説明

浴室の暖房装置

【課題】本発明は、浴室の床面と空気を適切に暖め、快適に入室することが可能な浴室の暖房装置を提供することを目的としている。
【解決手段】本発明にかかる浴室の暖房装置の代表的な構成は、ノズル27から散湯することによって浴室10を暖める浴室の暖房装置において、ノズル27をカラン13の下方に設置されたカウンター15の前面かつ上方に配置したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室の暖房装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
浴室は通常の室内暖房が行き届く範囲ではなく、まして脱衣して入る場所であるから寒さを感じやすいため、冬期ともなれば入ることを躊躇するものである。そのため快適な入浴を実現するために浴室を入浴前に暖める要請があるが、結露が著しい場所であるため空調機の設置は難しい。そのため、従来から湯を散布することによって浴室を暖房するための様々な提案がなされている。
【0003】
例えば特開平4−244526号(特許文献1)には、水栓の下方に設置されたカウンターの下部の床近傍に、浴室の床上面に湯を散布するための散湯ノズルを設けた暖房装置が開示されている。実開昭61−106821号(特許文献2)には、体を洗うシャワーの他に散湯用のノズルを浴室の壁面の高所に設けた構成が開示されている。特開平3−217725(特許文献3)には、浴槽エプロン部の下部に設けた散湯ノズルから散湯する構成が開示されている。
【特許文献1】特開平4−244526号公報
【特許文献2】実開昭61−106821号公報
【特許文献3】特開平3−217725号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1や特許文献3に示されているように、床近傍にノズルが配置されていると、遠くまで湯が届きにくいため広範囲を暖めにくい。また、湯がすぐに床に落ちて流れていってしまうため、床は暖めやすい代わりに浴室内の空気は暖めにくい。さらに、体を洗う際の跳ね返りによってノズル付近が汚れやすいなどの不都合がある。これに対し特許文献2に示されるように高所にノズルが設けられていると、浴室内の空気を暖めるには良いが床が暖まりにくく、また浴室全体を濡らしてしまうために始末に悪いという問題がある。
【0005】
そこで本発明は、浴室の床面と空気を適切に暖め、快適に入室することが可能な浴室の暖房装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明にかかる浴室の暖房装置の代表的な構成は、ノズルから散湯することによって浴室を暖める浴室の暖房装置において、ノズルを水栓の下方に設置されたカウンターの前面かつ上方に配置したことを特徴とする。カウンターは通常、使用者の膝下程度の高さにあり、またその前面は壁面よりも浴室中央部に向かって突出した位置に配置される。従って、ノズルをカウンターの前面かつ上方に配置したことにより浴室全体に広範囲に散湯しやすく、またある程度の高さがあることから床面に落下するまでの間に浴室内の空気を暖めることができる。また、床面からある程度の高さがあることから、体を洗う際の跳ね返りによって汚れにくい。また位置が高すぎないため、浴室の内壁を不必要に濡らすことがない。さらにカウンターは水栓の直下にあるため、湯水の配管部材を短くすることができ、また配管部材の共通化を図ることができるため、部品コストおよび設置コストを抑えることができる。
【0007】
ノズルをカウンターに設ける場合には、カウンターの左右方向において、浴室の出入口に近い側の端部近傍に配置することが好ましい。浴室への出入口近傍に散湯することにより、浴室へ入室した際の足下をより効果的に暖め、快適な入室を実現することができる。
【0008】
ノズルには、水栓に給湯する給湯管をカウンターの内部で分岐して、カウンターの内部を通じて給湯することを特徴とする。分岐点は、水栓の下方であることが好ましい。これにより最短の経路によってノズルに給湯することができる。
【0009】
本発明にかかる浴室の暖房装置の他の代表的な構成は、ノズルから散湯することによって浴室を暖める浴室の暖房装置において、ノズルを浴室の壁面に設置された手摺りに設置したことを特徴とする。この場合にもノズルの床面からの高さを確保することができ、浴室の床面と空気を適切に暖めることができる。
【0010】
ノズルを手摺りに設ける場合には、手摺りの内部を通じて給湯することが好ましい。これにより浴室内における部材の増加を抑え、機能の追加にもかかわらず掃除のしやすさを担保し、また意匠的にも美観に優れている。
【0011】
本発明にかかる浴室の暖房装置の他の代表的な構成は、ノズルから散湯することによって浴室を暖める浴室の暖房装置において、ノズルを浴槽のエプロンの上部に配置したことを特徴とする。この場合において、湯水の配管部材はエプロンと浴槽の間に配置される。上記構成によっても、ノズルの床面からの高さを確保することができ、浴室の床面と空気を適切に暖めることができる。
【0012】
