説明

流入量予測システム、流入量予測方法及びプログラム

【課題】貯水施設への水の流入量を容易に予測することができるようにする。
【解決手段】気象実績データベース40には、日付ごとに、流入量の実績値、降雨量の実績値、及び積雪量の実績値を含む気象実績情報が記憶される。モデル記憶部31には、降雨量P1、及び流入量Ft−1と均衡流入量μとの差を説明変数とし、流入量の増加量ΔFを目的変数とする流入量モデル1が記憶される。流入量モデル推計部23は、流入量の実績値、及び降雨量の実績値、並びに流入量モデル1に基づいて回帰分析を行い、回帰係数α、β及びβを推計する。流入量予測部26は、気象実績情報と流入量モデル1に基づいて流入量を予測する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貯水施設への水の流入量を予測するシステム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ダム等の貯水施設における水位管理や河川の防災対策などのために、貯水施設への水の流入量や河川における水の流量(以下、これらを流入量という。)を予測することが行われている。例えば、特許文献1では、予報雨量の予報誤差の傾向を解析し、その結果を用いて予報雨量を修正し、現在の流量、現在の雨量、及び修正予報雨量を用いて将来の流量を予測している。
【特許文献1】特開2006−92058号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1では河川等の流入に影響を与える多くの地点の降雨量を観察し、降雨が流入量の計測地点に変化を生じさせる時間も考慮に入れて、過去の累積降雨量を説明変数として流入量を推計しており、複雑な推計が行われている。
【0004】
本発明は、このような背景を鑑みてなされたものであり、貯水施設への水の流入量を容易に予測することのできる、流入量予測システム、流入量予測方法及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための本発明のうち請求項1に記載の発明は、貯水施設への水の流入量を予測するシステムであって、所定期間ごとに、前記流入量の実績値及び降雨量の実績値を記憶するデータベースと、ある第1期間における前記降雨量、及び、前記第1期間から所定期前の第2期間における前記流入量と所定の定数である均衡流入量との差を説明変数とし、前記第2期間から前記第1期間までの前記流入量の増加量を目的変数とする回帰モデルを記憶するモデル記憶部と、前記データベースに記憶されている前記流入量の実績値及び前記降雨量の実績値、並びに前記モデル記憶部に記憶されている前記回帰モデルに基づいて回帰分析を行い、前記説明変数のそれぞれについての回帰係数を推計する流入量モデル推計部と、予測対象の期間である予測期間における前記降雨量の予測値を取得する予測降雨量取得部と、前記予測期間から前記所定期前の期間における前記流入量の実績値を前記データベースから取得し、前記降雨量の予測値、前記流入量の実績値、及び前記各回帰係数を前記回帰モデルに適用して、前記予測期間における前記増加量の予測値を算出する増加量予測部と、前記流入量の実績値に前記増加量の予測値を加算して、前記予測期間における前記流入量の予測値を算出する流入量予測部と、を備えることとする。
【0006】
前記所定期間とは、例えば、1時間や1日などの単位期間である。前記所定期は、例えば、系列相関がない場合には1期とすることができる。また、前記所定期は、系列相関がある場合には、例えば、Prais-Winstein変換やコクラン・オーカット法により変数変換した期間の数とすることができる。
【0007】
本発明の流入量予測システムによれば、流入量の実績値に基づいて、流入量を予測することができるので、降雨量のみに基づいて流入量を予測する場合に比べ、より容易かつ精度よく流入量の予測を行うことができる。
【0008】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の流入量予測システムであって、前記データベースは、前記所定期間ごとに、融雪量の実績値をさらに記憶し、前記モデル記憶部に記憶される前記回帰モデルには、説明変数として、さらに前記第1期間における前記融雪量が含まれ、前記予測期間における前記融雪量の予測値を取得する予測融雪量取得部を備え、前記流入量モデル推計部は、前記データベースに記憶されている前記流入量の実績値、前記降雨量の実績値、及び前記融雪量の実績値、並びに前記モデル記憶部に記憶されている前記回帰モデルに基づいて回帰分析を行い、前記回帰係数を推計することとする。
【0009】
この場合、融雪量の予測値を考慮して貯水施設への水の流入量を予測することができるので、降水量の予測のみに基づいて流入量を予測する場合に比べて、降水がなかった場合にも融雪により流入量が増加しうることを盛り込んで予測を行うことができる。したがって、より精度の高い予測を行うことができる。
【0010】
