説明

浴室ユニット

【課題】 本発明は、水圧によりシャワーヘッドが移動しないだけの磁力を有しながら、幼年者・高齢者でも容易にシャワーヘッドを浴室壁から引き剥がすことができ、電気を使用しない浴室ユニットを提供することを目的とする。
【解決手段】 着磁金属を有した浴室壁と、この浴室壁に設置されるシャワーヘッドとを備え、上記シャワーヘッドが、浴室壁接着面と、この浴室壁接着面に配した磁石と、上記浴室壁接着面から浴室壁に対し突出する突出ピンと、この突出ピンを収納する収納凹部と、上記突出ピンの突出と収納とを選択する選択レバーとを有する浴室ユニット。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室ユニットに関し、特にシャワーヘッドを磁力により浴室壁に着磁させるものに関する。
【背景技術】
【0002】
浴室ユニットは、在来工法に比較し、工期を大幅に短くすることを目的として考え出されたもので、浴室を形成する部材を予め作成し、これら部材を施工現場に組み立てるようにしている。
【0003】
図1は、浴室ユニットを示す概略透視斜視図である。浴室ユニット1は、底面を防水パン2、側面を壁パネル3、上面を天井パネル4として閉空間を形成している。浴室ユニット1の内部には、防水パン2の上に載置された浴槽5、洗い場正面に設置されたカウンター6、このカウンター6の上方に付設させた水栓7、壁パネル3に固着させた鏡8、室内を照らす灯具9等があり、これらを短時間にて施工することができる。
防水パン2は、浴槽5を載置する浴槽載置防水パンと、洗い場を形成する洗い場防水パンとが、一体成形されたものと、分割されたものとがあり、分割されたものは、施工現場にて2つの防水パンを水密的に結合して使用する。
【0004】
ハンドシャワー10は、使用者が手で持つことなく使用できるように、シャワーフック11を浴室壁に取り付けてある。このシャワーフック11は、使用目的によりハンドシャワー10の高さを変えられるように、高さを変えて複数箇所に設けてある。更に、図示はしないが、上下方向にスライド移動させることが可能で、使用者の背丈に合わせ、任意の場所に固定することができるものもある。
また、近年では、特許文献1に示すように、個々人がシャワーフックをスライドさせる煩わしさをなくすために、浴室壁の裏面に鉄板を固定し、シャワーヘッドに永久磁石を付加することで、使用者が壁面の任意の位置に、自在にシャワーヘッドを固定できるものも提案されている。
【特許文献1】特開平09−075253号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載されるものは、シャワー使用時に水圧によりシャワーヘッドが移動しないように、強力な磁石が使用されており、使用者がシャワーヘッドを浴室壁より引き剥がす際に、かなりの力を要していた。
近年、少子高齢化が騒がれる中、浴室使用者は、必ずしも力がある人々ばかりではなく、むしろ力の弱い人々が増えてきている。
また、このような問題は、磁力を弱めることで解決するが、それでは水圧によりシャワーヘッドが移動してしまい、要をなさない。
更に、磁石は、必要時にのみ強力に着磁すれば良いことに着目し、電磁石を使用することも考えられるが、使用場所が水場であることから、電気を使用することは避けたい。
【0006】
本発明は、水圧によりシャワーヘッドが移動しないだけの磁力を有しながら、幼年者・高齢者でも容易にシャワーヘッドを浴室壁から引き剥がすことができ、電気を使用しない浴室ユニットを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下のものに関する。
(1)着磁金属を有した浴室壁と、この浴室壁に設置されるシャワーヘッドとを備え、上記シャワーヘッドが、浴室壁接着面と、この浴室壁接着面に配した磁石と、上記浴室壁接着面から浴室壁に対し突出する突出ピンと、この突出ピンを収納する収納凹部と、上記突出ピンの突出と収納とを選択する選択レバーとを有する浴室ユニット。
