説明

浴室部材の取付け構造

【課題】浴室の壁に、浴室部材を設置する浴室部材の取付け構造を提供する。
【解決手段】浴室1の壁2の設置孔2a外側から係合溝29を有する外側取付部材30を装着し、浴室部材に設けられた内側取付部材22の係合部20bを係合させる。係合溝29は、開口部分に溝幅を狭めるフランジ部24が設けられており、フランジ部24の内側には傾斜面24aが形成されている。フランジ部24の円周上の4箇所に切欠部が設けられている。これらの切欠部から係合部20bを係合溝29内に侵入させ、さらに係合部20bをフランジ部24の傾斜面24aに沿って移動させ、くさび効果で係合部20bを係合溝29内で停止させ、浴室部材を浴室1の壁2に固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テレビ等の電気製品、時計等の浴室部材を浴室の壁に取り付ける浴室部材の取付け構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、浴室でテレビ等の電気製品を使用することができる発明が提案されている。例えば、特許文献1には、入浴者がテレビを見ることが出来る発明(考案)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開平5−37194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に示される発明(考案)によって、浴室でテレビを見たり音楽を聴きたいという要望のあることが理解できる。しかし、種々の浴室部材を浴室の壁に取り付けるには問題がある。即ち、浴室はユニット化が進み、浴室の壁はテレビ等の電気製品を支持する仕様ではなくなってきている。又、湿気に弱い電気製品を設置するには浴室外から浴室内に配線する配線構造も適切に設ける必要がある。
【0005】
そこで本発明は、浴室の壁に、浴室部材を浴室の壁を損傷する恐れが少なく確実に取り付ける取付け構造を提供すると共に、浴室部材が電気製品の場合は浴室外から浴室内への配線が容易にできる構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するための請求項1の発明は、浴室内の壁に浴室部材を取り付ける浴室部材の取付け構造であって、浴室部材が電気製品の場合について述べれば、浴室部材を操作する制御部が設置されており、前記浴室の壁には、制御部に接続される配線を通す設置孔が設けられており、前記浴室部材には内側取付部材が設けてあり、浴室の外側には外側取付部材が設けてあり、内側取付部材と外側取付部材とが前記浴室の孔を介して結合して浴室部材が浴室の壁に固定され、内側取付部材と外側取付部材の一方には、相手側へ突出する突出部と、当該突出部と直交する係合部とが設けられており、内側取付部材と外側取付部材の他方には、円弧状の係合溝が設けられており、前記係合溝の開口部分には溝幅を狭めるフランジ部が設けてあり、前記フランジ部は係合溝よりも中心角が小さい円弧状であって係合溝の開口の一部が、内側取付部材の係合部が通過可能な大きさを呈する切欠部を有しており、前記フランジ部における係合溝と対向する面は、切欠部側が最も係合溝の底から遠い傾斜面を構成しており、前記係合部が、前記切欠部から係合溝内に入り、さらに内側取付部材を回転させると、係合部がフランジ部の傾斜面に沿って相対移動し、外側取付部材に対して内側取付部材が特定の回転位置まで回転すると、浴室部材が浴室の壁に当接して停止することを特徴とする浴室部材の取付け構造である。
【0007】
請求項1の発明では、浴室の壁に設けた設置孔において、浴室部材に設けた内側取付部材と浴室の外側に配置した外側取付部材とを係合させることにより、浴室部材を浴室の壁に固定する。その際、内側取付部材と外側取付部材とが、一方側に設けた係合部が、他方側に設けた係合溝に係合し、内側取付部材を外側取付部材に対して相対的に回転させることにより、係合部が係合溝内を移動する。また、係合溝の開口に設けられたフランジ部の傾斜面に沿って、係合部が相対移動するので、内側取付部材を備えた浴室部材が、浴室の壁に接近する。そして、外側取付部材に対して内側取付部材が特定の回転位置まで回転すると、浴室部材が浴室の壁に当接して停止するので、浴室部材の水平度を容易に保つことができる。
【0008】
内側取付部材と外側取付部材とが係合して一体化するので、例えば、浴室部材である電気製品の重量は、浴室の壁に設けた孔全体で支持されることになり、その結果、ネジ止めするよりも壁に荷重が集中しにくく、荷重は孔全体に分散されるので壁が損傷し難いものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の浴室部材の取付け構造では、浴室の壁に電気製品、時計、設置台等の浴室部材を簡易な構造で取付けできる。また、浴室部材の固定に、浴室の壁に直接にネジを使用しないので、浴室部材の重量が、局部的に集中して作用せず、浴室の壁に設けた設置孔は、孔全体で重量を支持することができるので、浴室の壁が損傷し難いものである。すなわち、ユニットバスの壁でも浴室部材の重量を十分に支持させることができる。ここで、浴室部材は上述した電気製品、時計、設置台等に限定されるものでなく、浴室の壁に設置されて用いられるものを意味するものである。また、浴室の壁に設けた設置孔は、浴室部材がテレビ、音響機器等の電気製品である場合、浴室外から浴室内に配線する必要があるが、この場合に、設置孔を通じて配線でき、配線を損傷させる恐れが少なく、適切な配線が行える。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明を実施した浴室用電気製品の設置台の取付け構造を示す断面図である。