また、本発明のうち請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の流入量予測システムであって、前記データベースはさらに、気温の実績値及び積雪量の実績値を記憶し、前記モデル記憶部は、前記回帰モデルである流入量モデルに加えて、前記第1期間における気温から融雪の始まる気温を示す定数を引いた値又はゼロの大きい方の値に、前記第2期間における前記積雪量を乗じた値と、前記第1期間における前記降雨量とを説明変数とし、前記第1期間における前記融雪量を目的変数とする回帰モデルである融雪量モデルを記憶し、前記データベースに記憶されている前記気温の実績値、前記積雪量の実績値及び前記降雨量の実績値、並びに前記モデル記憶部に記憶されている前記融雪量モデルに基づいて回帰分析を行い、前記融雪量モデルに係る前記説明変数のそれぞれについての回帰係数を推計する融雪量モデル推計部と、前記予測期間における前記気温の予測値を取得する予測気温取得部と、を備え、前記予測融雪量取得部は、前記予測期間の前記所定期前の期間における前記積雪量の実績値を前記データベースから取得し、前記気温の予測値、前記取得した積雪量の実績値、前記降雨量の予測値、及び前記融雪量モデルに係る前記各説明変数を、前記融雪量モデルに適用して、前記予測期間における前記融雪量の予測値を算出することとする。
【0011】
ある気温以上では気温が上昇するほど融雪量は多くなり、また降雨によっても雪は溶かされるので、気温、積雪量及び降雨量を説明変数として、融雪量を回帰させることができる。一般的に気温や降雨量は気象予報の手法を用いて容易に予測することが可能であり、これらの容易に取得可能な気温や降雨量の予測値と、積雪量の実績値とに基づいて、融雪量を予測することができるので、融雪量そのものの予測が困難である場合にも対応することができる。
【0012】
また、本発明のうち請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の流入量予測システムであって、前記データベースはさらに、降雪量の実績値を記憶し、前記融雪モデル推計部は、前記積雪量モデルに含まれる前記積雪量の説明変数に、式
前記第1期間における積雪量=max(前記第1期間における前記降雪量+前記第2期間における前記積雪量−前記第1期間における前記融雪量,0)
を代入したモデルを回帰分析することにより、前記融雪量モデルに係る前記説明変数のそれぞれについての前記回帰係数を推計することとする。
【0013】
また、本発明のうち請求項5に記載の発明は、請求項1に記載の流入量予測システムであって、前記データベースには、前記降雨量の実績値に代えて、降水量の実績値が記憶されており、前記予測期間における前記降水量の予測値を取得する予測降水量取得部と、前記予測期間における前記気温の予測値を取得する予測気温取得部と、を備え、前記予測降雨量取得部は、前記気温の予測値が所定の気温を超えている場合に前記降水量を前記降雨量とし、前記気温の予測値が前記所定の気温以下である場合には前記降雨量を0とすることとする。
【0014】
また、本発明うち請求項6に記載の発明は、請求項5に記載の流入量予測システムであって、前記データベースは、前記降雨量の実績値に代えて、降水量の実績値を記憶し、前記データベースはさらに、気温の実績値及び降雪量の実績値を記憶し、前記気温、及び前記降水量を説明変数とし、前記降雪量を目的変数とした回帰モデルである降雪モデル、並びに前記データベースに記憶されている前記気温の実績値、前記降水量の実績値、及び前記降雪量の実績値に基づいて回帰分析を行い、前記説明変数のそれぞれについての回帰係数を推計する降雪モデル推計部と、前記データベースに記憶されている前記気温の実績値のそれぞれについて、前記気温がδ以下の場合には、前記降雪モデルに前記推計した回帰係数と前記気温の実績値及び前記降水量の実績値とを前記降雪モデルに適用して算出した値を推計降雪量とし、前記気温がδより高い場合には0を前記推計降雪量としたときに、前記降雪量の実績値と前記推計降雪量との誤差が最も小さくなる前記δを前記所定の気温として決定する降雪気温推計部と、を備えることとする。
【0015】
また、本発明のうち請求項7に記載の発明は、貯水施設への水の流入量を予測するシステムであって、所定期間ごとに、前記流入量の実績値、降雨量の実績値、気温の実績値、及び積雪量の実績値を記憶するデータベースと、ある第1期間における前記降雨量、前記第1期間における融雪量、及び前記第1期間から所定期前の第2期間における前記流入量と所定の定数である均衡流入量との差を説明変数とし、前記第2期間から前記第1期間までの前記流入量の増加量を目的変数とする回帰モデルである流入量モデル、及び、前記第1期間における気温から融雪の始まる気温を示す定数を引いた値又はゼロの大きい方の値に、前記第2期間における前記積雪量を乗じた値と、前記第1期間における前記降雨量とを説明変数とし、前記第1期間における前記融雪量を目的変数とする回帰モデルである融雪量モデルを記憶するモデル記憶部と、前記データベースに記憶されている前記気温の実績値、前記積雪量の実績値及び前記降雨量の実績値、並びに前記モデル記憶部に記憶されている前記融雪量モデルに基づいて回帰分析を行い、前記融雪量モデルに係る前記説明変数のそれぞれについての回帰係数を推計する融雪量モデル推計部と、前記データベースに記憶されている前記気温の実績値、前記積雪量の実績値、前記降雨量の実績値、