説明

流体密度を計測するための装置及び方法

【課題】振動する流体輸送チューブの共振周波数を計測するタイプの密度計において、チューブ内の圧力により生じるストレスによる誤差を出来る限り小さくすることが可能な密度計を提供することを目的としている。
【解決手段】流体システムにおいて流体密度を計測するための装置は、振動チューブを囲むシースを有する。シース及びチューブは、流体の固定量により充填される空洞を形成する。圧力補償要素は、ハウジングを有し、ハウジング内に、第1と第2の圧力応答面が配設される。第1の面は、空洞と流体連絡しており、第2の面はハウジングと流体連絡する。通路は、チューブの内部とハウジングの内部との間で伸張して、チューブ圧力を第2の面に作用させる。第2の面に作用する圧力は、要素により空洞へ伝達されて、チューブ圧力内の変化を補償する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は流体密度の計測に関する。流体密度を計測するための装置は、密度計(デンシメータ)と呼ばれている。密度計は、化学プロセス、パイプライン(配管系統)、食物処理プラント及び他の同様な用途において使用される。
【背景技術】
【0002】
一つのタイプの密度計は、振動する流体輸送チューブの共振周波数を計測する。チューブの共振周波数は、それを通り流れる流体の密度に依存する。不幸にも共振周波数はまた、チューブ14における圧力により引き起こされるストレス(応力)に依存しており、それは計測における誤差を生じる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、上述した事情に鑑みなされたもので、振動する流体輸送チューブの共振周波数を計測するタイプの密度計において、流体輸送チューブ内の圧力により生じるストレス(応力)による誤差を出来る限り小さくすることが可能な密度計を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一つの形態は、流体システム(装置)において流体密度を計測するための装置である。シース(さや状体)が振動チューブを囲む。シース及びチューブは、流体の固定量により充填される空洞を形成する。圧力補償(又は、緩和)要素は、ハウジングを有し、ハウジング内に、第1と第2の圧力応答面が配設される。第1の面は、空洞と流体連絡しており、第2の面はハウジングと流体連絡する。通路は、チューブの内部とハウジングの内部との間で伸張して、チューブ圧力を第2の面に作用させる。第2の面に作用する圧力は、要素により空洞へ伝達されて、チューブ圧力内の変化を補償(又は、緩和)する。
【0005】
本発明の別の形態は、密度を検知するための振動チューブを有する、密度計におけるライン圧力の変化のための補償(又は、緩和)方法である。固定された量の流体が、チューブの周りに形成された空洞を充填する。第1の圧力応答面は、空洞と流体連絡しており、第2の圧力応答面は、チューブと流体連絡する。第2の面への圧力は、空洞に伝達されて、チューブ圧力における変化を補償(又は、緩和)する。
【0006】
本発明を実施するための最良のモードの特定の実施の形態の特徴は、図面において図解されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1において、ドライバー(駆動部)10及びセンサ12は、振動チューブ14の外壁に設置される。振動チューブ14は、化学プラント、精製(又は、精油)所又は食物処理プラント等の流動流体システム(装置)(図示されない)に装備される。チューブ14は、流体システム(装置)に直接的に装備可能であるため、全ての流体はチューブ14を通り流れるか、又は1999年11月2日に発行した、米国特許第5,974,858号に図解されるような状態で、プローブ(探査針)として装備可能である。米国特許第5,974,858号の開示は、本明細書において資料として引用される。センサ12の出力は、遅延器(delay)16も具備する、フィードバック・ループ(回路)で、増幅器11によりドライバー(駆動部)10に接続される。一般的に、ドライバー10及びセンサ12は、圧電素子(デバイス)又は磁性素子(デバイス)である。センサ12からドライバー10までのフィードバック・ループにより、チューブ14は、その共振周波数又はそれの倍周波数において振動する。増幅器11は、これらの振動のための動力を提供する。センサ12の出力からドライバー10の入力への相シフト(変換)は、ドライバー10とセンサ12の相対的周方向の配置に部分的に依存する。振動のモード、即ち軸方向又は半径方向は、ドライバー10とセンサ12の相対的配置等のフィードバック・ループにおいて確立される条件に依存する。もしチューブ14が大きな(例えば、25.4mm(1インチ)より大きい)直径を有するならば、半径方向における共振周波数が、密度を計測するために使用されるが、その理由は、そうでなければ、チューブ14は、1500から4500Hzの共振周波数を保持するために長すぎるものでなければならないからである。
