説明

浴槽用酸素供給装置及び浴槽用酸素供給方法

【課題】 本発明の目的は、浴槽の浴湯に高濃度の酸素を気泡状で安全に供給することができ、入浴中に効率的な高濃度の酸素吸入を実現できる浴槽用酸素供給装置及び浴槽用の酸素供給方法を提供することである。
【解決手段】 酸素発生容器2内で、水に接触して酸素を発生する酸素発生固形剤と水を収容し、更に該酸素発生容器2内にキャリアガスを供給することにより、該固形剤が水に接触することにより発生する酸素とキャリアガスの混合ガスを生じさせ、これを浴槽内の浴湯に供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安全で効率的な酸素吸入ができるように、酸素発生固形剤から発生させた酸素を含む気泡を浴槽内に供給する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
高濃度の酸素を適度に吸入することにより、ダイエット効果、美肌効果、疲労回復効果、成人病の予防効果等の有益な効果が得られることが知られている。特に、入浴中に高濃度の酸素を吸入することにより、入浴効果を高め、疲労回復効果やリラックス効果を一層強く実感できると考えられている。
【0003】
これまでに、水と接触することにより酸素を発生し得る酸素発生剤が開発されており、これを浴用剤として使用することにより、湯浴中に酸素を気泡として供給できることが分かっている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、従来の酸素発生剤では、(1)無機過酸化物、中和剤及び触媒、或いは(2)過炭酸塩及び中和剤が配合されているため、酸素発生過程において不可避的に過酸化水素を生成する。この過酸化水素は、酸化力が極めて強いため身体への接触を回避することが望まれており、従来の酸素発生剤を浴用剤として浴湯に直接入れることには安全上の問題がある。
【0004】
一方、香料を配合した酸素発生剤を水に添加することにより、酸素と芳香を同時に発生させ得ることが報告されている(特許文献2参照)。しかしながら、この酸素発生剤も、前述する理由と同様、過酸化水素の生成の問題を回避できないため、浴槽の浴湯に直接添加することはできない。また、酸素発生剤に単に香料が配合されているだけでは、使用時に香料が水中に残存するため、十分に空気中に放出されず、芳香効果についても所期効果が期待できないという欠点がある。
【0005】
このように、浴槽の浴湯に気泡状の酸素を安全に供給する手段や、酸素と共に香りを効果的に放出させる手段は、未だ開発されていないのが現状である。
【特許文献1】特開平7−309744号公報
【特許文献2】特開平8−52996号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、浴槽の浴湯に高濃度の酸素を気泡状で安全に供給することができ、入浴中に効率的な高濃度の酸素吸入を実現できる浴槽用酸素供給装置及び浴槽用の酸素供給方法を提供することを目的とする。更に、本発明は、浴湯への酸素の供給と共に、酸素発生剤に含まれる香料を効率的に放出させて、香気を供給することを可能にする前記装置及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、酸素発生容器内で水と接触して酸素を発生する酸素発生固形剤と水を接触させ酸素を発生させると共に、該酸素発生容器内にキャリアガスを供給して、該酸素とキャリアガスの混合ガスを生じさせ、これを浴槽内の湯又は水に供給することによって、過酸化水素水が直接人体に接触するのを回避して安全に浴湯に高濃度の酸素を気泡状で供給できることを見出した。更に、酸素発生容器内で、水と接触して酸素を発生する酸素発生固形剤を含む水中にキャリアガスを供給してバブリングすることにより、該固形剤から効率的に酸素を発生させることができることを見出した。そして更に、香料を配合した上記酸素発生固形剤を使用し、該酸素発生固形剤を含む水中にキャリアガスを供給してバブリングすると、香料が効率的に放出され、良好な香気を酸素と共に浴槽に供給できることを見出した。本発明は、これらの知見に基づいて、更に改良を重ねることにより完成したものである。