及び前記推計した回帰係数を前記融雪量モデルに適用して、前記所定期間ごとの前記融雪量の理論値を算出し、前記データベースに記憶されている前記流入量の実績値、及び前記降雨量の実績値、前記算出した融雪量の理論値、並びに前記モデル記憶部に記憶されている前記流入量モデルに基づいて回帰分析を行い、前記流入量モデルに係る前記説明変数のそれぞれについての回帰係数を推計する流入量モデル推計部と、予測対象の期間である予測期間における前記降雨量の予測値を取得する予測降雨量取得部と、前記予測期間における前記気温の予測値を取得する予測気温取得部と、前記予測期間の前記所定期前の期間における前記積雪量の実績値を前記データベースから取得し、前記気温の予測値、前記取得した積雪量の実績値、前記降雨量の予測値、及び前記融雪量モデルに係る前記各説明変数を、前記融雪量モデルに適用して、前記予測期間における前記融雪量の予測値を算出する予測融雪量取得部と、前記予測期間から前記所定期前の期間における前記流入量の実績値を前記データベースから取得し、前記降雨量の予測値、前記融雪量の予測値、前記流入量の実績値、及び前記各回帰係数を前記流入量モデルに適用して、前記予測期間における前記増加量の予測値を算出する増加量予測部と、前記流入量の実績値に前記増加量の予測値を加算して、前記予測期間における前記流入量の予測値を算出する流入量予測部と、を備えることとする。
【0016】
この場合、気温、降雨量、及び積雪量を説明変数とする融雪量モデルを用いて融雪量の理論値を算出し、その融雪量を考慮して、貯水施設への水の流入量を予測することができる。したがって、融雪量の測定値などを気象庁や民間気象会社などから取得することができない場合でも、一般的に取得が容易な気温や降雨量の予測値と積雪量の実績値とに基づいて融雪量の予測値を算出することができる。これにより、融雪量の予測値が容易に取得できない場合にも、降水がなかった場合にも融雪により流入量が増加しうることを盛り込んで、貯水施設への水の流入量の予測を行うことが可能となり、精度の高い流入量の予測を実現できる。
【0017】
その他本願が開示する課題やその解決方法については、発明の実施形態の欄及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、貯水施設への水の流入量を容易に予測することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態に係る流入量予測システム10について説明する。
本実施形態の流入量予測システム10は、ダムなどの貯水施設に河川から流入する水量(以下、流入量という。)を予測する。流入量予測システム10は、過去の降水量、降雪量、積雪量、融雪量、流入量を、後述する統計モデルを用いて回帰分析することにより回帰係数を推計し、気温及び降水量の予測値(例えば、気象予報による予報値を採用することができる。)と、推計した回帰係数とを統計モデルに適用して流入量を予測する。なお、流入量の予測は一日単位で行うものとする。
【0020】
図1〜3は、流入量の変化を示すグラフである。降水や融雪などがない場合にも、例えば山林などからの滲出によって、所定の流入量は存在する。したがって、降水や融雪がないと、流入量は所定の均衡値(以下、均衡流入量という。)に逓減していく(図1)。これに対し、降水があると、それに応じて流水量は一時的に増加するが、降水が止むとともに、再度均衡流入量に向けて逓減を始める(図2)。一方、気温が上昇すると融雪が発生し、それに応じて流水量も増加するが、融雪は降水に比べて流入量に与える影響の変化が緩やかである(図3)。これは、例えば冬季から春季に向けての時期などにおいて、平均気温が上昇している場合に、継続的に融雪が発生するような場合である。
【0021】
そこで、本実施形態では、降水量、融雪量及び均衡流入量に着目し、流入量を算出する回帰モデルを用いて流入量を予測する。本実施形態の流入量予測システム10は、過去の気温や降水量などの気象データの実績値と後述する回帰モデルとに基づいてパラメータを推計し、推計したパラメータと、例えば気象予報などにより求められる気温の予測値(以下、予測気温という。)及び降水量の予測値(以下、予測降水量という。)とを回帰モデルに適用して流入量の予測値を算出する。以下、詳細について説明する。
【0022】
==システム構成==
本実施形態では、流入量予測システム10は、1台のコンピュータにより構成されることを想定している。図4は、本実施形態の流入量予測システム10のハードウェア構成を示す図である。流入量予測システム10は、CPU11、メモリ12、記憶装置13、入力装置14及び出力装置15を備える。記憶装置13は、各種のプログラムやデータを記憶する、例えば、ハードディスクドライブやフラッシュメモリ、CD−ROMドライブなどである。CPU11は、記憶装置13に記憶されているプログラムをメモリ12に読み出して実行することにより各種の機能を実現する。入力装置14は、ユーザからデータの入力を受け付ける、例えばキーボードやマウス、タッチパネル、マイクロフォンなどである。出力装置15は、データを出力する、例えばディスプレイやプリンタ、スピーカなどである。
【0023】
