6に走行する管体(図示せず)によって囲まれている。流体18が、フィルタ12を通って流れる間、微細な対象、例えば単一の細胞又は他の微生物が、フィルタによって止められ、その入口表面14上に又はその近くに蓄積する。入口表面14は、総面積Aを有する。流体の体積流量レートは、所与の時間間隔にフィルタを通過する流体量の体積を、時間間隔の長さによって除算したものである。体積流量レートは、フィルタリングプロセスの間、実質的に一定である。体積流量レートを面積Aで除算したものは、平均体積流量密度jmeanと呼ばれる。対照的に、流体の局所的な体積流量密度jは、流体18、20内の任意のポイントにおいて規定される。局所的な流量密度jは、中央のフロー領域と比較して、フィルタの縁の方に向かって幾らか低くなりうるが、一般に、局所的な流量密度j及び平均流量密度jmeanは、入口表面14全体にわたって実質的に同じである。流体18をフィルタリングするための総時間は、
filt=V/jmean
であり、ここでVは、流体18、20の体積である。流体がフィルタを通過するように強いられる場合、フィルタは、流体に或る抵抗を与える。ある程度、流体がフィルタを通過するように強いられる力が増大するほど、抵抗が増大し、その結果、少なくとも特定のパラメータレンジ内で、その力に実質的に依存しない平均流量密度jmeanをもたらす。従って、流量密度jmeanは、フィルタ12及び流体18の固有の特性として考えられる。当然ながら、体積流量密度jmeanは、例えば油のように、水溶液以外の流体について異なる値を有することができる。
【0051】
流体18が、フィルタ12を通過した後、フィルタ12のフィルタ表面(本例では入口表面14)は、図2に概略的に示されるように、スキャンヘッド22によってスキャンされることができる。スキャンヘッド22は、入口表面14の一部を照明し、撮像し、撮像される部分は、スキャンレートBで表面14に対して移動される。スキャンレートは、時間当たりのスキャンされる面積である。例えば、スキャンレートBは、スキャニング機構の特性によって、例えば画像センサ(図示せず)のフレームレート及びピクセル数によって、又は照明レベルによって、又は表面14を横切ってレーザビーム22を動かすために光学素子(図示せず)を移動させるモータ(図示せず)のスピードによって、決定される。焦点24において対象によって反射される光又は焦点24において対象によって放出される蛍光は、検出器(図示せず)によって検出され、表面14上のこれらの対象を検出するために解析される。入口表面14をスキャンするための総時間は、
scan=A/B
である。
【0052】
面積Aは、総時間Tfilt+Tscanを最小にするために、

に等しくなるように選択される。更に、2以上のスキャンヘッドによって入口表面14をスキャンすることも可能である。この場合、スキャンレートBは、組み合わされたスキャンレートをさし、すなわち個別のスキャンヘッドのスキャンレートの合計である。
【0053】
フィルタ12は、いずれの側からも、すなわちその入口側からも出口側からも、照明されることができることに注意されたい。更に、フィルタ12は、照明及び撮像に関する全部で4つの可能な組み合わせを与える場合、いずれの側からも撮像されることができる。しかしながら、好適には、照明及び撮像の両方が、フィルタ12の入口側(この場合上側)にある。
【0054】
図3は、スキャンヘッド22がフィルタ12の出口側に配置されている一実施形態を示す。図示される例において、フィルタ12が十分に薄く又は透明であるものとして、スキャンヘッド22によって放出された検出光は、フィルタ12を横切る。
【0055】
図4は、フィルタ12の簡略化された3次元ビューを与える。図示される実施形態において、入口表面14は矩形であるが、それはさまざまな異なる形状をもつことができる。入口表面14は具体的には円形でありえ、これは、フィルタ12を通過する流体の特定の一様なフローを生成することができる。
【0056】
図5は、フィルタ12が、面積Aの組み合わされたフィルタ表面を有する基本フィルタ又はシーブ26、28、30、32、34、36、38、40、42、44、46、48を含む代替の実施形態を示す。
【0057】
