浴槽循環アダプタおよびその仕切具
【課題】構成部品どうしの連結を確実かつ適切にものにし得る反面、内部の清掃作業などを容易に行なうことが可能な浴槽循環アダプタの仕切具を提供する。
【解決手段】仕切具2は、第1の仕切部材2aの第1の板部26に、第2の仕切部材2bの周壁部22a,22bに嵌合し、かつ被係合部59a,59bに係合させるための係合部51a,51bを有する複数の突出部5A,5Bが設けられており、突出部5Aは、第1の板部26の外周縁に沿って延びる帯板状に形成され、この帯板状の突出部5Aの一部は、第1の板部26から分離して係合部51aと被係合部59aとの係合を維持させる板バネとして構成されており、この突出部5Aには、係合部51aと被係合部59aとの係合を解除させるようにこの突出部5Aの撓み変形操作を可能とする操作部60が設けられた構成とされている。
【解決手段】仕切具2は、第1の仕切部材2aの第1の板部26に、第2の仕切部材2bの周壁部22a,22bに嵌合し、かつ被係合部59a,59bに係合させるための係合部51a,51bを有する複数の突出部5A,5Bが設けられており、突出部5Aは、第1の板部26の外周縁に沿って延びる帯板状に形成され、この帯板状の突出部5Aの一部は、第1の板部26から分離して係合部51aと被係合部59aとの係合を維持させる板バネとして構成されており、この突出部5Aには、係合部51aと被係合部59aとの係合を解除させるようにこの突出部5Aの撓み変形操作を可能とする操作部60が設けられた構成とされている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に取り付けられて使用され、風呂の追い焚き時において、浴槽内の湯水を熱源装置に送り出すとともにこの熱源装置によって加熱された湯水を浴槽内に戻すように湯を循環させるノズルとしての役割を果たす浴槽循環アダプタ、およびその構成部品である仕切具に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽循環アダプタの一般的な基本構成は、給湯器などの熱源装置に配管接続されて浴槽の側壁に取り付けられる固定具と、この固定具に取り付けられて浴槽内に配される仕切具とを備えた構成とされている(たとえば、特許文献1〜4を参照)。仕切具は、内部に湯水流路を形成し、かつ外面部には、前記湯水流路に繋がって浴槽内に湯水を吐出するための吐出口や、浴槽内の湯水を前記湯水流路に流入させる吸入口が設けられたケーシング状に構成されている。
【0003】
このような仕切具は、たとえば2つの仕切部材が組み合わされて形成されているが、この仕切具の内部には、湯水が流通するため、長期間にわたって使用された場合には、その内部が湯垢などによって汚れる。したがって、ユーザとしては、仕切具を分解し、その内部を容易に清掃できるようにすることを望む場合がある。
【0004】
しかしながら、従来においては、そのような要望に的確に応え得る仕切具は未だ提案されていないのが実情であった。すなわち、2つの仕切部材を組み合わせて仕切具を構成する場合には、その内部に湯水流路を適切に形成する必要があることから、2つの仕切部材の連結は確実かつ強固なものにする必要がある。このため、従来においては、たとえば2つの仕切部材が互いに分離しないようにこれらを接着させたり、あるいは複数本のネジ体を用いて連結するといった手段がよく採用されている。ところが、前者の手段では、2つの仕切部材を分離させることは困難である。また、後者の手段では、2つの仕切部材を分離させる場合に複数本のネジ体を緩めて取り外す必要があり、その作業は非常に煩雑である。
【0005】
なお、特許文献1においては、仕切具に相当する部分の全体を他の部分から容易に取り外すことが可能とされた浴槽循環アダプタの構造が開示されているものの、この構造は、仕切具を構成する2つの仕切部材を分離させてそれらの内部の清掃を容易にし得るものではない。また、特許文献2には、仕切具にカバーフィルタを装着させる場合の手段として、それらに凹凸状の係合手段を設けておき、これらを互いに係合させる手段が開示されている。仕切具の2つの仕切部材についても、それと同様な係合手段を用いて係合させることができればよいが、仕切部材においては、既述したとおり、2つの仕切部材の連結がより確実になされる必要があり、特許文献2に記載されているような係合手段をそのまま適用することは余り適切でない。仕切具においては、2つの仕切部材に湯水流路を形成するための仕切壁が形成されており、これら2つの仕切部材を互いに回転させて係合させるといった構造を採用し難いという特殊性もある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−340543号公報
【特許文献2】特開2001−183011号公報
【特許文献3】特許第3180678号公報
【特許文献4】特開2003−279164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、構成部品どうしの連結を確実かつ適切にものにし得る反面、内部の清掃作業などを容易に行なうことが可能な仕切具、およびこれを備えた浴槽循環アダプタを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される浴槽循環アダプタの仕切具は、第1の板部を有する第1の仕切部材と、第2の板部およびこの第2の板部の外周縁またはその近傍からその厚み方向に突出する周壁部を有し、かつ前記第1および第2の板部が互いに対向するようにして前記第1の仕切部材に連結される第2の仕切部材と、前記第1および第2の仕切部材の双方または一方に形成され、かつこれら第1および第2の仕切部材によって囲まれた領域に湯水用の吸入口および吐出口に繋がった一対の湯水流路を仕切り形成する仕切壁と、を備えている、浴槽循環アダプタの仕切具であって、前記第1の板部に設けられ、かつ前記第2の仕切部材の周壁部に嵌合可能な複数の突出部と、これら複数の突出部のそれぞれに設けられ、かつこれら複数の突出部を前記周壁部に嵌合させたときにこの周壁部から前記複数の突出部の抜け止めが図られるように、前記周壁部に設けられている凹状または凸状の複数の被係合部に係合させるための凸状または凹状の複数の係合部と、を備えており、前記複数の突出部の少なくとも1つは、前記第1の板部の外周縁に沿って延びる帯板状に形成されているとともに、この帯板状の突出部の一部は、前記第1の板部から分離していることにより、この帯板状の突出部の係合部とこれに対応する被係合部とが係合する所定の方向に弾発力を発揮可能な板バネとして構成されており、前記帯板状の突出部には、この突出部を前記所定の方向とは反対方向に撓み変形可能とする操作部が設けられていることを特徴としている。なお、本発明において、複数の突出部が第2の仕切部材の周壁部に「嵌合」可能であるとは、複数の突出部が第2の仕切部材の周壁部の全周にわたって接触するように嵌まる関係になくてもよく、複数の突出部が周壁部の一部に対して部分的に接触するように嵌まる関係をも含む概念である。
【0010】
このような構成によれば、次に述べるような効果が得られる。
【0011】
まず第1に、第1および第2の仕切部材どうしの連結は、第1の仕切部材の複数の突出部を第2の仕切部材の周壁部に嵌合させ、かつそれらの係合部を被係合部に係合させることにより行なうことができる。複数の突出部のうち、少なくとも1つの突出部は、板バネとして機能する帯板状の突出部として構成されており、この帯板状の突出部の弾発力を利用して、係合部と被係合部との係合状態を維持させ、これらの係合が安易に解除されないようにすることが可能である。したがって、第1および第2の仕切部材どうしの連結を確実なものにすることが可能となる。
【0012】
第2に、第1および第2の仕切部材どうしを連結させた状態において、操作部を操作して帯板状の突出部を撓み変形させれば、この突出部の係合部とこれに対応する被係合部との係合状態を解除させることができる。このことにより、第1の仕切部材を第2の仕切部材から簡単に取り外すことが可能となる。したがって、仕切具の分解をいわゆるワンタッチ操作で非常に簡単に行なわせることが可能となり、仕切具内部の清掃などを行なうのに好適なものとなる。もちろん、分解後において第1の仕切部材を第2の仕切部材に再度組み付ける作業も簡単に行なうことができる。
【0013】
第3に、複数の突出部のうち、少なくとも1つの突出部を板バネとして機能させるための手段として、突出部を帯板状とし、かつこの突出部の一部を第1の板部から分離させる構造を採用している。このため、それらの部分の構成は非常に簡素であり、第1の仕切部材を樹脂成形する場合には、第1の板部と帯板状の突出部とを一体的に成形することもできる。したがって、第1の仕切部材の製造は容易であり、製造コストを廉価にすることも可能である。一方、第2の仕切部材は、その周壁部に凹状または凸状の被係合部を設けるだけでよいため、やはりその製造も容易である。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記帯板状の突出部の長手方向両端部のそれぞれは、前記第1の板部から分離していることにより、ともに板バネとして構成されており、これら両端部のそれぞれに、前記係合部および前記操作部が設けられている。
