説明

海洋深層水を利用した清涼飲料

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は海面下200メートル以上の深海から取水した清浄な海水である海洋深層水をミネラル源として、ろ過以外の物理的・化学的処理をすることなく未処理の状態で所定量含有することにより、微量元素を含有する全く新規な清涼飲料に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来から多種類の清涼飲料が市販されているが、近時の需要者の嗜好はコーラ等の色付きの飲料からスポーツドリンク等の透明な飲料へと変化している。このスポーツドリンクとは「アイソトニック飲料」又は「イオンサプライ飲料」とも呼ばれる我国独特の飲料であって、特にスポーツの後における水分の効果的な補給と電解質の補給を主たる目的としている。このドリンクは低糖分の無着色飲料であることが特徴となっている。
【0003】上記コーラは原料粉末を精製水で溶解して炭酸水で希釈したものであり、スポーツドリンクもやはり精製水に化学的処理を行ったものとか天然ミネラルウォーターを原料として、この原料に果汁とか糖分、ビタミン及び合成香料等を添加して製造している。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このような従来の清涼飲料水とかスポーツドリンクには、人体が必要とする全ての天然の微量元素(ミネラル)が含まれておらず、健康飲料用として必ずしも満足するものが得られていない現状にある。特に近時は天然に存在する微量元素の重要性が見直されている現状にある。更に人体に必須の塩として通常精製塩が添加されているが、このような精製塩よりも海水から採取した天然塩の方が微量元素を多く含んでおり、飲料に添加する塩として優れているが、海洋汚染の進んだ現代では海水中の表層水は飲用に供することはできない。
【0005】そこで本発明はこのような従来の清涼飲料水とかスポーツドリンクが有している課題を解消して、多くの天然微量元素(ミネラル)を含み、かつ、清浄である海洋深層水を使用した健康飲料を得ることを目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明は上記目的を達成するために、海面下200メートル以上の深海から取水した清浄な海水である海洋深層水を、ろ過以外の物理的・化学的処理をすることなく未処理の状態で通常の飲料用水に所定の配合割合で混合すると共に、適宜の味付けを施してなる清涼飲料、上記飲料用水として天然ミネラルウォーターを用いた清涼飲料を提供する。また、海面下200メートル以上の深海から取水した清浄な海水である海洋深層水を、ろ過以外の物理的・化学的処理をすることなく未処理の状態で1〜20重量%,原料果汁0〜5重量%,糖質原料6〜10重量%,副原料0〜0.2重量%,残部飲料用水の配合割合で構成した清涼飲料を提供する。
【0007】
【0008】
【作用】かかる清涼飲料によれば、海面下200メートル以上の深海から取水した清浄な海水である海洋深層水を、ろ過以外の物理的・化学的処理をすることなく未処理の状態で飲料として利用することができ、海洋深層水にバランス良く含まれている微量元素が有効に利用されて、得られた飲料中に人体が必要とする全ての微量元素及び天然塩が含まれており、健康飲料用として充分に満足する飲料が得られる。更に飲料中に糖質原料とか果汁原料、ビタミン等の副原料を添加することにより、適度な塩味と甘味及び果汁の風味を持たせた清涼飲料が得られる。
【0009】
【実施例】以下本発明にかかる海洋深層水を利用した清涼飲料の一実施例を説明する。即ち、本実施例では海面下200メートル以上の深海から取水した清浄な海水である海洋深層水を、ろ過以外の物理的・化学的処理をすることなく未処理の状態で通常の飲料用水に所定の配合割合で混合すると共に、適宜の味付けを施してなることを特徴とするものである。
【0010】通常の飲料用水とは、水道法による水質基準に適合した飲用適の水を指しており、本実施例ではこの飲料用水をストレーナで濾過したものを用いる。また、海洋深層水も同様にストレーナで濾過したものを用意して、上記飲料用水とともに予め設定された配合割合に応じて調合タンクに入れ、詳細は後述するように糖質とか果汁,ビタミンC等の副原料とともに攪拌混合して製造する。
【0011】上記の海洋深層水とは、海面下200メートル以上の深海から取水した清浄な海水であり、この海洋深層水と上記飲料用水とを商品の種類に応じて決定される配合割合に応じて混合した液を製造する。図1は本実施例を適用した清涼飲料の製造方法の工程例を記すチャート図であり、先ずステップ1で通常の水質基準に適合する飲料用水を用意し、ステップ2でストレーナによる濾過を行う。これと併行してステップ3で海洋深層水を用意し、ステップ4で同様にストレーナによる濾過を行う。本発明はろ過以外の物理的・化学的処理をすることなく未処理の状態で混合することに特徴を有する。即ち、海洋深層水は、後述するように天然に存在する全元素を含有しているといって差支えないが、溶解形態は様々で、イオン状、錯塩状、無機態など各種化学種が溶解している。このように複雑な形態で溶解したものを、強熱、濃縮、乾固、膜分離などの物理的・化学的処理を施すと、不溶解物の生成や化学種の変化、溶存ガスの気散など様々な変化を来たし、その塩を再溶解しても、元の海洋深層水とは組成も機能も大きく異なってしまうからである。このようにろ過以外の物理的・化学的処理をすることなく未処理の状態で使用できるのは、清浄な海洋深層水のみが可能なものである。
【0012】次にステップ5で上記飲料用水と海洋深層水とを予め設定した所定の配合割合に配合して調合タンク内に入れて充分に攪拌混合する。この混合溶液をステップ6で所定の温度、例えば約70℃にまで加熱し、ステップ7で蜂蜜等の糖質原料を添加し、ステップ8でユズ果汁等の原料果汁を添加してから更にステップ9でビタミンC等の副原料を添加し、ステップ10で再度攪拌して均質化された飲料とする。
【0013】一方、ステップ11,12の洗瓶、温瓶工程によって清浄化された容器としての瓶を用意しておき、ステップ13で充填器を用いて前記瓶内に均質化された飲料を充填し、ステップ14で約80℃,30分間の脱気及び殺菌を行い、ステップ15で打栓し、横転させた後、ステップ16で冷却水中に浸漬して冷却する。次にステップ17で瓶の破損とか異物の混入有無及び外観の検査を行い、検査合格品をステップ18でラベラーによるラベリング工程を行ってからステップ19で包装作業を行って製品が完成する。
【0014】上記の製造工程は、添加する果汁の種類と性状、添加割合、副原料の種類とか要求される商品の品質規格もしくは容器の相違等によって変更され、更には甘味料とか酸味料その他の副原料を添加する工程を付加することがある。また、同一工程であっても操作方法とか条件が異なることもある。更に飲料用水として天然ミネラルウォーターを利用することができる。
【0015】飲料用水と海洋深層水との配合割合は、製品の種類によっても異なるが、通常は海洋深層水が1〜20重量%含まれているように配合するのが好ましい。表1には適当と思われる配合例4例を開示してある。
【0016】
【表1】


