説明

浴槽装置

【課題】 入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供する
【解決手段】
浴槽と、前記浴槽に設けられ背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面と、前記第二の浴槽壁面に設けられた足当て部と、前記足当て部に設けられた噴流を吐水する吐水部と、前記吐水部から吐水する噴流を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、噴流が吐水していない状態で前記足当て部に足裏を当接した時に、噴流が吐水している状態に変化させることで前記足当て部から足裏を離間させることを可能とし、その噴流の吐水の変化により前記足当て部への足裏の当接と離間を交互に動作させることを可能とする制御部であることを特徴とする浴槽装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽装置に関し、特に、入浴者に運動させる浴槽装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康やリラクゼーションへの関心が高まり求められている。そして、一般家庭浴槽において、水流浴機能を備える商品が広く展開されている。水流浴商品の主目的は、水流による入浴者へのマッサージ、疲労回復、そして、癒しとなっている。
【0003】
例えば、特許文献1には、一方向に流れる直接的かつ連続的にあたる一様流を生成し、完全に脱力できる状態の入浴者へ一様流をあて、体表面を刺激する技術が開示されている。
さらに特許文献2には、一様流ではなく流水循環ポンプの回転数を変速可能にして、流水の吐出量及び吐出圧を制御することが記載されている。
【0004】
また、部分的なマッサージとして、特許文献3に、浴槽内部に足置き部が設けられ、この足置き部に噴流を噴出する吐出口が設けられた循環式浴槽が開示されている。
【0005】
一方、浴槽内での運動を行う提案もある。特許文献4には、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術が開示されている。踏み台にはバネによって踏み込み負荷が与えられており、入浴者は座位姿勢のまま片足で踏み台を踏み込むことにより、運動することができる。
【特許文献1】特開平2−1272号公報
【特許文献2】特開平3−16568号公報
【特許文献3】特開2005−287541号公報
【特許文献4】特開2003−236014号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、一般家庭浴槽での水流浴では水流による入浴者へのマッサージが主流となっており、筋力強化を目的としているものが少ない。また、浴槽内に踏み込み可能な踏み台を設ける技術は普段から運動習慣の無い人が運動を行うには、自ら運動しようという相当な意志の力を要する。特に、入浴時はリラックスした精神状態になっているため、意志の力を発揮することは困難である。このため、浴槽内に運動器具を設置しても、運動が長続きしないことが予想される。また、運動器具の取付・取り外しが面倒という問題もある。
本発明の目的は、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を提供することで
ある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一様態によれば、浴槽と、前記浴槽に設けられ背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面と、前記第二の浴槽壁面に設けられ、足に噴流を吐水する吐水部と、前記吐水部から吐水する噴流を制御する制御部と、を備え、前記制御部は、噴流が吐水していない状態から噴流が吐水している状態に変化させることで足を屈曲させることを可能とし、その噴流の吐水の水量を変化させることにより足の屈伸運動を促進する制御部であることを特徴とする浴槽装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、入浴者に継続的に運動させることができる浴槽装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施形態について説明する。
図1は、本実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【0010】