図5は、本実施形態の流入量予測システム10のソフトウェア構成を示す図である。本実施形態の流入量予測システム10は、降雪気温推計部21、融雪量モデル推計部22、流入量モデル推計部23、予測気温取得部24、予測降水量取得部25、流入量予測部26、モデル記憶部31、パラメータ記憶部32、及び気象実績データベース40を備えている。
【0024】
なお、降雪気温推計部21、融雪量モデル推計部22、流入量モデル推計部23、予測気温取得部24、予測降水量取得部25及び流入量予測部26は、流入量予測システム10のCPU11が、記憶装置13に記憶されているプログラムをメモリ12に読み出して実行することにより実現される。
【0025】
気象実績データベース40には、気象の各種実績値を含む情報(以下、気象実績情報という。)の履歴が記憶される。図6は、気象実績データベース40に記憶される気象実績情報の構成例を示す図である。同図に示すように、気象実績情報には、日付に対応付けて、気温、降水量、降雪量、積雪量、融雪量、流入量が含まれている。気温は、一日の平均気温である。降水量、降雪量、融雪量は一日の降水量、降雪量、融雪量の累積値である。積雪量は、その日に観測された積雪量である。流入量は、一日にダムなどの貯水施設に流入した水量の累計値である。気温、降水量、降雪量及び積雪量は、例えば、気象庁や民間気象会社などが提供するデータである。流入量は、貯水施設において測定した測定値である。流入量は、例えば、河川を管理する自治体などが提供する河川の流量の測定値としてもよい。融雪量は、気象庁や民間気象会社、測量会社などが測定したものであってもよいし、後述するモデルにより計算した値を実績値として記録するようにしてもよい。
【0026】
モデル記憶部31には、気象実績情報に基づく各種の統計モデルが記憶され、パラメータ記憶部32には、モデル記憶部31に記憶されているモデルに適用される回帰係数や定数などのパラメータが記憶される。モデル記憶部31には、降水量の統計モデル(以下、降水量モデル1という。)、降雪量の統計モデル(以下、降雪量モデル2という。)、積雪量の統計モデル(以下、積雪量モデル3という。)、融雪量の統計モデル(以下、融雪量モデル4という。)、及び前日からの流入量の増加量に係る統計モデル(以下、流入量モデル5という。)が記憶される。パラメータ記憶部32には、降雨が降雪に変わる気温(以下、降雪気温という。)δ、均衡流入量μ、融雪が始まる気温μ、回帰係数α〜α、β、βがパラメータ記憶部32に記憶される。なお、均衡流入量μ及び融雪が始まる気温μについては、所定の定数として、予めパラメータ記憶部32に記憶されているものとする。
【0027】
なお以下の説明において、日付tにおける気温、降水量、降雪量、積雪量、融雪量及び流入量をそれぞれ、T、P、S、D、M及びFとする。前日からの流入量の増加量をΔFtとする。気温Ttがδより高い場合の降水量をP1、気温Tがδ以下である場合の降水量をP2とする。
【0028】
降水量モデル1は、降水量Pが、降雪気温δを境に、P1またはP2となることを示すモデルであり、次式で表される。

降雪量モデル2は、気温Tがδ以下である場合の降水量P2tを説明変数とし、降雪量Stを目的変数とした回帰モデルであり、次式で表される。

積雪量モデル3は、積雪量Dが、前日までの積雪量Dt−1に当日の降雪量Sを加え、そこから融雪量Mを引いたものに一致するという関係を示すモデルであり、次式で表される。

融雪量モデル4は、気温Tから融雪が始まる気温μを減じた値に積雪量Dを乗じた値と、P1とを説明変数とし、融雪量Mを目的変数とした回帰モデルであり、次式で表される。

融雪量モデル4において、気温Tがμよりも低ければ第1項は0になり、前日までの積雪量Dt−1が0であれば融雪量Mは0になる。
流入量モデル5は、均衡流入量μから前日の流入量Ft−1を減じた値と、当日の気温Tがδより高い場合の降水量P1と、当日の融雪量Mとを説明変数とし、流入量の増加量ΔFを目的変数とした回帰モデルであり、次式で表される。

【0029】
降雪気温推計部21は、降水量モデル1及び気象実績情報に基づいて降雪気温δを推計し、推計した降雪気温δをパラメータ記憶部32に登録する。なお、降雪気温推計部21によるδの推計処理の詳細については後述する。
【0030】
また、降雪気温推計部21は、各日付tについて、日付tに対応する気象実績情報を気象実績データベース40から読み出し、読み出した気象実績情報の降水量及び気温と、上記推計した降雪気温δを前記降水量モデル1に適用してP2を算出する。降雪気温推計部21は、気象実績情報、P2、及び降雪量モデル2に基づいて回帰分析を行い、回帰変数γを推計する。降雪気温推計部21は、推計した回帰変数γをパラメータ記憶部32に登録する。
【0031】
融雪量モデル推計部22は、積雪量モデル3を融雪量モデル4に代入した式

を回帰分析して、回帰係数α及びαを推計する。融雪量モデル推計部22は、推計した回帰係数α及びαをパラメータ記憶部32に登録する。
【0032】