【0008】
即ち、本発明は、下記に掲げる浴槽用酸素供給装置及び浴槽用の酸素供給方法である:
項1. 送気ポンプと、
該送気ポンプに接続され、水に接触して酸素を発生する酸素発生固形剤及び水を投入するために開閉可能な投入口を備えており、該酸素発生固形剤が水に接触することにより発生する酸素と該送気ポンプから送られるキャリアガスとの混合ガスを排出できるように構成された酸素発生容器と、
該酸素発生容器に接続され、該酸素発生容器から排出される前記混合ガスを気泡として浴槽に供給する酸素供給部と、
を具備することを特徴とする、浴槽用酸素供給装置。
項2. 更に、前記酸素発生容器が、前記送気ポンプから送られるキャリアガスにより、前記酸素発生固形剤を含む水をバブリングできるように構成されている、請求項1に記載の浴槽用酸素供給装置。
項3. 送気ポンプと、
該送気ポンプに接続され、水に接触して酸素を発生する酸素発生固形剤及び水を投入するために開閉可能な投入口を備えており、該送気ポンプから送られるキャリアガスを内部に収容される水中に供給してバブリングすると共に、該酸素発生固形剤が水に接触することにより発生する酸素とキャリアガスの混合ガスを排出できるように構成された酸素発生容器と、
該バブリング容器に接続され、該酸素発生容器から排出される前記混合ガスを気泡として浴槽に供給する酸素供給部と、
を具備することを特徴とする、項1に記載の浴槽用酸素供給装置。
項4. 下記工程を含有する、浴槽用の酸素供給方法:
(i)水に接触して酸素を発生する酸素発生固形剤及び水を酸素発生容器内に収容して酸素を発生させると共に、該酸素発生容器内にキャリアガスを供給することにより、酸素とキャリアガスの混合ガスを生じさせる工程、及び
(ii)前記工程(i)で生じた混合ガスを浴槽内の水中に気泡として供給する工程。
項5. 前記工程(i)が、水に接触して酸素を発生する酸素発生固形剤及び水を酸素発生容器内に収容して酸素を発生させると共に、該酸素発生容器内にキャリアガスを供給してバブリングを行うことにより、酸素とキャリアガスの混合ガスを生じさせる工程である、項4に記載の酸素供給方法。
項6. 前記工程(i)で使用する酸素発生固形剤が香料を含有するものであり、工程(ii)において浴槽内の水中に芳香を伴う上記混合ガスを供給することを特徴とする、項4又は5に記載の酸素供給方法。
【0009】
なお、本明細書において、高濃度の酸素とは、大気に比して酸素濃度が高いことを意味する。
【0010】
以下、本発明の浴槽用酸素供給装置を図面に基づいて詳述する。図1は、本発明の浴槽用酸素供給装置の構成図である。図2は、酸素発生容器2の一実施態様を示す図(断面図)である。本発明の浴槽用酸素供給装置は、送気ポンプ1と、酸素発生容器2と、酸素供給部3が、所定の態様で接続されることにより構成されている。
【0011】
本発明の浴槽用酸素供給装置において、キャリアガスを送気する送気ポンプ1は、キャリアガス流通管4を通じて酸素発生容器2に接続され、キャリアガスを送気ポンプ1から酸素発生容器2に供給できるようになっている。該送気ポンプ1は、特に制限されるものでなく、公知のものを使用することができる。また、該送気ポンプ1は、その電源についても特に制限されず、電池、充電池、AC電源、DC電源等のいずれの電源を使用するものであってもよい。また、浴槽用酸素供給装置が携帯式の装置である場合、該送気ポンプ1は、浴室内に置いて通常使用されるため、機密性の高い構造のものが望ましい。
【0012】
本発明において、酸素発生容器2は、開閉可能な投入口2aを備え、これによって水と接触して酸素を発生する酸素発生固形剤及び水(以下、これらを「容器内収容物」と表記することもある)を投入できるようになっている。投入口2aは、開閉可能であり、上記酸素発生固形剤と水を投入できることを限度として、その態様については特に制限されない。例えば、該投入口2aは、酸素発生容器2の蓋や側壁の一部分に設けられていてもよく、また、図2に示すように、酸素発生容器2の蓋2a’自体が開閉することにより構成されていてもよい。