【0015】
このような構成によれば、1つの帯板状の突出部の長手方向両端部が、2つの突出部として機能するようになっている。したがって、その構成は合理的であり、突出部の数を少なくして全体の構成を簡素にするのに有利である。
【0016】
本発明の第2の側面により提供される浴槽循環アダプタは、浴槽の壁部に取り付けられて熱源装置と配管接続され、かつ内部に一対の湯水流路が形成されている固定具と、この固定具に連結されることにより前記浴槽内に配され、かつ前記固定具の一対の湯水流路に個々に連通する湯水用の吸入口および吐出口を有している仕切具と、を備えている、浴槽循環アダプタであって、前記仕切具としては、本発明の第1の側面により提供される浴槽循環アダプタの仕切具が用いられていることを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される浴槽循環アダプタの仕切具について述べたのと同様な効果が得られる。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1〜図14は、本発明が適用された浴槽循環アダプタおよびその構成部品の一例を示している。本実施形態の浴槽循環アダプタAは、図15に示すように、浴槽7の側壁70に取り付けられ、かつ給湯器などの熱源装置99に対してたとえば2本の配管98を介して接続され、浴槽7内への湯水の落とし込みや、浴槽7内の湯水の追い焚きに利用される。
【0021】
図1および図2によく表われているように、この浴槽循環アダプタAは、外部配管連結体1aならびに内部締結体1bを有する固定具1、フロント部材2aならびにリア部材2bを有する仕切具2、およびこの仕切具2に取り付けられるカバーフィルタ3を備えている。フロント部材2aは、本発明でいう第1の仕切部材の一例に相当し、リア部材2bは、本発明でいう第2の仕切部材の一例に相当する。
【0022】
外部配管連結体1a、内部締結体1b、フロント部材2a、およびリア部材2bは、たとえばPPS(ポリフェニレンサルファイド)やその他の耐熱性や機械的強度に優れる樹脂製、あるいは強化プラスチック製である。このように浴槽循環アダプタAの構成部材の樹脂化を促進すれば、浴槽循環アダプタAの軽量薄型化や製造コストの低減化を図ることができる。カバーフィルタ3については、入浴者の身体が接触する虞れがあり、高い機械的強度が要求されるために、たとえばステンレス製とされている。ただし、各部材の具体的な材質は限定されるものではない。
【0023】
固定具1の外部配管連結体1aは、浴槽7の側壁70の外面側に配されるものであり、一端にフランジ120を有する略円筒状のハウジング12を有している。このハウジング12の他端には、熱源装置99と配管接続される一対の短管部13a,13bが取り付けられている。これらの短管部13a,13bは、ハウジング12と一体的に成形された構成とすることもできる。
【0024】
内部締結体1bは、浴槽7の内側から外部配管連結体1aに組み付けられるものであり、一端にフランジ140を有する筒状部14を備えている。この筒状部14の外周面には、ハウジング12の内周面に形成されている第1のネジ部15aに螺合する第2のネジ部15bが形成されている。これら第1および第2のネジ部15a,15bの締め付けにより、一対のフランジ120,140は浴槽7の側壁70の貫通孔71の周縁部を挟み付けており、この挟み付け作用により外部配管連結体1aおよび内部締結体1bは側壁70に固定されている。フランジ120,140間には、止水シール用のパッキン97a,97bが介装される。内部締結体1bの内部には、第3のネジ部15cが形成されているが、これは漏水検査器を固定具1に螺合装着するのに利用される。
【0025】
図3および図4に示すように、仕切具2のリア部材2bは、正面視の基本形状が略円形であり、かつ下部近傍に一対の切欠部21aが形成された背板部21と、この背板部21に一端が繋がった管状部20とを備えている。背板部21は、本発明でいう第2の板部の一例に相当する。背板部21には、この背板部21の外周に形成された上部周壁部22aならびに下部周壁部22b、仕切具2内に後述する一対の湯水流路45a,45bを形成するためのリブ状の仕切壁23b、および複数(たとえば計3つ)の円弧状長孔のネジ体挿通用孔24が設けられている。背板部21の中央部付近には、管状部20の内部に連通した略半円状の開口部25a、および管状部20の内部に対して非連通状態の略円弧状の開口部25bが形成されている。管状部20の一部は、屈曲部20aとして形成されているが、これは開口部25a,25bを互いに接近させて背板部21の中央部付近に配置させるのに役立つ。上部周壁部22aおよび下部周壁部22bには、このリア部材2bにフロント部材2aを取り付けるための複数(たとえば3つ)の係合用孔59a,59bが設けられている。これら係合用孔59a,59bは、本発明でいう被係合部の一例に相当するものであるが、その詳細については後述する。
【0026】
このリア部材2bは、3つのネジ体挿通用孔24に対し、図2に示すような複数のネジ体79が挿通されて固定具1の内部締結体1bに取り付けられる。内部締結体1bの前面部には、複数のネジ孔19が形成されており、この部分に各ネジ体79が螺合される。このリア部材2bの前面部には、後述するようにフロント部材2aが着脱可能であるが、そのような着脱はリア部材2bが内部締結体1bに取り付けられた状態のままで行なうことが可能である。
【0027】
図5および図6に示すように、フロント部材2aは、正面視の基本形状が略円形であり、かつ斜め下方に突出した一対の延設部26aを有する前板部26を備えている。この前板部26は、本発明でいう第1の板部の一例に相当し、リア部材2bの背板部21の前面部の全体を覆う役割を果たす。この前板部26の背面側には、リブ状の仕切壁が23aが形成されているが、このリブ状の仕切壁23aは、リア部材2bの仕切壁23bと重なり合って当接し得る形状である。フロント部材2aがリア部材2bの前面部に重なるようにして組み付けられた場合、仕切具2内にはこれら仕切壁23a,23bによって一対の湯水流路45a,45bが形成される。図12の網点模様を付した部分は、リア部材2bの背板部21の前面に形成された一対の湯水流路45a,45bであり、これら湯水流路45a,45bは、その内部を湯水が流れる場合に澱みを生じ難くなるように比較的シンプルな形状とされ、またその流路幅も所望の湯水流量を確保するのに必要最低限の幅またはそれに近い幅に抑えられている。リア部材2bの切欠部21aが形成された箇所は、吐出口28a,28bに相当する。仕切壁23a,23bの先端面どうしを互いに当接させる場合、それらを単に突き合わせるだけでもよいが、これに代えて、たとえば仕切壁23a,23bの一方に凸状リブを形成し、かつ他方に凹溝を形成し、これらを互いに嵌合させるようにしてもかまわない。このようにすると、仕切壁23a,23b間に隙間を生じ難くし、シール性を高めることができる。さらにシール性を高めるための手段として、仕切壁23a,23bの先端面どうしの間にパッキンを介在させるようにしてもかまわない。
【0028】
図13の網点模様で示すように、仕切具2内には湯水流路45a,45bを小サイズに形成したことに起因して、上部残余領域a1および下部残余領域a2も形成される。上部残余領域a1は、上部周壁部22aと仕切壁23bの上部との間に形成されている。仕切壁23bの上部は、略水平に延びるライン部230と、このライン部230の両端から斜め下方に延びた一対のライン部231とを有している。これら一対のライン部231と上部の周壁部22aとの間には、排水用の隙間44aが形成されている。下部残余領域a2は、下部周壁部22bと仕切壁23bの下部との間に形成されている。仕切壁23bの下部は、下部周壁部22bの両側方において斜め下方に延びる一対のライン部232を有しており、これらライン部232と下部周壁部22bの両端との間には、排水用の隙間44bが形成されている。下部周壁部22bは、下向きに突出した円弧状であるが、この周壁部22bの上面220は、前下がりの傾斜状に形成されている。上部残余領域a1および下部残余領域a2には、浴槽7内の湯水が流入する可能性があるが、前記したような構成によれば、浴槽7内の湯水を浴槽外部に排出させた際に、前記流入した湯水を排水用の隙間44a,44bを介して仕切具2の外部に適切に排出することが可能である。このような構成によれば、残留水に起因して前記の領域a1,a2が汚れることはなく衛生的である。また、冬季において前記残留水が凍結して仕切具2が破損するといった虞れも適切に回避される。
