説明

浴室用排水トラップ

【課題】 浴室用排水トラップに取り付けられる逆流防止用の弁部材を簡素化することを目的とする。
【解決手段】 洗い場側および浴槽側からの排水が流入し、洗い場側の床下に配設された溜水部材と、洗い場側から流入した排水が浴槽側に逆流しないように、且つ浴槽側からの排水を溜水部材内に流入可能とする弁部材と、を備え、弁部材に形成された係合突部を、溜水部材に形成された係合溝に係合させることにより、弁部材が溜水部材に対して固定されていることを特徴とする浴室用排水トラップを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴室ユニットに設けられる浴室用排水トラップに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、浴室ユニットにおける洗い場の床下には排水トラップが設けられている。図6に示すように、排水トラップ100は、溜水可能な溜水部材110と、溜水部材110内に位置するように取り付けられる封水筒190とによって封水が形成される。封水によって、下水側からの異臭などが浴室内に進入することを防止できる。
【0003】
また、溜水部110内に浴槽などからの排水が流入する方式の浴室用排水トラップには、溜水部材110の側面に形成された浴槽側接続口111に逆流防止用の弁部材120が取り付けられるものがある。この弁部材120は、洗い場側から溜水部材110内に流入した排水が浴槽側接続口111から浴槽側に逆流しないように、且つ浴槽側からの排水が溜水部材110内に流入可能とするために開閉可能な弁部122を備えている。この弁部材120は溜水部材110内の水の流れによって、位置が変わらないように、溜水部材110に対して強く固定される必要がある。
【0004】
特許文献1および図6に示すように、従来の弁部材120は、硬質樹脂からなる管状に形成された挿入筒部121と、挿入筒部121に対して固定された伸縮可能な軟質樹脂からなる弁部122との2部材から構成されており、挿入筒部121を浴槽側接続口111内に嵌挿することで、弁部材120を溜水部材110に固定していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−152508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、弁部材120を浴槽側接続口111内に嵌挿して固定する方式では、部品点数が増え、構造が複雑化するという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決するために、本発明によれば、洗い場側および浴槽側からの排水が流入し、前記洗い場側の床下に配設された溜水部材と、前記洗い場側から流入した排水が前記浴槽側に逆流しないように、且つ前記浴槽側からの排水を前記溜水部材内に流入可能とする弁部材と、を備え、前記弁部材に形成された係合突部を、前記溜水部材に形成された係合溝に係合させることにより、前記弁部材が前記溜水部材に対して固定されることを特徴とする浴室用排水トラップを提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、浴室用排水トラップに取り付けられる逆流防止用の弁部材を簡素化することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の浴室用排水トラップの全体を示す断面図である。
【図2】本発明の溜水部材と弁部材との取り付け状態を示す断面図である。
【図3】(a)本発明の弁部材を示す正面図である。(b)本発明の弁部材を示す斜視図である。
【図4】本発明の溜水部材を示す平面図である。
【図5】本発明の溜水部材と弁部材との取り付け状態を示す斜視図である。
【図6】従来の浴室用排水トラップの全体を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明におけるユニットバスは、図1に示すように、洗い場側の下部に設けられた排水トラップ1と、浴槽側の下部に設けられた浴槽排水部4と、を備える。排水トラップ1および浴槽排水部4は、それぞれ洗い場側および浴槽側の床部を構成する防水パン9の下部に固定されている。また、浴槽排水部4と排水トラップ1とは接続管部31を介して接続されており、浴槽側および洗い場側の排水が、排水トラップ1内で合流する方式である。排水トラップ1内に導かれた排水は、排水管32を経由して下水側に排出される。
【0011】
排水トラップ1は、洗い場側に位置する床パン9の下部に配置される溜水部材10と、床パン9の上部に配置される締め付けフランジ7とによって、上下から床パンを間に挟んだ状態で締め付け固定される。また、溜水部材10内に配置されるように封水筒9が締め付けフランジ7に対して締め付け固定されている。封水筒9の下端は、溜水部材10の底面から間隔を空けた上方位置に配置される。溜水部材10と封水筒9とによって、排水トラップ1に封水が形成される。
【0012】
また、排水トラップの上部にはヘアキャッチャー8が着脱可能に取り付けられており、洗い場側から髪の毛などの固形物が溜水部材10内に入りこまないようになっている。