【0013】
また、酸素発生容器2は、送気ポンプ1から送気されるキャリアガスが、キャリアガス吐出口2bから吐出して酸素発生容器2内に供給されるように構成されている。該酸素発生容器2の好ましい実施態様は、図2に示すように、キャリアガス吐出口2bが、酸素発生容器2内に収容されている水中に浸漬するように設けられ、送気ポンプ1から送気されるキャリアガスが、酸素発生容器2内に収容されている水中に供給され、容器内収容物をバブリングできるように構成されているものである。このような構成を備える酸素発生容器2によれば、バブリングの作用により、上記酸素発生固形剤から酸素を効率的に発生させることが可能になり、更に該酸素発生固形剤が香料を含有している場合には該香料の効率的な揮散が可能になる。
【0014】
また、酸素発生容器2内の気相には、送気ポンプ1から送気されるキャリアガスと、上記酸素発生固形剤が水に接触することにより発生する酸素との混合ガスが生成する。該酸素発生容器2は、排出口2cが設けられ、上記混合ガスを排出できるように構成されている。具体的には、図2では、上記混合ガスを排出するための排出口2cが、酸素発生容器2の壁面上部に設けられている。この排出口2cは、例えば、酸素発生容器2の蓋に設けられていてもよい。
【0015】
なお、酸素発生容器2は、温度制御手段を備えることにより、収容される水を所定温度にコントロールできるように構成されていてもよい。
【0016】
酸素発生容器2の容積については、浴槽用酸素供給装置に要求される酸素の供給能力やバブリングガスの送気速度等に応じて適宜設定される。例えば、浴槽用酸素供給装置が家庭用の浴槽(容積:約150〜250L)に使用されるものであれば、酸素発生容器2の容積としては、通常30〜10000ml、好ましくは100〜1000ml、更に好ましくは200〜500mlが挙げられる。
【0017】
また、酸素発生容器2は、混合ガス流通管5を通じて酸素供給部3に接続され、酸素発生容器2から排出される前記混合ガスが酸素供給部3に送気されるように構成されている。酸素供給部3は、浴槽内の湯(又は水)中で酸素発生容器2から排出される前記混合ガスを気泡として供給し、これによって浴槽内の浴中に酸素発生固形剤から生じた酸素が供給される。
【0018】
酸素供給部は、浴内に上記混合ガスを供給できるものであれば、その具体的形態は制限されないが、エアストーン等により気泡を微細化できるように構成されていることが望ましい。
【0019】
更に、本発明の浴槽用酸素供給装置には、浴槽内に供給される混合ガスに香気を付与できるように、芳香発生部11が設けられていてもよい。該芳香発生部11は、香料を含有しない酸素発生固形剤を使用する場合に、芳香付与手段として有用である。
【0020】
芳香発生部11は、送気ポンプ1と酸素発生容器2との間のキャリアガス流通経路に設けられていてもよく、また、酸素発生容器2と酸素供給部3との間の混合ガス流通経路に設けられていてもよい。即ち、該芳香発生部11は、キャリアガス流通管4及び混合ガス流通管5のいずれに介装されていてもよい。
【0021】
また、芳香発生部11は、芳香を発生し、該芳香をキャリアガス、又は酸素とキャリアガスの混合ガスに随伴せしめる限り、その構成については特に制限されない。芳香発生部11の具体的態様として、繊維や多孔質体に香料を含浸させ、これをキャリアガス流通管4又は混合ガス流通管5内に設置したもの;及びキャリアガス流通管4又は混合ガス流通管5に、開閉可能な芳香剤投入口を有する容器を介装し、該容器内に芳香剤を設置したもの等が挙げられる。
【0022】
また、芳香発生部11は、温度制御手段を備えることにより、容器内を所定の温度にコントロールできるように構成されていてもよい。このような温度制御手段を備えることにより、香料の揮散を促進したり、常温では揮散しない香料を揮散させることが可能になる。