流入量モデル推計部23は、流入量モデル5及び気象実績情報に基づいて回帰係数α、β、及びβを推計する。具体的には、流入量モデル推計部23は、各日付tについて、降水量モデル1、δ及び日付tに対応する気象実績情報の降水量に基づいてP1を算出し、各日付tの気象実績情報と、対応するP1を用いて、流入量モデル5を回帰分析し、回帰係数α、β、及びβを推計する。気象実績情報に融雪量がない場合は,日付t−1の積雪量と日付tのその他の気象情報を用いて,融雪量モデル4を用いて算出したMを用いて,流入量モデル5を回帰分析し、回帰係数α、β、及びβを推計することもできる。流入量モデル推計部23は、推計した回帰係数α、β、及びβをパラメータ記憶部32に登録する。
【0033】
予測気温取得部24は、気温の予測値(以下、予測気温という。)を取得する。予測気温取得部24は、例えば、ユーザから予測気温の入力を受け付けてもよいし、気象庁や民間気象会社のコンピュータにアクセスして予測気温を取得するようにしてもよい。また、予測気温取得部24は、気象実績情報に基づいて気温の予測を行うようにしてもよい。この場合、例えば、一般的な気温の予測に用いられる統計モデルをモデル記憶部31に記憶しておき、予測気温取得部24がその統計モデルと気象実績情報とに基づいて回帰分析を行ってパラメータを推計し、推計したパラメータと気象実績情報とを統計モデルに適用して予測気温を算出することができる。
【0034】
予測降水量取得部25は、降水量の予測値(以下、予測降水量という。)を取得する。予測降水量取得部25は、例えば、ユーザから予測降水量の入力を受け付けてもよいし、気象庁や民間気象会社のコンピュータにアクセスして予測降水量を取得するようにしてもよい。また、予測降水量取得部25は、予測気温取得部24と同様に、気象実績情報に基づいて降水量の予測を行うようにしてもよい。
【0035】
流入量予測部26は、予測気温取得部24が取得した予測気温、予測降水量取得部25が取得した予測降水量、降雪気温推計部21が推計したパラメータ、気象実績情報、及び流入量モデル5を用いて、流入量の予測値(以下、予測流入量という。)を算出する。なお、予測流入量の算出処理の詳細については後述する。
【0036】
以下、本実施形態の流入量予測システムにおける処理の詳細について説明する。
【0037】
==推計処理==
まず、降雪気温推計部21による降雪気温δの推計処理について説明する。図7は、降雪気温推計部21による降雪気温δの推計処理の流れを示す図である。
【0038】
まず、降雪気温推計部21は、気象実績データベース40から降雪量が0より大きい気象実績情報を取得する(S501)。これにより、図8に示すように、気象実績データベース40に記憶されている気象実績情報のうち、降雪量が0より大きいもののみが抽出される。
次に、降雪気温推計部21は、抽出した気象実績情報に基づき、モデル
降雪量=a×気温+b×降水量
を回帰分析して、回帰係数a及びbを推計する(S502)。
降雪気温推計部21は、気温がδ以下の場合には「a×気象実績情報の気温+b×気象実績情報の降水量」、気温がδより高い場合には「0」を推計降雪量として、推計降雪量と気象実績情報の降雪量との差を2乗した値が最小になるδを算出する(S503)。
【0039】
降雪気温推計部21は、例えば、所定範囲の気温を所定ステップごとに増加させたδについて、図9に示すように、各気象実績情報について、気温がδより高ければ、上記回帰係数aを気温に乗じた値と、上記か域係数bを降水量に乗じた値とを合計して推計降雪量として算出し、推計降雪量と気象実績情報の降雪量との差を2乗した値を誤差の2乗として算出していき、誤差の2乗が最も小さくなったものをδとして決定することができる。なお、上記誤差の2乗が最も小さくなるように上記δを決定する処理については、一般的な統計手法を利用することが可能である。
【0040】
降雪気温推計部21は、上記のようにして決定したδを、パラメータ記憶部32に登録する(S504)。
以上のようにして融雪気温δが決定される。
【0041】
==流入量の予測処理==
次に、流入量の予測について説明する。図10は、本実施形態の流入量予測システム10における流入量予測処理の流れを示す図である。なお、図10の処理では、日付tが予測対象となる日付であるものとしている。
【0042】
予測気温取得部24は、予測気温Tを取得する(S601)。予測降水量取得部25は、予測降水量Pを取得する(S602)。上述したように、予測気温取得部24及び予測降水量取得部25は、例えば、ユーザからデータの入力を受け付けたり、気象庁や民間気象会社のコンピュータにアクセスしてデータを取得することにより、TやPを取得することができる。
【0043】
流入量予測部26は、パラメータ記憶部32からδを読み出し(S603)、降水量モデル1にδ、T及びPを適用してP1を算出する(S604)。すなわち、予測気温Tがδより大きければP1=Pとなり、Tがδ以下であればP1=0となる。
【0044】
流入量予測部26は、パラメータ記憶部32から、α〜α、β、β、μ、μを読み出す(S605)。流入量予測部26は、気象実績データベース40から、前日t−1に対応する気象実績情報を読み出し、読み出した気象実績情報の積雪量をDt−1とし(S606)、読み出した気象実績情報の流入量をFt−1とする(S607)。
【0045】
