説明

流体ジェットを振動させるための装置及び方法

【課題】 流体流れを二つの出口方向間で振動させる方法を提供する。
【解決手段】 この方法は、二つの出口方向(350,360)により特徴付けられる導管(330)を通して流体の主流れを発生すること、及び第一と第二振動制御口(340)を設けることを含み、前記第一及び第二振動制御口が前記導管に対して横断しておりかつフィードバック管(440)により互いに連結されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本願は、ともに2007年5月2日に出願された米国仮特許出願60/924157及び60/924158の利益を主張し、本願と同日にPCT出願として提出されかつ代理人整理番号43724として識別されるG.Arwatz,I.Fono及びA.Seifertによる「METHODS AND APPARATUS FOR REDUCTION OF AERODYNAMIC DRAG」という名称の共に係属中の出願に関係する。上述の出願の全ての開示はここに参考として完全に組み入れられる。
【0002】
発明の分野
本発明は流体ジェットを振動させること、それを作る方法及びそれを作るための装置に関する。
【背景技術】
【0003】
流れ制御技術は一般的に、流れ特性を一定のまたは周期的な刺激作用の導入によりそれらの自然傾向に関して変える能力に関する。境界層分離の制御のための周期的刺激作用の使用は非圧縮性流れでは可能でありかつ効率的であることが特に低速度でかつ広範囲のレイノルズ数(Re:10から10)で証明されている(Seifertら(1996)“Delay of Airfoil Stall by Periodic Excitation”,J of Aircraft.VoI.33,No.4,pp.691 699及びSeifertら(1999)“Oscillatory Control of Separation at High Reynolds Numbers”,AIAA J.37(9):1062−1071)。圧縮性流れの境界層分離の制御はまた、必要な振動のレベルが非圧縮性流れで必要なものより高いけれども証明されている(Seifertら(2001)“Oscillatory Control of Shock−induced Separation”,(AIAA paper 99 0925),J.Aircraft,38(3):464 472及びSeifertら(2003)“Effects of Compressibility and Excitation Slot Location on Active Separation Control at High Reynolds Numbers”,J.Aircraft 40(1):pp.110−119)。これにもかかわらず、流れが衝撃波を含まない限り、マッハ数の単なる増加からもたらされる理論的または物理的差異は存在しない。境界層制御での流れ制御の主たる用途の一つは、望ましくない境界層分離を遅延し、防止しまたは管理することである。
【0004】
境界層分離の制御において著しい科学的及び技術的努力が投じられた。流れ衝動作用の代替法が機械的混合(例えばvortex generators,Allanら(2002)Numerical Simulations of Vortex Generator Vanes and Jets on a Flat Plate,AIAA Paper 2002 3160)、空気圧渦発生器−ジェット(例えばsteady and oscillatory,Johnstonら(2002)International J.of Heat and Fluid Flow,23(6):750 757;及びKhan and Johnston,(2000)International J.of Heat and Fluid Flow,(21(5):505 511.)及び周期的刺激作用を含んで試験された。ある条件(例えば低Re数)下では、周期的刺激作用は境界層制御のための一定の刺激作用より約2オーダーの大きさでより効率的である(Seifertら(1996)J.of Aircraft 33(4):691−699)。
【0005】
Prandtlは境界層及びその制御で実現される科学的及び工学的利点を明らかにした。Prandtlはまた、境界層分離の制御に関連した基本的な理論問題を明らかにし、かつこれらの問題に対する一つの可能な解決策、表面からの流れ脱離からもたらされる負の現象の抑制により分離点の上流に付与された吸引による境界層分離の制御、を説明している。これらの現象は流れ関連機構の効率の減少を導く。Prandtlは広角拡散装置の境界層分離点への上流の吸引口の配置による境界層吸引の有効性を示しており、それらの境界層は制御なしに分離された。吸引の存在下で、流れは拡散装置の二つの壁に付着したままであった(Prandtl and Teitjens(1934)Applied Hydro and Aerodynamics;Dover,NY;page 294)。
