説明

流体供給システム

【課題】 ポンプが逆回転しても、流体の供給を連続的に行う。
【解決手段】 ポンプ4の吸引口6側にポンプ4の正回転時に流体10を吸引する正回転時吸引ライン7を設け、ポンプ4の吐出口8側にポンプ4の逆回転時に流体10を吸引する逆回転時吸引ライン9を設け、正回転時吸引ライン7及び逆回転時吸引ライン9にポンプ4側へのみ流体10を流す逆止弁12,13をそれぞれ設け、逆回転時吸引ライン9の吐出口8と逆止弁13との間に流体被供給部5に繋がる正回転時吐出ライン14を接続し、正回転時吸引ライン7の吸引口6と逆止弁12との間に流体被供給部5に繋がる逆回転時吐出ライン15を接続し、正回転時吐出ライン14及び逆回転時吐出ライン15に流体被供給部5側にのみ流体10を流す逆止弁16,17をそれぞれ設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、潤滑油等の流体をポンプにて流体被供給部に供給する流体供給システムに係り、特に、ポンプの正回転及び逆回転に拘わらず、流体被供給部に潤滑油等の上記流体を供給できるように改良された流体供給システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、タンク等に溜められた潤滑油等の流体をポンプにて流体被供給部に送り出すには、図3に示すように、タンク31とポンプ32の吸引口33との間にタンク31内の流体34を吸引する吸引ライン35を設けると共に、ポンプ32の吐出口36に流体被供給部(図示せず)に延びる吐出ライン37を設ける構成が一般的である。
【0003】
上記構成によると、ポンプ32が回転することで、タンク31内の流体が、吸引ライン35を通って吸引口33から吸引され、吐出口36から吐出されて吐出ライン37を通って流体被供給部に供給される。
【0004】
【特許文献1】特開平10−184957号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ポンプ32の回転軸38が、コンプレッサ(図示せず)等の回転軸に連結されている場合、ポンプ32の回転軸38が逆回転してしまうことがある。これは、コンプレッサの停止時に、コンプレッサによって圧縮された空気等が、コンプレッサへと逆流して逆回転し、回転軸38を逆回転させるためである。通常は、逆止弁によって、圧縮空気等が逆流しないように構成されているが、圧縮空気の圧力が高い場合、逆止弁が破損して、圧縮空気が逆流してしまうことがあった。
【0006】
ポンプ32の回転軸38が逆回転すると、上記構成では、図4に示すように、吐出側からタンク31内へと流体34が逆流してしまう。特に、軸受け等に潤滑油を供給する場合では、潤滑油の供給が停止すると、軸受けが焼き付いたりして流体被供給部が破損してしまうといった問題があった。
【0007】
なお、上述の特許文献1には、逆流を防止する構造が示されてはいるが、潤滑油等の流体の供給の停止を防止するものではなく、上記問題を解決するには至っていない。
【0008】
そこで、本発明は、上記問題を解決すべく案出されたものであり、その目的は、ポンプが逆回転しても、流体の供給を連続的に行うことができる流体供給システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決すべく、本発明は、コンプレッサ等の主機器等に連動するよう連結されたポンプで、上記主機器等が正回転して上記ポンプが正回転したときに上記主機器等の流体被供給部に潤滑油等の流体を供給すると共に、上記主機器等が逆回転して上記ポンプが逆回転したときにも上記主機器等の流体被供給部に上記流体を供給するための流体供給システムであって、上記ポンプの吸引口側に上記ポンプの正回転時に上記流体を吸引する正回転時吸引ラインを設け、上記ポンプの吐出口側に上記ポンプの逆回転時に上記流体を吸引する逆回転時吸引ラインを設け、上記正回転時吸引ライン及び上記逆回転時吸引ラインに上記ポンプ側へのみ流体を流す逆止弁をそれぞれ設け、上記逆回転時吸引ラインの上記吐出口と上記逆止弁との間に上記流体被供給部に繋がる正回転時吐出ラインを接続し、上記正回転時吸引ラインの上記吸引口と上記逆止弁との間に上記流体被供給部に繋がる逆回転時吐出ラインを接続し、上記正回転時吐出ライン及び上記逆回転時吐出ラインに上記流体被供給部側にのみ流体を流す逆止弁をそれぞれ設けた流体供給システムである。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポンプが逆回転しても、流体の供給を一定方向に連続的に行うことができるといった優れた効果を発揮する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に係る流体供給システムの好適な実施の形態を添付図面に基づいて詳述する。
