説明

海中磁場生成装置およびこれを有する船舶

【課題】簡素且つ軽量な構成でありながら、漏れ磁界の発生を抑えることができる海中磁場生成装置、およびこれを有する船舶を提供する。
【解決手段】海中磁場生成装置100は、電源部10と給電部20と磁場生成部30とを有している。給電部20は、電源部10に接続され、互いに対向して配置された一対の往路交流電線21aおよび復路交流電線21bと、互いに対向して配置された一対の接地電線22a、22bとから形成された撚られた給電部電線23を有している。
磁場生成部30は、給電部20に接続された磁場生成部電線33(往路電線31および復路電線32を有する)と、磁場生成部電線33に接続され、交流電流を直流電流に変換するA/D変換器34a、34b、34cと、それぞれに接続され、他端が海水中に放置される磁場生成電極35a、35b、35cと、を有し、復路電線32には、他端が海水中に放置される接地電極36が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は海中磁場生成装置およびこれを有する船舶、特に、実際の船舶が形成する磁場に反応する機雷を処理するのに好適な海中磁場生成装置、および該海中磁場生成装置を有する船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の海中磁場生成装置(磁気掃海装置に同じ)は、掃海艇に搭載された主管制部、制御部、電源部、電流調整部(整流部)、切換部および接続部と、曳航される消磁場電線、磁場を生成する電線および電極と、から構成されている。
すなわち、主管制部は、掃海しようとする機雷に対応した磁場を生成するための条件を計算して、計算結果を制御部に出力し、制御部はこれに基づいて電流調整部を制御する。電流調整部は、電源部から供給された交流電流を所定の直流電流に変換して切換部に供給する。そして、切換部は電線および電極に流す電流の方向(極性)を切り換えて、切り換え後の電流を電線および電極に供給する。
このとき、接続部には、ウインチを構成するリールに巻き取られた消磁場電線が接続され、消磁場電線に前記電線が接続されているから、掃海艇に近い範囲(消磁場電線の長さの範囲に相当する)には磁場がほとんど発生しないで、前記電線の周囲および前記電線(アース電線)と電極との間に所望の磁場が形成されるものである(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−306683号公報(第4−5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に開示された発明は、電極毎に接続部から電極側に向かう電流が流れる往路線と電極側から接続部に向かう電流が流れる復路線とを必要とし、消磁場電線が、往路線と復路線とが撚り合わさって束ねられるため、特に、電極の数が多い場合に以下の問題があった。
(あ)接続部の構成が複雑になり、保全性が悪化する。また、設置スペースが広くなり、設置位置選定の自由度が低下する。
(い)消磁場電線が太くなり、曳航の負担が増すと共に、艇内における収納スペースが広くなり、その他の機器スペースを圧迫する。
(う)往路線を流れる電流と復路線を流れる電流とが総量としては一致するが、電線の対としては、完全に同じ絶対値で逆位相にならないため、それぞれによって生成された磁場同士が完全に相殺されない。このため、「漏れ磁場」が発生し、漏れ磁場の大きさが、高度な磁気管制を行う掃海艇の場合に無視できない値になる。
【0005】
本発明はかかる問題を解決するものであって、簡素且つ軽量な構成でありながら、漏れ磁場の発生を抑えることができる海中磁場生成装置、および該海中磁場生成装置を装備した掃海艇を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明に係る海中磁場生成装置は、単相交流電源と、
該単相交流電源に一端が接続された二対の給電部交流電線と、
該二対の給電部交流電線の他端に接続された交流統合部と、
該交流統合部に一端が接続された一対の磁場生成部電線と、
該一対の磁場生成交流電線の他端に接続された交流/直流変換器と、
該交流/直流変換器に一端が接続され、他端が海中に放置される磁場生成電極と、
前記一対の交流電線の一方に一端が接続され、他端が海中に放置される接地電極と、
を有し、
海水を介して前記磁場生成電極と前記接地電極との間に直流電線を流すことを特徴とする海中磁場生成装置。
【0007】
(2)また、前記二対の給電部交流電線のうち一対の給電部交流電線が往路電線であって、
該一対の往路電線が互いに対向して配置され、
前記一対の往路電線を除く一対の磁場生成部電線が復路電線であって、
該一対の復路電線が互いに対向して配置されることを特徴とする。
【0008】
(3)一方、本発明に係る海中磁場生成装置を有する船舶は、前記(1)または(2)に記載の海中磁場生成装置を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明の海中磁場生成装置によれば以下の効果が得られる。
