説明

流路閉塞用工具及びガス供給管の更新工法

【課題】 従来よりも簡素化された構造を有しかつ操作性に優れた流路閉塞用工具を提供する。
【解決手段】 ガスが流動している供給管1の内部に挿入され、膨張用流体が導入される遮断バッグ5aと、一端側が遮断バッグ5aに連結されかつ他端側に第1カプラ8aが装着された膨張用流体の逆流を防止するチェック弁7aを内蔵する第1チューブ6aと、第1カプラ8aが着脱自在に差込まれる第2カプラ9が一端側に装着されかつ他端側に加圧流体供給手段が接続される第2チューブ10と、第2チューブ10の他端側からの操作で第1カプラ8aと第2カプラ9とを分離する操作チューブ11とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガス等の流体が流動する供給管を更新するために使用される流路閉塞用工具及びそれを用いたガス供給管の更新工法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス配管においては、都市ガスや天然ガスなどの燃料ガスは、道路と並行して地中に埋設された本支管とそこから分岐された供給管を経て需要家に供給されている。本支管としては、ガス圧や外圧(土圧など)に強く耐久性が大であり、また穿孔作業により容易に分岐取出しが行えるなどの利点を有する鋳鉄管が使用されてきたが、軽量で施工性に優れまた耐震性にも優れた樹脂管(例えばPE管)への切換えが増加している。鋳鉄管から樹脂管への切換えは、例えば、既設の本支管(鋳鉄管等)に接続された供給管の下流側へのガスの供給を遮断し、次いで供給管を切断、撤去した後に、新設された本支管(PE管等)に新規の供給管を接続する作業を行うといった手順で施工される。しかるに、この供給管の結び替え作業が行われると、作業中は需要家でガスを使用できないという不便さを伴う。また結び替え作業完了後も、需要家の施設内に立ち入って点火試験を含む安全確認を行う必要があるので、需要家の都合で結び替え作業が予定通り実施できないことがある。
【0003】
そこで供給管から需要家へのガスの供給を遮断せずに、結び替え作業を行うために、例えばバイパス管と遮断用バッグを用いた活管分岐遮断工法が提案され、実用化されている。この遮断工法を図10により説明する。まず既設の本支管110aから継手120aを介して分岐されかつ需要家109に接続される供給管1の途中に、一対の分岐口131a、132aを有する継手130aと同じく一対の分岐口131b、132bを有する継手130bを装着する。また、供給管1の一部を遮断したときに既設の本支管110aから需要家109へのガスの供給を確保するために、各分岐口の一方(例えば131aと132b)をバイパス管1aにより接続する。
【0004】
上記の配管接続を行った後、継手130aの分岐口132aと継手130bの分岐口131bよりガス遮断用バック(不図示)を供給管1に挿入して破線の区間C1−C2を遮断する。このとき、既設の本支管110aからはバイパス管1aを介して需要家109にガスが供給されている。次いで遮断区間C1−C2の供給管1を切断して撤去した後、既設の本支管110aから継手120b、120cにより分岐されかつ既設の本支管110aに沿って設けられた新設の本支管110bから、継手120dを介して分岐された新設の供給管1bを需要家側の継手130aの上流側(C1)に接続する。そして上記ガス遮断用バックを供給管1から撤去した後にバイパス管1a及び既設の本支管110aを撤去して、新設の本支管110bから需要家109へのガスの供給に切り替えられる。
【0005】
上述した活管分岐遮断工法によれば、需要家へのガスの供給を停止せずに、また需要家の施設内に立ち入らずに結び替え工事を行うことができるという利点がある。ただ、この遮断工法には、2箇所の分岐口を備えた特殊な構造の継手を複数個使用し、また一つの継手に対して供給管に複数(2箇所)の穿孔を行う必要があり、施工コストが増大するという難点がある。
【0006】