【0023】
本発明の浴槽用酸素供給装置の好ましい形態の一例として、図3に示すように、浴槽とは独立に構成され、携帯式の装置として使用できるものが挙げられる。このような形態のものであれば、浴槽内で酸素供給部3を自由に可動できるという利点がある。即ち、このような形態であれば、使用者が、入浴中楽な姿勢のままで自身の体付近の所望位置に酸素供給部3を移動させることが可能であり、これによって、酸素の吸引が効率的に実現できるだけでなく、気泡によるマッサージ作用や血行促進作用をも効果的に得ることができる。
【0024】
また、本発明の浴槽用酸素供給装置は、図4に示すように、酸素供給部3が浴槽の底部又は内壁部に結合されており、浴槽と一体化されている形態ものであってもよい。
【0025】
本発明の装置及び方法に使用されるキャリアガスは、人体に悪影響を及ぼすものでない限り、その種類については特に制限されないが、経済性や装置の簡略化の観点から、空気を使用することが望ましい。
【0026】
また、本発明の装置及び方法に使用される「水に接触して酸素を発生する酸素発生固形剤」としては特に制限されず、従来公知のものを使用することができる。該酸素発生固形剤の具体例として、(1)無機過酸化物、中和剤及び触媒を含有する固形剤(以下、「固形剤1」と表記する)、及び(2)過炭酸塩及び中和剤を含有する固形剤(以下、「固形剤2」と表記する)が例示される。
【0027】
上記固形剤1において、無機過酸化物としては、例えば、過酸化バリウム、過酸化カルシウム、過炭酸ナトリウム等が使用できる。また、中和剤としては、例えば、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、等が使用できる。また、触媒としては、例えば、カタラーゼ、二酸化マンガン等を使用できる。固形剤1において、無機過酸化物と中和剤は、それぞれ実質的に中和される量で配合されることが望ましい。また、触媒は、無機過酸化物1重量部に対して、0.002〜0.1重量部以上の割合で配合されることが望ましい。固形剤1における各成分の配合割合の具体例として、無機過酸化物10〜55重量%、中和剤5〜50重量%及び触媒0.02重量%以上;好ましくは、無機過酸化物30〜50重量%、中和剤20〜40重量%及び触媒0.06重量%以上が挙げられる。
【0028】
また、上記固形剤2において、過炭酸塩としては、例えばペルオクソ炭酸ナトリウムが使用される。また、中和剤としては、上記固形剤1で使用されるものと同様のものを使用できる。固形剤2において、過炭酸塩と中和剤は、それぞれ実質的に中和される量で配合されることが望ましい。固形剤2の各成分の配合割合として、具体的には、過炭酸塩10〜55重量%及び中和剤5〜55重量%;好ましくは、過炭酸塩30〜50重量%及び中和剤20〜40重量%が挙げられる。
【0029】
上記酸素発生固形剤は、更に香料を含んでいることが望ましい。香料を含む酸素固形剤を本発明の方法に使用することによって、酸素と共に香気を供給することが可能になる。
【0030】
酸素発生固形剤に配合される香料としては、天然香料、人造香料、調合香料等のいずれのものでもよい。また、該香料については、使用時の温度条件下で揮発可能である限り、その沸点についても特に制限されない。例えば、酸素発生容器2が温度制御手段を備え、酸素発生容器2内の水を高温に保持できる場合、酸素発生固形剤に配合する香料として、沸点が比較的高い成分をも使用することができる。このように、沸点が比較的高い成分をも使用して調香することにより、従来の芳香剤や入浴剤では実現し得なかった様々なバリエーションの香りを入浴中に楽しむことが可能になる。
【0031】
酸素発生固形剤における香料の配合割合については、香料の種類、期待される芳香効果の程度等に応じて適宜設定されるが、一例として、該固形剤の総量に対して、香料が0.01〜30重量%、好ましくは0.1〜3重量%となる割合が例示される。
【0032】
