説明

浴槽用手すり

【課題】浴槽に簡単に取り付けたり取り外したりできる浴槽用手すりを提供する。
【解決手段】浴槽の上縁部に跨設され、浴槽の上部側壁を挟着する本体部1と、本体部1から上方に突出して形成される手すり部2とを備え、本体部1を横片と縦片からなる側面視でL字状の本体と、本体の横片に嵌合する横片と縦片とからなる側面視でL字形状のスライド体とで構成し、本体の横片の上部に、裏面にロックピンを有する蓋体112aを設け、スライド体を本体に押し込むとロックピンがスライド体の横片に複数形成された係合孔のうちの1つの係合孔と係合しスライド体を本体とを一体化し、蓋体112aを開けることによりロックピンが係合孔から離脱してロックが解除される本体の挟着幅調整手段を備えた。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】

【技術分野】
【0001】
本発明は、高齢者や身障者等が浴室の浴槽内へ出入りするのに適した浴槽用手すりに関する。
【背景技術】
【0002】
高齢者などが入浴する際、浴槽内への出入りを介助するために、浴槽の側壁へ取付け該側壁を挟着して固定する浴槽用手摺りが提供されている。例えば、特許文献1(特開2010−246691号)に記載されたものは、浴槽の上端部に配置される本体具と、本体具の一方の側面に形成された側片と、側片に設けられた押圧具と、左右一対に設けられた押圧板と、押圧具を移動させる操作ハンドルと、スライドして移動自在な押圧受け具と、押圧受け具に設けられた押圧受け板と、固定・解除手段とを備え、更に所定の力を超えるとハンドルノブからボルト軸に回動力が伝達されないようにする回動伝達社団機構と係合・離脱自在なラッチ具を備えた浴槽用手摺りである。
【0003】
また、特許文献2(特開2000−189339号)に記載されたものは、水平片と垂直片からなるL字状の第1、第2取り付け部材を有し、この第1、第2取り付け部材の水平片を重ねて両垂直片の間隔を調整して固定し、締付板と第2の垂直板とにより浴槽の側壁を挟着する浴槽用手摺りである。
【0004】
【特許文献1】特開2010−246691号公報
【特許文献2】特開2000−189339号公報
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1、2に記載されたものを含め従来のものは、浴槽の上縁部に本体を跨設してハンドルを回して締付板で浴槽の側壁を締め付けて固定するのが一般的である。浴槽は一般的にFRP製の物が多く使用されているが、FRP製浴槽の側壁は内部が空洞かあるいは断熱材を充填しているため強度上強く締め付けることができない。側壁を強く締め付けると側壁が凹むなど、また、時間が経過するとネジが緩むなどの問題が発生する恐れがある。そのため、特許文献1に示すように回動伝達遮断機構で過剰な力で押圧することを防ぐようにしている。また、浴槽の側壁の厚み即ち肉厚は、浴槽の種類あるいはメーカーによって種々バラバラであり、挟着する固定方法もビス・ネジなどによって行われ浴槽に装着するのに手間がかかるなどの問題があり、より簡単な操作で固定できるものが望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、従来の上記課題を解決する手段として、請求項1に記載の本発明は、浴槽の上縁部に跨設され、浴槽の上部側壁を挟着する本体部と、本体部から上方に突出して形成される手すり部とを備えた浴槽用手すりであって、横片と縦片からなる側面視でL字状の本体に、横片と縦片とからなる側面視でL字形状のスライド体が挿入され、嵌合してスライドし、本体の横片の上部に裏面にロックピンを有する蓋体を設け、スライド体を本体に押し込むだけでロックピンがスライド体の横片に形成された係合孔と係合してロックされ、蓋体を開けることによりロックピンが係合孔から離脱してロックが解除される幅調整手段を備えたことを特徴とする浴槽用手すりである。
【0007】
請求項2に記載の本発明は、断面がL字形状のスライド片120とネジスリーブ121とネジ棒122とノブ123と押圧板124とからなる締付け手段を有することを特徴とする請求項1記載の浴槽用手すりである。
【0008】