供給管から需要家へのガスの供給を遮断せずに、結び替え作業を行う別の方法も提案されている。例えば特許文献1には、ガスの供給を確保した状態で既設管路の一部を補修するために、遮断対象の両端部に、既設管路の内部と外部とが連通する連通孔を形成し、これらの連通孔の周囲に操作用開口を有する作業箱(ガス遮断装置)を設け、この開口から2連式遮断バッグを挿入し、2つのガス遮断装置をバイパス管で連結してから、各遮断バッグに膨張用空気を導入することにより、上記区間内のガスの流通を遮断できることが記載されている。
【0007】
また特許文献2には、ガスの供給を確保した状態で既設管路の一部を補修するために、遮断対象の両端部に、既設管路の内部と外部とが連通する連通孔を形成し、これらの連通孔からガス遮断装置が接続されかつ多重管構造からなるエアー通路を介して接続された2連式バッグを挿入し、ガス遮断装置をバイパス管で連結してから、バッグに膨張用空気を導入することが記載されている。多重管構造からなるエアー通路は、第1遮断バッグの内部に臨む第1エアー通路と第2遮断バッグの内部に臨む第2エアー通路と両バッグの間に位置する空間部に一端部が臨む第3エアー通路を有する。特許文献2では、この補修工法によれば、高圧管路に適用し、ガス圧が高く、バックでシールしきれない場合でも、バッグ同士の間に位置する空間に浸入したガスを、第3のエアー通路を介して外部に排出することが可能となるとされている。
【0008】
【特許文献1】特開2001−271983号公報(第3〜5頁、図1、図2、図3)
【特許文献2】特開2001−50471号公報(第3〜4頁、図1、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1及び2に記載されたガス遮断装置は、2組の2連式の遮断バッグを必要とするので、構造が複雑化して、高コストになる。特に特許文献1に記載されたガス遮断装置では、遮断バッグを狭い作業箱内で取り扱うので、操作性が劣る。また上記の補修工法によれば、2連式の遮断バッグを補修遮断区間の両側に設置するように構成するので、補修区間の両側(2箇所)に遮断バッグを挿入させるための孔を穿孔することが必要とされ、しかもこの穿孔作業はピット内で行われるので、施工工数の増大を招来する。
【0010】
本発明の目的は上記の問題点を解消して、従来よりも簡素化された構造を有しかつ操作性に優れた流路閉塞用工具を提供することである。
【0011】
本発明の他の目的は上記の問題点を解消して、従来よりも施工工数を短縮できる供給管の更新工法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明の流路閉塞用工具は、ガスが流動しているガス供給管の内部に挿入され、膨張用流体が導入される遮断バッグと、一端側に前記遮断バッグが連結されかつ他端側に第1カプラが装着された膨張用流体の逆流を防止する機能をもつ第1チューブと、前記第1カプラが着脱自在に差込まれる第2カプラが一端側に設けられかつ他端側に膨張用流体供給手段が接続される第2チューブと、前記第2チューブの他端側からの操作で前記1カプラと前記第2カプラとを分離する操作手段とを備えたことを特徴とするものである。
【0013】
本発明の流路閉塞用工具において、前記第1チューブはその途中にチェック弁が内蔵され、前記第1カプラは前記第2カプラに挿入される先端筒部と円周溝を有し、前記第2カプラは前記操作手段に支持され軸方向に移動可能な外スリーブと、前記円周溝に入り込む球体を有する内スリーブと、一端側が前記内スリーブに接続されかつ他端側が前記第2チューブに接続された接続リングと、前記接続リングの内側に軸方向移動可能に支持され、前記先端筒部が奥まで差込まれたときに前記第1チューブと前記第2チューブを連通させる連通穴を有する押圧部材と、前記第1カプラと前記第2カプラを結合するときに前記外スリーブを前記第1カプラに向って押圧する付勢部材と、前記第1カプラを前記第2カプラから分離するときに前記押圧部材を前記第1カプラに向って押圧する付勢部材を有することが好ましい。
【0014】
本発明の流路閉塞用工具において、前記遮断バッグは、パラソル状又は星型形状に膨張する袋状部材を有することが好ましい。
