説明

浴槽装置

【課題】 単一の循環ポンプによって、下半身のリンパマッサージと上半身のマッサージをバランスよく行うことができる浴槽装置を提供する。
【解決手段】 浴槽装置は、入浴者の足裏に向けて浴水を噴出する足裏用ノズル2と、入浴者の足首から膝裏に向けて浴水をスイング動しながら噴出可能な脹脛用ノズル3と、入浴者の背中に向けて浴水を噴出する背中用ノズル4を備え、第1の弁9によって単一の循環ポンプ5からの浴水を前記足裏用ノズル2への流路及び脹脛用ノズル3への流路と前記背中用ノズル4への流路とに配分して供給し、第2の弁13によって、足裏用ノズル2への流路と脹脛用ノズル3への流路とに配分して供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリンパマッサージができる浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
リンパ液(組織間液)は血液から細胞の中に染み出して酸素や栄養分、水分などを細胞に供給し、また細胞から余分な水分や老廃物を取り込んでリンパ管へと入る。このリンパ管は数本ずつが関節部分に多く存在するリンパ節で合流しながら次第に太くなり、最終的には静脈に取り込まれ水分や老廃物は尿として体外に排出される。上記のリンパの流れが滞ると、むくみや肌荒れが生じることは従来から知られている。このようなリンパの流れを促進するには手足の先から心臓に向かってさするような動きが有効である。
【0003】
そこで、浴水の流れに方向性を持たせた浴槽装置として、特許文献1〜3に開示されるものが提案されている。
特許文献1に開示される浴槽装置は、浴槽底面の前後方向に亘って複数のノズルを設け、これら複数のノズルの噴出方向を斜めにすることで、手足の先から心臓に向う流れを形成するようにしている。
【0004】
特許文献2に開示される浴槽装置は、浴槽底面の前後方向に亘って複数の気泡噴出ノズルを設け、これら複数の気泡噴出ノズルの噴出のタイミングをずらすことで足先から心臓に向かっての擬似的な流れを形成するようにしている。
【0005】
特許文献3、特に図11の別実施例として開示される浴槽装置は、浴槽内に下半身用の浴水噴出ノズルと上半身用の浴水噴出ノズルを設け、下半身用の浴水噴出ノズルには第1のポンプから浴水を供給し、上半身用の浴水噴出ノズルには第2のポンプから浴水を供給するようにしている。また、特許文献3には噴出ノズルの構造として、2本の流路を合流させ、それぞれの流路から流入量を制御することでノズルからの噴出方向を連続的に変化(スイング動)させるものが提案されている。
【0006】
【特許文献1】特開2005−342491号公報
【特許文献2】特開2005−318950号公報
【特許文献3】特開2005−342507号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3に開示される浴槽装置は、リンパマッサージを目的とするものであるが、以下の問題がある。
【0008】
特許文献1に開示される浴槽装置にあっては、ノズルから噴出する浴水の方向は斜めではあるが、スイング動しないため、撫で上げる感覚に乏しく、リンパマッサージ効果を高めることができない。
【0009】
特許文献2に開示される浴槽装置にあっては、バルブの切替によって擬似的に足先から心臓に向けた流れを感じることはできる。しかしながら単発的な噴出の切替にすぎず、リンパの流れを促進する手足の先から心臓に向かって撫で上げる連続的な動作を作り出すことはできず、リンパマッサージ効果を高めることができない。
【0010】
特許文献3に開示される浴槽装置にあっては、2つの循環ポンプを用いるため、全身のリンパマッサージを行おうとして下半身用の浴水噴射ノズルから上半身用の浴水噴射ノズルに切り替える際に、一方のポンプをオフとし、他方のポンプをオンにすることになるが、このときにポンプの立ち上がり性能や停止性能によりマッサージの連続性が損なわれやすい。これを解消するため、一方のポンプのオフと他方のポンプのオンをオーバラップさせることも考えられるが、このようにすると瞬間的に大きな電力を必要とし好ましくない。
【0011】