【0012】
図1は本発明に係る流体供給システムの好適な実施の形態であってポンプが正回転する時の流体の流れを示した構成図、図2は本発明に係る流体供給システムの好適な実施の形態であってポンプが逆回転する時の流体の流れを示した構成図である。
【0013】
まず、本実施の形態に係る流体供給システム1の構成を説明する。
図示するように、かかる流体供給システム1は、コンプレッサ2等の主機器3等に連動するよう連結されたポンプ4で、主機器3等が正回転してポンプ4が正回転したときに主機器3等の流体被供給部5に潤滑油等の流体10を供給すると共に、主機器3等が逆回転してポンプ4が逆回転したときにも主機器3等の流体被供給部5に流体10を供給するように改良されたものである。ポンプ4は、コンプレッサ2の補器として設けられている。
【0014】
なお、ポンプ4は、コンプレッサ2等の主機器3を駆動させるモータ(図示せず)や駆動機(図示せず)で駆動される場合もある。
【0015】
流体供給システム1は、ポンプ4の吸引口6側に設けられポンプ4の正回転時に流体10を吸引する正回転時吸引ライン7と、ポンプ4の吐出口8側に設けられポンプ4の逆回転時に流体10を吸引する逆回転時吸引ライン9とを備えている。
【0016】
正回転時吸引ライン7及び逆回転時吸引ライン9は、共に流体10を溜めるタンク11の底部近傍まで延出している。正回転時吸引ライン7及び逆回転時吸引ライン9には、ポンプ4側へのみ流体10を流す逆止弁12,13がそれぞれ設けられている。
【0017】
逆回転時吸引ライン9の、ポンプ吐出口8と逆止弁13との間には、流体被供給部5に繋がる正回転時吐出ライン14が接続されている。一方、正回転時吸引ライン7の、ポンプ吸引口6と逆止弁12との間には、流体被供給部5に繋がる逆回転時吐出ライン15が接続されている。正回転時吐出ライン14及び逆回転時吐出ライン15には、流体被供給部5側にのみ流体10を流す逆止弁16,17がそれぞれ設けられている。
【0018】
正回転時吐出ライン14と逆回転時吐出ライン15とは、各逆止弁16,17の下流側で、互いに合流して、流体被供給部5に接続されている。
【0019】
次に、上記構成の流体供給システム1の作用を説明する。
【0020】
上記ポンプ4は、コンプレッサ2等の主機器3等に連結されており、主機器3等が正回転する際には、ポンプ4も正回転している。
【0021】
ポンプ4が正回転しているときは、図1に示すように、流体10は、正回転時吸引ライン7を介して、タンク11からポンプ4の吸引口6へと吸引される。このとき、流体10は逆止弁12の流れ方向へと流れるので、その流れが止められることはない。流体10は、ポンプ4の吐出口8から押し出され、逆回転時吸引ライン9の一部を流れた後、正回転時吐出ライン14を流れて、流体被供給部5へと供給される。このとき、逆回転時吸引ライン9は、タンク11内に延出しているが、逆止弁13によって、タンク11内への流体10の流入は防止され、流体10は正回転時吐出ライン14へと流れる。さらに、正回転時吐出ライン14内では、流体10は、逆止弁16の流れ方向へと流れるので、その流れが止められることはない。また、正回転時吐出ライン14と逆回転時吐出ライン15とは接続されているが、逆回転時吐出ライン15に逆止弁17が設けられているので、流体10が逆回転時吐出ライン15を逆流することはない。
【0022】
ポンプ4は、コンプレッサ2等の主機器3等が逆回転する際には、逆回転することとなる。
【0023】
ポンプ4が逆回転しているときは、図2示すように、流体10は、逆回転時吸引ライン9を介して、タンク11からポンプ4の吐出口8へと吸引される。このとき、流体10は逆止弁13の流れ方向へと流れるので、その流れが止められることはない。流体10は、ポンプ4の吸引口6から押し出され、正回転時吸引ライン7の一部を流れた後、逆回転時吐出ライン15を流れて、流体被供給部5へと供給される。このとき、正回転時吸引ライン7は、タンク11内に延出しているが、逆止弁12によって、タンク11内への流体10の流入は防止され、流体10は逆回転時吐出ライン15へと流れる。さらに、逆回転時吐出ライン15内では、流体10は、逆止弁17の流れ方向へと流れるので、その流れが止められることはない。また、正回転時吐出ライン14と逆回転時吐出ライン15とは接続されているが、正回転時吐出ライン14に逆止弁16が設けられているので、流体10が正回転時吐出ライン14を逆流することはない。