【0015】
本発明の流路閉塞用工具において、前記操作手段は、一端部が前記外スリーブに接続されかつ他端部が前記第2チューブから延出する操作チューブであることが好ましい。
【0016】
上記他の目的を達成するために、本発明の供給管の更新工法は、新設のガス供給管が接続されガスが流動している既設の供給管の一箇所でこの接続部の上流側の部位を外気と遮断してからそこに開孔を設ける工程と、この開孔から流体逆流防止機能をもつチューブの先端に装着された第1の遮断バッグを挿入し、前記チューブの他端側から膨張用流体を供給して前記遮断バッグを膨張させることにより、第1の供給管に密着させる工程と、前記チューブを前記既設の供給管から引出す工程と、このチューブの先端に装着された第2の遮断バッグを前記既設の供給管に挿入して、前記第1の遮断バッグから所定距離だけ離間した位置で第2の遮断バッグに膨張用流体を供給して膨張させることにより、既設のガス供給管に密着させる工程と、前記第1遮断バッグと前記第2の遮断バッグで挟まれた区間の既設の供給管を切り離し、このガス供給管の端部を密閉する工程を含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の流路閉塞用工具は、流体(例えば燃料ガス)が流動しかつ第2の供給管が接続された第1の供給管の内部に挿入される遮断バッグに膨張用流体の逆流を防止する機能をもつ第1チューブを連結し、第1チューブに膨張用流体(例えば加圧エアー)を供給する第2チューブを着脱自在に装着するので、供給管に設けられた1箇所の穿孔部から、供給管の流路を複数箇所で容易に遮断することができる。したがって、本発明によれば、簡単な構造を有しかつ操作性を向上した流路閉塞用工具を提供することができる。
【0018】
また本発明の供給管の更新工法は、第1の供給管に第2の供給管を接続し、その接続部に設けられた開孔から供給管の上流側内部に、2つの遮断バッグを挿入後、遮断バッグで挟まれた区間を切り離し、第1の供給管の端部を密閉するだけの作業で、第1の供給管の下流側へのガスの流動を確実に遮断することができる。したがって本発明によれば、従来よりも少ない工数でガス供給管の結び替え工事を行うことができる。
【0019】
特に、本発明においては、供給管が遮断される区間での穿孔が一回で済むので、ガス供給管の結び替えに要する工数を従来よりも大幅に低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の詳細を、添付図面を参照して説明する。
図1は遮断区間の一方の側に本発明の実施の形態に係わる流路閉塞用工具を挿入した供給管の断面図、図2は遮断区間の両側に本発明の実施の形態に係わる流路閉塞用工具を挿入した供給管の断面図、図3は本発明の実施の形態に係わる流路閉塞用工具の断面図、図4は図3のA部を拡大した断面図、図5は工具が連結された状態を示す図3のA部を拡大した断面図、図6は遮断バッグの他の例を示す断面図、図7は図6のB―B線断面視図、図8は遮断バッグの他の例を示す断面図であり、図6〜図8において図1〜図5と同一部分は同一の参照符号で示す。
また、図9は本発明の供給管の更新工法を模式的に示す配管系統図であり、図10と同一部分は同一の参照符号で示す。
【0021】
[施工手順の概要]
本発明では、需要家へのガスの供給を停止せずに、また需要家の施設内に立ち入らずに結び替え工事(活管分岐遮断工法)を行うために、図9に示すように、供給管1の途中に設けられた合流継手3に、新設の本支管110bから分岐された新設の供給管1bを、電気融着継手などにより接続して需要家109へのガスの供給を確保した後に、既設の供給管1の一定区間(図9においてC1−C2の間)のガスの遮断と供給管の切断を行う。ガスの遮断工程とそれに使用する流路閉塞用工具を図1〜5により説明する。
【0022】
[既設管と新設管との連結]