請求項3に記載の本発明は、手すり部支柱の形状が筒状体の一部からフランジ部が形成され、断面形状がP字形状しており、フランジ部に把手部の高さ調整をするための係合孔が間欠的に設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の浴槽用手すりである。
【0009】
請求項1記載の発明によれば、浴槽の上縁部に本体部を跨設させ、スライド体を本体に挿入して嵌合し、スライドさせるだけで浴槽の厚みすなわち肉厚に合わせることができ、押圧受け板と押圧板との幅調整が容易であり、操作が簡単なので浴槽への取り付けが高齢者でも容易にできる。
【0010】
請求項2記載の発明によれば、浴槽の上縁部に本体部を跨設させ、スライド体を押し込み幅調整を行った後、ノブを回して押圧板を浴槽の壁面に押圧して締付けることができ、短時間で浴槽に取り付けることができる。
【0011】
請求項3記載の発明によれば、手すり部支柱のフランジ部に把手部の高さ調整用係合孔が形成されているからネジ止め作業が楽に行うことができ、本体カバーに容易に組み付けることができる。
【0012】
本発明は、少なくとも押圧板と締付け手段を備えたスライド体を本体に設けた嵌合部に押し込むだけで浴槽の肉厚に対応して押圧受け板と押圧板の幅を浴槽の肉厚に簡単に合わせることができる幅調整手段を有する浴槽用手すりを提供するものである。
【発明の効果】
【0013】
従って、本発明の浴槽用手すりは、以下のような効果を奏する。
差し込む(押し込む)だけで浴槽の肉厚に合わせて幅調整することができ、ノブを回すだけで浴槽の上部を支持・固定できるから操作が簡単で容易に取り付けることができる。
また、手すり部の高さ調整ができるので、使用者の体格に合わせて手すり部の高さを設定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づき説明する。図1は本発明に係る浴槽用手すりの斜視図である。図2は正面図、図3は左側面図、図4は背面からの斜視図、図5は平面図、図6は底面図、図7は縦断面図、図8は展開図、図9は浴槽用手すりからスライド体を離した状態の展開図、図10は本体L字状片とスライド片の斜視図、図11はロックピンのロック状態を示す概略図である。
【0015】
図1から7に示すように、本発明に係る浴槽用手すりは、浴槽の上縁部に跨設される本体部1と、本体部1から上方へ突出する手すり部2とで構成されている。
【0016】
本体部1は、側面視がL字形状の本体11と、本体11に嵌合してスライドする側面視がL字形状のスライド体12と、スライド体12に取り付けられる浴槽内手すり13などで構成され、組み付けるとコの字形状をなし、浴槽の上縁部に跨設される。
【0017】
手すり部2は、リング状の把手部21とそれから垂下されている手すり部支柱22などで構成され、手すり部支柱22が本体部1に装着されて把手部21が上下にスライドして把手部21の高さを調整することができる。
【0018】
本体11は、フレームカバー110、本体L字状片111、上部カバー112、蓋体112a、ロックピン112b、バネ112c、押圧受け板113、ゴムシート113aなどで構成され、スライド体12は、断面がL字形状のスライド片120とネジスリーブ121とネジ棒122とノブ123と押圧板124とゴムシート124aなどで構成されている。(図8参照)
【0019】
本体11は、フレームカバー110の内側面に本体L字状片111が組みつけられネジ110eで固定され、本体L字状片111には上部カバー112、蓋体112a、ロックピン112b、バネ112c、押圧受け板113、ゴムシート113aなどが組みつけられる。フレームカバー110の外側面には支柱受け部110dが両側に形成され、支柱受け部110dには後述する手すり部2の手すり部支柱22が挿入される。
【0020】
本体L字状片111は、断面視がL字形状をしており、本体L字状片111の縦片111aにネジ穴111bが設けられており、フレームカバー110の内面にネジ110eで組み付け固定される。
また、本体L字状片111の縦片111aの内面側には、押圧受け板113がネジ等(図示しない)で組みつけられ固定されている。押圧受け板113にゴムシート113aが貼着されている。
