説明

浴槽循環アダプタおよびその配管接続具

【課題】熱源装置との配管接続作業性やその他の事項に支障を生じさせるようなことなく、ハウジングの小サイズ化や全体の樹脂化を好適に図ることが可能な浴槽循環アダプタの配管接続具を提供する。
【解決手段】筒状部12およびその一端を塞ぐ背面部13を有するハウジング1と、このハウジング1に繋げて設けられ、かつハウジング1内に形成された第1および第2の湯水流路15a,15bに内部が連通する第1および第2の管体部5a,5bと、を備えている、浴槽循環アダプタAの配管接続具B1であって、第1の管体部5aは、この第1の管体部5aの軸長方向に延びる平面状の内壁面520aを有し、この平面状の内壁面520aの形成箇所は、ハウジング1の筒状部12の周壁に交差して繋がっており、この交差部分に、第1の管体部5aの内部を第1の湯水流路15aに連通させる開口部16aが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に取り付けられて使用され、風呂の追い焚き時において、浴槽内の湯水を熱源装置に送り出すとともにこの熱源装置によって加熱された湯水を浴槽内に戻すように湯を循環させるノズルとしての役割を果たす浴槽循環アダプタ、およびその構成部品である配管接続具に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽循環アダプタの一般的な基本構成は、給湯器などの熱源装置に配管接続されて浴槽の側壁に取り付けられる配管接続具を備え、この配管接続具には、浴槽内において湯水の吐出や吸入を行なわせるための仕切具が連結された構成とされている(たとえば、特許文献1,2を参照)。このような浴槽循環アダプタの配管接続具の一例を図10に示す。この配管接続具は、筒状部90aおよびその一端を塞ぐ背面部90bを有するキャップ状のハウジング90に、一対の管体部91が繋げて設けられた構成を有している。一対の管体部91は、熱源装置(図示略)に配管接続される部分であり、それらの先端部91aには、たとえば配管接続用の袋ナット(図示略)が設けられる。ハウジング90の内部には、一対の管体部91に個々に繋がった一対の湯水流路(図示略)が形成されており、これら一対の湯水流路は、このハウジング90に別途取り付けられる仕切具(図示略)の吐出口および吸入口に連通するように設定される。このような構成によれば、熱源装置から浴槽内への湯水の供給、および浴槽内から熱源装置への湯水の戻しが可能である。
【0003】
しかしながら、前記従来技術においては、次に述べるような不具合があった。
【0004】
すなわち、一対の管体部91の各先端部91aには、既述したとおり、配管接続用の袋ナットなどの接続具が設けられ、熱源装置との配管接続がなされる。この配管接続作業を適切に行なうためには、管体部91の先端部91aどうしの間隔L1をある程度の大きさに設定する必要がある。これに対し、前記従来技術においては、一対の管体部91の基端部91bは、いずれもハウジング90の背面部90bに繋げられている。このため、ハウジング90の直径D1が小さい場合には、基端部91bどうしの間隔L2も小さくなる。そこで、従来においては、一対の管体部91の一方に曲げ加工を施すことにより、先端部91aどうしの間隔L1を大きくしている。ところが、このような管体部91の曲げ加工は、配管接続具の製造コストを上昇させる。また、製造コストの低減を図る観点からすると、配管接続具全体の樹脂化を図ることが望まれるが、管体部91とハウジング90とを一体的に樹脂成形する場合、管体部91を曲管状に成形することは難しい。したがって、配管接続具全体の樹脂化も困難となっていた。
【0005】
従来においては、図11に示すように、一対の管体部91をともに直管状にしたものもある。ところが、このような手段において、先端部91aどうしの間隔L1を大きくするためには、ハウジング90の直径D1が大きくなければならない。したがって、ハウジング90の小型化を好適に図ることは困難である。
【0006】
【特許文献1】特許第3180678号公報
【特許文献2】特開2004−270969号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような事情のもとで考え出されたものであって、熱源装置との配管接続作業性やその他の事項に支障を生じさせるようなことなく、ハウジングの小サイズ化や全体の樹脂化を好適に図ることが可能な配管接続具、およびこれを備えた浴槽循環アダプタを提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を講じている。