【0006】
境界層の吸引が分離を局所的に防ぐ場合であっても、流れの流線の下流拡張は吸引が付与された点の下流で境界層分離を起こすことができる。
【0007】
Seifertらの米国特許第7055541号は、吸引及び周期的刺激作用流れを作るための方法及び機構を記載し、それは境界層の出口流方向振動が流体流れ振動を制御する実施態様を含む。この特許の開示は参考としてここに完全に組み入れられる。
【0008】
吸引流れに関して先細末広入口ノズルを採用することは知られている。寸法の所定組合せを持つ装置において、先細末広入口ノズルは操作条件に依存して種々の方式で機能することができる(Streeter and Wylie(1981)Fluid Mechanics,7th Edition;McGraw Hill Ryerson;page 283から取った図3参照)。図3は先細末広ノズル圧とマッハ数特性を与える。もしノズル出口での流れが超音速であることが望ましいなら、理想的には膨張ジェット(図3の点j未満)を確保するであろうノズル圧比を持つことが必要である。より高い圧力比はノズル出口のすぐ下流で衝撃波を起こすであろうし、流れは亜音速状態に戻るであろう。完全に亜音速操作が望ましいときかつ効率が主問題であるとき、短い先細入口ノズルで十分である。
【発明の概要】
【0009】
本発明の幾つかの実施態様の一態様は、フィードバック管により連結された振動制御口に関する。本発明の例示的実施態様では、この口は、流体流れが向けられる導管の壁に対して横断的に設けられる。任意選択的に、流体流れは振動制御口を越えた流れの結果として二つまたはそれより多い出口方向間で自動的に振動する。
【0010】
本発明の例示的実施態様では、振動制御口の一つを越えた導管を通る流体の主流れは、フィードバック管を通って伝わる振動制御口の一つに負の制御圧を起こし、かつ他の制御口に正の制御圧を発生する。正の制御圧は流体流れを他の制御口の方に偏向する。この工程の反復繰返しが流れを振動させる。任意選択的に、導管は二つまたはそれより多い規定された出口方向により特徴付けられ、振動は規定された出口方向間にある。
【0011】
任意選択的に、振動制御口の上流の導管と流体連通している一つまたはそれより多い吸引口を通して追加の流体を主流れと結合させることにより主流れは拡大される。
【0012】
本発明の種々の例示的実施態様によれば、振動周期は導管を通る流速、フィードバック管の寸法及び導管の寸法のうちの一つまたはそれより多くにより決定される。
【0013】
本発明の例示的実施態様では、二つの出口方向により特徴付けられる導管を通る流体流れは、導管の壁に横断的でありかつ互いにフィードバック管により連結された振動制御口を通過する。任意選択的に、フィードバック管は振動を制御するように適合されている。任意選択的に、流体流れは第一出口方向に向けられ、第一振動制御口で負圧を作る。任意選択的に、ベルヌーイの原理は負圧の作成に貢献する。
【0014】
負圧は、フィードバック管中に第一振動制御口に向けて第二流れを生成する。本発明の例示的実施態様では、フィードバック管中の第二流れは第二振動制御口内に正圧を発生する。任意選択的に、第二振動制御口中の正圧は流体流れを第二出口方向に変える。
【0015】
流体流れが第二出口方向にあると、それは第二振動制御口に負圧を作り、フィードバック管中の第二流れの方向は逆転される。本発明の例示的実施態様では、この工程は反復的に繰返され、出口方向間の主流れの振動をもたらす。任意選択的に、振動の周期は設計時のフィードバック管及び/または振動制御口及び/または導管の一つまたはそれより多い寸法を変えることにより制御されることができる。代替的にまたは付加的に、流体流れの速度は振動周期に寄与する。
【0016】
本発明の例示的実施態様では、フィードバック制御は動的である。任意選択的に、二つまたはそれより多いフィードバック管が設けられ、一つまたはそれより多くを運転/運転停止するスイッチを持つ。
【0017】
任意選択的に、振動はフィードバック管を通る流れを封鎖することにより中断されまたは防止されることができる。
【0018】
本発明の例示的実施態様では、装置は制御器を持つシステム中に組込まれる。任意選択的に、制御器は流れ調節器、スイッチ機構及び寸法変更器のうちの一つまたはそれより多くを含む。
【0019】
本発明の例示的実施態様では、流体流れを二つの出口方向間で振動させる方法が提供され、その方法は:
(a)二つの出口方向により特徴付けられる導管を通して流体の主流れを発生させること;及び
(b)第一と第二振動制御口を設けること、
を含み、前記第一及び第二振動制御口は前記導管に対して横断しておりかつフィードバック管により互いに連結されている。
【0020】
任意選択的に、この方法は、
