説明

流体フィルタ

流体フィルタ1は、3次元網状骨格構造を有した通気性セラミック多孔体よりなる直方体形の板状体よりなる。この板状体には、一側面1aからこれと平行な他側面1bにかけて貫通した貫通孔よりなる空室2が多数設けられている。この貫通孔は円形孔であり、該側面1a、1bにおいて千鳥配置となるように設けられている。空室2を設けたことにより、圧損が減少し、長期にわたり低圧損にてガスを除塵処理することができる。

【発明の詳細な説明】
発明の分野
本発明は、流体フィルタに係り、特に、セラミック多孔体よりなる流体フィルタに関する。
発明の背景
従来より、内部連通空間を有する3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体、例えばセル膜のない軟質ポリウレタンフォームをセラミックスラリーに浸漬し、セラミックをポリウレタンフォームの骨格に付着させ、これを乾燥、焼成することによって得られた3次元網状骨格を有するセラミック多孔体が知られている(例えば、特開平11−285782号、特開2000−109376号)。
このセラミック多孔体は、かさ比重が小さく、耐熱性が高く、通気抵抗、即ち圧力損失が低い等の特徴を有するため、厨房用グリスフィルター、触媒担体、通気性断熱材、溶融金属ろ過材等に用いられているが、これらの用途に使用するにあたっては圧力損失ができるかぎり低いことが求められている。
従来、圧力損失を小さくするには、ポリウレタンフォームへのセラミックスラリーの付着度合いを少なくし、目づまりをほとんどなくすことが行われていたが、このようにすると、見かけ比重が小さくなり、強度面で問題があった。
また、セラミックスラリー中へ種々の有機系の界面活性剤、解膠剤などを添加して泥漿特性を調節する方法が採用されており、この方法によれば、骨格は太くなり、強度も大きくなるが、目づまりが多少生じ、圧力損失は十分には下がらないという問題がある。しかも、セラミック原料土のほか可燃消失の有機成分が多いため、得られたセラミック多孔体は気孔が多く残り、ポーラスな構造となる。このため、例えば含塵ガスのフィルタとして用いた場合、粉塵がセラミック多孔体の骨格に侵入し、経時的に圧損が上昇する。また、ポーラスな骨格のため、強度面で問題がある。
発明の目的
本発明は、除塵性能に優れると共に圧力損失が低いセラミック多孔体よりなる流体フィルタを提供することを目的とする。
発明の概要
第1アスペクトの流体フィルタは、第1の面及び該第1の面に対向する第2の面を有し、流体が該第1の面から第2の面に向って流通するセラミック多孔体よりなる流体フィルタにおいて、該第1の面と第2の面との間に空室が設けられていることを特徴とするものである。この空室を設けることにより、流体フィルタの圧損上昇が低減される。
第1アスペクトの流体フィルタの一態様においては、多孔体は、第1の面と第2の面とを結ぶ第1の側面及び該第1の側面に対向する第2の側面を有しており、空室は、該第1の側面から第2の側面に貫通する孔にて構成される。この場合、孔は、複数個設けられることが好ましい。さらに、かかる孔にて空室を構成した場合、孔内周面の少なくとも一部、とりわけ第2の面側の内周面にシール層を設けることが好適である。このシール層は、塗料を塗布することにより容易に構成することができる。
第1アスペクトの別の一態様においては、空室は第1の面及び第2の面に沿ってこれらの面の広がり方向(直交2方向)に延在する。
第1アスペクトの更に別の態様においては、該第2の面側の孔径が第1の面側よりも小さい。
第2アスペクトの流体フィルタは、外周面及び内周面を有し、流体が一方の周面から他方の周面に向って流通する筒形のセラミック多孔体よりなる流体フィルタにおいて、該流体の流通方向において平均孔径に分布が存在することを特徴とするものである。このように、流体の流通方向において平均孔径に分布を持たせることにより、除塵性能が向上すると共に、流体フィルタの圧損上昇が低減される。
この流体フィルタにおいては、流体の流通方向下流側ほど平均孔径を小さい構成とすることにより、除塵性能が向上する。
第2アスペクトの流体フィルタは、平均孔径が同一である領域が流体フィルタの筒軸方向と直交方向の断面において環状に存在することが好ましく、特に平均孔径の異なる環状領域が少なくとも2領域存在することが好ましい。
第2アスペクトの流体フィルタは円筒形であることが好ましい。
第1,第2アスペクトのセラミック多孔体は、内部連通空間を有する3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬して上記合成樹脂発泡体にセラミックを付着せしめた後、乾燥、焼成して得られる3次元網状骨格構造のセラミック多孔体であることが好ましい。
第1,第2アスペクトの流体フィルタは、空気などのガスを除塵処理するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
図1aは第1アスペクトの実施の形態に係る流体フィルタの斜視図、図1bは図1aのB−B線に沿う断面図、図1cは異なる形態に係る流体フィルタの断面図である。