また、上記酸素発生固形剤には、炭酸塩や炭酸水素塩等を含み、酸素と共に二酸化炭素を発生できるものであってもよい。また、上記酸素発生固形剤には、上記成分の他に、結合剤、滑沢剤、賦形剤等の固形剤の成形に必要な成分を含有していてもよい。
【0033】
上記酸素発生固形剤は、粉末状、顆粒状、錠剤状等のいずれの形状であってもよいが、酸素発生容器2内で所望の速度で含有成分が溶解できるように製剤化されていることが望ましい。上記酸素発生固形剤として、好適には錠剤状のものが挙げられる。
【0034】
以下に、上記浴槽用酸素供給装置を用いて、本発明の浴槽用の酸素供給方法を説明する。
【0035】
本発明の方法では、まず、酸素発生容器2内に、上記酸素発生固形剤及び水を投入口2aから酸素発生容器2内に収容し、投入口2aを閉じる。次いで、送気ポンプ1によりキャリアガスを送気する。なお、酸素発生容器2が温度制御手段を備えている場合には、必要に応じて、酸素発生容器2中の水を所定温度に保持しながら、送気ポンプ1によるキャリアガスの送気を行うこともできる。
【0036】
また、本発明では、キャリアガスの供給によって、容器内収容物をバブリングすることが望ましい。当該バブリングは、酸素発生容器2のキャリアガス吐出口2bを、該酸素発生容器2に収容した水中に浸漬させた状態でキャリアガスを供給することによって行うことができる。
【0037】
このように容器内収容物をキャリアガスでバブリングすることにより、上記酸素発生固形剤から酸素を効率的に発生させると共に、上記酸素発生固形剤に香料が配合されている場合には該香料を効率的に揮散させることが可能になる。更に、キャリアガスによる容器内収容物のバブリングによって、常温で静置した状態では揮散し難い香料をも揮散させ得るので、従来の芳香剤では使用できなかった香料を使用することでき、従来の芳香剤では実現し得なかった様々なバリエーションの香りを浴槽内に供給することが可能になる。
【0038】
酸素発生容器2に投入する上記酸素発生固形剤及び水の割合としては、浴槽に供給する酸素の量、酸素発生固形剤の成分組成等により異なるが、例えば水100mlに対して上記酸素発生固形剤が1〜50g、好ましくは10〜20gとなる割合が例示される。
【0039】
また、酸素発生容器2に投入する上記酸素発生固形剤及び水の量としては、酸素発生容器2の容積、浴槽に供給する酸素の量、酸素の供給時間等に応じて適宜設定される。例えば、家庭用の浴槽(容積:150〜250L)に酸素を供給する場合であれば、水10〜3000ml、好ましくは50〜1000ml、より好ましくは100〜300ml;及び上記酸素発生固形剤0.05〜750g、好ましくは1〜100g、より好ましくは20〜40gが挙げられる。なお、上記酸素発生固形剤及び水の投入量は、使用時に、これらが酸素発生容器2の排出口2cから漏れ出さない程度であることが望ましい。
【0040】
キャリアガスの供給速度については、送気ポンプ1の能力、浴槽内に供給される気泡の量、入浴者の好み等に応じて適宜設定することができる。例えば、キャリアガスの供給速度を高く設定すると、浴槽内に多くの気泡が供給され、気泡によるマッサージ効果を高めることができる。また例えば、キャリアガスの供給速度を低く設定すると、浴槽内に供給される気泡の酸素濃度を高めることができる。通常、本発明を家庭用の浴槽(容積:150〜250L)で実施する場合であれば、キャリアガスの供給速度として、50〜5000ml/分、好ましくは300〜3000ml/分、更に好ましくは500〜1000ml/分となる範囲が例示される。
【0041】
上記のように、酸素発生容器2内に上記酸素発生固形剤と水を収容して、酸素を発生させる共に、キャリアガスを供給することによって、酸素発生容器2内の気相には、上記酸素発生固形剤が水に接触することによって発生する酸素とキャリアガスの混合ガスが生じる。一方、酸素発生容器2内の水中では、上記酸素発生固形剤から酸素を発生する過程において過酸化水素が不可避的に生じるが、過酸化水素は酸素発生容器2内の水中に残留するので、過酸化水素の浴槽への混入が回避される。
