説明

浸透圧発電システム

【課題】半透膜を介して淡水が海水に浸透して生じる流動によって水車を回転させて発電する浸透圧発電システムにおいて、安定した発電出力を得る。
【解決手段】半透膜1の両面に隔離形成された海水流路31および淡水流路41を有する浸透装置2と、海水流路31に連通された海水給水路32および海水排水路33と、淡水流路41に連通された淡水給水路42および淡水排水路43と、海水給水路32に設けられた海水給水ポンプ51と、淡水給水路42に設けられた淡水給水ポンプ52と、海水排水路33に設けられて海水排水の流動により回転して発電する水車発電機8と、を備えた浸透圧発電システムにおいて、淡水流路31から海水流路41に浸透する浸透量を維持調節する浸透量維持調節手段を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、半透膜を介して淡水が海水に浸透して生じる流動によって水車を回転させて発電する浸透圧発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、半透膜を介して海水と淡水とを接触させると、淡水が半透膜を透過して海水中に浸透する。この現象は、半透膜の両面に接する海水と淡水との塩分濃度差による浸透圧が作用して生じるものであり、25℃の海水と淡水との間では、約2.8MPaの浸透圧が存在する。
【0003】
この浸透圧を利用した浸透圧発電システムは、河川から淡水を取水するとともに、海から海水を取水し、半透膜を備えた浸透装置を用いて淡水を海水に浸透させ、淡水が浸透する過程で生じる流動によって水車を回転させて発電するように構成されている。
【0004】
浸透圧発電システムにおける流動の利用形態として、浸透装置への淡水給水路上に水車発電機を設置し、浸透装置への淡水給水の流動に、浸透による流動が重畳された、淡水を利用して発電する方式(たとえば、特許文献1参照)が提案されている。また、浸透装置からの海水排水路上に水車発電機を設置し、浸透装置への海水給水の流動に、浸透による淡水の流動が重畳された、希釈海水を利用して発電する方式(たとえば、特許文献2参照)も提案されている。
【0005】
このような浸透圧発電システムに用いられる浸透装置は、浸透圧によって淡水が海水側に吸引されることから、淡水側が負圧になった場合に、浸透装置内に空気が侵入することによって、また、淡水内の溶存気体が気化することによって、浸透装置内に気泡が発生するが、この気泡が半透膜面に付着すると、浸透が阻害されて浸透量が減少し、水車発電機の発電出力が低下するという課題があった。
【0006】
そこで、上記課題を解決するために、特許文献1においては、浸透装置を水深のある海底に設置して、河川との落差を給水圧力に変換することによって、淡水側を正圧に保つ方式が提案されている。
【0007】
【特許文献1】特開昭54−57116号公報(図7)
【特許文献2】特開昭58−53684号公報(図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の浸透圧発電システムにおいては、特許文献1の構成では、浸透装置を海底に設置しているので、設置や維持管理が困難になるという課題があった。
【0009】
また、特許文献1または特許文献2の構成では、淡水中に微量に存在する塩分のほとんどが浸透せずに浸透装置内の淡水中に残留することから、淡水中の塩分濃度が濃縮されて上昇するが、塩分が濃縮した淡水を適宜排水して淡水の塩分濃度を調節する機構を備えていないので、半透膜両面の塩分濃度差が減少して浸透圧が低下し、浸透量が減少して水車発電機の発電出力が低下するという課題があった。
【0010】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、安定した発電出力を維持することのできる浸透圧発電システムを得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明による浸透圧発電システムは、半透膜と、半透膜の一方の膜面側に形成された海水流路と、半透膜の他方の膜面側に形成された淡水流路とを有する浸透装置と、海水流路に海水を給水する海水給水路と、海水流路から海水を排水する海水排水路と、淡水流路に淡水を給水する淡水給水路と、淡水流路から淡水を排水する淡水排水路と、海水給水路に設けられた海水給水ポンプと、淡水給水路に設けられた淡水給水ポンプと、海水排水路に設けられて海水排水の流動により回転して発電する水車発電機と、淡水流路から海水流路に浸透する浸透量を維持調節する浸透量維持調節手段と、を備えたものである。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、浸透量維持調節手段を用いて、淡水流路から海水流路に浸透する浸透量を維持調節することにより、水車発電機への流入量と流入圧力を安定した状態に維持することができるので、水車発電機を安定した発電出力で運転することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
実施の形態1.