図2aは第1アスペクトの別の実施の形態に係る流体フィルタの斜視図、図2bはこの流体フィルタの一部の断面図である。
図3aは第1アスペクトの異なる実施の形態に係る流体フィルタの斜視図、図3b,図3cは各々図3aのB−B線、C−C線断面図である。
図4aは第1アスペクトのさらに別の実施の形態に係る流体フィルタの斜視図、図4bは図4aのB−B線断面図である。
図5は比較例に係る流体フィルタの斜視図である。
図6は第1アスペクトのさらに別の実施の形態に係る流体フィルタの端面図である。
図7は第1アスペクトのさらに異なる実施の形態に係る流体フィルタの端面図である。
図8は第2アスペクトの実施の形態に係る流体フィルタの断面図である。
図9aは第2アスペクトの他の実施の形態に係る流体フィルタの斜視図、図9bはこのフィルタの断面図である。
詳細な説明
第1,第2アスペクトのセラミック多孔体は、好ましくは、内部連通空間を有する3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体を基材として作られるものである。
このような合成樹脂発泡体としては、内部連通空間を有する3次元網状骨格構造を有すればいずれのものも使用できるが、軟質ポリウレタンフォーム、特にセル膜のない軟質ポリウレタンフォームが好適に使用できる。このセル膜のないポリウレタンフォームとしては、発泡時のコントロールによりセル膜をなくしたもの、あるいはアルカリ処理、熱処理、水圧処理等によりセル膜を除去したものが使用でき、セル数、空孔率その他の物性は用途に応じて選択することができる。
第1アスペクトにおいては、この合成樹脂発泡体は、空室に対応した部分が抜かれている。
セラミック多孔体は、上述した合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬し、合成樹脂発泡体にセラミックスラリーを付着せしめた後、乾燥、焼成し、該合成樹脂発泡体を熱分解又は焼却して得られる。
セラミックとしては、アルミナ、シリカ、コーディエライト等の酸化物セラミックのほか、炭化珪素、窒化珪素などの非酸化物セラミック、あるいはサイアロン等が挙げられる。
なお、セラミックスラリーの安定性を増加させるため粘土を配合することができる。この粘土としては、例えば木節粘土、蛙目粘土などが使用できる。また、配合量は全セラミック成分に対し15%以下とすることが好ましい。15%より多く配合するとチクソトロピー指数が変化して目づまりの原因となる。
そのほかセラミックスラリーには必要に応じポリビニルアルコール、カルボキシルメチルセルロース等の結合剤を配合することによりチクソトロピー性を調整することもできる。
なお、セラミックスラリーの粘度は目的とするセラミック多孔体のセルの大きさなどに応じ、水の添加量を加減して調節することができる。
次に、上述したセラミックスラリーに3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体を浸漬し、次いで余剰泥漿を除去し、乾燥し、焼成炉で1000〜1500℃程度の温度で焼成することにより、合成樹脂発泡体に対応したセル構造の内部連通空間を有する3次元網状骨格構造のセラミック多孔体を得ることができる。
[1] 第1アスペクトの流体フィルタの説明
以下、図1〜7を参照して第1アスペクトの実施の形態について説明する。図1aは第1アスペクトの実施の形態に係る流体フィルタ1の斜視図、図1bは図1aのB−B線に沿う断面図である。
この流体フィルタ1は、上記のセラミック多孔体よりなる直方体形の板状体であり、図の上面(一方の主板面)から下面(他方の主板面)に向って空気などのガスが流通する。
この板状体の一側面1aからこれと平行な他側面1bにかけて貫通孔よりなる空室2が多数設けられている。この実施の形態では、貫通孔は円形孔であるが、楕円形など他の形状であってもよい。この実施の形態では、該空室は板状体の厚み方向に3段にわたって、且つ該一側面1aにおいて空室2が千鳥配置となるように設けられている。該一側面1aにおける空室2の開口面積比は20〜50%程度が好適である。この開口面積比は、空室2の開口面積の総和を該一側面1aの面積(厚さ×辺長)で除した百分比である。
このように空室2を設けた流体フィルタ1は、側面1a及び1b並びに残りの側面1c,1dからはガスを吸い込まないようにケーシング内に配置され、図の下面側を吸引するか、又は上面側を加圧して上面側から下面側にガスを流通させる。空室2を設けたことにより、圧損が減少し、長期にわたり低圧損にてガスを除塵処理することができる。
図1cのように、側面1a,1bにそれぞれ蓋1tを取り付け、側面1a,1bからはガスを吸い込まないようにしてもよい。この蓋は、熱膨張率の小さいセラミックよりなることが好ましい。
図2aは第1アスペクトの別の実施の形態に係る流体フィルタ1Aの斜視図、図2bはこの流体フィルタ1Aの一部の断面図である。