(i)海水を介して磁場生成電極と接地電極との間に直流電線を流すから、これによって磁場を発生させることができ、磁気反応機雷が反応する磁場を生成することが可能になる。なお、本発明は、淡水においても同様の作用効果が得られるから、本発明における海水は淡水を含んでいる。
(ii)そして、磁場を発生させる範囲において交流電流が直流電流に変換され、この範囲までは、給電部交流電線および十分撚られた磁場生成部電線によって交流電流が供給されるから、磁場の発生が抑えられる。
(iii)このとき、磁場生成電極の数量を増加しても、給電部交流電線の本数は増加しないから、特に、磁場生成電極が多数の場合であっても、給電部交流電線を細いまま維持する(太くしない)ことができ、軽量であって、曳航や収納が容易になる。
(iv)また、一対の接地電線が互いに対向して配置されるから、それぞれを流れる電流は、両者の中間位置を流れている状態とほとんど同等になる。同様に、一対の接地電線を除く磁場生成部電線が互いに対向して配置されるから、それぞれを流れる電流は、両者の中間位置を流れている状態とほとんど同等になる。したがって、二対の給電部交流電線は極めて近接したのと同等の状態になり、それぞれを流れる電流によって発生する磁場は互いに打ち消しあって、漏れ磁場が大幅に低減する。
(v)さらに、二対の給電部交流電線が撚られる(それぞれが当接した螺旋状を呈する)から、漏れ磁場がさらに低減する。
(vi)そして、前記海中磁場生成装置を有する船舶は、高度な磁気管制を行った磁場生成を実行することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施の形態1に係る海中磁場生成装置の構成を示す構成図。
【図2】図1に示す海中磁場生成装置の一部(給電部)の構成を示す断面図。
【図3】図1に示す海中磁場生成装置の一部(磁場生成部)の変形例を示す構成図。
【図4】本発明の実施の形態2に係る海中磁場生成装置を有する船舶を説明する構成を模式的に示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[実施の形態1:海中磁場生成装置]
図1は本発明の実施の形態1に係る海中磁場生成装置を説明するものであって、図1は構成を模式的に示す構成図、図2は一部(給電部)の構成を模式的に示す断面図、図3は一部(磁場生成部)の変形例を模式的に示す構成図である。
図1において、海中磁場生成装置100は、電源部10と、給電部20と、磁場生成部30と、を有している。
電源部10は、単相交流を発生する単相交流電源11と、単相交流電源11に電源部配線12によって接続された給電接続部13と、を有している。
【0012】
給電部20は、給電接続部13に一端が接続された給電部電線23と、給電部電線23の他端に接続された給電接合部24と、を有している。
給電部電線23は、一対の往路交流電線21aおよび復路交流電線21bと一対の接地電線22a、22bとから形成され、一対の往路交流電線21aおよび復路交流電線21bが互いに対向して配置され、且つ、前記一対の接地電線22a、22bが互いに対向して配置されている(図2参照)。さらに、給電部電線23は撚られている(往路交流電線21aおよび復路交流電線21bと、接地電線22a、22bが互いに当接して螺旋状を呈している)。
【0013】
磁場生成部30は、給電接合部24に一端が接続された磁場生成部電線33と、磁場生成部電線33に接続され、交流電流を直流電流に変換する変換器(以下、「交流/直流変換器」、または「A/D変換器」と称す)34a、34b、34cと、A/D変換器34a、34b、34cのそれぞれに一端が接続され、他端が海水中に放置される磁場生成電極35a、35b、35cと、を有している。すなわち、磁場生成部電線33は往路電線31および復路電線32とを有し、復路電線32には、他端が海水中に放置される接地電極(共通電極に相当する)36が接続されている。
【0014】
したがって、単相交流電源11から供給された単相交流電流は、A/D変換器34a、34b、34cのそれぞれにおいて直流電流に変換され、磁場生成電極35a、35b、35cを経由して海水中に通電され、接地電極36との間に、直流回路を形成する。したがって、該直流回路によって磁場が形成され、磁気反応機雷に対する磁場生成を可能にしている。
このとき、すなわち、A/D変換器34a、34b、34cのそれぞれには、図示しない制御信号が入力され、該信号に基づいて磁場生成電極35a、35b、35cのそれぞれに直流電流が供給されることによって、所望の磁場を形成される。
なお、A/D変換器の形式や配置形態(数量、間隔等)、また磁場生成電極の形式(長さ等)や数量は、何れも限定されるものではない。
【0015】
このとき、磁場生成部30において交流電流が直流電流に変換され、給電部20には、磁場生成電極35a、35b、35c毎に直流電流を流す直流電線が存在しないから、磁場生成電極35a等の数量を増加しても、給電部電線23の本数が増加することはない。したがって、磁場生成電極35a等が多数の場合であっても、給電部電線23を細いまま維持することができ、曳航や収納が容易になる。