(c)追加の流体を振動制御口の上流の前記導管と流体連通している少なくとも一つの吸引口を通して主流れと結合させることにより主流れを拡大して拡大流れを作ること、
を含む。
【0021】
任意選択的に、この方法は、フィードバック管の長さを変えることにより振動の周期を変えることを含む。
【0022】
任意選択的に、この方法は、フィードバック管を通る第二流れを防ぐことにより振動を中断することを含む。
【0023】
任意選択的に、この方法は、主流れの速度を変えることにより振動の周期を変えることを含む。
【0024】
任意選択的に、この方法は、フィードバック管の直径を制御することにより振動の周期を調節することを含む。
【0025】
任意選択的に、この方法は、フィードバック管の容積を制御することにより振動の周期を調節することを含む。
【0026】
任意選択的に、この方法は、導管寸法を制御することにより振動の周期を調節することを含む。
【0027】
任意選択的に、この方法は、制御口寸法を制御することにより振動の周期を調節することを含む。
【0028】
任意選択的に、主流れを発生させることは、先細末広ノズルを通して主流れを方向付けることを含む。
【0029】
本発明の例示的実施態様では、振動出口方向を持つ流体ジェットを作る自動機構が提供され、その機構は:
(a)流体流れを運ぶように適合された導管であって、二つの出口方向により特徴付けられる導管;及び
(b)第一と第二振動制御口で終了するフィードバック制御管であって、前記第一及び第二振動制御口が前記導管の壁に対して横断しておりかつフィードバック管により互いに連結されるフィードバック制御管
を含む。
【0030】
任意選択的に、この装置は、制御された入力圧で流れを導管中に方向付けるように適合したジェット口を含む。
【0031】
任意選択的に、このジェット口は先細末広ノズルを含む。
【0032】
任意選択的に、この装置は、前記導管及び機構に対して外部の環境と流体連通している少なくとも一つの吸引口であって、追加の流体を主流れと結合させて拡大流れを作ることができる少なくとも一つの吸引スロットを含む。
【0033】
任意選択的に、この装置は、流れからのエネルギーのみに基づいた自動振動のために適合している。
【0034】
任意選択的に、この装置は、振動調節機構を含む。
【0035】
任意選択的に、振動調節機構はフィードバック管の容積を変えることにより振動の周期を変えるように適合している。
【0036】
任意選択的に、振動調節機構は導管を通る流体流れを変えるように適合している。
【0037】
任意選択的に、この装置は、フィードバック管を通る制御圧を防ぐように適合した振動中断機構を含む。
【0038】
任意選択的に、中断機構は管を封止する。
【図面の簡単な説明】
【0039】
以下の説明に記載された本発明の例示的非限定実施態様はここに添付された図面を参照して読まれる。これらの図では、二つ以上の図で現れるそれらの同一及び類似の構造、要素または部品は一般的に、それらが現れる図で同一または類似の参照番号を付けてある。図に示された構成要素及び特徴の寸法は主として表示の便宜と明確さのために選ばれ、必ずしも縮尺通りではない。
【0040】
【図1】図1は、本発明の例示的実施態様によるフィードバック管による制御口の連結を示す本発明の例示的実施態様による装置の概略図である。
【図2】図2は、本発明の例示的実施態様による方法の簡略化されたフロー図である。
【図3】図3(従来技術)は、先細末広ノズルを通した流れの種々の圧力−マッハ数特性を示す。
【図4】図4aは、本発明の種々の例示的実施態様による入口流速(リットル/秒)の関数としての振動周期(Hz)のグラフである。図4bは、本発明の種々の例示的実施態様によるフィードバック管の長さ(M)の関数としての振動周期(Hz)のグラフである。
【図5】図5は、本発明の種々の例示的実施態様による入口流速(リットル/秒)の関数としての振動周期(Hz)のグラフである。
【図6】図6は、入口として例示的先細末広ノズルを特徴とする本発明の例示的実施態様による装置の概略図である。
【図7】図7は、本発明の例示的実施態様による装置と例示的制御器を含む例示的システムの概略図である。
【図8】図8は、本発明の例示的実施態様において使用するための管スイッチ機構の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
概観
本発明は一般的に、振動流体ジェット、その作成方法及びそれを作成する装置に関する。本発明の例示的実施態様では、振動は自動的である。任意選択的に、振動周期は入口流速、拡大された流速及び/または装置寸法を変えることにより制御されることができる。本発明の例示的実施態様では、流速は追加の流体をシステム中に吸引する吸引口により拡大される。本発明の例示的実施態様では、追加の流体は入口流れと混合して拡大流れを作る。本発明の例示的実施態様は、共通特徴として圧力作動振動制御機構を共有する。本発明の例示的実施態様では、振動制御機構はフィードバック管により連結された二つの振動制御口を含む。