また、2つ循環ポンプを使用すると、浴槽装置全体が大型化しコストアップになるだけでなく騒音や振動といった観点でも好ましくない。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記の課題を解決するため本発明の浴槽装置は、浴槽と、該浴槽の長手方向に複数配設され浴水を噴出させるノズルを備えた浴槽装置であって、前記ノズルとして、入浴者の足裏に向けて浴水を噴出する足裏用ノズルと、入浴者の足首から膝裏に向けて浴水をスイングさせながら噴出可能な脹脛用ノズルと、入浴者の背中に向けて浴水を噴出する背中用ノズルとを有し、浴水を循環する単一の循環ポンプと、この単一の循環ポンプからの浴水を前記足裏用ノズル及び前記脹脛用ノズルへの流路と前記背中用ノズルへの流路とに配分して供給する第1の弁と、この第1の弁を介して前記足裏用ノズル及び前記脹脛用ノズルへの流路に供給された浴水を前記足裏用ノズルへの流路と前記脹脛用ノズルへの流路とに配分して供給する第2の弁を備えることを特徴としている。
【0013】
このような構成とすることで、足裏用ノズルによって入浴者の足裏に向けて浴水を噴出し、次いで浴水をスイングさせながら噴出可能な脹脛用ノズルによってリンパ液が滞りやすい脹脛に関して足首から膝裏へと重点的に撫で上げ、その後背中用ノズルにて背中を刺激する、という一連の動作を単一のポンプで実現することができる。これにより、浴槽装置全体の省スペース、コストダウンを実現し、同時に騒音、振動も最小限に抑えることができる。更には、2つのポンプ構成では不可避であるポンプのオンオフによる全身モードでの一連の動作の連続性の欠如も無くなり、使用者にとって違和感のないマッサージ効果の高いシステムを構築することができる。
【0014】
尚、前記入浴者とは平均的な体格を有する仮想上の使用者を指し、前記浴水は気泡を含んだものでもよい。また循環ポンプの形式も任意である。
【0015】
また、前記第2の弁と脹脛用ノズルとをノズル内で合流する2本の流路でつなげた構成を有していてもよく、それぞれの流路に送り込む浴水の量を制御することにより、スイング動を容易に実現させることができる。
【0016】
また、この2本の流路への送り込む浴水の量を制御する第2の弁としてロータリー式の弁を採用してもよく、これにより噴出量を徐々に増やしたり減らしたりすることがロータリー弁の回動動作にて容易に実現でき、連続的なスイングしながらの噴射を容易に実現できる。また、リンパマッサージとして重要な、足裏、足首、脹脛、膝裏の一連の噴出順番の連続性も容易に実現できる。
【0017】
また、背中用ノズルとして、入浴者の腰から背中に向けて浴水をスイングさせながら噴出可能に構成してもよい。これにより、腰から背中を撫で上げることが可能となり、リンパマッサージ効果がより効果的になる。
【0018】
また、第一の弁としてロータリー式の弁を採用してもよく、これにより脹脛用ノズルから背中用ノズルへの移行がよりスムーズになり、噴出順番の連続性が容易に確保できる。更に、背中用ノズルのスイング動も容易に実現できる。
【0019】
また、各ノズルへの流路を形成する各配管への送水時間を4〜40秒とすることにより、十分なリンパマッサージ効果が得られかつ使用者が飽きないシステムを実現できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明の浴槽装置によれば、足裏用ノズルによって入浴者の足裏に向けて浴水を噴出し、次いで浴水をスイングさせながら噴出可能な脹脛用ノズルによってリンパ液が滞りやすい脹脛に関して足首から膝裏へと重点的に撫で上げ、その後背中用ノズルにて背中を刺激する、という一連の動作を単一のポンプで実現することができる。これにより、浴槽装置全体の省スペース、コストダウンを実現し、同時に騒音、振動も最小限に抑えることができる。更には、2つのポンプ構成では不可避であるポンプのオンオフによる全身モードでの一連の動作の連続性の欠如も無くなり、使用者にとって違和感のないマッサージ効果の高いシステムを構築することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下に本発明の実施の一例を添付図面に基づいて説明する。図1(a)は本発明に係る浴槽装置の側面図、(b)は平面図、図2は本発明に係る浴槽装置の主要構成部材の関係を示した概略図、図3(a)〜(e)は第1の弁の各ポジションでの断面図、図3(f)は第1の弁の側面図、図4(a)〜(c)は第2の弁の各ポジションでの断面図、図4(d)は第2の弁の側面図、図5は脹脛用ノズルの断面図である。