【0009】
本発明の第1の側面により提供される浴槽循環アダプタの配管接続具は、筒状部およびこの筒状部の一端を塞ぐ背面部を有し、かつこれらによって囲まれた領域に第1および第2の湯水流路を形成しているハウジングと、このハウジングに繋げて設けられ、かつ前記第1および第2の湯水流路に内部が連通する第1および第2の管体部と、を備えている、浴槽循環アダプタの配管接続具であって、前記第1の管体部は、この第1の管体部の軸長方向に延びる平面状の内壁面を有し、この平面状の内壁面の形成箇所は、前記ハウジングの筒状部の周壁に交差して繋がっており、この交差部分に、前記第1の管体部の内部を前記第1の湯水流路に連通させる開口部が設けられていることを特徴としている。
【0010】
このような構成によれば、次に述べるような効果が得られる。
【0011】
第1の管体部は、ハウジングの筒状部の周壁に繋がっているために、この第1の管体部を背面部に繋げている場合よりも、ハウジングの中心から遠ざかった箇所に第1の管体部を配置させることが可能となる。したがって、従来技術と比較すると、第1および第2の管体部どうしの間隔を大きくすることが可能となる。その結果、ハウジングが比較的小サイズであっても、第1および第2の管体部に曲げ加工を施すことなく、それらの先端部の間隔を大きくとり、熱源装置との配管接続に支障を生じないようにすることができる。このようなことから、本発明によれば、ハウジングの小型化を図りつつ、配管接続具全体を容易かつ適切に樹脂成形することが可能となり、製造コストの低減を達成し得る。
【0012】
さらに重要な効果として、本発明によれば、第1の管体部の内部と第1の湯水流路とを連通させる開口部の面積を大きくし、湯水の流れを円滑にすることが可能である。理解の容易のため、この点について、図7を参照して説明する。まず、同図(a)に示すように、2つの円柱80,81の外面およびその近傍部分どうしが交差する場合、その交差部83はたとえば楕円状となり、それらの交差深度が浅い場合、交差部83の面積は非常に小さい。これに対し、同図(b)に示すように、円柱80と四角柱82とが交差する場合、その交差部84は矩形状となり、交差深度が浅い場合であっても、交差部84の面積は比較的大きい。本発明においては、第1の管体部がこの第1の管体部の軸長方向に延びる平面状の内壁面を有し、かつこの部分がハウジングの筒状部の周壁に交差しているために、図7(b)に示したのと同様な原理が得られることとなる。このことにより、第1の管体部とハウジングの筒状部の周壁との交差深度が浅い場合であっても、第1の管体部の内部と第1の湯水流路とを連通させる開口部の面積を大きくして湯水の流通性を良好なものとし、P−Q特性上有利なものにすることができる。
【0013】
本発明の第2の側面により提供される浴槽循環アダプタの配管接続具は、筒状部およびこの筒状部の一端を塞ぐ背面部を有し、かつこれらによって囲まれた領域に第1および第2の湯水流路を形成しているハウジングと、このハウジングに繋げて設けられ、かつ前記第1および第2の湯水流路に内部が連通する第1および第2の管体部と、前記ハウジング内に位置し、かつその内部が前記第2の湯水流路とされている内側筒状部と、を備えている、浴槽循環アダプタの配管接続具であって、前記第2の管体部は、この第2の管体部の軸長方向に延びる平面状の内壁面を有し、この平面状の内壁面の形成箇所は、前記内側筒状部の周壁に交差して繋がっており、かつこの交差部分に、前記第2の管体部の内部を前記第2の湯水流路に連通させる開口部が設けられていることを特徴としている。
【0014】
このような構成によれば、第1の管体部をハウジングの筒状部の周壁に交差させる場合について述べたのと同様な原理により、第2の管体部をハウジング内の内側筒状部の中心から遠ざかった配置、ひいては第1の管体部から遠ざかった配置とすることが可能となる。したがって、第1および第2の管体部を曲げることなくそれらの間隔を大きくし、配管接続具の樹脂化の促進、ならびにハウジングの小型化を図ることができる。また、第2の管体部の内部と第2の湯水流路とを連通させる開口部の面積を大きくし、この部分における湯水の流通性を良好にすることもできる。
【0015】
