浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置及び管体挿入方法
【課題】管体のセット位置が平面的に湾曲している場合であっても、管体挿入作業の際に、止水部に過度な荷重が加わることなく、また、挿入作業完了後において鞘管内の液体を抜くときに、管体を鞘管の最下部まで速やかに移動させることができる。
【解決手段】鞘管1の発進立坑側の開口端の止水部には鞘管と管体2との間を液密に封止するともに弾性変形可能な第1のシール3と第2のシールが設けられる。第1のシールは、鞘管の中心から少なくとも左右方向の一方にずれた位置に配置され、中央部には挿通孔が形成される。第2のシールは、管体の基端側からみて第1のシールが存する領域と鞘管内の液体が抜かれて管体が前記鞘管内の最下部に位置するときに該管体が存する領域とを覆うように、外形を長円形状または楕円形状とされる。第2のシールには、管体の基端側からみて第1のシールの挿通孔と同じ位置に挿通孔が形成される。
【解決手段】鞘管1の発進立坑側の開口端の止水部には鞘管と管体2との間を液密に封止するともに弾性変形可能な第1のシール3と第2のシールが設けられる。第1のシールは、鞘管の中心から少なくとも左右方向の一方にずれた位置に配置され、中央部には挿通孔が形成される。第2のシールは、管体の基端側からみて第1のシールが存する領域と鞘管内の液体が抜かれて管体が前記鞘管内の最下部に位置するときに該管体が存する領域とを覆うように、外形を長円形状または楕円形状とされる。第2のシールには、管体の基端側からみて第1のシールの挿通孔と同じ位置に挿通孔が形成される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された鞘管内に浮力を利用して管体を挿入する管体挿入装置及び管体挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された鞘管内に液体を注入し、この液体による浮力を利用して鞘管内に管体を挿入する技術が下記特許文献1に開示されている。
すなわち、特許文献1には、図15、図16に示すように、発進立坑100から到達立坑101に向けて埋設される鞘管102の両端に止水部103,104を設け、鞘管102内に貯留した例えば水105の浮力を利用することで、鞘管102との摩擦を極力抑えて鞘管102内に管体106を挿入する技術が開示されている。
【0003】
ここでは、発進立坑100側の止水部103が、中央に挿通孔を有する弾性変形可能な板状のシール103A、103Bを互いに間隔をあけて設けるとともに、それらシール103A、103Bの間に排水部107を設けた構造になっている。そして、管体挿入作業の中で、管体106に取り付けたスペーサ106Aがシール103Aを乗り越えるときに、シール103Bが機能して鞘管102の内部の水が発進立坑100内に漏れるのを防ぎ、また、スペーサ106Aがシール103Bを乗り越えるときに、シール103Aが機能して鞘管102の内部の水が発進立坑100内に漏れるのを防ぐ。
なお、スペーサ106Aがシール103Bを乗り越えるときに、鞘管102内の水がシール103Bを超えて、シール103A、103B間に流出するが、ここに流出した水は、スペーサ106Aがシール103Bを乗り越えた後に、排水部107から速やかに外部へ排出される。
なお、図15において、符号108は管体106の基端側を押圧移動させる管体移動手段である走行架台、符号109は鞘管102内の水面を調整する液面調整用のタンクをそれぞれ示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−291827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の浮力を利用した鞘管内への管体を挿入する技術にあっては、敷設しようとする管体106のセット位置が平面的に湾曲している場合、管体挿入作業の際に、鞘管102の端部において管体106が左右方向のいずれか一方にずれ込むのに伴い、シール103A、103Bに大きな荷重が加わる。これに伴い、シール103A、103Bが損傷する、あるいは管体106と鞘管102との間の摩擦が大きくなって、管体106を押圧して移動させる走行架台108に過大な負担がかかるという問題があった。
【0006】
このように施工する管体106のセット位置が平面的に湾曲している場合、止水部のシール103A、103Bの位置を図16中Xa、Xbに示すように左右方向のいずれかに予めずらしてセットし、この状態で管体106を挿入することが考えられる。
しかしながら、管体挿入作業完了の後、鞘管102内の液体を抜くときに、管体106が水から浮力を受けなくなって鞘管102内の最下部まで移動しようとするが、この場合、前述したようにシール103A、103Bが予め左右にずらしてセットされているため、これらシール103A、103Bが管体106の移動を阻止することとなり、管体106を鞘管102内の最下部まで移動させることができない、あるいは管体106が鞘管102内の最下部に移動するとき、シール103A、103Bに過度な荷重がかかって損傷し、そこから鞘管102内の水が漏れるといった不具合の発生が懸念される。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、管体のセット位置が平面的に湾曲している場合であっても、管体挿入作業の際に、止水部に過度な荷重が加わることなく、また、挿入作業完了後において鞘管内の液体を抜くときに、管体を鞘管の最下部まで速やかに移動させることができ、かつ、止水部の損傷を防いで、鞘管内の液が漏れ出るのを防止することができる、浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置及び管体挿入方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本願の請求項1に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置では、発進立坑と到達立坑にわたって埋設される鞘管の両端に止水部を設け、鞘管内に貯留した液体の浮力を利用して鞘管内に管体を挿入する浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置であって、前記鞘管の発進立坑側の開口端の止水部には前記鞘管と前記管体との間を液密に封止する第1のシールと第2のシールが前記管体の基端側から先端側に向けて互いに間隔をあけて設けられ、第1のシールは、前記鞘管の内側であってかつ前記鞘管の中心から少なくとも左右方向の一方にずれた位置に配置され、しかも、外形を円形状とされるとともに中央部には前記管体を挿通させる挿通孔が形成され、第2のシールは、前記管体の基端側からみて前記第1のシールが存する領域と前記鞘管内の液体が抜かれて前記管体が前記鞘管内の最下部に位置するときに該管体が存する領域を覆うように、外形を長円形状または楕円形状とされ、前記第2のシールには、前記管体の基端側からみて第1のシールの挿通孔と同じ位置に、前記管体を挿通させる挿通孔が形成されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、管体のセット位置が平面的に湾曲している場合に、第1のシール及び第2のシールの挿通孔が予め、鞘管の中心から左方あるいは右方にずれて配置されているため、管体挿入作業の際に、第1のシール及び第2のシールに管体から大きな荷重が加わることがなく、それら第1のシール及び第2のシールが損傷したり、あるいは管体を押圧移動させる管体移動手段に過大な負担がかかったりすることがない。
また、管体挿入作業完了の後、第1のシールを撤去すれば、もともと第2のシールは、管体の基端側からみて鞘管内の最下部に位置するときの管体の領域を覆うように長円形状または楕円形状に形成されているため、鞘管から液体を抜くときに、液体から浮力を受けなくなった管体が鞘管内の最下部に移動しようとした場合、第2のシールが管体の移動を阻止することがない。また、このとき、第2のシールに過度な荷重がかかることがなく、第2のシールから鞘管内の液体が漏れ出ることもない。
【0010】
本願の請求項2に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置では、前記第1のシールは、外形が円形状とされたシール押さえにより押さえられて固定され、前記第2のシールは、外形が長円形状または楕円形状のシール押さえにより押さえられて固定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1のシール及び第2のシールは、それぞれそれらシールと同形状のシール押さえによって固定されるため、それら第1のシール及び第2のシールが強固に固定されることとなり、そこから鞘管からの液が漏れ出るのを防止できる。
【0012】
本願の請求項3に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置は、前記管体の下面を移動可能に支持する下面支持ローラと、前記管体の外側面を移動可能に支持する側面支持ローラが備えられていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、挿入しようとする管体の下面を下面支持ローラが支持し、同管体の外側面を側面支持ローラが支持するので、管体を鞘管内に挿入するとき、第1のシール及び第2のシールや鞘管に過度な荷重が加わることなく、また、管体を押圧移動させる管体移動手段の押圧負荷も軽減できる。
【0014】
本願の請求項4に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置を用いて、前記鞘管内に前記管体を挿入する浮力を利用した鞘管内への管体挿入方法であって、前記管体を、前記鞘管の中心から少なくとも左右方向のいずれかにずれた位置から前記第1のシール及び第2のシールのそれぞれの挿通孔を挿通させて前記鞘管内に挿入する管体挿入工程と、前記第1のシールを撤去した後、前記鞘管から内部の液体を抜く抜液工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、管体を鞘管の中心から少なくとも左右方向のいずれかにずれた位置から鞘管内へ挿入するので、管体のスムーズな挿入が行える。また、挿入作業完了後の鞘管内の液体を抜くときに、予め第1のシールを撤去しているので、管体の鞘管内の最下部への移動をスムーズに行え、また、第2のシールを損傷することもない。
【発明の効果】
【0016】
本願の請求項1に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置では、管体挿入作業の際に、第1のシール及び第2のシールに管体から大きな荷重が加わることがなく、それら第1のシール及び第2のシールが損傷したり、あるいは管体を押圧移動させる管体移動手段に過大な負担がかかったりすることがない。また、管体挿入作業完了の後、鞘管から液体を抜くときに、管体の鞘管内の最下部への移動をスムーズに行え、また、第2のシールを損傷することもない。
【0017】
本願の請求項2に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置では、第1のシール及び第2のシールを強固に固定することができ、そこから鞘管内の液体が漏れ出るのを防止できる。
【0018】
本願の請求項3に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置では、管体を鞘管内に挿入するとき、側面支持ローラ及び下面支持ローラが荷重反力を受けるので、第1のシール及び第2のシールや鞘管に過度な荷重が加わることなく、また、管体を押圧移動させる管体移動手段の押圧負荷も軽減できる。
【0019】
本願の請求項4に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入方法では、前述した請求項1〜3に係る発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置の実施形態の要部断面図である。
【図2】図1のII矢視図である。
【図3】鞘管接続フランジの正面図である。
【図4】鞘管接続フランジの側面図である。
【図5】第2のシールの正面図である。
【図6】第2のシールを押さえる押さえフランジの正面図である。
【図7】止水部本体の正面図である。
【図8】止水部本体の側面図である。
【図9】第1のシールの正面図である。
【図10】第1のシールを押さえる押さえフランジの正面図である。
【図11】管体位置決め治具の正面図である。
【図12】管体位置決め治具の側面図である。
【図13】側面支持部の正面図である。
【図14】側面支持部の側面図である。
【図15】従来の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置を示す一部を断面した側面図である。