図1はこの発明の実施の形態1に係る浸透圧発電システムの水路構成を概略的に示すブロック構成図である。
図1において、浸透圧発電システムは、半透膜1を介して隔離形成された海水流路31および淡水流路41を有する浸透装置2と、海水流路31に連通された海水給水路32および海水排水路33と、淡水流路41に連通された淡水給水路42および淡水排水路43と、海水給水路32に設けられた海水給水ポンプ51と、海水排水路33に設けられた水車発電機8と、淡水給水路42に設けられた淡水給水ポンプ52と、を備えるとともに、第1の浸透量維持調節手段として、淡水排水路43内の淡水圧力を検出する淡水圧力計10と、淡水給水ポンプ52を制御する第1の制御装置(以下、単に「制御装置」という)14と、を備えている。
【0014】
各流路31、41および各水路32、33、42、43において、海水6および淡水7は、実線矢印および2点鎖線矢印で示す方向に流れる。
制御装置14は、淡水圧力計10の淡水圧力計測値11に基づいて、淡水圧力(淡水流路41内の圧力値)を正圧に維持するための操作量指令値15を生成し、淡水給水ポンプ52の流量を制御する。
【0015】
浸透装置2において、海水6(2点鎖線参照)が流れる海水流路31は、半透膜1の一方の膜面側に設けられ、淡水7(2点鎖線参照)が流れる淡水流路41は、半透膜1の他方の膜面側に設けられている。また、淡水流路41内の淡水7は、破線矢印で示すように、半透膜1を透過して、海水流路31内の海水6に浸透する。
【0016】
なお、半透膜1は、塩分阻止率の高い逆浸透膜が好ましいが、ナノ濾過膜、限外濾過膜であってもよく、また、濾過専用の膜でなくてもよい。半透膜1としては、たとえば、包装用フィルム(再生セルロース製の限外濾過膜や、ポリビニルアルコール製のナノ濾過膜と同じ材質からなる)などの、別の用途の膜を転用してもよい。また、その形状は、平膜を加工したものであっても、中空糸状であってもよい。
【0017】
海水流路31および淡水流路41は、中空糸膜や袋状膜の内部のような膜構造またはスペーサなどの部材によって確保される。各流路31、41を形成する部材が、流れの乱流化を促進する機能を持っていれば、流路各部の塩分濃度に偏りができる濃度分極が起きにくくなるので好ましい。
【0018】
また、各流路31、41内において、海水6は、海水流路31の出口に近いほど、浸透した淡水7と混合して塩分濃度が低下し、一方、淡水7は、淡水流路41の出口に近いほど、塩分が濃縮して塩分濃度が上昇するので、各位置で半透膜1の両面の塩分濃度差を確保するために、海水6および淡水7の流動方向は、図示したように、対向流となるように設計することが好ましい。
【0019】
浸透装置2としては、各種形状(スパイラル形、中空糸形、平膜積層形など)の膜モジュールや膜モジュールを水槽に浸漬したものを使用することができるが、少なくとも、海水6および淡水7のそれぞれについて、給水部分と排水部分とを備えている必要がある。
浸透装置2における海水6および淡水7の給水部分および排水部分は、それぞれ、海水給水路32、海水排水路33、淡水給水路42および淡水排水路43と接続されている。
【0020】
また、前述のように、海水給水路32の途上には海水給水ポンプ51が設けられ、淡水給水路42の途上には淡水給水ポンプ52が設けられ、海水排水路33の途上には水車発電機8が設けられ、淡水排水路43の途上には淡水圧力計10が設けられている。
海水排水路33は、浸透装置2との接続箇所と排水路末端との間で落差が設定されていなくてもよい。水車発電機8は、無落差または数m程度の低落差で発電できるものが好ましい。
【0021】
淡水圧力計10で検出された淡水圧力計測値11は、淡水給水ポンプ52の流量を制御する制御装置14に入力され、制御装置14は、淡水圧力計測値11が負圧となった場合に、流量を増やして淡水圧力計測値11を正圧に戻すための操作量指令値15を、淡水給水ポンプ52に入力する。
【0022】
図2は淡水流路41の圧力分布を示す説明図であり、横軸は淡水流路41の入口からの距離、縦軸は淡水流路41内の淡水圧力である。
図2において、実線は制御装置14の制御処理を実行した場合の圧力分布曲線、破線は制御装置14の制御処理を実行しない場合の圧力分布曲線を示している。
【0023】
図2から明らかなように、制御装置14の制御処理を実行しない場合(破線参照)は、前述の理由から淡水流路41内の淡水圧力は、各位置で負圧となり、淡水流路41の出口に向かうにつれて、圧力値はさらに低下する。