本発明の好ましい実施の形態においては、本発明の第1の側面および第2の側面によってそれぞれ提供される浴槽循環アダプタの配管接続具の主要構成部分どうしを組み合わせた構成とされる。より具体的には、本発明の第1の側面により提供される浴槽循環アダプタの配管接続具において、前記ハウジング内に位置する内側筒状部を備え、かつこの内側筒状部の内部が前記第2の湯水流路とされており、前記第2の管体部は、この第2の管体部の軸長方向に延びる平面状の内壁面を有し、この平面状の内壁面の形成箇所は、前記内側筒状部の周壁に交差して繋がっており、この交差部分に、前記第2の管体部の内部を前記第2の湯水流路に連通させる開口部が設けられている。
【0016】
このような構成によれば、第1および第2の管体部どうしの間隔をさらに広げることが可能となる。
【0017】
本発明の好ましい実施の形態においては、前記第1および第2の管体部のうち、前記平面状の内壁面が形成されている管体部は、断面矩形状の孔が内部に形成されたものである。
【0018】
このような構成によれば、たとえば管体部の孔をたとえば半円状やD字状に形成することによって平面状の内壁面を形成する場合と比較すると、管体部の大径化を抑制しつつ、流路面積を大きくするのに好ましいものとなる。また、配管接続具を樹脂成形する場合、その成形用金型の形状が複雑化することを抑制し、その製作も容易となり、さらにはバリも発生し難くすることができる。
【0019】
本発明の第3の側面により提供される浴槽循環アダプタは、浴槽の壁部に取り付けられて熱源装置に配管接続され、かつ内部に一対の湯水流路が形成されている配管接続具と、この配管接続具に連結されることにより前記浴槽内に配され、かつ前記配管接続具の一対の湯水流路に個々に連通する湯水用の吸入口および吐出口を有している仕切具と、を備えている、浴槽循環アダプタであって、前記配管接続具として、本発明の第1の側面または第2の側面により提供される浴槽循環アダプタの配管接続具が用いられていることを特徴としている。
【0020】
このような構成によれば、本発明の第1の側面または第2の側面により提供される浴槽循環アダプタの配管接続具について述べたのと同様な効果が得られる。
【0021】
本発明のその他の特徴および利点は、添付図面を参照して以下に行なう発明の実施の形態の説明から、より明らかになるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、図面を参照して具体的に説明する。
【0023】
図1〜図5は、本発明が適用された浴槽循環アダプタおよびその構成部品の一例を示している。本実施形態の浴槽循環アダプタAは、図6に示すように、浴槽7の側壁70に取り付けられ、かつ給湯器などの熱源装置99に対してたとえば2本の配管98を介して接続されることにより、浴槽7内への湯水の落とし込みや、浴槽7内の湯水の追い焚きに利用される。図1〜図3によく表われているように、この浴槽循環アダプタAは、配管接続具B1、内部締結体6、フロント部材2aならびにリア部材2bを有する仕切具2、およびこの仕切具2に取り付けられるカバーフィルタ3を備えている。
【0024】
配管接続具B1は、浴槽7の側壁70の外面側に配置されるものであり、たとえばPPS(ポリフェニレンサルファイド)などの耐熱性や機械的強度に優れる樹脂製(強化プラスチックも含む)である。図4(a)〜(d)に示すように、この配管接続具B1は、ハウジング1と、このハウジング1に一体成形された第1および第2の管体部5a,5bとを備えている。
【0025】
ハウジング1は、全体の概略形状が前面開口のキャップ状とされており、先端部外周に中空円板状のフランジ11を有する略円筒状の筒状部12と、この筒状部12の背面部を塞ぐ背面部13とを有している。筒状部12は、前面寄り部12aよりも背面寄り部12bの方が外径および内径が小さくされた段付き形状とされている。前面寄り部12aの内周には、後述するように内部締結体6との連結を図るためのネジ部120が形成されている。このハウジング1の内部には、筒状部12と同心状の内部筒状部14が一体的に形成されており、この内部筒状部14の背面側も背面部13によって塞がれている。ハウジング1の内部のうち、筒状部12と内部筒状部14との間に形成された空間領域は、第1の湯水流路15aである。内部筒状部14の内部は、第2の湯水流路15bである。
【0026】
