説明

流体混合器

【課題】各部品を精度良く位置決めでき、組み立て及び分解を行いやすく、メンテナンス性に優れた流体混合器を提供すること。
【解決手段】流体混合器10は、柱状部21を有するコア部材20と、柱状部21との嵌合が可能な貫通孔31を有するハウジング部材30と、ハウジング部材30の流体流出側と嵌合するオリフィス部材40とを具備する。柱状部21は貫通孔31と嵌合する柱状基部21aと、柱状基部21aよりも細径の柱状先端部21bを有する。第1流路11が柱状部21の軸線方向に沿って、該柱状部21に設けられている。第2流路12は貫通孔31の内面と柱状先端部21bの外面との間に形成された空間からなる。柱状先端部21bの先端域とオリフィス部材40との間に流体合流部10Bが形成される。オリフィス部材40の細孔41によって流体縮流部10Cが形成される。オリフィス部材40の流体流出側に、流体拡大部10Dが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2つの流体を混合するために用いられる流体混合器に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の流体を合流させて細孔に流通させる流体混合器として種々のものが提案されている。例えば、流入された流体を種類数に対応した同芯流として流出させる同芯整流部と、同芯整流部から流出した同芯流を混合させる流体混合部とを別部材として構成した流体混合装置が提案されている(特許文献1参照)。同芯整流部と流体混合部とは、これらを組み付けた後に、ボルトネジによって固定される。
【0003】
特許文献2には、流入した2種以上の流体をそれぞれ独立して合流領域に供給し、合流領域からこれらの流体を排出するマイクロデバイスが記載されている。このマイクロデバイスは、マイクロデバイスに流入した各流体を合流領域に供給する供給チャンネル、及び合流した流体を合流領域からマイクロデバイスの外部に排出する排出チャンネルを有している。このマイクロデバイスにおいても、各部品間がボルトとナットによって締結されている。
【0004】
特許文献3には、流体を複数の供給口を通してそれぞれ1本のミキシング流路内へ導入し、これらの流体を薄片状の層流として流通させつつ、流体どうしをその接触界面の法線方向へ拡散し、混合するマイクロミキサーが記載されている。このマイクロミキサーは、外部から供給された流体が一端部から他端部へ向かってそれぞれ流通する複数の流体供給路と、該流体供給路の他端部にそれぞれ開口し、該流体供給路内における流体の流通方向と直交する所定の拡散方向に沿って互いに隣接するように配設された複数の供給口と、一端部が該供給口に接続され、該供給口を通して導入された流体を他端部から吐出するミキシング流路と、該ミキシング流路内を流通する流体に、前記の拡散方向に沿ってマイクロ波を照射する拡散制御手段とを有している。そして前記の拡散制御手段を、前記のミキシング流路の断面中心に対して対称的に配置してある。このマイクロミキサーにおいても、各部品間がボルトとナットによって締結されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−344877号公報
【特許文献2】特開2005−288254号公報
【特許文献3】特開2007−185658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述した各特許文献に記載の技術においては、流体混合器を構成する各部品間を、複数のボルトとナットによって締結しているので、該混合器の組み立て及び分解が容易でなく、メンテナンス性が良好であるとは言えない。また、ボルトとナットによって締結していることに起因して、各部品間における流体の流路を精度良く位置決めすることが容易でない。更に、締め付け力を各ボルトとナットとに均等に加えないと、締め付け後にがたつきが生じやすい。
【0007】
したがって本発明の課題は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る流体混合器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、一方向に延びる第1流路、及び第1流路と同方向に延びる第2流路と、
第1流路及び第2流路の流体流出側に設けられ、第1流路を流通した第1流体と第2流路を流通した第2流体とが合流する流体合流部と、