【0029】
図5および図6に示すように、フロント部材2aの前板部26には、前記した仕切壁23a以外に、この前板部26の厚み方向に貫通した一対の吸入口27a,27b、この前板部26の上部に位置する帯板状の突出部5A、および前板部26の下部に位置するやや細幅な突出部5Bも設けられている。吸入口27a,27bのそれぞれは、複数の扇形状の小孔が略円形状を呈するように並んでおり、それらの各中心部分に支持された一対の第1の弁体41a,41bによって開閉可能である。第1の弁体41a,41bは、可撓性を有する円板部に軸部が繋がった形態を有している。前板部26の一対の延設部26aには、第2の弁体42a,42bも取り付けられている。この第2の弁体42a,42bは、第1の弁体41a,41bと同様な材質の断面略L字状であり、湯水の吐出口28a,28bを実質的に開閉する役割を果たす。
【0030】
図7によく表われているように、帯板状の突出部5Aは、前板部26の外周縁からこの前板部26の厚み方向に突出し、かつ前板部26の外周縁に沿って円弧状に延びた板状であり、前板部26と一体成形されている。ただし、この突出部5Aの長手方向両端部50は、前板部26から分離しており、これら両端部50は、突出部5Aの長手方向中間部を基部として矢印Na方向に弾性復元力を伴って揺動可能な板バネとなっている。この板バネとしての機能を高めるための手段として、前板部26と突出部5Aとの間には、スリット52も形成されている。
【0031】
突出部5Aの長手方向両端部50には、一対の係合用凸部51a、および一対の操作部60が設けられている。係合用凸部51aは、突出部5Aの外面から前板部26の半径方向外方向けて突出した小突起状であり、突出部5Aと一体成形されている。操作部60は、たとえば図8に示すように、フロント部材2aとは別体に形成された樹脂製などの適当な部品6を溶着するなどして設けられている。操作部60は、略矩形の板状であり、その一部は前板部26の外周よりも半径方向外方に突出している。前板部26には、操作部60や突出部5Aの両端部50を前板部26の半径方向内方に変位させた際に、これらと前板部6との干渉を回避するための凹部260が設けられている。この凹部260は、突出部5Aの長手方向両端部50を前板部26から分離させて板バネとして機能させるのにも役立っている。リア部材2bの上部周壁部22aには、係合用凸部51aとの係合を行なわせるための2つの係合用孔59a、および部品6の突出部分61との干渉を避けるための2つの凹溝58が形成されている。係合用孔59aは、図面においては貫通孔として示されているが、非貫通孔として形成することもできる。
【0032】
突出部5Bは、帯板状の突出部5Aとは異なり、板バネ状には形成されておらず、前板部26からその厚み方向に突出した部分と、この部分から前板部26の半径方向外方に向けて突出した係合用凸部51bとを有している。なお、2つの突出部5A,5Bは、リア部材2bの上部および下部の周壁部22a,22bに部分的に嵌入し得る配置に設けられており、計3つの係合用凸部51a,51bは、前板部26の中心周りにおいて略等間隔な配置となっている。リア部材2bの下部周壁部22bには、係合用凸部51bとの係合が可能な係合用孔59bが形成されている。ただし、この下部周壁部22bの上面220は、先に説明したとおり、傾斜面とされているために、この傾斜面には、突出部5Bとの干渉を回避するための切欠溝223が形成されている(図3,図4を参照)。図9、図10に示すように、2つの突出部5A,5Bが利用されることにより、フロント部材2aはリア部材2bに着脱自在に組み付けられ、このことによって仕切具2が構成される。ただし、その詳細については後述する。
【0033】
図1および図2に示すように、仕切具2には、カバーフィルタ3が装着される。カバーフィルタ3は、円形キャップ状であり、その前面部には湯水通過用の複数の小孔30が形成されており、またその周壁部には、仕切具2の吐出口28a,28bに対向する開口部31が形成されている。なお、図2において、カバーフィルタ3の正面部に表わされた横長の略長円状部分は、小孔30が設けられていない閉塞面であり、浴槽7内から吸入口27a,27bに対して湯水が直接的に流入することを阻止する。このカバーフィルタ3は、仕切具2の前面や外周を覆うように取り付けられるが、その取り付け手段としては、このカバーフィルタ3の周壁部に適当な係止用凸部(図示略)を設けておき、この係止用凸部をたとえばリア部材2bの周壁部22a,22bに形成されている係止用段部221に係合させるといった手段を用いることができる(図3,図4を参照)。カバーフィルタ3と仕切具2との取り付け構造においては、それらの間に止水シールを図るといった必要はなく、またカバーフィルタ3を仕切具2に対して相対回転させて取り付けるといったことが可能であるため、カバーフィルタの取り付け手段としては、前記したような比較的簡易な係合手段を採用することが可能である。なお、カバーフィルタ3は、フロント部材2aの操作部60との干渉が回避される構造に形成されている。
【0034】
図1に示すように、仕切具2の管状部20は、外部配管連結体1aの内筒部17に嵌合している。固定具1の内部には、短管部13aの内部およびこれに繋がった領域を含む湯水流路16a、および短管部13bの内部およびこれに繋がった領域を含む湯水流路16bが形成されており、仕切具2の湯水流路45a,45bは、湯水流路16a,16bと個々に連通している。
【0035】
この浴槽循環アダプタAにおいては、次に述べるような湯水の流れを生じるように構成されている。すなわち、図14(a)に示すように、短管部13a,13bがそれぞれ戻り側、往き側とされた状態では、湯水流路16a,45a内が負圧となるため、第1の弁体41aが開き、浴槽7内の湯水は、吸入口27aから湯水流路45a,16aに流入して熱源装置99に戻される。一方、熱源装置99から湯水流路16b,45bに湯が供給されると、これらの部分の圧力が上昇するため、第2の弁体42bが開き、吐出口28bからから浴槽7内に湯水が吐出される。これとは異なり、同図(b)に示すように、短管部13a,13bがそれぞれ往き側、戻り側とされた状態では、湯水流路16a,45a内の圧力上昇により第2の弁体42aが開き、吐出口28aから浴槽7内に湯水が吐出される。一方、湯水流路16b,45b内は負圧となるため、第1の弁体41bが開いて吸入口27bから湯水流路45b,16bに浴槽7内の湯水が流入する。このように、この浴槽循環アダプタAにおいては、短管部13a,13bのそれぞれが往き側および戻り側のいずれに設定される場合であっても、浴槽7内の湯水を適切に循環させることができる。また、この浴槽循環アダプタAは、浴槽7内への湯の落とし込みにも利用可能である。図14(c)に示すように、短管部13a,13bの双方に湯水が供給されると、第1の弁体41a,41bは、それらの圧力に起因して閉じ状態を維持するのに対し、第2の弁体42a,42bは、前記圧力によって開く。したがって、吐出口28a,28bのそれぞれから浴槽7内に湯水が吐出されることとなり、湯を落とし込む際の流量を多くすることができる。
【0036】
次に、この浴槽循環アダプタAの作用について説明する。
【0037】
まず、仕切具2のリア部材2bにフロント部材2aを組み付けた状態においては、図9に示すように、フロント部材2aの2つの突出部5A,5Bがリア部材2bの上部および下部の周壁部22a,22bの内側に嵌合している。帯板状の突出部5Aの外面については、上部周壁部22aの内側面に対して広い面積で接触させることができるために、その嵌合状態を安定させる効果も得られる。突出部5A,5Bのそれぞれの係合用凸部51a,51bは、図10(a)および図11に示すように、リア部材2bの係合用孔59a,59bに係合させることができる。帯板状の突出部5Aの両端部50は、既述したとおり、板バネとして機能するために、図10(a)に示すように、この突出部5Aを矢印Nb方向に弾発付勢する力を利用して、係合用凸部51aと係合用孔59aとの係合状態が解除されないようにすることができる。また、突出部5Aを上部周壁部22aの内側面に圧接させることも可能となり、その反作用によって、突出部5Bの係合用凸部51bについても係合用孔59bとの係合状態が解除されないようにすることができる。このようなことから、仕切具2の組み立てが確実なものとなる。
【0038】