仮に、淡水流路41内が負圧の状態で、淡水流路41の出口を開放すると、淡水排水路43から水が逆流するので開放することはできない。
【0024】
一方、制御装置14の制御処理を実行した場合(実線参照)は、淡水給水ポンプ52の流量が増えることにより、淡水流路41内の圧力値が増すので、淡水流路41内を正圧に維持することができる。
なお、淡水圧力計測値11が、制御装置14の上限圧力設定値よりも高い場合には、淡水流路41への供給流量を減らす操作量指令値15を、淡水給水ポンプ52に与える。これにより、過剰に圧力を増大させて淡水給水ポンプ52の動力(消費電力)を増大させて、システム全体で見た場合の発電効率の低下を回避することができる。
【0025】
以上のように、この発明の実施の形態に係る浸透圧発電システムは、半透膜1と、半透膜1の一方の膜面側に形成された海水流路31と、半透膜1の他方の膜面側に形成された淡水流路41とを有する浸透装置2と、海水流路31に海水6を給水する海水給水路32と、海水流路31から海水6を排水する海水排水路33と、淡水流路41に淡水7を給水する淡水給水路42と、淡水流路41から淡水7を排水する淡水排水路43と、海水給水路32に設けられた海水給水ポンプ51と、淡水給水路42に設けられた淡水給水ポンプ52と、淡水排水路43における淡水圧力を検出する淡水圧力計10と、海水排水路33に設けられて海水排水の流動により回転して発電する水車発電機8と、淡水給水ポンプ52を制御する制御装置14と、を備えている。
【0026】
また、制御装置14は、淡水圧力計10により検出された淡水圧力計測値11に応じて、淡水給水ポンプ52の流量を調節することにより、淡水流路41における圧力値を正圧に維持する。具体的には、制御装置14は、淡水圧力計測値11が負圧を示す場合には、淡水圧力計測値11が正圧となるように、淡水給水ポンプ52の流量を増やすための操作量指令値15を出力する。
【0027】
このように、淡水流路41内の淡水圧力を正圧に維持することにより、淡水流路41への空気の侵入または溶存気体の気化が生じることがないので、気泡が半透膜1の膜面に付着して浸透が阻害される現象を回避し、淡水流路41から海水流路31への浸透量を維持して、安定した発電出力を得ることができる。
また、制御装置14は、淡水圧力計測値11が上限圧力設定値よりも高い場合には、淡水給水ポンプ52の流量を減らすための操作量指令値15を出力するので、発電効率の低下を回避することができる。
【0028】
実施の形態2.
なお、上記実施の形態1(図1)では、淡水排水路43における塩分濃度を考慮しなかったが、図3に示すように、第2の浸透量維持調節手段として、淡水排水路43に淡水排水流量調節手段9および塩分濃度計12を設けるとともに、塩分濃度計12の塩分濃度計測値13に応じて淡水排水流量調節手段9の流量を調節する第2の制御装置(以下、単に「制御装置」という)14Aを設けてもよい。
図3はこの発明の実施の形態2に係る浸透圧発電システムの水路構成を概略的に示すブロック構成図であり、前述(図1参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0029】
図3において、浸透圧発電システムは、前述(図1参照)の構成に加えて、淡水排水路43の途上に設けられた淡水排水流量調節手段9および塩分濃度計12と、塩分濃度計12により検出された塩分濃度計測値13に応じて淡水排水流量調節手段9を制御する制御装置14Aと、をさらに備えている。
【0030】
制御装置14Aは、塩分濃度計12の塩分濃度計測値13に基づいて、浸透装置2内の半透膜1における淡水流路41から海水流路31への浸透圧を正圧に維持するための操作量指令値15Aを生成し、淡水排水流量調節手段9の流量(淡水排水量)を調節する。
【0031】
具体的には、制御装置14Aは、塩分濃度計測値13が塩分濃度設定値よりも高ければ、淡水排水量を増やすための操作量指令値15Aを淡水排水流量調節手段9に出力し、逆に塩分濃度計測値13が塩分濃度設定値よりも低ければ、淡水排水量を減らすための操作量指令値15Aを淡水排水流量調節手段9に出力する。なお、塩分濃度設定値は、1つの数値でも、上下限の幅をもたせた値であってもよい。
また、淡水排水流量調節手段9は、バルブまたはポンプであってもよい。
