説明

流路の閉塞検査方法およびその装置

【課題】 流路の閉塞を容易に検査し得る、流路の閉塞検査方法およびその装置を提供する。
【解決手段】 流路の閉塞検査装置10は、両端が開口された中空部21と、両端が中空部に臨んで開口され閉塞検査の対象である流路22とが形成されたワーク20に対し、流路における閉塞を検知するために使用される。閉塞検査装置は、流路における一方の開口部22aのみを含むとともに流路の内容積よりも大きい内容積を有する背圧室30を中空部内に区画形成する一対のシール手段31、32と、ガスの流量を一定流量に調整する調整手段40と、調整手段を介して一定流量のガスを背圧室内に供給しているときのガスの背圧を検出する背圧検出手段50と、背圧検出手段により検出されたガスの背圧に基づいて、流路における閉塞を検知する制御手段60と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークに形成された流路の閉塞を検査する、流路の閉塞検査方法およびその装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば自動車用の鋳造成形品であるシリンダヘッドやギヤキャリアなどは、内部に中空形状を備えている。この中空形状を成形するに際して、一般に、シェルモールド法あるいはコールドボックス法により造型した中子を使用している。搬送時や鋳造時において、中子に折れや割れが生じることがある。折れなどが生じた中子を使用して鋳造すると、当該中子によって成形されるべき流路にバリが形成され、流路が閉塞されるという不具合が生じる。なお、本明細書において、「閉塞」という用語には、流路断面が完全に遮断された状態、および流路断面の一部が遮断され流路が狭窄された状態の両者が含まれる。
【0003】
鋳造成形品を製品として出荷する前には、流路の閉塞の有無が検査される。流路の閉塞検査手法には、目視やファイバースコープによる官能検査のほか、特許文献1に示されるように、流路に供給される流体圧力と流路から排出される流体圧力との差異に基づいて、流路における閉塞を検知する手法がある。特許文献1の検査手法では、流路の入口部にシール材を介して流体供給管を接続し、流路の出口部にシール材を介して流体排出管を接続する。
【特許文献1】特開平06−249727号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の検査手法は、流路の入口部および出口部が外部に臨んでいる形状を有する鋳造成形品に対しては簡便に適用できる。
【0005】
しかしながら、鋳造成形品のなかには、両端が開口された中空部と、両端が中空部に臨んで開口され閉塞検査の対象である流路とが形成された形状を有するものがある。この流路の閉塞を特許文献1の手法により検査しようとすると、中空部の内部において、一方の開口部に流体供給管を接続し、他方の開口部に流体排出管を接続しなければならない。このため、中空部の断面が比較的小さい場合や、開口部の近傍に凸形状部が存在する場合などにおいては、流体供給管などを開口部に接続することができず、流路の閉塞を検査できない。
【0006】
本発明の目的は、両端が開口された中空部と、両端が中空部に臨んで開口され閉塞検査の対象である流路とが形成されたワークに対し、流路の閉塞を容易に検査し得る、流路の閉塞検査方法およびその装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的は下記の手段により達成される。
【0008】
(1)両端が開口された中空部と、両端が前記中空部に臨んで開口され閉塞検査の対象である流路とが形成されたワークに対し、一対のシール手段によって、前記流路における一方の開口部のみを含むとともに前記流路の内容積よりも大きい内容積を有する背圧室を前記中空部内に区画形成し、
ガスの流量を一定流量に調整する調整手段を介して、一定流量のガスを前記背圧室内に供給し、
ガス供給中におけるガスの背圧に基づいて、前記流路における閉塞を検知してなる流路の閉塞検査方法である。
【0009】
(2)両端が開口された中空部と、両端が前記中空部に臨んで開口され閉塞検査の対象である流路とが形成されたワークに対し、前記流路における一方の開口部のみを含むとともに前記流路の内容積よりも大きい内容積を有する背圧室を前記中空部内に区画形成する一対のシール手段と、
ガスの流量を一定流量に調整する調整手段と、
前記調整手段を介して一定流量のガスを前記背圧室内に供給しているときのガスの背圧を検出する背圧検出手段と、
