説明

流動体移送装置

【課題】ワイヤの材質によることなく、ワイヤ上に取り付けた素子の位置が移動することなく、信頼性が高い円板状素子をワイヤに強固に固定した流動体移送装置を提供する。
【解決手段】粉体や液体などの流動体を低所から高所へ移送する装置において、ワイヤ2に半径方向に突出して円板状素子4を取り付けたループ状の円板状素子付きワイヤ1と、円板状素子付きワイヤを上下に架設し巻回しする上下のプーリー25,26と、上プーリーを収納する上部ケース23と、下プーリーを収納する下部ケース21と、上部ケースと下部ケースとの間を連通するように橋設した2本の移送筒22a,22bと、を備え、下部ケース内に供給された流動体Pを上昇する円板状素子に載置して上部ケースに移送する装置であって、円板状素子は、ワイヤに間隔をおいて固設された固定子3を内部に包含するように取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体や液体などの流動体を、ワイヤに間隔をおいて取付けられた円板状素子により、移送筒内を移送するための流動体移送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、食品工場や化学工場で、原材料となる粉体などを低所から高所へ移送する粉体移送装置が用いられてきた。従来、ワイヤに複数の円板状素子を間隔をおいて取り付け、ワイヤを移動させることにより筒内の液状物質や粉状物質などの流動体を移送する装置が用いられている。このような移送装置は、使用されるワイヤは複数本の金属線を撚って作られており、ワイヤに取り付けられた円板状素子あるいは同様の搬送素子はプラスチックなどの素材ををワイヤ上に固着されている。
しかしながら、曲った筒体や比較的小さい曲率半径を有する筒体内を流動体を移送する場合は、ワイヤ上に固着された円板状素子の移動がスムーズに行われず、円板状素子がワイヤから外れてしまったり、円板状素子そのものが破壊されたりすることがあった。
このため、特許文献1(特開平2−291305号公報)には、間隔をおいて半径方向に突出した複数の素子を、ケーブルの一部を貫通するリベットの突出端を包んで取り付けられ、流体物質をダクトを通して搬送するケーブル搬送装置が開示されている。
【特許文献1】特開平2−291305号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1のケーブル搬送装置は、細い撚り線からなるケーブルにリベットを貫通させると、その部位において撚り線がほぐれやすくなり、ケーブル上に固定された素子の位置が移動するおそれがあった。
そこで、本発明は、上記従来技術に鑑みてなされたもので、ワイヤの材質によることなく、ワイヤ上に取り付けた素子の位置が移動することなく、信頼性が高い円板状素子をワイヤに強固に固定した流動体移送装置を提供することを目的とする。
【0004】
(1)本発明の流動体移送装置は、粉体や液体などの流動体を低所から高所へ移送する装置において、ワイヤに半径方向に突出して円板状素子を取り付けたループ状の円板状素子付きワイヤと、該円板状素子付きワイヤを上下に架設し巻回しする上下のプーリーと、該上プーリーを収納する上部ケースと、該下プーリーを収納する下部ケースと、該上部ケースと該下部ケースとの間を連通するように橋設した2本の移送筒と、を備え、下部ケース内に供給された流動体を上昇する該円板状素子に載置して該上部ケースに移送する装置であって、該円板状素子は、該ワイヤに間隔をおいて固設された固定子を内部に包含するように取り付けられたものであることを特徴とする。
(2)また本発明の流動体移送装置は、前記(1)において、前記円板状素子は、固定子を中心位置に包含するように組み立てた型枠内に溶融プラスチックを流し込んで形成したものであることを特徴とする。
(3)本発明の流動体移送装置は、前記(1)又は(2)において、前記固定子は、半田接合又はカシメ圧着でワイヤに固設されたものであることを特徴とする。
(4)さらに、本発明の流動体移送装置は、前記(1)〜(3)において、前記円板状素子付ワイヤは、ワイヤの端部に固定子片を固設した固定子片付きワイヤを複数用意し、該両固定子片付きワイヤの固定子片の端面同士を突き合わせて当接させ、該当接させた両固定子片を包含するように固定子保持体を取り付けた固定子保持体付きワイヤとし、該固定子保持体を包含するように円板状素子を取り付けて固定子保持体付きワイヤを連結して形成したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0005】
