説明

流動性物質用吐出装置

【課題】従来技術で知られている吐出装置を特に取り扱いの点で改良する。
【解決手段】本発明は、互いに対向する端部に主延長方向(102)に沿って一列に配置された状態に、吐出口(112)を一方に、物質容器または物質容器用固定装置(114)をもう一方に具備し、さらに、ピストン(124)によって1側面が画成されたポンプ室を有し、該ピストン(124)がポンプ方向に沿って吐出圧を生成するように長手方向に移動可能に構成されたポンプ装置(120)を具備し、ポンプ方向が主延長方向(102)とほぼ直角を成す流動性物質用吐出装置に関する。
本発明において、ピストン(124)は、ポンプ方向に手動で押入可能な作動装置(130)と機能的に結合されており、該作動装置が、吐出装置の納品状態において、押入された状態に安全部材(150)によって保持され、その押入された状態において特にポンプ室が僅かな容量を有する。
本発明に係る吐出装置は、組み立ての点において特に有利な取り扱いを可能にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流動性物質用吐出装置であって、互いに対向する端部に主延長方向に沿って一列に配置された状態に、吐出口を一方に、物質容器または物質容器用固定装置をもう一方に具備し、さらに、ピストンによって1側面が画成されたポンプ室を有し、該ピストンがポンプ方向に沿って吐出圧を生成するように長手方向に移動可能に構成されたポンプ装置を具備し、ポンプ方向が主延長方向とほぼ直角を成す流動性物質用吐出装置に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の吐出装置は従来技術から知られている。これらの装置は、特に化粧品および薬剤に利用され、通例、作動用に主延長方向に対して横向きに構成された作動装置によって作動される。
【0003】
このような吐出装置の短所とみなされるのは、一般に側方に設けられた作動装置が大抵の場合回転対称に成形されておらず、これが機械による取り扱いの際、特に充填時に問題となる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、従来技術で知られている吐出装置を特に取り扱いの点で改良することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、ピストンが、ポンプ方向に手動で押入可能な作動装置と機能的に結合されており、該作動装置が、吐出装置の納品状態において、押入された状態に安全部材によって保持され、その状態において特にポンプ室が僅かな容量を有するこの種の吐出装置によって解決される。
【発明の実施の形態】
【0006】
ポンプ装置の作動は作動装置を介して行われ、作動装置の作動方向はポンプ方向に一致する。この目的のために、作動装置はまたピストンと一体に構成することも可能である。主延長方向は、一般に細長く構成された吐出装置の主軸に沿っている。利用時、吐出装置は利用者によって、主延長方向が、物質をその表面または内部に投与すべき眼または他の身体部位に向けてほぼその方向に保持される。横向きに吐出装置内に配置されたポンプ装置およびポンプ方向に移動可能な作動装置によって、利用者が吐出装置の作動に必要な力を加えたときに、誤って吐出装置を開いた眼または当該身体部位に押し付けることのないことが保証される。ポンプ方向が物質容器からポンプ室までの物質流路またはポンプ室から吐出口までの物質流路に対して平行ではないので、主延長方向に対してポンプ室のピストン側を密封するのに必要なコストが減少する。
【0007】
作動装置は、容易に作動するように、外方向に働く力を作動装置に加える戻しばねを有することが好ましい。これはまた、作動装置と結合されたピストンのピストンばねによって行うこともできる。安全部材は、戻しばねの力とは逆に作動装置を押し込まれた状態に保持する。これは、特に輸送時の保護および/または偽造防止に好都合である。好ましくは、安全部材を除去する前に、安全部材によって制限されたピストンのストロークがポンプ室の入口弁あるいは流入路を遮断することで、ポンプ過程が中断される。これにより、有利には、物質容器と吐出口との間にある、物質を案内する結合流路が密閉される。本発明で言う僅かな容量とは、ポンプ室の容量がポンプ室の最大容量よりも小さい場合である。好ましくは、この僅かな容量とは、安全部材を除去した後、ポンプ室内に負圧が生じ、その結果、安全部材の除去直後の作動圧において物質が吐出され、使用開始のためのそれ以上の処置を講じる必要がない程度の容量である。
【0008】
当該安全部材は、特に吐出装置の外形に関して有利である。安全部材によりロックされた状態にあるとき、作動装置または例えばボタン状の部材は、ロックされていない状態に比して、ハウジングから半径方向に突出していない、あるいは突出の度合いが小さい。これにより、ロックされた納品状態において吐出装置の大きさは小さくなり、従って、より経済的な梱包が可能となる。さらに、吐出操作方向を機械が考慮する必要がない場合、機械による取り扱い、特に吐出装置の充填時または吐出装置への物質容器の固定時における取り扱いが容易になる。