流入量予測部26は、融雪量モデル4に、α、T、μ、Dt−1、α、P1を代入して、融雪量の予測値Mを算出し(S608)、流入量モデル5に、α、μ、Ft−1、β、P1、β、Mを代入して流入増加量の予測値ΔFを算出する(S609)。流入量予測部26は、Ft−1にΔFを加算して、予測流入量Fを算出する(S610)。
【0046】
以上のようにして、本実施形態の流入量予測システム10によれば、予測気温及び予測降水量と、気象実績情報とに基づいて、降水量及び融雪量を考慮した流入量の予測を行うことができる。降水がなかい場合にも融雪により流入量は増加するため、融雪量を考慮して流入量の予測を行うことで、予測の精度を向上することができる。
【0047】
また、本実施形態の流入量予測システム10によれば、融雪量は、降水量及び気温から算出することができる。降水量及び気温の予測は、気象予報の手法として様々な手法が存在し、容易に入手可能である。したがって、融雪量の予測が困難である場合でも、容易に取得可能な降水量や気温の予測値に基づいて融雪量の予測を行うことで、融雪量を考慮した流入量の予測を容易に実現することができる。
【0048】
また、上記流入量モデル5では、第1項を均衡流入量と流入量との差であるものとして、均衡流入量を考慮に入れているので、単に流入量を説明変数とする場合に比べ、より精度の高い流入量予測を行うことができる。
【0049】
なお、本実施形態の流入量予測システムでは、ダムなどの貯水施設に河川から流入する水量についての予測を行うものとしたが、河川を流れる水量の予測を行うシステムにも容易に適用することができる。この場合、河川の上流域における気温や降水量の予報値及び実績値などを取得及び記録するものとする。
【0050】
また、本実施形態では、均衡流入量μ及び融雪が始まる気温μについては、予めパラメータ記憶部32に記憶されているものとしたが、これに限らず、過去の気象実績情報に基づいて当てはまりのよい値を推計するようにしてもよい。
【0051】
また、貯水施設が降雪や積雪の少ない地域に存在する場合などには、流入量モデル5は融雪量Mを考慮しないようにしてもよい。この場合流入量モデル5は、次式で表される。

【0052】
また、本実施形態の各回帰モデルについて、誤差項に系列相関があるような場合には、降雪気温推計部21がPrais-Winstein変換やコクラン・オーカット法によりパラメータを推計するようにしてもよい。この場合、例えば、コクラン・オーカット法により流入量モデル5のパラメータを推計する場合、残差をεとし、説明変数Xt*=X−ρXt−1として(すなわち、Ft*=F−ρFt−1、P1t*=P1−ρP1t−1、Mt*=M−ρMt−1などとして)、流入量モデル5を式のようにすることができる。

上記式(5”)を変形すると次式となる。

【0053】
上記のようにして、残差εに系列相関がなくなるn期前まで遡って式変形を行った流入量モデル5を求めることができる、その他のモデルについても同様に、誤差項に系列相関がなくなるようにパラメータを推計することができる。上記のようにして残差εの系列相関がなくなるn期遅れのモデルをモデル記憶部31に記憶しておき、n期遅れのモデルを用いて流入量を予測することにより、残差項に系列相関がある場合にも、適切なパラメータの推計を行うことが可能となり、適切なパラメータを用いて精度よく流入量を予測することができる。
【0054】
以上、本実施形態について説明したが、上記実施形態は本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物も含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】降水がない場合の流入量の変化を示すグラフである。
【図2】降水がある場合の流入量の変化を示すグラフである。
【図3】融雪がある場合の流入量の変化を示すグラフである。
【図4】本実施形態の流入量予測システム10のハードウェア構成を示す図である。
【図5】本実施形態の流入量予測システム10のソフトウェア構成を示す図である。
【図6】気象実績情報の構成例を示す図である。
【図7】降雪気温推計部21による降雪気温δの推計処理の流れを示す図である。
【図8】降雪量が0より大きい気象実績情報を抽出することを説明する図である。
【図9】ある降雪気温δについて推計降雪量および誤差の2乗を計算した結果を示す図である。
【図10】流入量予測処理の流れを示す図である。
【符号の説明】
【0056】
10 流入量予測システム
11 CPU
12 メモリ
13 記憶装置
14 入力装置
15 出力装置
21 降雪気温推計部
22 融雪量モデル推計部
23 流入量モデル推計部
31 モデル記憶部
32 パラメータ記憶部
40 気象実績データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水施設への水の流入量を予測するシステムであって、
所定期間ごとに、前記流入量の実績値、及び降雨量の実績値を記憶するデータベースと、
ある第1期間における前記降雨量、及び前記第1期間から所定期前の第2期間における前記流入量と所定の定数である均衡流入量との差を説明変数とし、前記第2期間から前記第1期間までの前記流入量の増加量を目的変数とする回帰モデルを記憶するモデル記憶部と、