【0042】
図2は、本発明の一実施態様による二つの出口方向間で振動する導管内に流体流れを発生させる例示的方法200の簡略化フロー図である。図1と6は、本発明の種々の実施態様による二つの出口方向間で振動する導管内で流体流れを発生させるのに適合した例示的装置を示す。
【0043】
例示的方法
図1と図2を同時に参照すると、210(図2)において注入口310(図1)は二つの出口方向350と360により特徴付けられた導管330を通して主流体流れ332を発生させる。
【0044】
振動を誘発するために、振動制御口340が導管330の壁に横断して設けられる(220)。本発明の例示的実施態様では、振動制御口340は振動を制御するように適合したフィードバック管440により互いに連結される(230)。
【0045】
本発明の例示的実施態様では、主流れ332aは第一出口方向350に向けられる。任意選択的に、導管を通る流れは双安定であり、従って332aまたは332bのいずれかが起こることができるが、332aと332bが一緒に起こる中立状態は不安定である。流れ332aは第一(この図では上部)振動制御口340に(すなわち口340から外に)負圧344を作る(240)。任意選択的に、ベルヌーイの原理は負圧344の作成に寄与する。
【0046】
負圧344はフィードバック管440(図1)内に第一振動制御口340に向けて第二流れを生成する(250)。本発明の例示的実施態様では、フィードバック管内の第二流れ(図1に一連の中空矢印として示される)は第二(図1の下部)振動制御口340内に正圧448を起こす(260)。
【0047】
本発明の例示的実施態様では、第二振動制御口340内の正圧448が(すなわち口340中に)主流れ332aを第二出口方向360(332b)に向けて変位させる(270)。
【0048】
主流れ332bが第二出口方向360にあるとき、それは第二振動制御口に負圧、任意選択的には強い負圧を作り(280)、第二流れ(または圧力伝達)の方向は逆になる(290)。
【0049】
本発明の例示的実施態様では、この工程は反復して繰返され、主流れの出口方向350と360の間の振動をもたらす。
【0050】
例示的装置
図1は、本発明の一実施態様による例示的振動流れ装置300の横断面での概略図である。フィードバック管は明確化のために除去されている。
【0051】
描かれた実施態様では、初期流れ312は主注入口310を介して導管330の内腔に入る。任意選択的に、口310は、初期流れ312の速度を変えるのに適合した調節機構を含む。本発明の例示的実施態様では、初期流れ312を変えることは振動周期の変化に寄与する。描かれた例示的実施態様では、導管330の面積432は流れ322と332を混合するのに適合されている。
【0052】
任意選択的に、初期流れ312は一つまたはそれより多い吸引口320(二つの吸引口320が描かれているが、対称性が保たれている限りいかなる数も可能である)を介して補充された一つまたはそれより多い吸引流れ322により補われる。任意選択的に、口320は吸引流れ322の速度を変えるのに適合した調節機構を含む。本発明の例示的実施態様では、吸引流れ322を変えることは振動周期の変化に寄与する。吸引口320は任意選択的にスロットとして形成されることができる。
【0053】
本発明の例示的実施態様では、初期流れ312はシステム中へのエネルギー入力からもたらされる。任意選択的に、吸引流れ322は、ベルヌーイの原理による及びエネルギー流れ312と同伴流れ322の間の混合のための同伴工程による注入口310を出る流れ312により導管330中に受動的に引き込まれる。吸引流れ322は初期流れ312と混合し、拡大流れ332(aまたはb)を生成する。本発明の例示的実施態様では、拡大流れ332は初期流れ312及び全ての吸引流れ322の流速の合計を表す流速により特徴付けられる。任意選択的に、吸引流れ322はシステム中への追加流体(例えば吸引口320を越えて流れる境界層からのもの)をもたらす。本発明の例示的実施態様では、導管330は、拡大流れ332が振動制御口340に達する前に初期流れ312と吸引流れ(単数または複数)322の完全な混合を確保するために完全な長さである。
【0054】
描かれた実施態様では、拡大流れ332aは導管330を通って進み、分割器370により出口方向350に向けて偏向される。拡大流れ332aが振動制御口340を通過するとき、流れ332aは、出口方向360に対向して出口方向350に向けて進むように上部振動口340に接近する。描かれた実施態様では、出口方向350と360は分割器370により分離されている。
【0055】
拡大流れ332aの上部振動口340への近接は、コーナー周りを回る流れ332のため、上部振動制御口340内に負圧344を発生する。伝達された負圧344は、図1を参照して以下に説明されるように出口方向350と360の間の拡大流れ332の一連の周期的振動を起こす。
