説明

流体作業監視装置、パイプラインミルカー、バルククーラー

【課題】自動制御によるパイプライン洗浄作業等の洗浄不良の原因を究明できる流体作業監視機能を備えたパイプラインミルカーを提供する。
【解決手段】ミコン制御部101と、記憶手段102と、洗浄液の循環経路の所定の部位に臨ませて設けた流体の状態を検出するための温度センサ107、電気伝導度センサ108及びpHセンサ109を有し、前記記憶手段102には予め外部機器が実行する流体による複数の作業工程の種別特徴と良否判定に用いる作業工程の種別に応じた所定の基準値が格納されており、前記マイコン制御部101は前記各センサの経時的な出力変化と前記作業工程の種別特徴とを比較観察し、現在行われている流体による作業工程の種別を判定する工程種別判定手段と、前記各センサの出力が作業工程の種別に応じた所定の基準値を充たす状態が一定時間継続したかどうかにより、当該作業工程の良否を判断する作業工程良否判断手段101cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パイプラインミルカーやバルククーラー等の酪農用機器に関し、特に自動制御により行われる配管洗浄・搾乳・搾乳作業等の良否を自動判定するための流体作業監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
パイプラインミルカーを用いた集乳システムでは、一般に、図11のように真空ポンプP1により乳牛に装着した搾乳ユニット10から集乳ライン11を介してレシーバージャー12に生乳を集め、さらに集めた生乳を送乳ポンプP2によりバルククーラー30に送って巡回サービスによる集乳まで冷蔵保管する。これらの集乳システム及び保管システムにおいては、ミルクの品質保持のため、温度の管理と所定の手順に基づいた内部の洗浄・殺菌が重要である。
【0003】
パイプラインミルカーでは、真空ポンプP1及び送乳ポンプP2を利用した自動洗浄・殺菌システムが知られている。予め送乳ポンプPの吐出側配管13を洗浄槽20内に接続すると共に、洗浄槽20の上方を通る集乳ライン11の分岐管14に設けた接続口15、15・・・に搾乳ユニット10を接続する。そして搾乳ユニット10の各ティートカップの先端を洗浄槽20内の洗浄液に浸すことにより、洗浄槽20から、搾乳ユニット10、分岐管14、集乳ライン11、レシーバージャー12、送乳ポンプPを経由する洗浄液の循環回路を形成する。そして洗剤供給装置21から所定の種類・量の洗浄剤を洗浄槽20に供給し不図示の湯水バルブからの湯または水と混合することにより、所定量の洗浄液を洗浄槽20に貯溜する。そして真空ポンプP1と送乳ポンプP2を駆動することにより洗浄液を強制循環させ、搾乳ユニット10、集乳ライン11、レシーバージャー12を自動洗浄する。洗浄終了時やかけ流し洗浄の場合には、送乳ポンプP2の吐出側配管に設けた排水弁16を開放し、戻った水や洗浄液を自動排出する。洗剤供給装置21は殺菌剤を供給することも可能であり、殺菌工程では殺菌液を循環させて同様の処理を行う。これらの処理は、真空ポンプP1、送乳ポンプP2、洗剤供給装置21、湯水バルブ、排水弁16等の動作を制御する自動制御装置(不図示)によって行われる。
【0004】
パイプラインミルカーの洗浄方法は、搾乳作業の前後に、水、酸性・アルカリ性洗浄液等の洗浄水を循環させて洗浄を行う。通常の洗浄手順では、まず常温の水やぬるま湯による最初のかけすすぎにより、乳成分を洗い流す。次にアルカリ性洗浄剤を含む洗浄水での循環洗浄による脂肪分の分解洗浄や、酸性の洗浄水での循環洗浄による無機物類の除去などを順次行って溶けにくい汚れを除去する。その後、水やぬるま湯等で最後のかけすすぎを行って洗浄液を洗い流す。洗浄後、搾乳の前に、さらに殺菌液による殺菌作業を行うこともある。
【0005】