この流体フィルタ1Aにあっては、貫通孔よりなる空室2の内周面のうち、図の下半側に塗膜よりなるシール層3が形成されている。このシール層3としては、通常使用される有機接着剤や、得ようとするセラミックフォーム体と同質のスラリーで目つぶしすることにより形成したものなどが好適である。この流体フィルタ1Aのその他の構成は前記流体フィルタ1と同じである。なお、シール層3の延在範囲は、図2では周方向に180°となっているが、60〜180°の程度の間であればよい。
図示はしないが、図1cと同様に空室2が臨む側面に蓋を取り付けてもよい。
図3aは第1アスペクトの異なる実施の形態に係る流体フィルタ4の斜視図、図3b,図3cはそれぞれ図3aのB−B線、C−C線断面図である。
この流体フィルタ4は、セラミック多孔体よりなる直方体形の板状体よりなる。この板状体の一方の主板面(図の上面)から他方の主板面(図の下面)にガスが流通される。この板状体の一側面4aから他側面4bにかけて1個の貫通孔よりなる空室5が設けられている。この空室5は長方形断面形状であり、主板面と平行方向に延在している。この空室5の該一側面4aにおける開口面積比は50〜90%程度が好ましい。なお、空室5の該一側面4aにおける図3bの左右幅は流体フィルタ4の左右幅の70〜90%程度が好ましい。
この空室5を有する流体フィルタ4も、側面4a,4b,4c,4dからガスを吸い込まないようにケーシング内に配置され、図の下面側を吸引するか、又は上面側を加圧して図の上側主板面から下側主板面にガスを流通させる。この流体フィルタ4も、空室5を有しているため、圧損が長期にわたり低く保たれる。なお、図示はしないが、空室5の図の下面にシール層を設けてもよい。
図示は省略するが、図1cと同様に、側面4a,4bに蓋を取り付けてもよい。
図4aは第1アスペクトのさらに別の実施の形態に係る流体フィルタ1Bの斜視図、図4bは図4aのB−B線断面図である。
この流体フィルタ1Bは、前記図2に示す流体フィルタ1Aの一方の主板面に、セラミック多孔体よりなる板状体8を一体に設けたものである。板状体8の孔径は流体フィルタ1Aの孔径よりも小さい。板状体8の厚さは流体フィルタ1Aの厚さの15〜20%程度であることが好ましい。
この流体フィルタ1Bを製造するには、流体フィルタ1A製造用の合成樹脂発泡体と板状体8製造用の合成樹脂発泡体とを積層して一体化させ、これをセラミックスラリーに浸漬する他は上記と同様にすればよい。
この流体フィルタ1Bも、4側面からガスを吸引しないようにケーシング内に納められ、図の下面側(板状体8側)を吸引するか、又は上面側を加圧し、上面側から下面側にガスを流通させる。
図示はしないが、図1cと同様に、側面1a,1bに蓋を取り付けてもよい。
図6,図7は第1アスペクトのさらに別の実施の形態に係る流体フィルタ9,9Aの端面図である。
図6の流体フィルタ9は、中心孔10を有した円筒形であり、円筒の軸心線と平行方向に貫通する貫通孔よりなる複数の空室11,12,13を有する。複数の空室11は最も外周側に同心円状に配置され、複数の空室13は最も内周側に同心円状に配置され、複数の空室12はそれらの間に同心円状に配置されている。空室11,12,13の配置は、流体フィルタ9の端面において千鳥状となっている。空室11,12,13はこの順に小径となっている。空室11,12,13の合計の開口面積比は、流体フィルタ9の端面において20〜50%程度であることが好ましい。
この流体フィルタ9は、両端面からガスを吸い込まないようにしてケーシング内に配置され、中心孔10内を吸引するか、又は外周側を加圧し、外周面から内周面に向ってガスを流通させる。
図示は省略するが、後述の図9と同様に、フィルタの両端面に蓋を取り付けてもよい。この蓋は、後述の図9の蓋30tと同様の環状であり、中心孔10は塞がない。
この流体フィルタ9も、空室11,12,13を有するので、圧損が長期にわたり低く保たれる。
この円筒形の流体フィルタにおいても、図7の流体フィルタ9Aのように空室の内周面のうち吸引側にシール層14を設けてもよい。このシール層14は、図7では周方向に180°延在しているが、60〜180°程度であればよい。
このような第1アスペクトの流体フィルタは、含塵ガス用のフィルタとしては、空孔数が6〜25個/25mmであり、空隙率が75〜95%特に75〜90%であることが好ましい。なお、上述の図4の第2の板状体8を構成する目の細かいフィルタ材は、空孔数が30〜45個/25mmであり、空隙率が75〜95%特に78〜92%であることが好ましい。
図1〜4に示す流体フィルタ1,1A,4,1Bと図5に示す比較例に係る流体フィルタ20とについての圧損測定結果を次に説明する。
各実施例のセラミック多孔体(ただし図4の板状体8を除く。)は次のようにして製造されたものである。
即ち、バイヤー法アルミナ95重量部と、木節粘土5重量部と、ポリビニルアルコール4重量部と、水20重量部とを混合してセラミックスラリーを調製した。
このスラリーに1インチ(25mm)当たりセル数が30個の60cm×24cm×24cmの形状を有するセル膜のない3次元網状骨格構造の軟質ポリウレタンフォームを浸漬した。余分なスラリーを除去し、十分に乾燥し、次いで1300℃で10分間焼成を行ってセラミック多孔体を得た。このセラミック多孔体の平均孔径は0.83mmである。