(2)項(1)において、突出ピンが複数である浴室ユニット。
(3)項(1)又は(2)において、浴室壁接着面が、その表面に天然ゴム又は合成ゴムの層を有する浴室ユニット。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シャワーヘッドを浴室壁から引き剥がす際に、選択レバーを操作することにより突出ピンを突出させることで、力をそれほど必用とせず、容易に作業を行うことができる。
突出ピンを複数とした場合は、選択レバーの力を複数の突出ピン突出力へと分散できるので、より操作しやすくなり、容易にシャワーヘッドを引き剥がすことができる。
浴室壁接着面が、その表面に天然ゴム又は合成ゴムの層を有する場合は、シャワーヘッドを浴室壁に着磁させる際に、強い磁力に引き寄せられても、浴室壁に傷をつけることがない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
本発明にて述べる浴室壁は、着磁金属を有していればその他限定されるものではない。より具体的に述べると、浴室壁は、鋼板製、合成樹脂製のものが使用でき、裏面には補強を行う石膏ボード、断熱を行うグラスウール、発泡スチレン、発泡ウレタン、真空断熱材等を配置することができる。
鋼板製の浴室壁は、鋼板自体が着磁金属なので、新たに着磁金属を配する必用はなく、その表面に防錆用のトップコート層、意匠性を上げる印刷層等を設けることもできる。
合成樹脂製の浴室壁は、意匠面を形成する表層の裏面に着磁金属を配置するか、合成樹脂に着磁金属粉末、着磁金属体を混ぜ合わせ表層を形成する。
尚、着磁金属としては、亜鉛メッキ鋼板、ステンレス(SUS430等)が着磁の性質があるので好ましい。
【0010】
本発明にて述べるシャワーヘッドは、湯水を複数の突出孔から噴出させるものであり、浴室壁接着面、浴室壁接着面に配した磁石、浴室壁接着面から浴室壁に対し突出する突出ピン、突出ピンを収納する収納凹部、突出ピンの突出と収納とを選択する選択レバー、とを備えている。
【0011】
浴室壁接着面は、浴室壁へと接着させる面であり、通常浴室壁が平面であることから、接触面積を広くするために平面形状であることが好ましい。また、浴室壁接着面のシャワーヘッド内での位置は、特に限定されるものではないが、使用者の利便性を考え、湯水を噴出する突出孔を設けている部位の裏面側となる位置が好ましい。
【0012】
磁石は、永久磁石を使用し、合金磁石、フェライト磁石、希土類磁石の何れでも用いることができるが、シャワーヘッドの脱着を繰り返し行うことから、強度の高い合金磁石又はフェライト磁石を用いることが好ましい。
磁石の磁力は、シャワーヘッドが水圧で移動しない程度に強ければよく、必ずしも必要以上に磁力が強く高価な合金磁石を用いる必用はない。
磁石は、先に述べた浴室壁接着面に配するが、必ずしも磁石が露出している必用はなく、浴室壁接着面の裏面に配置したり、磁石の表面にコート層を設けたりすることができる。
【0013】
突出ピンは、浴室壁接着面から浴室壁に対し突出するものであれば、その形状、材質、大きさ等、特に限定されるものではない。
突出ピンは、シャワーヘッドが浴室壁に着磁された状態で、収納凹部内に収納され、その先端が、浴室壁接着面の表面よりも内部側に位置する。シャワーヘッドを浴室壁から引き剥がす際は、選択レバーを操作することにより、突出ピンを突出させる。
突出ピンは、1つ又は複数設けられるが、壁から剥がれる力が分散できるのでより剥し易くなることから複数設けることが好ましい。
突出ピンの位置は、特に限定されるものではないが、浴室壁接着面の周辺であることが好ましい。これは、磁石が、一部でも壁から離れると、急速に着時しようとする力が弱まるためであり、磁石中央に突出ピンを位置させるよりも、周囲にて突出させる方が、弱い力で引き剥がすことができる。