【0056】
上述のように、上部制御口340内の負圧344は上部口340を横切ってかつ出口350中への流れ332aの通過及び回転からもたらされる。
【0057】
図1に描かれるように、負圧344は移動する負圧パルス(振動フィードバック管440内の矢印とは反対に移動する)を作り、それは下方振動制御口340内に正圧流れ448を生成する。
【0058】
本発明の例示的実施態様では、伝達された負圧パルス(またはそれに代えて正圧流れ)448は主流れ332aを出口方向350から出口方向360に偏向し、そこではそれは主流れ332bとして描かれている。
【0059】
この点で、流れ制御口340の圧力及びフィードバック制御管440内の圧力符号は逆になる。
【0060】
本発明の例示的実施態様では、主流れ332は、それが出口方向350に向かって流れる「a」状態とそれが出口方向360に向かって流れる「b」状態との間で振動する。任意選択的に、振動周期(f)は、導管330の遠位端と角度付き出口(例えば350または360)の近位端の間のオフセット距離434、角度付き出口の壁角度436、分割器距離438(導管330の遠位端と分割器370の近位端の間)、振動口340の直径442、振動口340の高さ444、振動フィードバック管440の水力直径446、及び出口の長さ462(すなわち角度に関係なしに出口(例えば360)から出て行くために導管330の遠位端からの直線距離)の一つまたはそれより多くにより変わりうる。本発明の例示的実施態様では、壁角度436が増大するとき、振動が始まる制御圧344及び/または448もまた増大する。
【0061】
例示的振動速度制御
図4aと4bは、本発明の幾つかの例示的実施態様による自動振動流体流れ装置の例示的特性を示すグラフである。
【0062】
図4aでは、振動周期(Hzでのf)が入口流速(リットル/秒でのQ)の関数としてプロットされている。図4aにグラフとして与えられたデータは80,150,250及び450cmの長さ及び0から7リットル/秒のQを持つフィードバック管440によりなされた実験を反映する。所定の管長さに対して、fはQが増大すると増大する。所定のQに対して、より短いフィードバック管440はより大きい振動周期(f)を生成する。fについてのフィードバック管440の長さの影響はQが増大するとより大きくなる。
【0063】
図4bでは、振動周期(Hzでのf)がメートルでのフィードバック管440の長さの関数としてプロットされている。実験は2リットルと2.5リットルのQ及び4.2mmと5.4mmの内径446を持つ振動管440により行われた。図4bにグラフとしてまとめられた結果は、所定の管長及びQに対して管直径446が増大するとfが増大することを示す。図4bに与えられたデータは、Qが増大するとfが増大すること及び/または管長が減少するとfが増大することを再度確認する。
【0064】
まとめると、図4aと4bは、フィードバック管440の寸法が減少すると振動周期(f)が増大することを示す。本発明の例示的実施態様では、直径及び長さのみが実験的に試験されたけれども、fの変化に寄与するのは管440の容積である。任意選択的に、制御口340の容積もまたfに影響する。しかし、実際には、口340の組合された容積は典型的には管440の容積よりかなり小さい。任意選択的に、非常に小さい直径760を持つ制御口340は、管440が大きな容積により特徴付けられたとしてもfに負の影響を及ぼしうる。実際には、管440及び/または口340の寸法及び/または容積を変えることは通常、装置の設計または構築でなされる。しかし、構築後に(例えば使用時に)管440及び/または口340の寸法及び/または容積を変えるために適合した機構を持つ装置は本発明の範囲内である。
【0065】
本発明の例示的実施態様では、単一装置が二つまたはそれより多くの異なる振動周期を提供するために適合される。任意選択的に、全ての他の幾何学的な詳細及び流れ条件は固定されたままである。任意選択的に、異なる長さの二つまたはそれより多いフィードバック管440が制御口340間に並列に連結される。本発明のこの例示的実施態様によれば、振動周期(f)は全ての封鎖されていないフィードバック管440及びそれらのそれぞれの寸法及び/または容積により決定される。
【0066】
本発明の例示的実施態様では、一つまたはそれより多い管を封鎖することはfを変化する。任意選択的に、この方策は単一装置を複数の周期(f)で振動させるために使用される。本発明の例示的実施態様では、望ましい範囲の周期は、各管が望ましい周期を与える特性を持つ好適な数の振動フィードバック管440を持つ装置を構築することにより提供される。代替的にまたは追加的に、周期の変動は流速(Q)を調整することにより達成されることができる。しかし、Qの調整はまた、出口350及び/または360を出る拡大流れ332に影響する。
【0067】