この場合において、もしチューブ14が小さな(例えば、25.4mm(1インチ)以下の)直径を有するならば、軸方向における共振周波数が、密度を計測するために使用されるが、その理由は、そうでなければ、チューブ14は、長すぎるものでなければならないからであり、一般的な共振周波数は、1000から1500Hzの範囲にある。記述された構成要素は、電気式発振器類似しており、チューブ14の質量及びバネ定数は、発振器のタンク回路に類似する。遅延器16は、再発電式(regenerative)フィードバックを生成するように設計される。遅延器16は、チューブ14の周囲の周りにおけるドライバー10とセンサ12の相対的配置により生じる遅延、及び/又はフィードバック・ループにおける電気的遅延を提供する。従来技術において既知なように、チューブ14の共振周波数は、チューブの質量、バネ定数、チューブ14を通り流れる流体の密度、チューブ14内部の流体の温度に依存する。
【0008】
点線21で示されるように、温度センサ18は、チューブ14内部の流体温度の代表値である、チューブ14の温度に対応する。センサ18は、温度に対して直線的関係で抵抗を変化させる、既製の抵抗(resistive)温度デバイス(素子)(RTD)であり得る。そこに含まれる流体を含むチューブ14の共振周波数又はその倍数周波数を示す、センサ12の出力は、選択されたモードにおいて、そのセンサ12の出力及び外部温度センサ18の出力は、チューブ14内に含まれる流体の密度を計算するようにプログラムされた、マイクロプロセッサ22の入力に接続する。計算された密度は、表示装置24から読み取ることができる。
【0009】
これとは別に本発明は、流体システムにおいて、静止流体、即ち流れていない流体の密度又は流体の流量を、コリオリ(Coriolis)メーターのように、計測することに使用可能である。
【0010】
図2Aから2Dは、密度計を詳細に示している。シース(さや状体)26は、振動チューブ14(図示されない)を囲む。ハウジング28は、例えば溶着(又は、溶接)により、シース26の外側に取り付けられる。シース26、チューブ14及びハウジング28は、例えば溶着(又は、溶接)により、接続フランジ30と32に接合される。
【0011】
図3Aから3Cにおいて、振動チューブ14は、化学プラント、パイプライン又は食物処理において使用されるような流体システム(装置)に接続する。その密度が計測されるべき、流体は、チューブ14を通り流れる。シース26はチューブ14を囲む。一般的に、シース26は、チューブ14に比べてより厚い壁を有するので、それは、チューブ14内の圧力変化により、顕著には膨張及び収縮しない。シース26及びチューブ14は、それらの間に空洞36を形成する。図1に示される電子部品、所謂音響ドライバー、振動センサ、増幅器及び遅延回路は、空洞36内に設置される。ハウジング28は、圧力補償(又は、緩和)要素38の周りに配設される。圧力補償要素38は、空洞36と流体連絡するチャンバー(室)40を有する。本実施の形態において、圧力補償要素38は、中空弾性シリンダの形を有する。シリンダの内部は、第1の圧力応答面として作用し、シリンダの外部は、第2の圧力応答面として作用する。空洞36及びチャンバー40は、固定された量(体積)の流体により充填され、その流体は、電子部品を保護するために、比較的非圧縮性で且つ不導電性であることが好ましい。この流体はまた、流体システム(装置)の性質に依存して、例えば化学的不活性等の別の特性を保有可能である。結果的に、チャンバー40は、チューブ14の内部と同じ圧力であり、チューブ14内の圧力は、第1の面により支持される。フランジ32内に形成された通路42は、チューブ14の内側をハウジング28の内部に接続する。結局、ハウジング28の内部は、チューブ14の内部と同じ圧力であり、チューブ14の圧力は、第2の面により支持される。
【0012】