【図2】(a)は取付け構造の主要部の分解図であり、(b)は(a)において配線ユニットを設置台に取り付け、さらに外側取付部材を浴室の壁の設置孔に装着した状態を示す断面図であり、(c)は設置台の内側取付部材と浴室の壁の設置孔に固定した外側取付部材とを係合させた際の断面図であり、(d)は(c)において外側取付部材に対して内側取付部材を回転させて、浴室の壁に設置台を固定した状態の断面図である。
【図3】(a)は設置台の裏面図であり、(b)は設置台を外側取付部材に係合可能な姿勢に回転させた状態の裏面図であり、(c)は浴室の内壁側から見た設置孔に外側取付部材が取り付けられた状態の正面図であり、(d)は(c)の外側取付部材に内側取付部材が固定された際の内側取付部材に設けた係合部の位置を示す外側取付部材の正面図である。
【図4】外側取付部材の係合溝に内側取付部材の係合部が係合する様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の実施例を説明する。図1は、本発明を実施した浴室部材の取付部分を示している。また、図2(a)〜(d)は、各々図1の主要部Aを示している。図1に示すように浴室1は、壁2によって外部19と仕切られている。浴室1は、ユニットバスであり、したがって壁2は建造物の壁と比べてかなり薄く、強度も弱い。この壁2には設置孔2aが形成されている。浴室部材であるテレビ7、或いは浴室部材である設置台3は浴室1の壁2に固定される。設置台3を壁2に固定する部材として、内側取付部材22と外側取付部材30とが使用される。以下、内側取付部材22、外側取付部材30、設置台3の順に各構成を説明する。
【0012】
内側取付部材22は、設置台3の側面3cに設けられた孔22aの周囲に配置される係合部材20と水密保持部材21とで構成されている。水密保持部材21は円筒形状を呈しており、側面3cから環状に起立している。水密保持部材21よりも外側には、係合部材20が設けられている。
【0013】
係合部材20は、側面3cから起立する突出部20aと、突出部20aと連続し且つ突出部20aと直交する係合部20bを有している。図3(a)に示すように係合部材20は、同一円周上の4箇所に配置されている。また、係合部20bは、円周の外向きに延びている。
【0014】
外側取付部材30は、円板状の平板33と、平板33に対して起立する起立部23,25,26とを有している。平板33には、孔30aが設けてある。この孔30aに沿って起立部26が環状に起立している。また、平板33における起立部26の外側には、環状の起立部25が設けてある。その結果、起立部25,26の間には、溝27が形成されている。溝27にはOリング28が装着されている。図3(c)では、Oリング28の一部を破断させて描写している。
【0015】
さらに平板33における起立部25よりも外側には、環状の起立部23が設けられている。起立部23には、起立部23と直交する内向きのフランジ部24が設けられている。図3(c)に示すようにフランジ部24は、等間隔に4つ設けられている。すなわち、各フランジ部24の間には、切欠部34が設けられている。起立部23,25の間には係合溝29が形成されている。フランジ部24における係合溝29の底と対向する部分には、傾斜面24aが形成されている。傾斜面24aは、切欠部34側から徐々にフランジ部24の肉厚が厚くなるように傾斜している。すなわち、図3(d)に破線で示す位置で係合部材20が停止するように、フランジ部24の肉厚が設定されている。
【0016】
次に、内側取付部材22と外側取付部材30の装着の仕方を説明する。図2(b)に示すように、外側取付部材30は、壁2の設置孔2aに対して浴室1の外側から装着される。すなわち、起立部23の外周面が設置孔2aにちょうど係合している。その結果、壁2の設置孔2aが、見かけ上は外側取付部材30の孔30aとなっており、配線に使用することができるものである。また、図2(b)に示すように、載置台3の側面3cに設けられた内側取付部材22には、アダプタ18を介して配線ユニット12が装着されている。
【0017】
そして、図2(c)及び図3(c)に示すように、内側取付部材22の係合部20bを、外側取付部材30の切欠部34(図3(d),図4)に位置合わせして係合部20bを係合溝29に係合させる。すなわち、浴室部材である設置台3を図3(b)に示すように右側に45度傾け、各係合部20bを天地及び水平の位置に配置し、各係合溝29に係合させる。
【0018】
さらに図3(a)に示すように、設置面3aが水平姿勢となるように設置台3を左方へ45度回転させる。その結果、図2(d)及び図3(d)に示すように、内側取付部材22の各係合部20bが、フランジ部24の傾斜面24aに沿って係合溝29内を摺動移動し、停止する。すなわち、内側取付部材22の係合部20bは、もはやそれ以上に係合溝29内を移動することができず、さらに傾斜面24aのくさび効果によって、係合部20bが係合溝29内で固定される。