前記背圧検出手段により検出されたガスの背圧に基づいて、前記流路における閉塞を検知する制御手段と、を有してなる流路の閉塞検査装置である。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、流路の内容積よりも大きい内容積を有する背圧室内にガスが一旦供給されるため、流路に流入するガスの圧力を安定させることができる。さらに、背圧室内には一定流量のガスが継続して供給されているので、流路の閉塞に伴う背圧の上昇を感度よく検知することができ、その結果、良品/不良品を判定する精度を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1は、本発明に係る流路の閉塞検査方法を具現化した、流路の閉塞検査装置10を示す概略構成図、図2は、同検査装置のシステム構成図である。
【0013】
図1および図2を参照して、流路の閉塞検査装置10は、両端が開口された中空部21と、両端が中空部21に臨んで開口され閉塞検査の対象である流路22とが形成されたワーク20に対し、流路22における閉塞を検知するために使用される。この流路の閉塞検査装置10は、概説すれば、ワーク20の流路22における一方の開口部22aのみを含むとともに前記流路22の内容積よりも大きい内容積を有する背圧室30を中空部21内に区画形成する一対のシール手段31、32と、ガスの流量を一定流量に調整する調整手段40と、調整手段40を介して一定流量のガスを背圧室30内に供給しているときのガスの背圧を検出する背圧センサ50(背圧検出手段50に相当する)と、背圧センサ50により検出されたガスの背圧に基づいて、流路22における閉塞を検知するコントローラ60(制御手段60に相当する)と、を有している。
【0014】
さらに、流路の閉塞検査装置10は、一対のシール手段31、32のうちの一方を移動する移動手段70と、一対のシール手段31、32のうちの他方を固定する固定手段80と、ワーク20を保持し、かつ、一方のシール手段32が他方のシール手段31に対して移動する方向に沿ってスライド移動自在な保持手段90と、移動手段70の作動を制御する移動制御手段と、を有している。移動制御手段は、移動手段70の作動を制御することによって、一方のシール手段32をワーク20に押し当てながら保持手段90をスライド移動させ、ワーク20を他方のシール手段31に押し当てている。以下、詳述する。
【0015】
図2を参照して、前記ワーク20は、流路22が中子を使用して成形される鋳造成形品である。図示する鋳造成形品はギヤキャリアであり、流路22はオイル通路である。オイル通路の穴径は、φ7mm〜φ8mm程度である。流路22における一方の開口部22aは、中空部21の図中上側の開口部21aと略中間部位21cとの間において、中空部21に臨んで開口されている。また、流路22における他方の開口部22bは、略中間部位21cと中空部21の図中下側の開口部21bとの間において、中空部21に臨んで開口されている。なお、説明の便宜上、流路22における一方の開口部22aを「第1開口部22a」と称し、他方の開口部22bを「第2開口部22b」と称する。
【0016】
前記一対のシール手段31、32は、中空部21の上側開口部21aを塞ぐ第1シール手段31と、中空部21の略中間部位21cを塞ぐ第2シール手段32とを含んでいる。第2シール手段32は、中空部21の下側開口部21bから挿入される。第1シール手段31は、上側開口部21aに当接するシール材31aを備え、第2シール手段32は、略中間部位21cの開口縁に当接するシール材32aを備えている。各シール材31a、32aは、シール面に合致した形状を有し、例えば、シリコンゴムから形成されている。各シール材31aをワーク20のシール面により密着させるために、ワーク20のシール面の形状を備える型を使用し、この型に液体状のシール材31a料を流し込んで成形したシール材31aを使用してもよい。
【0017】
第1シール手段31により上側開口部21aを塞ぎ、第2シール手段32により略中間部位21cを塞ぐことによって、中空部21内には、流路22における第1開口部22aのみを含む空間が区画形成される。第1シール手段31および第2シール手段32によるシール位置は、流路22における第1開口部22aのみを含む空間を区画形成し、かつ、区画形成した空間が流路22の内容積よりも大きい内容積を有する位置に設定される。空間に供給したガスは、第1開口部22aを通って流路22に流入し、流路22を流下し、第2開口部22bから噴出される。したがって、空間は、流路22に対する背圧室30を構成することになる。なお、中空部21の内面には、他方の開口部22bに近接して、凸形状部23が存在する。この凸形状部23は、第2シール手段32の進退移動を阻害しないが、他方の開口部22bに配管を接続することを阻害するような形状を有している。
【0018】
第1シール手段31には、背圧室30にガスを供給するために配管42が貫通して設けられている。背圧室30の圧力を安定させるために、配管42は、その断面積が流路22の断面積よりも大きいものが使用される。配管42の途上に、ガスの流量を一定流量に調整し得る調整手段40が設けられている。
【0019】