一方、バルククーラーの洗浄・殺菌においては、図12のように専用の洗浄ポンプを運転してタンクの内部に洗浄液・殺菌液を循環させ、自動洗浄することが知られている。バルククーラーの洗浄システムの構成は、例えばバルクタンク30の排水用配管31に洗浄ポンプP3、洗浄液供給装置40、湯水バルブ41を設けておき、洗浄ポンプP3から洗浄用配管32を経てバルククーラー30最上部のノズル33にいたる洗浄液の循環回路を形成する。そして洗剤供給装置21から所定の種類・量の洗浄剤・殺菌剤を排水用配管31に供給し不図示の湯水バルブからの湯または水と混合することにより、所定量の洗浄液を排水用配管31及びバルククーラー30の底部に貯溜する。その後分配羽根34を回転させながら洗浄ポンプP3を駆動させることにより、洗浄液をバルクタンク30内部に満遍なくゆきわたらせて自動洗浄する。洗浄終了時やかけ流し洗浄の場合には、排水用配管31の末端に設けた排水弁35を開放し、戻った水や洗浄液を自動排出する。殺菌工程を行う場合は同様に殺菌液を循環させて同様の処理を行う。これらの処理は、洗浄ポンプP3、排水弁35、分配羽根34の動作を制御する自動制御装置37によって実行される。
【0006】
バルククーラーの洗浄方法は、搾乳作業の前後に、水、酸性・アルカリ性洗浄液等の洗浄水を循環させて洗浄を行い、必要に応じて水によるすすぎを行うが、生乳の保存に必要な冷却温度まで装置内部を速やかに冷却するための温度管理も重要となる。例えば、洗浄液による洗浄の直前には薬剤による効果を高めるためにぬるま湯ですすいで配管・バルククーラーの温度を上げ、洗浄後には冷却時間を短縮するために冷水ですすいで配管・バルククーラーの温度を下げるというように、温度を変えて繰り返しすすぎを行う。通常の洗浄手順では、まず常温の水、ついでぬるま湯によるかけすすぎを行って、配管・バルククーラー等の温度を上げ、また乳成分を洗い流す。次にアルカリ性洗浄液での循環洗浄による脂肪分の分解洗浄を行い、常温の水ですすぎを行って洗浄液を洗い流す。さらに酸性洗浄液での循環洗浄による無機物類の除去を行い、溶けにくい汚れを除去する。最後に常温の水、次いで冷水でのすすぎを行って、洗浄液を洗い流すと共にバルククーラーの予冷を行う。洗浄後、貯乳の前に、さらに殺菌液による殺菌作業を行う。
【0007】
自動制御によりパイプラインミルカーやバルククーラーの洗浄と搾乳を行う場合、洗浄液の不足やすすぎ残しがあるとミルクの品質の劣化につながるので、洗浄不良がないかを逐次確認すると共に、トレーサビリティの要請から、乳質に問題が生じた場合に原因を究明できるよう、洗浄の良否を示すデータを記録しておくことが望ましい。
【0008】
特開2005−151804号公報記載の発明は、親機と子機からなるバルククーラー用の温度監視装置であって、バルククーラの内部に望ませて設けた温度センサを備えており、冷凍機・真空ポンプの作動状態と温度データを監視し、温度の推移を時系列のデータとして表示部に表示すると共に、ポンプの作動や温度の測定値から冷却の不全や操作の誤りを判断して警報するほか、本来温度が上昇すべき洗浄中に上昇しないなど、洗浄の不良が推定される場合にも警報表示を行うものである。
【0009】
特開2008−154470号公報記載の発明は、パイプラインミルカーの洗浄システムにおいて各洗剤を個別にタンクに貯留して順次洗浄槽に供給するのに用いられる洗剤供給装置であるが、洗剤の正しい投入を確認・記録するため、洗剤タンク内に洗剤の必要量が存在するかを判定する水位センサと洗剤の種類を判定する洗剤センサ(電気伝導度センサ、静電容量センサ等)を設けている。そして各洗浄工程の開始後に、洗剤供給装置の制御部が所定のタイミングでこれらの出力を予め記憶された基準値と比較して貯留された洗剤等の種類と量を確認し、その結果を記録すると共に表示部に表示するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2005−151804号公報
【特許文献2】特開2008−154470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
特許文献2記載の発明は、洗剤の種類を判別できる電気伝導度センサにより洗剤タンクやシリンダ内の洗剤量と洗剤の種類をチェックしている。しかしパイプラインミルカーの洗浄不良の原因としては、制御ミス・配管の漏れ・機器の作動不良などがあり、従来は、実際に配管内を循環する洗浄液等を直接確認できないため、不良の原因によっては判別できない場合が残されていた。これらを判定するためには、実際に配管内を循環する洗浄液等の種類や濃度を知る必要がある。また特許文献1記載の発明は、温度センサの測定値のみで洗浄工程の良否を推定しているために複数の洗浄工程を含むような複雑な自動洗浄システムでは、正確な判定が難しかった。
