説明

浴槽及び浴槽の設計方法

【課題】浴槽を使用、排水により膨張、収縮を繰り返しても浴槽の脚部と底面に掛かる応力集中を軽減できる浴槽を提供する。
【解決手段】脚部2(i)は短手方向DS2を有し、組合せC(i,j)は、i番目の脚部2(i)とj番目の脚部2(j)との組合せで、i番目の脚部2(i)を基準とし、距離L(i,j)は、組合せC(i,j)における脚部2(i)、2(j)の中心P(1)、P(2)間を結ぶ距離である。方向D(i,j)は、組合せC(i,j)の中心P(1)、P(2)間を結ぶ方向で、角度A(i,j)は、i番目の脚部2(i)の短手方向DS2と方向D(i,j)の角度であり、距離L(i,j)の最大値を与える組合せC(i,j)に関連する角度A(1,3)を、最大値を与えない組合せC(i,j)に関連する角度A(i,j)より小さくするよう脚部2(i)の短手方向DS2が選択され、nは3以上の数で、i及びjは1からnまでの数とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水平方向に広がる底部と、該底部から下方に突出する脚部とを備える、浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、浴室内の床上に配置される浴槽を開示している。このような浴槽は、床上に浴槽本体を支持するための脚部を有している。
【0003】
図10は、下方から見た従来の浴槽901の斜視図である。浴槽901は、底部903及び4つの脚部902を有している。底部903の形状は、平面視において概ね四角形形状である。4つの脚部902は、底部903の対角線上に、底部903の中心位置に対して対称に配置されている。脚部902の形状は、平面視において概ね長方形である。脚部902の長手方向が底部903の短手方向と平行となるように、脚部902は取り付けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−156816号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
浴槽は温度変化によって熱膨張/熱収縮する。例えば、温水が浴槽内に満たされた後、その温水が排水される場合、浴槽は膨張した後収縮する。
【0006】
図10に示される浴槽901において、脚部902は床面に接している。底部903が膨張/圧縮するときに、底部3の各部は変位する。このため、脚部902は底部903と一緒に移動しようとする。しかし、脚部902と床面との間に摩擦力が発生し、この摩擦力が脚部902の移動を抑制するように力を及ぼす。つまり、摩擦力が、底部903において2つの脚部902間に挟まれる領域の膨張/圧縮を抑制する。底部903において2つの脚部902によって拘束される領域に、負荷が掛かる。特に、脚部902の周辺の底部903に応力集中が発生する。
【0007】
応力集中の発生する箇所は、破壊の起点となりうる。浴槽の破壊を防止するために、浴槽の強度を高めることが考えられる。しかし、浴槽の強度を高めるために、浴槽の材料を変更したり、浴槽の厚みを増加させると、浴槽の製造コストの増大を招いてしまう。
【0008】
そこで、本発明は、底部に掛かる応力集中を低減できる浴槽を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る浴槽は、水平方向に広がる底部と、該底部から下方に突出するn個の脚部とを備える、浴槽であって、前記脚部は、平面視において短手方向を有しており、組合せC(i,j)は、i番目の前記脚部とj番目の前記脚部との組合せであり、i番目の脚部を基準としており、距離L(i,j)は、前記組合せC(i,j)における前記脚部の中心間を結ぶ距離であり、方向D(i,j)は、前記組合せC(i,j)における前記中心間を結ぶ方向であり、角度A(i,j)は、i番目の前記脚部の短手方向と前記方向D(i,j)とのなす角度であり、前記距離L(i,j)の最大値を与える前記組合せC(i,j)に関連する前記角度A(i,j)を、前記最大値を与えない前記組合せC(i,j)に関連する前記角度A(i,j)よりも小さくするように、前記各脚部の前記短手方向が選択されており、前記nは3以上の数であり、前記i及びjは、1からnまでの数である。