第1および第2の管体部5a,5bは、熱源装置99の配管98との接続を図るための部分である。それらの先端開口部50には、ネジ部19aを有する一対のジョイント管19が嵌合装着され、これらジョイント管19を介して配管98との接続が図られる。先端開口部50の外周縁に形成されたフランジ部51には、ジョイント管19の一部分に係止させるための係止具(図示略)が装着され、この係止具の係止作用によってジョイント管19は先端開口部50から抜けないように保持される。もちろん、このようなジョイン管19を用いる手段に代えて、第1および第2の管体部5a,5bの先端部外周に配管接続用のネジ部を形成した構成とすることもできる。
【0027】
第1および第2の管体部5a,5bは、ともにハウジング12の中心軸C1と同方向に延びる直管状であり、中心軸C1を挟んで互いに正反対の配置となるように設けられている。また、これら第1および第2の管体部5a,5bは、先端開口部50を含む先端寄り領域Saと、これ以外の基端寄り領域Sbとに区分されている。各先端寄り領域Saは、断面中空円形状であり、その内部は円形孔である。これに対し、各基端寄り領域Sbは、断面中空矩形状であり、その内部には、矩形孔52a,52bが形成されている。本実施形態においては、それら矩形孔52a,52bは、正方形とされ、基端寄り領域Sbは、そのような矩形孔52a,52bを規定する複数(4つ)の平面状の内壁面520a,520bを有している。
【0028】
第1の管体部5aの基端寄り領域Sbの一部は、筒状部12の背面寄り部12bの周壁に交差して繋がっており、この交差部分には、矩形孔52aと第1の湯水流路15aとを連通させる開口部16aが形成されている。第2の管体5bの基端寄り領域Sbの一部は、内部筒状部14の周壁に交差して繋がっており、この交差部分には、矩形孔52bと第2の湯水流路15bとを連通させる開口部16bが形成されている。これらの開口部16a,16bは、後述するように、矩形状であり、その面積は比較的大きくされている。
【0029】
図1〜図3に示すように、内部締結体6は、外周面にネジ部60aが形成された筒状部60と、この筒状部60に連設されたフランジ61とを有している。この内部締結体6は、ネジ部60aを配管接続具B1のネジ部120に螺合させるようにして配管接続具B1に対して浴槽7の内側から組み付けられている。一対のフランジ11,61は、止水用のパッキン97a,97bを介して浴槽7の側壁70の貫通孔71の周縁部を挟み付けるようになっており、この挟み付け作用により、配管接続具B1および内部締結体6は側壁70に固定されている。
【0030】
仕切具2は、浴槽7内において湯水の吐出や吸入を行なうためのものであり、そのフロント部材2aは、一対の吸入口27a,27b、およびこれらを開閉可能な一対の第1の弁体41a,41bが設けられた前板部26を有している。仕切具2のリア部材2bは、管体部20に繋がった背板部21を有しており、このリア部材2bの前面部にフロント部材2aが重ねられて組み付けられていることにより、これらの内部には、一対の湯水流路45a,45bが形成されている。この仕切具2の外周面部には、湯水流路45a,45bに繋がった一対の吐出口28a,28bが形成され、またそれらの奥部には、吐出口28a,28bを実質的に開閉する一対の第2の弁体42a,42bも設けられている。この仕切具2は、リア部材2bの管体部20が配管接続具B1の内部筒状部14に嵌合されるようにして内部締結体6に組み付けられる。この組み付けは、図2によく表われているように、仕切具2に設けられている複数のネジ体挿通用孔24a,24bに複数のネジ体79を挿通し、かつこれらを内部締結体6の前面部の複数のネジ孔62に螺合させることにより行なわれる。このようにして仕切具2の組み付けがなされていることにより、図1に示すように、配管接続具B1の第1および第2の湯水流路15a,15bは、仕切具2の湯水流路45a,45bに連通している。カバーフィルタ3は、円形キャップ状であり、仕切具2の前面や外周を覆うように取り付けられる。このカバーフィルタ3の前面部には湯水通過用の複数の小孔30が形成されており、また周壁部には、吐出口28a,28bに対向する開口部31が形成されている。なお、図2において、カバーフィルタ3の正面部に表わされた横長の略長円状部分は、小孔30が設けられていない閉塞面であり、浴槽7内から吸入口27a,27bに対して湯水が直接的に流入することを阻止する。
【0031】