【0012】
本発明は、自動制御による酪農用機器の洗浄作業の良否判定において、洗浄等の各工程について配管内の洗剤の種類・量を直接確認し、洗浄不良の原因を究明できる流体作業監視装置を提供することを一つの目的とする。また、複数の洗浄剤等を用いる複雑な洗浄・搾乳作業であっても、各作業の良否を的確に判定できるパイプラインミルカー等の流体作業監視装置を提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1記載の発明は、自動制御により行われる酪農用機器の流体作業の進捗とその良否を自動判定する流体作業監視装置であって、該流体作業監視装置が、制御部と、記録手段と、ミルカー配管の所定の部位に臨ませて設けた温度センサと電気伝導度センサとを有し、前記記録手段には予め酪農用機器が実行する複数の作業工程の良否判定に用いる作業工程の種別に応じた所定の基準値が格納されており、前記制御部により、前記センサの全部またはいずれかの出力を前記良否判定に用いる作業工程の種別に応じた所定の基準値を充たしたかどうかにより、当該作業工程の良否を判断する作業工程良否判断手段とを備えていることを特徴とする。
【0014】
ここで酪農用機器の流体作業とは、パイプラインミルカーの洗浄・殺菌・集乳作業やバルククーラーの洗浄・殺菌・生乳冷蔵作業等をいう。流体作業監視装置が現在行われている作業工程の種別を判定するには、記録手段に予め作業工程の順序と、各作業工程の種別特徴(作業工程を判定するための各センサ出力の閾値)を記録しておき、次回に行われるべき現在行われている作業工程の種別を判定する方法と、酪農用機器の洗浄システムの自動制御装置や洗剤供給装置などの制御信号をモニタすることにより作業工程の種別を判定する方法とがあるが、酪農用機器と一体に設けられる流体作業監視装置では、制御の簡易さの面から後者が望ましい。
【0015】
一般的な酪農用機器の洗浄作業では、液温はすすぎ・殺菌工程では35〜50℃程度に保たれ、酸・アルカリ洗浄工程において60℃程度に上昇するので、現在いずれの工程にあるかを判断するのには温度センサが有効である。また電気伝導度は、通常の水では0に近いが、洗浄液が混入するとその濃度に従って大きくなるので、すすぎ工程と、洗浄工程を区別したり、洗剤の投入量を確認するのには電気伝導度センサが有効である。従って、温度センサと電気伝導度センサを併用することにより、洗浄・殺菌作業の良否を正確に判定することができる。
【0016】
良否判断に用いる基準値としては、センサの出力が基準値を充たす状態が一定時間繰り返されるかどうか、測定期間中に当該状態が一定回数表れたかどうか、又は当該状態を満たすセンサ出力の積算値が一定値以上となったかどうかを判断することにより行うことができる。一定時間(一定回数)とは固定値でも各工程ごとに異なる値でも良いが、異なる値とする場合は基準値の一部として記録手段に格納することが好ましい。
【0017】
請求項2記載の発明は、前記流体作業監視装置が温度センサ及び電気伝導度センサに加えてpHセンサをさらに備えたことを特徴とするものである。pHの値は、通常の水道水では6ないし7であり、アルカリ洗浄剤及び殺菌剤が投入されると大きくなり、酸性の洗浄剤が投入されると小さくなるので、pHセンサの出力により、洗浄剤や殺菌剤の種類と量とをさらに正確に判断することができる。従って、温度センサ・電気伝導度センサ・pHセンサを併用することにより、洗浄・殺菌作業の良否を正確に判定することができる。
【0018】
請求項3記載の発明は、前記流体による作業工程が洗浄工程と殺菌工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の流体作業監視装置である。温度センサ・電気伝導度センサ・pHセンサの全部または一部を適宜組み合わせることにより、洗浄・殺菌作業の良否をさらに正確に判断することができる。
【0019】