【0010】
好ましくは、前記最大値を与える前記組合せC(i,j)に関連する前記角度A(i,j)は、略0度である。
【0011】
好ましくは、前記底部は、平面視において、四角形又は四隅に丸みを有する四角形形状を有しており、4つの前記脚部の前記中心が、前記底部の2つの対角線上に、前記底部の中心に対して対称に設けられている。
【0012】
好ましくは、前記脚部は、平面視において、四隅に丸みを有する長方形形状を有している。
【0013】
本発明に係る浴槽の設計方法は、浴槽の設計方法であって、前記浴槽は、水平方向に広がる底部を有する槽本体と、前記底部から下方に突出するn個の脚部とを備えており、前記脚部は、平面視において短手方向を有しており、組合せC(i,j)は、i番目の前記脚部とj番目の前記脚部との組合せであり、i番目の脚部2(i)を基準としており、距離L(i,j)は、前記組合せC(i,j)における前記脚部の中心間を結ぶ距離であり、方向D(i,j)は、前記組合せC(i,j)における前記中心間を結ぶ方向であり、角度A(i,j)は、i番目の前記脚部の短手方向と前記方向D(i,j)とのなす角度であり、前記脚部2(i)の中心を設ける位置を前記底部上で決定する工程と、前記距離L(i,j)の最大値を与える前記組合せC(i,j)の前記角度A(i,j)を、前記最大値を与えない前記組合せC(i,j)に関連する前記角度A(i,j)よりも小さくするように、前記各脚部の前記短手方向を選択する工程と、を備えており、前記nは3以上の数であり、前記i及びjは、1からnまでの数である。
【0014】
なお、脚部の中心は、この脚部の外周上の2点間を結ぶ線分のうち、最も長い線分の中点を指している。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る浴槽は、底部に掛かる応力集中を低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、上方より見た第1実施形態に係る浴槽の斜視図である。
【図2】図2は、図1のA−A断面図である。
【図3】図3は、下方より見た第1実施形態に係る浴槽の斜視図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る底部の下面図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る底部の下面図である。
【図6】図6は、試験に用いられた平板及び足ゴムの下面図である。
【図7】図7は、試験に用いられた平板及び足ゴムの側面図である。
【図8】図8は、足ゴムの形状による平板内の応力分布を示す図である。
【図9】図9は、足ゴムの形状による平板内の変形量分布を示す図である。
【図10】図10は、下方から見た従来の浴槽の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(第1実施形態)
図1から図4を参照して、第1実施形態に係る浴槽1を説明する。
【0018】
図1は、上方より見た第1実施形態に係る浴槽1の斜視図である。図2は、図1のA−A断面図である。図1、図2において、浴槽1は、下方から上方に向けて、脚部2、底部3、下屈曲部4、側壁10、上屈曲部5、及びフランジ6を有している。脚部2は、底部3の下面に固定されている。底部3は、水平方向に広がっている。下屈曲部4は、底部3の外側端から上方に向けて屈曲している。側壁10は下屈曲部4の上端から上方に延びている。上屈曲部15は、側壁10の上端から水平方向の外側へと屈曲している。フランジ6は、上屈曲部15の外側端から水平方向の外側に広がっている。脚部2、底部3、下屈曲部4、側壁10、上屈曲部5、及びフランジ6は、いずれも概ね一定の厚さを有している。脚部2、底部3、下屈曲部4、側壁10、及び上屈曲部5は、水を溜める容器を形成している。
【0019】
図1、図2において、底部3、下屈曲部4、側壁10、上屈曲部5、及びフランジ6は、境界面B1、B2、B3、B4によって区分されている。これらの境界面B1、B2、B3、B4は、曲率が変化する位置を指している。つまり、底部3、下屈曲部4、側壁10、上屈曲部5、及びフランジ6の曲率は、互いに異なっている。