合流した第1流体及び第2流体が縮流する流体縮流部と、
縮流した第1流体及び第2流体が流入する流体拡大部とを有する流体混合器であって、
柱状部を有するコア部材と、
柱状部との嵌合が可能な貫通孔を有するハウジング部材と、
ハウジング部材における流体流出側と嵌合するオリフィス部材とを具備し、
コア部材の柱状部は、ハウジング部材の貫通孔と相補形状をなし、貫通孔と嵌合する柱状基部と、柱状基部よりも先端側に位置し、かつ柱状基部よりも細径の柱状先端部とを有し、
第1流路が、コア部材の柱状部の軸線方向に沿って、該柱状部に設けられており、
第2流路が、ハウジング部材の貫通孔の内面と、コア部材の柱状部の柱状先端部の外面との間に形成された空間からなり、
オリフィス部材は、その細孔の位置が、第1流路の軸線と一致するように、ハウジング部材における流体流出側と嵌合して、柱状先端部の先端域とオリフィス部材との間に流体合流部が形成されるとともに、オリフィス部材の細孔によって流体縮流部が形成され、
オリフィス部材の流体流出側に、流体拡大部が形成されている流体混合器を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の流体混合器は、これを構成する主要部材を嵌合のみによって組み付けることができるので、これらの部品を精度良く位置決めすることができる。また、構造が簡素であり、組み立て及び分解を行いやすく、かつメンテナンス性に優れたものである。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1(a)は、本発明の流体混合器の一実施形態を模式的に示す横断面図であり、図1(b)は図1(a)におけるb−b線断面図である。
【図2】図2(a)は、本発明の流体混合器を示す側面図であり、図2(b)は図2(a)におけるb−b線断面図である。
【図3】図3は、図2(a)及び(b)に示す流体混合器の分解斜視図である。
【図4】図4は、図2に示す流体混合器におけるコア部材の横断面図である。
【図5】図5は、図2に示す流体混合器におけるハウジング部材の横断面図である。
【図6】図6は、図2に示す流体混合器におけるオリフィス部材の横断面図である。
【図7】図7は、図2に示す流体混合器における排出栓の横断面図である。
【図8】図8は、図2に示す流体混合器における第1エンドキャップの横断面図である。
【図9】図9は、図2に示す流体混合器における第2エンドキャップの横断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき図面を参照しながら説明する。図1(a)及び(b)には、本発明の流体混合器の一例としての流体混合器10の要部が模式的に示されている。
【0012】
流体混合器10は、流体流路部10Aと、その流体流出側に連続して設けられた流体合流部10Bと、流体合流部10Bの流体流出側に連続して設けられた流体縮流部10Cと、流体縮流部10Cの流体流出側に連続して設けられた流体拡大部10Dを備えている。
【0013】
流体流路部10Aは、一方向に延びる第1流路11、及び第1流路と同方向に延びる第2流路12を有している。第1流路11及び第2流路12それぞれには第1流体及び第2流体が流通する。第1流路11及び第2流路12は、図1(b)に示すように、それらの断面形状が同心の位置に設けられていることが好ましい。第1流路11は流体混合器10の流体流入側に設けられた第1流体供給部(図示せず)に連通している。第2流路12は、流体混合器10の側面に設けられた第2流体供給部(図示せず)に連通している。
【0014】
流体合流部10Bは、第1流路11を流通した第1流体と、第2流路12を流通した第2流体とが合流する部位である。流体合流部10Bは、その形状が特に限定されるものではなく、横断面形状が流体流動方向に沿って均一形状に形成されていてもよく、また例えば、細孔41に向かって収束するコーン形状のような先細り形状に形成されていてもよい。流体合流部10Bは、第1流路11の終端から細孔41までの距離Lが例えば0.20〜20.00mmであることが好ましい。
【0015】
流体縮流部10Cは、細孔41からなり、流体合流部10Bで合流した第1流体及び第2流体が縮流する部位である。流体拡大部10Dは、細孔41の流体流出側に位置している。流体拡大部10Dは、流路拡大域14を有している。流路拡大域14には、細孔41を縮流した第1流体及び第2流体が流入する。なお、流路拡大域14は流体混合器10の流体流出側に設けられた流体排出部(図示せず)に連通している。