本発明にかかる浴室の暖房装置の他の代表的な構成は、ノズルから散湯することによって浴室を暖める浴室の暖房装置において、ノズルを浴室壁面の床から30cm〜100cmの範囲の高さに配置したことを特徴とする。上記構成によっても、ノズルの床面からの高さを確保することができ、浴室の床面と空気を適切に暖めることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、浴室の床面と空気を適切に暖め、快適に入室することが可能な浴室の暖房装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
[実施例1]
本発明にかかる浴室の暖房装置の実施例1について説明する。図1は実施例1にかかる浴室および暖房装置の構成を説明する図、図2は暖房装置のノズル近傍を説明する図である。なお、以下の実施例に示す寸法、材料、その他具体的な数値などは、発明の理解を容易とするための例示に過ぎず、特に断る場合を除き、本発明を限定するものではない。
【0015】
図1に示すように、浴室10には、浴槽11、洗い場である床面12、水栓であるカラン13およびシャワー14、カラン13の下方に設置されたカウンター15、手摺りの例としてのサポートバー17が備えられている。カウンター15は洗面器などを載置するための台であって、その上面は膝下程度の高さになっている。カウンター15の前面は壁面よりも浴室中央部に向かって突出した位置に配置され、カウンター15の下部は壁面に向かって後退している。
【0016】
浴室の暖房装置は、浴室の天井裏に配置された制御部20、カウンター15の内部に散湯ユニット21、浴室の外部にコントロールユニット22によって構成される。使用者はコントロールユニット22を操作することによって制御部20を動作させる。制御部20は散湯ユニット21を制御して、所定の暖房処理を行う。
【0017】
図2に示すように、散湯ユニット21は湯を供給するための給湯管16aに接続された電磁弁28a、冷水を供給するための給水管16bに接続された電磁弁28b、湯水を噴出するためのノズル27を備えている。制御部20が電磁弁28a、28bを制御することにより、給湯管16aおよび給水管16bから湯水が混合して供給され、ノズル27から噴出、または噴出を停止される。このようにノズル27には、カラン13に給湯する給湯管をカウンター15の内部で分岐して、カウンター15の内部を通じて給湯する。分岐点はカウンター15の内部であればよいが、カラン13の下方であることが好ましい。これにより、最短の経路によってノズル27に給湯することができる。
【0018】
ノズル27は、図1に示したように、カウンター15の前面かつ上方に設けられている。上方とはカウンター15の天面近傍を意味しており、カウンター15の前面の高さ(上下幅)がノズル27の高さと大差ない場合には、単にカウンター15の前面にノズルを設けることでよい。
【0019】
またノズル27は、カウンター15の左右方向において、浴槽11から離れた側の端部近傍に配置している。浴室への出入口である扉19は浴室10において浴槽11の反対側にあり、ノズル27から噴出した湯水は、扉19近傍の床面12に対して効率的に散湯することができる。
【0020】
上記構成によれば、ノズル27をカウンター15とほぼ同じ高さに設置することとなり、床面12からある程度の高さを確保することができる。このことから散布した湯水が床面12に落下するまでの間に浴室内の空気を暖めることができ、また広範囲に湯を到達させることができる。また、床面からある程度の高さがあることから、体を洗う際の跳ね返りによってノズル27が汚れることを防ぐことができる。一方、ノズルの位置が高すぎないため、浴室の内壁を不必要に濡らすことがない。
【0021】
また、カウンター15はカラン13の直下にあるため、散湯ユニット21に湯水を供給する給湯管16a、給水管16bはカラン13に湯水を供給する配管を分岐、延長して形成でき、配管部材を短くすることができる。また様々な場所に設置する場合に比べてカウンター内の散湯ユニット21とカラン13との位置関係は変動しないため、配管部材の共通化を図ることができ、部品コストおよび設置コストを抑えることができる。
【0022】
さらに、ノズル27を浴槽11と反対側に配置したことにより、浴室10へ入室した際の足下をより効果的に暖めることができる。
【0023】
[実施例2]
本発明にかかる浴室の暖房装置の実施例2について説明する。図3は実施例2にかかる浴室および暖房装置の構成を説明する図、図4は実施例2の他の構成を説明する図である。上記実施例1と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。
【0024】
上記実施例1はカウンター15にノズル27を設けるよう説明したが、実施例2は浴室内の手摺りにノズルを設けた構成について説明する。
【0025】
図3に示すように、本実施例においてノズル29は、サポートバー17に設けられている。ノズル29は、サポートバー17のうち浴槽11と反対側、すなわち扉19に近い位置に配置している。ノズル29に湯水を供給する給湯管16は、サポートバー17の内部を通じて配管されている。給湯管16の上流側は浴室の壁面内部へと接続されており、不図示の電磁弁によって湯水を供給または停止される。
【0026】
サポートバー17は使用者が立ち上がるとき、または浴室内を移動する際に手摺りとして使用されるものであるため、床面から高さ60cm〜80cmの位置に設置される。従ってサポートバー17に設置されたノズル29は床面からの高さを確保することができ、ここから噴出した湯水は床面12に落下するまでの間に浴室内の空気を暖めることができると共に、広範囲に湯を到達させることができる。
