説明

海流データ同化方法および同化システム

【課題】陸地沿岸域を航行する複数の船舶から取得した各情報から沿岸の海流状況を導出し、別途入手した海流予測情報を補正して所望の沿岸海流予測情報を得ること。
【解決手段】船舶に搭載したGPS101と、ジャイロコンパス102と、LOG船速計103と、これらの取得情報について情報取得時刻を含んだ沿岸海流個別情報として記憶するメモリ1041と、これら記憶した沿岸海流個別情報を携帯電話回線あるいは無線LANを含む無線通信手段にて所定間隔であるいは通信可能な機会に送信する通信装置105と、この送信された当該沿岸海流個別情報を受信する受信手段としての通信装置208と、この受信した当該沿岸海流個別情報を処理して当該複数の船舶の位置と時刻に対応させた沿岸海流観測データを得る沿岸海流観測データ処理部202と、沿岸海流予測データ処理部204を具備した海流データ同化システム及び海流データ同化方法により海流予測を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、陸地沿岸域の海流予測データを船舶の観測データに基づいて予測し、特に信頼性の高い海流予測データを提供することができる海流データ同化方法および同化システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、船舶の運航に関しては航行前に出発時間、所定の地点の通過時間や到着時間等の運航スケジュールを作成する。貨物や人等の運搬・輸送を目的とする貨物船や旅客船等は、作成された運航スケジュールを遵守しなければならないことから、航行予定時の気象・海象の状況を予測して、到着地点までの最短航路や船舶の最適速度等の最適航海計画を立てるのが通例となっている。特に海流は、船舶の航行に大きな影響を及ぼす。たとえ高速船であっても、海流を考慮する(利用する)としないとでは、運航スケジュールばかりでなく、経済的効果、環境負荷にも大きな差異が出てくる。たとえば東京と沖縄との間の旅客船は、東京から黒潮の流れに逆らって行き、流れに乗って帰ってくるので、20ノットがでる船舶でも行きと帰りとでは数時間の差が出ることがある。この場合1ノットの流れに乗ることができれば、20%の省エネを図ることができ、相当分のCO等の環境負荷低減が図れる。
【0003】
海流を予測するものとして、「数値海流予測システムJCOPE」という技術がある。このシステムは、大気から与えられる風による海流表面応力を含む気象状況等を基に、日本近海の所定の海域における海流、たとえば、黒潮や親潮等の大きな流れとしてのいわゆる海流の主軸がどのような流路を形成し、どの程度の範囲で流れの影響を及ぼすかをシミュレーションで予測し、その予測結果をビジュアル化してウェブサイト等を通じ広域海流予測データとして販売するサービスである。当該サービスでは予測結果を週単位で更新しているが、広域海流予測データでありかつ週単位での更新のため、2〜3日で変化する陸地沿岸域の海流中を航行する船舶にとっては、利用が限定されるものであった。
【0004】
特許の分野においては、海洋上で採取した情報の伝送や海流予測情報を基に航海計画を構築するものとして、例えば、特許文献1及び2に示すような対策が取られてきた。
【0005】
特許文献1は、海上に浮遊したブイが測定した海流の流速や流向等の諸情報を、伝送反復回数を制御することで障害なく送信する技術的思想を開示している。海上に浮遊したブイの数は多くなく、また、特許文献1に開示される思想は、当該諸情報を用いて海流の予測値を導出するものではない。
【0006】
特許文献2は、過去に航行した船舶の航路の通過点を海流予測データに基づき改訂して最適航路を求めるものである。しかし、特許文献2に開示される思想は、航行予定の海域の海流を予測するものではなく、データの同化も行っていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−152182
【特許文献2】特開2007−245935
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述したように、従来の海流予測システムでは、黒潮等の海流の主軸から外れ、陸地から遠くない沿岸域における海流や潮流の流れを正確に予測することはできなかった。すなわち、沿岸域の海底が浅く、地形が複雑である上に風の向きや強さも複雑で、広域海流を前提としたシミュレーションには、これらの条件が十分に反映できないこともあり、沿岸域としての海流予測データの精度が低くなっていた。一方で、陸地沿岸域を航行する船舶(以下、「内航船」ともいう。)にとっては、遠洋を航行する大型船や高速船等と同様に、運航スケジュールや最適航海計画を立てる上で海流予測が非常に重要な要素となっていたが、沿岸域の海流予測データが正確でないため、計画の精度が悪くなっていた。
【0009】
図4は、広域海流予測データに基づいた内航船の運航計画と実際の運航状況を比較するために行った実証試験の結果をドリフト量として示す比較図である。試験条件としては、出発地点を釧路沖、到着地点を野島崎沖、目標到着時間を午前9時50分とし、気象・海象情報の変化に応じて都度変数入力して再計算(計7回)して航行計画を立て、それに伴った主機回転数により内航船を航行させたものである。同図に示されるように、到着約5時間前にあたる再計算(5回目)により、ドリフト量の予測値がマイナス2.5ノットに減少している。これにより、海流の影響が無く船舶がさほどドリフトしないことを想定し、主機関回転数をドリフト量の予測値に応じて抑えて操行する計画が立てられた。しかし、実際の航行時はドリフト量に大きな変化は無く、予測値とは全く異なる実測値を得た。このとき船舶では航行計画に大幅な誤算が生じたため、緊急対策として主機関回転数を高い数値に保ちながら、時間的ロス無くして目的地に到着することができた。
【0010】
図5は、実証試験での到着約5時間前における沿岸域の海流とドリフト量とを比較対照する海図である。白色矢印が海流予測値をベクトル表示したもの、黒色矢印が内航船のドリフト量実測値をベクトル表示したものを示している。同図の示す円で囲った部分は、図4に示すドリフト量予測値がマイナス2.5ノットに減少した時点で内航船が航行していた沿岸域である。図示されるように、内航船は海流予測値と全く異なるベクトル量でドリフトしながら沿岸域を航行していたことが認められる。これにより、従来の広域海流予測システムによる沿岸域の海流予測の精度が低いことが試験の結果明らかになった。
【0011】
一方、図中の黒縁白抜き矢印は実証試験と略同時刻に当該沿岸域を航行していた他の内航船のドリフト量をベクトル表示したものである。これは、他の内航船に依頼し、ジャイロコンパス、GPS、LOG船速計で計測してもらった各データをもとに、1回/時間の周期で船舶の位置を海図上にプロットしたものである。他の内航船から得たベクトルは、実証試験に用いた内航船のドリフト量実測値のベクトルと共通していることが確認できる。したがって、実証試験当時の沿岸域では広域海流予測値と異なる海流が発生していたことが裏付けられた。
【0012】
このように、従来の沿岸域の海流予測値の精度は非常に低く信頼性に欠けるため、沿岸域の海流予測情報はほとんど無いに等しい状況であった。このような状況の下で、同航路を往来する内航船の過去のデータや運航実績、或いは船長の勘に基づいた曖昧な対策が取られ、運航スケジュールや最適航海計画の立案は経験則によるものがほとんどであった。そのため、想定外の海流の影響で運航状況が大幅にずれ、業務上の障害が発生することもあった。また、海流を予測できないため、運航上の安全性の確保もできなかった。
【0013】
この一方で、上記実証試験からもわかるように、沿岸域を航行する内航船が搭載する上記機器にて計測した各データについては正確性を認めることができ、これにより計測時の海流状況を的確に表すことができる。