図4の板状体8は、1インチ(25mm)当たりセル数が40個の1cm×24cm×24cmの形状を有するセル膜のない3次元網状骨格構造の軟質ポリウレタンフォームを用いて製造した。このセラミック多孔体の平均孔径は0.6mmである。
各実施例及び比較例の流体フィルタの構成は次の通りである。
実施例1: 7cm×24cm×24cmの板状体に、図1の通り、直径1.5cmの孔よりなる空室2を32個設けた。空室の開口面積比は33.6%である。
実施例2: 実施例1において、図2の通り、孔よりなる空室2の下側の半円周面にセラミックスラリーを塗布して厚さ0.2mmのシール層を設けたもの。
実施例3: 実施例1において、孔よりなる空室の代りに、図3の通り、1cm×22cm×22cmの空室5を厚み方向の中央に設けたもの。
実施例4: 図4の通り、厚さ6cmのセラミック多孔体よりなる流体フィルタ1Aと、厚さ1cmの空隙率85%、平均孔径0.6mmのセラミック多孔体よりなる板状体8とが一体化されたもの。
比較例1: 図5の通り、厚さ7cmの実施例1と同じセラミック多孔体よりなるもの。
各流体フィルタに風速1m/sec又は3m/secにて含塵空気を流通させて圧損及び捕集率の経時変化を測定した。含塵空気としては、JIS−15種の粉塵を含むものを用いた。粉塵含有量は、風速1m/secの場合0.16g/m、風速3m/secの場合0.05g/mである。結果を次の表1に示す。

表1の通り、実施例1〜4は比較例1に比べ圧損が低く粉塵捕集率が高い。
[2] 第2アスペクトの流体フィルタの説明
第2アスペクトの流体フィルタは、一方の周面から他方の周面へ流体が流通される。この流通方向において、平均孔径が分布を有しており、好ましくは、流通方向下流側の平均孔径が小さくなるようにする。
このように平均孔径に分布を持たせるには、前述の3次元網状骨格構造のセラミック多孔体の製造方法において、平均孔径が異なる、即ち目の粗さが異なる3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体筒状体を同軸的に係合させた筒状体を製作し、この筒状体をセラミックスラリーに浸漬し、余剰泥漿を除去し、乾燥し、焼成炉で焼成すればよい。
第2アスペクトの流体フィルタにより空気を除塵処理する場合、空気は外周面側から内周面側に流通されることが好ましく、この場合、内周面側ほど平均孔径が小さくなるようにするのが好ましい。この流体フィルタの最外周側にあっては、空孔数が6〜25個/25mmであり、空隙率が75〜95%であることが好ましい。また、最内周側にあっては、空孔数が30〜50個/25mmであり、空隙率が75〜95%であることが好ましい。
ただし、空気は内周面側から外周面側に流通されてもよく、この場合には、外周面側ほど平均孔径が小さくなるようにするのが好ましい。
以下、図8を参照して第2アスペクトの実施の形態について説明する。図8は第2アスペクトの実施の形態に係る流体フィルタ30の筒軸方向と直交方向の断面図である。
この流体フィルタ30は、円筒形状のものである。外周面41から内周面42に向って、又は内周面42から外周面41に向って、流体として空気等のガスが流通される。この流体フィルタ30は、比較的目が粗い第1領域31、比較的目が細かい第3領域33及び目の粗さがこれらの中間である第2領域32との3領域を有している。外周面から内周面に向って流体を流す場合、第1領域31は最外周に配置され、第3領域33は最内周に配置され、第2領域32はこれらの間に配置されている。
逆に、内周面42から外周面41に向って流体を流すときには、第1領域は最内周に配置され、第3領域は最外周に配置される。
第1領域31は空孔数が6〜25個/25mm特に13〜22個/25mmであり、空隙率が75〜95%特に75〜90%とりわけ85〜90%であることが好ましい。
第2領域32は空孔数が20〜35個/25mm特に27〜35個/25mmであり、空隙率が75〜95%特に84〜88%であることが好ましい。
第3領域33は空孔数が30〜50個/25mm特に35〜45個/25mmであり、空隙率が75〜95%特に78〜92%とりわけ82〜86%であることが好ましい。
第1領域の径方向の厚さは、第1、第2、第3領域の合計の38〜46%が好ましく、第2領域の径方向の厚さは、第1、第2、第3領域の合計の38〜46%が好ましく、第3領域の径方向の厚さは、第1、第2、第3領域の合計の11〜22%が好ましい。
図8では3領域31,32,33が設けられているが、2領域であってもよく、4領域以上であってもよい。ただし、製造コストと除塵特性とを勘案すると、3〜4領域程度が好ましい。
空気フィルタとして用いる場合、流体フィルタ30の外径(直径)は200〜300mm程度が好ましく、内径(直径)は90〜120mm程度が好ましい。流体フィルタ30の筒軸方向の長さは、外径の0.5〜1.5倍程度が好ましい。空気の流通速度は2〜7m/sec程度が好適である。