図3Bと3Cで最も良く示されるように、ハウジング28は、本実施の形態においてその周囲を切断される部分を有して、例えば溶着等によりシース26への取り付けを容易にしており、要素38は、ハウジング28と軸方向で整列する管である。要素38は、ネオプレン等の十分な合成を有する弾性材料により形成されて、水平方向でそれ自身を支持する。要素38の第1の面は、参照番号44で示されており、要素38の第2の面は参照番号46で示される。要素38は、その密度が計測される、流体と、空洞36及びチャンバー40内の流体を分離する、弾性バリア(障害壁)を提供するので、流体は異なることができる。これは、その密度が計測される、流体により損傷される可能性のある、電子部品の使用を可能にする。もしその様な損傷が、関係しないならば、ハウジング28、要素38及び通路42は、除去可能であり、シース26の内部は、チューブ14内の流体流れに開放されることができるので、シース26内の流体は、チューブ14内の圧力変化を補償(又は、緩和)する。
【0013】
オペレーションにおいて、チューブ14内の圧力が上昇すると、ハウジング28内の圧力も上昇する。結果として、チューブ14内の圧力上昇は、第1の面44に支持されて、それにより第2の面46に伝達される。これは、空洞36内の圧力を上昇させ、チューブ14内の圧力上昇を補償(又は、緩和)し、チューブ14の壁におけるストレス(応力)を軽減する。
【0014】
同様に、チューブ14内の圧力が降下すると、ハウジング28内の圧力も降下する。結果として、チューブ14内の圧力減少は、第1の面44で支持(又は、負担)され、それにより第2の面46に伝達される。これは、空洞36内の圧力を減少させ、チューブ14内の圧力降下を補償(又は、緩和)して、チューブ14の壁におけるストレスを軽減する。
【0015】
シース26及びハウジング28は、チューブ14と共にバネ質量システム(装置)の一部である。しかしそれらのバネ定数は、変化せず、それらの共振周波数への影響は、計測可能である。
【0016】
まとめると、記述された圧力補償要素は、空洞36内の圧力を変化させて、チューブ14内の圧力変化に適合させる。
【0017】
図4から7は、本発明のこれとは別の実施の形態を示す。
図4は、1つの実施の形態の側面図を示し、図5はこの実施の形態の側断面図を示す。この実施の形態において、圧力補償要素38は、変位可能なピストン50であり、ピストン50は、図6に示すように、チューブ52内を移動する。チューブ52の端部54は、フィティング(付属品)58により、振動チューブ14の内部に接続するので、ピストンの対応する側は、振動チューブ14内の圧力に曝される。従って、この圧力は、振動チューブ14の内面に伝達される。チューブ52の端部56は、フィティング60により、振動チューブ14とシース26との間の空間に接続するので、ピストン50の対応する側は、振動チューブ14周りの圧力に曝される。従って、この圧力は、振動チューブ14の外面に伝達されて、振動チューブ14の両側における圧力をバランスさせ(均等化し)、振動チューブ14の共振周波数は、変化しない状態を維持する。
【0018】
図7は、これとは別の実施の形態を示しており、そこでは、圧力補償要素38は、振動チューブ14内に配設されたフレキシブル(可撓性)チューブ62である。フレキシブルチューブ62は、流れシステム(装置)において計測される流体の流路に設置される。フレキシブルチューブ62の端部64は、フィティング66により流れシステムに直接的に接続される。フレキシブルチューブ62の端部68は、スパイダー70等により支持されており、振動チューブ14に整列する端部68を保持し、計測される流体を、振動チューブ14とフレキシブルチューブ68との間の空間に流体連絡するように設置する。結果として、同じ圧力が、振動チューブ14の両側に作用して、振動チューブ14の共振周波数は変化しない状態を維持する。
【0019】
本発明の前述の実施の形態は、発明的概念の好適で図解できると考えられるものだけであり、本発明の範囲は、その様な実施の形態に制限されるべきではない。種々且つ多数の別の配置が、本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、当業者により案出されても良い。例えば、本発明は、例えばピストン、膜又は薄い壁のベローズ等の、2つの圧力応答性表面を有する、任意の同様なデバイス(装置)によって実行可能である。更に、例えば、ハウジング28及びチャンバー40等の圧力補償要素が、振動チューブ14に物理的に取り付けられることが好都合であるが、それは、自由な状態で設置されるか又は装置の別の部分に取り付け可能であり、更に1つの流体ラインによりシース26に接続され、別の流体ラインにより空洞36に接続可能である。更に、本発明はまた、静止した流体を計測する、密度計において使用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、振動チューブ式密度計の図式的ブロック図である。
【図2A】図2Aは、本発明の基本部分を組み込む振動チューブ式密度計の頂面図である。
【図2B】図2Bは、本発明に基本部分を組み込む振動チューブ式密度計の側面図である。