請求項4記載の発明は、さらに表示手段と入力手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項記載の流体作業監視装置である。表示手段には、現在行われている工程(搾乳機の洗浄作業であれば、酸洗浄・アルカリ洗浄・すすぎ)の表示や、作業の良否の判定を表示する。また洗浄方法により工程の順序や基準値が異なる場合であっても、入力手段から設定を行うことにより複数のプログラムから選択したり、記録手段に格納された基準値を書き替えて対応することができるので、自動制御装置の制御プログラムが更新された場合にも容易に対応できる。
【0020】
請求項5記載の発明は、前記記録手段が、作業工程良否判断手段による良否判断のデータを累積して記録することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の流体作業監視装置である。良否判断のデータを継続的に記録することにより不良品の発生を未然に防いだり、異常な事態の発生した原因を容易に特定することができる。電気伝導度のデータ等を記録に残す場合には、液温の測定値を参照してこれらを補正すればいっそう正確な記録とすることができる。
【0021】
請求項6記載の発明は、請求項1ないし5のいずれか一項記載の流体作業監視装置をパイプラインミルカーの洗浄殺菌工程の監視に用いるものであって、該流体作業監視装置が、自動洗浄システムの作動信号に基づいて作業工程の進捗を判断する機能を有することを特徴とするものである。作動信号とは、洗浄システムや洗剤供給装置の制御において、現在どの流体作業工程が行われているかを判別することのできる信号であり、洗浄システムや洗剤供給装置の制御装置にあらかじめ設定・記憶された作業工程手順に従って、他の機器を制御するために送出されるものである。好ましくは、洗浄槽に所定の種類・量の洗剤・殺菌剤等を供給するために用いられる洗剤供給装置の制御手段から、必要な作動信号を受信することができる。
【0022】
請求項7記載の発明は、請求項1ないし6のいずれか一項記載の流体作業監視装置をバルククーラーの洗浄殺菌工程の監視に用いるものであって、該流体作業監視装置が、洗浄システムの作動信号に基づいて作業工程の進捗を判断する機能を有することを特徴とするものである。好ましくは、洗浄システムの自動制御装置に含まれる洗剤供給装置制御手段から、必要な作動信号を受信することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】実施例1に係る流体作業監視装置の設置方法の概念図
【図2】図1の流体作業監視装置の制御回路の一例を示すブロック構成図
【図3】図2の記録手段に格納される洗浄・殺菌工程良否判断基準値テーブルの一例
【図4】洗浄・殺菌工程監視手順を示すフローチャート
【図5】搾乳機の洗浄工程時の各センサの出力変化を示す図
【図6】搾乳機の殺菌工程時の各センサの出力変化を示す図
【図7】実施例2に係る流体作業監視装置の設置方法の概念図
【図8】図2の記録手段に格納される洗浄・殺菌工程良否判断基準値テーブルの一例
【図9】バルククーラー洗浄工程時の各センサの出力変化を示す図
【図10】バルククーラー殺菌工程時の各センサの出力変化を示す図
【図11】パイプラインミルカーの自動洗浄システムの説明図
【図12】バルククーラーの自動洗浄システムの説明図
【図13】バケットミルカーの自動洗浄システムの説明図
【図14】図2の流体作業監視装置の制御回路の一例を示すブロック構成図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、図面を参照しながら、本発明の具体的な実施形態について説明する。
【実施例1】
【0025】