【0022】
浴槽1の使用者の足先が位置する箇所には足裏用ノズル2が左右に1対配置され、浴槽1の使用者の脹脛が位置する箇所には脹脛用ノズル3が左右に1対配置され、浴槽1の使用者の背中(腰)が位置する箇所には背中用ノズル4が1個配置されている。ここで、位置する箇所とは、平均的な体格の使用者が浴槽に入ったと仮定したときの当該使用者の足裏、脹脛および背中の近傍で、マッサージを行うのに最も効果的な位置を指す。
【0023】
図1では、足裏用ノズル2は浴槽短辺側の一方の壁面に設けられ、脹脛用ノズル3は浴槽底面に設けられ、背中用ノズル4は浴槽短辺側のもう一方の壁面に設けられている。尚、各ノズルが配置される位置としては、図1に示した位置に限定されるものではなく、例えば、脹脛用ノズル3は浴槽長辺側の壁面に設けられていてもよい。また、背中用ノズルは、背中もしくは腰近辺を狙うように設けられていてもよい。
【0024】
また、浴槽1は単一の循環ポンプ5を備えている。この循環ポンプ5は浴槽1に形成した吸引口6から浴水を配管7を介して吸引し、吸引した浴水を配管8を介して吐出する。
尚、本発明でいう浴水とは,気泡入りの浴水も含むものである。
【0025】
配管8の途中には第1の弁9が配置されている。この実施例にあっては、第1の弁9としてロータリー式の4方弁を使用している。第1の弁9は、モータ92により回動する弁体91を有しており、この弁体91の状態によって流路の連通状態を変化させる。この4方弁の1つの流路9aは前記配管8につながり、他の流路9bは足裏用ノズル2及び脹脛用ノズル3に浴水を供給する配管10につながり、残りの流路9c,9dは背中用ノズル4に浴水を供給する配管12,11につながっている。
【0026】
前記配管10の途中には第2の弁13が配置されている。この実施例にあっては、第2の弁13としてロータリー式の4方弁を使用している。第2の弁13は、モータ132により回動する弁体131を有しており、この弁体131の状態によって流路の連通状態を変化させる。この4方弁の1つの流路13aは前記配管10につながり、流路13bは足裏用ノズル2に浴水を供給する配管14につながり、残りの流路13c,13dは脹脛用ノズル3に浴水を供給する配管15,16につながっている。
【0027】
前記配管14は更に途中で分岐して左右の足裏用ノズル2につながり、前記配管15,16は途中で分岐して左右の脹脛用ノズル3につながっている。
【0028】
前記脹脛用ノズル3はノズル自体は固定であるが、噴出する浴水がスイング動する構造となっている。具体的には、図5に示すように、脹脛用ノズル3には前記配管15につながる流路3aと前記配管16につながる流路3bが形成され、これら流路3aと流路3bがノズル内で合流している。
【0029】
而して、配管15からの浴水が配管16からの浴水よりも多いと図において下側に浴水が噴出し、配管16からの浴水が配管15からの浴水よりも多いと図において上側に浴水が噴出する。また、配管16からの浴水と配管15からの浴水とがほぼ等しい場合には、その中間の方向(紙面右方向)に噴出することになる。このように配管15,16からの浴水の流量を制御することで脹脛用ノズル3から噴出する浴水はスイング動を行うことができる。すなわち、第2の弁13での配管15、16への流量配分を変化させていくことにより、スイング動を容易に実現できる。また、本実施例では、前記背中用ノズル4も脹脛用ノズル3と同様の構造をしており、浴水の噴出方向は上下にスイング動を行うことができる。
【0030】
以上の構成からなる浴槽装置の動作について説明する。本発明の浴槽装置は、足裏用ノズル2、脹脛用ノズル3、背中用ノズル4から連続的に順番に浴水を噴出させる全身モードと、足裏用ノズル2、脹脛用ノズル3から連続的に順番に浴水を噴出させる下半身モードと、背中用ノズル4から浴水を噴出させる上半身モードを有している。