図9に示すように、フィルタ30の両端面に蓋30tを取り付けてもよい。この蓋30tは環状である。この蓋は、熱膨張率の小さいセラミックよりなることが好ましい。
なお、内周面側から外周面側に空気等の流体を流通させるときには、前述の通り、最内周側に上記第1領域31を配置し、最外周側に上記第3領域を配置すればよい。この場合も、2領域又は4領域以上設けられてもよく、コスト等の点からは3〜4領域程度が好ましい。
図8に示す流体フィルタ30と、比較例に係る流体フィルタとについて行った圧損測定結果を次に説明する。
実施例5のセラミック多孔体は次のようにして製造されたものである。
即ち、バイヤー法アルミナ95重量部と、木節粘土5重量部と、ポリビニルアルコール4重量部と、水20重量部とを混合してセラミックスラリーを調製した。
また、1インチ(25mm)当たりセル数が24個の外径24.4cm、内径19.3cm、長さ10.2cmの円筒形状を有するセル膜のない3次元網状骨格構造の軟質ポリウレタンフォーム(第1領域用)と、1インチ(25mm)当たりセル数が30個の外径19.3cm、内径14.2cm、長さ10.2cmの円筒形状を有するセル膜のない3次元網状骨格構造の軟質ポリウレタンフォーム(第2領域用)と、1インチ(25mm)当たりセル数が40個の外径14.2cm、内径12.2cm、長さ10.2cmの円筒形状を有するセル膜のない3次元網状骨格構造の軟質ポリウレタンフォーム(第3領域用)とを嵌め合わせてポリウレタンフォーム筒状体を製作した。この筒状体を上記スラリーに浸漬した。余分なスラリーを除去し、十分に乾燥し、次いで1300℃で10時間焼成を行ってセラミック多孔体を得た。このセラミック多孔体の平均孔径は、第1領域では1.04mm、第2領域では0.82mm、第3領域では0.61mmである。なお、焼成された後の流体フィルタの外径は240mm、内径は120mm、長さは100mm、第1領域の厚さは25mm、第2領域の厚さは25mm、第3領域の厚さは10mmである。
比較例2の流体フィルタは、全体が上記第1領域のセラミック多孔体であり、比較例3の流体フィルタは全体が第2領域のセラミック多孔体であり、比較例4の流体フィルタは全体が第3領域のセラミック多孔体である。
各流体フィルタに風速3m/secにて含塵空気を流通させて圧損及び捕集率の経時変化を測定した。含塵空気としては、JIS−12種の粉塵を0.08g/m含むものを用いた。結果を次の表2に示す。

表2の通り、実施例5は総合的にみて圧損が低く粉塵捕集率が高い。




【図5】

【図6】

【図7】

【図8】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の面及び該第1の面に対向する第2の面を有し、流体が該第1の面から第2の面に向って流通するセラミック多孔体よりなる流体フィルタにおいて、
該第1の面と第2の面との間に空室が設けられていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項2】
請求項1において、前記空室として該孔が複数個設けられていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項3】
請求項2において、孔内周面の少なくとも一部に流体シール層が設けられていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項4】
請求項3において、該孔内周面のうち前記第2の面側に該流体シール層が設けられていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項5】
請求項3において、該流体シール層は塗膜よりなることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項6】
請求項1において、該空室は、該第1の面及び第2の面に沿って延在していることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項7】
請求項1において、該第2の面側の細孔径が第1の面側よりも小さいことを特徴とする流体フィルタ。
【請求項8】
請求項1において、該セラミック多孔体の空孔数が6〜25個/25mmであり、空隙率が75〜95%であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項9】
請求項1において、該セラミック多孔体は板状体であり、一方の主板面から他方の主板面に向って流体が流通し、該板状体の一側面からこれと平行な他側面にかけて貫通孔よりなる空室が多数設けられていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項10】
請求項9において、該空室は板状体の厚み方向に複数段にわたって、且つ該一側面において空室が千鳥配置となるように設けられていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項11】