【0020】
図3は、下方より見た第1実施形態に係る浴槽1の斜視図である。底部3は、一方向に相対的に長く形成されており、長手方向DL3及び短手方向DS3を有している。浴槽1は、底部3の下面上に、4つの脚部2を備えている。
【0021】
脚部2は、平面視において、四隅に丸みを有する長方形形状を有している。脚部2は一方向に相対的に長く形成されており、長手方向DL2及び短手方向DS2を有している。
【0022】
図4を参照して、底部3に取り付けられる脚部2の姿勢を決定する基準を説明する。底部3が熱膨張/熱収縮するときに、底部3に掛かる応力集中を低減するように、脚部2の姿勢(短手方向DS2の向き)が決定されている。ここで、底部3において応力集中が発生する領域は、2つの脚部2間に挟まれる領域である。
【0023】
図4は、第1実施形態に係る底部3の下面図である。図4において、符号2(i)、2(j)は、4つの脚部2のいずれか1つを指している。同じく、符号P(i)、P(j)はそれぞれ、脚部2(i)の中心、脚部2(j)の中心を指している。変数i及びjは、1から4までの数である。なお、脚部2の中心P(i)は、この脚部2(i)の外周上の2点間を結ぶ線分のうち、最も長い線分の中点を指している。
【0024】
まず、各脚部2について、脚部2(i)の中心P(i)を設ける位置が、底部3上で決定されている。第1実施形態では、4つの中心P(i)が長方形の頂点となるように、各中心P(i)底部3上における位置が選択されている。
【0025】
組合せC(i,j)、距離L(i,j)、方向D(i,j)、及び角度A(i,j)を以下のように定義する。
組合せC(i,j)は、i番目の脚部2(i)とj番目の脚部2(j)との組合せであり、i番目の脚部2(i)を基準としている。
距離L(i,j)は、組合せC(i,j)における脚部2(i)、2(j)の中心P(i)、P(j)間を結ぶ距離である。
方向D(i,j)は、前記組合せC(i,j)における中心P(i)、P(j)間を結ぶ方向である。
角度A(i,j)は、i番目の脚部2(i)の短手方向DS2と前記方向D(i,j)とのなす角度である。
【0026】
図4は、1番目の脚部2(1)を基準とする、3つの距離L(i,j)、3つの方向D(i,j)、及び3つの角度A(i,j)を示している。図4において、距離L(1,3)が、他の距離L(1,2)、L(1,4)よりも大きい。このため、組合せC(1,3)が、距離L(i,j)の最大値を与える組合せC(i,j)である。これに基づいて、最大値を与える組合せC(i,j)に関連する角度A(1,3)が、他の角度A(1,2)、A(1,4)よりも大きくなるように、1番目の脚部2(1)の短手方向DS2が選択されている。2番目から4番目の脚部2(2)、2(3)、4(4)についても、1番目の脚部2(1)と同様の基準に基づいて、底部3上における短手方向DS2が選択される。
【0027】
上記基準によって脚部2の短手方向DS2を決定することによる作用を説明する。2つの脚部2間の距離が大きくなるほど、これらの2つの脚部2によって拘束される底部3の長さが長くなる。この拘束は、脚部2と床面との間に発生する摩擦力が、底部3の膨張/収縮による脚部2の移動を妨げることによって発生する。膨張/圧縮によって底部3の各部において同一の変形が発生すると仮定すると、底部3の長さが長くなるほど、底部3の変位量は大きくなる。したがって、拘束される長さが長くなるほど、拘束によって発生する応力が増大する。一方、各脚部2に発生する摩擦力は、脚部2の断面内に分散される。したがって、脚部2の断面積が大きくなるにつれて、脚部2の断面内の各部に掛かる摩擦力が小さくなる。以上を考慮すると、2つの脚部2の中心間方向において脚部2の幅が小さくなるほど、2つの脚部2が底部3に及ぼす単位面積当たりの摩擦力が小さくなる。この結果、2つの脚部2による拘束が小さくなり、底部3の変形を許容しやすくなる。変形が許容されるので、底部3に発生する応力が小さくなる。上記基準は、脚部2の短手方向DS2を、拘束される長さの最大値の方向に近づける手順を提供している。つまり、脚部2の短手方向DS2は、脚部2の幅がもっとも小さな方向を指している。このため、本基準は、底部3に発生する応力を低減する手順を与えている。