【0013】
溜水部10の側面には、接続管部31が接続される浴槽側接続口11と、排水管32が接続される排水管側接続口12とが形成されている。詳細は後述するが、浴槽側接続口11には、洗い場側から流入した排水が浴槽側に逆流しないように、且つ浴槽側からの排水を溜水部材10内に流入可能とする弁部材2が取り付けられている。尚、弁部材2は、溜水部材10内の溜水部に浸水する位置に取り付けられている。ここで言う溜水部とは、溜水部材10内における水が溜まっている部分を指す。
【0014】
浴槽排水部4は、浴槽側に位置する床パン9の下部に配置されており、上述した排水トラップ1と同様に締め付けフランジとによって、床パン9に締め付け固定されている。この浴槽排水部4には、浴槽5内からの排水と、浴槽5の下部に位置する浴槽5側の床パン9からの排水の両方が流入する。また、浴槽排水部4側の締め付けフランジには封水筒が取り付けられており、浴槽排水部4と封水筒とによって、浴槽側にも封水が形成されている。
【0015】
上述した排水トラップ1と浴槽排水部4における排水の流れについて、以下に説明する。
【0016】
まず、洗い場側からの排水は、ヘアキャッチャー8および溜水部材10内の溜水部を順に経由して、溜水部から溢れた排水が排水管32に排出される。このとき、洗い場側から瞬間的に大量の排水が溜水部内に流れ込んだ場合であっても、浴槽側接続口11に取り付けられた弁部材2が水圧を受けて閉弁しているため、浴槽排水部側に逆流することはない。
【0017】
一方、浴槽側(浴槽および浴槽側の防水パン)からの排水は、浴槽排水部4、接続管部31、および溜水部材10内の溜水部を順に経由して、溜水部から溢れた排水が排水管32に排出される。この時、浴槽側接続口11に取り付けられた弁部材2は、水圧を受けて開弁しているため、浴槽排水部4内の排水を排水トラップ1の溜水部材10内に導くことができる。
【0018】
次に、本発明における弁部材2について、詳しく説明する。
【0019】
図3に示すように、弁部材2は、薄肉板状に形成された弁部21と、弁部21と一体で形成され、弁部21に対して厚肉に形成された係合突部22とを備える。弁部21および係合突部22はゴムなどの軟質樹脂によって一体形成されている。弁部21は、浴槽側接続口11を開閉するために、少なくとも浴槽側接続口11よりも大きく形成されている。
【0020】
係合突部22は、弁部21の上端から水平方向に延在した後、下方に突出した係合基部23と、係合基部23から更に下方に突出した爪部24とを備えている。弁部材2の係合突部22は、後述する溜水部材10の係合溝15内に嵌装され、さらに爪部24が係合溝15の下端に係止されることにより、弁部材2を溜水部材10に対して固定している。
【0021】
次に、本発明における溜水部材10について詳しく説明する。
【0022】
図4に示すように、浴槽側接続口11に位置する溜水部材10内側面は、他の内側面に対して内方側に膨出した膨出部14を備えている。膨出部14の上面に、弁部材10の係合突部22が嵌装される係合溝15が形成されている。係合溝15は、上側係合溝部16および、その下方に連続する下側係合溝部17とからなり、下端は浴槽側接続口11の内面まで貫通されている。上側係合溝部16内に弁部材2の係合基部23が嵌装され、下側係合溝部17内に弁部材2の爪部24が嵌装される。図2に示すように、爪部24が浴槽側接続口11の内面に係止されることにより、弁部材2を溜水部材10に対して強固に固定している。
【0023】
また、弁部材10はゴム等の伸縮可能な軟質樹脂からなる成形品であり、且つ溜水部材10の係合溝15内にきつく嵌装されているため、弁部材2の係合突部22によって係合溝15は、略水密的に塞がれることとなる。つまり、係合突部22の少なくとも一部の断面が、対応する係合溝15の断面よりも大きく形成されている。係合溝15を水密的に塞ぐことにより、洗い場側から溜水部材10内に流れ込んだ排水が、係合溝15から浴槽側に逆流することを防止できる。また、弁部材2が溜水部材10に強固に取り付けられるため、洗い場側および浴槽側から大量の排水が溜水部材10内に流れ込んだ場合であっても、水流によって、弁部材2が抜け外れる虞がない。
【0024】
また、図2に示すように、係合突部22の先端が浴槽側接続口11内に突出するように弁部材2は取り付けられている。このことにより、浴槽排水口11内に手を入れて、係合突部22の先端を上側に押し上げることにより、強固に取り付けられている弁部材2を容易に取り外すことが可能となる。弁部材2を容易に取り外せることにより、弁部材2のメンテナンスや排水トラップ1の清掃が容易になるという効果を奏する。
【0025】
また、係合突部22は、少なくとも弁部21よりも厚肉に形成されているため硬度が大きい。よって、係合突部22の先端を上側に押し上げることにより、強固に取り付けられている弁部材2をさらに容易に取り外すことが可能となる。同時に、弁部材2を取り付ける際にも、硬度を大きくすることにより、爪部24に力がかかりやすくなるため、係合突部22を係合溝15に係止させやすくできるという利点も奏する。