【0014】
本発明は、この点を利用し、上記従来技術の問題点を解決することを企図したものであり、陸地沿岸域を航行する複数の船舶から取得した実測情報から沿岸の海流状況を導出し、別途入手したシミュレーションに基づく広域海流予測データを補正して所望の沿岸海流予測情報を得る海流データ同化方法および同化システムを提供することを目的とする。
【0015】
かかる課題を解決するために、本願の請求項1に係る海流データ同化方法は、陸地沿岸域を航行する複数の船舶でそれぞれGPS測位情報、ジャイロコンパス情報、対水船速情報を含む情報を所定の条件で取得し、これらの情報を情報取得時刻を含んだ沿岸海流個別情報として記憶し、これら記憶した沿岸海流個別情報を携帯電話回線あるいは無線LANを含む無線通信手段にて所定間隔であるいは通信可能な機会に送信し、受信した当該沿岸海流個別情報を処理して当該複数の船舶の位置と時刻に対応させた沿岸海流観測データを得て、この沿岸海流観測データを別途入手した広域海流予測データに適用することでこの広域海流予測データを補正して沿岸海流予測データを得ることを特徴とする。
【0016】
陸地沿岸域とは、従来の広域海流予測データの信頼性が低く海流の主軸の影響を受けにくい海域を示す。陸地沿岸域を航行中の船舶としては、旅客船、貨物船その他の用途の船舶も全て含み、船舶の規模に限定はない。当該船舶には、対地船速として地球上の現在位置を調べるGPS(Global Positioning System)によりGPS測位情報を、船首方位として針路を表示するジャイロコンパス情報を、対水船速として船底を流れる水流から船舶の対水船速を計測するLOG船速計やLOG船速計の代替となるプロペラと機関の駆動状況等より対水船速情報を、それぞれの船舶の状況下で計測し、取得する。取得したこれらの情報のうち、ジャイロコンパス情報を考慮して、対水船速情報とGPS測位情報のベクトル量についての差分等の演算により海流を導出する。導出した海流も含めて情報取得時刻を含んだ沿岸海流個別情報とし、船舶の位置(経度・緯度)と時刻(時・分・秒)とを紐付けしてメモリ等の記憶装置に記憶することができる。
【0017】
沿岸海流個別情報は、他の船舶や陸上に対して無線通信手段により送信される。無線通信手段とは、携帯電話回線(FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、PDC(Personal
Digital Cellular)やGSM(Global System for Mobile Communications)等のTDMA(Time Division
Multiple Access)方式、PHS(Personal Handyphone System)、CDMA(Code Division
Multiple Access)方式、W−CDMA(Wideband
Code Division Multiple Access)方式)、無線LAN(Local Area Network)、衛星通信等により、沿岸個別情報等のデータを送信し、他の情報を受信するものを示す。携帯電話回線の場合は、所定の中継手段(基地局、装置等)を介してもよい。また、無線LANの場合は、所定のアクセスポイントを介さずに機器同士が直接通信を行うアドホックモード或いはアクセスポイントを介して行うインフラストラクチャモードのいずれでもよい。さらに、通信エラーや通信エリア外によりデータ送信できない場合は、所定の通信方式により任意のタイミングでリトライ送信が行われる。これらの無線通信を実現させるために、具体的には、モデム、ターミナルアダプタ、ダイヤルアップルータ、LANカード、同軸ケーブル、光ファイバー等の通信装置や通信機器をデータの送受信側双方で有する必要がある。
【0018】
陸地沿岸域を航行する複数の船舶から送信された沿岸海流個別情報は、送信先で沿岸海流個別情報を取得した時点の複数の船舶の位置(経度・緯度)と時刻(時・分・秒)とを紐付けして、位置毎及び/もしくは時刻毎に区分けして対応させた沿岸海流観測データとして扱う。沿岸海流観測データは、別途入手した広域海流予測データに適用してこの広域海流予測データを補正するために用いる。この補正は、実際に測定した沿岸海流観測データをシミュレーション結果である広域海流予測データに適用して同化する意味である。例えば、所定の周期で沿岸海流観測データを所定の数値モデル等に基づいて算出された広域海流予測データに同化させ、当該広域海流予測データを再初期化して演算を続けることを示す。すなわち、演算の一番初めの初期条件は、沿岸海流観測データの客観的な補間のみにより結果を与えられるものであるのに対し、演算開始以後は周期毎に沿岸海流観測データと広域海流予測データとを同化させた新たな初期条件を用いて演算を継続することになる。広域海流予測データを補正して得た沿岸海流予測データは、他の船舶等にも送信される。
【0019】
こうした構成を備えることにより、陸地沿岸域を航行する複数の船舶から情報取得時刻を含んだ沿岸海流個別情報として実際の海域で計測した実測データを利用することになる。したがって、信頼性の高いデータから海流予測を求めることが可能となり、予測精度も向上する。当該沿岸海流個別情報の送信の際は、携帯電話回線や無線LAN等の所定の通信方式による無線通信手段を用いることで、取得したばかりの実測データを迅速に伝達し、即座に活用することができる。したがって、複数の船舶は自らが提供した実測データから求めた海流予測に基づいて、航行中にも運航スケジュールや最適航海計画を都度見直すことができる。一方、通信トラブル等により送信不能な場合でも、当該沿岸海流個別情報を記憶しているため、データの蓄積が行われている。したがって、通信可能な機会に一括して蓄積した沿岸海流個別情報を送信することができ、送信された沿岸海流個別情報を複数の船舶の位置と時刻に対応させた沿岸海流観測データとして処理することで、点在していたスポット的な情報を集約し、海流予測に必要な最良の実測データを即座に反映することができる。これにより、迅速かつ信頼性の高い海流予測を求めることができる。海流予測データ導出の際は、別途入手した広域海流予測データに沿岸海流観測データを同化して補正することで、シミュレーション結果をより現実の海域状況に近い状態に再計算することができる。したがって、広域海流予測データの沿岸域の海流情報と比較して極めて高精度な沿岸海流予測データが取得できる。
【0020】
また、上記の構成において、本願に係る海流データ同化方法において、対水船速情報として対水船速計(LOG船速計)の情報を用いてもよい。
【0021】
LOG船速計は対水船速を測定する計測器であり、海水の流れにより船底に設けたセンサが有するコイルに起電力が生じることで対水船速として船底と船底を流れる水流との相対速度を計測する電磁LOGや、超音波を発振させ水中に存在する微小な浮遊物から反射される反射波との周波数の差により船底と船底を流れる水流との相対速度を計測するドップラーLOG等を含む。
【0022】
こうした構成を備えることにより、LOG船速計により対水船速情報を得ることで、船舶の航行速度を海流の影響を受けることなく測定することが可能となる。したがって、強風や高波等の気象・海象条件にも対応し、悪環境下でも正確な対水船速を得ることができる。
【0023】
また、上記の構成において、当該沿岸海流個別情報として当該船舶の識別情報を送信してもよい。
【0024】
船舶の識別情報は、種類(旅客船、貨物船等)、所有会社、船舶名、船舶番号等を含み、複数の船舶から一意に特定の船舶であることを識別することを可能とするあらゆる情報をいう。当該情報は、予め船舶の記憶装置等に電子データとして保持し沿岸海流個別情報送信時に併せて自動的に送信する仕組み、或いは沿岸海流個別情報送信時に都度記憶装置から読み出すか、もしくは操作員等が入力して送信する仕組みのいずれでもよい。
【0025】