次いで、前記した仕切具2の組み立て状態において、突出部5Aの弾発力に抗して各操作部60を背板部26の半径方向内方(矢印Nbとは反対方向)に押圧すると、図10(b)に示すように、係合用凸部51aが係合用孔59aから簡単に抜き外れ、それらの係合状態が解除される。したがって、フロント部材2aの上部をリア部材2bから離脱させることができる。また、このようにフロント部材2aの上部をリア部材2bから離脱させると、フロント部材2aの下部に位置する突出部5Bの係合用凸部51bについても係合用孔59bから簡単に抜き外すことが可能となり、フロント部材2aの全体をリア部材2bから容易に離脱させることができる。操作部60の一部は、仕切具2の組み立て状態において、背板部26や上部外周壁22aよりも半径方向外方に突出しているために、この操作部60の押圧操作も容易である。このようなことから、この浴槽循環アダプタAにおいては、フロント部材2aをリア部材2bから取り外す作業が容易であり、仕切具2内部の清掃も簡単に行なえることとなる。また、清掃後にフロント部材2aを組み付ける場合には、突出部5A,5Bをリア部材2bの上部および下部の周壁部22a,22bに嵌合させるように押し込むだけでよく、やはりその組み付け作業も容易である。
【0039】
以上述べたように、この浴槽循環アダプタAにおいては、仕切具2のフロント部材2aの取り外し作業を容易しつつ、その組み付けは確実なものとすることができる。突出部5Aに弾発付勢力をもたせるための手段として、この突出部5Aを帯板状に形成し、かつこの突出部5Aの一部を前板部26から分離させるという簡易な手段を採用しているために、その構成は容易であり、突出部5Aと背板部26とを一体成形することによって、製造コストも廉価にすることもできる。また、突出部5Aをこのような帯板状に形成して前板部26の外周縁に沿って設けているが故に、操作部60を操作し易いように外部に一部突出した状態に取り付けることもできる。突出部5Aは、その長手方向両端部50のそれぞれがバネ板として機能するとともに、それら両端部50には係合用凸部51aが個々に設けられており、この突出部5Aは、2つの突出部に相当する役割を果たしている。したがって、その構成は合理的であり、フロント部材2aに設けられる突出部の数を少なくして仕切具全体の構造の簡素化を図るのにも好適となる。
【0040】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る浴槽循環アダプタおよび仕切具の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0041】
上述の実施形態においては、2つの突出部5A,5Bのうち、突出部5Aのみを板バネとして機能する帯板状とし、かつ突出部5Bをそのような機能を有しないものとして構成しているが、本発明はこれに限定されない。本発明においては、複数の突出部の全てを突出部5Aのように板バネとして機能し得るものに構成してもかまわない。ただし、そのように構成すると、構造が複雑化し、また操作部の数も多くする必要が生じる。したがって、構造の簡素化や操作性の観点からすると、上述の実施形態のように、板バネ機能を有する帯板状の突出部と、そのような機能を有しない突出部とを組み合わせた構成とすることが好ましい。また、帯板状の突出部は、必ずしもその長手方向両端部のそれぞれが板バネとされて係合用凸部を個々に有する構成とされていなくてもよく、たとえば長手方向一端部のみが板バネとされて係合用凸部を有する構成とすることもできる。
【0042】
上述の実施形態においては、フロント部材2aに係合部としての係合用凸部51a,5bを有する突出部5A,5Bが設けられて、リア部材2bに被係合部としての係合用孔59a,59bが設けられているが、本発明においては、これとは反対の構成することもできる。すなわち、リア部材に係合部を有する突出部が設けられて、フロント部材に被係合部が設けられた構成とすることもできる。この場合、リア部材が本発明でいう第1の仕切部材に相当し、フロント部材が本発明でいう第2の仕切部材に相当することとなる。本発明でいう係合部および被係合部は、凸状および凹状のいずれであるかも問わない。凹状には、孔部も含まれる。第1の仕切部材に設けられる複数の突出部は、第2の仕切部材の周壁部に嵌入させるのではなく、外嵌させる構成とすることもできる。
【0043】
仕切具は、一対の湯水流路45a,45bが往き側と戻り側とのいずれにも対応し得る無極性タイプのものとして構成されることが好ましいが、やはりこれに限定されず、往き側と戻り側とが固定化されたタイプ(湯水用の吸入口および吐出口が1組のみ設けられているタイプ)に構成することもできる。
【0044】
本発明に係る浴槽循環アダプタの固定具は、種々の構成に製作することが可能であり、たとえば固定具としては、浴槽の側壁をその両側から挟み付ける手段とは異なる手段によって浴槽の壁部に取り付ける構成とすることもできる。固定具に対する仕切具の具体的な取り付け手段も限定されない。浴槽循環アダプタの取り付け部位は、浴槽の側壁に限らず、たとえば浴槽の底壁とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る浴槽循環アダプタの一例を示す断面図である。
【図2】図1に示す浴槽循環アダプタの分解斜視図である。
【図3】図1に示す浴槽循環アダプタの仕切具を構成するリア部材の斜視図である。
【図4】(a)は、図3に示すリア部材の正面図であり、(b)は、(a)のIV−IV線断面図である。
【図5】(a)は、図1に示す浴槽循環アダプタの仕切具を構成するフロント部材の斜視図である。
【図6】(a)は、図5に示すフロント部材の正面図であり、(b)は、(a)のVI−VI線断面図である。
【図7】図1に示す浴槽循環アダプタの仕切具の分解概略斜視図である。
【図8】図7の要部分解斜視図である。
【図9】図7に示す仕切具の組み立て状態の正面断面図である。
【図10】(a)は、図9のX−X線要部断面図であり、(b)は、(a)に示す部分の動作状態を示す要部断面図である。
【図11】図9のXI−XI線要部断面図である。
【図12】図7に示す仕切具内に形成される湯水流路の説明図である。
【図13】図7に示す仕切具内部の湯水流路以外の領域を示す説明図である。
【図14】(a)〜(c)は、図1に示す浴槽循環アダプタにおける湯水の流れを示す断面図である。
【図15】図1に示す浴槽循環アダプタの取り付け使用状態を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
A 浴槽循環アダプタ
1 固定具
2 仕切具
2a フロント部材(第1の仕切部材)
2b リア部材(第2の仕切部材)
5A 突出部(帯板状の)
5B 突出部
7 浴槽
21 背板部(第2の板部)
22a,22b 周壁部
23a,23b 仕切壁
26 前板部(第1の板部)
27a,27b 吸入口
28a,28b 吐出口
45a,45b 湯水流路
51a,51b 係合用凸部(係合部)
52 スリット
59a,59b 係合用孔(被係合部)
60 操作部
70 側壁(浴槽の)
79 ネジ体
99 熱源装置
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に取り付けられて使用され、風呂の追い焚き時において、浴槽内の湯水を熱源装置に送り出すとともにこの熱源装置によって加熱された湯水を浴槽内に戻すように湯を循環させるノズルとしての役割を果たす浴槽循環アダプタ、およびその構成部品である仕切具に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽循環アダプタの一般的な基本構成は、給湯器などの熱源装置に配管接続されて浴槽の側壁に取り付けられる固定具と、この固定具に取り付けられて浴槽内に配される仕切具とを備えた構成とされている(たとえば、特許文献1〜4を参照)。仕切具は、内部に湯水流路を形成し、かつ外面部には、前記湯水流路に繋がって浴槽内に湯水を吐出するための吐出口や、浴槽内の湯水を前記湯水流路に流入させる吸入口が設けられたケーシング状に構成されている。
【0003】
このような仕切具は、たとえば2つの仕切部材が組み合わされて形成されているが、この仕切具の内部には、湯水が流通するため、長期間にわたって使用された場合には、その内部が湯垢などによって汚れる。したがって、ユーザとしては、仕切具を分解し、その内部を容易に清掃できるようにすることを望む場合がある。
【0004】
しかしながら、従来においては、そのような要望に的確に応え得る仕切具は未だ提案されていないのが実情であった。すなわち、2つの仕切部材を組み合わせて仕切具を構成する場合には、その内部に湯水流路を適切に形成する必要があることから、2つの仕切部材の連結は確実かつ強固なものにする必要がある。このため、従来においては、たとえば2つの仕切部材が互いに分離しないようにこれらを接着させたり、あるいは複数本のネジ体を用いて連結するといった手段がよく採用されている。ところが、前者の手段では、2つの仕切部材を分離させることは困難である。また、後者の手段では、2つの仕切部材を分離させる場合に複数本のネジ体を緩めて取り外す必要があり、その作業は非常に煩雑である。