浴槽装置1には、浴槽2が設けられている。浴槽2の形状は例えば略直方体形状となる。そして、長手方向の一端部の内側面は、入浴者Mが入浴姿勢を保持し、入浴者の背面m1で背もたれ可能な第一の浴槽壁面2aとなっている。また、浴槽長手方向において、第一の浴槽壁面2aと対向して第二の浴槽壁面2bが設けられており、入浴者Mの足裏m2が接触する壁面となっている。第一の浴槽壁面2aと第二の浴槽壁面2bとは、底面2cと接している。
【0011】
浴槽2の長手方向の長さ、すなわち、浴槽2における第二の浴槽壁面2bと第一の浴槽壁面2aとの間の長さは、標準的な体格の入浴者Mが入浴姿勢をとったとき、背中m1を浴槽2の第一の浴槽壁面2aに当てて、足裏m2を第二の浴槽壁面2bに対向させたときに、足裏m2で吐水部3を覆うことができる程度の長さである。また、臀部においては、浴槽2の底面2cに接触させるようにする。
【0012】
浴槽2の第二の浴槽壁面2bには、入浴者Mの左足裏が当接する足当部2eLと右足裏が当接する足当部2eRを設けている(以下総称して「足当部2e」とも言う)。さらに、足当部2eL及び2eRは、左脚用の吐水部3L及び右脚用の吐水部3R(以下総称して「吐水部3」とも言う)が含まれている。
【0013】
この吐水部3は、入浴者Mの足裏を中心とした両脚部へ噴流を交互に吐水することを可能にする駆動部4と接続されている。この噴流の方向は、第二の浴槽壁面2bから第一の浴槽壁面2aに向かう方向である。これらの一対の吐水部3は、水平方向に配列されており、例えば、第二の浴槽壁面において上下方向に延びる中心線に関して対象となる位置に配置されている。
【0014】
尚、図1においては、図示の便宜上、足当部2eL及び2eR、そして、吐水部3L及び3Rを相互にずらして描いているが、実際には足当部2eL及び2eRと吐水部3L及び3Rは同じ高さに配置されている。後述するほかの断面図におていも同様である。
そして、図2に示すように、足当部2eは、吐水部3を包括した状態で形成される。
【0015】
また、浴槽装置1には、水流を生成する駆動部4が設けられている。駆動部4は、ポンプと切替弁によって構成される装置である。駆動部4の吸入口4sは浴槽2の内部に連通されている。これにより、駆動4は浴槽2内から水を汲み上げ、水流を生成する。
【0016】
更に、浴槽装置1に備わる駆動部4は、吐水部3より“噴流が吐水しない状態”から“噴流を吐水する状態”に水流の水量を調節する。その際、駆動部4による水流の水量調節は、駆動部4に接続される制御部5からの制御によって行われる。
【0017】
次に、本実施形態の動作について図1から図5を用いて説明する。
【0018】
図1に示すように、浴槽2内に水(湯)Wを入れた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。すなわち、入浴者Mは、臀部を浴槽2の底面2cに接触させ、背中m1を浴槽2の第一の浴槽壁面2aに当接させ、足裏m2を第二の浴槽壁面2bに対向させる。そして、入浴者Mは、両足裏m2で足当部2eL及び2eRと吐水部3L及び3Rを覆うように、足裏m2を当接させる。そのとき、吐水部3から吐水される水流を足裏m2で捉える初期姿勢をとる。
【0019】
このとき、入浴者Mはリラックスした状態にあるが、浮力の働きによって身体が湯水内に水没しないよう、脚部(足裏)、臀部、体幹部(背中)で浮力に抗じるため、各支持点周りの筋群は微小な筋の活動を行うこととなる。しかしながら、これら筋群の活動は微小であり、無意識に行われているため入浴者は、上述した入浴の姿勢を普段入浴する時と同様に楽に保持することが可能となる。さらに、入浴者Mは、入浴者自身に加わる浮力の働きが入浴姿勢のバランスを乱し、それに対して、入浴者は、無意識に全身の筋肉を働かせて姿勢を安定させようとする補償動作を行う際に筋が活動する。
【0020】
図3は、本実施形態に係る浴槽装置1の動作を例示する模式的平面図であり、左脚用の吐水部3L及び右脚用の吐水部3Rから水流を交互に吐水させる場合を示す。
まず、駆動部4及び制御部5を作動させる。これにより、駆動部4が浴槽2内の水を吸入口4sから汲み上げて水流を生成する。そして、駆動部4が生成する噴流の水量は、制御部5からの指令を受けて駆動部4によって調節される。制御部5は、吐水部3から“吐水しない状態”から“吐水する状態”へと制御し駆動部4からの水量を調節していることを示す。
【0021】
そして、制御部5は、吐水部3L及び3Rより左右に噴流を吐水するように駆動部4を制御する。左右交互の吐水は、ある時間t1において吐水部3Lより吐水され、t2時間では、吐水部3Lより吐水をしない状態にし、t3時間においてt1同様に吐水を行う状態にする。一方、吐水部3Rにおいては、t1時間においては、吐水しない状態となり、次にt2時間においては、吐水される状態となる。