こうした構成を備えることにより、沿岸海流個別情報として船舶の識別情報も送信することで、送信先のデータベース等に当該船舶の識別情報に紐付けした船舶の仕様(規模、積載量等)、性能(推進力、抵抗低減率等)、装備等を把握することができる。したがって、気象海象の影響を受けやすい小型船で計測した信頼性の低いデータの排除や平均化等、沿岸海流予測データを求める上での重み付けをすることができる。
【0026】
また、上記の構成において、当該無線通信手段で送信ができなかった場合に、通信可能な場所に移動後に送信を試みるかあるいは当該複数の船舶のうちの他の船舶を介して送信を試みることとしてもよい。
【0027】
陸地沿岸域を航行中の船舶であっても、無線通信手段で通信可能な通信エリア外の海域を航行することがある。また、携帯電話や無線LANにおいては、通信元が正常にデータ送信を行うことができたとしても、送信先のネットワーク回線の不具合、中継点やアクセスポイントの故障等により、データ送信が完了しないこともある。このような場合に、通信可能な場所に移動後にリトライ送信を行うことができる。また、他の船舶と通信可能な場合は、他の船舶へ送信して当該他の船舶を介して通信を行うか、無線LANの場合には他の船舶をアクセスポイントとして当該他の船舶を介して送信を試みることができる。なお、リトライ送信等は任意の周期で自動的に行っても、操作員の意思により人的に行ってもよい。
【0028】
こうした構成を備えることにより、船舶の無線通信手段で送信ができなかった場合には、無線可能な場所に移動後にリトライ送信を試みることができるため、送信できなかった情報も比較的時間が経たないうちに海流予測用として提供することができる。すなわち、内航船の航行は1、2日程度要するが、1〜2日前後では海流には大きな変化がないため、たとえ数時間データ送信が遅れたとしても、当該内航船の航行に必要な沿岸海流予測データは十分に機能するものとして提供することができることとなる。また、他の船舶を介してもデータ送信を試みることができるため、急なデータ提供の要望にも迅速に対応することができる。したがって、送信できなかった情報も削除等する必要がなく、データの蓄積による記憶装置の容量オーバーも防ぐことができる。また、データ送信のために航路を変更する必要もなく、海流予測として好適なデータを提供できるため、精度の高い予測が実現する。
【0029】
また、上記の構成において、当該沿岸海流予測データを蓄え、必要に応じ時系列的に提供可能にしたものでもよい。
【0030】
沿岸海流予測データの中には、最新のものから数時間前、数日前、数週間前といった過去のデータも含まれる。
【0031】
過去の沿岸海流予測データも必要に応じ時系列的に提供することで、航行中の沿岸域の過去の海流傾向を認識し、人の経験に基づいて最新の予測データ及び過去の予測データを組み合わせて総合的に海流を予測したりすることもできる。また、時系列的な沿岸海流予測データを統計処理し、巨視的な沿岸海流の状況を把握できる。
【0032】
また、上記の構成において、沿岸海流個別情報の取得状況に応じた予測精度を算出し提供可能にしたものでもよい。
【0033】
沿岸海流個別情報の取得状況は、たとえば海流を求めた船舶の隻数、海流の計測時間(計測した時刻、計測の継続時間、計測の時間間隔等)、船舶の規模(船体長・船体幅・高さ・重量・積載量等)、海流の計測方法、船舶に搭載した対水船速計測機器の種類(電磁LOG、ドップラーLOG等)、船舶の位置と現実の海流の主軸との関係(主軸の影響を受ける範囲内か否かの判断や主軸が接近するか遠ざかるか否かの判断等)その他の状況の全てを含む。沿岸海流個別情報の取得状況に応じた予測精度の算出方法は、たとえば当該取得状況情報それぞれに重み付けをし、閾値設定して信頼性を百分率表示すること等を含む。
【0034】
こうした構成を備えることにより、種々の取得状況下で取得された沿岸海流個別情報に基づいて生成した沿岸海流予測データに対して予測精度を算出して提供することで、提供を受けた側で当該沿岸海流予測データの信頼性を判断することができる。すなわち、単に予測データを得たとしても、当該予測データの源となる沿岸海流個別情報の信頼度が明確でなければ、予測データ自体の信憑性も疑わしいものとなる可能性がある。この点で、本構成によれば、提供を受ける側は自らの判断で客観的に沿岸海流予測データの性質を判断し、船舶の運航スケジュールや最適航行計画にどの程度反映させるか等を決定することができる。
【0035】
また、上記の構成において、当該沿岸海流予測データを当該複数の船舶以外の陸地沿岸域航行中もしくは航行予定の船舶あるいは船舶の統括部門にも必要に応じて配信することとしてもよい。
【0036】
複数の船舶以外の陸地沿岸域航行中もしくは航行予定の船舶とは、沿岸海流個別情報を提供した複数の船舶以外の船舶を含むものである。これらの船舶は、沿岸海流予測データを受信できる通信手段(通信装置、通信部等)を備えていればよく、特に沿岸海流個別情報を取得可能か否かは問わない。また、船舶の統括部門とは、複数の船舶や陸地沿岸域航行中もしくは航行予定の船舶の運用を統括する管理会社や海運会社等を示し、経営主体(企業あるいは個人)であるか否か、或いは実際にこれらの船舶を所有しているか否かは問わない。沿岸海流予測データの配信は、複数の船舶以外の陸地沿岸域航行中もしくは航行予定の船舶や船舶の統括部門の要求に対して随時送信したり、契約に基づいて所定の周期で自動的に送信したりしてもよい。
【0037】
こうした構成を備えることにより、沿岸海流予測データを複数の船舶以外の陸地沿岸域航行中もしくは航行予定の船舶あるいは船舶の統括部門にも必要に応じて配信することで、広く海事産業において汎用的に沿岸海流予測データを活用することができる。陸地沿岸域を航行する船舶にとっては沿岸域の海流予測がほとんどできない実状があるため、複数の船舶以外の航行中の船舶や航行予定の船舶にとっても、沿岸海流予測データは運航スケジュールや最適航海計画立案等の有効な情報とすることができる。また、船舶の統括部門にとっても、沿岸海流予測データを統括配下の船舶の運航スケジュールや最適航海計画立案に一括して反映させることができる。
【0038】
また、上記の構成において、当該沿岸海流予測データは、当該広域海流予測データよりも短い時間間隔で得るようにしてもよい。
【0039】
別途入手した広域海流予測データは、所定の周期(たとえば、1回/週)で更新されるシミュレーション結果である。陸地沿岸から離れた海域では海流の変化は緩慢であるため、データの更新は頻繁でなくても済むが、沿岸域における海流はより早く変化するため、沿岸海流予測データは、短い時間間隔で得る必要がある。また、沿岸海流データの同化は広域海流予測データに基づきこれを補正して行っているため、より短い時間(たとえば、1回/日)で更新されることに意味がある。
【0040】
この点に注目した上記構成を備えることにより、沿岸海流予測データを広域海流予測データよりも短い時間間隔で得ることができるため、船舶等は常に最新の沿岸海流予測データを得ることができる。したがって、予測データの精度を更新の都度高めることができる。また、更新が短い時間で行われれば、同化の際に補正した広域海流予測データを再初期化して演算を続けることができるため、極めて精度が高く信頼性を有する沿岸海流予測データを提供することができる。
【0041】
また、上記課題を解決するために、本願の請求項9に係る海流データ同化システムは、船舶に搭載したGPSと、ジャイロコンパスと、対水船速取得手段と、これらの取得情報を情報取得時刻を含んだ沿岸海流個別情報として記憶する記憶手段と、これら記憶した沿岸海流個別情報を携帯電話回線あるいは無線LANを含む無線通信手段で所定間隔であるいは通信可能な機会に送信する通信手段と、この送信された当該沿岸海流個別情報を受信する受信手段と、この受信した当該沿岸海流個別情報を処理して当該複数の船舶の位置と時刻に対応させた沿岸海流観測データを得る沿岸海流観測データ処理部と、この沿岸海流観測データを別途入手した広域海流予測データに適用してこの広域海流予測データを補正して沿岸海流予測データを得る沿岸海流予測データ処理部とを具備して構成される。