前記調整手段40は、例えば、上流側の圧力を一定にすることによって下流側の圧力に拘わらず一定流量のガスを供給可能な音速ノズル41から構成されている。音速ノズル41は流量の校正にも使用される公知の要素であるため、詳細な説明は省略する。音速ノズル41を使用することにより、ガス流量を、当該音速ノズル41の上流側に供給されるガス圧力に応じた目標値に適正かつ容易に制御することができる。
【0020】
音速ノズル41の上流側には、ガス供給源43からのガスが導入されるレギュレータ44と、音速ノズル41の上流側に供給されるガス圧力を検出する圧力制御用の圧力センサ45と、レギュレータ44の作動を制御するための圧力制御ユニット46とが設けられている。圧力制御ユニット46は、圧力センサ45により検出したガス圧力に基づいてレギュレータ44の作動を制御する。これにより、音速ノズル41の上流側に供給されるガス圧力が一定圧力に制御され、音速ノズル41の作用によって、ガス流量は、ガス圧力に応じた目標値に適正に制御される。ガスとしては、工場内の各所に供給される高圧エアを用いることができる。
【0021】
前記背圧センサ50は、圧力センサから構成され、図示例では配管42の途上に設けられている。前述したように、配管42の断面積は流路22の断面積よりも大きいため、背圧室30の圧力の安定化は阻害されない。したがって、背圧センサ50は、音速ノズル41を介して一定流量のガスを背圧室30内に供給しているときのガスの背圧を正確に検出することができる。
【0022】
コントローラ60は、CPUやメモリなどを主体に構成されている。検査対象の流路22に閉塞があると、ガスが流れる際の抵抗となるため、背圧センサ50により検出されたガスの背圧が高くなる。これにより、流路22における閉塞を検知することができる。具体的には、流路22に閉塞がない良品と、流路22に閉塞がある不良品とに関して、あるガス流量のときの背圧を予め計測し、合格/不合格を判定するためのしきい値が決められている。そして、製造されたワーク20に関して、背圧センサ50により検出されたガスの背圧と、しきい値とを比較することによって、流路22における閉塞状態を検知し、ワーク20の合格/不合格を自動で判定する。コントローラ60のメモリには、良品の場合のガス流量と背圧との相関関係、ガス流量ごとに定められたしきい値、判定プログラム、および閉塞検査装置10全体の作動を制御する制御プログラムなどが記憶されている。
【0023】
図1を参照して、一対のシール手段31、32により背圧室30を区画形成する機構について説明する。
【0024】
流路の閉塞検査装置10は、第2シール手段32(一方のシール手段32に相当する)を移動するためのシリンダ70(移動手段70に相当する)が支持台71を介してベース11上に取り付けられ、第1シール手段31(他方のシール手段31に相当する)を固定するための支持プレート80(固定手段80に相当する)がベース11上に取り付けられている。シリンダ70は、例えば、油圧や空気圧により作動する流体圧シリンダから構成されている。第2シール手段32は、進退移動するロッド72の先端に取り付けられている。第1シール手段31は、シリンダ70に対して向かい合って支持プレート80に取り付けられている。
【0025】
シリンダ70と支持プレート80との間に位置して、ワーク20を保持する保持治具90(保持手段90に相当する)がベース11上に配置されている。ワーク20は、中空部21の上側開口部21aを第1シール手段31に向け、下側開口部21bを第2シール手段32に向けて、保持治具90上に保持される。保持治具90は、ワーク20に設定されているロケート部分(凹凸部や、穴部など)を受ける脚形状の保持部91を備え、ワーク20を位置決めした状態で保持する。シリンダ70は、第2シール手段32のシール材32aをワーク20の略中間部位21cの開口縁に当接させ得る位置に調整されている。支持プレート80は、第1シール手段31のシール材31aをワーク20の上側開口部21aに当接させ得る位置に調整されている。
【0026】
保持治具90は、その下部にスライド機構92をさらに備え、第2シール手段32が第1シール手段31に対して移動する方向(図1において左右方向)に沿ってスライド移動自在に構成されている。保持治具90と支持台71との間には、保持治具90および位置決め保持されたワーク20を初期位置に復帰させる弾発力を保持治具90に付勢する弾発手段93が取り付けられ手いる。弾発手段93は、例えば、引っ張りコイルバネから構成されている。保持治具90およびワーク20の初期位置は、破線で示されるように、固定された第1シール手段31からもっとも離間した後進限位置である。
【0027】
本実施形態では、前述したコントローラ60は、シリンダ70の作動を制御する移動制御手段としても機能する。
【0028】
次に、作用を説明する。
【0029】