【0022】
そして、t1時間において吐水部3Lが噴流を吐水する状態になったとき、入浴者Mの左脚の足関節、膝関節及び股関節は屈曲するとともに、左足部が、第二の浴槽壁面2bから離間し第一の浴槽壁面2aに向かって移動する。
【0023】
図4の(a)から(e)は、横軸に時間をとって本実施形態に係る浴槽装置1からの吐水量と足部の離間と当接を例示するグラフ図であり、(a)の縦軸は吐水部3Lからの吐水量を表し、(b)の縦軸は吐水部3Rの吐水量を表し、(c)の縦軸は、足部Lが足当部2eLに対して当接もしくは離間の状態を表す。(d)の縦軸は、足部Rが足当部2eRに対して当接もしくは離間の状態を表す。(e)の縦軸は両吐水部から吐水される合計吐水量の理論値を表す。
【0024】
図3、図4に示すように、ある時間t1においては、吐水部3Lは、吐水する状態を示し、吐水部3Lからの吐水によって入浴者Mの足部Lが、足当部2eLに対し離間する状態となる。一方、吐水部3Rは、吐水しない状態となり、入浴者Mの足部Rが、足当部2eRに対し当接する状態となる。
【0025】
さらに、t2時間においては、吐水部3Lからの水流は、吐水しない状態となり、入浴者Mの足部Lが、足当部2eL対し当接する状態となる。そして、吐水部3Rは、吐水する状態となり、入浴者Mの足部Rが、足当部2eR対し離間する状態となる。このように、左右脚部が吐水部3からの吐水状態に応じて、交互に足当部2eL及び2eRと当接と離間を繰り返す。
【0026】
例えば、噴流の吐水時間t1〜t4は、2秒程度にする。ただし、バランス能力をトレーニングする場合、t1〜t4をゆっくりとした3〜6秒程度にすると良い。また、よりウォーキング動作に近づける場合は、t1〜t4を1〜2秒程度にするとよい。
【0027】
また、図4に示す時間t2の際、吐水部3Lは噴流の水量が低下し、一方、吐水部3Rは噴流の水量が増えている。水量の変動を以下に駆動部4に含まれる切替弁を例として説明する。吐水部3Lに接続される切替弁の流路開口面積が閉じると共に吐水の水量が減少し、一方吐水部3Rに接続される切替弁の流路開口面積が開くと共に水量が増して行く。これらは制御部から駆動部への切替指令によって切替弁が切り替わることで、吐水部3L及び3Rより、交互の吐水を行うことが出来る。ただし、駆動部4にポンプを配置し、制御部5からの制御指令によっても実現できる。
【0028】
図3および図4で示す、時間t4において、制御部5の指令を受けた駆動部4が、右足用の吐水部3Rより噴流を吐水することで、入浴者の脚部が屈曲し、足部Rが、足当部2eRから離間し第一の浴槽壁面2aに向かって移動する。以上、上述の吐水状態を左右の吐水部3L及び3Rにおいて繰り返すことにより、入浴者は、吐水部3L及び3Rから交互に吐水される噴流状態によって、左右脚部を交互に屈伸運動を行う。
【0029】
図5は、上述してきた吐水状態によって、入浴者Mがとりうる動作・状態を示す。図5(a)に図示するように、入浴者Mの脚部は、吐水しない状態では、脚部を伸展する状態、すなわち足当部2eに足裏を当接することとなる。そして、図5(b)のように吐水部3が噴流を吐水する状態になったとき、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節は屈曲し、足部が、足当部2eから離間し、第一の浴槽壁面2aに向かって移動する。
【0030】
さらに、屈曲する状態を作る噴流は、足部を包むように流れ場を生成するため、噴流から足部が外れないように力が働く。これと同じ現象は、噴水の上にピンポン玉を載せた時にピンポン玉が噴流の中心で留まる現象である。これによって効率よく噴流によって入浴者は脚部の屈伸運動ができる。
【0031】
従って、吐水部3L及び3Rが交互に噴流を吐水しない状態と吐水する状態をとることにより、入浴者の左右足部が、足当部2eL及び2eRに対して、当接した状態と、離間した状態を繰り返す。すなわち、入浴者Mの足部m2は、浴槽2の長手方向に沿って交互に往復することとなる。結果、左右交互に脚部を屈伸運動させる。よって、本発明の装置は、入浴者に歩行を模した水中ウォーキングの運動を行わせることとなる。
【0032】
また、図4の(e)に示されたとおり、吐水部3L及び3Rから吐水される噴流は、駆動部4の働きによって吐水部3L及び3Rから吐水される流量が合計して一定となるように調節される。それによって、駆動部4が生成する全体の水量を落とすことなく吐水部3より噴流を出力する。それによって、駆動部4に加わる負荷を軽減することが出来る。