【0042】
このようにして生じた混合ガスは、混合ガス流通管5を通して、酸素発生容器2から、浴槽内の浴中にある酸素供給部3に送気され、浴槽中で気泡として供給される。このように混合ガスを浴槽内の浴中に供給することによって、上記酸素発生固形剤から生じた酸素が浴槽内の浴中に供給され、入浴中に高濃度の酸素の吸入が可能になる。
【0043】
また、上記酸素発生固形剤に香料が含まれている場合、酸素発生容器2内の上記混合ガス中に該香料が揮散されるので、香料による芳香を随伴する上記混合ガスを気泡として供給することが可能になる。これによって、酸素吸入による効果と併せて、芳香作用によるリラックス効果や鎮静効果等のアロマテラピー効果を得ることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明の浴槽用酸素供給装置及び浴槽用の酸素供給方法によれば、下記の優れた効果が得られる:
(1)酸素発生固形剤及び水を収容した酸素発生容器2中で生じた酸素を気体として浴槽に供給するため、酸素発生固形剤の使用において不可避的に生じる過酸化水素が浴槽中に混入することを回避することができる。
(2)入浴時に高濃度の酸素の吸入が可能になり、優れた入浴効果(疲労回復効果やリラックス効果)が得られる。
(3)浴槽内の浴中に酸素が混合ガスとして気泡状で供給されるため、気泡によるマッサージ効果を得ることもできる。
(4)香料を配合した酸素発生固形剤を使用することにより、高濃度の酸素を吸入すると同時に香料による芳香を感受でき、入浴によるリラックス効果や疲労回復効果が一層増強される。
【0045】
また、本発明の浴槽用酸素供給装置及び浴槽用の酸素供給方法において、酸素発生容器2内へのキャリアガスの供給により容器内収容物のバブリングを行うと、更に下記の格別の効果が得られる:
(5)酸素発生固形剤から効率的に酸素を発生させることができる。
(6)香料を配合した酸素発生固形剤を使用すると、キャリアガスのバブリングにより、香料を効率的に揮散させることができるので、より有効なアロマテラピー効果が得られる。
(7)キャリアガスのバブリングにより、常温で静置した状態では揮散し難い香料をも揮散させ得るので、本発明で使用される酸素発生固形剤に難揮発性香料を配合することでき、浴槽に供給される酸素含有気泡の香りのバリエーションを広げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、実施例を挙げて本発明を説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1
ストレスによる肉体疲労及び精神疲労を自覚している20代の女性4人をモニターとして、図1の装置及び表1の香料入り酸素発生固形剤(錠剤)を使用して、以下の試験を行った。
【0047】
40℃のお湯200Lで満たした浴槽内に、図1の浴槽用酸素供給装置の酸素供給部(エアストーン)を入れて、下記方法に従って、酸素の供給を行いながら20分間入浴した。なお、入浴中は、浴槽内で気泡が生じる位置を適宜変更できるように、酸素供給部を固定せずに自由に動かせるようにしておいた(実施例1)。
<酸素供給方法>
図1の浴槽用酸素供給装置の酸素発生容器(容積250ml)に40℃の水200mlを入れ、更に表1に記載の香料入り酸素発生固形剤(錠剤)30gを入れて投入口を密閉した。次いで、送気ポンプのスイッチを入れて、空気を500ml/分の供給速度で供給した。これによって、酸素発生容器内でバブリングを行いながら、エアストーンを装着した酸素供給部から湯浴中に気泡を吐出させた。
【0048】
【表1】

【0049】
入浴後、肉体疲労回復効果、精神疲労回復効果、下記の判定基準に従って評価した。また、入浴中の芳香効果についても評価した。
I.肉体疲労回復効果
4:通常時の入浴に比べて、肉体疲労回復効果が非常に優れている。
3:通常時の入浴に比べて、肉体疲労回復効果が優れている。
2:通常時の入浴に比べて、肉体疲労回復効果が若干優れている。