前記データベースに記憶されている前記流入量の実績値及び前記降雨量の実績値、並びに前記モデル記憶部に記憶されている前記回帰モデルに基づいて回帰分析を行い、前記説明変数のそれぞれについての回帰係数を推計する流入量モデル推計部と、
予測対象の期間である予測期間における前記降雨量の予測値を取得する予測降雨量取得部と、
前記予測期間から前記所定期前の期間における前記流入量の実績値を前記データベースから取得し、前記降雨量の予測値、前記流入量の実績値、及び前記各回帰係数を前記回帰モデルに適用して、前記予測期間における前記増加量の予測値を算出する増加量予測部と、
前記流入量の実績値に前記増加量の予測値を加算して、前記予測期間における前記流入量の予測値を算出する流入量予測部と、
を備えることを特徴とする流入量予測システム。
【請求項2】
請求項1に記載の流入量予測システムであって、
前記データベースは、前記所定期間ごとに、融雪量の実績値をさらに記憶し、
前記モデル記憶部に記憶される前記回帰モデルには、説明変数として、さらに前記第1期間における前記融雪量が含まれ、
前記予測期間における前記融雪量の予測値を取得する予測融雪量取得部を備え、
前記流入量モデル推計部は、前記データベースに記憶されている前記流入量の実績値、前記降雨量の実績値、及び前記融雪量の実績値、並びに前記モデル記憶部に記憶されている前記回帰モデルに基づいて回帰分析を行い、前記回帰係数を推計すること、
を特徴とする流入量予測システム。
【請求項3】
請求項2に記載の流入量予測システムであって、
前記データベースはさらに、気温の実績値及び積雪量の実績値を記憶し、
前記モデル記憶部は、前記回帰モデルである流入量モデルに加えて、前記第1期間における気温から融雪の始まる気温を示す定数を引いた値又はゼロの大きい方の値に、前記第2期間における前記積雪量を乗じた値と、前記第1期間における前記降雨量とを説明変数とし、前記第1期間における前記融雪量を目的変数とする回帰モデルである融雪量モデルを記憶し、
前記データベースに記憶されている前記気温の実績値、前記積雪量の実績値及び前記降雨量の実績値、並びに前記モデル記憶部に記憶されている前記融雪量モデルに基づいて回帰分析を行い、前記融雪量モデルに係る前記説明変数のそれぞれについての回帰係数を推計する融雪量モデル推計部と、
前記予測期間における前記気温の予測値を取得する予測気温取得部と、
を備え、
前記予測融雪量取得部は、前記予測期間の前記所定期前の期間における前記積雪量の実績値を前記データベースから取得し、前記気温の予測値、前記取得した積雪量の実績値、前記降雨量の予測値、及び前記融雪量モデルに係る前記各説明変数を、前記融雪量モデルに適用して、前記予測期間における前記融雪量の予測値を算出すること、
を特徴とする流入量予測システム。
【請求項4】
請求項3に記載の流入量予測システムであって、
前記データベースはさらに、降雪量の実績値を記憶し、
前記融雪モデル推計部は、前記積雪量モデルに含まれる前記積雪量の説明変数に、式
前記第1期間における積雪量=max(前記第1期間における前記降雪量+前記第2期間における前記積雪量−前記第1期間における前記融雪量,0)
を代入したモデルを回帰分析することにより、前記融雪量モデルに係る前記説明変数のそれぞれについての前記回帰係数を推計すること、
を特徴とする流入量予測システム。
【請求項5】
請求項1に記載の流入量予測システムであって、
前記データベースには、前記降雨量の実績値に代えて、降水量の実績値が記憶されており、
前記予測期間における前記降水量の予測値を取得する予測降水量取得部と、
前記予測期間における前記気温の予測値を取得する予測気温取得部と、
を備え、
前記予測降雨量取得部は、前記気温の予測値が所定の気温を超えている場合に前記降水量を前記降雨量とし、前記気温の予測値が前記所定の気温以下である場合には前記降雨量を0とすること、
を特徴とする流入量予測システム。
【請求項6】
請求項5に記載の流入量予測システムであって、
前記データベースはさらに、気温の実績値及び降雪量の実績値を記憶し、
前記気温、及び前記降水量を説明変数とし、前記降雪量を目的変数とした回帰モデルである降雪モデル、並びに前記データベースに記憶されている前記気温の実績値、前記降水量の実績値、及び前記降雪量の実績値に基づいて回帰分析を行い、前記説明変数のそれぞれについての回帰係数を推計する降雪モデル推計部と、
前記データベースに記憶されている前記気温の実績値のそれぞれについて、前記気温がδ以下の場合には、前記推計した回帰係数と前記気温の実績値及び前記降水量の実績値とを前記降雪モデルに適用して算出した値を推計降雪量とし、前記気温がδより高い場合には0を前記推計降雪量としたときに、前記降雪量の実績値と前記推計降雪量との誤差が最も小さくなる前記δを前記所定の気温として決定する降雪気温推計部と、
を備えることを特徴とする流入量予測システム。
【請求項7】
貯水施設への水の流入量を予測するシステムであって、
所定期間ごとに、前記流入量の実績値、降雨量の実績値、気温の実績値、及び積雪量の実績値を記憶するデータベースと、