請求項9において、該一側面における空室の開口面積比は20〜50%であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項12】
請求項9において、前記貫通孔よりなる空室の内周面のうち、前記他方の主板面側に流体シール層が形成されていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項13】
請求項9において、前記セラミック多孔体よりなる第1の板状体の他方の主板面に、該セラミック多孔体よりも孔径の小さいセラミック多孔体よりなる第2の板状体が積層配置されていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項14】
請求項13において、該第2の板状体の厚さが第1の板状体の厚さの15〜20%であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項15】
請求項13において、該第2の板状体を構成するセラミック多孔体の空孔数が30〜45個/25mmであり、空隙率が75〜95%であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項16】
請求項1において、該セラミック多孔体は板状体であり、一方の主板面から他方の主板面に向って流体が流通し、該板状体の一側面からこれと平行な他側面にかけて、方形断面形状の1個の貫通孔よりなる空室が設けられていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項17】
請求項16において、空室の該一側面における開口面積比は50〜90%であり、空室の該一側面における幅は該板状体の幅の70〜90%であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項18】
請求項1において、該セラミック多孔体は、中心孔を有した円筒形であり、円筒の軸心線と平行方向に貫通する貫通孔よりなる複数の空室を有することを特徴とする流体フィルタ。
【請求項19】
請求項18において、前記円筒形のセラミック多孔体の外周面から内周面に向って流体を流通させる流体フィルタであって、孔径の異なる複数種類の空室を有し、該空室は前記円筒の内周側から外周側へ向けて、該空室の孔径が大きくなるように配置されていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項20】
請求項18において、前記円筒形のセラミック多孔体の内周面から外周面に向って流体を流通させる流体フィルタであって、孔径の異なる複数種類の空室を有し、該空室は前記円筒の外周側から内周側へ向けて、該空室の孔径が大きくなるように配置されていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項21】
請求項1において、該セラミック多孔体が、内部連通空間を有する3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬して該合成樹脂発泡体にセラミックを付着せしめた後、乾燥し、焼成して得られる3次元網状骨格構造のセラミック多孔体であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項22】
請求項1ないし21のいずれか1項において、該第1の面及び第2の面に対して交叉する側面に蓋が設けられていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項23】
請求項22において、該蓋は熱膨張率の低い材料よりなることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項24】
請求項23において、該材料はセラミックであることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項25】
外周面及び内周面を有し、流体が一方の周面から他方の周面に向って流通する筒形のセラミック多孔体よりなる流体フィルタにおいて、
該流体の流通方向において平均孔径に分布が存在することを特徴とする流体フィルタ。
【請求項26】
請求項25において、該流体の流通方向の下流側ほど平均孔径が小さいことを特徴とする流体フィルタ。
【請求項27】
請求項26において、流体が外周面から内周面に向って流通されることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項28】
請求項27において、平均孔径が同一である領域が流体フィルタの筒軸方向と直交方向の断面において環状に存在することを特徴とする流体フィルタ。
【請求項29】
請求項27において、平均孔径の異なる環状領域が少なくとも2領域存在することを特徴とする流体フィルタ。
【請求項30】
請求項25において、円筒形であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項31】
請求項30において、流体は外周面側から内周面側に流通され、内周面側ほど平均孔径が小さいことを特徴とする流体フィルタ。