【0033】
ここで、図6の(a)と(b)より、具体的に、他動的な屈伸運動によって起こる筋の活動を説明する。図6の(a)は、水流によってもたらされる他動運動によって活動する筋群を例示した図であり、(b)で示されている筋群の位置を示す。(b)は、縦軸に筋の活動量を示し、横軸に時間をとり、吐水状態に応じて脚部の異なる筋が活動していることを示す。S1時間に噴流を吐水する状態に移ることで、脚部の屈曲より前脛骨筋M5が活動し始める。この結果は、足部が第二の浴槽壁面より離れ、第一の浴槽壁面へ移動している状態で筋の活動が起こっている事を意味する。
【0034】
そして、次にS2時間で噴流が吐水する状態から吐水しない状態と移る。それによって、入浴者Mの足部が第二の浴槽壁面2bへ移動し、S3時間において吐水部3を含む足当部2eに当接する。そして、入浴者Mの足部が吐水部3を含む足当部2eと当接すると、ハムストリングス(大腿二頭筋他)が活動することを図6の(b)より示している。このように、噴流に伴って起こる脚部の屈伸運動は、異なる筋群を働かせることで運動効果を高める。
【0035】
図6に図示されていた前脛骨筋M4は、ヒトの身体セグメントにおける下腿部に備わった筋である。前脛骨筋M5の働きは、歩行時、地面と足部とのクリアランスをとるために働く筋肉として知られている。よって、前脛骨筋M5を活動させる運動とは、転倒予防に貢献する運動を意味する。
【0036】
同じく、図6に図示されたハムストリングスM5は、ヒトの身体セグメントにおける大腿部に備わった筋群である。ハムストリングスは、大腿二頭筋M5、半膜様筋、半腱様筋、そして大内転筋によってなる筋群である。大腿二頭筋M5の働きは、主として歩行時における蹴りだす力、推進力を生成する筋として知られている。よって、ハムストリングスを刺激する運動とは、歩行速度の維持と歩行機能の向上に貢献できる運動を意味する。
【0037】
吐水部3から吐水する足を屈曲させる水量は、入浴者Mが背中m1を第一の浴槽壁面2aに当接させ、足裏m2を吐水部3に対向させたときに、入浴者Mの足関節、膝関節及び股関節を同時に屈曲させることが可能な量であり、例えば、80〜300リットル/分である。尚、水流の大きさが80リットル/分未満であると、入浴者の足裏m2が吐水部3から離れないことがあり、300リットル/分を超えると、浴槽2から水が溢れ出すことがある。
【0038】
吐水される水量が110リットル/分を超えると吐水される噴流の押圧によって脚部移動距離が140mm以上になり、この条件を境に使用者が、水流による屈伸運動で運動感を感じることが確認されている。尚、モニター人数35名において、110リットル/分を超えると吐水で足部が140mm以上移動し、運動感を感じることを確認している。
【0039】
さらに屈伸運動において効果的で高い運動効果を得るには、150リットル/分程度の水流で運動を行うことが良く。さら好ましくは、180リットル/分程度の水流による運動が効果的である。なお、この水流の大きさは、一般家庭用浴槽を対象とした循環式浴槽において、マッサージ用に噴出される水流の大きさよりもかなり大きい。
【0040】
上述した通り、噴流の流量を増やすことで足裏を押圧する力を増加させるとともに屈伸運動の可動範囲を広くする。この噴流の増加に伴って、足裏に備わる感覚器と脚部に備わる腱器官をより効果的に刺激する事で歩行に働く機能を効果的促進させることが可能となる。
【0041】
また、吐水される湯温を、36〜41℃帯域で使用するのが好ましい。例えば、温度が体温に近く、温熱の負荷が低い場合の36〜38℃では、吐水の水量を多くし屈伸運動の回動量を増やす、もしくは、吐水の周期を早くすることで屈伸運動の回数を増やすことにより運動強度を高め、効果的な運動を入浴者へ提供することが可能となる。
【0042】
一方、比較的短い時間で十分な運動を求める場合は、湯温度を高めに設定し(例えば39〜41℃)、温熱と運動の効果の相乗効果によって、湯の温度を低く設定した時に比べ、短い時間でエネルギー消費を起こし、効果的な運動を短い時間で行うことができる。
【0043】
温熱の効果と運動効果について、図7において説明する。
図7は、縦軸に脂肪の燃焼効率を示す呼吸商を示し、横軸に経過の時間を図示し、速歩と水流による他動運動を行った際の呼吸商を比較した値を示している。