図2は、本発明の突出ピンの配置例を示す浴室壁接着面の部分平面図である。各々について説明すると、(a)は1つの突出ピン21を浴室壁接着面19の隅角部に配置したものであり、(b)は2つの突出ピン21を浴室壁接着面19の一方の短辺側に並べて配置したものであり、(c)は同じく2つの突出ピン21を浴室壁接着面19の対向する隅角部に配置したものであり、(d)は3つの突出ピン21を浴室壁接着面19の長辺側に並べて配置したものである。
【0014】
突出ピンの先端は、浴室壁を傷つけないように、軟質部材が配置されることが好ましく、軟質部材としては、天然ゴム又は合成ゴムを用いることができる。
天然ゴムは、ゴムの木から採取したラテックス液に酸(蟻酸、酢酸など)を加えて固め、ローラーでシート状に引き延ばしたものを薫煙してできたRSS(シート・ゴム)、又は、カップに固まったゴムを集荷し、粉砕、洗浄、乾燥したあとブロック状に固めたTSR(技術的格付けゴム)等を用いることができる。
合成ゴムは、エチレン・プロピレンゴム(EPM又はEPDM)を好適に用いることができ、その他ブチルゴム、フッ素ゴム、シリコーンゴム等を用いることもできる。
ここで述べた天然ゴム及び合成ゴムは、本発明にて述べる浴室壁接着面の表面に被覆するものにも使用することができる。
【0015】
収納凹部は、先に述べた突出ピンを収納するものであり、スムーズに突出及び収納を繰り返すために、突出ピンの外周部と収納凹部の内周部との間に離間を持たせるようにする。
収納凹部の内面形状は、基本的に突出ピンの外面形状と相似形とするが、両者の離間を確保できるのであれば、必ずしも相似形である必用はない。
【0016】
選択レバーは、使用者が、突出ピンの突出及び収納を選択するレバーであり、電気的にではなく、機械的に突出ピンを移動させる。
選択レバーの配置は、特に限定されるものではないが、シャワーヘッドの湯水突出孔と浴室壁接着面との間の部分が操作しやすく好ましい。
【実施例】
【0017】
以下、本発明の実施例について図面を用いて説明する。
図3は、本発明に用いるシャワーヘッドの斜視図である。
シャワーヘッドの筐体12は、その底部にシャワーホース13が接続され、このシャワーホース13から供給された湯水を噴出孔14から噴出させる。
筐体12は、握り部15に対し噴出孔14を多数設けた噴出孔面16を屈曲させて設けてあり、シャワーヘッド17を壁パネル(図示省略)に着磁させた際に、好適な位置に湯水を噴出させられるようになっている。
【0018】
図4は、図3に示すシャワーヘッドの着磁状態を示す側面図である。
壁パネル3は、亜鉛鋼板の表面に意匠を施したものであり、裏面に石膏ボード18を貼り付けてある。筐体12は、浴室壁接着面19に固着したフェライト磁石により鋼板に着磁し、シャワー使用時でもシャワーヘッド17が動くことはない。
【0019】
図5は、図3に示すシャワーヘッドの裏面を示す斜視図である。
筐体12の側面には、選択レバー20が、左右に各1個(一対)設けてあり、詳細は後述するが、使用者が選択レバー20を押すことで、突出ピン21が壁パネルに向かい突出する。
フェライト磁石22は、平面視略正方形のものを2つ使用し、浴室壁接着面19に配置してある。フェライト磁石22の表面は、エチレン・プロピレンゴムの被膜を設けてあり、フェライト磁石22のある場所と無い場所とに係わらず、浴室壁への接着面を略平面となしている。
突出ピン21の位置は、2つのフェライト磁石22の中間位置にしてあり、水平方向に並べてある。
【0020】
図6は、図3に示すシャワーヘッドの内部構造を示す断面図であり、(a)は選択レバーを操作しない状態を示し、(b)は選択レバーを操作した(押した)状態を示す。
筐体12の内部は、選択レバー20の機構部分と、湯水通水路23とに分かれており、機構部分は、ばねを用いたプッシュスイッチとなっている。
選択レバー20は、ばね24により通常状態で突出しており、使用者がばね24の反発力よりも強い力で押し込むことにより、突出ピン21を押し出す。突出ピン21は、円柱形状をしており、一端を平面25とし、他端を斜面26としている。突出ピン21は、ばね27により通常状態で収納凹部28内に収納されているが、選択レバー20が押されると、その先端が斜面26を押し込み、結果として突出ピン21が押し出される。