【0028】
(第2実施形態)
図5を参照して、第2実施形態に係る浴槽1を説明する。第2実施形態に係る浴槽1は、脚部2の中心Pを底部3上に設ける位置及び脚部2の短手方向DS2において、第1実施形態に係る浴槽1とは異なっている。これらの点を除いて、第2実施形態に係る浴槽1は、第1実施形態に係る浴槽1と同一の構成を有している。
【0029】
図5は、第2実施形態に係る底部3の下面図である。底部3の外周は、四隅に丸みを有する長方形形状を有している。図5において、底部3の2つの対角線3Dは、底部3の外周に丸みがない場合における長方形に含まれる対角線を指している。底部3の中心Mは、2つの対角線3Dの交点を指している。
【0030】
まず、各脚部2について、脚部2(i)の中心P(i)を設ける位置が、底部3上で決定されている。第2実施形態では、4つの脚部2の中心Pが、底部3の2つの対角線3D上に、底部3の中心Mに対して対称に設けられている。
【0031】
図5において、距離L(1,3)が、他の距離L(1,2)、L(1,4)よりも大きい。このため、組合せC(1,3)が、距離L(i,j)の最大値を与える組合せC(i,j)である。これに基づいて、前記最大値を与える組合せC(i,j)に関連する角度A(i,j)が略0度となるように、1番目の脚部2(1)の短手方向DS2が選択されている。
【0032】
(試験例)
図6から図9を参照して、足ゴム21、22、23、24の形状による平板103の応力及び変形量の解析結果を説明する。ここで、足ゴム21、22、23、24は、脚部2に相当し、平板103は、底部3に相当する。
【0033】
図6は、試験に用いられた平板103及び足ゴム21、22、23、24の下面図である。図7は、試験に用いられた平板103及び足ゴム21、22、23、24の側面図である。
【0034】
図6において、平板103は、長方形であり、長手方向DL103に1200mmの長さを有し、短手方向DS103に800mmの長さを有している。図7において、平板103は、10mmの厚さを有している。
【0035】
図6において、第1足ゴム21は円柱であり、第2足ゴム22は立方体であり、第3足ゴム23は第1楕円状柱状体であり、第4足ゴム24は第2楕円状柱状体である。楕円状柱状体の断面は、四隅に丸みを有する長方形を指している。第3足ゴムの短手方向は、第4足ゴムの短手方向と異なっている。図6は、説明の便宜上、4種類の足ゴム21、22、23、24を同時に示しているが、試験では、1つの平板103に4つの同一種類の足ゴムが設けられている。以下、ケース1は、4つの第1足ゴム21が平板103上に設けられる場合を指し、ケース2は、4つの第2足ゴム22が平板103上に設けられる場合を指し、ケース3は、4つの第3足ゴム23が平板103上に設けられる場合を指し、ケース4は、4つの第4足ゴム24が平板103上に設けられる場合を指す。
【0036】
図6において、第1足ゴム21の直径L21は72.8mmであり、第2足ゴム22の対角線長さL22は94.5mmであり、第3足ゴム23の長手方向長さL23は94.7mmであり、第4足ゴムの短手方向長さL24は57.5mmである。図7において、足ゴム21、22、23、24の高さは、50mmである。
【0037】
平板103上に、4つの基準位置P0が設けられている。各足ゴムは、基準位置P0から長手方向DL3に対して45度の方向に配置されている。特に、第3足ゴム23は、長手方向長さL23が前記45度の方向と平行となるように、配置されており、第4足ゴム23は、短手方向長さL24が前記45度の方向と平行となるように、配置されている。
【0038】
実験における解析条件は、以下の通りである。
(1)足ゴムの下面:完全拘束(床面との摩擦により足ゴムが移動しない)
(2)足ゴムと平板との界面:固着
(3)平板の温度条件:温度が20℃から85℃に変化する。
(3)足ゴムの温度条件:なし(温度が20℃に保たれる)