【0016】
以上の構成を有する流体混合器10の具体的な構造が図2〜図9に示されている。これらの図から明らかなように、流体混合器10は、複数の部品を組み付けて構成されている。かかる複数の部品は、コア部材20、ハウジング部材30、オリフィス部材40、排出栓50、第1エンドキャップ60及び第2エンドキャップ70を含んでいる。以下、これらの部材についてそれぞれ説明する。
【0017】
コア部材20は、図2〜図4に示すように、一方向に延びる柱状部21を有している。柱状部21は、柱状基部21aと柱状先端部21bとを有している。流体混合器10において、柱状基部21aは、流体流入側に位置しており、柱状先端部21bは、流体流出側に位置している。柱状基部21aは、後述するハウジング部材30の貫通孔31と相補形状をなし、かつ該貫通孔31と嵌合する。したがって、コア部材20の柱状部21が、ハウジング部材30の貫通孔31内に挿入された状態においては、柱状基部21aの外面と、貫通孔31の内面との間に空間は形成されない。一方、柱状先端部21bは、柱状基部21aよりも先端側に位置し、かつ柱状基部21aよりも細径になっている。したがって、コア部材20の柱状部21が、ハウジング部材30の貫通孔31内に挿入された状態においては、柱状先端部21bの外面と、貫通孔31の内面との間に空間が形成される。
【0018】
柱状部21bの断面形状は特に限定されるものではなく、例えば円形、楕円形、星形、正多角形等であり得る。第2流体の流れの乱れを抑制する観点からは、柱状部21の断面形状は円形であることが好ましい。
【0019】
柱状部21の柱状先端部21bの先端域の形状は特に限定されるものではないが、第1流路11を流通する第1流体と第2流路12を流通する第2流体とを緩やかに合流させてそれらの流れの乱れを抑制する観点から、先細りのテーパー形状に形成されているか、又は凸の曲面状に形成されていることが好ましい。
【0020】
コア部材20の柱状部21には、該柱状部21の軸線方向に沿って、上述した第1流路11が設けられている。第1流路11は、コア部材20の全長にわたって形成されている。そして第1流路11は、その両端が開口している。具体的には、第1流路11の流体流出側の端部は、柱状先端部21bの先端において開口している。第1流路11の流体流入側の端部は、後述する流入栓部23において開口している。第1流体は、この流入栓部23を通じて第1流路11に供給される。
【0021】
第1流路11の断面形状は特に限定されるものではなく、例えば、円形、楕円形、星形、正多角形等であり得る。第1流路11を流通する第1流体の流れの乱れを抑制する観点からは、第1流路11の断面形状は円形であることが好ましい。また、第1流路11は、その横断面形状が長さ方向に沿って同一形状であってもよく、あるいは異なる形状であってもよい。第1流路11を流通する第1流体の流れの乱れを抑制する観点からは、第1流路11の横断面形状は長さ方向に沿って同一形状であることが好ましい。第1流路11の断面形状が円形である場合、その直径が例えば0.8〜20.0mmであり、2.0〜10.0mmであることが好ましい。
【0022】
コア部材20は、更に、鍔部22を有している。鍔部22は、柱状部21の柱状基部21aに連設されている。鍔部22は、その断面形状が、柱状基部21aの断面形状よりも大きくなっている。鍔部22は、その流体流入側に環状第1端面22aを有し、かつ流体流出側に環状第2端面22bを有している。
【0023】
コア部材20は、更に、流入栓部23を有している。流入栓部23は、鍔部22の流体流入側に位置し、鍔部22と連設されている。 流入栓部23は中央域が凹陥して凹陥部23aを形成している。凹陥部23aの底部においては、第1流路11の流入側の端部が開口している。第1流体は、流入栓部23を通じて第1流路11に供給される。
【0024】
ハウジング部材30は、流体混合器10における位置決めの基本となる部材である。つまり、流体混合器10を構成する各部品は、ハウジング部材30からすべて基準(基軸)をとるように構成されている。
【0025】
