説明

浴槽

【課題】 節水性を高めた浴槽でありながらも、使用者が入浴した場合に肩まで湯の中に浸かって心地よい入浴感を得ることができ、入浴時に使用者の臀部と排水栓との干渉を抑制することが可能な浴槽を提供すること。
【解決手段】 排水口が形成され一対の長手縁および一対の短手縁を有する底面と、前記底面の一方の短手縁側から上方に立ち上がるように形成された背もたれ面と、を備える浴槽であって、前記底面は、前記背もたれ面側が水下となるように排水勾配が形成されており、前記排水口は、前記底面における前記背もたれ面側に設けられており、前記背もたれ面は、前記底面側の下方面と、前記下方面の上方に繋がる上方面と、を有しており、前記上方面を前記底面まで延伸させた際の仮想面よりも、前記排水口は前記背もたれ面側に設けられていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽に関する。
【背景技術】
【0002】
浴槽は、湯を貯めて使用者が入浴するものであり、個人宅用の浴槽は多くは一人が入浴可能なように構成される。一例としての浴槽は、使用者が足を伸ばして腰を下ろせる広さの底面を形成する底壁と、その底壁から立設される一対の長手方向側壁および一対の短手方向側壁とを備えている。底壁には、浴槽内に溜められた湯を排出するための排出口が設けられている。浴槽内に湯を溜める必要性から、排出口は排水栓によって塞がれるようになっている。そのため、浴槽は、浴槽に溜められた湯に使用者が浸かって底面に着座しても、使用者にとって排水栓が邪魔にならないように構成されている。具体的には、下記特許文献1に記載されているように、排水口を底面中央の長手方向側壁近傍に設け、いずれかの短手方向側壁を背もたれ面として入浴しても使用者の臀部と排水栓が干渉しないように構成されている。
【0003】
ところで、下記特許文献1に記載されているように、排水口を底面中央に設けると、排水勾配を確保する関係上、排水口が設けられた位置が最も水下になるように底面に傾斜を付ける必要がある。また、短手方向側壁を背もたれ面として入浴するため、使用者が入浴した場合に肩まで湯の中に浸かって心地よい入浴感を得ることができるように、双方の短手方向側壁の高さを確保する必要がある。結果として、一方の短手方向側壁を背もたれ面として使用者が入浴した場合に、他方の短手方向側壁は使用者の足のみが底面側にあるだけであるにもかかわらず、必要以上の水深が確保されることになる。
【0004】
そこで、下記特許文献2に記載されているように、一方の短手方向側壁の高さを背もたれ面として十分な高さ寸法を確保する一方で、他方の短手方向側壁の高さ寸法を短くしたような浴槽が提案されている。この浴槽の底面は、一方の短手方向側壁から他方の短手方向側壁に向かって大きな傾斜を形成するように勾配が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−237497号公報
【特許文献2】特開2001−245807号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献2に記載の浴槽は、底面に大きな勾配が設けられている関係上、底面の水勾配もそれを利用したものとなる。つまり、排水口は、背もたれ面としての一方の短手方向側壁近傍における底壁に設けられる。このような浴槽は、最も水深を確保する必要がある背もたれ面側である一方の短手方向側壁の高さ寸法を長いものとし、使用者の足が浸かる程度の水深で十分な他方の短手方向側壁の高さ寸法を短いものとしている。従って、浴槽の長手方向に沿った縦断面で見た場合に、無駄に水深の深い領域を極力少なくした節水可能な浴槽となっている。
【0007】
しかしながら、上述したように節水性を確保するため、底面に大きな勾配を設け、背もたれ面となる一方の短手方向側壁側に排水口を設けていることから、使用者が入浴した場合に排水栓と臀部とが干渉するおそれがある。
【0008】