この浴槽循環アダプタAは、次のような湯水の流れを生じるように構成されている。すなわち、図5(a)に示すように、第1および第2の管体部5a,5bがそれぞれ往き側、戻り側とされた場合、熱源装置99から湯水流路15a,45aに湯水が供給されると、これらの部分の圧力が上昇するため、第2の弁体42aが開き、吐出口28aから浴槽7内に湯水が吐出される。一方、湯水流路15b,45b内は負圧となるため、第1の弁体41bが開き、浴槽7内の湯水は、吸入口27bから湯水流路45b,15bに流入して熱源装置99に戻される。これとは異なり、同図(b)に示すように、第1および第2の管体部5a,5bがそれぞれ戻り側、往き側とされた場合には、湯水流路15b,45b内の圧力上昇により第2の弁体42bが開き、吐出口28bから浴槽7内に湯水が吐出される。その際、湯水流路15a,45a内は負圧となるため、第1の弁体41aが開いて吸入口27aから湯水流路45a,15aに浴槽7内の湯水が流入する。このように、この浴槽循環アダプタAにおいては、第1および第2の管体部5a,5bのそれぞれが往き側および戻り側のいずれに設定される場合であっても、浴槽7内の湯水を適切に循環させることが可能な無極性タイプとなっている。
【0032】
この浴槽循環アダプタAは、浴槽7への湯の落とし込みにも利用可能である。図5(c)に示すように、第1および第2の管体部5a,5bの双方に湯水が供給されると、第1の弁体41a,41bは、それらの圧力に起因して閉じ状態を維持するのに対し、第2の弁体42a,42bは、前記圧力によって開く。したがって、吐出口28a,28bのそれぞれから浴槽7内に湯水が吐出されることとなり、湯を落とし込む際の流量を多くすることができる。
【0033】
次に、浴槽循環アダプタAの作用について説明する。
【0034】
まず、図1において、配管接続具B1の第1の管体部5aは、既述したとおり、ハウジング1の筒状部12の周壁に繋がっており、この周壁に第1の湯水流路15aとの連通を図るための開口部16aが形成されている。このため、第1の管体部5aがたとえばハウジング1の背面部13に繋げられてこの背面部13に開口部を形成している場合と比較すると、第1の管体部5aをハウジング1の中心軸C1から遠ざけた配置とし、その距離Laを大きくとることが可能となる。また、第2の管体部5bは、ハウジング1の内部筒状部14の周壁に繋がっており、この周壁に第2の湯水流路5bとの連通を図るための開口部16bが形成されている。このため、第2の管体部5aが背面部13に繋がってこの背面部13に開口部を形成している場合と比較すると、この第2の管体部5aを中心軸C1から遠ざけた配置とし、その距離Lbを大きくとることができる。このようなことから、ハウジング1の直径を大きくすることなく、第1および第2の管体部5a,5bどうしの距離Lcを比較的大きくとることができる。その結果、第1および第2の管体部5a,5bに対する一対のジョイント管19の装着作業、およびこのジョイント管19に対する配管98の接続作業を適切に行なうことが可能となる。また、前記の距離Lcを大きくすることを目的として第1および第2の管体部5a,5bの双方または一方を曲げる必要もなくなり、これらは直管状でよい。したがって、その成形も容易となり、第1および第2の管体部5a,5bとハウジング1とを容易に一体成形することができる。
【0035】
ハウジング1の筒状部12および内部筒状部14のそれぞれの周壁は、略円筒状であるのに対し、これらには第1および第2の管体部5a,5bの矩形孔52a,52bの形成箇所が交差して開口部16a,16bを形成している。このような構成は、図7(b)に示した構成に相当している。したがって、図7(b)について述べたのと同様な原理に基づき、開口部16a,16bは矩形状となり、その面積は大きいものとなる。すなわち、第1および第2の管体部5a,5b間の距離Lcをできる限り大きくすることを目的として、前記各周壁に対してこれら第1および第2の管体部5a,5bを浅く交差させた場合においても、開口部16a,16bの面積を大きくすることができる。好ましくは、開口部16a,16bの面積は、たとえば矩形孔52a,52bの断面積と略同一である。このことにより、開口部16a,16bが狭小流路となって、湯水の流れに滞りを生じるといった不具合を生じないようにし、P−Q特性において有利なものにすることができる。
【0036】