【0005】
なお、特許文献1においては、仕切具に相当する部分の全体を他の部分から容易に取り外すことが可能とされた浴槽循環アダプタの構造が開示されているものの、この構造は、仕切具を構成する2つの仕切部材を分離させてそれらの内部の清掃を容易にし得るものではない。また、特許文献2には、仕切具にカバーフィルタを装着させる場合の手段として、それらに凹凸状の係合手段を設けておき、これらを互いに係合させる手段が開示されている。仕切具の2つの仕切部材についても、それと同様な係合手段を用いて係合させることができればよいが、仕切部材においては、既述したとおり、2つの仕切部材の連結がより確実になされる必要があり、特許文献2に記載されているような係合手段をそのまま適用することは余り適切でない。仕切具においては、2つの仕切部材に湯水流路を形成するための仕切壁が形成されており、これら2つの仕切部材を互いに回転させて係合させるといった構造を採用し難いという特殊性もある。
【0006】
【特許文献1】特開2004−340543号公報
【特許文献2】特開2001−183011号公報
【特許文献3】特許第3180678号公報
【特許文献4】特開2003−279164号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、構成部品どうしの連結を確実かつ適切にものにし得る反面、内部の清掃作業などを容易に行なうことが可能な仕切具、およびこれを備えた浴槽循環アダプタを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される浴槽循環アダプタの仕切具は、第1の板部を有する第1の仕切部材と、第2の板部およびこの第2の板部の外周縁またはその近傍からその厚み方向に突出する周壁部を有し、かつ前記第1および第2の板部が互いに対向するようにして前記第1の仕切部材に連結される第2の仕切部材と、前記第1および第2の仕切部材の双方または一方に形成され、かつこれら第1および第2の仕切部材によって囲まれた領域に湯水用の吸入口および吐出口に繋がった一対の湯水流路を仕切り形成する仕切壁と、を備えている、浴槽循環アダプタの仕切具であって、前記第1の板部に設けられ、かつ前記第2の仕切部材の周壁部に嵌合可能な複数の突出部と、これら複数の突出部のそれぞれに設けられ、かつこれら複数の突出部を前記周壁部に嵌合させたときにこの周壁部から前記複数の突出部の抜け止めが図られるように、前記周壁部に設けられている凹状または凸状の複数の被係合部に係合させるための凸状または凹状の複数の係合部と、を備えており、前記複数の突出部の少なくとも1つは、前記第1の板部の外周縁に沿って延びる帯板状に形成されているとともに、この帯板状の突出部の一部は、前記第1の板部から分離していることにより、この帯板状の突出部の係合部とこれに対応する被係合部とが係合する所定の方向に弾発力を発揮可能な板バネとして構成されており、前記帯板状の突出部には、この突出部を前記所定の方向とは反対方向に撓み変形可能とする操作部が設けられていることを特徴としている。なお、本発明において、複数の突出部が第2の仕切部材の周壁部に「嵌合」可能であるとは、複数の突出部が第2の仕切部材の周壁部の全周にわたって接触するように嵌まる関係になくてもよく、複数の突出部が周壁部の一部に対して部分的に接触するように嵌まる関係をも含む概念である。
【0010】
このような構成によれば、次に述べるような効果が得られる。
【0011】
まず第1に、第1および第2の仕切部材どうしの連結は、第1の仕切部材の複数の突出部を第2の仕切部材の周壁部に嵌合させ、かつそれらの係合部を被係合部に係合させることにより行なうことができる。複数の突出部のうち、少なくとも1つの突出部は、板バネとして機能する帯板状の突出部として構成されており、この帯板状の突出部の弾発力を利用して、係合部と被係合部との係合状態を維持させ、これらの係合が安易に解除されないようにすることが可能である。したがって、第1および第2の仕切部材どうしの連結を確実なものにすることが可能となる。
【0012】
第2に、第1および第2の仕切部材どうしを連結させた状態において、操作部を操作して帯板状の突出部を撓み変形させれば、この突出部の係合部とこれに対応する被係合部との係合状態を解除させることができる。このことにより、第1の仕切部材を第2の仕切部材から簡単に取り外すことが可能となる。したがって、仕切具の分解をいわゆるワンタッチ操作で非常に簡単に行なわせることが可能となり、仕切具内部の清掃などを行なうのに好適なものとなる。もちろん、分解後において第1の仕切部材を第2の仕切部材に再度組み付ける作業も簡単に行なうことができる。
【0013】
第3に、複数の突出部のうち、少なくとも1つの突出部を板バネとして機能させるための手段として、突出部を帯板状とし、かつこの突出部の一部を第1の板部から分離させる構造を採用している。このため、それらの部分の構成は非常に簡素であり、第1の仕切部材を樹脂成形する場合には、第1の板部と帯板状の突出部とを一体的に成形することもできる。したがって、第1の仕切部材の製造は容易であり、製造コストを廉価にすることも可能である。一方、第2の仕切部材は、その周壁部に凹状または凸状の被係合部を設けるだけでよいため、やはりその製造も容易である。
【0014】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記帯板状の突出部の長手方向両端部のそれぞれは、前記第1の板部から分離していることにより、ともに板バネとして構成されており、これら両端部のそれぞれに、前記係合部および前記操作部が設けられている。
【0015】
このような構成によれば、1つの帯板状の突出部の長手方向両端部が、2つの突出部として機能するようになっている。したがって、その構成は合理的であり、突出部の数を少なくして全体の構成を簡素にするのに有利である。
【0016】
本発明の第2の側面により提供される浴槽循環アダプタは、浴槽の壁部に取り付けられて熱源装置と配管接続され、かつ内部に一対の湯水流路が形成されている固定具と、この固定具に連結されることにより前記浴槽内に配され、かつ前記固定具の一対の湯水流路に個々に連通する湯水用の吸入口および吐出口を有している仕切具と、を備えている、浴槽循環アダプタであって、前記仕切具としては、本発明の第1の側面により提供される浴槽循環アダプタの仕切具が用いられていることを特徴としている。
【0017】
このような構成によれば、本発明の第1の側面により提供される浴槽循環アダプタの仕切具について述べたのと同様な効果が得られる。
【0018】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0020】
図1〜図14は、本発明が適用された浴槽循環アダプタおよびその構成部品の一例を示している。本実施形態の浴槽循環アダプタAは、図15に示すように、浴槽7の側壁70に取り付けられ、かつ給湯器などの熱源装置99に対してたとえば2本の配管98を介して接続され、浴槽7内への湯水の落とし込みや、浴槽7内の湯水の追い焚きに利用される。
【0021】
図1および図2によく表われているように、この浴槽循環アダプタAは、外部配管連結体1aならびに内部締結体1bを有する固定具1、フロント部材2aならびにリア部材2bを有する仕切具2、およびこの仕切具2に取り付けられるカバーフィルタ3を備えている。フロント部材2aは、本発明でいう第1の仕切部材の一例に相当し、リア部材2bは、本発明でいう第2の仕切部材の一例に相当する。
【0022】
外部配管連結体1a、内部締結体1b、フロント部材2a、およびリア部材2bは、たとえばPPS(ポリフェニレンサルファイド)やその他の耐熱性や機械的強度に優れる樹脂製、あるいは強化プラスチック製である。このように浴槽循環アダプタAの構成部材の樹脂化を促進すれば、浴槽循環アダプタAの軽量薄型化や製造コストの低減化を図ることができる。カバーフィルタ3については、入浴者の身体が接触する虞れがあり、高い機械的強度が要求されるために、たとえばステンレス製とされている。ただし、各部材の具体的な材質は限定されるものではない。
【0023】
固定具1の外部配管連結体1aは、浴槽7の側壁70の外面側に配されるものであり、一端にフランジ120を有する略円筒状のハウジング12を有している。このハウジング12の他端には、熱源装置99と配管接続される一対の短管部13a,13bが取り付けられている。これらの短管部13a,13bは、ハウジング12と一体的に成形された構成とすることもできる。
【0024】