図1を参照して、流路の閉塞検査装置10は、検査開始前においては、シリンダ70のロッド72が後退限位置にある。保持治具90は、弾発手段93の弾発力が付勢され、破線で示される初期位置にある。ワーク20は、中子を使用して流路22が成形された鋳造成形品である。このワーク20を、保持部91により位置決めした状態で、保持治具90上に保持させる。ワーク20は、破線で示される初期位置にある。
【0030】
次いで、コントローラ60は、シリンダ70の作動を制御し、ロッド72を前進移動する。ロッド72の前進移動に伴って、第2シール手段32のシール材32aは、ワーク20における一方のシール面である略中間部位21cの開口縁に当接する。
【0031】
ロッド72をさらに前進移動すると、第2シール手段32が押し当てられたワーク20は、ロッド72から推進力を受ける。これにより、弾発手段93の弾発力に抗して、保持治具90およびワーク20はともに、初期位置から第1シール手段31に向けてスライド移動する。
【0032】
ロッド72をさらに前進移動すると、ワーク20における他方のシール面である上側開口部21aは、位置固定の第1シール手段31のシール材31aに押し当てられる。コントローラ60は、上側開口部21aとシール材31aとが密着した時点で、シリンダ70の作動を停止する。これにより、上側開口部21aが第1シール手段31によって塞がれ、略中間部位21cが第2シール手段32によって塞がれ、中空部21内には、流路22における第1開口部22aのみを含むとともに流路22の内容積よりも大きい内容積を有する背圧室30が区画形成される。
【0033】
流路の閉塞検査装置10はスライド機構92を採用したため、装置を複雑にすることなく、各シール材31a、32aを、ワーク20の両側から、各シール面に対して片当たりなく、かつ、均等な力で押圧することができる。
【0034】
次いで、図2を参照して、圧力制御ユニット46は、圧力センサ45により検出したガス圧力に基づいてレギュレータ44の作動を制御し、音速ノズル41の上流側に供給されるガス圧力を制御する。これにより、このガス圧力により定まる一定流量のガスが、音速ノズル41から配管42を通って背圧室30内に供給される。背圧室30に供給されたガスは、第1開口部22aを通って流路22に流入し、流路22を流下し、第2開口部22bから噴出される。
【0035】
背圧センサ50は、音速ノズル41を介して一定流量のガスを背圧室30内に供給しているときのガスの背圧を検出する。そして、コントローラ60は、背圧センサ50により検出されたガスの背圧と、予め設定されているしきい値とを比較し、流路22における閉塞状態を検知し、ワーク20の合格/不合格を判定する。例えば、流路22に閉塞があると、ガスが流れる際の抵抗となるため、背圧センサ50により検出されたガスの背圧が直ちに高くなる。コントローラ60は、背圧センサ50により検出されたガスの背圧がしきい値よりも大きいと判断すると、流路22に閉塞があることを検知し、不良品であると判定する。
【0036】
判定後、コントローラ60は、ガスの供給を停止し、シリンダ70の作動を制御し、ロッド72を後退限位置まで後退移動する。ロッド72の後退移動に伴い、弾発手段93の弾発力によって、保持治具90およびワーク20はともに、初期位置までスライド移動し、検査開始前の状態に戻る。
【0037】
上述した閉塞検査において、流路22の内容積よりも大きい内容積を有する背圧室30内にガスが一旦供給されるため、流路22に流入するガスの圧力は安定している。さらに、背圧室30内には一定流量のガスが継続して供給されているので、流路22の閉塞に伴う背圧の上昇を感度よく検知することができ、その結果、良品/不良品を判定する精度を高めることができる。
【0038】
図3は、背圧室30が良品/不良品の判定精度に与える影響を調べる実験の結果を示すグラフである。
【0039】
ワークには、鋳造成形品であるギヤキャリアを使用した。ギヤキャリアには、閉塞検査の対象である流路22としてのオイル通路が中子を使用して成形されている。オイル通路の断面積の半分を閉塞させた不良品のワークと、閉塞の無い良品のワークとを準備した。
【0040】
背圧室の内容積が小さい状態を作り出すために、音速ノズル41の下流側の配管42を、流路22における第1開口部22aに直接接続し、かつ、音速ノズル41から第1開口部22aに至る配管42の内容積を、オイル通路全体の内容積よりも小さく設定した。配管径(内径)がφ6mmの配管と、φ8mmの配管を使用した。
【0041】
一方、オイル通路の内容積よりも大きい内容積を有する背圧室30を作り出すため、上述した流路の閉塞検査装置10を使用し、第1シール手段31により上側開口部21aを塞ぎ、第2シール手段32により略中間部位21cを塞いだ。また、音速ノズル41から第1シール手段31に至る配管42には、配管径(内径)がφ12mmの配管42を使用した。流路22の断面積よりも大きい断面積を有する配管42を用いることにより、背圧室30の圧力の安定化を阻害しないようにするためである。
【0042】