図1に示すように、地中に埋設された既設管である第1の供給管1(以下既設管という)は、本支管(図示を省略)から分岐され、矢印A方向にガスGが流動している。既設管1と並行して新設される第2の供給管(図示を省略、以下新設管という)は、端部が合流継手3に差し込まれた連結管2の他端部と例えばEF継手(図示を省略)を介して接続されることにより、矢印B方向に流動したガスGを新設管(図示を省略)から既設管1に流入させることができる。EF継手は、ポレエチレンなどの熱可塑性樹脂からなる継手本体の内部に電熱線が埋め込まれ、電熱線に通電することにより、継手本体の内径部と樹脂管(新設管又は連結管2)とが融着して樹脂管の接続が行われように構成されている。
【0023】
既設管1に装着される合流継手3は、既設管1に固定される上クランプ31及び下クランプ32、並びに上クランプ31にねじ込むことなどにより固定されるチーズ部33を有する。上クランプ31及び下クランプ32は、例えば可鍛鋳鉄などの鉄鋼材料からなる本体311、321の外面に塩化ビニールなどの耐食性を有する樹脂からなるライニング312、322で被覆して形成され、またチーズ部33もこれらと同様に、鉄鋼材料からなる本体331の外面に耐食性を有する樹脂からなるライニング332が被覆されている。このチーズ部33は、連結管2の端部が挿入される分岐部34を有し、連結管2の端部内面にスティフナー35が装着された後バルジ加工などの手法で拡径されることにより、連結管2と分岐部34が接続されるとともに、連結管2と分岐部34との間に介装されたパッキン313によってシールが行われる。
【0024】
[既設管への流路閉塞工具の挿入]
連結管2が分岐部34に接続された合流継手3が装着された後、既設管1の内部に流路閉塞用工具4を送り込み、その先端に取着された遮断バッグ5aを膨張させる(図1参照)。次いで流路閉塞用工具4の先端から遮断バッグ5aを含む流路閉塞部材40aを分離し、既設管1の内部に残留させてから、流路閉塞用工具4の先端に取着された別の遮断バッグ5bを含む流路閉塞部材40bを既設管1の内部に送り込み、膨張させた後、両バッグで挟まれた区間(L)を切断する(図2参照)。これらの作業工程の詳細は後述する。
【0025】
[流路閉塞用工具の構造及び使用方法]
図3に示すように既設管1に挿入される流路閉塞用工具4は、膨張用流体が導入されたときに膨張して既設管1の内面に密着する遮断バッグ5(5a、5b)と、一端が遮断バッグ5に連結されかつチェック弁7を内蔵する第1チューブ6(6a)と、第1チューブ6の他端側に固定される第1カプラ8(8a)と、このカプラを受取る第2カプラ9が先端部に取着された第2チューブ10と、一端部が第2カプラ9に外装され、他端側が合流継手から延伸して配管の外部から第1カプラ8aを第2カプラ9から分離する機能をもつ操作チューブ11とを備えている。また第2チューブ10の後端側(合流継手3から延出した部分)は膨張用流体供給手段(例えば手押し式エアーポンプ、図示を省略)に接続される(図1参照)。
【0026】
遮断バッグ5は、膨張用流体が導入されたときに膨張できるようにするためにゴムなどの弾性体で形成された袋状部材51を有する。袋状部材51は、膨張時に外表面が円周方向に沿ってかつ所定長さだけ供給管の内周面に密着し得るような形状を有するものであればよい。図1に示す袋状部材51は、周方向に所定間隔をおいて襞状部511が形成され膨張前はその襞状部511が周方向に重なり合うようにパラソル状に折りたたまれ(図3のA−A断面を参照)、膨張時に楕円球体状に膨らむような形状(パラソル形状)を有する。袋状部材51は、耐圧性及び気密性の点から布引ゴム(例えばナイロン布で補強されたクロロプレンゴム)で形成することが好ましい。この袋状部材51は一端がニップル付ソケット52で密閉され、他端がニップルを内蔵したソケット52を介して第1チューブ6と連通するように構成されている。
【0027】
第1チューブ6、第2チューブ10及び操作チューブ11は、合流継手3を通過後略直角に折り曲げられて既設管1の内部に挿入されるので(図1、2参照)、可撓性を有する高分子重合体、例えば軟質樹脂{ショアー硬度(D)が30〜70°程度の熱可塑性樹脂(ポリウレタン)又は熱硬化性樹脂(ウレタンエラストマー等)}あるいはエンジニアリングプラスチック(ポリアミド等)で形成することが好ましい。