本発明の流動体移送装置は、円板状素子をワイヤに強固に取り付けているので、円板状素子付ワイヤを2つのプーリー(歯車)間に巻き回し強力に牽引しても、円板状素子の位置が容易にずれたり、円板状素子の姿勢が大きく傾くことがない。
また、ワイヤをループ状に連結するときの固定子の固設も半田接合又はカシメ圧着としているので、強固な円板状素子付ワイヤとすることができる。
さらに、円板状素子付ワイヤを円板状素子の箇所で連結した構造としているため、円板状素子の勘合ボルトを取り外すことにより、ループを容易に解くことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、本発明の実施形態の流動体移送装置を、図1〜図3を参照しながら具体的に説明する。
図1は、実施形態の流動体移送装置の全体を示す正面図(a)及び全体を示す側面図(b)である。
図2は、実施形態の流動体移送装置の下部ケースの断面図である。
図3は、実施形態の流動体移送装置の上部ケースの断面図である。
【0007】
図1〜図3に示すように、実施形態の流動体移送装置は、装置内の低所の下部ケース内の駆動プーリー(本実施形態では歯車で示す。以下歯車という場合がある)と高所の上部ケース内の従動歯車との間にループ状の円板状素子付ワイヤを架設し巻き回して回動させ、下部ケース内において円板状素子で粉体をすくい揚げ、上部ケース内で円板状素子を反転させて上部ケースの排出口へ排出する構造となっている。すなわち、円板状素子付ワイヤ1は、下部ケース21内の駆動歯車25の外周歯に巻き回されており、移送筒内22bにおいて、下降移送筒22bの矢印(図2の下降移送筒22bの下降矢印参照)方向から駆動歯車25の歯25aで引っ張られて進入し、ホッパー20から投入され下部ケース21の底部に滞留している流動体(粉体)Pを、円板状素子付ワイヤ1に取り付けられている円板状素子4上に載置し、下部ケース21と上部ケース23との間を連通するように橋設した移送筒22a内を上昇させて移送する(図2の上昇移送筒22aの上昇矢印参照)。
そして、上部ケース23内に設けられた従動歯車26の最頂部で円板状素子4の姿勢を反転させると、円板状素子4上の粉体Pは、円板状素子4上からこぼれ落ちて下方の排出口24に落下する(図3参照)。
その後、円板状素子4は、下降移送筒22bの中へ侵入し下部ケース21内へ再び侵入する。なお、駆動歯車25は、図示しないモータなどの駆動手段によって回転駆動される。
【0008】
実施形態の流動体移送装置に使用されるループ状(無端状)の円板状素子付ワイヤ1には、等間隔に円板状素子4が取り付けられており、駆動歯車25により、円板状素子4が強く牽引されるから、ワイヤ(ケーブル)に対してを強く取り付ける必要がある。円板状素子4のワイヤ2への取り付けが弱いと、ワイヤ2上の円板状素子4の位置がずれ、円板状素子4と歯車25,26の咬みあわせが円滑でなくなる。さらに、歯車の歯25a,26aは円板状素子4の片側半分にしか接触しないことから、円板状素子4の取り付けが弱いとワイヤ2に対して円板状素子4の姿勢が傾き、円板状素子4が歯車25,26から外れるおそれがある。
なお、ワイヤ素材としては、強度の点から、金属単線、金属撚り線、金属鎖線などが好ましく挙げられる。
【実施例】
【0009】
以下に円板状素子をワイヤに強く取り付けるための実施例を詳細に説明する。
(実施例1)
まず、実施例1では、ワイヤに固定子を固設した後、この固定子を内部に包含するように円板状素子を固定子に取り付ける。
図4は、ワイヤに固定子を固設した状態を示す斜視図(a)である。この場合、ワイヤへの固定子の取り付け方として、半田接合する場合(b)、カシメ圧着する場合(c)がある。固定子3は、ワイヤ2の一端から挿入するが、固定子3の内径はワイヤ径と略同じにすることがワイヤ2へ強く固定できて好ましい。
【0010】
なお、半田接合の場合は、半田フラックスをワイヤ2と固定子3との界面に浸透させ、バーナーなどで加温しながら溶融半田を流し込み、界面に半田/素材の半田合金層33を形成する。カシメ圧着の場合は、固定子3の胴周にカシメ工具を用いて、カシメ圧着部31の凹みを形成するとともに、ワイヤ2の外周にカシメ変形部32が生じるまで圧着して、ワイヤに固定子を強固に固設する。
【0011】