【0009】
本発明のもう1つの態様では、吐出装置が納品状態において回転対称またはほぼ回転対称の外形を有する。これにより、充填機による特に有利な取り扱いが可能となる。特に、把持装置を備え、その把持装置が吐出装置をつかむための円形の隙間を有する把持手段を利用できる。また吐出装置を例えばベルトで運搬する際にも、このような回転対称の外形は、吐出装置が作動装置に引っ掛かり動けなくなる恐れがないので有利である。梱包時、回転対称の構造は、特に効率的なスペース利用を可能にする。
【0010】
本発明のもう1つの態様では、安全部材が柔軟な安全テープであり、このテープは吐出装置を少なくとも作動装置の位置で取り巻いている。
【0011】
このような安全テープは、特に簡便で低コストである。これは、手指で除去できるように、例えば分離用のミシン線または引き裂き用の耳部を有するようにするか、あるいはハサミで除去できるようにすることが可能である。好ましくは、紙テープとして構成されるか、あるいはほんの僅かな弾性を有するプラスチックで作製される。これが有利であるのは、吐出装置のハウジング壁部の周長が作動装置の領域よりも作動装置に隣接する領域において大きく、その結果、吐出装置から安全テープを傷つけずにずらし剥がすことが不可能である場合である。
【0012】
本発明のもう1つの態様では、安全部材が吐出装置のハウジングの、分離可能な安全セグメントである。この安全セグメントは、吐出装置の使用を開始する際に除去される。ハウジングに固定することによって、安全セグメントが取り扱い時に意図せず分離することが有効に防がれる。さらに、ハウジングと一体に結合された安全セグメントの場合、構成要素を付加する必要がないので、非常に低コストで作製できる点が有利である。好ましくは、安全セグメントは、一度剥がすと、元の状態に接合することができない。しかしまた、安全セグメントを破壊することなく分離でき、再び接合できる実施形態もあり得るのであり、利用目的次第では好適である。
【0013】
ハウジングと一体で構成され、破壊可能な接合セグメントを介してハウジングの他の部分と結合されている安全セグメントが好ましい。ハウジングへ統合された安全セグメントは、特に高コストでしか再現できず、従って吐出装置の偽造防止を確実に保証できるので、好都合である。特に好都合であるのは、安全セグメントがプラスチックフィルムまたは薄いプラスチックブリッジで残りのハウジングと結合されており、そのプラスチックフィルムまたはプラスチックブリッジの結合が、手指の力を加えずに戻しばねの力によって分離できるほど強くはなく、しかし手指では問題なく分離できる程度の強さである場合である。プラスチックフィルムの利点は、ハウジングを防塵された状態にすることが可能なことである。安全セグメントの除去は、例えば安全セグメントを押入することによって可能であり、これはまた、作動装置もポンプ室の容量が最小となる終端位置にまで押入され、結果的に、それに続いて力をゆるめると、安全セグメントが除去され、さらにはポンプ室が使用可能な状態に充填されるという利点につながる。
【0014】
好ましくは、安全セグメントは、基本的に環状に構成される。このような安全セグメントは、除去する際に中心軸を中心に回転でき、その結果、安全ブリッジが壊れるか、または安全フィルムとして機能するプラスチックフィルムが裂ける。
【0015】
この目的のために、安全セグメントは、吐出装置に対して相対的に動くように安全セグメントを保持するための操作手段を有することが好ましい。この操作手段は、利用者が好ましくは道具を使わずに、または少なくとも専用の道具なしでハウジングに対する安全セグメントの相対的な動きを引き起こすことができるように構成すべきである。このような操作手段は、2本の指で把捉し、力またはモーメントが加えられる一体に形成されたブリッジであることが可能である。
【0016】
しかし、操作手段は円形以外の窪みが好適であり、長手方向に延びる溝であることが好ましい。窪みは、外形を不利に大きくすることがないという長所を有する。これは、特に外形が回転対称である場合に顕著である。長手方向に延びる溝は、コインを差し込むのに適しており、コインを使って安全セグメントをねじることができる。
【0017】
本発明のもう1つの態様では、作動装置が、納品状態において、押入された終端の位置から間隔をあけて配置されている。これにより、安全部材を押入することによって安全部材を分離することが可能となる。終端位置からの間隔は、安全部材と作動装置とを終端位置にまで押入した際に安全部材を分離させるのに十分な、特に安全セグメントをもぎ取るのに十分な大きさであるべきである。また、たわみの程度は、安全部材またはその固定を弱め、それに続いて作動装置のばねの力が加わることで安全部材が分離される程度に十分大きければ、上記間隔より小さくても構わない。