【0042】
船舶に搭載したGPSは、対地船速として地球上の現在位置を調べてGPS測位情報を取得するものを示す。ジャイロコンパスは、船首方位として針路を表示してジャイロコンパス情報を取得するものを示す。対水船速取得手段は、対水船速として船底を流れる水流から船舶の対水船速情報を取得するLOG船速計やLOG船速計の代替となるプロペラの駆動状況等を計測する機器等を示す。
【0043】
記憶手段は、GPS測位情報、ジャイロコンパス情報、対水船速情報及びこれらの情報から演算した海流、船舶の船名等を含む船舶識別情報を沿岸海流個別情報として記憶するもので、具体的にはメモリやハードディスクドライブ等の記憶装置を含む。
【0044】
無線通信手段は、上述同様の携帯電話回線、無線LAN、衛星通信等により、沿岸個別情報等のデータを送信し、他の情報を受信するものを示す。また、中継点(基地局)やアドホックモード、インフラストラクチャモードやリトライ送信等についても同様である。
【0045】
通信手段とは、上述した無線通信手段により所定間隔であるいは通信可能な機会に送信するデータ通信を実現させるもので、具体的には、モデム、ターミナルアダプタ、ダイヤルアップルータ、LANカード、同軸ケーブル、光ファイバー等の通信装置や通信機器を含む。
【0046】
受信手段は、沿岸海流個別情報を受信するもので、具体的には通信手段と同様なものでよい。また、受信手段には、無線通信手段に係る携帯電話回線の中継点や無線LANのインフラストラクチャモードのアクセスポイントとしての役割も含む。
【0047】
沿岸海流観測データ処理部は、複数の船舶から送信された沿岸海流個別情報(演算した海流データ、位置、データ取得時刻、針路、対地船速、対水船速、船舶識別情報等)を船舶毎の情報として収集し、複数の船舶の位置と時刻に対応させた沿岸海流観測データとして処理する機能を有する。詳細には、各情報取得時の船舶の位置(経度・緯度)と時刻(時間・分・秒等)とを紐付けして、位置毎及び/もしくは時刻毎に区分けして沿岸海流観測データとして処理するものである。具体的には、これらの機能を有する機械、装置、部品、或いは、こうした機能をコンピュータに実行させるアルゴリズム、このアルゴリズムを実行させるプログラム、もしくはこのプログラムを含めたソフトウェア、搭載媒体、ROM(読み出し専用メモリ)、或いはこれらを搭載もしくは内蔵したコンピュータもしくはその部分によって実現される。
【0048】
沿岸海流予測データ処理部は、沿岸海流観測データ処理部で処理された沿岸海流観測データを、別途入手した広域海流予測データに適用して当該広域海流予測データを補正する機能を有するものを示す。補正とは、実測結果である沿岸海流観測データをシミュレーション結果である広域海流予測データに適用して同化することをいう。詳細には、所定の周期で沿岸海流観測データを所定の数値モデル等に基づいて算出された広域海流予測データに同化させ、当該広域海流予測データを再初期化して演算を続けることを示す。すなわち、演算の一番初めの初期条件は、沿岸海流観測データの客観的な補間のみにより結果を与えられるものに対し、演算開始以後は周期毎に沿岸海流観測データと広域海流予測データとを同化させた新たな初期条件を用いて演算を継続することになる。また、沿岸海流予測データ処理部は、演算による結果を陸地沿岸域の沿岸海流予測データとして、たとえば沿岸海流予測データを必要に応じ時系列的に提供することができる機能を有してもよい。沿岸海流予測データ処理部は、具体的には、これらの機能を有する機械、装置、部品、或いは、こうした機能をコンピュータに実行させるアルゴリズム、このアルゴリズムを実行させるプログラム、もしくはこのプログラムを含めたソフトウェア、搭載媒体、ROM(読み出し専用メモリ)、或いはこれらを搭載もしくは内蔵したコンピュータもしくはその部分によって実現される。また、上述した各機能を別々に実行可能な形式としてもよい。
【0049】
こうした構成を備えることにより、GPS、ジャイロコンパス、対水船速取得手段により海流を求めるために必要な情報を取得することができ、記憶手段によりこれらの取得情報を情報取得時刻も含んだ沿岸海流個別情報として記憶しておくことで、任意のタイミングで当該沿岸海流個別情報を発信することができ、無線通信手段、通信手段及び受信手段により所定の間隔で或いは通信可能な機会に送受信をすることができる。すなわち、通信障害で通信できないとしても送信リトライ等の手法により情報の送受信を確実化することができる。このようにして受け取った沿岸海流個別情報を、沿岸海流観測データ処理部により複数の船舶毎の位置と時刻に対応させた沿岸海流観測データとして得ることができるため、海域毎に最適な海流予測を迅速に行うことができ、沿岸海流予測データ処理部により広域海流予測データを補正、すなわち沿岸海流観測データと広域海流予測データとを同化することで、シミュレーション結果として得た広域海流予測データをさらに上回る精度の沿岸海流予測データを得ることができる。したがって、陸地沿岸域を航行する複数の船舶に本願に係る海流データ同化システムを搭載するだけで、特別な操作なく簡単に沿岸域の海流予測の基となる実測データを取得し、迅速かつ継続的に提供することができる。それに伴い、要求に応じて誤差が微少で極めて信頼性の高い沿岸海流予測データを提供することができる。
【0050】
また、上記の構成において、当該対水船速取得手段として対水船速計(LOG船速計)を用いて構成してもよい。
【0051】
LOG船速計としては、上述と同様、電磁LOGやドップラーLOG等が存在する。
【0052】
こうした構成を備えることにより、対水船速取得手段としてLOG船速計を用いることで、船舶の航行速度を安定した精度で測定することが可能となる。したがって、強風や高波等の気象・海象条件にも対応し、悪環境下でも正確な対水船速情報を得ることができる。
【0053】
また、上記の構成において、当該対水船速取得手段を、船舶のプロペラ仕様と、プロペラ回転数と、機関動力とにより対水船速を算出する手段として構成してもよい。
【0054】
プロペラ仕様は、翼のピッチ角、プロペラボスの径、展開面積比、翼数、プロペラ直径等を示し、回転効率や推進効率等のプロペラ性能を含んでもよい。プロペラ仕様はメモリやハードディスク等の記憶装置に記憶していることが好ましい。プロペラ回転数は、船舶の航行状態に応じて変化し、及び/もしくはエンジン等の主機関の動力制御によって変更され、プロペラ回転数計等の機器により計測することができる。
【0055】
こうした構成を備えることにより、船舶の航行状態に応じて変化するプロペラ回転数と、当該プロペラ回転数を制御するエンジン等の主機関に係る馬力や燃料消費量等の機関動力を計測し、当該計測結果にさらにプロペラ仕様を考慮することで、所定の計算式に基づいて船舶の対水船速を算出することができる。したがって、対水船速取得手段としてLOG船速計を搭載していない船舶にとっても、あらたに高価な機器を搭載することなく、沿岸海流個別情報を得ることができる。
【0056】
また、上記の構成において、前記記憶手段はパーソナルコンピュータの記憶装置を利用してもよい。
【0057】
記憶手段に記憶する情報としては、取得したGPS情報、ジャイロコンパス情報、対水船速情報や時刻情報あるいはこれらに基づき求めた海流情報等であり、船舶識別情報等を含めてもよい。これらの情報の記憶容量はパーソナルコンピュータに搭載されている記憶装置程度のもので賄える。
【0058】