本発明はこのような課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、節水性を高めた浴槽でありながらも、使用者が入浴した場合に肩まで湯の中に浸かって心地よい入浴感を得ることができ、入浴時に使用者の臀部と排水栓との干渉を抑制することが可能な浴槽を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために本発明にかかる浴槽は、排排水口が形成され一対の長手縁および一対の短手縁を有する底面と、前記底面の一方の短手縁側から上方に立ち上がるように形成された背もたれ面と、を備える浴槽であって、前記底面は、前記背もたれ面側が水下となるように排水勾配が形成されており、前記排水口は、前記底面における前記背もたれ面側に設けられており、前記背もたれ面は、前記底面側の下方面と、前記下方面の上方に繋がる上方面と、を有しており、前記上方面を前記底面まで延伸させた際の仮想面よりも、前記排水口は前記背もたれ面側に設けられていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、背もたれ面側が水下となるように底面が形成されているので、底面の一方の短手縁側から立ち上がる背もたれ面の高さを確保し、他方の短手縁側から立ち上がる対向面の高さを抑制することができる。従って、使用者が背もたれ面に背中を付けて入浴し、対向面側に足を伸ばすことで、入浴した場合に肩まで湯に浸かる心地よい入浴感を得ることができる。更に、背もたれ面は使用者が底面に着座した際に、肩まで湯に浸かれるような高さを確保する必要がある一方で、対向面は使用者の足が疲れる程度の高さで住むので、浴槽の溜水量を抑制して節水効果を高めることができる。
【0011】
本発明では更に、前記背もたれ面は、前記底面側の下方面と、前記下方面の上方に繋がる上方面と、を有しており、前記上方面を前記底面まで延伸させた際の仮想面よりも、前記排水口は前記背もたれ面側に設けられている。このように構成することによって、使用者が背中の上の方を付ける上方面を、使用者の臀部を排水口から引き離すガイドとして形成している。排水口は、上方面を底面まで延伸させた際の仮想面よりも背もたれ面側に設けられているので、上方面に背中の上の方を付けた使用者の臀部から離れることになり、確実に排水口及び排水栓に使用者の臀部が干渉しないように構成することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、節水性を高めた浴槽でありながらも、使用者が入浴した場合に肩まで湯の中に浸かって心地よい入浴感を得ることができ、入浴時に使用者の臀部と排水栓との干渉を抑制することが可能な浴槽を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施形態である浴槽を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態である浴槽を示す平面図である。
【図3】図1および図2に示す浴槽に使用者が入浴している状況を簡易的に示す縦断面模式図である。
【図4】図3に示す状態をより詳細に示す縦断面模式図である。
【図5】本実施形態の浴槽における排水口近傍の傾斜を示す図である。
【図6】図5の排水口中心近傍における縦断面図である。
【図7】本実施形態の変形例である浴槽を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照しながら本発明の実施の形態について説明する。説明の理解を容易にするため、各図面において同一の構成要素に対しては可能な限り同一の符号を付して、重複する説明は省略する。
【0015】
本発明の実施形態である浴槽について、図1および図2を参照しながら説明する。図1は、本発明の実施形態である浴槽BTを示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態である浴槽BTを示す平面図である。
【0016】
図1および図2に示すように、浴槽BTは、下段底面10と、上段底面11と、下方背もたれ面30と、上方背もたれ面33と、下方対向面40と、上方対向面43と、下方右側壁面20rと、上方右側壁面23rと、下方左側壁面20sと、上方左側壁面23sと、リム面50と、を備えている。
【0017】
浴槽BTの底面は、下段底面10と、上段底面11とによって構成されている。下段底面10は、下段底面10に使用者が座った際に、使用者が肩まで湯に浸れるような深さとなる位置に設けられている。上段底面11は、下段底面10よりも上方に形成される面である。使用者は、下段底面10に臀部をつけて着座し、足を延ばして上段底面11に載せて入浴する。下段底面10と上段底面11とは、連続的な面となるように繋がれている。下段底面10には、排水口60が形成されている。