1:通常時の入浴に比べて、肉体疲労回復効果は同程度である。
II.精神疲労回復効果
4:通常時の入浴に比べて、精神疲労回復効果が非常に優れている。
3:通常時の入浴に比べて、精神疲労回復効果が優れている。
2:通常時の入浴に比べて、精神疲労回復効果が若干優れている。
1:通常時の入浴に比べて、精神疲労回復効果は同程度である。
【0050】
また、比較のため、40℃の水200ml入りの容器に表1の香料入り酸素発生固形剤(錠剤)30gを添加して蓋を開けたまま浴槽の脇に置いた状態で、40℃のお湯200Lで満たした浴槽に20分間入浴し、上記同様に、肉体疲労回復効果、精神疲労回復効果及び芳香効果を評価した(比較例1)。
【0051】
得られた結果を表2に示す。この結果から、本発明の装置を使用して、浴槽内に酸素を供給することにより、肉体疲労や精神疲労を効果的に改善できることが明らかになった。また、本発明の装置及び方法に、香料を含む酸素発生固形剤を使用することにより、良好な香気を一定の強さで生じさせ得ることが確認された。
【0052】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】浴槽用酸素供給装置の構成図である。
【図2】酸素発生容器2の断面図である。
【図3】浴槽用酸素供給装置が携帯式である場合の一態様を示す図である。
【図4】浴槽用酸素供給装置の酸素供給部3が浴槽に一体化されている場合の一態様を示す図である。
【符号の説明】
【0054】
1.送気ポンプ、2.酸素発生容器、2a.投入口、2a’.蓋、2b.キャリアガス吐出口、2c.排出口、3.酸素供給部、4.キャリアガス流通管、5.混合ガス流通管、6.酸素発生固形剤、7.水、8.浴槽、9.湯(水)、10.気泡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
送気ポンプと、
該送気ポンプに接続され、水に接触して酸素を発生する酸素発生固形剤及び水を投入するために開閉可能な投入口を備えており、該酸素発生固形剤が水に接触することにより発生する酸素と該送気ポンプから送られるキャリアガスとの混合ガスを排出できるように構成された酸素発生容器と、
該酸素発生容器に接続され、該酸素発生容器から排出される前記混合ガスを気泡として浴槽に供給する酸素供給部と、
を具備することを特徴とする、浴槽用酸素供給装置。
【請求項2】
更に、前記酸素発生容器が、前記送気ポンプから送られるキャリアガスにより、前記酸素発生固形剤を含む水をバブリングできるように構成されている、請求項1に記載の浴槽用酸素供給装置。
【請求項3】
下記工程を含有する、浴槽用の酸素供給方法:
(i)水に接触して酸素を発生する酸素発生固形剤及び水を酸素発生容器内に収容して酸素を発生させると共に、該酸素発生容器内にキャリアガスを供給することにより、酸素とキャリアガスの混合ガスを生じさせる工程、及び
(ii)前記工程(i)で生じた混合ガスを浴槽内の水中に気泡として供給する工程。
【請求項4】
前記工程(i)が、水に接触して酸素を発生する酸素発生固形剤及び水を酸素発生容器内に収容して酸素を発生させると共に、該酸素発生容器内にキャリアガスを供給してバブリングを行うことにより、酸素とキャリアガスの混合ガスを生じさせる工程である、請求項3に記載の酸素供給方法。
【請求項5】
前記工程(i)で使用する酸素発生固形剤が香料を含有するものであり、工程(ii)において浴槽内の水中に芳香を伴う上記混合ガスを供給することを特徴とする、請求項3又は4に記載の酸素供給方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−239314(P2006−239314A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−62930(P2005−62930)
【出願日】平成17年3月7日(2005.3.7)
【出願人】(000186588)小林製薬株式会社 (518)
【Fターム(参考)】