ある第1期間における前記降雨量、前記第1期間における融雪量、及び前記第1期間から所定期前の第2期間における前記流入量と所定の定数である均衡流入量との差を説明変数とし、前記第2期間から前記第1期間までの前記流入量の増加量を目的変数とする回帰モデルである流入量モデル、及び、前記第1期間における気温から融雪の始まる気温を示す定数を引いた値又はゼロの大きい方の値に、前記第2期間における前記積雪量を乗じた値と、前記第1期間における前記降雨量とを説明変数とし、前記第1期間における前記融雪量を目的変数とする回帰モデルである融雪量モデルを記憶するモデル記憶部と、
前記データベースに記憶されている前記気温の実績値、前記積雪量の実績値及び前記降雨量の実績値、並びに前記モデル記憶部に記憶されている前記融雪量モデルに基づいて回帰分析を行い、前記融雪量モデルに係る前記説明変数のそれぞれについての回帰係数を推計する融雪量モデル推計部と、
前記データベースに記憶されている前記気温の実績値、前記積雪量の実績値、前記降雨量の実績値、及び前記推計した回帰係数を前記融雪量モデルに適用して、前記所定期間ごとの前記融雪量の理論値を算出し、前記データベースに記憶されている前記流入量の実績値、及び前記降雨量の実績値、前記算出した融雪量の理論値、並びに前記モデル記憶部に記憶されている前記流入量モデルに基づいて回帰分析を行い、前記流入量モデルに係る前記説明変数のそれぞれについての回帰係数を推計する流入量モデル推計部と、
予測対象の期間である予測期間における前記降雨量の予測値を取得する予測降雨量取得部と、
前記予測期間における前記気温の予測値を取得する予測気温取得部と、
前記予測期間の前記所定期前の期間における前記積雪量の実績値を前記データベースから取得し、前記気温の予測値、前記取得した積雪量の実績値、前記降雨量の予測値、及び前記融雪量モデルに係る前記各説明変数を、前記融雪量モデルに適用して、前記予測期間における前記融雪量の予測値を算出する予測融雪量取得部と、
前記予測期間から前記所定期前の期間における前記流入量の実績値を前記データベースから取得し、前記降雨量の予測値、前記融雪量の予測値、前記流入量の実績値、及び前記各回帰係数を前記流入量モデルに適用して、前記予測期間における前記増加量の予測値を算出する増加量予測部と、
前記流入量の実績値に前記増加量の予測値を加算して、前記予測期間における前記流入量の予測値を算出する流入量予測部と、
を備えることを特徴とする流入量予測システム。
【請求項8】
貯水施設への水の流入量を予測する方法であって、
コンピュータが、
所定期間ごとに、前記流入量の実績値、及び降雨量の実績値をメモリに記憶し、
ある第1期間における前記降雨量、及び前記第1期間から所定期前の第2期間における前記流入量と所定の定数である均衡流入量との差を説明変数とし、前記第2期間から前記第1期間までの前記流入量の増加量を目的変数とする回帰モデルを前記メモリに記憶し、
前記メモリに記憶されている前記流入量の実績値及び前記降雨量の実績値、並びに前記モデル記憶部に記憶されている前記回帰モデルに基づいて回帰分析を行い、前記説明変数のそれぞれについての回帰係数を推計し、
予測対象の期間である予測期間における前記降雨量の予測値を取得し、
前記予測期間から前記所定期前の期間における前記流入量の実績値を前記メモリから取得し、前記降雨量の予測値、前記流入量の実績値、及び前記各回帰係数を前記回帰モデルに適用して、前記予測期間における前記増加量の予測値を算出し、
前記流入量の実績値に前記増加量の予測値を加算して、前記予測期間における前記流入量の予測値を算出すること、
を特徴とする流入量予測方法。
【請求項9】
貯水施設への水の流入量を予測するためのプログラムであって、
コンピュータに、
所定期間ごとに、前記流入量の実績値、及び降雨量の実績値をメモリに記憶するステップと、
ある第1期間における前記降雨量及び前記第1期間から所定期前の第2期間における前記流入量と所定の定数である均衡流入量との差を説明変数とし、前記第2期間から前記第1期間までの前記流入量の増加量を目的変数とする回帰モデルを前記メモリに記憶するステップと、
前記メモリに記憶されている前記流入量の実績値、及び前記降雨量の実績値、並びに前記モデル記憶部に記憶されている前記回帰モデルに基づいて回帰分析を行い、前記説明変数のそれぞれについての回帰係数を推計するステップと、
予測対象の期間である予測期間における前記降雨量の予測値を取得するステップと、
前記予測期間から前記所定期前の期間における前記流入量の実績値を前記メモリから取得し、前記降雨量の予測値、前記融雪量の予測値、前記流入量の実績値、及び前記各回帰係数を前記回帰モデルに適用して、前記予測期間における前記増加量の予測値を算出するステップと、
前記流入量の実績値に前記増加量の予測値を加算して、前記予測期間における前記流入量の予測値を算出するステップと、
を実行させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−167751(P2009−167751A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−9568(P2008−9568)
【出願日】平成20年1月18日(2008.1.18)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)