ハウジング部材30は、図2,図3及び図5に示すように、コア部材20の柱状部21との嵌合が可能な貫通孔31を有している。貫通孔31の横断面形状は長さ方向に沿って同一形状であってもよく、あるいは長さ方向に沿って連続的に又は段階的に拡径や縮径していてもよい。貫通孔31の横断面形状は、先に述べたとおり、柱状部21の柱状基部21aの横断面形状と相補形状になっている。更に、先に述べたとおり、柱状部21の柱状先端部21bは、柱状基部21aよりも細径になっているので、コア部材20の柱状部21が、ハウジング部材30の貫通孔31内に挿入された状態においては、柱状先端部21bの外面と、貫通孔31の内面との間に空間が形成される。この空間が、上述した第2流路12となっている。第2流路12の断面形状は、例えば図1(b)に示すように円環状になっている。
【0026】
第2流路12は、その長さ方向の全域において断面形状が同じであってもよく、あるいは流体流出側に向かうに連れ、連続的に又は段階的に断面形状が広くなっていてもよく、狭くなっていてもよい。連続的に又は段階的に断面形状が狭くなっている構成を採用すると、第2流路12を流通する第2流体の流通が滑らかになるので好ましい。このような構成は、例えばコア部材20の柱状先端部21bの横断面形状をその長さ方向にわたって同一とし、かつハウジング部材30の貫通孔31を、その長さ方向に沿って連続的に又は段階的に縮径させればよい。
【0027】
第2流路12の流体流出側の端部域は、コア部材20の柱状先端部21bの先端域と、オリフィス部材40における流体流入側に位置する第1の面43(図6参照)とで画定される。第2流路12の流体流出側の端部域は、隙間δ(図1(a)参照)が流体流動方向で均一であることが好ましい。具体的には、隙間δが0.10〜10.00mm、特に0.20〜5.00mmであることが好ましい。
【0028】
ハウジング部材30は、その側面に凹陥部32が形成されている。凹陥部32の底部からは、貫通孔31へ向かう液供給孔33が穿設されている。液供給孔33は、凹陥部32の底面において開口しているとともに、貫通孔31の内面においても開口している。液供給孔33が貫通孔31の内面において開口している位置は、コア部材20の柱状部21が、ハウジング部材30の貫通孔31内に挿入された状態において柱状先端部21bが存在する位置になっている。この液供給孔33を通じて、第2流体が、第2流路12内へ供給される。
【0029】
コア部材20の柱状部21を、ハウジング部材30の流体流入側から貫通孔31内に挿入すると、ハウジング部材の流体流入側の端面34と、コア部材20の鍔部22における流体流出側の端面22bとが当接するようになっている。この当接によって、柱状部21が貫通孔31内に挿入することが規制される。その結果、流体混合器10の組み立て及び分解を繰り返しても、柱状部21が貫通孔31内に挿入される挿入深さは毎回同じになる。
【0030】
ハウジング部材30の流体流出側には、後述するオリフィス部材40の収容部35が凹設されている。収容部35の形状は、オリフィス部材40の形状と相補形状になっている。相補形状へ加工する方法としては、例えばハウジング部材30の貫通穴31、収容部35及び後述する外側壁35bを、旋盤などの機械加工で同時に仕上げる方法が挙げられる。この方法を採用すると、各形状部の軸線が一致し、収容部35の形状をオリフィス部材40の形状と相補形状とすることができる。収容部35には、オリフィス部材40が嵌合されることで、第1流路11の軸線と、オリフィス部材40の細孔41の位置とが位置合わせされるようになっている。その結果、流体混合器10の組み立て及び分解を繰り返しても、第1流路11の中心位置と、オリフィス部材40の細孔41の中心位置とが毎回合わさる。これによって、第1流路11の終端から細孔41までの距離L(図1(a)参照)を組み付けのたびに同じに設定することができる。収容部35とオリフィス部材40との嵌合は、例えば隙間嵌めとすることができる。隙間嵌めとすることで、位置決めをするための基準ピンなどの機械部品を使用することなく、流体混合器10を構成する最小限の部品で簡単に高精度な位置決めができ、かつハンマーなどの手動工具を使用せずに組み立てや分解作業が簡単に行えるという有利な効果が奏される。
【0031】
ハウジング部材30に設けられた収容部35は、その開口端、すなわち流体流出側に向かうに連れて拡径するように、該収容部35の側壁35aが傾斜している。すなわち収容部35の側壁35aはテーパー形状になっている。一方、後述するオリフィス部材40の側面42は、収容部35の側壁35aの傾斜と同じ傾斜を有している。すなわち、オリフィス部材40の側面42もテーパー形状になっている。こうすることによって、収容部35に嵌合されたオリフィス部材40の着脱性が増し、流体混合器10の分解の作業性が向上する。