条件は、陸上での時速4.3キロ程のウォーキングと湯温39度で吐水量が180リットル/分程度の水流を選択した本発明による水中ぉーキングの場合を呼吸商より比較した。結果、高い脂肪燃焼効果が得られる領域に本発明による装置を用いた水中ウォーキングが、陸上のウォーキングより速い時間帯で突入したことを示している。上記結果は、本装置が温熱と運動の相乗効果によって高い運動効果を生成することを示すものである。
【0044】
本実施形態の効果について説明する。
このように、本実施形態によれば、入浴者Mに運動をさせることができる。この運動は外部から与えられる他力的な他動運動となる。一般的な浴槽内で入浴姿勢をとると、実は、使用者の取り得る入浴姿勢は、浮力に抗じるように姿勢を保持するために無意識のうちに微小な筋の活動を起こす。この微小な筋活動を誘発した状態で、入浴者は、噴流を吐水部3L及び3Rより交互に受ける。その結果、入浴者Mが噴流によって他動的に水中ウォーキング運動を行う。そして、脚部筋群や脚部を支える体幹部に備わる筋を活動させることができる。
【0045】
さらに、入浴者Mは、吐水部3より吐水される噴流と、入浴者自身に加わる浮力の働きが入浴姿勢のバランスを乱し、それに対して、入浴者は、無意識に全身の筋肉を働かせて姿勢を安定させようとする補償動作を行う。これによっても全身の運動をすることができる。このため、入浴者の意志力に依存する部分が少なく、長続きしやすい運動を本装置によって提供することが可能となる。また、この運動は入浴姿勢のまま行うことができるため、通常の入浴から運動へと移行がし易く、生活習慣の中で無理なく行える運動となる。この結果、運動を継続しやすい。
【0046】
上述の運動を35名が体験した。その結果、入浴中の水中ウォーキングが入浴姿勢から、水流によって無理なく行われること。そして、継続して水中ウォーキングを行うと運動感、筋の使用感を感じる。また風呂から出たあと、足が温かい。ジョギングよりも運動感を感じる、といった運動の効果を体験者が体感していることを確認している。さらに、5分を経たずに、発汗作用が促進されることなども体感しており、ダイエット効果にも適しておりメタボリック対策になるなどの所感も得た。
【0047】
更に本実施形態によれば、左脚用の吐水部3Lと右脚用の吐水部3Rから左右交互に入浴者の足裏へ噴流を吐水するため、入浴者は、脚部の屈伸運動に加え骨盤を中心とした旋回運動を起こすこととなる。その結果、脚部周りの筋群への運動効果に加えて、腹直筋、腹斜筋そして背筋群などへの運動効果が得られることを確認している。このように、上述の運動を浴槽内で行うことにより、脚部のみならず身体の広い範囲に対しての運動となり、効果的な運動を入浴者が得られることができる。
【0048】
更に本実施形態によれば、入浴者は、両足の吐水部3L及び3Rから吐水される水量に応じて屈伸運動より得る運動感が異なる。図8に示す実線Lは、吐水部3からの噴流によって入浴者が屈伸運動を起こった時の脚部が噴流によって第二の浴槽壁面から離れて移動する距離と吐水の流量との関係を表している。
【0049】
実線Lに示すように、足部の移動距離と吐水の流量には相関関係があり、吐水量が多くなると脚部移動量が増える。足部の異動距離が第二の浴槽壁面より離れるのは80リットル/分程度より、足部の移動開始し屈伸運動を行える。より効果的な運動を入浴者が行うには、吐水量を110リットル/分とするとよい。
【0050】
本実施例では、足部の移動距離は140mm程度となっていた。さらにより効果的な運動を得ようとすると、入浴者は吐水量が、180リットル/分を選択し、さらに高い効果的な運動を得ようとすると、200リットル/分となるように水量を調節してもよい。その際の脚部の移動距離は250mm〜300mm程度となっていることが実験より分かっている。
【0051】
尚、足当部2eは、図9と図10に例示するよう、第二の浴槽壁面2bにくらべ突出する凸部2fを備えてもよい。凸部2fの突出する距離Lは、第二の浴槽壁面2bより5mmが望ましい。より好ましいのは、10mmとなる。もしくは、すくなくとも一つの凹溝2gを足当部2eに備える。上述したように足当部2eにおいて、凸部2fもしくは凹溝2gを備えることで、入浴者Mの足裏m2が吐水部3と足当部2eと当接した状態において、足裏m2と第二の浴槽壁面2bの間に空間を作る。
【0052】
凸部2fと凹溝2gによって足裏m2と第二の浴槽壁面2bの間に作られる。その空間によって、噴流が吐水しない状態から吐水される状態に水量を調節された際、吐水された水量が、凸部2fもしくは凹溝2gによって作られた空間を通過することで、噴流が足裏m2に与える負圧(第二の浴槽壁面に引込む力)を抑える。よって、入浴者は、噴流が吐水されない状態と吐水される状態において、当接と離間をより滑らかに行うことが可能となる。