こうした構成を備えることにより、記憶手段をパーソナルコンピュータの記憶装置とすることで、沿岸海流個別情報を含む電子情報をユーザインタフェースに優れたパーソナルコンピュータを介して安全に記憶することができる。したがって、パーソナルコンピュータ自体を高価なものとする必要性が薄まり、システム全体の構築費の低減を図ることができる。また、パーソナルコンピュータが有する通常の機能も活用することができるため、システムの利用効率も向上する。
【0059】
また、上記の構成において、前記沿岸海流予測データを前記船舶以外の陸地沿岸域航行中もしくは航行予定の船舶あるいは船舶の統括部門にも必要に応じて配信する送信手段をさらに備えた構成としてもよい。
【0060】
送信手段は、複数の船舶以外の陸地沿岸域航行中もしくは航行予定の船舶に配信する場合は、上述した無線通信手段と同じく携帯電話回線や無線LAN等が必要となり、船舶の統括部門に配信する場合は、所定の有線通信手段でもよい。また、上述した通信手段と同じく、具体的には、モデム、ターミナルアダプタ、ダイヤルアップルータ、LANカード、同軸ケーブル、光ファイバー等の通信装置や通信機器で構成されるのが好ましい。
【0061】
こうした構成を備えることにより、送信手段により沿岸海流予測データを複数の船舶以外の陸地沿岸域航行中もしくは航行予定の船舶あるいは船舶の統括部門にも必要に応じて配信することで、広く海事産業において汎用的に沿岸海流予測データを活用することができる。陸地沿岸域を航行する船舶にとっては沿岸域の海流予測がほとんどできない実状があるにしても、複数の船舶以外の航行中の船舶や航行予定の船舶にとっても、沿岸海流予測データは運航スケジュールや最適航海計画立案の有効な情報とすることができる。また、船舶の統括部門にとっても、沿岸海流予測データを統括配下の船舶の運航スケジュールや最適航海計画立案に一括して反映させることができる。
【0062】
また、上記の構成において、前記受信手段あるいは送信手段は陸上に設けてもよい。
【0063】
受信手段での沿岸海流個別情報受信後、沿岸海流観測データの処理及び沿岸海流予測データの導出を行うため、当該受信手段を陸上に設け、その後の処理を迅速に行うことが好ましい。
海象の影響や通信インフラの状況を考慮すると海上に設けることには課題が多く、沿岸海流予測データを得て、またこれらを配信するセンター機能としては、各種バックアップ面も考慮して陸上の方が好ましい。また、航行予定の船舶は、港や沿岸近傍等にあり、船舶の統括部門は、これらに近接する陸上にあるものが大半である。そこで、沿岸海流予測データを必要に応じて配信する送信手段も同様に、陸上に設けることが好ましい。
【0064】
こうした構成を備えることにより、受信手段を陸上に設けることで、その後に行う沿岸海流観測データの処理及び沿岸海流予測データの導出までの時間を短縮することができる。また、海象の影響を受けず、万が一のトラブル時にも対応が即座に可能となる。したがって、信頼性の高い所望の沿岸海流予測データを迅速に導出することができる。また、送信手段を陸上に設けることで、大半は陸上にある航行予定の船舶や船舶の統括部門に対して有線にて通信することもできる。したがって、必要に応じて素早く沿岸海流予測データを提供することができる。
【発明の効果】
【0065】
本願によれば、従来の広域海流予測データでは正確に得られなかった陸地沿岸域の沿岸海流予測データを、精度高く得ることができる。特に、陸地沿岸域を航行する複数の船舶が実際に計測したデータに基づいた沿岸海流個別情報を取得し、携帯電話回線や無線LAN等の無線通信により航行中のこれらの船舶から随時当該沿岸海流個別情報をデータ通信することで、陸地沿岸域の海流等に関する最新の沿岸海流個別情報を入手することができる。また、沿岸海流個別情報を基にシミュレーション結果である広域海流予測データを同化により補正することで、実際に計測した最新データに鑑みた高精度かつ信頼性の高い沿岸海流予測データを迅速に導出し、要求に好適な所望の海流予測情報を提供することができる。したがって、陸地沿岸域を航行する内航船にとって、最適な運航スケジュールや最適航海計画の立案が実現し得る。すなわち、理想の運航を妨げる大きな要因ともなり得た海流の予測情報が正確性をもって提供されれば、その海流の予測情報を利用し、その他の気象・海象の予測情報等も含めて立案した運航スケジュールや最適航海計画は信頼性が極めて高いものとなる。それにより、スケジュールの大幅の変更が発生することもなく、船舶の運用上にも絶大な効果を有する。すなわち、無駄なエネルギー消費の抑制効果も働き、最大で約20%(実験による)の燃費の向上にもつながる。また、エネルギー消費の抑制により廃棄ガスの排出量も減少するため、環境負荷の低減効果も有する。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【図1】本発明の一実施形態に係る海流データ同化システムのシステム構成図及び制御フロー図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る陸地沿岸域を航行する複数の船舶から沿岸海流個別データを送信する流れを示す通信方法フローチャートである。
【図3】本発明の一実施形態に係るLOG船速計103の代替であるLOG船速計代替103aのシステム構成図である。
【図4】内航船の実証試験におけるドリフト量の予測値と実測値との比較図である。
【図5】実証試験での到着約5時間前における沿岸域の海流とドリフト量とを比較対照する海図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、図面を参照して本発明を実施するための形態について説明する。なお、以下では、本発明の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本発明の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
【0068】
図1は、本発明の一実施形態に係る海流データ同化システムのシステム構成図及び制御フロー図である。同図に示すように、本システムは陸地沿岸域の複数船舶からの沿岸海流個別データ及び陸上からの沿岸海流予測データの送受信を行うものである。
【0069】
船舶は、船首方位として針路を表示するジャイロコンパス101、対地船速として地球上の現在位置を調べるGPS102、対水船速として船底を流れる水流から船舶の対水船速を計測するLOG船速計103、ジャイロコンパス101とGPS102とLOG船速計103で計測したデータ及び当該データを取得した船舶を識別するための船番、船種や船舶規模等の船舶識別情報を記憶・演算処理するコンピュータ装置104、他の船舶や陸上との間で処理された沿岸海流個別データや沿岸海流予測データ等の送受信を行う通信装置105を少なくとも具備している。
【0070】
陸上には、船舶の通信装置105を介して送信された沿岸海流個別データを個船海流データとして収集する個船海流データ収集部201、当該個船海流データを処理して複数の船舶の位置と時刻とに対応させた沿岸海流観測データとして処理する沿岸海流観測データ処理部202が備えられている。そして、広域海流予測データを別途入手しておき、沿岸海流観測データをこの広域海流データに適用して当該広域海流予測データを補正する海流データ同化演算部203が設けられている。さらに、当該補正した広域海流予測データを沿岸海流予測データとして処理する沿岸海流予測データ処理部204、沿岸海流個別情報の取得状況に応じた予測精度を算出する予測精度演算部205、当該沿岸海流予測データを記憶するメモリ206、データ演算や通信の周期を制御するタイマー207、複数の船舶や個船の統括部門との間で沿岸海流個別データや沿岸海流予測データの送受信を行う通信装置208を具備して構成される。
また、登録船舶データも備えられていて、沿岸海流予測データの配信等に利用される。
【0071】