【図16】図15のXVI矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図1〜図14を参照して説明する。
これらの図では、発進立坑と到達立坑にわたって埋設される鞘管の両端の止水部のうちの発進立坑側の止水部の詳細を表しており、到達立坑の止水部及び管体の基端側を押圧移動させる走行架台や鞘管内の液面を調整する液面調整手段については背景技術で説明したものと同様の構成であるので、ここではそれらについての説明は省略する。
図1は本発明の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置の実施形態の要部断面図、図2は図1のII矢視図である。
【0022】
図1、2において、符号1は鞘管、符号2は敷設の対象となる管体を示す。鞘管1は、管体2を設置する際の防食被覆の損傷防止や設置後の管体保護のため、予め発進立坑と到達立坑にわたって地中に埋設されるものであり、管体の外側に設ける外管のほか、老朽化した既設管も含まれる。管体2の外側にはスペーサ2Aが、管体2の長さ方向に沿って所定間隔置きに取り付けられている。
鞘管の発進立坑側の開口端の止水部には、管体挿入作業の際に、鞘管1と前記管体2との間を液密に封止する、弾性変形可能な第1のシール3と第2のシール4が、前記管体2の基端側から先端側に向けて互いに間隔をあけて設けられている。図1において、左側が管体2の基端側、右側が管体2の先端側である。これらシール3,4については、後ほど詳しく説明する。
【0023】
鞘管1の発進立坑側の開口端には鞘管接続フランジ6が、鞘管1に対して液密に保持された状態で取り付けられている。図3は鞘管接続フランジの正面図、図4は鞘管接続フランジの側面図である。これらの図に示すように、鞘管接続フランジ6は、鞘管側に配置され、鞘管1とほぼ同一径とされて上部が切り欠かれるとともに中央部が切り欠かれた略半円状の鞘管側接続板部7と、止水部本体10側に配置され、外形が第2のシール4と同様の長円形状とされ中央が切りかかれた止水部本体側接続板部8と、それら両接続板部7、8の間に配された断面円弧状の連結板部9を有する。連結板部9の下部には排液部9Aが設けられ、鞘管側接続板部7、止水部本体側接続板部8及び連結板部9によって囲まれた空間に液体が溜まった場合に、この排液部9Aを介して外部へ液体を排出できるようになっている。
【0024】
鞘管接続フランジ6の止水部本体側接続板部8には第2のシール4が、鞘管1とは逆側から、シール上部を止水部本体10の一方のフランジ11に押圧されて、また、シール下部を止水部本体10とは別体とされた押さえフランジ10Aによって押圧されて固定されている。
【0025】
図5は第2のシール4の正面図である。図5に示すように第2のシール4は、外形を長円形状に形成され、上部中央には管体2を挿通させるための挿通孔4Aが形成されている。第2のシール4は、適宜弾性変形可能な材料、例えばゴム板から作られる。これは、後述する第1のシール3も同様である。
図6は第2のシール4を押さえる押さえフランジ10Aの正面図である。図6に示すように、押さえフランジ10Aは、止水部本体側接続板部8において止水部本体10のフランジ11で押圧できない部分(重ならない部分)を覆うものであり、略リング状の斜め上半分が切り欠かれた形状になっている。
つまり、第2のシール4は、協働するフランジ11及び押さえフランジ10Aの両シール押さえによりその外周部を押圧されて、鞘管接続フランジ6と止水部本体10の間に挟まれた状態で固定される。
【0026】
図7は止水部本体10の正面図、図8は止水部本体10の側面図である。これらの図に示すように、止水部本体10は、鞘管接続フランジ6側に配置され、スペーサ2Aの外形よりも若干大きい径とされたリング状のフランジ11と、鞘管接続フランジ6側とは逆側に配置され、前記一方のフランジ11と同一形状とされたフランジ12と、これら両フランジ11,12の配された断面リング状の連結板部13を有する。連結板部13には排液部13Aが設けられ、フランジ11、12及び連結板部13によって囲まれた空間に液が溜まった場合、この排液部13Aを介して外部へ液が排出できるようになっている。なお、連結板部13の上部は開放されている。
【0027】
止水部本体10の他方のフランジ12には、前記第1のシール3が鞘管接続フランジ6とは逆側から、押さえフランジ14によって押圧されて固定されている(図9、図10参照)。
図9は第1のシール3の正面図である。図9に示すように第1のシール3は、外形を円形状に形成され、上部中央には管体2を挿通させるための挿通孔3Aが形成されている。
ここで、第1のシール3は、図2にも示すように、鞘管1の内側であってかつ鞘管1の中心から左右方向の一方(図2では左方)にずれた位置に配置されている。一方、第2のシール4は、管体2の基端側からみて(図1における左側からみて)第1のシール3が存する領域(領域の中心を図中Caで示す)と鞘管1内の液体が抜かれて管体2が鞘管1内の最下部に位置するときに該管体2が存する領域(領域の中心をCbで示す)とを覆うように、外形を長円形状とされている(図5参照)。
また、第2のシール4の挿通孔4Aは、管体2の基端側からみて第1のシール3の挿通孔3Aと同じ位置に形成されている。
【0028】
第1のシール3の外方、すなわち管体2の基端側には、管体2の下面を移動可能に支持するとともに管体の位置決めを行う管体位置決め治具15が設けられている。
図11は管体位置決め治具15の正面図、図12は管体位置決め治具15の側面図である。管体位置決め治具15は止水部本体10のフランジ12に支持されている。なお、管体位置決め治具15は、走行架台あるいは鞘管から延びるステーによって支持されてもよい。図11、図12に示すように、管体位置決め治具15は、左右のネジ機構16A、16Bによって、高さ並びに傾きが調整可能な支持台17上に、管体2の下面を移動可能に支持する下面支持ローラ18A、18Bが適宜間隔をあけて互いに上部が接近するように傾斜角を有して取り付けられた構成になっている。
【0029】
また、第1のシール3の外方には、管体2の外側面を移動可能に支持する側面支持部19が上下に適宜間隔をあけて、止水部本体10のフランジ12に取り付けられている。図13は側面支持部19の正面図、図14は側面支持部19の側面図である。これらの図に示すように側面支持部19は、前記フランジ12に取り付けられたローラ支持台20に、管体2の外側面を移動可能に支持する側面支持ローラ21が支持された構成になっている。
【0030】