図1はパイプラインミルカーに流体作業監視装置1を設置する場合の一つの実施例を示す図である。本発明のパイプラインミルカーの洗浄システムは、図14に示されるものと略同様であるから同じ参照符号を用いて説明すると、予め洗浄液供給装置21、湯水バルブ22より所定量の洗浄液を洗浄槽20に貯溜しておき、送乳ポンプP2の吐出側配管(送乳ライン)13を洗浄槽20に接続すると共に、洗浄槽20の上方を通る集乳ライン11の分岐管14に設けた接続口15、15・・・に搾乳ユニット10を吊下げて、各ティートカップの先端を洗浄槽20内の洗浄液に浸すことにより、洗浄槽20から、搾乳ユニット10、分岐管14、集乳ライン11、レシーバージャー12、送乳ポンプP2、送乳ライン13を経由する洗浄液の循環回路を形成する。そして洗剤供給装置21から所定の種類・量の洗浄剤を洗浄槽20に供給し湯水バルブ22からの湯または水と混合することにより、所定量の洗浄剤をを洗浄槽20に貯溜し、送乳ポンプP2を駆動することにより洗浄液を強制循環させて、集乳ライン11や搾乳ユニット10等を自動洗浄する。洗浄終了時やかけ流し洗浄の場合には、送乳ポンプP2の吐出側配管に設けた排水弁16を開放し、戻った水や洗浄液を自動排出する。
【0026】
本実施例の流体作業監視装置1は、送乳ポンプP2のケーシング上に、洗浄システムの自動制御装置と一体に設けられている。送乳ポンプP2、湯水バルブ22、洗剤自動供給装置23、排水弁16等の動作を制御し、洗浄・殺菌等の各作業工程の進捗に応じて必要な洗剤等の種類と供給時間を制御することにより洗浄水等を洗浄槽に貯留し、真空ポンプP1、送乳ポンプP2の動作及び排水弁16の開閉により洗浄液を循環させて、必要な洗浄・殺菌工程を行わせる自動制御機能を備え、さらに洗浄・殺菌・搾乳工程の進捗に応じて洗浄・殺菌作業の良否を確認する機能を備えたものである。自動洗浄時に洗浄液等が通過する送乳ポンプP2の出口側配管に臨ませて、温度センサ・電気伝導度センサ・pHセンサが設置されており、各センサの出力が流体作業監視装置の制御回路100に出力される。なお流体作業監視装置1の設置箇所はこの位置に限らず、専用のスタンドにより設置するなど、任意の設置方法で見やすい場所に設置することができる。
【0027】
図2は制御回路100の一例を示すブロック構成図である。制御回路100において、マイコン101はA/D変換回路104〜106を介して、送乳ポンプP2の出力側配管の内部に設置された温度センサ107、電気伝導度センサ108、pHセンサ109と接続されている。温度センサ107は、洗浄・殺菌中、液温を測定し、アナログデータとしてA/D変換回路104に送信する。電気伝導度センサ108及びpHセンサ109は、洗浄・殺菌中、それぞれ配管内の電気伝導度及びpH等の変化を測定・記憶し、アナログデータとしてA/D変換回路105及び106に送信する。A/D変換回路104〜106はこれらのデータをデジタルデータに変換する。マイコン101はまた真空ポンプP1、送乳ポンプP2、洗剤供給装置21その他の外部機器と接続されている。
【0028】
制御回路100はまた、記録手段102、入力手段である洗浄・殺菌工程設定手段113と開始・停止スイッチ114、出力手段である表示装置110及び通信装置111を備え、さらに電源部112を備える。表示装置110は、装置の前面に設置された液晶表示装置、警報ランプ等であり、各洗浄又は殺菌工程の判別結果と、洗浄・殺菌結果の良否を表示する。通信装置111は、無線通信手段等により、判別した工程の順序と良否判断の記憶データを、無線機能を備えた酪農家のパソコン等に出力することができる。
【0029】
マイコン101は、洗浄・搾乳作業のモード信号に応じて自動制御プログラムから呼び出されて実行される論理ブロックとして、各A/D変換回路104〜106の信号を繰り返しモニタして記録手段102から読み出した基準値と比較して流体の質を判定する流体質判定手段101aと、洗浄及び殺菌工程の良否結果を判定する作業工程良否判断手段である洗浄及び殺菌工程良否判定手段101c、送乳ポンプ制御手段101d、真空ポンプ制御手段101f、洗剤供給装置制御手段101e等の外部機器制御手段を有している。記録手段102は不揮発性のメモリであり、良否判定と工程判定のプログラム、工程の順序と洗剤や水の所要量、判定基準値テーブル、現在の工程、過去の判定データ等が格納される。洗浄する対象(搾乳機・バルククーラー)や搾乳機制御装置や自動洗浄装置の機種によっては洗浄工程が異なる場合があるため、洗浄・殺菌工程設定手段113からの入力に従って、判定する工程・基準値等を選択設定できる方式となっている。設定内容は記録手段102に記録され、それに従ってマイコン101に各手順が呼び出される。