(4)平板の上面(浴槽の底面)に加わる想定圧力:6.2GPa、5.8×10−5/℃
(5)足ゴムの下面(脚部の下面)に加わる想定圧力:1.5GPa、0.0/℃
【0039】
上記解析条件に基づく実験を行った結果、図8及び図9に示される解析結果が得られた。
【0040】
図8は、足ゴム21、22、23、24の形状による平板103内の応力分布を示す図である。図8(1)、(2)、(3)、(4)は、それぞれ、ケース1(円柱)、ケース2(立方体)、ケース3(第1楕円状柱状体)、ケース4(第2楕円状柱状体)の分布図を示している。図8において、応力が比較的高い3つの領域について、応力が高くなるにつれて、斜線の密度が高くなっている。4つの足ゴムによって囲まれる領域の応力を4つのケースについて比較すると、ケース4における応力が最も低い。つまり、ケース4は、他のケースと比べて、応力の発生を抑制できる。なお、応力の最大値σmaxは、ケース1及びケース4において同一である。
【0041】
図9は、足ゴム21、22、23、24の形状による平板103内の変形量分布を示す図である。図9(1)、(2)、(3)、(4)は、それぞれ、ケース1(円柱)、ケース2(立方体)、ケース3(第1楕円状柱状体)、ケース4(第2楕円状柱状体)の分布図を示している。図9において、変位量が比較的高い3つの領域について、応力が高くなるにつれて、斜線の密度が高くなっている。4つの足ゴムによって囲まれる領域の変位量を4つのケースについて比較すると、ケース4における変位量が最も高い。つまり、ケース4は、他のケースと比べて、平板103の変形を拘束しない。これは、変形を許容することによって応力の発生を抑制していることを意味しており、図8の結果に対応している。
【0042】
また、図8、図9におけるケース1、2を比較すると、ケース1の方がケース2よりも応力の発生が抑制され、且つ変形量が大きい。この結果によれば、足ゴムの外周が滑らかな曲線によって構成される場合は、外周形状が折れ線を含む場合と比べて、応力の発生を抑制でき且つ変形量を増大できる。
【0043】
(各実施形態に係る浴槽の効果)
本実施形態に係る浴槽の効果を説明する。
【0044】
第1、第2実施形態に係る浴槽1では、距離L(i,j)の最大値を与える組合せC(i,j)に関連する角度A(1,3)が、他の角度A(1,2)、A(1,4)よりも大きくなるように、1番目の脚部2(1)の短手方向DS2が選択されている。ここで、方向D(i,j)における脚部2の幅が小さくなると、2つの脚部2が底部3に及ぼす単位面積当たりの摩擦力が小さくなる。この結果、底部3において距離L(i,j)間で拘束される領域における変形が、許容されやすくなる。特に、脚部2の短手方向DS2が距離L(i,j)の最大値を与える組合せC(i,j)に関連する方向D(i,j)に近づくように選択されているので、底部3の変形が、より許容されやすい。変形が許容されると、応力の発生も低減される。このため、第1、第2実施形態に係る浴槽1は、底部3に掛かる応力集中を低減できる。
【0045】
第2実施形態に係る浴槽1では、最大値を与える組合せC(1,3)に関連する角度A(1,3)は、略0度である。このため、第2実施形態に係る浴槽1は、底部3に掛かる応力集中をより一層低減できる。
【0046】
第2実施形態に係る浴槽1では、底部は、平面視において、四隅に丸みを有する四角形形状を有しており、4つの脚部2の中心Pが、底部3の2つの対角線3D上に、底部3の中心Mに対して対称に設けられている。このため、第2実施形態に係る浴槽1は、底部3に掛かる応力集中をより一層低減できる。
【0047】
第1、第2実施形態に係る浴槽1では、脚部3は、平面視において、四隅に丸みを有する長方形形状を有している。この形状は、折れ線を含む形状よりも、応力の発生を抑制でき且つ変形量を増大できる。このため、第1、第2実施形態に係る浴槽1は、底部3に掛かる応力集中をより一層低減できる。
【0048】
(変形例)
本実施形態は、次の変形例を採用できる。
【0049】