【0021】
本体L字状片111の横片111cにはロックピン112bが挿通する貫通孔111dが設けられ、横片111cの裏面には、後述するスライド体のスライド片120が挿入される嵌合部111eが設けられ、嵌合溝111f(アリ溝)を有している。(図9参照)
嵌合部111eは図9に示すように下方が開放されたものでもよいが下方が閉塞された扁平な筒状のものでもよい。
【0022】
また、本体L字状片111の横片111cには、上部カバー112が被せられ組みつけられている。上部カバー112の上面には蓋体112aが一端を回転軸として開閉できるように取り付けられ、蓋体112aの裏面にはバネ112cで付勢されたロックピン112bが設けられている。(図10参照)
ロックピン112bは貫通孔111dを貫通して後述するスライド片120に形成されている係合孔120bと係合する。ロックピン112bの先端は傾斜面をなしている。(図11参照)
【0023】
スライド体12は、断面がL字形状のスライド片120とネジスリーブ121とネジ棒122とノブ123と押圧板124とゴムシート124aで構成され(図8参照)、スライド片120の縦片120aにネジスリーブ121が挿入される孔120bが設けられ、孔120bにネジスリーブ121が挿入されて組み付けられる。ネジスリーブ121にはネジ棒122が螺合されている。ネジ棒122の一端側に浴槽の内側面(内壁面)を押圧する押圧板124が組みつけられ、他端側にはノブ123が組みつけられている。ノブ123を右に回すと押圧板124が前進して浴槽の内側面(内壁面)を押圧する。ノブ123を左に回すと押圧板124が後退して押圧を解除する。押圧板124は押圧板基板123a、押圧板124b、ゴムシート123cで形成されている。
【0024】
スライド片120の横片120cには係合孔120dが間欠的に複数設けられ、前述したロックピン112bが係合する。また、スライド片120の横片120cの上面には本体L字状片111の横片111bの裏面に設けられた嵌合部111eの嵌合溝111f(アリ溝)と嵌合する突状120eが形成されている。
【0025】
スライド体12を本体11の嵌合部111eに挿入して押し込むと、スライド片120の先端がロックピン112bの傾斜面に当接し、スライド片120の先端が前進するとロックピン112bがバネ112cの付勢に逆らってロックピン112bが上方に押し上げられスライド体12が前進する。スライド片120の横片120bに設けられた係合孔120cの位置にロックピン112bがくるとロックピン112bはバネ112cの付勢により係合孔120cに挿入されて係合する。更に前進すると係合孔120cの端面がロックピン112bの傾斜面に当接しロックピン112bがバネ112cの付勢に逆らって上方に押し上げられスライド体12が前進する。次の係合孔120cの位置にロックピン112bがくるとロックピン112bはバネ112cの付勢により次の係合孔120cに挿入されて係合する。これを繰り返して、押圧板124が浴槽の壁面に当接するまで前進させるとロックピン112bがその位置に近い係合孔120cと係合してロックされる。(図11参照)
また、蓋体112aを開けるとロックピン112bが係合孔120cから離脱してロックが解除され、スライド体12を後退させることができる。
従って、スライド体12を押し込むだけで浴槽の厚み(肉厚)に押圧受け板113と押圧板124との幅を合わせることができるから、簡単な操作で幅調整をすることができる。
【0026】
浴槽内手すり13は、スライド片120の縦片120aに孔を介してネジ130で組み付け固定される。浴槽内手すり13は、不要な場合は取り外して使用してもよい。
【0027】
手すり部2は、把手部21と手すり部支柱22とからなり、手すり部支柱22の一端にリング形状の把手部21が形成され、手すり部支柱22には把手部21の高さを調整するための係合孔221が間欠的に複数設けられている。手すり部支柱22は、本体11のフレームカバー110の側面に形成されている支柱受け部110dに挿入され、使用者の高さに合わせてネジ23でフレームカバー110に組み付け固定する。
【0028】