【0053】
本具体例においては、浴槽2内に水(湯)Wを溜めた状態で、入浴者Mが浴槽2内に入り、入浴姿勢をとる。そして、制御部4の操作ボタンを操作することにより、浴槽装置1の運動の実行時間及び屈伸運動の周期を任意に設定する。なお、制御部5の中に予め複数の種類の運動モードが設定されており、入浴者が好みの運動モードを選択するようにしてもよい。
【0054】
例えば、入浴者が、運動負荷の高いモードを選択すると、タイマーが比較的短い周期で吐水する状態、吐水しない状態へと水量を切替える制御を、制御部5から駆動部4に対して出力する。又は、運動時間及び運動周期はタイマーが自動的に設定してもよい。例えば、湯の設定温度が39℃であるとき、タイマーは、1セットの運動時間を10分間に設定する。
このように、本具体例によれば、運動の負荷を入浴者の好みに応じて任意に設定することができる。本具体例における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第1の実施形態と同様である。
【0055】
次に、第1の実施形態の一つ目の変形例について説明する。
図11は、第1の実施形態に係る浴槽装置の変形例を例示する模式的断面図である。
図11に示すように、本実施形態に係る浴槽装置11においては、前述の第1の実施形態に係る浴槽装置1(図1参照)に対して、第一の浴槽壁面2aと第二の浴槽壁面2b、そして、底面2cに接する浴槽側壁面2dに、浴槽手すり7が備わっていることが異なる。
【0056】
この第1の実施形態の変形例において、入浴者Mは、手すり7を握ることで第一の浴壁面2aに背中m1を接することのない入浴姿勢を保持する。この入浴姿勢において、入浴者Mは、吐水部3より吐水される噴流を受けて水中ウォーキングを行う。この際、噴流が足裏を押圧する力は、下肢を伝わり、上肢に伝達される。すなわち、手すり7を力点として前腕部、上腕部において力に抗じようと腕周りの筋群も活動することとなる。もちろん、下肢と上肢の間に位置する腹回りの筋群も活動する。よって、全身運動を可能にする。
【0057】
さらに、入浴者Mは、手すり7を使うことで、背中m1を第一の浴槽壁面2aにもたれることが出来ない場合においても、浴槽2のサイズと関係なく吐水部3L及び3Rより吐水される噴流によって水中ウォーキングを行うことが可能となる。
【0058】
次に、第1の実施形態における二つ目の変形例について説明する。
図12は、第1の実施形態に係る浴槽装置の変形例を例示する模式的断面図である。
図12に示すように、本実施形態に係る浴槽装置12においては、前述の第1の実施形態に係る浴槽装置1(図1参照)に対して、第二の浴槽壁面2bに第一の足当部2eと第二の足当部2hを直列して設けることが異なる。
【0059】
この第1の実施形態の変形例において、入浴者Mは、吐水部3より噴流が吐水されない状態において、足裏m2を第一の足当部2eと第二の足当部2hに当接する。ヒトの足は、足指や母子球近傍を足前部としたとき、踵を足後部とすると、足前部と足後部は土踏まずを挟んでアーチ状の骨格を形成している。ゆえに、第一の足当部2eは、足前部と、そして、第二の足当部2hは、足後部と当接することでより自然な当接を実現できる。
【0060】
そして、吐水部3より噴流が吐水されると足当部2e及び2hより離間し、吐水部3より噴流が吐水されないと足当部2e及び2hに当接する。この当接と離間を繰り返し行う際、足裏に備わる筋群を刺激することができる。足裏の筋肉は、姿勢や歩行時のバランスを維持するのに重要な働きを行う。よって、足当部2e及び2hを備えることで、当接と離間によって足裏の筋群を刺激し、バランス能力を向上させることが可能となる。
【0061】
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
図13は、本実施形態に係る浴槽装置21の動作を例示する模式的平面図であり、左側の吐水部3Lと右側の吐水部3Rから同時に水流を噴出させる場合を示す。
図13に示すように、本実施形態に係る浴槽装置21においては、前述の第1の実施形態に係る浴槽装置1(図1参照)と比較して、吐水部3が左右の足へ同時に吐水できるように、制御部5が駆動部4へ制御し、左右の吐水部3L及び3Rに同時吐水を行う。
【0062】
この結果、入浴者Mは、両足において、噴流が吐水される状態時に足・膝・股関節を屈曲することとなる。さらには、噴流が吐水されない状態で、足・膝・股関節を伸展することとなる。この両脚における屈伸運動は、入浴者に運動を飽きさせることなく快適な運動を継続させることが可能となる。本実施形態における上記以外の構成、動作及び効果は、前述の第一の実施形態と同様である。