ジャイロコンパス101は、高速回転するコマの回転軸が常に天空の一点を指す作用(ジャイロ効果)を用いて方位(針路)を知るための道具である。GPS102は、全地球測定システム、汎地球測位システムとも言い、地球上の現在位置を調べるための衛星測位システムを示し、対地船速として航行する船舶の水底(地面)に対する速度を計測するものである。LOG船速計103は、船底に設けたセンサが有するコイルに起電力が生じることで対水船速として船底と船底を流れる水流との相対速度を計測する電磁LOGを用いているが、超音波を発振し水中に存在する微小な浮遊物からの反射波の周波数の違いにより船底と船底を流れる水流との相対速度を計測するドップラーLOG等でもよい。
【0072】
コンピュータ装置104は、たとえばパーソナルコンピュータ(PC)を含み、データ処理や演算を行う中央処理装置(CPU)、所定のデータ入力を行う入力部(キーボード等)、入力したデータやデータ処理の結果を表示する画面表示部(ディスプレイ等)、種々のデータを記憶保持する記憶装置(メモリ、ハードディスクドライブ等)、所定の外部機器との接続を行うコネクタ(USB、RS232C等)等を有する情報処理装置であればよく、特に限定はない。コンピュータ装置104は、RAM等の半導体記憶装置としてのメモリ1041、船舶の計測データ及び船舶識別情報を処理する沿岸海流個別データ処理部1042、沿岸海流個別データ処理部1042で処理された個別データに基づき海流を演算する演算部1043、データ演算や通信の周期を制御するタイマー1044を具備している。
【0073】
沿岸海流個別データ処理部1042は、ジャイロコンパス101、GPS102及びLOG船速計103で計測したデータや船舶識別情報を受け取り、演算部1043で海流を演算できるようにデータ処理し、演算部1043での演算結果を受け取りメモリ1041に受け渡す機能を有するものを示し、具体的には、これらの機能を有する機械、装置、部品、或いは、こうした機能をコンピュータに実行させるアルゴリズム、このアルゴリズムを実行させるプログラム、もしくはこのプログラムを含めたソフトウェア、搭載媒体、ROM(読み出し専用メモリ)、或いはこれらを搭載もしくは内蔵したコンピュータもしくはその部分(以下、「回路、装置等」という。)によって実現される。沿岸海流個別データ処理部1042は、たとえば各データを船舶単位、時間単位、地域単位、データの種類単位等に区分け(ソート)する機能を有してもよい。
【0074】
演算部1043は、沿岸海流個別データ処理部1042から沿岸海流個別データを受け取り、ジャイロコンパス101で計測した針路を考慮して、LOG船速計103で計測した船舶の対水速度のベクトル量とGPS102で計測した対地速度のベクトル量との差分から、水底(陸地)に対する水の流れの速度のベクトル量を求め(水流演算)、この水流演算結果を潮流補正して、海流を導出する機能を有するものを示す。具体的には、これらの機能を有する回路、装置等によって実現される。
【0075】
通信装置105は、たとえば所定の通信規約(プロトコル)で、他の船舶や陸上の通信装置208とデータ通信(データの送受信)を行うもので、携帯電話回線(FDMA(Frequency Division Multiple Access)方式、PDC(Personal
Digital Cellular)やGSM(Global System for Mobile Communications)等のTDMA(Time Division
Multiple Access)方式、PHS(Personal Handyphone System)、CDMA(Code Division
Multiple Access)方式、W−CDMA(Wideband
Code Division Multiple Access)方式)、無線LAN(Local Area Network)、衛星通信等を含む。携帯電話回線の場合は、所定の中継点(基地局)を介してもよい。無線LANの場合は、所定のアクセスポイントを介さずに機器同士が直接通信を行うアドホックモード或いはアクセスポイント(アクセスポイントは他の船舶でもよい。)を介して行うインフラストラクチャモードのいずれでもよい。さらに、通信エラーや通信エリア外によりデータ送信できない場合の通信方式について所定のタイミングによるリトライが行われる。これらの無線通信を実現させるためには、具体的には、モデム、ターミナルアダプタ、ダイヤルアップルータ、LANカード、同軸ケーブル、光ファイバー等の通信装置や通信機器をデータの送受信側双方で有する必要がある。
【0076】
個船海流データ収集部201は、複数の船舶から送信された沿岸海流個別データ(演算した海流、取得位置、針路、対水船速、取得時刻、対地船速、船舶識別情報、等)を船舶毎の個船海流データとして収集する機能を有するものを示す。具体的には、これらの機能を有する回路、装置等によって実現される。
【0077】
沿岸海流観測データ処理部202は、個船海流データ収集部201から沿岸海流個別データを受け取り、複数の船舶の位置と時刻に対応させた沿岸海流観測データを得る機能を有する。詳細には、各データ計測時の船舶の位置(経度・緯度)と時刻(時間・分・秒等)とを紐付けして、位置毎及び/もしくは時刻毎に区分けして沿岸海流観測データとして処理するものである。具体的には、これらの機能を有する回路、装置等によって実現される。
【0078】
海流データ同化演算部203は、沿岸海流観測データ処理部202から沿岸海流観測データを受け取り、当該沿岸海流観測データを別途入手した広域海流予測データに適用して当該広域海流予測データを補正する機能を有する。補正とは、実測値としての沿岸海流観測データをシミュレーション結果である広域海流予測データとして同化することをいう。詳細には、所定の周期で沿岸海流観測データを所定の数値モデル等に基づいて算出された広域海流予測データに同化させ、当該広域海流予測データを再初期化して演算継続することを示す。すなわち、演算の一番初めの初期条件は、沿岸海流観測データの客観的な補間のみにより結果を与えられるものであるのに対し、演算開始以後は周期毎に沿岸海流観測データと広域海流予測データとを同化させた新たな初期条件を用いて演算を継続することになる。広く一般に同化とは、力学モデル等の制約条件として実際に観測したデータに近い場や時系列を求める手法として知られている。海流データ同化演算部203は、具体的には、これらの機能を有する回路、装置等によって実現される。
【0079】
沿岸海流予測データ処理部204は、海流データ同化演算部203で補正した広域海流予測データ、すなわち演算結果を受け取り、当該演算結果を陸地沿岸域の沿岸海流予測データとして、たとえば沿岸海流予測データを必要に応じ時系列的に提供することができるものを示す。具体的には、これらの機能を有する回路、装置等によって実現される。
【0080】
予測精度演算部205は、沿岸海流予測データ処理部204から海流予測データを受け取り、沿岸海流個別情報の取得状況に応じた予測精度を算出する機能を有する。詳細には、沿岸海流予測データの基となる個船海流データ収集部201で処理した海流を求めた船舶の隻数、海流の計測時間(計測した時刻、計測の継続時間、計測の時間間隔等)、船舶の規模(船体長・船体幅・高さ・重量・積載量等)を含む登録船舶データ、海流の計測方法、船舶に搭載した対水船速計測機器の種類(電磁LOG、ドップラーLOG等)、船舶の位置と現実の海流の主軸との関係(主軸の影響を受ける範囲内か否かの判断や主軸が接近するか遠ざかるか否かの判断等)を取得条件とし、当該取得条件に基づいて海流予測データの信頼性等の予測の精度を算出するものを示す。算出方法は、たとえば取得状況に係る情報それぞれに重み付けし、閾値設定して信頼性を百分率表示すること等を含む。予測精度演算部205は、具体的には、これらの機能を有する回路、装置等によって実現される。
【0081】