内部締結体1bは、浴槽7の内側から外部配管連結体1aに組み付けられるものであり、一端にフランジ140を有する筒状部14を備えている。この筒状部14の外周面には、ハウジング12の内周面に形成されている第1のネジ部15aに螺合する第2のネジ部15bが形成されている。これら第1および第2のネジ部15a,15bの締め付けにより、一対のフランジ120,140は浴槽7の側壁70の貫通孔71の周縁部を挟み付けており、この挟み付け作用により外部配管連結体1aおよび内部締結体1bは側壁70に固定されている。フランジ120,140間には、止水シール用のパッキン97a,97bが介装される。内部締結体1bの内部には、第3のネジ部15cが形成されているが、これは漏水検査器を固定具1に螺合装着するのに利用される。
【0025】
図3および図4に示すように、仕切具2のリア部材2bは、正面視の基本形状が略円形であり、かつ下部近傍に一対の切欠部21aが形成された背板部21と、この背板部21に一端が繋がった管状部20とを備えている。背板部21は、本発明でいう第2の板部の一例に相当する。背板部21には、この背板部21の外周に形成された上部周壁部22aならびに下部周壁部22b、仕切具2内に後述する一対の湯水流路45a,45bを形成するためのリブ状の仕切壁23b、および複数(たとえば計3つ)の円弧状長孔のネジ体挿通用孔24が設けられている。背板部21の中央部付近には、管状部20の内部に連通した略半円状の開口部25a、および管状部20の内部に対して非連通状態の略円弧状の開口部25bが形成されている。管状部20の一部は、屈曲部20aとして形成されているが、これは開口部25a,25bを互いに接近させて背板部21の中央部付近に配置させるのに役立つ。上部周壁部22aおよび下部周壁部22bには、このリア部材2bにフロント部材2aを取り付けるための複数(たとえば3つ)の係合用孔59a,59bが設けられている。これら係合用孔59a,59bは、本発明でいう被係合部の一例に相当するものであるが、その詳細については後述する。
【0026】
このリア部材2bは、3つのネジ体挿通用孔24に対し、図2に示すような複数のネジ体79が挿通されて固定具1の内部締結体1bに取り付けられる。内部締結体1bの前面部には、複数のネジ孔19が形成されており、この部分に各ネジ体79が螺合される。このリア部材2bの前面部には、後述するようにフロント部材2aが着脱可能であるが、そのような着脱はリア部材2bが内部締結体1bに取り付けられた状態のままで行なうことが可能である。
【0027】
図5および図6に示すように、フロント部材2aは、正面視の基本形状が略円形であり、かつ斜め下方に突出した一対の延設部26aを有する前板部26を備えている。この前板部26は、本発明でいう第1の板部の一例に相当し、リア部材2bの背板部21の前面部の全体を覆う役割を果たす。この前板部26の背面側には、リブ状の仕切壁が23aが形成されているが、このリブ状の仕切壁23aは、リア部材2bの仕切壁23bと重なり合って当接し得る形状である。フロント部材2aがリア部材2bの前面部に重なるようにして組み付けられた場合、仕切具2内にはこれら仕切壁23a,23bによって一対の湯水流路45a,45bが形成される。図12の網点模様を付した部分は、リア部材2bの背板部21の前面に形成された一対の湯水流路45a,45bであり、これら湯水流路45a,45bは、その内部を湯水が流れる場合に澱みを生じ難くなるように比較的シンプルな形状とされ、またその流路幅も所望の湯水流量を確保するのに必要最低限の幅またはそれに近い幅に抑えられている。リア部材2bの切欠部21aが形成された箇所は、吐出口28a,28bに相当する。仕切壁23a,23bの先端面どうしを互いに当接させる場合、それらを単に突き合わせるだけでもよいが、これに代えて、たとえば仕切壁23a,23bの一方に凸状リブを形成し、かつ他方に凹溝を形成し、これらを互いに嵌合させるようにしてもかまわない。このようにすると、仕切壁23a,23b間に隙間を生じ難くし、シール性を高めることができる。さらにシール性を高めるための手段として、仕切壁23a,23bの先端面どうしの間にパッキンを介在させるようにしてもかまわない。
【0028】
図13の網点模様で示すように、仕切具2内には湯水流路45a,45bを小サイズに形成したことに起因して、上部残余領域a1および下部残余領域a2も形成される。上部残余領域a1は、上部周壁部22aと仕切壁23bの上部との間に形成されている。仕切壁23bの上部は、略水平に延びるライン部230と、このライン部230の両端から斜め下方に延びた一対のライン部231とを有している。これら一対のライン部231と上部の周壁部22aとの間には、排水用の隙間44aが形成されている。下部残余領域a2は、下部周壁部22bと仕切壁23bの下部との間に形成されている。仕切壁23bの下部は、下部周壁部22bの両側方において斜め下方に延びる一対のライン部232を有しており、これらライン部232と下部周壁部22bの両端との間には、排水用の隙間44bが形成されている。下部周壁部22bは、下向きに突出した円弧状であるが、この周壁部22bの上面220は、前下がりの傾斜状に形成されている。上部残余領域a1および下部残余領域a2には、浴槽7内の湯水が流入する可能性があるが、前記したような構成によれば、浴槽7内の湯水を浴槽外部に排出させた際に、前記流入した湯水を排水用の隙間44a,44bを介して仕切具2の外部に適切に排出することが可能である。このような構成によれば、残留水に起因して前記の領域a1,a2が汚れることはなく衛生的である。また、冬季において前記残留水が凍結して仕切具2が破損するといった虞れも適切に回避される。
【0029】
図5および図6に示すように、フロント部材2aの前板部26には、前記した仕切壁23a以外に、この前板部26の厚み方向に貫通した一対の吸入口27a,27b、この前板部26の上部に位置する帯板状の突出部5A、および前板部26の下部に位置するやや細幅な突出部5Bも設けられている。吸入口27a,27bのそれぞれは、複数の扇形状の小孔が略円形状を呈するように並んでおり、それらの各中心部分に支持された一対の第1の弁体41a,41bによって開閉可能である。第1の弁体41a,41bは、可撓性を有する円板部に軸部が繋がった形態を有している。前板部26の一対の延設部26aには、第2の弁体42a,42bも取り付けられている。この第2の弁体42a,42bは、第1の弁体41a,41bと同様な材質の断面略L字状であり、湯水の吐出口28a,28bを実質的に開閉する役割を果たす。
【0030】
図7によく表われているように、帯板状の突出部5Aは、前板部26の外周縁からこの前板部26の厚み方向に突出し、かつ前板部26の外周縁に沿って円弧状に延びた板状であり、前板部26と一体成形されている。ただし、この突出部5Aの長手方向両端部50は、前板部26から分離しており、これら両端部50は、突出部5Aの長手方向中間部を基部として矢印Na方向に弾性復元力を伴って揺動可能な板バネとなっている。この板バネとしての機能を高めるための手段として、前板部26と突出部5Aとの間には、スリット52も形成されている。
【0031】
突出部5Aの長手方向両端部50には、一対の係合用凸部51a、および一対の操作部60が設けられている。係合用凸部51aは、突出部5Aの外面から前板部26の半径方向外方向けて突出した小突起状であり、突出部5Aと一体成形されている。操作部60は、たとえば図8に示すように、フロント部材2aとは別体に形成された樹脂製などの適当な部品6を溶着するなどして設けられている。操作部60は、略矩形の板状であり、その一部は前板部26の外周よりも半径方向外方に突出している。前板部26には、操作部60や突出部5Aの両端部50を前板部26の半径方向内方に変位させた際に、これらと前板部6との干渉を回避するための凹部260が設けられている。この凹部260は、突出部5Aの長手方向両端部50を前板部26から分離させて板バネとして機能させるのにも役立っている。リア部材2bの上部周壁部22aには、係合用凸部51aとの係合を行なわせるための2つの係合用孔59a、および部品6の突出部分61との干渉を避けるための2つの凹溝58が形成されている。係合用孔59aは、図面においては貫通孔として示されているが、非貫通孔として形成することもできる。
【0032】
突出部5Bは、帯板状の突出部5Aとは異なり、板バネ状には形成されておらず、前板部26からその厚み方向に突出した部分と、この部分から前板部26の半径方向外方に向けて突出した係合用凸部51bとを有している。なお、2つの突出部5A,5Bは、リア部材2bの上部および下部の周壁部22a,22bに部分的に嵌入し得る配置に設けられており、計3つの係合用凸部51a,51bは、前板部26の中心周りにおいて略等間隔な配置となっている。リア部材2bの下部周壁部22bには、係合用凸部51bとの係合が可能な係合用孔59bが形成されている。ただし、この下部周壁部22bの上面220は、先に説明したとおり、傾斜面とされているために、この傾斜面には、突出部5Bとの干渉を回避するための切欠溝223が形成されている(図3,図4を参照)。図9、図10に示すように、2つの突出部5A,5Bが利用されることにより、フロント部材2aはリア部材2bに着脱自在に組み付けられ、このことによって仕切具2が構成される。ただし、その詳細については後述する。