次に、図4でワイヤに固設した固定子を内部に包含するように円板状素子を取り付ける。図5(a)は、ワイヤに取り付けられた状態の円板状素子の断面図であり、(b)はその外観斜視図である。図5に示すように、円板状素子4は、ワイヤ上に等間隔に複数個取り付けられているが、その取り付け方法としては、例えば、固定子を包含するように取り付けた円板状素子形状の型枠41内のスペースに、加熱溶融したプラスチックを注入して冷却凝固させる方法が挙げられる(鋳ぐるみ法)。この鋳ぐるみ法によれば、円板状素子4は、ワイヤ2に強固に固設された固定子3を内部に包含して一体化するので容易にワイヤ上の位置がずれて移動することはない。
なお、円板状素子4の形状は、図5に示すように、ワイヤに近い部分の厚みよりも外周部を薄くするようなテーパをつけても良く、平らな円板状としてもよい。
【0012】
(実施例2)
図6は、固定子をワイヤに取り付ける実施例2を示す斜視図である。まず、図6(a)に示すように、切断された2本のワイヤ2の両端部に端部形成用の固定子片3a、3bをそれぞれ挿入してワイヤ2の端部に固設する。ワイヤ2の端部に固設されたそれぞれの固定子片3a、3bは、先に実施例1で説明したと同様にして、半田接合(又はカシメ圧着でもよい)にてワイヤ2に固定される。
次に、図6(b)に示すように、半田接合した固定子片3a,3bの端面3d同士を突き合わせて当接させて固定子3とし、その当接させた固定子3を包含するように、固定子保持体5を縦に2分割した固定子保持体片5a、5bを取り付け、切断されたワイヤを連結した固定子保持体付きワイヤとする(c)。
そして、次に、固定子保持体5の周囲に円板状素子をワイヤに取り付けるのであるが、実施例2の円板状素子は、図7に示すように縦(直径方向)に2分割された素子片10a,10aからなる。
【0013】
すなわち、図7(a)の斜視図に示すように、縦割りの2個の素子片10a,10bは、両素子片が合わされたときに、固定子3及び固定子保持体5を包含する隙間Sを有し、その上下面は固定子保持体5の上部と下部が露出するように開口されている。なお、素子片10a、10bには、その中心内部に半円形の凹溝部10mが設けられており、その上下は半円形の鍔部10fを形成している。
次に、これらの、素子片10a、10bを合わせたときの隙間Sに、先の図6(c)の固定子保持体付きワイヤの固定子保持体5を包含して、一対の素子片の当接面10c、10c同士を当接させて合わせた状態とし、素子片10a,10bの側面に設けられたネジ穴11a、11aに勘合ボルト11を螺着して、一対の素子片を一体化して円板状素子10とする(図7(b))。
実施例2の円板状素子は、固定子保持体5のフランジ6が、円板状素子10の鍔部10fにより係止された状態となっており、上下の両ワイヤ2、2は、円板状素子10内で強く連結固定され、ワイヤ状の位置が容易にずれて移動することはない。
【0014】
なお、実施例2では、実施例1と同様に、固定子保持体5をさらに包含するように鋳ぐるみして円板状素子4を取り付ける。この場合の円板状素子4も、中央部にフランジ6を有し、上下の平面部中心にワイヤ2を通す穴5hを有する固定子保持体5を鋳ぐるんで一体化しているので、ワイヤ2上で容易に円板状素子4の位置がずれ移動することはない。
【0015】
(実施例3)
図8は、円板状素子をワイヤに取り付ける実施例3を示す斜視図である。まず、図8(a)に示すように、切断された2本のワイヤ2の両端部に端部形成用の固定子片を取り付けるのは、実施例2と同様である。実施例3では、縦(直径方向)に2分割された固定子保持体片ではなく、それぞれの上下のワイヤに予め通された固定子保持体片を用いる点で異なる。
【0016】
実施例3では、まず、両ワイヤ2、2の両端に固定子片3a、3bをそれぞれ固設する前に、予めワイヤ2の両端から固定子保持体片8a、8bを挿通させ、一対の固定子保持体片8a、8bのフランジ部6a、6bを突合せ当接することにより、固定子片3a,3bの端面3d同士を突き合わせ当接し、固定子3を包含した固定子保持体8とする(図8(b))。そして、さらに固定子保持体8は、実施例2と同様にして、円板状素子を取り付けられ内部に包含される。
【0017】
なお、実施例3において用いたワイヤ両端に固設する固定子の代わりに、図9に示すように、予めワイヤ2に挿通された固定子保持体片8a、8bの中心部の隙間7に、半田を流し込んでワイヤ2と固定子保持体片8a、8bとを固設してもよい。そして、(b)に示すように一対の固定子保持体片8a、8bのフランジ部6を突合わせて当接させることもできる。