【0031】
先ず全身モードについて説明する。本実施例では、第1の弁9及び第2の弁13としてそれぞれ前述のロータリー式の4方弁を用いており、図6は全身モードのタイムチャート、図7は全身モードにおける主要構成部材と噴出状態を示した概略図である。尚、タイムチャート内の図の矢印は、後述する各弁のポジションを模式的に表している。
【0032】
第1の弁9は図3に示したように5つのポジションが、第2の弁13は図4に示したように3つのポジションが、弁体の回動方向に重ならないよう設定されており、弁体91、131が回動することによって各ポジションを得ることができる。例えば第1の弁9では、3ポジションで流路9aを流路9bにのみ接続することになる。尚、各ポジション間の回動途中では、2つの出水側流路にまたがって連通状態を形成することになり、この際、連通状態(開度状態)に応じて送水量が2つの出水側流路に配分されることになる。
【0033】
ここでは、各ポジション間の移動速度は全て等しく設定されている。すなわち、第1の弁9の回転周期(一回転するのに必要な時間)と第2の弁の回転周期の比は、5対3である。尚、第1の弁9の弁体91及び第2の弁13の弁体131は、基本的に紙面上時計回りに回動する。
【0034】
先ず、使用者からの全身モード開始の指令入力を受けて、第1の弁9を図3の(a)ポジションとし、第2の弁13を図4の(a)ポジションとする(この第1の弁9および第2の弁13の状態を初期ポジションAと呼ぶ)。各弁がそれぞれのポジションにあること(初期ポジションAであること)を確認してから循環ポンプ5をオンし浴水の噴出を開始する。
この状態では図7(a)に示すように、配管14及び左右の足裏用ノズル2を介して入浴者の足裏に向けて浴水が噴出される。
【0035】
この後、循環ポンプ5の送水が安定する所定の時間経過後、第1の弁9及び第2の弁13の回動動作を開始する。第1の弁9を図3の(b)ポジションとし、第2の弁13を図4の(b)ポジションまで回転せしめる。すると、配管14を介した左右の足裏ノズル2からの足裏向けの浴水の噴出が徐々に弱くなり配管15を介した左右の脹脛用ノズル3からの足首向けの浴水の噴出が徐々に強くなり、図7(b)に示すように、左右の足裏用ノズル2及び脹脛用ノズル3(流路3a)の両方から噴出される状態を経て、図7(c)に示すように、配管15を介して左右の脹脛用ノズル3(流路3a)から浴水が足首に向けて噴出される。
【0036】
次いで、第1の弁9を図3の(c)ポジションまで回動せしめ、第2の弁13を図4の(c)ポジションまで回転せしめる。この間に図7(d)に示すように、配管15、16を介して左右の脹脛用ノズル3から脹脛に向けて噴出される状態を経て、図7(e)に示すように、左右の脹脛用ノズル3から浴水が膝裏に向けて噴出される。
【0037】
その結果、左右の脹脛用ノズル3から噴出される浴水の方向は、入浴者の足首から膝裏に至るまで連続的に移るスイング動をなすことができる。これにより、脹脛を撫で上げる動作を実現できる。
【0038】
次いで、第1の弁9を図3の(d)ポジションまで回動せしめるとともに、第2の弁13を図4の(c)ポジションを維持したまま停止させておく。すると、膝裏向けの浴水の噴出が徐々に弱くなり腰向けの浴水の噴出が徐々に強くなり、図7(f)に示すように、脹脛用ノズル3(流路3b)及び背中用ノズル4の両方から浴水が噴出する状態を経て、図7(g)に示すように、配管12のみを介して背中用ノズル4から腰に向けて噴出する状態となる。
【0039】
この後、第1の弁9を図3の(d)から(e)ポジションまで回転させると、配管12からの腰向けの浴水の噴出が徐々に弱くなり配管11からの背中向けの浴水の噴出が徐々に強くなり、図7(h)に示すように、配管11,12を介して背中用ノズル4から腰から背中に向けて噴出する状態を経て、図7(i)に示すように、配管11のみを介して背中用ノズル4から背中に向けて噴出する状態となる。これによって、背中用ノズル4からの浴水も下から上に向けてスイング動することになる。この際、第2の弁13は図4の(c)ポジションから(a)ポジションに回動させておく。