前記したような開口部16a,16bの面積を大きくし得る作用は、第1および第2の管体部5a,5bの孔を、矩形状に形成した場合に限らない。たとえば、孔を断面半円状、D字状、略三角形、あるいは各種の多角形状に形成することによって、第1および第2の管体部5a,5bに平面状の内壁面を設け、この部分を筒状部12および内部筒状部14の周壁に交差させて繋げた場合にも同様な作用が得られる。本発明においては、そのような構成を採用してもかまわない。ただし、矩形孔52a,52bは、前記したような半円形やD字状などの孔と比較して、第1および第2の管体部5a,5bの大径化を抑制しつつ、内部流路面積を大きくし得る点において有利である。また、矩形孔52a,52bを採用すると、第1および第2の管体部5a,5bの成形用の金型の製作も容易であり、さらには樹脂成形に際してバリを生じ難くすることができる利点も得られる。
【0037】
図8および図9は、本発明に係る浴槽循環アダプタの配管接続具の他の例を示している。これらの図において、前記実施形態と同一または類似の要素には、前記実施形態と同一の符号を付している。
【0038】
本実施形態の配管接続具B2においても、前記実施形態と同様に、第1および第2の管体部5a,5bの矩形孔52a,52bの形成箇所がハウジング1の筒状部12の周壁および内部筒状部14の周壁に交差して繋がり、かつこの部分に開口部16a,16bが形成されている。ただし、第1および第2の管体部5a,5bは、ハウジング1の中心軸C1の延びる方向に対して交差する方向に延びている。このような構成であっても、前記実施形態と同様に、開口部16a,16bのサイズを大きくすることが可能である。また、ハウジング1の大径化を抑制しつつ、第1および第2の管体部5a,5b間の距離Lcを大きくとることも可能である。本実施形態から理解されるように、本発明においては、ハウジング1に対して第1および第2の管体部5a,5bがいずれの方向に延びているかについては問わない。
【0039】
第1および第2の管体部5a,5b間には、互いに交差する姿勢とされた2つの補強用リブ59a,59bが設けられている。このような構成によれば、第1および第2の管体部5a,5bの機械的強度を高めることができる。また、第1および第2の管体部5a,5bの長手方向全長域の内部は、矩形孔52a,52bとして形成されている。このような構成によれば、第1および第2の管体部5a,5bの孔の形状を変化させる場合と比較すると、その形成が容易となる。第1および第2の管体部5a,5bの先端部には、管体接続用のネジ部58が形成されているが、このようにすると前記実施形態において用いられていたジョイント管19が不要となり、全体の部品点数を少なくすることができる。第1および第2の管体部5a,5bのネジ部58以外の箇所の外形形状は、断面矩形状とされているが、本発明においては、本実施形態のように、孔の形状に対応させて第1および第2の管体部5a,5bの外形形状を非円形状に形成することもできる。
【0040】
本発明は、上述した実施形態の内容に限定されない。本発明に係る配管接続具およびこれを備えた浴槽循環アダプタの各部の具体的な構成は、種々に設計変更自在である。
【0041】
配管接続具のハウジングは、たとえば筒状部の一端を塞ぐ背面部が球面状に膨らんだ形状とされ、ハウジング全体の概略形状が半球状ドームに近い形態とされていてもかまわない。また、本発明によれば、第1および第2の管体部とハウジングとを樹脂化した場合に、これらを容易に一体成形することかできる効果が得られるものの、あえてそのような一体成形を行なわず、それらを別体に成形してから接合させるといった手段を採用した場合にも本発明の技術的範囲に包摂される。第1および第2の管体部の具体的なサイズやそれらの間隔寸法も限定されない。ハウジングの内部に第1および第2の湯水流路を形成する手段としては、内部筒状部14を設ける手段に代えて、それとは異なる形態の仕切りをハウジング内に設け、この仕切りによって仕切られた2つの空間を第1および第2の湯水流路とすることもできる。
【0042】
配管接続具を浴槽の壁部に固定させるための具体的な手段も限定されない。前記実施形態の内部締結体6とは異なる構成の部材を利用して配管接続具を浴槽の壁部に取り付けるようにしてもかまわない。仕切具は、一対の湯水流路が往き側と戻り側とのいずれにも対応し得る無極性タイプのものに代えて、往き側と戻り側とが固定化されたタイプ(湯水用の吸入口および吐出口が1組のみ設けられているタイプ)に構成することもできる。浴槽循環アダプタの取り付け部位は、浴槽の側壁に限らず、たとえば浴槽の底壁とすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明に係る浴槽循環アダプタの一例を示す断面図である。
【図2】図1に示す浴槽循環アダプタの分解斜視図である。
【図3】図1に示す浴槽循環アダプタの分解断面図である。