【0019】
また、このとき、内側取付部材22の水密保持部21が、外側取付部材30の溝27内に侵入し、水密保持部21の環状の先端がOリング28を押圧する。その結果、内側取付部材22と外側取付部材30の間で水密が確保される。
【0020】
設置面3aが水平姿勢となるように、設置台3が壁2に固定されると、設置面3a上にテレビ7(電気製品)を配置する。なお、防水機能を有していないテレビ7(電気製品)を設置台3上に配置する場合には、例えばアクリル製の透明ケース6でテレビ7を覆う。テレビ7の配線は、図示していないが、設置台3内に収容されて、配線ユニット12と同様に外部19に導かれている。そして、制御部4のスイッチ5を操作すると、テレビ7(電気製品)を操作することができる。
【0021】
上述の例では、内側取付部材22を載置台3の側面3cに一体化した場合を示したが、内側取付部材22を設置台3に対して取り外しできるように固定してもよい。また、内側取付部材22に係合溝29を設け、外側取付部材30に係合部材20を設けてもよい。すなわち、内側取付部材22に設けた構成と、外側取付部材30に設けた構成とを互いに入れ替えることが可能である。
次に一事例である設置台3について説明する。設置台3は直方体形状を呈しており、設置台3はテレビ7であってもよいもので、電気製品である場合。下記のように使用することができるものである。即ち、壁2に当接する側面3cには、孔22a(図2(a))が設けてある。また、側面3cと反対側の側面3bには、制御部4のスイッチ5を露出させる孔が設けてある。設置台3の内部には、補強板32が設けられている。補強板32には、アダプタ17を介して制御部4が固定されている。すなわち、補強板32には孔32aが設けてあり、孔32aにアダプタ17が、例えばネジ止め(図示せず)されている。また、孔22aにはアダプタ18が、例えばネジ止め(図示せず)されている。
【0022】
アダプタ17,18には配線ユニット12が挿通されている。すなわち、アダプタ17は、配線ユニット12に対して収縮チューブ15で水密を保ち固定されており、同様にアダプタ18は、配線ユニット12に対して収縮チューブ16で水密を保ち固定されている。その結果、アダプタ17は、配線ユニット12の先端部に固定され、アダプタ18は配線ユニット12の後端部分に固定されている。すなわち、アダプタ17,18によって配線ユニット12は、設置台3内に固定されている。
【0023】
配線ユニット12内には、硬質チューブ14や、電源ケーブルや各種信号線等の配線8が配設されている。硬質チューブ14は、制御部4の配置領域と、浴室1の外部19とを連通させて、制御部4が結露するのを防止する機能を有している。これにより、制御部4の電子部品の接触不良や腐食等を回避することができる。
【0024】
また、配線8の一端には端子9が接続されており、他端には制御部4の制御基板4aに接続されている。さらに、端子9には、配線11が接続された端子10が取り外し可能に接続されている。その結果、スイッチ5を操作することによって、制御部4から制御信号を出力することができる。
【0025】
浴室部材である設置台3の側面3cには、内側取付部材22とパッキン31が設けられている。パッキン31は環状であり、内側取付部材22の周囲に配置されている。そして、上述したように設置台3が壁2に当接した際に、パッキン3によって壁2と設置台3の間の水密が確保される。
【符号の説明】
【0026】
1 浴室
2 壁
2a 設置孔
3 設置台(浴室部材)
3a 設置面
4 制御部
7 テレビ(浴室部材)
8 配線
20 係合部材
20b 係合部
22 内側取付部材
24 フランジ部
24a 傾斜面
29 係合溝
30 外側取付部材
34 切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴室内の壁に浴室部材を設置する浴室部材の取付け構造であって、
前記浴室部材には内側取付部材が設けてあり、浴室の外側には外側取付部材が設けてあり、内側取付部材と外側取付部材とが前記浴室の孔を介して結合して浴室部材が浴室の壁に固定され、
内側取付部材と外側取付部材の一方には、相手側へ突出する突出部と、当該突出部と直交する係合部とが設けられており、
内側取付部材と外側取付部材の他方には、円弧状の係合溝が設けられており、前記係合溝の開口部分には溝幅を狭めるフランジ部が設けてあり、前記フランジ部は係合溝よりも中心角が小さい円弧状であって係合溝の開口の一部が、内側取付部材の係合部が通過可能な大きさを呈する切欠部を有しており、
前記フランジ部における係合溝と対向する面は、切欠部側が最も係合溝の底から遠い傾斜面を構成しており、
前記係合部が、前記切欠部から係合溝内に入り、さらに内側取付部材を回転させると、係合部がフランジ部の傾斜面に沿って相対移動し、
外側取付部材に対して内側取付部材が特定の回転位置まで回転すると、設置台が浴室の壁に当接して停止することを特徴とする浴室部材の取付け構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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