【0040】
その結果、背中用ノズル4から噴出される浴水の方向は、入浴者の腰から背中(例えば肩甲骨の間)まで連続的に移るスイング動をなすことができる。これにより、腰から背中を撫で上げる動作を実現できる。
【0041】
この後、第1の弁9を図3の(a)ポジションまで回動させて初期ポジションAに戻す。この間に、背中向けの浴水の噴出が徐々に弱くなり配管15からの足先向けの浴水の噴出が徐々に強くなり、図7(j)に示すように、配管11を介して背中用ノズル4から浴水が弱く噴出し、配管14を介して足裏用ノズルから浴水が弱く噴出する状態をて、配管14を介した左右の足裏用ノズル2からの足裏向けの浴水が噴出される図7(a)の状態に戻る。この際、第2の弁13は図4の(a)ポジションに維持したまま停止させておく。
【0042】
以上の動作を1サイクルとして繰り返し行い、使用者の停止の指令入力を受けてもしくは所定の時間の経過後、ポンプをオフし全身モードは終了となる。このとき、初期ポジションAに戻す動作をさせてもよい。
【0043】
このような動作を行う全身モードによって、単一のポンプで、足裏から始まって、足首、脹脛、膝裏、腰、背中と、順番にかつ連続的に水流にて入浴者の全身を撫で上げながら刺激することができ、常に足裏から心臓に向かって全身をマッサージし、リンパの流れを促進し、むくみ解消などの効果を効率よく発揮することができる。このとき、各ノズル間の噴出移行は、第1の弁9および第2の弁13の回動動作によりスムーズに行われるため、使用者にとって違和感のないマッサージ効果の高いシステムを実現できる。
【0044】
図8は下半身モードのタイムチャートであり、基本的には前記全身モードから上半身モードを省略したものであり、第1の弁9は図3の(a)ポジションに固定され、この間に第2の弁13が回動することで、図7(a)から(e)までを行い(a)に戻る、という工程を繰り返し行うことになる。尚、第1の弁9は図3の(b)または(c)ポジションに固定してもよい。
【0045】
このような動作を行う下半身モードによって、単一のポンプで、足裏から始まって、足首、脹脛、膝裏と、むくみの発生しやすい下半身に対して、順番にかつ連続的に水流を作用させることができ、常に足裏から心臓に向かって下半身をマッサージし、リンパの流れを促進し、むくみ解消などの効果を効率よく発揮することができる。
【0046】
図9は上半身モードのタイムチャートであり、基本的には前記全身モードから下半身モードを省略したものであり、第2の弁13は図4の(a)ポジションに固定され、この間に第1の弁9が図3のポジション(d)(e)間を回動往復(ポジション(d)から(e)は時計回り、(e)から(d)は反時計回り、の反復動作)することで、図7(g)(h)(i)(h)(g)の工程を繰り返し行うことになる。尚、第2の弁13は図4の(b)または(c)ポジションに固定してもよい。
【0047】
このような動作を行う上半身モードによって、単一のポンプで、腰から背中の背骨周りに存在するつぼを中心としたマッサージポイントに対して、連続的に水流を作用させることができ、広範囲にわたって上半身をマッサージし、こり解消などの効果を効率よく発揮することができる。
【0048】
以上述べてきたように、本発明によれば、単一のポンプで全身モード、下半身モード、上半身モード、のそれぞれを実現でき、かつそれぞれのモードにおいて連続的に水流を身体に対して作用させることができ、リンパマッサージやこり解消といったマッサージ効果をより効率よく発揮することができる。
【0049】
また、使用者の状態や好みによって、全身を撫で上げてくれる全身モード、下半身のむくみを重点的に解消する下半身モード、上半身のこりを重点的に解消する上半身モード、を使い分けることができ、使用者にとってより好ましいシステムを単一のポンプで実現している。
【0050】