【0032】
ハウジング部材30に設けられた収容部35の外側壁35b(図5参照)は、流体流出側に向かうに連れて縮径するように傾斜している。すなわち収容部35の外側壁35bはテーパー形状になっている。一方、後述する排出栓50の側壁54aは、収容部35の外側壁35bの傾斜と同じ傾斜を有している。すなわち、排出栓50の側壁54aもテーパー形状になっていて、ハウジング部材30の貫通孔31と、排出栓50の貫通孔51とが位置合わせされるようになっている。こうすることによって、外側壁35bに嵌合された排出栓50の着脱性が増し、流体混合器10の分解の作業性が向上する。
【0033】
収容部35の側壁35a及びオリフィス部材40の側面42をテーパー形状とすることに代えて、収容部35の側壁35aを、第1流路11の軸線と平行に形成するとともに、オリフィス部材40の側面42を収容部35の側壁35aと平行に形成してもよい。こうすることによって、オリフィス部材40を収容部35内に収容配置するときの位置決めの精度を一層高めることができる。
【0034】
収容部35の形状は、以上の各形状の他、各部品の嵌合方向軸を回転軸とする回転体の形状となるものを用いることもできる。例えば、回転放物形、半球形などが挙げられる。オリフィス部材40の外形も、これと同様にすることができる。
【0035】
図3及び図5に示すように、ハウジング部材30の流体流入側の端部には、第1のネジ山36が形成されている。一方、ハウジング部材30の流体流出側の端部には、第2のネジ山37が形成されている。各ネジ山36,37は、貫通孔31の延びる方向に向けてネジ山が切られている。各ネジ山36,37は、後述する第1エンドキャップ60及び第2エンドキャップ70と螺合するようになっている。
【0036】
オリフィス部材40は、図2、図3及び図6に示すように板状のものであり、平面視してその中心部に細孔41を有している。また、その側面42がテーパー形状になっている。更に、オリフィス部材40は、流体流入側に位置する第1の面43と、流体流出側に位置する第2の面44とを有している。オリフィス部材40は、その第1の面43側に、円錐形の第1凹陥部45を有している。一方、オリフィス部材40は、その第2の面44側に、扁平な円柱形の第2凹陥部46を有している。円錐形の第1凹陥部45における底部、すなわち円錐の頂点部の位置は、細孔41の位置と一致している。同様に、円柱形の第2凹陥部46における底部、すなわち円柱の軸線の位置も、細孔41の位置と一致している。つまり、細孔41は、第1凹陥部45における底部と、円柱形の第2凹陥部46における底部とを連結するように形成されている。
【0037】
第2凹陥部46の形状は、以上の各形状の他、嵌合方向軸を回転軸とする回転体の形状となるものを用いることもできる。例えば截頭円錐形、回転放物形、半球形などが挙げられる。
【0038】
オリフィス部材40における第1の面43側と、コア部材20の柱状先端部21bの先端域との間には、第1凹陥部45を含む、上述した流体合流部10Bが形成される。また、細孔41によって、上述した流体縮流部10Cが形成される。更に、オリフィス部材40の流体流出側である第2の面44側には、第2凹陥部46を含む、上述した流体拡大部10Dが形成される。
【0039】
オリフィス部材40の細孔41は、その断面形状が特に限定されるものではなく、例えば円形、楕円形、星形、正多角形等であり得る。細孔41は、その横断面形状が流体流動方向に沿って同一形状であってもよく、あるいは異なる形状であってもよい。合流した第1流体及び第2流体の流れの乱れを抑制する観点からは、細孔41の断面形状は円形であることが好ましく、また長さ方向に沿って同一形状であることが好ましい。つまり、細孔41内の流路は、その横断面形状が流体流動方向に沿って流体流入端から流体流出端まで均一であることが好ましい。
【0040】
オリフィス部材40の細孔41は、その孔長さl(図1(a)参照)が0.100〜5.000mmであり、特に0.200〜3.000mmであることが好ましい。また細孔41は、断面形状が円形である場合、その孔径d(図1(a)参照)が0.100〜5.000mm、特に0.200〜3.000mmであることが好ましい。更に細孔41の孔面積sは、0.008〜19.635mm2、特に0.031〜7.069mm2であることが好ましい。細孔41は、孔長さlの孔径dに対する比l/dが、0.020≦l/d≦50.000であることが好ましく、0.060≦l/d≦15.000であることが更に好ましい。