次に、前記構成の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置を用いた管体挿入方法について説明する。
まず、鞘管1の両端に止水部をそれぞれセットする。発進立坑側の開口端の止水部では、図1、図2に示すように、第1のシール3、第2のシール4を備えた止水部をセットする。そして、第1のシール3及び第2のシール4のそれぞれの挿通孔3A、4Aを挿通するように、敷設対象となる管体2をセットする。この状態で、鞘管1内に液体、例えば水を所定高さとなるまで注入する。
【0031】
そして、走行架台等の管体移動手段(図示略)で、管体2の基端側を押圧移動させながら管体2を鞘管1内に挿入する。この作業は、管体2を継ぎ足しながら、管体2の先端が到達立坑側の止水部まで達するまで順次行う。
このとき、鞘管1内の水の浮力を利用して管体2を支持するので、鞘管1と管体2との摩擦が少なくなり、もって、管体2をスムーズに鞘管1内に挿入することできる。
【0032】
また、管体2のセット位置が平面的に湾曲している場合に、第1のシール3及び第2のシール4の挿通孔3A、4Aを予め、鞘管1の中心から左方にずれて配置しているため、管体挿入作業の際に、第1のシール3及び第2のシール4に管体2から大きな荷重が加わることを回避することができる。このため、それら第1のシール3及び第2のシール4が損傷したり、あるいは管体2を押圧移動させる管体移動手段に過大な負担がかかったりすることがない。
【0033】
加えて、この実施形態では、挿入しようとする管体2の下面を管体位置決め治具15によって移動可能に支持し、また、同管体2の外側面を側面支持部19によって移動可能に支持しているので、管体2を鞘管1内に挿入するとき、第1のシール3及び第2のシール4や鞘管1に、過度な荷重が加わるのをより一層回避できる。
【0034】
管体挿入作業が完了すると、管体位置決め治具15、側面支持部19、第1のシール3並びに止水部本体10を、それらを固定しているボルトを取り外すことで撤去する。このとき、第2のシール4が鞘管1と管体2との間を液密に保持するので、鞘管1内の水が発進立坑内に漏れ出ることはない。
【0035】
次に、鞘管1内の水を抜く。このとき、水から浮力を受けなくなった管体2が鞘管1内の最下部に移動しようとする。ここでは、第1のシール3及び止水部本体10を予め撤去しており、しかも、第2のシール4を、管体2の基端側からみて鞘管1内の最下部に位置するときの管体2の領域を覆うように長円形状に形成しているため、管体2の鞘管1内の最下部への移動を、第2のシール4が阻害することがない。つまり、管体2の鞘管1内の最下部へスムーズに移動させることができる。また、このとき、第2のシール4に過度な荷重がかかることがなく、第2のシール4が損傷してそこから鞘管1内に水が漏れ出といった事態も避けることができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、第1のシール3の外方に管体位置決め治具15及び側面支持部19を設けたが、敷設する管体2の平面的湾曲の曲率が小さく、管体挿入作業の際に止水部が受ける反力荷重が小さい場合には、これら管体位置決め治具15及び側面支持部19を設けなくても良い。
また、前記実施形態では、管体2の基端側から見て第1のシール3を鞘管1の中心から左方にずらしているが、これに限られることなく、敷設する管体2の平面的湾曲が逆方向に曲がる場合には、逆に右方にずらしてもよい。
また、実施形態では、管体2の基端側から見て第1のシール3の外周縁が鞘管1の内面にかかる程度まで左方にずらしているが、これに限られることなく、ずれ量はそれよりも小さな値でもよい。
また、管体2の湾曲が鉛直方向に沿う場合には、第1のシール3を鞘管1の中心か上下方向へずらしても良い。
また、前記実施形態では、第2のシール4を長円形状に形成しているが、これに限られることなく、楕円形状に形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、地中に埋設された鞘管内に浮力を利用して管体を挿入する管体挿入装置及び管体挿入方法に関する。
【符号の説明】
【0038】
1 鞘管
2 管体
2A スペーサ
3 第1のシール
4 第2のシール
4A 挿通孔
6 鞘管接続フランジ
10 止水部本体
11 フランジ11(シール押さえ)
12 押さえフランジ(シール押さえ)
14 押さえフランジ(シール押さえ)
15 管体位置決め治具
18A、18B 下面支持ローラ
19 側面支持部
21 側面支持ローラ
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に埋設された鞘管内に浮力を利用して管体を挿入する管体挿入装置及び管体挿入方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地中に埋設された鞘管内に液体を注入し、この液体による浮力を利用して鞘管内に管体を挿入する技術が下記特許文献1に開示されている。
すなわち、特許文献1には、図15、図16に示すように、発進立坑100から到達立坑101に向けて埋設される鞘管102の両端に止水部103,104を設け、鞘管102内に貯留した例えば水105の浮力を利用することで、鞘管102との摩擦を極力抑えて鞘管102内に管体106を挿入する技術が開示されている。
【0003】
ここでは、発進立坑100側の止水部103が、中央に挿通孔を有する弾性変形可能な板状のシール103A、103Bを互いに間隔をあけて設けるとともに、それらシール103A、103Bの間に排水部107を設けた構造になっている。そして、管体挿入作業の中で、管体106に取り付けたスペーサ106Aがシール103Aを乗り越えるときに、シール103Bが機能して鞘管102の内部の水が発進立坑100内に漏れるのを防ぎ、また、スペーサ106Aがシール103Bを乗り越えるときに、シール103Aが機能して鞘管102の内部の水が発進立坑100内に漏れるのを防ぐ。
なお、スペーサ106Aがシール103Bを乗り越えるときに、鞘管102内の水がシール103Bを超えて、シール103A、103B間に流出するが、ここに流出した水は、スペーサ106Aがシール103Bを乗り越えた後に、排水部107から速やかに外部へ排出される。