【0030】
図3は記録手段102に格納される洗浄・殺菌工程良否判断基準値テーブルの一例であり、第一すすぎ工程、アルカリ洗浄工程、第二すすぎ工程、酸リンス工程、殺菌工程に対応する液温、電気伝導度、pH、継続時間の基準値がそれぞれ記憶されている。例えば第一すすぎ工程で液温35〜50℃、電気伝導度0〜2mS/cm、pH6〜7が60秒間継続したときは、すすぎ工程が良と判断されることを示している。また、本実施例で良否判断の対象となるパイプラインミルカーの洗浄・殺菌工程における液温、電気伝導度及びpHの変化は、図5及び6のようになる。
【0031】
次に、図4のフローチャートを参照しながら、洗浄・殺菌作業監視の具体的な判定手順を説明する。本実施例では、記録手段121に設定された各工程について良否判定し、全ての工程で良であれば総合判定を良とし、表示装置に洗浄良と表示する。不良の工程があれば、表示装置に不良工程を全て表示する。各工程における判定手順を詳細に説明すると、まず開始・停止スイッチ114の押下(S101)により、マイコン101が、記録手段102に登録された工程の順序に従って、次に実行されるべき工程についての洗剤や水の所要量を読み出し、それに従って送乳ポンプ制御手段101d、真空ポンプ制御手段101f、洗剤供給装置制御手段101e等の外部機器制御手段が、送乳ポンプP2、真空ポンプP1、洗剤供給装置21等に制御信号を送信する。流体質判定手段101aは各センサにより温度・電気伝導度・pHの測定を開始し、(S102)次に記録手段102に記憶された現在の工程をチェックし(S103)、全洗浄・殺菌工程が完了していれば各工程の良否をチェックする(S104)。全工程が良判定であれば表示装置に全工程結果が良である旨を表示する(S106)。不良工程があるときは、表示装置に不良工程と不良内容とを表示する(S105)。
【0032】
洗浄及び殺菌工程良否判定手段101cによる具体的な工程良否判定手順は、まずタイマーをリセットして、作業時間の計測を開始する(S111)。そして一定間隔で液温・電気伝導度・pHの測定値を積算していく(S112)。そして作業開始からの時間を洗浄・殺菌工程時間を記録手段102から読み出した当該作業の時間基準値と比較し(S113)、基準値以下であればS112を繰り返す。基準値以上であればメモリに記録された液温・電気伝導度・pHの測定値を読み出し、これを基準値テーブルから読み出した各測定値の基準値と洗浄・殺菌工程時間基準値の積と比較し(S114)、判定結果を記録部に記録すると共に表示装置に表示する(S115)。良否判定を終えると温度・電気伝導度・pHの各積算値と洗浄工程時間のタイマーをリセットし(S116)、記録部に設定された手順に従って次の洗浄又は殺菌工程の判定に移る。なお上記の機器構成やアルゴリズムは一例であり、これに限られるものではない。また他の判断方法として、温度・電気伝導度・pHのそれぞれの測定値が基準値を超えた状態が一定回数表れたかどうか、又は当該状態を満たすセンサ出力の積算値が基準測定値と基準時間の積を超えたかどうか等により判断してもよい。
【0033】
以上のように、本実施例では、流体作業監視装置をパイプラインミルカーの洗浄殺菌工程の自動制御装置と一体に設け、温度センサ・電気伝導度センサ及びpHセンサ全部の出力について、作業工程の種別に応じて記録手段から読み出した基準値を充たす状態が一定時間継続したかどうかにより、当該作業工程の良否を判断し、不良の場合には警報を表示するので、洗浄・殺菌工程の不良による搾乳機器内部の細菌の増殖などの弊害を好適に防止することができる。
【0034】
また、初乳や治療牛の管理のためバケットミルカーをパイプラインミルカーと併用する場合においては、図14に示すように、搾乳用バケット50の口部に、洗浄液を吸い込む洗浄液吸込み手段と搾乳用バケット底部に流下した洗浄液を吸い上げる洗浄液送出手段とを備えた接続構造51を設置し、洗浄液出口に接続したチューブを集乳ラインの分岐管14に設けた接続口15に接続し、洗浄液入口に接続したミルククロー10のティートカップ先端を洗浄槽20内の洗浄液に浸すことにより、上と同様に、洗浄槽20から、ミルククロー10、搾乳用バケット50、分岐管14、集乳ライン11、レシーバージャー12、送乳ポンプP2を経由する洗浄液の循環回路を形成する。そして送乳ポンプP2を駆動することにより洗浄液を強制循環させて、搾乳用バケット50、集乳ライン14、搾乳ユニット10を同時に洗浄する。このときパイプラインミルカーについての流体作業監視装置1を作動させることにより、バケット等の洗浄の良否も判定することができる。