図6を参照して、流体18をフィルタリングするフィルタ12及び入口表面14の有効径を適応させるアダプタ70を有するシステムが示されている。アダプタ70は、4つの開口54、56、58、60を有するスライド50を有し、4つの開口は、流れの向きと平行な垂直方向(z方向)においてスライド50を横切る。開口54、56、58、60は、それぞれ異なる出口断面62、64、66、68を有し、各出口断面は、それらの面積Aが異なる。図示される構造において、開口54は、フィルタ12の上方にある。矢印52によって示されるように、水平方向(x方向)にスライド50を移動させることによって、他の開口56、58、60のうちの1つが、代わりに、フィルタ12の上方に配置されることができ、それにより、フィルタ12の入口表面14の有効面積Aを変える。従って、入口表面14は、例えば、フィルタリングされるべき流体18の体積Vの関数として適応されることができる。開口54、56、58、60は、流体を保持する容器(図示せず)と通じ、各容器の容量は、
V=Amean/B
によって与えられる。ここで、Aは、個々の開口(54、56、58又は60)の出口断面(62、64、66、又は68)の面積であり、Bは、入口表面14をスキャンするスキャニング装置(図示せず)のスキャンレートであり、jmeanは、流体18の体積流量密度を入口表面14にわたって平均したものである。関連する実施形態(図示せず)において、開口54、56、58、60は円に沿って配置される。
【0058】
次に図7を参照して、流体18がフィルタを通過されることができる、流体サンプルを解析する方法のフローチャートが示されている。第1のステップ701において、サンプリングされるべき流体の体積V、期待される体積流量密度jmean、及びフィルタ表面をスキャンするスキャナのスキャンレートBが、決定される。フィルタ表面は、その有効面積Aが、可能な限り、

に実質的に等しくなるように、適応される(ステップ702)。フィルタ表面は、全ての流体によって横切られるフィルタの又はフィルタ内の任意の表面でありうる。フィルタ表面は、特にフィルタの入口表面でありうる。次のステップ703において、流体が、フィルタを通過される。フィルタ表面Aは、フィルタ表面上の存在する可能性のある対象を位置特定するために、スキャナによってスキャニングレートBでスキャンされる(ステップ704)。最後に、関心のある対象の存在が検出されたフィルタ表面の選択された領域が、顕微鏡を介して撮像される(ステップ705)。
【0059】
本発明は、図面及び上述の説明において詳しく図示され記述されているが、図面及び説明は、例示的なものであり、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明は、開示された実施形態に制限されない。上述していない等価なもの、組み合わせ及び変更が更に、本発明の範囲内において実現されることができる。
【0060】
「含む、有する」という動詞及びその派生語は、「含む、有する」がさす事項における他のステップ又は構成要素の存在を除外しない。不定冠詞「a」又は「an」は、不定冠詞が関連するものの複数性を除外しない。更に、単一のユニットが、請求項に記載のいくつかの手段の機能を提供することができることに注意されたい。特定の特徴が相互に異なる従属請求項に列挙されているという単なる事実は、これらの特徴の組み合わせが有利に使用されることができないことを示さない。請求項における任意の参照符号は、本発明の範囲を制限するものとして解釈されるべきでない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
体積Vの流体を解析する装置であって、
面積Aのフィルタ表面を有するフィルタであって、前記フィルタは、前記フィルタ表面を前記流体が通過することを可能にし、前記フィルタ表面にわたって平均される前記流体の体積流量密度がjmeanである、フィルタと、
前記フィルタ表面をスキャンレートBでスキャンするスキャナと、
を有し、前記面積Aが、

として規定される最適面積Aoptと実質的に一致する、装置。
【請求項2】
前記流体を保持する容器を更に有し、前記容器は、前記フィルタに接続される出口を有し、前記容器の容量は、前記体積Vと一致する、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記流体を前記フィルタを通過させる駆動手段を更に有する、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記流体の前記体積流量密度jmeanは、前記装置によって達成可能な最大体積流量密度であり、前記スキャンレートBは、前記装置によって達成可能な最大スキャンレートである、請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記スキャナが、
前記フィルタ面積を段階的にメカニカルスキャンし、各段階において画像を取得し、ソフトウェアで前記画像をつなぎ合わせて全体の画像を形成する、自動化された顕微鏡と、