【0027】
またサポートバー17の内部に給湯管16の配管を配置したことにより、浴室内における部材の増加を抑え、機能の追加にもかかわらず掃除のしやすさを担保し、また意匠的にも優れた美観を保つことができる。
【0028】
図4は、縦に配置された手摺り18にノズル29を設けた例を示す図である。このように構成することによっても、上記と同様の効果を得ることができる。
【0029】
[実施例3]
本発明にかかる浴室の暖房装置の実施例3について説明する。図5は実施例3にかかる浴室および暖房装置の構成を説明する図である。上記実施例1と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。本実施例は、ノズルを浴槽のエプロンに設けた構成について説明する。
【0030】
図5に示すように、ノズル30は、浴槽11のエプロン31の上部に配置している。給湯管16は、エプロン31の内側(エプロン31と浴槽11の間)に配置される。このように構成することによっても、ノズル30の床面からの高さを確保することができ、浴室の床面と空気を適切に暖めることができる。特にこの構成は、カウンター15と反対側に扉19が配置されており、カウンター15に設けたノズルでは入り口付近に湯を届かせにくい場合に有効である。
【0031】
[実施例4]
本発明にかかる浴室の暖房装置の実施例4について説明する。図6は実施例4にかかる浴室および暖房装置の構成を説明する図である。上記実施例1と説明の重複する部分については同一の符号を付して説明を省略する。本実施例は、ノズルを浴室の壁面に設けた構成について説明する。
【0032】
図6に示すように、ノズル32は浴室10の壁面33に設けられており、給湯管16は壁面33の内部を通るように配置されている。ノズル32の床面12からの高さHは、30cm〜100cmの範囲の高さに設定している。またノズル32は、浴室10への出入口である扉19の近傍に配置している。
【0033】
このように構成することによっても、ノズル32から噴出された湯水が床面12に落下するまでの間に空気を暖めることができ、浴室の床面と空気を適切に暖めることができる。またこの構成も実施例3と同様に、カウンター15と反対側に扉19が配置されており、カウンター15に設けたノズルでは入り口付近に湯を届かせにくい場合に有効である。
【0034】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施例について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、浴室の暖房装置として利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施例1にかかる浴室および暖房装置の構成を説明する図である。
【図2】暖房装置のノズル近傍を説明する図である。
【図3】実施例2にかかる浴室および暖房装置の構成を説明する図である。
【図4】実施例2の他の構成を説明する図である。
【図5】実施例3にかかる浴室および暖房装置の構成を説明する図である。
【図6】実施例4にかかる浴室および暖房装置の構成を説明する図である。
【符号の説明】
【0037】
10 …浴室
11 …浴槽
12 …床面
13 …カラン
14 …シャワー
15 …カウンター
16、16a …給湯管
16b …給水管
17 …サポートバー
18 …手摺り
19 …扉
20 …制御部
21 …散湯ユニット
22 …コントロールユニット
27、29、30、32 …ノズル
28a …電磁弁
28b …電磁弁
31 …エプロン
33 …壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルから散湯することによって浴室を暖める浴室の暖房装置において、
前記ノズルを水栓の下方に設置されたカウンターの前面かつ上方に配置したことを特徴とする浴室の暖房装置。
【請求項2】
前記ノズルは、前記カウンターの左右方向において、浴室の出入口に近い側の端部近傍に配置したことを特徴とする請求項1記載の浴室の暖房装置。
【請求項3】
前記ノズルには、前記水栓に給湯する給湯管を前記カウンターの内部で分岐して、該カウンターの内部を通じて給湯することを特徴とする請求項1記載の浴室の暖房装置。
【請求項4】
ノズルから散湯することによって浴室を暖める浴室の暖房装置において、
前記ノズルを浴室の壁面に設置された手摺りに設置したことを特徴とする浴室の暖房装置。
【請求項5】
前記ノズルには、前記手摺りの内部を通じて給湯することを特徴とする請求項4記載の浴室の暖房装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−89216(P2008−89216A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269144(P2006−269144)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000104973)クリナップ株式会社 (341)
【Fターム(参考)】