【図2C】図2Cは、本発明に基本部分を組み込む振動チューブ式密度計の端面図である。
【図2D】図2Dは、本発明に基本部分を組み込む振動チューブ式密度計の立体図である。
【図3A】図3Aは、図2Aから2Dの密度計の側断面図である。
【図3B】図3Bは、図2Aから2Dの密度計の横断面図である。
【図3C】図3Cは、図2Aから2Dの密度計の拡大横断面図である。
【図4】図4は、本発明の別の実施の形態の側面図である。
【図5】図5は、本発明の別の実施の形態の側断面図である。
【図6】図6は、本発明の別の実施の形態の部分拡大側断面図である。
【図7】図7は、本発明の更に別の実施の形態を示す部分側断面図である。
【符号の説明】
【0021】
10 ドライバー(駆動部)
11 増幅器
12 センサ
14 振動チューブ
16 遅延器
18 温度センサ
22 マイクロプロセッサ
24 表示装置
26 シース
28 ハウジング
30,32 接続フランジ
36 空洞
38 圧力補償要素
40 チャンバー
42 通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体密度を計測するための装置において、この装置が、
流体システムに配設されたチューブと、
前記チューブにおいて振動を引起こすための手段と、
前記チューブを囲むシースであって、前記シースと前記チューブとが空洞を形成する、シースと、
前記空洞を充填する固定された量の流体と、
ハウジングと、
前記ハウジング内の圧力補償要素であって、前記圧力補償要素は、前記空洞と流体連絡する第1の圧力応答面と、前記ハウジングの内部と連絡する第2の圧力応答面と、を有する、圧力補償要素と、
前記チューブの内部と前記ハウジングの内部との間で伸張する、通路と、
を具備することを特徴とする装置。
【請求項2】
前記チューブは、前記シースに比べてより薄い壁を有することを特徴とする請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記ハウジングは、前記シースの外側に取り付けられることを特徴とする請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記ハウジングと前記圧力補償要素とは、前記シースの長さに平行に伸張することを特徴とする請求項3に記載の装置。
【請求項5】
前記ハウジングは円筒状であり、前記圧力補償要素は、前記ハウジングと軸方向で整列する弾性のある管であり、前記第1の圧力応答面は前記圧力補償要素の内側面であり、更に前記第2の圧力応答面は前記圧力補償要素の外側面であることを特徴とする請求項4に記載の装置。
【請求項6】
前記ハウジングと前記圧力補償要素とは、水平方向に向けられており、前記圧力補償要素は、それ自身を支持するために十分に剛であることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項7】
前記チューブは、その端部において接続フランジを有しており、前記シース及び前記ハウジングは、前記接続フランジに連結されており、管が、前記接続フランジの1つに形成されることを特徴とする請求項5に記載の装置。
【請求項8】
前記流体は非圧縮性であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項9】
前記流体は化学的に不活性であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項10】
前記流体は不導電性であることを特徴とする請求項6に記載の装置。
【請求項11】
流体密度を計測するために振動チューブを有する、密度計におけるライン圧力変化を補償するための方法において、この方法が、
前記チューブの周りに空洞を形成する手順と、
チャンバーを形成する手順と、
前記チャンバーにおいて、変化可能な圧力依存性の体積を形成する手順と、
前記体積を前記空洞に暴露するので、前記体積は、前記空洞内の圧力を反映する、手順と、
前記チャンバーを前記チューブ14に暴露するので、前記チャンバーは、前記チューブ14内の圧力を反映する、手順と、
を具備することを特徴とする方法。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−24888(P2007−24888A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−191837(P2006−191837)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(506239751)カリブロン システムズ,インコーポレイティド (1)