通信装置208は、複数の船舶、当該複数の船舶以外の陸地沿岸域航行中もしくは航行予定の船舶あるいは船舶の統括部門(船舶の管理会社や商社等)とデータ通信(データの送受信)を行うものである。当該通信装置208は、陸上にあってもよい。その他の点については、上述した通信装置105と同様である。
【0082】
次に、上述したシステム構成に係る海流データ同化システムの動作について説明する。
【0083】
陸地沿岸域を航行する複数の船舶のそれぞれが搭載するジャイロコンパス101で船舶の針路、GPS102で対地速度、LOG船速計103で対水速度を計測する。計測した時間、計測の継続時間、計測の時間間隔等は各船舶の任意とする。これらの計測データや船舶識別情報をコンピュータ装置104の沿岸海流個別データ処理部1042で沿岸海流個別データとして演算部1043で海流を演算できるようにデータ処理を行う。演算部1043は沿岸海流個別データからデータ計測地点及び計測時点での、その瞬間の海流を導出する。当該海流は沿岸海流個別データ処理部1042で沿岸海流個別データとして処理され、メモリ1041を介して通信装置105から所定の通信規約及び通信方式で陸上の通信装置208に沿岸海流個別データを送信する。
【0084】
図2は、本発明の一実施形態に係る陸地沿岸域を航行する複数の船舶から沿岸海流個別データを送信する流れを示す通信方法フローチャートである。複数の船舶は陸地沿岸域を航行中、任意に沿岸海流個別データを送信する(ステップSP10)。このとき、送信完了か否かの判定が行われる(ステップSP20)。たとえば、携帯電話の場合及び無線LANのアドホックモードの場合は、陸上と通信可能なエリア内に船舶が航行中で、かつ通信先である陸上と通信可能な状態であること、無線LANのインフラストラクチャモードの場合はアクセスポイントと通信可能なエリア内で、かつ当該アクセスポイントから通信先である陸上とが通信可能な状態であるという条件を満たすことによりデータの送信が行われ、沿岸海流個別データの送信は完了する(ステップSP100)。
【0085】
一方、通信可能なエリア外或いは通信障害(通信先のネットワーク回線の不具合等)により通信エラーが発生し沿岸海流個別データの送信が完了しないとき、所定時間経過後、送信リトライする(ステップSP30)。このとき、再び送信完了か否かの判定が行われる(ステップSP40)。上記同様、たとえば、携帯電話の場合及び無線LANのアドホックモードの場合は船舶の移動により陸上の通信可能なエリア内を航行中で、かつ通信先である陸上と通信可能な状態であること、無線LANのインフラストラクチャモードの場合は船舶の移動によりアクセスポイントと通信可能なエリア内を航行中で、かつ当該アクセスポイントから通信先である陸上とが通信可能な状態であることという条件を満たすことでデータの送信が行われることにより、沿岸海流個別データの送信は完了する(ステップSP100)。
【0086】
一方、船舶の移動によっても通信可能なエリア外或いは通信障害により通信エラーが発生し沿岸海流個別データの送信が完了しないとき、任意時間経過後、通信可能なエリア内に存在する航行中及び/もしくは航行予定の他の船舶を検索する(ステップSP50)。このとき、他の船舶の有無或いは当該他の船舶の通信状態をチェックして(或いは、通信状況に基づいて)通信可能か否かの判定が行われる(ステップSP60)。通信可能な場合は沿岸海流個別データが送信される(ステップSP70)。このとき、送信完了か否かの判定が行われる(ステップSP80)。たとえば、携帯電話の場合で、かつ無線LANのアドホックモードの場合には、他の船舶と通信可能なエリア内に船舶が航行中で、かつ通信先である他の船舶と通信可能な状態であること、無線LANのインフラストラクチャモードの場合はアクセスポイントと通信可能なエリア内で、かつ当該アクセスポイントから通信先である他の船舶が通信可能な状態であることという条件を満たすことにより、沿岸海流個別データの送信は完了する(ステップSP100)。一方、通信可能なエリア外或いは通信障害(通信先のネットワーク回線の不具合等)により通信エラーが発生し沿岸海流個別データの送信が完了しないときには所定時間経過後、送信待機状態となる(ステップSP90)。待機状態から所定経過後、再び沿岸海流個別データを送信する(ステップSP10)。
【0087】
通信装置208で沿岸海流個別データを受信した陸上においては、個船海流データ収集部201で複数の船舶から送信された沿岸海流個別データを船舶毎の個船海流データとして収集する。個船海流データは沿岸海流観測データ処理部202でデータを計測した複数の船舶のデータ計測した位置と時刻とを紐付けして、位置毎及び/もしくは時刻毎に区分けして沿岸海流観測データとして処理する。沿岸海流観測データは、海流データ同化演算部203にて、別途入手した広域海流予測データに同化させる。当該同化により補正された広域海流予測データは、沿岸海流予測データ処理部204で陸地沿岸域の沿岸海流予測データとして処理される。当該沿岸海流予測データは、メモリ206で記憶し沿岸海流予測データベースを構築してもよい。一方、当該沿岸海流予測データは、さらに予測精度演算部205で沿岸海流個別情報の種々の取得状況に基づいて予測精度(予測データの信頼性)を算出する。当該予測精度と併せて沿岸海流予測データは、通信装置208から所定の通信規約及び通信方式で、陸地沿岸域を航行する複数の船舶、複数の船舶以外の陸地沿岸域航行中もしくは航行予定の船舶あるいは船舶の統括部門(船舶の管理会社や海運会社等)に送信される。
【0088】
次に、本願に係るLOG船速計103の代替についてのシステム構成及び対水船速導出の原理の詳細な説明をする。
【0089】
図3は、本発明の一実施形態に係るLOG船速計103の代替であるLOG船速計代替装置103aのシステム構成図である。同図に示すとおり、LOG船速計代替装置103aは、エンジン等の主機関の出力を推進力へと変換するプロペラの回転数(単位:rpm)を計測するプロペラ回転数計1031、当該主機関の馬力(単位:PS)や仕事量(単位:kw)等の出力及びC重油、A重油等の燃料消費量を計測する機関出力/燃料消費量計1032、当該プロペラの仕様(ピッチ角、プロペラボスの径、展開面積比、翼数、プロペラ直径等)及び/もしくは性能(回転効率、推進効率等)を電子データとして記憶するプロペラ仕様/性能データ記憶装置1033、プロペラ回転数計1031及び機関出力/燃料消費量計1032による計測データとプロペラ仕様/性能データ記憶装置1033に記憶するデータに基づいて対水船速を演算する対水船速演算装置1034を具備して構成される。
【0090】
船舶の航行上、プロペラの回転数はプロペラ翼に衝突する海流の流速に応じて変化する。そこで、運航スケジュールや最適航海計画に則ってプロペラシャフトと直結するエンジン主機関の出力を制御することで、プロペラの回転数の維持・増加・減少を制御している。したがって、プロペラの回転数に応じて主機関駆動が変動するため、当該主機関の出力に燃料消費量が追従する。一方で、プロペラの回転数は、たとえば水を最適に搔くピッチ角であったり、一度の回転で最大の推進力を得る効率であったり等のプロペラの仕様・性能によっても異なる。したがって、経時毎にプロペラ回転数計1031で計測したプロペラ回転数及び機関出力/燃料消費量計1032で計測した主機関等の出力及びC重油、A重油等の燃料消費量を変数とし、予めプロペラ仕様/性能データ記憶装置1033に記憶するプロペラ仕様及び/もしくは性能データを考慮して、所定の演算式により船舶の対水船速を対水船速演算装置1034で導出することができる。
【0091】
以上詳細に説明したように、本実施形態によれば、陸地沿岸域を航行する複数の船舶が実際に計測したデータに基づいた沿岸海流個別情報を取得し、携帯電話回線や無線LAN等の無線通信により航行中のこれらの船舶から随時当該沿岸海流個別情報をデータ通信することで、陸地沿岸域の海流等に関する最新の沿岸海流個別情報を入手することができる。また、沿岸海流個別情報を基にシミュレーション結果である広域海流予測データを同化により補正することで、実際に計測した最新データに鑑みた高精度かつ信頼性の高い沿岸海流予測データを迅速に導出し、要求に適した所望の海流予測情報を提供することができる。