なお、図15において、符号108は管体106の基端側を押圧移動させる管体移動手段である走行架台、符号109は鞘管102内の水面を調整する液面調整用のタンクをそれぞれ示す。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−291827号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述の浮力を利用した鞘管内への管体を挿入する技術にあっては、敷設しようとする管体106のセット位置が平面的に湾曲している場合、管体挿入作業の際に、鞘管102の端部において管体106が左右方向のいずれか一方にずれ込むのに伴い、シール103A、103Bに大きな荷重が加わる。これに伴い、シール103A、103Bが損傷する、あるいは管体106と鞘管102との間の摩擦が大きくなって、管体106を押圧して移動させる走行架台108に過大な負担がかかるという問題があった。
【0006】
このように施工する管体106のセット位置が平面的に湾曲している場合、止水部のシール103A、103Bの位置を図16中Xa、Xbに示すように左右方向のいずれかに予めずらしてセットし、この状態で管体106を挿入することが考えられる。
しかしながら、管体挿入作業完了の後、鞘管102内の液体を抜くときに、管体106が水から浮力を受けなくなって鞘管102内の最下部まで移動しようとするが、この場合、前述したようにシール103A、103Bが予め左右にずらしてセットされているため、これらシール103A、103Bが管体106の移動を阻止することとなり、管体106を鞘管102内の最下部まで移動させることができない、あるいは管体106が鞘管102内の最下部に移動するとき、シール103A、103Bに過度な荷重がかかって損傷し、そこから鞘管102内の水が漏れるといった不具合の発生が懸念される。
【0007】
この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、管体のセット位置が平面的に湾曲している場合であっても、管体挿入作業の際に、止水部に過度な荷重が加わることなく、また、挿入作業完了後において鞘管内の液体を抜くときに、管体を鞘管の最下部まで速やかに移動させることができ、かつ、止水部の損傷を防いで、鞘管内の液が漏れ出るのを防止することができる、浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置及び管体挿入方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
すなわち、本願の請求項1に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置では、発進立坑と到達立坑にわたって埋設される鞘管の両端に止水部を設け、鞘管内に貯留した液体の浮力を利用して鞘管内に管体を挿入する浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置であって、前記鞘管の発進立坑側の開口端の止水部には前記鞘管と前記管体との間を液密に封止する第1のシールと第2のシールが前記管体の基端側から先端側に向けて互いに間隔をあけて設けられ、第1のシールは、前記鞘管の内側であってかつ前記鞘管の中心から少なくとも左右方向の一方にずれた位置に配置され、しかも、外形を円形状とされるとともに中央部には前記管体を挿通させる挿通孔が形成され、第2のシールは、前記管体の基端側からみて前記第1のシールが存する領域と前記鞘管内の液体が抜かれて前記管体が前記鞘管内の最下部に位置するときに該管体が存する領域を覆うように、外形を長円形状または楕円形状とされ、前記第2のシールには、前記管体の基端側からみて第1のシールの挿通孔と同じ位置に、前記管体を挿通させる挿通孔が形成されていることを特徴とする。
【0009】
この発明によれば、管体のセット位置が平面的に湾曲している場合に、第1のシール及び第2のシールの挿通孔が予め、鞘管の中心から左方あるいは右方にずれて配置されているため、管体挿入作業の際に、第1のシール及び第2のシールに管体から大きな荷重が加わることがなく、それら第1のシール及び第2のシールが損傷したり、あるいは管体を押圧移動させる管体移動手段に過大な負担がかかったりすることがない。
また、管体挿入作業完了の後、第1のシールを撤去すれば、もともと第2のシールは、管体の基端側からみて鞘管内の最下部に位置するときの管体の領域を覆うように長円形状または楕円形状に形成されているため、鞘管から液体を抜くときに、液体から浮力を受けなくなった管体が鞘管内の最下部に移動しようとした場合、第2のシールが管体の移動を阻止することがない。また、このとき、第2のシールに過度な荷重がかかることがなく、第2のシールから鞘管内の液体が漏れ出ることもない。
【0010】
本願の請求項2に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置では、前記第1のシールは、外形が円形状とされたシール押さえにより押さえられて固定され、前記第2のシールは、外形が長円形状または楕円形状のシール押さえにより押さえられて固定されていることを特徴とする。
【0011】
本発明によれば、第1のシール及び第2のシールは、それぞれそれらシールと同形状のシール押さえによって固定されるため、それら第1のシール及び第2のシールが強固に固定されることとなり、そこから鞘管からの液が漏れ出るのを防止できる。
【0012】
本願の請求項3に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置は、前記管体の下面を移動可能に支持する下面支持ローラと、前記管体の外側面を移動可能に支持する側面支持ローラが備えられていることを特徴とする。
【0013】
本発明によれば、挿入しようとする管体の下面を下面支持ローラが支持し、同管体の外側面を側面支持ローラが支持するので、管体を鞘管内に挿入するとき、第1のシール及び第2のシールや鞘管に過度な荷重が加わることなく、また、管体を押圧移動させる管体移動手段の押圧負荷も軽減できる。
【0014】
本願の請求項4に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入方法は、請求項1〜3のいずれかに記載の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置を用いて、前記鞘管内に前記管体を挿入する浮力を利用した鞘管内への管体挿入方法であって、前記管体を、前記鞘管の中心から少なくとも左右方向のいずれかにずれた位置から前記第1のシール及び第2のシールのそれぞれの挿通孔を挿通させて前記鞘管内に挿入する管体挿入工程と、前記第1のシールを撤去した後、前記鞘管から内部の液体を抜く抜液工程と、を備えることを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、管体を鞘管の中心から少なくとも左右方向のいずれかにずれた位置から鞘管内へ挿入するので、管体のスムーズな挿入が行える。また、挿入作業完了後の鞘管内の液体を抜くときに、予め第1のシールを撤去しているので、管体の鞘管内の最下部への移動をスムーズに行え、また、第2のシールを損傷することもない。