【0028】
流路閉塞用工具4を構成する他の部材の詳細を図4及び図5により説明する。図4に示すように、チェック弁7は、第1チューブ6に内装されるリング状本体71と、これらの間に装着されるリング状スペーサ72と、第1チューブ6とリング状本体(弁座)71とを密封するシールリング73と、リング状本体71に装着される弁体74と、弁体74に巻回される圧縮コイルばね75を備えている。この構造によれば、膨張用流体が第1チューブ6に導入された時は、弁体74が矢印Y方向に移動するので、圧縮コイルばね75が圧縮されて、膨張用流体は弁座71と弁体74との隙間から流出して、遮断バッグ5aに流入する。この膨張用流体の供給により、遮断バッグ5aが膨張する(図1参照)。膨張用流体の供給が停止すると、弁体74は圧縮コイルばね74の復元力により元の位置に復帰して、遮断バッグ5aからの膨張用流体の流出が阻止され、遮断バッグ5aはその膨張状態が維持される。すなわち第1チューブ6の途中にチェック弁7を設けることにより、このチューブに逆流防止機能が付与される。
【0029】
図4に示すように、第1カプラ8は、中央部に第1チューブ6の端面が当接するフランジ部81を有するプラグ状部材であり、フランジ部81の一方の側には、第1チューブ6が嵌め込まれるたけのこ状のエンド部82を有する。フランジ部81の他方の側は、後述の第2カプラ9に差込まれる挿入筒部83であり、軸方向に沿って第1段差部831、円弧状断面を有する円周溝832、突状部833及び第1段差部831より小径の先端筒部834が形成されている。
【0030】
第2カプラ9は、操作チューブ11の受口111に固定された外スリーブ90と、その内面に装着される内スリーブ91と、内スリーブ91の抜け止めを行う止め輪92を有する。内スリーブ91は、先端側(第1カプラ8側)に円周方向に沿って形成された貫通穴911に挿入された球体93を有し、スリーブの厚さは貫通穴911から球体93の一部がはみ出すような寸法に設定されている。球体93を設けることにより、内スリーブ91が軸方向に移動することが阻止される。内スリーブ91は、その後端側に形成された薄肉部912が接続リング94の一端側にある接合部941と、例えばねじ接合により一体化されている。接続リング94の他端に形成されたたけのこ状のエンド部942が第2チューブ10に嵌め込まれることにより、膨張用流体を第2チューブ10から第2カプラ9及び第1カプラ8を経て第1チューブ6に供給することが可能となる。
【0031】
内スリーブ91の内径側にはインロー部913が形成され、そこに上述した先端筒部834を受け取るカラー95のつば部951が係止されるとともに、このインロー部913にはゴム等の弾性体からなるシールリング96と、有底円筒状の押圧部材97が装着されている。内スリーブ91の薄肉部912の内径側には、ガイドリング98が嵌め込まれ、その内周面に沿って押圧部材97が摺動できるようになっている。押圧部材97は、円周方向に沿って複数の連通穴971と底部外周に形成されたばね座972を有し、このばね座972と接続リング94の内径側端面との間に圧縮コイルばね100が装着されている。また内スリーブ91の外周と外スリーブ90の内周との間には内スリーブ91を図4で示す位置に保持するために圧縮コイルばね99が介装されている。
【0032】
第1カプラ8を第2カプラ9に向って押し込むことにより、両カプラは次のような動作で図5に示すように連結される。
(a)第1カプラ8をその端部が押圧部材97の内径側端部(拡径部)に突き当るまで第2カプラ9に挿入する。
(b)第1カプラ8をさらに挿入することにより、押圧部材97は圧縮コイルバネ100が密着する方向に移動する。
(c)このとき、第1カプラ8の突状部833によりカラー95も矢印X方向に移動するので、球体93の一部が貫通穴911から内スリーブ91の内径側に飛び出して、第1カプラ8の円周溝832に嵌り込む。球体93がこのように移動することにより、内スリーブ91は球体93による拘束状態が解除され、圧縮コイルばね99の復元力により矢印Y方向に移動し、止め輪92が外スリーブ90の端部内面に形成されたテーパ面901に当接する位置で停止する。