【0017】表1から本実施例にかかる清涼飲料としての配合割合は、重量%で海洋深層水が1〜20%,原料果汁が0〜5%,糖質原料が6〜10%,副原料が0〜0.2%,残部飲料用水となっている。また、試作品としてのスポーツドリンクの配合割合は、海洋深層水が約5%、ユズ果汁が約5%、甘味料として蜂蜜約10%、ビタミンCを約0.2%、残部はミネラルウォーター(四万十川源流水)として調合した所、適度な塩味と甘味にユズ果汁がマッチした独特の風味を持つ清涼飲料が得られた。
【0018】本実施例で採用した海洋深層水に関して以下に説明する。即ち、この海洋深層水は、通常海洋表層で見られる風波とか表層温度変化に伴う対流,混合も生じない環境下にある海水で、地上で使用されている各種の油類とか化学物質,農薬等の有害物質に起因する海洋汚染の影響を受けることがない。しかも海水中の溶存有機物が非常に少なく、かつ、微生物的な観点から極めて清浄であるという特徴を有している。水温は年間平均で10℃以下という低温であり、しかも人体が必要とする多くの天然元素を含んでいる。この海洋深層水は現在世界中でも「ノルウエー沖」、「ハワイ沖」、「高知県の室戸岬沖」の3ケ所のみで実用的に取水されている。尚、本実施例で用いた海洋深層水は、上記室戸岬沖の水深320メートル地点から取水したものである。
【0019】室戸岬沖合の水深320メートル層は、水温9℃、塩分3.43%、DO(溶存酸素)4.4ppm前後の比較的安定した環境下にあることが確認されている。取水した深層水中に含まれている三態窒素のうち、アンモニア態窒素,亜硝酸態窒素はごく僅かであり、生物に与える影響は小さく、硝酸態窒素についても表層部では微量であったが、水深が増加するにつれて濃度が高まり、水深200メートル以深の水中での無機溶存態窒素の95%以上が硝酸態窒素で24μM存在している。その他リン酸態リンが1.7μM、珪酸態珪素が41μM溶存しており、いずれも表層部の5〜10倍以上の栄養塩濃度を有している。
【0020】かかる海洋深層水の利用方法として、海洋深層水を温泉とかプール等の観光目的に利用したり、低温であることに着目して、冷房とか温度差発電等の工業的利用、更には魚類とか海藻,サンゴの養殖、プランクトンの培養等の水産目的に利用しようとする試みがなされている。
【0021】海洋深層水中に含まれている生体の発育上で必須の天然元素とは、Fe(鉄)、I(沃素)、Cu(銅)、Mn(マンガン)、Zn(亜鉛)、Co(コバルト)、Mo(モリブデン)、Se(セレン)、Cr(クロム)、Sn(スズ)、V(バナジウム)、F(フッ素)、Si(ケイ素)、Ni(ニッケル)、As(ヒ素)の15元素であり、これらの元素が海洋深層水に全てバランス良く含まれていることが大きな特徴となっている。従って海洋深層水は海洋生物の生長とか増殖に対しても大きな潜在能力を秘めた海水であるといえる。このような潜在能力は、近年メダイやコンブ、深海サンゴ等の養殖実験に利用されて大きな成果を上げていることからも実証されている。特に前記ノルウエー沖の海洋深層水は、フィヨルド深層水と呼ばれてサケ養殖に適していることが報告されている。
【0022】海洋深層水中の生菌数は、表層水中のそれと比較して、1桁又はそれ以上少なくなっており、しかも病原生物はほとんど含まれていないため、海水に由来する魚病菌による病気に関する惧れは全くなく、飲料に採用した際の安全性が極めて高いという大きな特徴がある。本発明はこのような海洋深層水に含まれている天然元素を飲料水に採り入れることによって、生体の発育を促進するという従来の清涼飲料では実現することができない特性を持つ飲料を提供することを主眼点としている。
【0023】次に室戸岬沖で取水した海洋深層水と通常の表層水との水質を測定した結果を表2に示す。
【0024】
【表2】