【0063】
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
図14は、本実施形態に係る浴槽装置31の動作を例示する模式的平面図であり、吐水部3L及び3Rのどちらか一方で水流を噴出させる場合を示す。
【0064】
任意の脚部における屈伸運動は、脳疾患などによる半身のみのリハビリ療法として効果的に損傷部位側を噴流を用いた屈伸運動によって行うことが可能となる。
また、入浴者に運動を飽きさせるだけではなく、運動を継続させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置を例示する模式的断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置における、足当部と吐水部を拡大し例示する模式的断面図と正面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的平面図である。
【図4】本発明の本実施形態に係る浴槽装置からの時間と吐水量を例示するグラフ図である。
【図5】本発明の本実施形態に係る使用者の脚部の伸展および屈曲している状態を例示する図である。
【図6】本発明の本浴槽装置によって起こされる筋の活動を説明する図である。
【図7】本発明の浴槽装置によって起こされる運動効果を説明する図である。
【図8】本発明の浴槽装置によって起こされる噴流の流量と脚部の移動量との関係を例示する図である。
【図9】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置に備わる足当部と吐水部について例示する模式的断面図と正面図である。
【図10】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置に備わる足当部と吐水部について例示する模式的断面図と正面図である。
【図11】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置の変形例を例示する模式的断面図である。
【図12】本発明の第1の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的平面図である。
【図13】本発明の第2の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的平面図である。
【図14】本発明の第3の実施形態に係る浴槽装置の動作を例示する模式的平面図である。
【符号の説明】
【0066】
1 11 21 31 浴槽装置、2 浴槽、2a 第一の浴槽壁面、2b 第二の浴槽壁面、2c 底面、2e 2eL 2eR 足当部、 2f 凸部、2g 凹溝、 2h 第二の足当部 3 3L 3R 吐水部、4 駆動部、4s 吸入口、5 制御部、60 浴室ユニット、61 防水パン、62 壁パネル、7 手すり、M 入浴者、m1 背中、m2 足、W 水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浴槽と、
前記浴槽に設けられ背もたれ可能な第一の浴槽壁面と、
前記第一の浴槽壁面に対向して設けられた第二の浴槽壁面と、
前記第二の浴槽壁面に設けられた足当て部と、
前記足当て部に設けられた噴流を吐水する吐水部と、
前記吐水部から吐水する噴流を制御する制御部と、を備え、
前記制御部は、噴流が吐水していない状態で前記足当て部に足裏を当接した時に、
噴流が吐水している状態に変化させることで前記足当て部から足裏を離間させることを可能とし、
その噴流の吐水の変化により前記足当て部への足裏の当接と離間を交互に動作させることを可能とする制御部であることを特徴とする浴槽装置
【請求項2】
前記吐水部が一対の吐水部であることを特徴とする請求項1に記載の浴槽装置
【請求項3】
前記一対の吐水部が水平方向に配列された吐水部であることを特徴とする請求項1または2に記載の浴槽装置
【請求項4】
前記制御部が前記一対の吐水部からの噴流を、交互に吐水していない状態から噴流が吐水している状態へ変化させる制御部であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の浴槽装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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