【発明の効果】
【0016】
本願の請求項1に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置では、管体挿入作業の際に、第1のシール及び第2のシールに管体から大きな荷重が加わることがなく、それら第1のシール及び第2のシールが損傷したり、あるいは管体を押圧移動させる管体移動手段に過大な負担がかかったりすることがない。また、管体挿入作業完了の後、鞘管から液体を抜くときに、管体の鞘管内の最下部への移動をスムーズに行え、また、第2のシールを損傷することもない。
【0017】
本願の請求項2に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置では、第1のシール及び第2のシールを強固に固定することができ、そこから鞘管内の液体が漏れ出るのを防止できる。
【0018】
本願の請求項3に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置では、管体を鞘管内に挿入するとき、側面支持ローラ及び下面支持ローラが荷重反力を受けるので、第1のシール及び第2のシールや鞘管に過度な荷重が加わることなく、また、管体を押圧移動させる管体移動手段の押圧負荷も軽減できる。
【0019】
本願の請求項4に係る浮力を利用した鞘管内への管体挿入方法では、前述した請求項1〜3に係る発明と同様の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置の実施形態の要部断面図である。
【図2】図1のII矢視図である。
【図3】鞘管接続フランジの正面図である。
【図4】鞘管接続フランジの側面図である。
【図5】第2のシールの正面図である。
【図6】第2のシールを押さえる押さえフランジの正面図である。
【図7】止水部本体の正面図である。
【図8】止水部本体の側面図である。
【図9】第1のシールの正面図である。
【図10】第1のシールを押さえる押さえフランジの正面図である。
【図11】管体位置決め治具の正面図である。
【図12】管体位置決め治具の側面図である。
【図13】側面支持部の正面図である。
【図14】側面支持部の側面図である。
【図15】従来の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置を示す一部を断面した側面図である。
【図16】図15のXVI矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の実施形態について図1〜図14を参照して説明する。
これらの図では、発進立坑と到達立坑にわたって埋設される鞘管の両端の止水部のうちの発進立坑側の止水部の詳細を表しており、到達立坑の止水部及び管体の基端側を押圧移動させる走行架台や鞘管内の液面を調整する液面調整手段については背景技術で説明したものと同様の構成であるので、ここではそれらについての説明は省略する。
図1は本発明の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置の実施形態の要部断面図、図2は図1のII矢視図である。
【0022】
図1、2において、符号1は鞘管、符号2は敷設の対象となる管体を示す。鞘管1は、管体2を設置する際の防食被覆の損傷防止や設置後の管体保護のため、予め発進立坑と到達立坑にわたって地中に埋設されるものであり、管体の外側に設ける外管のほか、老朽化した既設管も含まれる。管体2の外側にはスペーサ2Aが、管体2の長さ方向に沿って所定間隔置きに取り付けられている。
鞘管の発進立坑側の開口端の止水部には、管体挿入作業の際に、鞘管1と前記管体2との間を液密に封止する、弾性変形可能な第1のシール3と第2のシール4が、前記管体2の基端側から先端側に向けて互いに間隔をあけて設けられている。図1において、左側が管体2の基端側、右側が管体2の先端側である。これらシール3,4については、後ほど詳しく説明する。
【0023】
鞘管1の発進立坑側の開口端には鞘管接続フランジ6が、鞘管1に対して液密に保持された状態で取り付けられている。図3は鞘管接続フランジの正面図、図4は鞘管接続フランジの側面図である。これらの図に示すように、鞘管接続フランジ6は、鞘管側に配置され、鞘管1とほぼ同一径とされて上部が切り欠かれるとともに中央部が切り欠かれた略半円状の鞘管側接続板部7と、止水部本体10側に配置され、外形が第2のシール4と同様の長円形状とされ中央が切りかかれた止水部本体側接続板部8と、それら両接続板部7、8の間に配された断面円弧状の連結板部9を有する。連結板部9の下部には排液部9Aが設けられ、鞘管側接続板部7、止水部本体側接続板部8及び連結板部9によって囲まれた空間に液体が溜まった場合に、この排液部9Aを介して外部へ液体を排出できるようになっている。
【0024】
鞘管接続フランジ6の止水部本体側接続板部8には第2のシール4が、鞘管1とは逆側から、シール上部を止水部本体10の一方のフランジ11に押圧されて、また、シール下部を止水部本体10とは別体とされた押さえフランジ10Aによって押圧されて固定されている。
【0025】
図5は第2のシール4の正面図である。図5に示すように第2のシール4は、外形を長円形状に形成され、上部中央には管体2を挿通させるための挿通孔4Aが形成されている。第2のシール4は、適宜弾性変形可能な材料、例えばゴム板から作られる。これは、後述する第1のシール3も同様である。
図6は第2のシール4を押さえる押さえフランジ10Aの正面図である。図6に示すように、押さえフランジ10Aは、止水部本体側接続板部8において止水部本体10のフランジ11で押圧できない部分(重ならない部分)を覆うものであり、略リング状の斜め上半分が切り欠かれた形状になっている。
つまり、第2のシール4は、協働するフランジ11及び押さえフランジ10Aの両シール押さえによりその外周部を押圧されて、鞘管接続フランジ6と止水部本体10の間に挟まれた状態で固定される。
【0026】