図5は、二つのフィードバック管440を持つ装置を使用して実施された実験の結果をグラフとしてまとめる。第一のフィードバック管440は4cmの長さを持ち、第二振動管440は9.5cmの長さを持っていた。図5は、4cm管(三角形)、9.5cm管(円形)または並列に一緒にこれらの二つの管(四角形)を用いて入口流れ312の速度(リットル/秒でのQ)の関数としての振動周期(Hzでのf)のプロットである。使用されない管は実験中にそれらの中心で封鎖されただけであり、除去されなかった。図5に与えられたデータは、二つのフィードバック管440が一緒に採用されるときにfがいずれかの管が個々に使用されるときより大きいが、そのfは各管から個々に得られる周期の合計より小さいことを示唆する。
【0068】
本発明の例示的実施態様では、入口圧、入口流速(Q)及び出力速度から選ばれた一つまたはそれより多い因子が起動操作時の振動周期(f)に寄与する。
【0069】
振動制御圧344及び448は出口350及び/または360を通しての背圧に感応し易いので、入口ノズル310と制御口340(740)での導管330との間の面積比は以下に説明されるようにどの作業条件で振動が発生するかに影響する。
【0070】
例示的入口構成
図6は、例示的装置700を横断面で示す。装置700は入口ノズル710の出口712にある断面積を持つ先細末広ノズル710を含む。任意選択的に、ノズル710は図3のパネルjに描かれたような出口流れ732を生成するのに適合している。
【0071】
本発明の例示的実施態様では、入口ノズル710の出口712での小さな断面出口面積は吸引口320を介しての追加流れの高同伴比をもたらすことができるが、高圧損も生成する。
【0072】
逆に、大きな断面出口面積712はより低い入口圧に対して高出力速度(例えば332aまたは332b)をもたらすことができるが、低い同伴比を生成しうる。望ましい装置性能を達成するために、面積比は注意深く考慮されるべきである。範囲3から15のλ=(740での)A/(712での)Aとして規定された面積比が振動を促進する一方、この範囲外のλは振動を止めさせうることが実験的に決定された。本発明の例示的実施態様では、A(740)は、希望の寸法の装置を設計する際の主な技術的制約として使用されることができる。
【0073】
装置全体のパラメーターは弁入口管740の幅750に関して規定されることができるので、幅760は典型的には一定に保たれる。ノズル幅を変えることなく切替弁入口ノズル面積を変えるために、入口アスペクト比(深さ比)σ=h/b(ここでhは作動器深さ(図6のページ中へのもの)であり、bは振動制御口340との連結点での導管330の幅750である)を変えることができる。本発明の例示的実施態様では、振動はアスペクト比σが1.5〜10であるときに発生する。この範囲外のσは振動を止めさせるために役立つことができる。
【0074】
図6の描かれた例示的横断面では、振動制御口340はそれらの垂直軸に関して左右相称的ではない。各口340は注入口ノズル712から延びる線から分割器370の頂点に向けてその左側よりその右側でさらに遠くで終結する。描かれた実施態様では、この終結はコーナー半径758により特徴付けられる曲線内にある。鋭角の終結は望ましくない局所的流れ分離を起こしうる。本発明の例示的実施態様では、コーナー半径r758は1.5b(750)より大きく、分割器距離438は6b〜10bである。分割器距離438が減少するとき、振動はより高い制御圧344及び448で始まる傾向がある。
【0075】
例示的多次元振動
図6は、互いに垂直に変位しかつ角度的に発散する出口350と360の間で流れ732に振動を起こす手段としてY方向に垂直に延びる二つの振動制御口を描く。
【0076】
本発明の例示的実施態様では、追加の対の振動口(図示せず)がページ中に及びページからZ方向に延びる。本発明の例示的実施態様では、これらの追加の振動口は追加の振動制御管(明確化のため図示せず)により連結される。この追加の例示的実施態様によれば、追加の対の出口(明確化のために図示せず)は、出口350と360がY方向に持つのと同様の角度関係を持ってページ中に及びページからZ方向に延びる。この例示的多次元振動の実施態様によれば、四つの振動制御口を通過する流れ732は上述のように出口350と360の間にY方向の振動を起こし、また二つの追加の出口間にZ方向の振動を起こすであろう。本発明の例示的実施態様では、Y及びZ振動は位相を異にし、従って流れ732は四つの出口に循環的に向けられる。任意選択的に、Y及びZ面の制御口及びフィードバック管及び出口は同様の寸法により特徴付けられる。
【0077】
本発明の例示的実施態様では、3または4またはそれより多い組の振動制御口及びフィードバック管が導管330の軸周りの異なる面内に設けられる。
【0078】
例示的システム