【請求項32】
請求項31において、最外周側にあっては、空孔数が6〜25個/25mm、空隙率が75〜95%であり、最内周側にあっては、空孔数が30〜45個/25mm、空隙率が75〜95%であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項33】
請求項28において、円筒形であり、流体は外周面側から内周面側に流通され、平均孔径の大きい第1領域、平均孔径の小さい第3領域及び平均孔径がこれらの中間である第2領域との3領域を有し、第1領域は最外周に配置され、第3領域は最内周に配置され、第2領域はこれらの間に配置されていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項34】
請求項28において、円筒形であり、流体は内周面側から外周面側に流通され、平均孔径の大きい第1領域、平均孔径の小さい第3領域及び平均孔径がこれらの中間である第2領域との3領域を有し、第1領域は最内周に配置され、第3領域は最外周に配置され、第2領域はこれらの間に配置されていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項35】
請求項33において、第1領域は空孔数が6〜25個/25mm、空隙率が75〜95%であり、第2領域は空孔数が20〜35個/25mm、空隙率が75〜95%であり、第3領域は空孔数が30〜50個/25mm、空隙率が75〜95%であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項36】
請求項34において、第1領域は空孔数が6〜25個/25mm、空隙率が75〜95%であり、第2領域は空孔数が20〜35個/25mm、空隙率が75〜95%であり、第3領域は空孔数が30〜50個/25mm、空隙率が75〜95%であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項37】
請求項33において、第1領域の径方向の厚さは、第1、第2、第3領域の合計の38〜46%であり、第2領域の径方向の厚さは、第1、第2、第3領域の合計の38〜46%であり、第3領域の径方向の厚さは、第1、第2、第3領域の合計の11〜22%であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項38】
請求項34において、第1領域の径方向の厚さは、第1、第2、第3領域の合計の38〜46%であり、第2領域の径方向の厚さは、第1、第2、第3領域の合計の38〜46%であり、第3領域の径方向の厚さは、第1、第2、第3領域の合計の11〜22%であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項39】
請求項33において、外径が200〜300mmで、内径が90〜120mmで、筒軸方向の長さは、外径の0.5〜1.5倍であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項40】
請求項34において、外径が200〜300mmで、内径が90〜120mmで、筒軸方向の長さは、外径の0.5〜1.5倍であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項41】
請求項25において、該セラミック多孔体が、内部連通空間を有する3次元網状骨格構造の合成樹脂発泡体をセラミックスラリーに浸漬して上記合成樹脂発泡体にセラミックを付着せしめた後、乾燥、焼成して得られる3次元網状骨格構造のセラミック多孔体であることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項42】
請求項25ないし41のいずれか1項において、該流体フィルタの端面に蓋が設けられていることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項43】
請求項42において、該蓋は熱膨張率の低い材料よりなることを特徴とする流体フィルタ。
【請求項44】
請求項43において、該材料はセラミックであることを特徴とする流体フィルタ。

【国際公開番号】WO2004/026439
【国際公開日】平成16年4月1日(2004.4.1)
【発行日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−568909(P2004−568909)
【国際出願番号】PCT/JP2003/011800
【国際出願日】平成15年9月17日(2003.9.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【出願人】(599114117)ジョンソン・マッセイ・ジャパン・インコーポレイテッド (6)
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY JAPAN, INC.
【Fターム(参考)】