使用者が選択レバー20を離すと、突出ピン21はばね27により、選択レバー20はばね24により、各々戻される。
【0021】
図7は、本発明の1実施例である浴室ユニットの概略透視斜視図である。
浴室ユニット1は、防水パン2の周囲に、図示を省略するフレームに係合させて壁パネル3を立設し、その上に天井パネル4を載置して浴室閉空間を形成している。浴室内部は、浴槽5が設置され、洗い場にカウンター6、その上方に水栓7、鏡8、灯具9を鉛直方向に直線状に配置している。
壁パネル3は、鋼板製であり、裏面には図示を省略するがガラスウールを配置し、断熱を行っている。シャワーヘッド17は、図3乃至図5に示すものを使用しており、フェライト磁石が、使用者の選択する任意高さの壁パネル3に着磁し、湯水を流しても位置ずれすることはない。
シャワーホースは、水栓7とシャワーヘッド17とを接続しているが、その長さを水栓7からこの水栓7を固定している壁パネル3の最上部までの長さと等しくしてあり、シャワーヘッド17を壁パネル3の最上部に着磁させることで、打たせ湯として使用することができる。
但し、シャワーホースの長さは、水栓7が固定してある壁パネル3と対向する位置にある壁パネル3に、シャワーヘッド17を着磁させる程には長くしていない。これは、洗い場から浴槽への使用者動線を、シャワーホースが遮らないようにするためである。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】従来例を示す浴室ユニットの概略透視斜視図である。
【図2】本発明に用いるシャワーヘッドの突出ピン配置例を示す部分平面図であり、(a)は突出ピンが1つのもの、(b)は突出ピンが2つで水平配列のもの、(c)は突出ピンが2つで対向配列のもの、(d)は突出ピンが3つで垂直配列のものを示す。
【図3】本発明に用いるシャワーヘッドの斜視図である。
【図4】図3に示すシャワーヘッドの着磁状態を示す側面図である。
【図5】図2に示すシャワーヘッドの裏面を示す斜視図である。
【図6】図2に示すシャワーヘッドの内部構造を示す断面図であり、(a)は選択レバーを操作しない状態を示し、(b)は選択レバーを操作した(押した)状態を示す。
【図7】本発明の1実施例である浴室ユニットの概略透視斜視図である。
【符号の説明】
【0023】
1…浴室ユニット、2…防水パン、3…壁パネル、4…天井パネル、5…浴槽、6…カウンター、7…水栓、8…鏡、9…灯具、10…ハンドシャワー、11…シャワーフック、12…筐体、13…シャワーホース、14…噴出孔、15…握り部、16…噴出孔面、17…シャワーヘッド、18…石膏ボード、19…浴室壁接着面、20…選択レバー、21…突出ピン、22…フェライト磁石、23…湯水通水路、24…ばね、25…平面、26…斜面、27…ばね、28…収納凹部、29…選択レバー、30…突出ピン、31…フェライト磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着磁金属を有した浴室壁と、この浴室壁に設置されるシャワーヘッドとを備え、上記シャワーヘッドが、浴室壁接着面と、この浴室壁接着面に配した磁石と、上記浴室壁接着面から浴室壁に対し突出する突出ピンと、この突出ピンを収納する収納凹部と、上記突出ピンの突出と収納とを選択する選択レバーとを有する浴室ユニット。
【請求項2】
請求項1において、突出ピンが複数である浴室ユニット。
【請求項3】
請求項1又は2において、浴室壁接着面が、その表面に天然ゴム又は合成ゴムの層を有する浴室ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−28140(P2009−28140A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−193228(P2007−193228)
【出願日】平成19年7月25日(2007.7.25)
【出願人】(301050924)株式会社日立ハウステック (234)
【Fターム(参考)】