【0018】
下段底面10は、一対の長手縁10er,10esと、短手縁10etとを有している。短手縁10etは、一対の長手縁10er,10esを繋ぐように、上段底面11とは反対側に形成されている。
【0019】
上段底面11は、一対の長手縁11er,11esと、短手縁11etとを有している。短手縁11etは、一対の長手縁11er,11esを繋ぐように、下段底面10とは反対側に形成されている。
【0020】
従って、下段底面10と上段底面11とからなる浴槽BTの底面は、長手縁10er及び長手縁11erからなる一方の長手縁と、長手縁10es及び長手縁11erからなる他方の長手縁と、を有している。短手縁10etは、下段底面10側において一対の長手縁(長手縁10er及び長手縁11erからなる一方の長手縁と、長手縁10es及び長手縁11erからなる他方の長手縁)を繋いでいる。短手縁11etは、上段底面11側において一対の長手縁(長手縁10er及び長手縁11erからなる一方の長手縁と、長手縁10es及び長手縁11erからなる他方の長手縁)を繋いでいる。
【0021】
下段底面10と上段底面11とからなる浴槽BTの底面からは、一対の側壁面である下方右側壁面20r,下方左側壁面20sが上方に立ち上がるように形成されている。下方右側壁面20rは、長手縁10er及び長手縁11erからなる一方の長手縁から上方に立ち上がるように形成されている。下方左側壁面20sは、長手縁10es及び長手縁11erからなる他方の長手縁から上方に立ち上がるように形成されている。
【0022】
下方右側壁面20rの上端には、右段差面21rが略水平方向且つ外側に向くように繋がっている。右段差面21rの外側端からは、右接続面22rが上方に向けて立ち上がり、上方右側壁面23rに繋がっている。
【0023】
下方左側壁面20sの上端には、左段差面21sが略水平方向且つ外側に向くように繋がっている。左段差面21sの外側端からは、左接続面22sが上方に向けて立ち上がり、上方左側壁面23sに繋がっている。
【0024】
下段底面10と上段底面11とからなる浴槽BTの底面からは、下方背もたれ面30と下方対向面40とが立ち上がっている。下方背もたれ面30は、下段底面10の短手縁10etから上方に立ち上がっている。下方対向面40は、上段底面11の短手縁11etから上方に立ち上がっている。
【0025】
下方背もたれ面30の上端には、上方背もたれ面33が外側斜め上方に延びるように繋がっている。下方対向面40の上端には、上方対向面43が外側斜め上方に延びるように繋がっている。上方背もたれ面33と、上方右側壁面23rと、上方対向面43と、上方左側壁面23sと、は連続的な曲面を形成するように繋がっている。上方背もたれ面33と、上方右側壁面23rと、上方対向面43と、上方左側壁面23sとに繋がり、それらを囲んで水平方向に延びるリム面50が形成されている。
【0026】
続いて、図3を参照しながら、排水口60の配置態様について説明する。図3は、図1および図2に示す浴槽BTに使用者Hが入浴している状況を簡易的に示す縦断面模式図である。図3に示すように、下段底面10と下方背もたれ面30とを繋ぐ連結面13が形成されている。連結面13は、下方背もたれ面30を延伸した面と下段底面10を延伸した面とが交わる角を削って浴槽内側に入り込む面として形成されている。下段底面10は、下方背もたれ面30側が水下となるように排水勾配が形成されている。下段底面10と下方背もたれ面30との間には、下方背もたれ面30側の一部のみを連結面13から下方背もたれ面30側に向かって入り込ませた食い込み部32rが設けられている。
【0027】
排水口60は、少なくともその一部が食い込み部32rに位置するように設けられている。これは、従来の排水口が位置60vに形成されていたところ、下段底面10の排水勾配を下方背もたれ面30が水下になるように形成したことでその位置を移動させる必要が生じたことによる。排水口60を水下である下方背もたれ面30側に移動させたことで、使用者Hの臀部と干渉しやすくなったので、連結面13をいわばガード面として利用するものである。
【0028】