【0033】
第1チューブ6と第2チューブ10が一体的に結合された状態で、第2チューブ10から矢印Y方向に膨張用流体(例えば圧縮空気)が供給されると、膨張用流体は、接続リング94を通過し、連通穴971を経て第1カプラ8に流入する。ここでシールリング96はカラー95と押圧部材97との間で圧縮されかつ内スリーブ91の外周と外スリーブ90の内周とで圧縮されるので、膨張用流体が両カプラの接続部から漏洩することが防止される。次いで膨張用流体は、前述したようにチェック弁7を通過後遮断バッグ5aに流入するので、遮断バッグ5aが膨張する(図1参照)。
【0034】
第1カプラ8と第2カプラ9との接続を解除する場合は、操作チューブ11を引っ張り(既設管1から引き出す方向に駆動)、外スリーブ90を矢印X方向に移動させる。その結果、圧縮コイルばね100の復元力により、押圧部材97が矢印Y方向に移動し、球体93の一部が貫通穴911から飛び出して外スリーブ90の端部内面まで移動する(図4参照)。このように第1カプラの円周溝832と球体93による結合か解除されて、第1カプラ8は第2カプラ9から外すことが可能となる。
【0035】
[遮断バッグの他の例]
図6及び7に示す遮断バッグ5は、膨張する前はその軸方向に対する横断面が星型形状を有し膨張時にその表面が供給管の内面に密着する袋状部材51を有し、その開口側をロックバンド53で締め付けることにより、支持リング54が内装された第1チューブ6の一端側に装着した構造であり、低いコストで作製できるという利点がある。
【0036】
[遮断バッグの他の例]
図8に示す遮断バッグ5は、パラソル状の袋状部材51を有し、第1スペーサ55を介して両端側にソケット52を設け、先端側から第1チューブ6を延出させ、その端部にチェック弁7を設け、かつ端面をキャップ55で密閉されている。また、先端側に延出された第1チューブ6の外周には圧縮コイルばね56が外装されている。このように遮断バッグ5の先端側に第1チューブ6を延出させることによって、延出された第1チューブ6が挿入時のガイドとして作用するので、既設管1への遮断バッグ5が挿入しやすくなるという利点をもつ。また、先端側にもチェック弁7を有するので、既設管1の切断後に先端部が露出するような遮断バッグ5(図2の5bを参照)であっても、既設管1の切断後に先端部のチェック弁7から遮断バッグ7内部の膨張用流体を放出することができるので容易に取り除くことができるという利点を有する。
【0037】
[供給管の結び替え作業]
次に図1と図2を参照して上記の流路閉塞用工具4を使用して既設管1の内部のガスの流動を遮断する作業を含む供給管の結び替え作業を説明する。なお、図1及び図2は供給管の結び替えを行うために必要な大きさのピット(図示を省略)が形成された状態を示している。
【0038】
1)既設管1の所定位置に合流継手3を組付け、電気融着継手(ソケット)の両端部に、分岐部34に装着された連結管2の端部および新設の本支管から分岐された新設管の端部を挿入し、電気融着により連結管2と新設管(図示を省略)とが融着接合される。合流継手3にノーブローバッグ(図示を省略)を被せて大気から遮断した後、チーズ部33にカッター(図示を省略)をセットし、既設管1の所定位置に穿孔した後、チーズ部33からカッターを取り外す。
【0039】
2)チーズ部33から流路閉塞用工具4を矢印Z方向に移動させて、遮断バッグ5aを既設管1に押し込む。この押し込み長さは、例えば穿孔部からの距離が0.3〜0.5mになるように設定すればよい。このように遮断バッグ5aを既設管1の所定位置まで差し込んだ後、膨張用流体を供給して遮断バッグ5aを膨張させ、図1に示すように遮断バッグ5aを既設管1に密着させる。ここで、膨張用流体の供給を停止するとチェック弁7が作動して、第2チューブ10からの膨張用流体の流出が阻止される。
【0040】
3)操作チューブ11を引くことにより、第1カプラ8aと第2カプラ9が分離するので、第2チューブ10を継手外に引き出すことができる。また遮断バッグ5aを含む閉塞部材40aが既設管1に残留する(図2参照)。