このように、単一のポンプで順番に連続的に水流を噴出させるために、二つの弁(第1の弁9、第2の弁13)は上記のように連動して動かす必要がある。具体的には、第1の弁9が第2の弁13側に開いているとき(図3(a)ポジションから(c)ポジションまで)に、第2の弁13の一連の動作(少なくとも図4(a)ポジションから(c)ポジションまで)を行う必要がある。この連動動作を確実にするため、各モードでの動作状態において、第1の弁9と第2の弁13のポジション、具体的には弁体91と弁体131の位置をチェックする制御を行っても良い。例えば、全身モードにおいては初期ポジションAは定期的に訪れるので、このポジションを定期的にチェックすることで、誤動作を防ぐことができる。同様に、本装置を一時中断し、再起動するときにも、各モードの初期位置(例えば全身モードにおいては初期ポジションA)を確認し、それから循環ポンプ5をオンすることで、誤動作を防ぐと共に、各モードの始まりを所定の噴出位置(全身モードと下半身モードでは配管14からの足裏向け噴出、上半身モードでは配管12からの腰向け噴出)からとすることができる。これにより、必ず足裏から心臓に向かうマッサージとなる。
【0051】
また、循環ポンプ5から第1の弁9および第2の弁13を通じて各配管への送水時間を4秒から40秒と設定することが望ましい。各配管への送水時間とは、本実施例においては、例えば配管16への送水時間は、第1の弁9が流路9b側に開いておりかつ第2の弁13が流路13d側に開いている時間となり、およそ図4のポジション(b)からポジション(a)に到るまでの時間である。この時間は、各噴出ノズルからの浴水噴出の時間を決定しており、すなわち、マッサージ時間を決定するものである。例えば、スイングさせる脹脛用ノズル3の場合、噴出時間は配管15と配管16の2本分の送水時間を加味して決定されるため送水時間より若干長めとなり、およそ送水時間の3/2倍である。一方、脹脛用ノズル3の場合、噴出時間は配管14によってのみ決定されるため送水時間と等しい。各配管への送水時間が4秒以上だと、水流により撫で上げるリンパマッサージ効果が十分に得られ、また、40秒以下だと、使用者が使用中に退屈になることなく使用することができる。
【0052】
また、各部位での動作時間を使用者の好みに応じて設定できるようにしてもよく、この場合、設定時間に応じて弁体の速度や回動時間を変更するよう制御することで対応できる。
【0053】
次に、第1の弁として電磁式バルブを用いた第2の実施例について述べる。
図10、図11及び図12は、第1の弁として電磁式バルブを用いた場合の全身モード、下半身モード及び上半身モードのタイムチャートである。基本的なパターンは前記ロータリーバルブを用いた場合と同様であり、単一のポンプで全身モード、下半身モード、上半身モードを第1の弁9および第2の弁13の連動動作によって実現している。尚、電磁式バルブを用いた場合にはオン・オフの切替がデジタル的であるため、瞬時に浴水の噴出・停止がなされる。これにより、脹脛ノズル3から背中用ノズル4への噴出移行、及び背中用ノズル4から足裏用ノズルへの噴出移行が明確となり、撫で開始や撫で終わりが明確となり方向性が明確となる。また、背中用ノズル4のオン・オフに用いることで、つぼ押し効果が高まり、こり解消に効果的である。
【0054】
尚、第2実施例においても、第1実施例同様、各弁の弁体の位置のチェック制御や、送水時間の設定や、使用者の好みに応じた各種設定などを、行えるようにしてもよい。
【0055】
以上、単一のポンプに2つの弁を有する構成について説明してきたが、例えば第1の弁9から背中用ノズル4との流路間に第3の弁を設けてもよく、第3の弁をロータリー式とすれば、上述同様、背中用ノズル4のスイング動を容易に行うことができる。また更に、図13のように、首下用ノズル22等を第3の弁21の後段に配すれば、上述の足裏ノズル2と脹脛ノズル3との順番関係同様、腰から背中、首下までのマッサージを順序よく行うことができる。この際、全身モードとしては、足先から首下までの広範囲を連続してマッサージすることが可能となる。
【0056】
以上、本発明の実施例について説明したが、本発明の浴槽装置を構成するいずれかの要素について当業者が設計変更を加えたものであっても、本発明の要旨を備えたものであれば、本発明の範囲に包含される。