【0018】
本発明の流動体移送装置は、ワイヤ上の円板状素子取付け位置にワイヤに挿着した固定子を半田接合又はカシメ圧着で固定し、円板状素子付ワイヤを2つのプーリー(歯車)に巻き回し強力に牽引しても円板状素子位置が容易にずれたり、円板状素子の姿勢が大きく傾くことがないので、粉体など各流動体の移送装置に広く適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態の流動体移送装置の全体を示す正面図(a)及び全体を示す側面図(b)である。
【図2】実施形態の流動体移送装置の下部ケースの断面図である。
【図3】実施形態の流動体移送装置の上部ケースの断面図である。
【図4】実施例1のワイヤに固定子を固設した状態である。
【図5】ワイヤに取り付けられた状態の円板状素子の断面図(a)であり、(b)はその外観斜視図である。
【図6】円板状素子をワイヤに取り付ける実施例2を示す斜視図である。
【図7】縦(直径方向)に2分割された状態を示す実施例2の分割素子である。
【図8】円板状素子をワイヤに取り付ける実施例3を示す斜視図である。
【図9】他の実施例3の方法を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0020】
1 ・・・ 円板状素子付ワイヤ
2 ・・・ ワイヤ
3 ・・・ 固定子
3a、b ・・・ 固定子片
31 ・・・ カシメ圧着部
32 ・・・ カシメ変形部
33 ・・・ 半田合金層
3d ・・・ 端面
4 ・・・ 円板状素子
41 ・・・ 型枠
5 ・・・ 固定子保持体
5a、b ・・・ 固定子保持体片
5h ・・・ 穴
6、6a、6b ・・・ フランジ部
7 ・・・ 隙間
8 ・・・ 固定子保持体
8a,b ・・・ 固定子保持体片
10 ・・・ 円板状素子
10a、b ・・・ 素子片
10c ・・・ 当接面
10f ・・・鍔部
10m ・・・ 凹溝部
11 ・・・勘合ボルト
11a ・・・ネジ穴
20 ・・・・ホッパー
21 ・・・・下部ケース
22a、b・・移送筒
23 ・・・ 上部ケース
24 ・・・ 排出口
25 ・・・ 駆動プーリー(歯車)
25a・・・ 歯
26 ・・・ 従動プーリー(歯車)
P ・・・ 粉体(流動体)
S ・・・ 隙間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体や液体などの流動体を低所から高所へ移送する装置において、
ワイヤに半径方向に突出して円板状素子を取り付けたループ状の円板状素子付きワイヤと、
該円板状素子付きワイヤを上下に架設し巻回しする上下のプーリーと、
該上プーリーを収納する上部ケースと、
該下プーリーを収納する下部ケースと、
該上部ケースと該下部ケースとの間を連通するように橋設した2本の移送筒と、を備え、
下部ケース内に供給された流動体を上昇する該円板状素子に載置して該上部ケースに移送する装置であって、
該円板状素子は、該ワイヤに間隔をおいて固設された固定子を内部に包含するように取り付けられたものであることを特徴とする流動体移送装置。
【請求項2】
前記円板状素子は、固定子を中心位置に包含するように組み立てた型枠内に溶融プラスチックを流し込んで形成したものであることを特徴とする請求項1に記載の流動体移送装置。
【請求項3】
前記固定子は、半田接合又はカシメ圧着でワイヤに固設されたものであることを特徴とする請求項1又は2記載の流動体移送装置。
【請求項4】
前記円板状素子付ワイヤは、ワイヤの端部に固定子片を固設した固定子片付きワイヤを複数用意し、該両固定子片付きワイヤの固定子片の端面同士を突き合わせて当接させ、該当接させた両固定子片を包含するように固定子保持体を取り付けた固定子保持体付きワイヤとし、該固定子保持体を包含するように円板状素子を取り付けて固定子保持体付きワイヤを連結して形成したものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の流動体移送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2008−168967(P2008−168967A)
【公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−1669(P2007−1669)
【出願日】平成19年1月9日(2007.1.9)
【出願人】(597002807)株式会社 テクニカルサポート (3)