手すり部支柱22の形状は、丸パイプ状、角パイプ状のものでもよいが、望ましくは、図12に示すように断面形状が長円形でその一部からフランジ部が形成されたP字形状の支柱が望ましい。そして、フランジ部に把手部21の高さ調整を行うための係合孔221を間欠的に複数形成している。この場合、本体11の支柱受け部110dの断面形状は手すり部支柱22の断面形状に対応してP字形状とすることが望ましい。
【0029】
次に、浴槽への取り付け方について一例を持って説明する。まず、押圧受け板113と押圧板124との幅を広げた状態で本体部1を浴槽の上縁部に跨設し、スライド体12を本体11に押し込んで浴槽の側壁の肉厚に合わせる。押圧受け板113は浴槽の外側面(外壁面)に押圧板124は浴槽の内側面(内壁面)に当接する。そして、ノブ123を回動させて押圧板124を前進させ浴槽の内側面(内壁面)を押圧する。次に、手すり部支柱22を支柱受け部110dに挿入して使用者の高さに合わせてネジ23でフレームカバー110に組み付け固定する。
【0030】
以上、実施例に基づき説明したが、本発明は、上記実施例に限定されるものではなく、手すり部の形状はリング状のものでなくてもよく、支柱は1本ものでもよい。
上述のように本発明は、高齢者、身体障害者、片マヒの方、足の弱い方など幅広く使用していただける介護用浴槽手すりを提供するものである。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】 浴槽用手すりの斜視図
【図2】 浴槽用手すりの正面図
【図3】 浴槽用手すりの左側面図
【図4】 浴槽用手すりの背面側からの斜視図
【図5】 浴槽用手すりの平面図
【図6】 浴槽用手すりの底面図
【図7】 浴槽用手すりの縦断面図
【図8】 浴槽用手すりの展開図
【図9】 浴槽用手すりからスライド体を離した状態の展開図
【図10】 本体L字状片とスライド片の斜視図
【図11】 ロックピンのロック状態を示す概略図
【図12】 手すり部支柱の断面図および斜視図
【符号の説明】
【0032】
1 本体部
11 本体
110 本体カバー
111 本体L字状片
112 上部カバー
112a 蓋体
112b ロックピン
112c バネ
113 押圧受け板
12 スライド体
120 スライド片
121 スリーブ
122 ネジ棒
123 ノブ
124 押圧板
13 浴槽内手すり
2 手すり部
21 把手部
22 手すり部支柱
221 係合孔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽の上縁部に跨設され、浴槽の上部側壁を挟着する本体部と、本体部から上方に突出して形成される手すり部とを備えた浴槽用手すりであって、横片と縦片からなる側面視でL字状の本体に、横片と縦片とからなる側面視でL字形状のスライド体が挿入され、嵌合してスライドし、本体の横片の上部に裏面にロックピンを有する蓋体を設け、スライド体を本体に押し込むだけでロックピンがスライド体の横片に形成された係合孔と係合してロックされ、蓋体を開けることによりロックピンが係合孔から離脱してロックが解除される幅調整手段を備えたことを特徴とする浴槽用手すり。
【請求項2】
断面がL字形状のスライド片120とネジスリーブ121とネジ棒122とノブ123と押圧板124とからなる締付け手段を有することを特徴とする請求項1記載の浴槽用手すり。
【請求項3】
手すり部支柱の形状が筒状体の一部からフランジ部が形成され、断面形状がP字形状しており、フランジ部に把手部の高さ調整をするための係合孔が間欠的に設けられたことを特徴とする請求項1又は2記載の浴槽用手すり。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2013−52207(P2013−52207A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−206590(P2011−206590)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(592231398)株式会社ウエルファン (5)
【出願人】(508121245)
【Fターム(参考)】