例えば、各浴水噴射ノズルの位置や大きさ、又、各弁の速度や停止のタイミングなど詳細な動きなどについて当業者が適宜変更を加えたものであっても、本発明の要旨を含む限り、本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0057】
【図1】(a)は本発明に係る浴槽装置の側面図、(b)は平面図である。
【図2】本発明に係る浴槽装置の主要構成部材の関係を示した概略図である。
【図3】(a)〜(e)は第1の弁の各ポジションでの断面図であり、(f)は第1の弁の側面図である。
【図4】(a)〜(c)は第2の弁の各ポジションでの断面図であり、(d)は第2の弁の側面図である。
【図5】足裏用ノズルの断面図である。
【図6】第1の弁としてロータリー式バルブを用いた場合の全身モードのタイムチャートである。
【図7】全身モードにおける主要構成部材の関係を示した概略図である。
【図8】第1の弁としてロータリー式バルブを用いた場合の下半身モードのタイムチャートである。
【図9】第1の弁としてロータリー式バルブを用いた場合の下半身モードのタイムチャートである。
【図10】第1の弁として電磁式バルブを用いた場合の全身モードのタイムチャートである。
【図11】第1の弁として電磁式バルブを用いた場合の下半身モードのタイムチャートである。
【図12】第1の弁として電磁式バルブを用いた場合の上半身モードのタイムチャートである。
【図13】第3の弁を用いる場合の浴槽装置の主要構成部材の関係を示した概略図である。
【符号の説明】
【0058】
1…浴槽、2…足裏用ノズル、3…脹脛用ノズル、3a,3b…流路、4…背中用ノズル、5…循環ポンプ、6…吸引口、7,8,10,11,12,14,15,16,20,23…配管、9…第1の弁、9a,9b,9c,9d…流路、13…第2の弁、13a,13b,13c,13d…流路、21…第3の弁、22…首下用ノズル、91,131…弁体、92,132…モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、該浴槽の長手方向に複数配設され浴水を噴出させるノズルを備えた浴槽装置であって、前記ノズルとして、入浴者の足裏に向けて浴水を噴出する足裏用ノズルと、入浴者の足首から膝裏に向けて浴水をスイングさせながら噴出可能な脹脛用ノズルと、入浴者の背中に向けて浴水を噴出する背中用ノズルとを有し、浴水を循環する単一の循環ポンプと、この単一の循環ポンプからの浴水を前記足裏用ノズル及び前記脹脛用ノズルへの流路と前記背中用ノズルへの流路とに配分して供給する第1の弁と、この第1の弁を介して前記足裏用ノズル及び前記脹脛用ノズルへの流路に供給された浴水を前記足裏用ノズルへの流路と前記脹脛用ノズルへの流路とに配分して供給する第2の弁を備えることを特徴とする浴槽装置。
【請求項2】
前記第2の弁と前記脹脛用ノズルとは前記脹脛用ノズル内で合流する2本の流路でつながっていることを特徴とする請求項1に記載の浴槽装置。
【請求項3】
前記第2の弁はロータリー式であることを特徴とする請求項1または請求項2の何れかに記載の浴槽装置。
【請求項4】
前記背中用ノズルは、入浴者の腰から背中に向けて浴水をスイングさせながら噴出可能に構成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の浴槽装置。
【請求項5】
前記第1の弁はロータリー式であることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の浴槽装置。
【請求項6】
前記各ノズルへの流路を形成する各配管への送水時間が4〜40秒であることを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載の浴槽装置。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2007−209564(P2007−209564A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−33130(P2006−33130)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】