【実施例2】
【0035】
図7はバルククーラーの洗浄システムを示す図である。自動制御装置37は、バルククーラーの保冷と洗浄システムの両方を制御する機能を備えたものであり、貯乳時には送乳ポンプの作動状況に応じて冷凍機39を運転し、また洗浄時には洗剤自動供給装置40、湯水バルブ41の動作を制御し、洗浄・殺菌等の各作業工程の進捗に応じて必要な洗剤等の種類と供給時間を制御することにより洗浄水等を洗浄槽に貯留し、洗浄ポンプP3の動作及び排水弁35の開閉により洗浄液を循環させると共に分配羽根34を作動させて、必要な洗浄・殺菌工程を実行する。バルクタンク30の排水用配管31に洗浄ポンプP3と洗剤自動供給装置40、湯水バルブ41を設けておき、洗浄ポンプP3から洗浄用配管32を経てバルクタンク30最上部のノズル33にいたる洗浄液の循環回路を形成する。そして分配羽根34を回転させながら洗浄ポンプP3を駆動させることにより洗浄液をバルクタンク30内部に満遍なくゆきわたらせて自動洗浄する。洗浄終了時やかけ流し洗浄の場合には、洗浄ポンプの下流側に設けた排水弁35を開放し、戻った水や洗浄液を自動排出する。殺菌工程を行う場合は同じ回路に殺菌液を循環させて同様の処理を行う。
【0036】
本実施例の流体作業監視装置1’は、バルククーラーの洗浄・殺菌工程の良否を確認する機能を有するものであり、バルクタンク30の縁部や側面部に固定するか、専用のスタンドにより設置するなど、任意の設置方法で見やすい場所に設置される。自動洗浄時に洗浄液等が通過する洗浄用配管23に臨ませて、温度センサ107・電気伝導度センサ108・pHセンサ109が設置されており、各センサの出力が流体作業監視装置の制御回路100に出力される。また、自動制御装置37との通信手段を備えている。
【0037】
流体作業監視装置1’が備える制御回路のブロック構成は図14に示されるが、2に示される実施例1の制御回路と同様の部分については同じ参照符号を用いている。本実施例ではマイコン101は外部の自動制御装置37に接続され、現在行われている工程が何であるかを示す情報が入力される。マイコン101は、洗浄・搾乳作業の自動制御プログラムから呼び出されて実行される論理ブロックとして、各A/D変換回路104〜106の信号を繰り返しモニタして記録手段102から読み出した基準値と比較して流体の質を判定する流体質判定手段101aと、さらに洗浄及び殺菌工程の良否結果を判定する作業工程良否判断手段である洗浄及び殺菌工程良否判定手段101cを有している。記録手段102は不揮発性のメモリであり、良否判定のプログラム、判定する工程の順序、判定基準値テーブル、現在の工程、過去の判定データ等が格納される。酪農用機器の機種によっては洗浄工程が異なる場合があるため、洗浄・殺菌工程設定手段113からの入力に従って、判定する工程・基準値等を選択設定できる方式となっている。
【0038】
図8は本実施例において記録手段102に格納される洗浄・殺菌工程良否判断基準値テーブルの一例であり、第一すすぎ工程、第二すすぎ工程、アルカリ洗浄工程、第三すすぎ工程、酸リンス工程、第四すすぎ工程、第五すすぎ工程、殺菌工程にそれぞれ対応する液温、電気伝導度、pH、継続時間の基準値が記憶されている。例えば第一すすぎ工程で液温35〜50℃、電気伝導度0〜2mS/cm、pH6〜7が60秒間継続したときは、すすぎ工程が良と判断されることを示している。洗浄手順によっては、工程の判定に必ずしも液温・電気伝導度・pH値の測定値を全部考慮する必要はなく、液温が35℃〜50℃のときすすぎ又は殺菌工程、60℃以上のとき洗浄工程として判定することもできる。また、本実施例で良否判断の対象となるバルククーラーの洗浄・殺菌工程における液温、電気伝導度及びpHの変化は、図9及び10のようになる。また、洗浄・殺菌監視の具体的な判定手順は、図4に示される実施例1と同様である。