図7は、例示的制御器810及び詳細に上述した一般タイプの例示的装置400(点線長円として概略的に描かれている)を含む例示的システム800を概略的に示す。描かれた制御器810は流れ調節器820、切替機構830、及び寸法変更器840の一つまたはそれより多くを含む。
【0079】
本発明の例示的実施態様では、流れ調節器820はジェット口310及び/または吸引口320を通る流速を調節する。図4aに関して上述したように、流速の増大は振動周期を増大するのに寄与する。
【0080】
本発明の例示的実施態様では、切替機構830は二つまたはそれより多いフィードバック管440を開き及び/または閉じる。図5に関して上述したように、開いたフィードバック管440の増大した合計容積は振動周期を増大するのに寄与する。
【0081】
本発明の例示的実施態様では、寸法変更器840はフィードバック管440及び/または導管330及び/または制御口340の一つまたはそれより多い寸法を変える。図4bは、例えば、フィードバック管440の増大する長さが減少した振動周期に寄与することを示す。任意選択的に、管の長さはスライド弁(例えばトロンボーンで採用されるようなもの)または切替弁(トランペットにおけるようなもの)により変えられる。
【0082】
本発明の例示的実施態様では、寸法変更器840はフィードバック管440の有効直径446を変更する。
【0083】
図8は、フィードバック管440の有効直径及び/または長さを変更する一つの例示的方法を描く。描かれた実施態様900では、制御口340は二つのフィードバック管440a(幅広いものとして示されている)及び440b(狭いものとして示されている)と流体連通している。本発明の例示的実施態様では、弁(ここでは上昇可能フラップ940aと940bとして示されている)がフィードバック管440aと440bの一つまたはそれより多くを選択的に閉じるように適合されている。任意選択的に、弁940aと940bは切替機構830により制御され、または手動的に制御される。本発明の例示的実施態様では、制御流は口340を介してフィードバック管440aと440bの一つまたは両方の中に向けられることができ、従って三つの可能な有効直径:幅広い、狭い及び幅広い+狭いがある。任意選択的に、管440aと440bは同じまたは異なる長さである。
【0084】
本発明の例示的実施態様では、フラップ940aと940bの同時閉鎖は装置のための振動中断機構としての役目をする。
【0085】
例示的使用シナリオ
本発明の種々の例示的実施態様が空気力学的及び流体力学的用途での境界層分離の遅延で有用性を見出すことが予想される。特別の例示的実施態様は高偏向角を持つ揚力表面(典型的には「高揚力システム」として知られている)、ヘリコプター及び輸送飛行機の尾部及び陸上輸送システム(例えばトラック、トレイラー、SUV及び/または列車)の後部である。
【0086】
本発明の例示的実施態様では、上述された装置及び方法は空力抵抗を減らすために採用される。
【0087】
本発明は、例として提供されかつ本発明の範囲を必ずしも限定することを意図しない本発明の実施態様の詳細な説明を用いて記載された。特に、数値は上記された数の範囲より高いまたは低いものであることができ、かつなお本発明の範囲内にあることができる。記載された実施態様は異なる特徴を含み、それらの全てが本発明の全ての実施態様で要求されるとは限らない。本発明の幾つかの実施態様は幾つかの特徴のみをまたは特徴の可能な組合せを利用する。代替的にまたは追加的に、単一ユニットとして記載された/示された本発明の部分は、記載された/示された機能を実施するために協力して作用する二つまたはそれより多い別個の物理的実体で存在することができる。代替的にまたは追加的に、二つまたはそれより多い別個の物理的実体として記載された/示された本発明の部分は、記載された/示された機能を実施するために単一の物理的実体中に一体化されることができる。記載された本発明の実施態様及び記載された実施態様に述べられた特徴の異なる組合せを含む本発明の実施態様の変更例は、いずれかの他の実施態様の一実施態様に記載された特徴の使用を含むがそれに限定されない全ての可能な組合せで組合されることができる。特に、方法に記載された特徴は、装置を特徴付けるために使用されることができ、装置に記載された特徴は方法を特徴付けるために使用されることができる。本発明の範囲は以下の請求項によってのみ限定される。
【0088】
本出願の記載及び請求項において、動詞「含む(comprise)」、「含む(include)」及び「持つ(have)」並びにそれらのいずれかの活用変化のそれぞれは、動詞の目的語(単数または複数)が動詞の主語(単数または複数)の部材、成分、要素または部品の完全なリストでは必ずしもないことを示すために使用される。
【0089】
この文献中に引用された全ての刊行物及び/または特許及び/または製品記載は、それぞれが参考としてここに個々に組込まれているのと同じ範囲で参考として完全にここに組込まれている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体流れを二つの出口方向間で振動させる方法において、