【0025】表2に見られるように、海洋深層水は通常の表層水よりも低温であり、DO(溶存酸素)は低いが、硝酸態窒素(NO3−N)とかリン酸態リン(PO4−P)及び珪酸態珪素(SiO2−Si)等の各種栄養塩類の含有率は大きくなっている上、生菌数は逆に1桁又はそれ以上小さくなっている。
【0026】次に表3により、本実施例を適用した清涼飲料と既に市販されている各種スポーツドリンクとの原材料を比較した結果を示し、表4により、本実施例を適用した清涼飲料A,B,Cと、市販されている各種スポーツドリンクとの成分を分析した結果を示す。
【0027】
【表3】


【0028】
【表4】


表4に示すとおり、本実施例にかかる清涼飲料A,B,Cの味覚は、適度な塩味と甘味にユズ果汁がマッチしており、味覚だけを比較してみても市販の各種スポーツドリンクに何等遜色のない製品が得られた。
【0029】
【発明の効果】以上詳細に説明したように、本発明にかかる清涼飲料は、海洋深層水にバランス良く含まれている微量元素を有効に利用することが可能であり、従来の各種ドリンク剤のように単にスポーツの後における水分の補給とか電解質の補給にとどまらず、人体の成育に必要とする全ての微量元素及び天然塩を含む健康飲料を提供することができる。更に飲料中に糖質原料とか果汁原料、ビタミン等の副原料を添加することにより、適度な塩味と甘味及び果汁の風味を持たせた清涼飲料を得ることができる。尚、飲料用水として天然ミネラルウォーターを用いることによって清涼な味覚が高められる。
【0030】従って本発明によれば、従来のコーラ等の清涼飲料,アイソトニック飲料又はイオンサプライ飲料等に遜色のない味覚を有し、しかも微量ミネラル類のバランスがとれた健康飲料用として充分に満足できる飲料を提供することが可能となり、製品とした場合の商品価値を高めるという効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を適用した清涼飲料の製造方法の工程例を記すチャート図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】 海面下200メートル以上の深海から取水した清浄な海水である海洋深層水を、ろ過以外の物理的・化学的処理をすることなく未処理の状態で通常の飲料用水に所定の配合割合で混合すると共に、適宜の味付けを施してなる海洋深層水を利用した清涼飲料。
【請求項2】 上記飲料用水として天然ミネラルウォーターを用いた請求項1記載の海洋深層水を利用した清涼飲料。
【請求項3】 海面下200メートル以上の深海から取水した清浄な海水である海洋深層水を、ろ過以外の物理的・化学的処理をすることなく未処理の状態で1〜20重量%,原料果汁0〜5重量%,糖質原料6〜10重量%,副原料0〜0.2重量%,残部飲料用水の配合割合で構成したことを特徴とする海洋深層水を利用した清涼飲料。

【図1】
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【公告番号】特公平7−34728
【公告日】平成7年(1995)4月19日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−56715
【出願日】平成4年(1992)2月7日
【公開番号】特開平5−219921
【公開日】平成5年(1993)8月31日
【出願人】(591039425)高知県 (51)
【参考文献】
【文献】特開昭60−255729(JP,A)
【文献】特公平3−44747(JP,B2)
【文献】特公昭63−24673(JP,B2)