良品/不良品のそれぞれのワーク20に対して、φ6mmの配管を接続した場合、φ8mmの配管を接続した場合、および流路の閉塞検査装置10を使用した場合において、エア流量を変えながら背圧を測定した。測定結果を図3に示す。
【0043】
図3に示されるとおり、同一エア流量で見た場合、配管径が小さく、背圧室30の内容積が小さいほど、背圧は大きな値を示す。良品の背圧と不良品の背圧と差は、いずれの場合においても、流量が増大するほど大きくなる。
【0044】
しかしながら、良品の背圧と不良品の背圧と差は、φ6mmの配管を接続した場合には約1%、φ8mmの配管を接続した場合には約3%であり、明確な差が見られない。
【0045】
一方、流路の閉塞検査装置10を使用してシール方法を変えるとともに配管径をφ12mmにした場合には、良品の背圧と不良品の背圧と差を約20%まで拡大することができた。これは、背圧室30の内容積がオイル通路の内容積に比べて十分大きく、背圧が小さくなることから、オイル通路内の閉塞部分から受ける背圧の感度が向上することによるものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る流路の閉塞検査方法を具現化した、流路の閉塞検査装置を示す概略構成図である。
【図2】同検査装置のシステム構成図である。
【図3】背圧室が良品/不良品の判定精度に与える影響を調べる実験の結果を示すグラフである。
【符号の説明】
【0047】
10 流路の閉塞検査装置、
20 ワーク、
21 中空部、
22 閉塞検査の対象である流路、
22a 第1開口部(一方の開口部)、
22b 第2開口部(他方の開口部)、
30 背圧室、
31 第1シール手段(他方のシール手段)、
31a シール材、
32 第2シール手段(一方のシール手段)、
32a シール材、
31、32 一対のシール手段、
40 調整手段、
41 音速ノズル(調整手段)、
42 配管、
44 レギュレータ、
45 圧力センサ、
46 圧力制御ユニット、
50 背圧センサ(背圧検出手段)、
60 コントローラ(制御手段、移動制御手段)、
70 シリンダ(移動手段)、
80 支持プレート(固定手段)、
90 保持治具(保持手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端が開口された中空部と、両端が前記中空部に臨んで開口され閉塞検査の対象である流路とが形成されたワークに対し、一対のシール手段によって、前記流路における一方の開口部のみを含むとともに前記流路の内容積よりも大きい内容積を有する背圧室を前記中空部内に区画形成し、
ガスの流量を一定流量に調整する調整手段を介して、一定流量のガスを前記背圧室内に供給し、
ガス供給中におけるガスの背圧に基づいて、前記流路における閉塞を検知してなる流路の閉塞検査方法。
【請求項2】
両端が開口された中空部と、両端が前記中空部に臨んで開口され閉塞検査の対象である流路とが形成されたワークに対し、前記流路における一方の開口部のみを含むとともに前記流路の内容積よりも大きい内容積を有する背圧室を前記中空部内に区画形成する一対のシール手段と、
ガスの流量を一定流量に調整する調整手段と、
前記調整手段を介して一定流量のガスを前記背圧室内に供給しているときのガスの背圧を検出する背圧検出手段と、
前記背圧検出手段により検出されたガスの背圧に基づいて、前記流路における閉塞を検知する制御手段と、を有してなる流路の閉塞検査装置。
【請求項3】
前記一対のシール手段のうちの一方を移動する移動手段と、
前記一対のシール手段のうちの他方を固定する固定手段と、
前記ワークを保持し、かつ、前記一方のシール手段が前記他方のシール手段に対して移動する方向に沿ってスライド移動自在な保持手段と、
前記移動手段の作動を制御する移動制御手段と、をさらに有し、
前記移動制御手段は、前記移動手段の作動を制御することによって、前記一方のシール手段を前記ワークに押し当てながら前記保持手段をスライド移動させ、前記ワークを前記他方のシール手段に押し当てることを特徴とする請求項2に記載の流路の閉塞検査装置。
【請求項4】
前記調整手段は、上流側の圧力を一定にすることによって下流側の圧力に拘わらず一定流量のガスを供給可能な音速ノズルから構成されていることを特徴とする請求項2に記載の流路の閉塞検査装置。
【請求項5】
前記ワークは、前記流路が中子を使用して成形される鋳造成形品であることを特徴とする請求項2に記載の流路の閉塞検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−138762(P2006−138762A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−329215(P2004−329215)
【出願日】平成16年11月12日(2004.11.12)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】