【0018】
本発明のその他の利点および特徴は、請求項と、図面に示す本発明の2つの好ましい実施例に関する以下の説明とから明らかとなる。
【実施例】
【0019】
図1aおよび1bに示された第1の実施形態は、ハウジング10を有し、該ハウジングは実質上主延長方向2に延びている。ハウジング10は、この主延長方向に対してほぼ回転対称に構成されている。上端には吐出口12が備えられ、下端には固定装置14が設けられ、該固定装置には物質容器40が螺入されている。
【0020】
ハウジング10には、吐出過程に必要な全ての重要な機能要素が含まれている。これらの機能要素の中には、ポンプ室22とピストン24とを備えたポンプ装置20が含まれる。ポンプ室は、第1の搬送路26を介して物質容器40に、第2の搬送路28を介して吐出口12に接続されている。ピストン24は、主延長軸2に対して横方向に動くように構成されている。
【0021】
ピストン24は、作動装置30と固定的に結合されており、該作動装置30は、動作状態(図示されていない)においてハウジング10の窪み10aから突出し、戻しばね(図示されていない)のばね力に抗して主延長軸2に対して横方向にポンプ装置20が作動することを可能にする。
【0022】
図1aおよび図1bは、当該吐出装置の納品状態を表す。この状態は、安全テープ50が作動装置30の位置で吐出装置に巻かれていることを特徴とする。この安全テープ50は、閉じられたテープとして構成されている。このために安全テープの両端同士は例えば貼り合わされるなどして接合されており、耳部52を形成する。安全テープは、遊びがない、あるいはほとんどない状態に採寸されている。また、安全テープは、戻しばねのばね力によって半径方向に外側へ向かって力を加えられた作動装置を、押入された状態に保持するのに十分な強さを有するように構成されている。これにより、回転対称の吐出装置は、納品状態において、作動装置30の付近でもほぼ回転対称である。柔軟な耳部52だけが半径方向に外側へ向かって突出している。
【0023】
図示されたこの状態は、最終顧客へ販売する前の吐出装置の取り扱いの点で理想的である。外のり寸法は小さく、従って小さな梱包サイズで済む。ほぼ完全な回転対称であるので、主延長方向2を中心とした回転位置に関する位置決めを考慮する必要がない場合、機械による取り扱いが可能である。これは、特に物質容器40を吐出装置の上部と結合する際に有利である。もう1つの利点は、ロックされた安全な状態は同時にポンプ容量が僅かな状態でもあるという点である。作動装置30とピストン24が一度半径方向に外側へ向かって押されると同時に、それによってポンプ室22に物質が満たされるので、利用者は空ストロークを行う必要がない。
【0024】
吐出装置を使用し始める際、利用者によって安全テープ50は取り除かれる。これは、図示された吐出装置の場合、安全テープ50を吐出口12の方向に単に押しずらすことによって行うことができる。図示されていない別の実施形態の場合、隣接する部分に比して周長が小さい位置にテープが設けられているために、単に押しずらすことは阻止される。そのため、除去するには安全テープを破ることが必要となる。従って、このような安全テープは、有効な偽造防止ともなる。テープの破り捨ては、切り離し箇所、例えばミシン線などで行われることが好ましい。
【0025】
図2aから2dの実施形態は、第1の実施形態に類似した構造を持つ。この実施形態も、主延長方向102を向いたハウジング110を有し、該ハウジングの対向する端部に吐出口112と物質容器用の固定装置114とが設けられている。また同様に、この第2の実施形態もポンプ装置120を含む。このポンプ装置は、確かに第1の実施形態のポンプ装置20と同一構造ではないが、作動方向が主延長軸102に対して横方向であるという点では、第1の実施形態のポンプ装置と一致している。このポンプ装置も、主延長方向に対して横方向に作動可能な作動装置130と固定的に結合されたピストン124を有している。
【0026】
図2aから2dの実施形態もまた、納品状態が示されている。この納品状態では、作動装置130は押入された状態にある。この作動装置は、第1の実施形態の作動装置30よりもさらに深い位置に押入されている。押入されたこの状態は、安全セグメント150によってロックされている。この安全セグメントは、ハウジング110と一体に構成されており、切り離し用ブリッジ152を介してハウジングと結合されている。安全セグメントはほぼ円形であり、外側を向いた面にスリット状の窪み154が設けられている。
【0027】
あるいは、安全セグメント150は、プラスチックフィルム152であるフィルムヒンジによってハウジング110と結合されており、その際、フィルムの強度は、手動の刃具を使って、または手動の刃具なしで、手指で分離できるように選定される。