【0092】
また、本実施形態によれば、通信障害等が起こりやすい海域からのデータ配信を行う際、所定の周期でのリトライ送信や、他の中継地点、アクセスポイント、船舶等を介して通信を行うこともできるため、複数の船舶が取得した沿岸海流個別情報を無駄にすることなく、随時最新な情報を送信することができる。
【0093】
また、本実施形態によれば、対水船速を計測するLOG船速計の代替としてプロペラの回転数及びエンジン等の主機関や燃料消費量等の計測結果に当該プロペラの仕様や性能等を加味することで、逆算的に海流の流速を求めることができるため、LOG船速計がなくても対地船速の導出は可能となる。
【0094】
したがって、陸地沿岸域を航行する内航船にとって、好適な運航スケジュールや最適航海計画の立案が実現し得る。すなわち、理想の航海を妨げる大きな要因ともなり得た海流の予測情報が正確性をもって提供されれば、その海流の予測情報を利用し、その他の気象・海象の予測情報等も含めて立案した運航スケジュールや最適航海計画は信頼性が極めて高いものとなる。それにより、スケジュールの大幅の変更が発生することもなく、船舶の運用上にも絶大な効果を有する。すなわち、無駄なエネルギー消費の抑制効果も働き、最大で約20%の燃費の向上にもつながる(シミュレーション実験による)。また、エネルギー消費の抑制により排気ガスの排出量も減少するため、環境負荷の低減効果も有する。
【0095】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。
【0096】
また、上述した実施例は、本発明に係る技術思想を具現化するための実施形態の一例を示したにすぎないものであり、他の実施形態でも本発明に係る技術思想を適用することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明に係る海流データ同化方法および同化システムは、一般的に海洋での使用に限らず、河川、湖水等あらゆる水系で利用される船舶で使用することが可能である。
【0098】
また、本願に係る技術思想を基に、船舶に限らずブイ、浮遊構造物のほか、たとえばより海流の影響を受けると想定される潜水艦等において、実運用中の乗物が計測した最新の実測データに基づいてシミュレーション結果に同化して求めた予測データは、高精度で信頼性が高いため、省エネルギー化及び環境負荷の低減化において、船舶や浮体をはじめとした海事産業全般のみならず、広く社会全般に対して大きな有益性をもたらすものである。
【符号の説明】
【0099】
101…GPS、102…ジャイロコンパス、103…LOG船速計、105…通信装置、202…沿岸海流観測データ処理部、204…沿岸海流予測データ処理部、208…通信装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
陸地沿岸域を航行する複数の船舶でそれぞれGPS測位情報、ジャイロコンパス情報、対水船速情報を含む情報を所定の条件で取得し、これらの情報を情報取得時刻を含んだ沿岸海流個別情報として記憶し、これら記憶した沿岸海流個別情報を携帯電話回線あるいは無線LANを含む無線通信手段で所定間隔であるいは通信可能な機会に送信し、受信した前記沿岸海流個別情報を処理して前記複数の船舶の位置と時刻に対応させた沿岸海流観測データを得て、この沿岸海流観測データを別途入手した広域海流予測データに適用することでこの広域海流予測データを補正して沿岸海流予測データを得ることを特徴とする海流データ同化方法。
【請求項2】
前記対水船速情報として対水船速計(LOG船速計)の情報を用いたことを特徴とする請求項1項記載の海流データ同化方法。
【請求項3】
前記沿岸海流個別情報として前記船舶の識別情報を送信することを特徴とする請求項1あるいは2記載の海流データ同化方法。
【請求項4】
前記無線通信手段で送信ができなかった場合に、通信可能な場所に移動後に送信を試みるかあるいは前記複数の船舶のうちの他の船舶を介して送信を試みることを特徴とする請求項1乃至3のうち1項記載の海流データ同化方法。
【請求項5】
前記沿岸海流予測データを蓄え、必要に応じ時系列的に提供可能にした請求項1乃至4のうちの1項記載の海流データ同化方法。
【請求項6】
前記沿岸海流個別情報の取得状況に応じた予測確率を算出し提供可能にした請求項1乃至5のうちの1項記載の海流データ同化方法。
【請求項7】
前記沿岸海流予測データを前記複数の船舶以外の陸地沿岸域航行中もしくは航行予定の船舶あるいは船舶の統括部門にも必要に応じて配信することを特徴とする請求項1乃至6のうちの1項記載の海流データ同化方法。
【請求項8】
前記沿岸海流予測データは、前記広域海流予測データよりも短い時間間隔で得ることを特徴とする請求項1乃至7のうちの1項記載の海流データ同化方法。
【請求項9】
船舶に搭載したGPSと、ジャイロコンパスと、対水船速取得手段と、これらの取得情報を情報取得時刻を含んだ沿岸海流個別情報として記憶する記憶手段と、これら記憶した沿岸海流個別情報を携帯電話回線あるいは無線LANを含む無線通信手段で所定間隔であるいは通信可能な機会に送信する通信手段と、この送信された前記沿岸海流個別情報を受信する受信手段と、この受信した前記沿岸海流個別情報を処理して前記複数の船舶の位置と時刻に対応させた沿岸海流観測データを得る沿岸海流観測データ処理部と、この沿岸海流観測データを別途入手した広域海流予測データに適用してこの広域海流予測データを補正して沿岸海流予測データを得る沿岸海流予測データ処理部とを具備することを特徴とする海流データ同化システム。
【請求項10】
前記対水船速取得手段として対水船速計(LOG船速計)を用いたことを特徴とする請求項9記載の海流データ同化システム。
【請求項11】
前記対水船速取得手段を船舶のプロペラ仕様と、プロペラ回転数と、機関動力とより対水船速を算出する手段として構成したことを特徴とする請求項9記載の海流データ同化システム。
【請求項12】
前記記憶手段はパーソナルコンピュータの記憶装置を利用したことを特徴とする請求項9乃至11のうちの1項記載の海流データ同化システム。
【請求項13】
前記沿岸海流予測データを前記船舶以外の陸地沿岸域航行中もしくは航行予定の船舶あるいは船舶の統括部門にも必要に応じて配信する送信手段をさらに備えたことを特徴とする請求項9乃至12のうちの1項記載の海流データ同化システム。
【請求項14】
前記受信手段あるいは送信手段は陸上に設けたことを特徴とする請求項9乃至13のうちの1項記載の海流データ同化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−223639(P2010−223639A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69158(P2009−69158)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.GSM
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)国等の委託研究の成果に係る特許出願(平成20年度独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー使用合理化技術戦略的開発/エネルギー有効利用基盤技術先導研究開発/内航船の環境調和型運航計画支援システムの研究開発」委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願)
【出願人】(501204525)独立行政法人海上技術安全研究所 (185)