【0041】
4)第2チューブ10の先端に別の遮断バッグ5bを装着後、チーズ部33から流路閉塞用工具4を矢印Z方向に移動させて、遮断バッグ5bを既設管1に押し込む(図2参照)。膨張用流体を供給して遮断バッグ5bが膨張して、同図に示すように遮断バッグ5bを既設管1に密着させる。ここで、膨張用流体の供給が停止するとチェック弁7が作動して、第2チューブ10からの膨張用流体の流出が阻止される。
【0042】
ここで、例えば第2チューブ10の後端側に遮断バッグ5a、5bが各々所定の位置に挿入されたことを示す目印を付けておくことにより、遮断バッグが既設管1の所で押し込まれたときに、各目印定の位置{矢印S1(図1参照)、矢印S2(図2参照)}まがチーズ部33の上端と一致したことを目視で確認できるようにすれば、遮断バッグ5a、5bの押し込み長さを正確に設定できる。
【0043】
5)遮断バッグ5a、5bで挟まれた区間(L)の既設管1を切断、撤去する。次いで既設管1の遮断バッグ側切断口をプラグやキャップ(図示を省略)で密閉し、流路閉塞用工具4を合流継手3から引き出した後、合流継手3の上端をプラグ(図示を省略)で密閉して新設管への結び換えが完了する。
また、遮断バッグ5bに図8に示す遮断バッグを使用すると切断口側から先端側のチェック弁7を押し込むことで遮断バッグ内部の膨張用流体を抜くことができるので、遮断バッグを切断口から容易に取り除くことが可能である。よって、遮断バッグ5bは再使用することができる。
なお、以降の工程は、従来と同様なので、その説明を省略する。
【0044】
本発明は、上記に限らず、種々の変更が可能である。例えば、図1において、合流継手3の上クランプ31のコーナー部に一点鎖線矢印Tで示す方向に工具挿入用ガイド管を設けることができる。これにより、上記の各チューブは供給管に対して斜めに挿入できるので、流路閉塞用工具の挿入と引出しを円滑に行うことができる。
【0045】
また、操作チューブの代わりにワイヤ(例えば、ピアノ線などの金属線)の一端を第2カプラ9の外スリーブ90に固定し、ワイヤの他端を第2チューブに沿って延出させる構成でもよい。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】遮断区間の一方の側に本発明の実施の形態に係わる流路閉塞用工具を配置した供給管の断面図である。
【図2】遮断区間の両側に本発明の流路閉塞用工具を配置した供給管の断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係わる流路閉塞用工具の断面図である。
【図4】図3のA部を拡大した断面図である。
【図5】流路閉塞用工具を連結した状態を示す、図3のA部を拡大した断面図である。
【図6】遮断バッグの他の例を示す断面図である。
【図7】図6のB−B線断面図である。
【図8】遮断バッグの他の例を示す断面図である。
【図9】本発明の供給管の更新工法を模式的に示す配管系統図である。
【図10】活管分岐遮断工法の一例を模式的に示す配管系統図である。
【符号の説明】
【0047】
1:第1の供給管(既設管)
2:連結管
3:合流継手、31:上クランプ、311:本体、312:ライニング、313:パッキン、32:下クランプ、321:本体、322:ライニング、33:チーズ部、331:本体、332:ライニング、34:分岐部、35:スティフナー、36:シール
4:流路閉塞用工具
40a、40b:閉塞部材
5、5a、5b:遮断バッグ、51:袋状部材、511:襞、52:ソケット、53:ロックバンド、54:支持リング、55:第1スペーサ、56:キャップ、57:バンド、第2スペーサ
6、6a、6b:第1チューブ
7、7a、7b:チェック弁、71:リング状本体(弁座)、72:リング状スペーサ、73:シールリング、74:弁体、75:圧縮コイルばね
8、8a、8b:第1カプラ、81:フランジ部、82:エンド部、83:挿入筒部、831:第1段差部、832:円周溝、833:突状部、834:先端筒部、段差部、84:凹溝、85:先端筒部