【図4】図1に示す浴槽循環アダプタの配管接続具を示しており、(a)は平面図であり、(b)は側面図であり、(c)は平面断面図であり、(d)は(c)のIV−IV断面図である。
【図5】(a)〜(c)は、図1に示す浴槽循環アダプタにおける湯水の流れを示す断面図である。
【図6】図1に示す浴槽循環アダプタの取り付け使用状態を示す概略斜視図である。
【図7】(a),(b)は、本発明の作用原理の説明図である。
【図8】本発明に係る浴槽循環アダプタの配管接続具の他の例を示し、(a)は平面図であり、(b)は正面断面図であり、(c)は右側面図である。
【図9】(a)は、図8(b)のIXa−IXa断面図であり、(b)は、(a)のIXb−IXb断面図である。
【図10】従来技術の一例を示す説明図である。
【図11】従来技術の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
【0044】
A 浴槽循環アダプタ
B1,B2 配管接続具
1 ハウジング
2 仕切具
5a,5b 第1および第2の管体部
7 浴槽
12 筒状部(ハウジングの)
13 背面部(ハウジングの)
14 内部筒状部
15a,15b 第1および第2の湯水流路
16a,16b 開口部
27a,27b 吸入口
28a,28b 吐出口
52a,52b 矩形孔
520a,520b 平面状の内壁面
70 側壁(浴槽の壁部)
99 熱源装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状部およびこの筒状部の一端を塞ぐ背面部を有し、かつこれらによって囲まれた領域に第1および第2の湯水流路を形成しているハウジングと、
このハウジングに繋げて設けられ、かつ前記第1および第2の湯水流路に内部が連通する第1および第2の管体部と、
を備えている、浴槽循環アダプタの配管接続具であって、
前記第1の管体部は、この第1の管体部の軸長方向に延びる平面状の内壁面を有し、
この平面状の内壁面の形成箇所は、前記ハウジングの筒状部の周壁に交差して繋がっており、この交差部分に、前記第1の管体部の内部を前記第1の湯水流路に連通させる開口部が設けられていることを特徴とする、浴槽循環アダプタの配管接続具。
【請求項2】
前記ハウジング内に位置する内側筒状部を備え、かつこの内側筒状部の内部が前記第2の湯水流路とされており、
前記第2の管体部は、この第2の管体部の軸長方向に延びる平面状の内壁面を有し、
この平面状の内壁面の形成箇所は、前記内側筒状部の周壁に交差して繋がっており、この交差部分に、前記第2の管体部の内部を前記第2の湯水流路に連通させる開口部が設けられている、請求項1に記載の浴槽循環アダプタの配管接続具。
【請求項3】
筒状部およびこの筒状部の一端を塞ぐ背面部を有し、かつこれらによって囲まれた領域に第1および第2の湯水流路を形成しているハウジングと、
このハウジングに繋げて設けられ、かつ前記第1および第2の湯水流路に内部が連通する第1および第2の管体部と、
前記ハウジング内に位置し、かつその内部が前記第2の湯水流路とされている内側筒状部と、
を備えている、浴槽循環アダプタの配管接続具であって、
前記第2の管体部は、この第2の管体部の軸長方向に延びる平面状の内壁面を有し、
この平面状の内壁面の形成箇所は、前記内側筒状部の周壁に交差して繋がっており、かつこの交差部分に、前記第2の管体部の内部を前記第2の湯水流路に連通させる開口部が設けられていることを特徴とする、浴槽循環アダプタの配管接続具。
【請求項4】
前記第1および第2の管体部のうち、前記平面状の内壁面が形成されている管体部は、断面矩形状の孔が内部に形成されたものである、請求項1ないし3のいずれかに記載の浴槽循環アダプタの配管接続具。
【請求項5】
浴槽の壁部に取り付けられて熱源装置に配管接続され、かつ内部に一対の湯水流路が形成されている配管接続具と、
この配管接続具に連結されることにより前記浴槽内に配され、かつ前記配管接続具の一対の湯水流路に個々に連通する湯水用の吸入口および吐出口を有している仕切具と、
を備えている、浴槽循環アダプタであって、
前記配管接続具として、請求項1ないし4のいずれかに記載の浴槽循環アダプタの配管接続具が用いられていることを特徴とする、浴槽循環アダプタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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