【0024】
以上のように、上記構成によれば、ポンプ4の回転が、正回転・逆回転いずれの場合においても、流体被供給部5に潤滑油等の流体10を連続的に供給することができる。従って、例えば、軸受けの焼き付け等は起こらないので、流体被供給部5が破損してしまうことはない。
【0025】
さらに、上記構成の流体供給システム1によれば、流体10が流れる各ライン7,9,14,15と逆止弁12,13,16,17を適宜配置して接続した機械的な構造であるので、電気的制御を必要とせず、イニシャルコスト及びランニングコストを低く抑えることができる。
【0026】
なお、上記実施の形態では、コンプレッサ2の補器として設けられたポンプ4を例に挙げて、流体供給システム1を説明したが、これに限られるものではない。かかる流体供給システム1は、逆回転する場合があるポンプ全般に適用可能である。
【0027】
また、上記流体供給システム1は、各ライン7,9,14,15及び逆止弁12,13,16,17を一体化することも可能である。この場合、正回転時吸引ライン7をポンプの吸引口に接続し、逆回転時吸引ライン9をポンプの吐出口に接続すると共に、正回転時吸引ライン7と逆回転時吸引ライン9をタンク内に挿入し、正回転時吐出ライン14と逆回転時吐出ライン15を流体被供給部に接続する。これによって、上述と同様の作用効果を得ることができる。このように、流体供給システムを一体化することによって、ポンプ、タンク及び流体被供給部に接続するだけで、各ライン7,9,14,15等の設置・組立てをすることなく、利用可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る流体供給システムの好適な実施の形態であってポンプが正回転する時の流体の流れを示した構成図である。
【図2】本発明に係る流体供給システムの好適な実施の形態であってポンプが逆回転する時の流体の流れを示した構成図である。
【図3】従来のポンプの接続状態であってポンプが正回転する時の流体の流れを示した構成図である。
【図4】従来のポンプの接続状態であってポンプが逆回転する時の流体の流れを示した構成図である。
【符号の説明】
【0029】
1 流体供給システム
2 コンプレッサ
3 主機器
4 ポンプ
5 流体被供給部
6 吸引口
7 正回転時吸引ライン
8 吐出口
9 逆回転時吸引ライン
12 逆止弁
13 逆止弁
14 正回転時吐出ライン
15 逆回転時吐出ライン
16 逆止弁
17 逆止弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コンプレッサ等の主機器等に連動するよう連結されたポンプで、上記主機器等が正回転して上記ポンプが正回転したときに上記主機器等の流体被供給部に潤滑油等の流体を供給すると共に、上記主機器等が逆回転して上記ポンプが逆回転したときにも上記主機器等の流体被供給部に上記流体を供給するための流体供給システムであって、
上記ポンプの吸引口側に上記ポンプの正回転時に上記流体を吸引する正回転時吸引ラインを設け、上記ポンプの吐出口側に上記ポンプの逆回転時に上記流体を吸引する逆回転時吸引ラインを設け、上記正回転時吸引ライン及び上記逆回転時吸引ラインに上記ポンプ側へのみ流体を流す逆止弁をそれぞれ設け、上記逆回転時吸引ラインの上記吐出口と上記逆止弁との間に上記流体被供給部に繋がる正回転時吐出ラインを接続し、上記正回転時吸引ラインの上記吸引口と上記逆止弁との間に上記流体被供給部に繋がる逆回転時吐出ラインを接続し、上記正回転時吐出ライン及び上記逆回転時吐出ラインに上記流体被供給部側にのみ流体を流す逆止弁をそれぞれ設けたことを特徴とする流体供給システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−64038(P2006−64038A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245777(P2004−245777)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)