第1実施形態において、距離L(i,j)の最大値を与える組合せC(i,j)に関連する方向D(1,3)と、2番目に大きな距離L(i,j)を与える組合せC(i,j)に関連する方向D(1,2)と、の間を向くように、1番目の脚部2(1)の短手方向DS2が選択されてもよい。この変形例は、最大の拘束及び2番目に大きな拘束による応力の発生を抑制できる。このため、この変形例は、底部3に掛かる応力集中をより一層低減できる。
【0050】
第2実施形態において、脚部2は、対角線3D上に配置されなくても良い。最大値を与える組合せC(1,3)に関連する角度A(1,3)が、略0度であるので、既に、底部3に掛かる応力集中は、低減されている。
【0051】
第1、第2実施形態において、底部3の形状は限定されない。
【0052】
第1、第2実施形態において、脚部2の形状が短手方向を有する限り、脚部2の形状は限定されない。
【符号の説明】
【0053】
1 浴槽
2、2(i)、2(j) 脚部
3 底部
L(i,j) 距離
D(i,j) 方向
A(i,j) 角度
P、P(i)、P(j) 中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に広がる底部と、該底部から下方に突出するn個の脚部とを備える、浴槽であって、
前記脚部は、平面視において短手方向を有しており、
組合せC(i,j)は、i番目の前記脚部とj番目の前記脚部との組合せであり、i番目の脚部を基準としており、
距離L(i,j)は、前記組合せC(i,j)における前記脚部の中心間を結ぶ距離であり、
方向D(i,j)は、前記組合せC(i,j)における前記中心間を結ぶ方向であり、
角度A(i,j)は、i番目の前記脚部の短手方向と前記方向D(i,j)とのなす角度であり、
前記距離L(i,j)の最大値を与える前記組合せC(i,j)に関連する前記角度A(i,j)を、前記最大値を与えない前記組合せC(i,j)に関連する前記角度A(i,j)よりも小さくするように、前記各脚部の前記短手方向が選択されており、
前記nは3以上の数であり、前記i及びjは、1からnまでの数である、浴槽。
【請求項2】
前記最大値を与える前記組合せC(i,j)に関連する前記角度A(i,j)は、略0度である、請求項1に記載の浴槽。
【請求項3】
前記底部は、平面視において、四角形又は四隅に丸みを有する四角形形状を有しており、
4つの前記脚部の前記中心が、前記底部の2つの対角線上に、前記底部の中心に対して対称に設けられている、請求項1又は2に記載の浴槽。
【請求項4】
前記脚部は、平面視において、四隅に丸みを有する長方形形状を有している、請求項1から3のいずれか1つに記載の浴槽。
【請求項5】
浴槽の設計方法であって、
前記浴槽は、水平方向に広がる底部を有する槽本体と、前記底部から下方に突出するn個の脚部とを備えており、
前記脚部は、平面視において短手方向を有しており、
組合せC(i,j)は、i番目の前記脚部とj番目の前記脚部との組合せであり、i番目の脚部2(i)を基準としており、
距離L(i,j)は、前記組合せC(i,j)における前記脚部の中心間を結ぶ距離であり、
方向D(i,j)は、前記組合せC(i,j)における前記中心間を結ぶ方向であり、
角度A(i,j)は、i番目の前記脚部の短手方向と前記方向D(i,j)とのなす角度であり、
前記脚部2(i)の中心を設ける位置を前記底部上で決定する工程と、
前記距離L(i,j)の最大値を与える前記組合せC(i,j)の前記角度A(i,j)を、前記最大値を与えない前記組合せC(i,j)に関連する前記角度A(i,j)よりも小さくするように、前記各脚部の前記短手方向を選択する工程と、を備えており、
前記nは3以上の数であり、前記i及びjは、1からnまでの数である、浴槽の設計方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−111258(P2013−111258A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−260123(P2011−260123)
【出願日】平成23年11月29日(2011.11.29)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】