【0041】
排出栓50は、図2、図3及び図7に示すように、貫通孔51を有する。貫通孔51は、その一端が流体流入側において開口しているとともに、その他端が流体流出側においても開口している。この貫通孔51と、先に述べたオリフィス部材40における円柱形の第2凹陥部46とで、流体拡大部10Dの流路拡大域14(図1(a)参照)が形成される。
【0042】
流路拡大域14は、その形状が特に限定されるものではなく、横断面形状が流体流動方向に沿って均一形状に形成されていてもよく、また、例えば細孔41から末広がりに拡径したコーン形状に形成されていてもよい。
【0043】
排出栓50は、その流体流入側に第1凹陥部52が形成されているとともに、その流体流出側に第2凹陥部53が形成されている。上述した貫通孔51の各端部は、第1凹陥部52の底部及び第2凹陥部53の底部において開口している。第1凹陥部52は、図2(b)に示すように、各部品が組み付けられた状態において、オリフィス部材40を収容するのに足りる空間となっている。また第1凹陥部52は、流体流出側に向かうに連れて縮径するように、第1凹陥部52の側壁54aが傾斜している。すなわち第1凹陥部52の側壁54aはテーパー形状になっている。第2凹陥部53の周壁には、ネジ山53aが形成されている。
【0044】
排出栓50は、更に、鍔部54を有している。先に述べた第1凹陥部52と、貫通孔51の一部は、この鍔部54内に形成されている。鍔部54は、その流体流入側に、側壁54aを有している。これとともに鍔部54は、その流体流出側に環状端面54bを有している。
【0045】
排出栓50は、更に、鍔部54の流体流出側に連設された排出部55を有している。先に述べた第2凹陥部53と、貫通孔51の一部は、この排出部55内に形成されている。
【0046】
第1エンドキャップ60は、図2、図3及び図8に示すように、キャップ天面61と、該キャップ天面61から垂下する袴部62とを有している。キャップ天面61は、その中央域が開口して、開口部61aが形成されている。開口部61aの大きさは、先に述べたコア部材20の流入栓部23よりも大きく、かつコア部材20の鍔部22よりも小さくなっている。袴部62の内面には、ネジ山62aが形成されている。このネジ山62aは、ハウジング部材30の第1のネジ山36と螺合するようになっている。つまり、第1エンドキャップ60は、ハウジング部材30の流体流入側において、ハウジング部材30と螺合するようになっている。図2に示すように第1エンドキャップ60がハウジング部材30と螺合した状態においては、ハウジング部材30と、ハウジング部材30の貫通孔31内に柱状部21が嵌合された状態のコア部材20とが、第1エンドキャップ60によって固定される。具体的には、螺合によって第1エンドキャップ60におけるキャップ天面61の下面61bが、コア部材20の環状第1端面22aを押しつける。この押しつけによって、コア部材20とハウジング部材30とが密接すると、コア部材20の環状第2端面22bが、ハウジング部材30の端面34に規制されるので、コア部材20の柱状部21が、ハウジング部材30の貫通孔31内に挿入される挿入深さが、組み付けのたびに一定となる。
【0047】
第2エンドキャップ70は、図2、図3及び図9に示すように、キャップ天面71と、該キャップ天面71から垂下する袴部72とを有している。キャップ天面71は、その中央域が開口して、開口部71aが形成されている。開口部71aの大きさは、先に述べた排出栓50の排出部55よりも大きく、かつ排出栓50の鍔部54よりも小さくなっている。袴部72の内面には、ネジ山72aが形成されている。このネジ山72aは、ハウジング部材30の第2のネジ山37と螺合するようになっている。つまり、第2エンドキャップ70は、ハウジング部材30の流体流出側において、ハウジング部材30と螺合するようになっている。図2に示すように第2エンドキャップ70がハウジング部材30と螺合した状態においては、ハウジング部材30と、該ハウジング部材30の収容部35に嵌合したオリフィス部材40とが、第2エンドキャップ70によって固定される。具体的には、螺合によって第2エンドキャップ70におけるキャップ天面71の下面71bが、排出栓50の環状端面54bを押しつける。この押しつけによって、排出栓50の第1凹陥部52における底面がオリフィス部材40と密接する。これとともに、排出栓50における第1凹陥部52の側壁54aとハウジング部材30における流体流出側の外側壁35bが面で接して、オリフィス部材40の第1の面43がハウジング部材30における収容部35の底面と密接する。それによって、ハウジング部材30とオリフィス部材40とが、第2エンドキャップ70によって固定される。