図7は止水部本体10の正面図、図8は止水部本体10の側面図である。これらの図に示すように、止水部本体10は、鞘管接続フランジ6側に配置され、スペーサ2Aの外形よりも若干大きい径とされたリング状のフランジ11と、鞘管接続フランジ6側とは逆側に配置され、前記一方のフランジ11と同一形状とされたフランジ12と、これら両フランジ11,12の配された断面リング状の連結板部13を有する。連結板部13には排液部13Aが設けられ、フランジ11、12及び連結板部13によって囲まれた空間に液が溜まった場合、この排液部13Aを介して外部へ液が排出できるようになっている。なお、連結板部13の上部は開放されている。
【0027】
止水部本体10の他方のフランジ12には、前記第1のシール3が鞘管接続フランジ6とは逆側から、押さえフランジ14によって押圧されて固定されている(図9、図10参照)。
図9は第1のシール3の正面図である。図9に示すように第1のシール3は、外形を円形状に形成され、上部中央には管体2を挿通させるための挿通孔3Aが形成されている。
ここで、第1のシール3は、図2にも示すように、鞘管1の内側であってかつ鞘管1の中心から左右方向の一方(図2では左方)にずれた位置に配置されている。一方、第2のシール4は、管体2の基端側からみて(図1における左側からみて)第1のシール3が存する領域(領域の中心を図中Caで示す)と鞘管1内の液体が抜かれて管体2が鞘管1内の最下部に位置するときに該管体2が存する領域(領域の中心をCbで示す)とを覆うように、外形を長円形状とされている(図5参照)。
また、第2のシール4の挿通孔4Aは、管体2の基端側からみて第1のシール3の挿通孔3Aと同じ位置に形成されている。
【0028】
第1のシール3の外方、すなわち管体2の基端側には、管体2の下面を移動可能に支持するとともに管体の位置決めを行う管体位置決め治具15が設けられている。
図11は管体位置決め治具15の正面図、図12は管体位置決め治具15の側面図である。管体位置決め治具15は止水部本体10のフランジ12に支持されている。なお、管体位置決め治具15は、走行架台あるいは鞘管から延びるステーによって支持されてもよい。図11、図12に示すように、管体位置決め治具15は、左右のネジ機構16A、16Bによって、高さ並びに傾きが調整可能な支持台17上に、管体2の下面を移動可能に支持する下面支持ローラ18A、18Bが適宜間隔をあけて互いに上部が接近するように傾斜角を有して取り付けられた構成になっている。
【0029】
また、第1のシール3の外方には、管体2の外側面を移動可能に支持する側面支持部19が上下に適宜間隔をあけて、止水部本体10のフランジ12に取り付けられている。図13は側面支持部19の正面図、図14は側面支持部19の側面図である。これらの図に示すように側面支持部19は、前記フランジ12に取り付けられたローラ支持台20に、管体2の外側面を移動可能に支持する側面支持ローラ21が支持された構成になっている。
【0030】
次に、前記構成の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置を用いた管体挿入方法について説明する。
まず、鞘管1の両端に止水部をそれぞれセットする。発進立坑側の開口端の止水部では、図1、図2に示すように、第1のシール3、第2のシール4を備えた止水部をセットする。そして、第1のシール3及び第2のシール4のそれぞれの挿通孔3A、4Aを挿通するように、敷設対象となる管体2をセットする。この状態で、鞘管1内に液体、例えば水を所定高さとなるまで注入する。
【0031】
そして、走行架台等の管体移動手段(図示略)で、管体2の基端側を押圧移動させながら管体2を鞘管1内に挿入する。この作業は、管体2を継ぎ足しながら、管体2の先端が到達立坑側の止水部まで達するまで順次行う。
このとき、鞘管1内の水の浮力を利用して管体2を支持するので、鞘管1と管体2との摩擦が少なくなり、もって、管体2をスムーズに鞘管1内に挿入することできる。
【0032】
また、管体2のセット位置が平面的に湾曲している場合に、第1のシール3及び第2のシール4の挿通孔3A、4Aを予め、鞘管1の中心から左方にずれて配置しているため、管体挿入作業の際に、第1のシール3及び第2のシール4に管体2から大きな荷重が加わることを回避することができる。このため、それら第1のシール3及び第2のシール4が損傷したり、あるいは管体2を押圧移動させる管体移動手段に過大な負担がかかったりすることがない。
【0033】
加えて、この実施形態では、挿入しようとする管体2の下面を管体位置決め治具15によって移動可能に支持し、また、同管体2の外側面を側面支持部19によって移動可能に支持しているので、管体2を鞘管1内に挿入するとき、第1のシール3及び第2のシール4や鞘管1に、過度な荷重が加わるのをより一層回避できる。
【0034】
管体挿入作業が完了すると、管体位置決め治具15、側面支持部19、第1のシール3並びに止水部本体10を、それらを固定しているボルトを取り外すことで撤去する。このとき、第2のシール4が鞘管1と管体2との間を液密に保持するので、鞘管1内の水が発進立坑内に漏れ出ることはない。
【0035】
次に、鞘管1内の水を抜く。このとき、水から浮力を受けなくなった管体2が鞘管1内の最下部に移動しようとする。ここでは、第1のシール3及び止水部本体10を予め撤去しており、しかも、第2のシール4を、管体2の基端側からみて鞘管1内の最下部に位置するときの管体2の領域を覆うように長円形状に形成しているため、管体2の鞘管1内の最下部への移動を、第2のシール4が阻害することがない。つまり、管体2の鞘管1内の最下部へスムーズに移動させることができる。また、このとき、第2のシール4に過度な荷重がかかることがなく、第2のシール4が損傷してそこから鞘管1内に水が漏れ出といった事態も避けることができる。
【0036】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、前記実施形態では、第1のシール3の外方に管体位置決め治具15及び側面支持部19を設けたが、敷設する管体2の平面的湾曲の曲率が小さく、管体挿入作業の際に止水部が受ける反力荷重が小さい場合には、これら管体位置決め治具15及び側面支持部19を設けなくても良い。
また、前記実施形態では、管体2の基端側から見て第1のシール3を鞘管1の中心から左方にずらしているが、これに限られることなく、敷設する管体2の平面的湾曲が逆方向に曲がる場合には、逆に右方にずらしてもよい。
また、実施形態では、管体2の基端側から見て第1のシール3の外周縁が鞘管1の内面にかかる程度まで左方にずらしているが、これに限られることなく、ずれ量はそれよりも小さな値でもよい。
また、管体2の湾曲が鉛直方向に沿う場合には、第1のシール3を鞘管1の中心か上下方向へずらしても良い。