【0026】
係合溝15は、溜水部材10の成形後に後加工することもできるが、生産性が悪いという問題がある。そこで、本発明では、図4に示すように、係合溝15が膨出部14の上面に形成されており、係合溝15の全体が、膨出部14の上方に位置する溜水部材10の内側面より内方側に形成させているため、溜水部材10の内面を形成するための上側金型で係合溝15も同時に成形している。この製法によれば、後加工する場合に比べて、生産性に優れるという効果を奏する。
【0027】
以上の通り、本発明によれば、弁部材2の係合突部を溜水部材10の係合溝に係合させることで固定している点で、従来に比べて構成を簡素化できるという効果を奏する。
【0028】
また、係合突部22の先端が、溜水部材10の内面から突出するように取り付けられているため。溜水部材10内から手で係合突部22の先端を押し上げるという簡単な操作で、容易に弁部材2を取り外しできるという効果を奏する。
【0029】
また、弁部材2の全体が伸縮可能な軟質樹脂材料から形成できるため、部品点数が削減でき、コストを低く抑えることが可能になるという効果を奏する。
【0030】
また、係合突部22によって係合溝15が水密的に取り付けられているため、係合溝15から浴槽側への排水の逆流を防止できるという効果を奏する。
【0031】
また、弁部21に比べて係合突部22の方が、硬度が大きくなるように厚肉に形成されているため、着脱作業が容易になるという効果を奏する。
【0032】
また、係合突部22は、爪部24によって係止されているため、弁部材2がより外れにくく強固に固定することが可能になるという効果を奏する。
【0033】
また、係合溝15が、浴槽側接続口11の膨出部14の上面に形成されているため、溜水部材10の内面を形成するための上側金型で同時に係合溝15も形成することが可能になるため生産性を向上できるという効果を奏する。
【符号の説明】
【0034】
1…排水トラップ、10…溜水部材、11…浴槽側接続口、12…排水管側接続口、14…膨出部、15…係合溝、16…上側係合溝、17…下側係合溝、2…弁部材、21…弁部、22…係合突部、23…係合基部、24…爪部、31…浴槽水配管、32…排水配管、4…浴槽排水部、5…浴槽、51…排水栓、6…浴槽エプロン、7…締め付けフランジ、8…ヘアキャッチャー、9…防水パン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
洗い場側および浴槽側からの排水が流入し、前記洗い場側の床下に配設された溜水部材と、
前記洗い場側から流入した排水が前記浴槽側に逆流しないように、且つ前記浴槽側からの排水を前記溜水部材内に流入可能とする弁部材と、を備え、
前記弁部材に形成された係合突部を、前記溜水部材に形成された係合溝に係合させることにより、前記弁部材が前記溜水部材に対して固定されることを特徴とする浴室用排水トラップ。
【請求項2】
前記係合突部の先端が、前記溜水部材の内部に突出するように固定されていることを特徴とする請求項1記載の浴室用排水トラップ。
【請求項3】
前記弁部材は、全体が伸縮可能な軟質樹脂材料から形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の浴室用排水トラップ。
【請求項4】
前記係合突部は、前記係合溝に対して水密的に固定されていることを特徴とする請求項3に記載の浴室用排水トラップ。
【請求項5】
前記弁部材は、開閉可能な弁部とを備え、前記係合突部の方が少なくとも前記弁部よりも硬度が大きくなるように形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の浴室用排水トラップ。
【請求項6】
前記係合突部には、爪部を備えていることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の浴室用排水トラップ。
【請求項7】
前記係合溝は、上下方向に形成されており、前記係合溝よりも上方に位置する前記溜水部材の内側面よりも内方側に形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の浴室用排水トラップ。
【請求項8】
前記溜水部材の側面には浴槽側からの排水管が接続される浴槽側接続口が形成されており、前記浴槽側接続口が位置する前記溜水部材の内側面は内方側に膨出した膨出部が形成されており、前記膨出部の上面に前記係合溝が形成され、前記係合突部の端部が前記浴槽側接続口の内部に突出するように固定されていることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の浴室用排水トラップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−242462(P2010−242462A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95675(P2009−95675)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】