【0048】
本実施形態の流体混合器10は、以上の構成を有することに加え、コア部材20の柱状部21を、ハウジング部材30の貫通孔31へ挿入する挿入深さを調整する調整機構を更に具備していてもよい。例えば、コア部材20の環状第2端面22b(図4参照)と、ハウジング部材30の流体流入側の端面との間に、シムと呼ばれる薄板(図示せず)を介在させることで、柱状部21の挿入の挿入深さを調整することができる。つまり、図1(a)に示す距離L及び隙間δの程度を調整することができる。この場合、薄板の厚みを増減させたり、薄板を介在させる枚数を増減させたりすることで、柱状部21の挿入の挿入深さを調整することができる。薄板としては、例えば柱状部21の柱状基部21aの断面よりも大きな開口部を有する円環状の薄板を用いることができる。
【0049】
前記の調整機構の別の例として、コア部材20の鍔部22に、柱状部21の延びる方向と同方向に延びる貫通ネジ孔を設けることができる。この貫通ネジ孔にネジ(例えば、いわゆるイモネジと呼ばれるセットスクリュー)を螺合しておく。そして、コア部材20の鍔部22におけるハウジング部材30との対向面である環状第2端面22b(図4参照)からのネジの突出量を調整することで、コア部材20の柱状部21をハウジング部材30の貫通孔31へ挿入する挿入深さを調整可能にできる。
【0050】
以上の構成を有する各部品を組み付けて流体混合器10を組み立てるときには、まずコア部材20の柱状部21を、ハウジング部材30の貫通孔31内に、流体流入側から挿入して、コア部材20とハウジング部材30とを嵌合させる。この状態下に、ハウジング部材30の流体流入側において、第1エンドキャップ60をハウジング部材30と螺合する。次に、ハウジング部材30の流体流出側において、収容部35とオリフィス部材40と嵌合させ、引き続き該オリフィス部材40を覆うように排出栓50を配置する。この状態下に、ハウジング部材30の流体流出側において、第2エンドキャップ70をハウジング部材30と螺合する。これによって、図1(a)及び(b)に示す構造の流体混合器10が形成される。この流体混合器10によれば、先に背景技術の項で述べた各特許文献に記載の技術と異なり、コア部材20とオリフィス部材40とが、ハウジング部材30を基軸(基準部品)として該ハウジング部材30と嵌合するので、これらの部品の位置決めの精度を高くすることが容易であり、流体混合器10の組み立て及び分解を繰り返しても、各部品の位置合わせを精度良く行うことができる。したがって、この流体混合器10はメンテナンス性が極めて良好なものである。また、ボルト及びナットによる締結を行わずに、第1及び第2エンドキャップ60,70の螺合という簡単な操作によって各部品を組み付けることができるので、流体混合器10の組み立て及び分解が極めて容易である。しかも、コア部材20とハウジング部材30とオリフィス部材40との嵌合方向軸の両側から螺合を行うので、組み立て後に流体混合器10にがたつきが生じることも効果的に防止される。
【0051】
流体混合器10を構成する各部品は、例えば金属、セラミックス、合成樹脂等で形成することができる。
【0052】
本実施形態の流体混合器10は、例えば分散相と連続相が均一に分散したエマルジョンを製造する乳化装置などに適用される。
【0053】
本実施形態の流体混合器10に供給される流体としては、気相、液相、気液混合相、乳化相、固液混合相(スラリー)など流動性を保持する性状のものであればよく、それらのうちの2種の組み合わせ(同相の組み合わせも含む)を任意に選択できる。
【0054】
以上、本発明をその好ましい実施形態に基づき説明したが、本発明は前記の実施形態に制限されず、当業者の技術常識の範囲内で前記の実施形態以外の種々の変更形態を構成してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 流体混合器