前記フィルタ表面を連続してスキャンする機構、及びストロボスコープ照明手段と、
前記フィルタ表面を連続してスキャンする機構、及びラインカメラ又は時間遅延積分カメラと、
単一の連続スキャンで前記フィルタ面積全体をスキャンするマイクロ対物レンズのアレイと、
前記フィルタ面積を横切って集束レーザをスキャンする手段と、
前記フィルタ面積を横切って集束レーザスポットのアレイをスキャンする手段と、
のうち少なくとも1つを含む、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記フィルタは、前記流体のフローと平行に配される基本フィルタを有し、前記基本フィルタの各々は、基本フィルタ表面を有し、前記フィルタ表面の前記面積Aは、前記基本フィルタ表面の総面積である、請求項1乃至5のいずれか1項に記載の装置。
【請求項7】
前記スキャナは、前記フィルタ表面を同時にスキャンする基本スキャナを有し、各スキャナは、基本スキャンレートを有し、前記スキャンレートBは、前記基本スキャンレートの合計である、請求項1乃至6のいずれか1項に装置。
【請求項8】
前記フィルタ表面の前記面積Aを調整する機構を更に有する、請求項1乃至7のいずれか1項に記載の装置。
【請求項9】
前記体積V、前記スキャンレートB及び前記平均体積流量密度jmeanの関数として、前記機構を制御するコントローラを更に有する、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
体積Vの流体を解析する方法であって、
前記流体をフィルタのフィルタ表面を通過させるステップであって、前記フィルタ表面にわたって平均される前記流体の体積流量密度がjmeanである、ステップと、
前記フィルタ表面をスキャンレートBでスキャンするステップと、
を含み、前記フィルタ表面の面積Aが、

として規定される最適面積Aoptと実質的に一致する、方法。
【請求項11】
前記面積Aを、前記体積V、前記スキャンレートB及び前記平均体積流量密度jmeanに適応させるように、前記フィルタ表面を調整するステップを更に含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
流体を解析する装置であって、
面積Aのフィルタ表面をもつフィルタであって、前記流体が前記フィルタ表面を通過することを可能にするフィルタと、
前記フィルタ表面をスキャンするスキャナと、
前記面積Aを変更するように前記フィルタ表面を調整する機構と、
を有する装置。
【請求項13】
フィルタリング時間及びスキャニング時間の合計を最小にするために、前記面積Aを変更するように前記機構を制御するコントローラを更に有し、前記フィルタリング時間及び前記スキャニング時間はそれぞれ、前記流体をフィルタリングするために必要な時間及び前記フィルタ表面をスキャンするために必要な時間である、請求項12に記載の装置。
【請求項14】
流体を解析する装置であって、
少なくとも2つのフィルタの組であって、前記フィルタの組の各フィルタは、面積Aのフィルタ表面を有し、前記流体が前記フィルタ表面を通過することを可能にし、前記面積Aは、前記フィルタの各々について異なる値を有する、フィルタの組と、
前記フィルタの1つを選択し、前記選択されたフィルタを動作位置に配する機構と、
前記選択されたフィルタの前記フィルタ表面をスキャンするスキャナと、
を有する装置。
【請求項15】
フィルタリング時間及びスキャニング時間の合計を最小にするために、前記フィルタを選択するように前記機構を制御するコントローラを更に有し、前記フィルタリング時間及び前記スキャニング時間はそれぞれ、前記流体をフィルタリングするために必要な時間及び前記フィルタ表面をスキャンするために必要な時間である、請求項14に記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公表番号】特表2012−510052(P2012−510052A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536999(P2011−536999)
【出願日】平成21年11月20日(2009.11.20)
【国際出願番号】PCT/IB2009/055229
【国際公開番号】WO2010/058373
【国際公開日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【出願人】(590000248)コーニンクレッカ フィリップス エレクトロニクス エヌ ヴィ (12,071)