9:第2カプラ、90:外スリーブ、901:テーパ面、91:内スリーブ、911:貫通穴、912:薄肉部、913:インロー部、92:止め輪、93:球体、94:接続リング、941:接合部、942:エンド部、95:カラー、96:シールリング、97:押圧部材、971:連通穴、972:ばね座、98:ガイドリング、99、100:圧縮コイルばね
10:第2チューブ
11:操作チューブ、111:受口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流動している配管の内部に挿入され、膨張用流体が導入される遮断バッグと、一端側に前記遮断バッグが連結されかつ他端側に第1カプラが装着された膨張用流体の逆流を防止する機能をもつ第1チューブと、前記第1カプラが着脱自在に差込まれる第2カプラが一端側に設けられかつ他端側に膨張用流体供給手段が接続される第2チューブと、前記第2チューブの他端側からの操作で前記1カプラと前記第2カプラとを分離する操作手段とを備えたことを特徴とする流路閉塞用工具。
【請求項2】
前記第1チューブはその途中にチェック弁が内蔵され、前記第1カプラは前記第2カプラに挿入される先端筒部と円周溝を有し、前記第2カプラは前記操作手段に支持され軸方向に移動可能な外スリーブと、前記円周溝に入り込む球体を有する内スリーブと、一端側が前記内スリーブに接続されかつ他端側が前記第2チューブに接続された接続リングと、前記接続リングの内側に軸方向移動可能に支持され、前記先端筒部が奥まで差込まれたときに前記第1チューブと前記第2チューブを連通させる連通穴を有する押圧部材と、前記第1カプラと前記第2カプラを接続するときに前記外スリーブを前記第1カプラに向って押圧する付勢部材と、前記第1カプラを前記第2カプラから分離するときに前記押圧部材を前記第1カプラに向って押圧する付勢部材を有することを特徴とする請求項1に記載の流路閉塞用工具。
【請求項3】
前記遮断バッグは、パラソル形状の袋状部材を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流路閉塞用工具。
【請求項4】
前記遮断バッグは、軸方向に対する横断面が星型形状を有する袋状部材を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の流路閉塞用工具。
【請求項5】
前記操作手段は、一端部が前記外スリーブに接続されかつ他端部が前記第2チューブから延出する操作チューブであることを特徴とする請求項2に記載の流路閉塞用工具。
【請求項6】
新設の供給管が接続されガスが流動している既設の供給管の一箇所でこの接続部の上流側の部位を外気と遮断してからそこに開孔を設ける工程と、この開孔から流体逆流防止機能をもつチューブの先端に装着された第1の遮断バッグを挿入し、前記チューブの他端側から膨張用流体を供給して前記遮断バッグを膨張させることにより、前記既設の供給管に密着させる工程と、前記チューブを前記既設の供給管から引出す工程と、このチューブの先端に装着された第2の遮断バッグを前記既設のガス供給管に挿入して、前記第1の遮断バッグから所定距離だけ離間した位置で前記第2の遮断バッグに膨張用流体を供給して膨張させることにより、既設のガス供給管に密着させる工程と、前記第1の遮断バッグと前記第2の遮断バッグで挟まれた区間の既設の供給管を切り離し、この供給管の端部を密閉する工程を含むことを特徴とするガス供給管の更新工法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−128480(P2008−128480A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317975(P2006−317975)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(000005083)日立金属株式会社 (2,051)
【出願人】(000241902)北海道瓦斯株式会社 (11)
【Fターム(参考)】