【0033】
図1および図2に示すように、仕切具2には、カバーフィルタ3が装着される。カバーフィルタ3は、円形キャップ状であり、その前面部には湯水通過用の複数の小孔30が形成されており、またその周壁部には、仕切具2の吐出口28a,28bに対向する開口部31が形成されている。なお、図2において、カバーフィルタ3の正面部に表わされた横長の略長円状部分は、小孔30が設けられていない閉塞面であり、浴槽7内から吸入口27a,27bに対して湯水が直接的に流入することを阻止する。このカバーフィルタ3は、仕切具2の前面や外周を覆うように取り付けられるが、その取り付け手段としては、このカバーフィルタ3の周壁部に適当な係止用凸部(図示略)を設けておき、この係止用凸部をたとえばリア部材2bの周壁部22a,22bに形成されている係止用段部221に係合させるといった手段を用いることができる(図3,図4を参照)。カバーフィルタ3と仕切具2との取り付け構造においては、それらの間に止水シールを図るといった必要はなく、またカバーフィルタ3を仕切具2に対して相対回転させて取り付けるといったことが可能であるため、カバーフィルタの取り付け手段としては、前記したような比較的簡易な係合手段を採用することが可能である。なお、カバーフィルタ3は、フロント部材2aの操作部60との干渉が回避される構造に形成されている。
【0034】
図1に示すように、仕切具2の管状部20は、外部配管連結体1aの内筒部17に嵌合している。固定具1の内部には、短管部13aの内部およびこれに繋がった領域を含む湯水流路16a、および短管部13bの内部およびこれに繋がった領域を含む湯水流路16bが形成されており、仕切具2の湯水流路45a,45bは、湯水流路16a,16bと個々に連通している。
【0035】
この浴槽循環アダプタAにおいては、次に述べるような湯水の流れを生じるように構成されている。すなわち、図14(a)に示すように、短管部13a,13bがそれぞれ戻り側、往き側とされた状態では、湯水流路16a,45a内が負圧となるため、第1の弁体41aが開き、浴槽7内の湯水は、吸入口27aから湯水流路45a,16aに流入して熱源装置99に戻される。一方、熱源装置99から湯水流路16b,45bに湯が供給されると、これらの部分の圧力が上昇するため、第2の弁体42bが開き、吐出口28bからから浴槽7内に湯水が吐出される。これとは異なり、同図(b)に示すように、短管部13a,13bがそれぞれ往き側、戻り側とされた状態では、湯水流路16a,45a内の圧力上昇により第2の弁体42aが開き、吐出口28aから浴槽7内に湯水が吐出される。一方、湯水流路16b,45b内は負圧となるため、第1の弁体41bが開いて吸入口27bから湯水流路45b,16bに浴槽7内の湯水が流入する。このように、この浴槽循環アダプタAにおいては、短管部13a,13bのそれぞれが往き側および戻り側のいずれに設定される場合であっても、浴槽7内の湯水を適切に循環させることができる。また、この浴槽循環アダプタAは、浴槽7内への湯の落とし込みにも利用可能である。図14(c)に示すように、短管部13a,13bの双方に湯水が供給されると、第1の弁体41a,41bは、それらの圧力に起因して閉じ状態を維持するのに対し、第2の弁体42a,42bは、前記圧力によって開く。したがって、吐出口28a,28bのそれぞれから浴槽7内に湯水が吐出されることとなり、湯を落とし込む際の流量を多くすることができる。
【0036】
次に、この浴槽循環アダプタAの作用について説明する。
【0037】
まず、仕切具2のリア部材2bにフロント部材2aを組み付けた状態においては、図9に示すように、フロント部材2aの2つの突出部5A,5Bがリア部材2bの上部および下部の周壁部22a,22bの内側に嵌合している。帯板状の突出部5Aの外面については、上部周壁部22aの内側面に対して広い面積で接触させることができるために、その嵌合状態を安定させる効果も得られる。突出部5A,5Bのそれぞれの係合用凸部51a,51bは、図10(a)および図11に示すように、リア部材2bの係合用孔59a,59bに係合させることができる。帯板状の突出部5Aの両端部50は、既述したとおり、板バネとして機能するために、図10(a)に示すように、この突出部5Aを矢印Nb方向に弾発付勢する力を利用して、係合用凸部51aと係合用孔59aとの係合状態が解除されないようにすることができる。また、突出部5Aを上部周壁部22aの内側面に圧接させることも可能となり、その反作用によって、突出部5Bの係合用凸部51bについても係合用孔59bとの係合状態が解除されないようにすることができる。このようなことから、仕切具2の組み立てが確実なものとなる。
【0038】
次いで、前記した仕切具2の組み立て状態において、突出部5Aの弾発力に抗して各操作部60を背板部26の半径方向内方(矢印Nbとは反対方向)に押圧すると、図10(b)に示すように、係合用凸部51aが係合用孔59aから簡単に抜き外れ、それらの係合状態が解除される。したがって、フロント部材2aの上部をリア部材2bから離脱させることができる。また、このようにフロント部材2aの上部をリア部材2bから離脱させると、フロント部材2aの下部に位置する突出部5Bの係合用凸部51bについても係合用孔59bから簡単に抜き外すことが可能となり、フロント部材2aの全体をリア部材2bから容易に離脱させることができる。操作部60の一部は、仕切具2の組み立て状態において、背板部26や上部外周壁22aよりも半径方向外方に突出しているために、この操作部60の押圧操作も容易である。このようなことから、この浴槽循環アダプタAにおいては、フロント部材2aをリア部材2bから取り外す作業が容易であり、仕切具2内部の清掃も簡単に行なえることとなる。また、清掃後にフロント部材2aを組み付ける場合には、突出部5A,5Bをリア部材2bの上部および下部の周壁部22a,22bに嵌合させるように押し込むだけでよく、やはりその組み付け作業も容易である。
【0039】
以上述べたように、この浴槽循環アダプタAにおいては、仕切具2のフロント部材2aの取り外し作業を容易しつつ、その組み付けは確実なものとすることができる。突出部5Aに弾発付勢力をもたせるための手段として、この突出部5Aを帯板状に形成し、かつこの突出部5Aの一部を前板部26から分離させるという簡易な手段を採用しているために、その構成は容易であり、突出部5Aと背板部26とを一体成形することによって、製造コストも廉価にすることもできる。また、突出部5Aをこのような帯板状に形成して前板部26の外周縁に沿って設けているが故に、操作部60を操作し易いように外部に一部突出した状態に取り付けることもできる。突出部5Aは、その長手方向両端部50のそれぞれがバネ板として機能するとともに、それら両端部50には係合用凸部51aが個々に設けられており、この突出部5Aは、2つの突出部に相当する役割を果たしている。したがって、その構成は合理的であり、フロント部材2aに設けられる突出部の数を少なくして仕切具全体の構造の簡素化を図るのにも好適となる。
【0040】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る浴槽循環アダプタおよび仕切具の各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0041】
上述の実施形態においては、2つの突出部5A,5Bのうち、突出部5Aのみを板バネとして機能する帯板状とし、かつ突出部5Bをそのような機能を有しないものとして構成しているが、本発明はこれに限定されない。本発明においては、複数の突出部の全てを突出部5Aのように板バネとして機能し得るものに構成してもかまわない。ただし、そのように構成すると、構造が複雑化し、また操作部の数も多くする必要が生じる。したがって、構造の簡素化や操作性の観点からすると、上述の実施形態のように、板バネ機能を有する帯板状の突出部と、そのような機能を有しない突出部とを組み合わせた構成とすることが好ましい。また、帯板状の突出部は、必ずしもその長手方向両端部のそれぞれが板バネとされて係合用凸部を個々に有する構成とされていなくてもよく、たとえば長手方向一端部のみが板バネとされて係合用凸部を有する構成とすることもできる。
【0042】