【0028】
図2aから2dに示されたこの第2の実施形態の利点は、第1の実施形態の利点とほぼ同じである。さらにこれらに、安全部材150がハウジング110と一体の構造であるので、構成要素をさらに付加する必要がないという点が加わる。また、このような安全部材150は特に信頼性があり、吐出装置を粗雑に扱った場合にも意図せず分離することがあり得ない。
【0029】
使用開始は、第1の実施形態の場合と同様に、安全セグメントを除去することによって行われる。この除去は、切り離し用ブリッジ152を破ることで実現され、これは、図示された第2の実施形態の場合、適当な物、特にコインをスリット154へ差し込み、続いて安全セグメントをねじることによって非常に簡単に行われる。あるいは、切り離し用ブリッジ152が破れるまで安全セグメントを押入することによっても可能である。これらに類似する方法で、プラスチックフィルムを破ることも可能であり、適当な手動道具としてコインの代わりに小さなカッターまたは同様の鋭利な物を使うこともできる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1a】本発明に係る吐出装置の第1の実施形態を示す断面図。
【図1b】本発明に係る吐出装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2a】本発明に係る吐出装置の第2の実施形態を示す側面図。
【図2b】本発明に係る吐出装置の第2の実施形態を示す側断面図。
【図2c】本発明に係る吐出装置の第2の実施形態を示す安全セグメントの詳細図。
【図2d】本発明に係る吐出装置の第2の実施形態を示す斜視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流動性物質用吐出装置であって、
‐互いに対向する端部に主延長方向(2;102)に沿って一列に配置された状態に、吐出口(12;112)を一方に、物質容器(40)または物質容器(40)用固定装置(14;114)をもう一方に具備し、さらに、
‐ピストン(24;124)によって1側面が画成されたポンプ室(22)を有し、該ピストン(24;124)がポンプ方向に沿って吐出圧を生成するように長手方向に移動可能に構成されたポンプ装置(20;120)を具備し、
ポンプ方向が主延長方向(2;102)とほぼ直角を成す吐出装置において、
ピストン(24;124)が、ポンプ方向に手動で押入可能な作動装置(30;130)と機能的に結合されており、該作動装置が、吐出装置の納品状態において、押入された状態に安全部材(50;150)によって保持され、その押入された状態において特にポンプ室(22)が僅かな容量を有する吐出装置。
【請求項2】
納品状態において回転対称またはほぼ回転対称の外形を有することを特徴とする、請求項1に記載の吐出装置。
【請求項3】
前記安全部材(50)が柔軟な安全テープ(50)であり、吐出装置を少なくとも作動装置(30)の位置で取り巻いていることを特徴とする、請求項1または2に記載の吐出装置。
【請求項4】
前記安全部材(150)がハウジング(110)の分離可能な安全セグメント(150)であることを特徴とする、請求項1または2に記載の吐出装置。
【請求項5】
前記安全セグメント(150)がハウジング(110)と一体に構成されており、破壊可能な結合セグメント(152)を介してハウジング(110)の他の部分と結合されていることを特徴とする、請求項4に記載の吐出装置。
【請求項6】
前記安全セグメント(150)が概ね環状に構成されていることを特徴とする、請求項2から5のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項7】
前記安全セグメント(150)が、吐出装置に対して相対的に動くように安全セグメントを保持できる操作手段(154)を有することを特徴とする、請求項2から6のいずれか1項に記載の吐出装置。
【請求項8】
前記操作手段(154)が、円形でない窪み(154)であり、好ましくは長手方向に延びる溝(154)であることを特徴とする、請求項7に記載の吐出装置。
【請求項9】
前記作動装置(130)が、納品状態において、押入された終端位置から間隔をあけて配置されていることを特徴とする、前記請求項のいずれか1項に記載の吐出装置。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【公開番号】特開2007−245144(P2007−245144A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−60094(P2007−60094)
【出願日】平成19年3月9日(2007.3.9)
【出願人】(595154764)インジ エリッヒ プファイファ ゲーエムベーハ (16)