20 コア部材
21 柱状部
21a 柱状基部
21b 柱状先端部
22 鍔部
30 ハウジング部材
31 貫通孔
40 オリフィス部材
50 排出栓
60 第1エンドキャップ
70 第2エンドキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方向に延びる第1流路、及び第1流路と同方向に延びる第2流路と、
第1流路及び第2流路の流体流出側に設けられ、第1流路を流通した第1流体と第2流路を流通した第2流体とが合流する流体合流部と、
合流した第1流体及び第2流体が縮流する流体縮流部と、
縮流した第1流体及び第2流体が流入する流体拡大部とを有する流体混合器であって、
柱状部を有するコア部材と、
柱状部との嵌合が可能な貫通孔を有するハウジング部材と、
ハウジング部材における流体流出側と嵌合するオリフィス部材とを具備し、
コア部材の柱状部は、ハウジング部材の貫通孔と相補形状をなし、貫通孔と嵌合する柱状基部と、柱状基部よりも先端側に位置し、かつ柱状基部よりも細径の柱状先端部とを有し、
第1流路が、コア部材の柱状部の軸線方向に沿って、該柱状部に設けられており、
第2流路が、ハウジング部材の貫通孔の内面と、コア部材の柱状部の柱状先端部の外面との間に形成された空間からなり、
オリフィス部材は、その細孔の位置が、第1流路の軸線と一致するように、ハウジング部材における流体流出側と嵌合して、柱状先端部の先端域とオリフィス部材との間に流体合流部が形成されるとともに、オリフィス部材の細孔によって流体縮流部が形成され、
オリフィス部材の流体流出側に、流体拡大部が形成されている流体混合器。
【請求項2】
コア部材は、柱状基部と連設された鍔部を有し、
柱状部を、ハウジング部材の流体流入側から貫通孔内に挿入したときに、ハウジング部材の流体流入側の端面と鍔部とが当接して、柱状部が貫通孔内に挿入することを規制する請求項1に記載の流体混合器。
【請求項3】
ハウジング部材の流体流入側において、ハウジング部材と螺合する第1エンドキャップを更に具備し、
第1エンドキャップがハウジング部材と螺合した状態において、ハウジング部材と、ハウジング部材の貫通孔内に柱状部が挿入された状態のコア部材とが、第1エンドキャップによって固定される請求項2に記載の流体混合器。
【請求項4】
ハウジング部材の流体流出側において、ハウジング部材と螺合する第2エンドキャップを更に具備し、
第2エンドキャップがハウジング部材と螺合した状態において、ハウジング部材とオリフィス部材とが、第2エンドキャップによって固定される請求項1ないし3のいずれか一項に記載の流体混合器。
【請求項5】
ハウジング部材の流体流出側にオリフィス部材の収容部が凹設されており、
収容部とオリフィス部材とが嵌合することで、第1流路の軸線とオリフィス部材の細孔の位置とが位置合わせされる請求項1ないし4のいずれか一項に記載の流体混合器。
【請求項6】
収容部がその開口端に向かうに連れて拡径するように、収容部の側壁が傾斜しているとともに、オリフィス部材の側面が、収容部の側壁の傾斜と同じ傾斜を有している請求項5記載の流体混合器。
【請求項7】
収容部の側壁が、第1流路の軸線と平行に形成されているとともに、オリフィス部材の側面が、収容部の側壁と平行に形成されている請求項5に記載の流体混合器。
【請求項8】
コア部材の柱状部をハウジング部材の貫通孔へ挿入する挿入深さを調整する調整機構を更に具備している請求項1ないし7のいずれか一項に記載の流体混合器。
【請求項9】
コア部材の鍔部に、柱状部の延びる方向と同方向に延びる貫通ネジ孔が設けられているとともに、貫通ネジ孔にネジが螺合されており、
コア部材の鍔部におけるハウジング部材との対向面からのネジの突出量を調整することで、コア部材の柱状部をハウジング部材の貫通孔へ挿入する挿入深さが調整可能になっている請求項2に記載の流体混合器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−183458(P2012−183458A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−46992(P2011−46992)
【出願日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】