(a)二つの出口方向により特徴付けられる導管を通して流体の主流れを発生させること;及び
(b)第一と第二振動制御口を設けること、
を含み、前記第一及び第二振動制御口が前記導管に対して横断しておりかつフィードバック管により互いに連結されていることを特徴とする方法。
【請求項2】
(c)追加の流体を振動制御口の上流の前記導管と流体連通している少なくとも一つの吸引口を通して主流れと結合させることにより主流れを拡大して拡大流れを作ること、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
(c)フィードバック管の長さを変えることにより振動の周期を変えること、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
(c)フィードバック管を通る第二流れを防ぐことにより振動を中断すること、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
防ぐことがフィードバック管を封止することを含むことを特徴とする請求項4に記載の方法。
【請求項6】
(c)主流れの速度を変えることにより振動の周期を変えること、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
(c)フィードバック管の直径を制御することにより振動の周期を調節すること、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
(c)フィードバック管の容積を制御することにより振動の周期を調節すること、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
(c)導管寸法を制御することにより振動の周期を調節すること、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
(c)制御口寸法を制御することにより振動の周期を調節すること、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
主流れを発生させることが先細末広ノズルを通して主流れを方向付けることを含むことを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
振動出口方向を持つ流体ジェットを作る自動機構において、
(a)流体流れを運ぶように適合された導管であって、二つの出口方向により特徴付けられる導管;及び
(b)第一と第二振動制御口で終了するフィードバック制御管であって、第一及び第二振動制御口が前記導管の壁に横断しておりかつフィードバック管により互いに連結されるフィードバック制御管、
を含むことを特徴とする機構。
【請求項13】
(c)制御された入力圧で流れを導管中に方向付けるように適合したジェット口、
を含むことを特徴とする請求項12に記載の機構。
【請求項14】
ジェット口が先細末広ノズルを含むことを特徴とする請求項12または13に記載の機構。
【請求項15】
(d)前記導管及び機構に対して外部の環境と流体連通している少なくとも一つの吸引口であって、追加の流体を主流れと結合させて拡大流れを作ることができる少なくとも一つの吸引スロット、
を含むことを特徴とする請求項12〜14のいずれかに記載の機構。
【請求項16】
流れからのエネルギーのみに基づいた自動振動のために適合していることを特徴とする請求項12〜15のいずれかに記載の機構。
【請求項17】
振動調節機構を含むことを特徴とする請求項12〜16のいずれかに記載の機構。
【請求項18】
振動調節機構がフィードバック管の容積を変えることにより振動の周期を変えるように適合していることを特徴とする請求項17に記載の機構。
【請求項19】
振動調節機構が導管を通る流体流れを変えるように適合していることを特徴とする請求項17または18に記載の機構。
【請求項20】
フィードバック管に適合した振動中断機構を含むことを特徴とする請求項12〜19のいずれかに記載の機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−526258(P2010−526258A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−505000(P2010−505000)
【出願日】平成20年4月27日(2008.4.27)
【国際出願番号】PCT/IL2008/000541
【国際公開番号】WO2008/135967
【国際公開日】平成20年11月13日(2008.11.13)
【出願人】(501177609)ラモット・アット・テル・アビブ・ユニバーシテイ・リミテッド (14)
【氏名又は名称原語表記】RAMOT AT TEL AVIV UNIVERSITY LTD.