【0039】
以上のように、本実施例では、流体作業監視装置をバルククーラーの洗浄殺菌工程の監視に用い、温度センサ・電気伝導度センサ及びpHセンサ全部の出力について、作業工程の種別に応じて記録手段から読み出した基準値を充たす状態が一定時間継続したかどうかにより、当該作業工程の良否を判断し、不良の場合には警報を表示するので、洗浄・殺菌工程の不良による搾乳機器内部の細菌の増殖などの弊害を好適に防止することができる。
【符号の説明】
【0040】
1、1’ 流体作業監視装置
100 制御回路
101 マイコン制御部
101a 流体質判定手段
101c 洗浄及び殺菌工程良否判定手段(作業工程良否判断手段)
102 記憶手段
104〜106 A/D変換回路
107 温度センサ
108 電気伝導度センサ
109 pHセンサ
110 表示装置
111 通信装置
112 電源部
113 開始・停止スイッチ
114 洗浄・殺菌工程設定手段
115 洗剤供給装置制御手段

10 搾乳ユニット
11 集乳ライン
12 レシーバージャー
13 吐出側配管
14 分岐管
15 接続口
20 洗浄槽
21 洗剤供給装置
22 湯水バルブ

30 バルクタンク
31 排水用配管
32 洗浄用配管
33 ノズル
34 分配羽根
35 排水弁
39 冷凍機
40 洗剤自動供給装置
41 湯水バルブ

P1 真空ポンプ
P2 送乳ポンプ
P3 洗浄ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動制御により行われる酪農用機器の流体作業の進捗とその良否を自動判定する流体作業監視装置であって、該流体作業監視装置が、制御部と、記録手段と、ミルカー配管の所定の部位に臨ませて設けた温度センサと電気伝導度センサとを有し、前記記録手段には予め酪農用機器が実行する複数の作業工程の良否判定に用いる作業工程の種別に応じた所定の基準値が格納されており、前記制御部により、前記センサの全部またはいずれかの出力を前記良否判定に用いる作業工程の種別に応じた所定の基準値を充たしたかどうかにより、当該作業工程の良否を判断する作業工程良否判断手段とを備えていることを特徴とする流体作業監視装置。
【請求項2】
ミルカー配管の所定の部位に臨ませて設けたpHセンサをさらに含むことを特徴とする請求項1記載の流体作業監視装置。
【請求項3】
前記流体による作業工程が洗浄工程と殺菌工程を含むことを特徴とする請求項1又は2記載の流体作業監視装置。
【請求項4】
前記流体作業監視装置がさらに表示手段及び操作手段を備えたことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の流体作業監視装置。
【請求項5】
前記記録手段は、作業工程良否判断手段による良否判断のデータを累積して記録することを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の流体作業監視装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれか一項記載の流体作業監視装置を備えたパイプラインミルカーであって、該流体作業監視装置が、自動洗浄システムの作動信号に基づいて作業工程の進捗を判断する機能を有することを特徴とするパイプラインミルカー。
【請求項7】
請求項1ないし5のいずれか一項記載の流体作業監視装置を備えたバルククーラーであって、該流体作業監視装置が、自動洗浄システムの作動信号に基づいて作業工程の進捗を判断する機能を有することを特徴とするバルククーラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−41473(P2011−41473A)
【公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−189738(P2009−189738)
【出願日】平成21年8月19日(2009.8.19)
【出願人】(000103921)オリオン機械株式会社 (450)