また、給電部20には直流電流が流れないから、磁場の発生が抑えられる。特に、一対の往路交流電線21aおよび復路交流電線21bが互いに対向して配置されているから、それぞれを流れる電流は、両者の中間位置を流れている状態とほとんど同等になる。同様に、一対の接地電線22a、22bが互いに対向して配置されているから、それぞれを流れる電流は、両者の中間位置を流れている状態とほとんど同等になる。したがって、給電部電線23を形成する4本の電線は互いに極めて近接した状態にほとんど同等になり、それぞれを流れる電流によって発生する磁場は互いに打ち消しあって、漏れ磁場が大幅に低減する。さらに、給電部電線23が撚られる(それぞれが当接した螺旋状を呈する)から、漏れ磁場がさらに低減する。
【0016】
(磁場生成部の変形例)
図3において、A/D変換器34aに、電流の流れを切り替える切替手段(図中、「SW」にて示す)40aが接続されている。
したがって、切替手段40aが電流の流れを一方に切り替えた場合には、図1と同様に、接地電極36が接地側(アース)として機能し、これを反対に、切替手段40aが電流の流れを他方に切り替えた場合には、図1の反対に、磁場生成電極35aが接地側(アース)として機能する。なお、A/D変換器34b、34cにおいても同様である。
よって、切替手段40aを図示しない制御信号によって制御することによって、磁場生成部30に形成される磁場の方向を反転させることができるから、さらに模擬すべき磁場により近い磁場の生成が可能になる。
また、接地電極36の設置を省略して、復路電線32と磁場生成電極35a等の間で直流電流を流すようにしてもよい。
【0017】
[実施の形態2:海中磁場生成装置を有する船舶]
図4は本発明の実施の形態2に係る海中磁場生成装置を有する船舶を説明する構成を模式的に示す構成図である。なお、実施の形態1と同じ部分または相当する部分には同じ符号を付し、一部の説明を省略する。
図4において、海中磁場生成装置を有する船舶(以下、単に「船舶」と称す場合がある)200は、海中磁場生成装置100(実施の形態1参照)を搭載したものである。すなわち、給電部20および磁場生成部30を海水中に放置して、これらを曳航する。
したがって、海中磁場生成装置100は前記の作用効果を奏するから、海中磁場生成装置100を有する船舶200は、高度な磁気管制を行った磁場生成を実行することができる。このとき、給電部電線23を多数の電線を束ねたものにする必要がなく、細いまま維持することができるから、曳航の負担が低減され、省エネ効果が得られる。また、給電部20および磁場生成部30を船舶200に回収した際(磁場生成作業を実行しない間)の収納が容易になる。
なお、図4において、A/D変換器34dおよび磁場生成電極35dは、A/D変換器34a等および磁場生成電極35a等に同じである。また、接地電極36の設置を省略して、復路電線32と磁場生成電極35a等の間で直流電流を流すようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0018】
本発明によれば、構成が簡素で高度な磁場生成を可能にするから、いろいろな磁場生成域に応じた海中磁場生成装置および海中磁場生成装置を有する船舶として、広く利用することができる。
【符号の説明】
【0019】
10 電源部
11 単相交流電源
12 電源部配線
13 給電接続部
20 給電部
21a 往路交流電線
21b 復路交流電線
22a 接地電線
22b 接地電線
23 給電部電線
24 給電接合部(磁場生成部)
30 磁場生成部
31 往路電線
32 復路電線
33 磁場生成部電線
34a A/D変換器
34b A/D変換器
34c A/D変換器
34d A/D変換器
35a 磁場生成電極
35d 磁場生成電極
36 接地電極
40a 切替手段
100 海中磁場生成装置
200 海中磁場生成装置を有する船舶

【特許請求の範囲】
【請求項1】
単相交流電源と、
該単相交流電源に一端が接続された二対の給電部交流電線と、
該二対の給電部交流電線の他端に接続された交流統合部と、
該交流統合部に一端が接続された一対の磁場生成部電線と、
該一対の磁場生成交流電線の他端に接続された交流/直流変換器と、
該交流/直流変換器に一端が接続され、他端が海中に放置される磁場生成電極と、
前記一対の交流電線の一方に一端が接続され、他端が海中に放置される接地電極と、
を有し、
海水を介して前記磁場生成電極と前記接地電極との間に直流電線を流すことを特徴とする海中磁場生成装置。
【請求項2】
前記二対の給電部交流電線のうち一対の給電部交流電線が往路電線であって、
該一対の往路電線が互いに対向して配置され、
前記一対の往路電線を除く一対の磁場生成部電線が復路電線であって、
該一対の復路電線が互いに対向して配置されることを特徴とする請求項1記載の海中磁場生成装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の海中磁場生成装置を有することを特徴とする船舶。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−183953(P2011−183953A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−52095(P2010−52095)
【出願日】平成22年3月9日(2010.3.9)
【出願人】(509202558)ユニバーサル特機株式会社 (12)