本実施形態では、下方背もたれ面30の上方に上方背もたれ面33を形成しているので、排水口60に使用者Hの臀部が干渉しない効果をより高めている。図4に示すように、実際に使用者Hが入浴する際には、背中を上方背もたれ面33に付けて入浴する。上方背もたれ面33を下段底面10まで延伸させた際の仮想面33aよりも、排水口60は下方背もたれ面30側に設けられている。従って、使用者の臀部は、上方背もたれ面33のガイド効果によって排水口60から離れる。
【0029】
本実施形態では更に、排水口60近傍において使用者の臀部と干渉しない工夫をしている。この工夫について、図5及び図6を参照しながら説明する。図5は、本実施形態の浴槽BTにおける排水口60近傍の傾斜を示す図である。図6は、図5の排水口60中心近傍における縦断面図である。
【0030】
食い込み部32rは、下段底面10と下方背もたれ面30とを繋ぐ連結面13と、下段底面10と下方右側壁面20rとを繋ぐ連結面12rとの間の隅角部に形成されている。更に、食い込み部32rは、下段底面10から排水口60に向けて急角度に傾斜する傾斜面16を有する。
【0031】
このように、下段底面10から排水口60に向けて急角度に傾斜する傾斜面16を形成しているので、下段底面10よりも更に下がった位置に排水口60が形成される。従って、連結面13,12rのみならず下段底面10によっても、排水口60および排水栓に使用者の臀部が届かないように構成することができる。また、食い込み部32rを隅角部に設けることで、連結面13,12rのみならず使用者の側方から下方右側壁面20rによっても、排水口60および排水栓に使用者の臀部が届かないように構成することができる。
【0032】
排水口60を塞ぐ排水栓は、ポップアップ式のものや、玉鎖付きのゴム栓式のものが用いられる。玉鎖付きのゴム栓式のものを用いる場合の変形例について、図7を参照しながら説明する。図7は、本実施形態の変形例である浴槽BTaを示す斜視図である。浴槽BTaは、排水口60aを塞ぐための排水栓80と、排水栓80を上方背もたれ面33の上方に係止する玉鎖81(連接部材)とを備えている。この玉鎖81に使用者Hの体が触れにくいように、玉鎖81を通すための凹部70が形成されている。凹部70は、下方左側壁面20sと、下方背もたれ面30との間に形成され、リム面50か食い込み部32sをつなげている。
【0033】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【符号の説明】
【0034】
10:下段底面
10er:長手縁
10es:長手縁
10et:短手縁
11:上段底面
11er:長手縁
11es:長手縁
11et:短手縁
12r:連結面
13:連結面
16:傾斜面
20r:下方右側壁面
20s:下方左側壁面
21r:右段差面
21s:左段差面
22r:右接続面
22s:左接続面
23r:上方右側壁面
23s:上方左側壁面
30:下方背もたれ面
32r:食い込み部
32s:食い込み部
33:上方背もたれ面
33a:仮想面
40:下方対向面
43:上方対向面
50:リム面
60:排水口
60a:排水口
60v:位置
70:凹部
80:排水栓
81:玉鎖
BT:浴槽
BTa:浴槽
H:使用者

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口が形成され一対の長手縁および一対の短手縁を有する底面と、前記底面の一方の短手縁側から上方に立ち上がるように形成された背もたれ面と、を備える浴槽であって、
前記底面は、前記背もたれ面側が水下となるように排水勾配が形成されており、
前記排水口は、前記底面における前記背もたれ面側に設けられており、
前記背もたれ面は、前記底面側の下方面と、前記下方面の上方に繋がる上方面と、を有しており、
前記上方面を前記底面まで延伸させた際の仮想面よりも、前記排水口は前記背もたれ面側に設けられている
ことを特徴とする浴槽。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−205810(P2012−205810A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−74443(P2011−74443)
【出願日】平成23年3月30日(2011.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】