また、前記実施形態では、第2のシール4を長円形状に形成しているが、これに限られることなく、楕円形状に形成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0037】
本発明は、地中に埋設された鞘管内に浮力を利用して管体を挿入する管体挿入装置及び管体挿入方法に関する。
【符号の説明】
【0038】
1 鞘管
2 管体
2A スペーサ
3 第1のシール
4 第2のシール
4A 挿通孔
6 鞘管接続フランジ
10 止水部本体
11 フランジ11(シール押さえ)
12 押さえフランジ(シール押さえ)
14 押さえフランジ(シール押さえ)
15 管体位置決め治具
18A、18B 下面支持ローラ
19 側面支持部
21 側面支持ローラ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
発進立坑と到達立坑にわたって埋設される鞘管の両端に止水部を設け、鞘管内に貯留した液体の浮力を利用して鞘管内に管体を挿入する浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置であって、
前記鞘管の発進立坑側の開口端の止水部には前記鞘管と前記管体との間を液密に封止するともに弾性変形可能な第1のシールと第2のシールが、前記管体の基端側から先端側に向けて互いに間隔をあけて設けられ、
第1のシールは、前記鞘管の内側であってかつ前記鞘管の中心から少なくとも左右方向の一方にずれた位置に配置され、しかも、外形を円形状とされるとともに中央部には前記管体を挿通させる挿通孔が形成され、
第2のシールは、前記管体の基端側からみて前記第1のシールが存する領域と前記鞘管内の液体が抜かれて前記管体が前記鞘管内の最下部に位置するときに該管体が存する領域とを覆うように、外形を長円形状または楕円形状とされ、
前記第2のシールには、前記管体の基端側からみて第1のシールの挿通孔と同じ位置に、前記管体を挿通させる挿通孔が形成されていることを特徴とする浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置。
【請求項2】
前記第1のシールは、外形が円形状とされたシール押さえにより押さえられて固定され、
前記第2のシールは、外形が長円形状または楕円形状のシール押さえにより押さえられて固定されていることを特徴とする請求項1に記載の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置。
【請求項3】
前記第1のシールの外方には、前記管体の下面を移動可能に支持する下面支持ローラと、前記管体の外側面を移動可能に支持する側面支持ローラが備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置を用いて、前記鞘管内に前記管体を挿入する浮力を利用した鞘管内への管体挿入方法であって、
前記管体を、前記鞘管の中心から少なくとも左右方向のいずれかにずれた位置から前記第1のシール及び第2のシールのそれぞれの挿通孔を挿通させて前記鞘管内に挿入する管体挿入工程と、
前記第1のシールを撤去した後、前記鞘管から内部の液体を抜く抜液工程と、
を備えることを特徴とする浮力を利用した鞘管内への管体挿入方法。
【請求項1】
発進立坑と到達立坑にわたって埋設される鞘管の両端に止水部を設け、鞘管内に貯留した液体の浮力を利用して鞘管内に管体を挿入する浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置であって、
前記鞘管の発進立坑側の開口端の止水部には前記鞘管と前記管体との間を液密に封止するともに弾性変形可能な第1のシールと第2のシールが、前記管体の基端側から先端側に向けて互いに間隔をあけて設けられ、
第1のシールは、前記鞘管の内側であってかつ前記鞘管の中心から少なくとも左右方向の一方にずれた位置に配置され、しかも、外形を円形状とされるとともに中央部には前記管体を挿通させる挿通孔が形成され、
第2のシールは、前記管体の基端側からみて前記第1のシールが存する領域と前記鞘管内の液体が抜かれて前記管体が前記鞘管内の最下部に位置するときに該管体が存する領域とを覆うように、外形を長円形状または楕円形状とされ、
前記第2のシールには、前記管体の基端側からみて第1のシールの挿通孔と同じ位置に、前記管体を挿通させる挿通孔が形成されていることを特徴とする浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置。
【請求項2】
前記第1のシールは、外形が円形状とされたシール押さえにより押さえられて固定され、
前記第2のシールは、外形が長円形状または楕円形状のシール押さえにより押さえられて固定されていることを特徴とする請求項1に記載の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置。
【請求項3】
前記第1のシールの外方には、前記管体の下面を移動可能に支持する下面支持ローラと、前記管体の外側面を移動可能に支持する側面支持ローラが備えられていることを特徴とする請求項1または2に記載の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の浮力を利用した鞘管内への管体挿入装置を用いて、前記鞘管内に前記管体を挿入する浮力を利用した鞘管内への管体挿入方法であって、
前記管体を、前記鞘管の中心から少なくとも左右方向のいずれかにずれた位置から前記第1のシール及び第2のシールのそれぞれの挿通孔を挿通させて前記鞘管内に挿入する管体挿入工程と、
前記第1のシールを撤去した後、前記鞘管から内部の液体を抜く抜液工程と、
を備えることを特徴とする浮力を利用した鞘管内への管体挿入方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−219914(P2012−219914A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86315(P2011−86315)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(500171811)日鉄パイプライン株式会社 (34)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(500171811)日鉄パイプライン株式会社 (34)
[ Back to top ]