上述の実施形態においては、フロント部材2aに係合部としての係合用凸部51a,5bを有する突出部5A,5Bが設けられて、リア部材2bに被係合部としての係合用孔59a,59bが設けられているが、本発明においては、これとは反対の構成することもできる。すなわち、リア部材に係合部を有する突出部が設けられて、フロント部材に被係合部が設けられた構成とすることもできる。この場合、リア部材が本発明でいう第1の仕切部材に相当し、フロント部材が本発明でいう第2の仕切部材に相当することとなる。本発明でいう係合部および被係合部は、凸状および凹状のいずれであるかも問わない。凹状には、孔部も含まれる。第1の仕切部材に設けられる複数の突出部は、第2の仕切部材の周壁部に嵌入させるのではなく、外嵌させる構成とすることもできる。
【0043】
仕切具は、一対の湯水流路45a,45bが往き側と戻り側とのいずれにも対応し得る無極性タイプのものとして構成されることが好ましいが、やはりこれに限定されず、往き側と戻り側とが固定化されたタイプ(湯水用の吸入口および吐出口が1組のみ設けられているタイプ)に構成することもできる。
【0044】
本発明に係る浴槽循環アダプタの固定具は、種々の構成に製作することが可能であり、たとえば固定具としては、浴槽の側壁をその両側から挟み付ける手段とは異なる手段によって浴槽の壁部に取り付ける構成とすることもできる。固定具に対する仕切具の具体的な取り付け手段も限定されない。浴槽循環アダプタの取り付け部位は、浴槽の側壁に限らず、たとえば浴槽の底壁とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明に係る浴槽循環アダプタの一例を示す断面図である。
【図2】図1に示す浴槽循環アダプタの分解斜視図である。
【図3】図1に示す浴槽循環アダプタの仕切具を構成するリア部材の斜視図である。
【図4】(a)は、図3に示すリア部材の正面図であり、(b)は、(a)のIV−IV線断面図である。
【図5】(a)は、図1に示す浴槽循環アダプタの仕切具を構成するフロント部材の斜視図である。
【図6】(a)は、図5に示すフロント部材の正面図であり、(b)は、(a)のVI−VI線断面図である。
【図7】図1に示す浴槽循環アダプタの仕切具の分解概略斜視図である。
【図8】図7の要部分解斜視図である。
【図9】図7に示す仕切具の組み立て状態の正面断面図である。
【図10】(a)は、図9のX−X線要部断面図であり、(b)は、(a)に示す部分の動作状態を示す要部断面図である。
【図11】図9のXI−XI線要部断面図である。
【図12】図7に示す仕切具内に形成される湯水流路の説明図である。
【図13】図7に示す仕切具内部の湯水流路以外の領域を示す説明図である。
【図14】(a)〜(c)は、図1に示す浴槽循環アダプタにおける湯水の流れを示す断面図である。
【図15】図1に示す浴槽循環アダプタの取り付け使用状態を示す概略斜視図である。
【符号の説明】
【0046】
A 浴槽循環アダプタ
1 固定具
2 仕切具
2a フロント部材(第1の仕切部材)
2b リア部材(第2の仕切部材)
5A 突出部(帯板状の)
5B 突出部
7 浴槽
21 背板部(第2の板部)
22a,22b 周壁部
23a,23b 仕切壁
26 前板部(第1の板部)
27a,27b 吸入口
28a,28b 吐出口
45a,45b 湯水流路
51a,51b 係合用凸部(係合部)
52 スリット
59a,59b 係合用孔(被係合部)
60 操作部
70 側壁(浴槽の)
79 ネジ体
99 熱源装置
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の板部を有する第1の仕切部材と、
第2の板部およびこの第2の板部の外周縁またはその近傍からその厚み方向に突出する周壁部を有し、かつ前記第1および第2の板部が互いに対向するようにして前記第1の仕切部材に連結される第2の仕切部材と、
前記第1および第2の仕切部材の双方または一方に形成され、かつこれら第1および第2の仕切部材によって囲まれた領域に湯水用の吸入口および吐出口に繋がった一対の湯水流路を仕切り形成する仕切壁と、
を備えている、浴槽循環アダプタの仕切具であって、
前記第1の板部に設けられ、かつ前記第2の仕切部材の周壁部に嵌合可能な複数の突出部と、
これら複数の突出部のそれぞれに設けられ、かつこれら複数の突出部を前記周壁部に嵌合させたときにこの周壁部から前記複数の突出部の抜け止めが図られるように、前記周壁部に設けられている凹状または凸状の複数の被係合部に係合させるための凸状または凹状の複数の係合部と、を備えており、
前記複数の突出部の少なくとも1つは、前記第1の板部の外周縁に沿って延びる帯板状に形成されているとともに、
この帯板状の突出部の一部は、前記第1の板部から分離していることにより、この帯板状の突出部の係合部とこれに対応する被係合部とが係合する所定の方向に弾発力を発揮可能な板バネとして構成されており、
前記帯板状の突出部には、この突出部を前記所定の方向とは反対方向に撓み変形可能とする操作部が設けられていることを特徴とする、浴槽循環アダプタの仕切具。
【請求項2】
前記帯板状の突出部の長手方向両端部のそれぞれは、前記第1の板部から分離していることにより、ともに板バネとして構成されており、これら両端部のそれぞれに、前記係合部および前記操作部が設けられている、請求項1に記載の浴槽循環アダプタの仕切具。
【請求項3】
浴槽の壁部に取り付けられて熱源装置と配管接続され、かつ内部に一対の湯水流路が形成されている固定具と、
この固定具に連結されることにより前記浴槽内に配され、かつ前記固定具の一対の湯水流路に個々に連通する湯水用の吸入口および吐出口を有している仕切具と、
を備えている、浴槽循環アダプタであって、
前記仕切具としては、請求項1または2に記載の浴槽循環アダプタの仕切具が用いられていることを特徴とする、浴槽循環アダプタ。
【請求項1】
第1の板部を有する第1の仕切部材と、
第2の板部およびこの第2の板部の外周縁またはその近傍からその厚み方向に突出する周壁部を有し、かつ前記第1および第2の板部が互いに対向するようにして前記第1の仕切部材に連結される第2の仕切部材と、
前記第1および第2の仕切部材の双方または一方に形成され、かつこれら第1および第2の仕切部材によって囲まれた領域に湯水用の吸入口および吐出口に繋がった一対の湯水流路を仕切り形成する仕切壁と、
を備えている、浴槽循環アダプタの仕切具であって、
前記第1の板部に設けられ、かつ前記第2の仕切部材の周壁部に嵌合可能な複数の突出部と、
これら複数の突出部のそれぞれに設けられ、かつこれら複数の突出部を前記周壁部に嵌合させたときにこの周壁部から前記複数の突出部の抜け止めが図られるように、前記周壁部に設けられている凹状または凸状の複数の被係合部に係合させるための凸状または凹状の複数の係合部と、を備えており、
前記複数の突出部の少なくとも1つは、前記第1の板部の外周縁に沿って延びる帯板状に形成されているとともに、
この帯板状の突出部の一部は、前記第1の板部から分離していることにより、この帯板状の突出部の係合部とこれに対応する被係合部とが係合する所定の方向に弾発力を発揮可能な板バネとして構成されており、
前記帯板状の突出部には、この突出部を前記所定の方向とは反対方向に撓み変形可能とする操作部が設けられていることを特徴とする、浴槽循環アダプタの仕切具。
【請求項2】
前記帯板状の突出部の長手方向両端部のそれぞれは、前記第1の板部から分離していることにより、ともに板バネとして構成されており、これら両端部のそれぞれに、前記係合部および前記操作部が設けられている、請求項1に記載の浴槽循環アダプタの仕切具。
【請求項3】
浴槽の壁部に取り付けられて熱源装置と配管接続され、かつ内部に一対の湯水流路が形成されている固定具と、
この固定具に連結されることにより前記浴槽内に配され、かつ前記固定具の一対の湯水流路に個々に連通する湯水用の吸入口および吐出口を有している仕切具と、
を備えている、浴槽循環アダプタであって、
前記仕切具としては、請求項1または2に記載の浴槽循環アダプタの仕切具が用いられていることを特徴とする、浴槽循環アダプタ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
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【図4】
【図5】
【図6】
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【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2007−120850(P2007−120850A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−312897(P2005−312897)
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(000004709)株式会社ノーリツ (1,293)
【Fターム(参考)】
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