【0032】
以上のように、この発明の実施の形態2に係る浸透圧発電システムは、淡水排水路43における淡水排水流量を調節する淡水排水流量調節手段9と、淡水排水路43における淡水排水の塩分濃度を検出する塩分濃度計12と、流量調節手段9を制御する制御装置14Aと、を備えている。
【0033】
また、制御装置14Aは、塩分濃度計12により検出された塩分濃度計測値13に応じて、淡水排水流量調節手段9による淡水排水流量を調節することにより、半透膜1における淡水流路41から海水流路31への浸透圧を正圧に維持する。
具体的には、制御装置14Aは、塩分濃度計測値13が所定の塩分濃度設定値よりも高ければ、淡水排水量を増やす(浸透によって塩分が濃縮した淡水を排水する)ための操作量指令値15Aを淡水排水流量調節手段9に出力し、塩分濃度計測値13が塩分濃度設定値よりも低ければ、淡水排水量を減らすための操作量指令値15Aを淡水排水流量調節手段9に出力する。
【0034】
このように、淡水排水の塩分濃度に応じて淡水排水量を調節することにより、浸透装置2内での浸透による淡水7の塩分濃度上昇(淡水7に微量に含まれる塩分の濃縮)による半透膜1での浸透圧の低下を回避して、淡水流路41から海水流路31への浸透量の減少を防ぎ、安定した発電出力を得ることができる。
また、前述と同様に、過剰な排水による淡水給水ポンプ52の動力(消費電力)の増加を回避して、システム全体で見た場合の発電効率の低下を防ぐことができる。
【0035】
実施の形態3.
なお、上記実施の形態1、2(図1、図3)では、海水流路31側に関する流量制御について考慮しなかったが、図4に示すように、第3の浸透量維持調節手段として、海水排水路33の水車発電機8の入力側に海水圧力計10Bを設けるとともに、海水圧力計10Bにより検出された海水圧力計測値11Bに応じて海水給水ポンプ51Bの流量を制御する第3の制御装置(以下、単に「制御装置」という)14Bを設けてもよい。
図4はこの発明の実施の形態3に係る浸透圧発電システムを概略的に示すブロック構成図であり、前述(図3参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0036】
図4において、浸透圧発電システムは、前述(図2参照)の構成に加えて、海水排水路33上で水車発電機8の入力側に設けられた海水圧力計10Bと、海水圧力計10Bの海水圧力計測値11Bに応じて海水給水ポンプ51Bの流量を制御する制御装置14Bとを備えている。海水給水ポンプ51Bは、前述の海水給水ポンプ51に対応しており、流量調節可能に構成されている。
【0037】
一般に、浸透装置2内の半透膜1における浸透量は、短期的には、海水6および淡水7の流量および圧力によって、または、海水6と浸透した淡水7との混合度合いが偏る濃度分極によって変化し、長期的には、半透膜1内に不純物が目詰まりすることによって、または、半透膜1の膜面に不純物(塩分など)が堆積することによって変化する。
このように、半透膜1における浸透量が変化することにより、海水6の排水流量および圧力が変化するが、これらの変動分を海水給水ポンプ51Bが補うことが望ましい。
【0038】
具体的には、海水給水ポンプ51Bの流量を調節する制御装置14Bは、海水圧力計測値11Bが所定の圧力設定値よりも高ければ、流量を減らすための操作量指令値15Bを海水給水ポンプ51Bに出力し、海水圧力計測値11Bが圧力設定値よりも低ければ、流量を増やすための操作量指令値15Bを海水給水ポンプ51Bに出力する。
【0039】
これにより、海水排水路33における海水圧力と、海水排水路33および水車発電機8の抵抗とによって、海水流路31から排水される海水6の流量が決定することから、海水排水路33における海水圧力が一定であれば、海水流量も一定になるので、水車発電機8の発電出力を安定して運転することができる。
【0040】
以上のように、この発明の実施の形態3に係る浸透圧発電システムは、海水排水路33における水車発電機8の入力側の海水圧力を検出する海水圧力計10Bと、海水給水ポンプ51Bを制御する制御装置14Bと、を備えている。
また、制御装置14Bは、海水圧力計10Bにより検出された海水圧力計測値11Bに応じて、海水給水ポンプ51Bの流量を調節することにより、海水排水路33における海水圧力値を一定に維持する。
【0041】
これにより、半透膜1の目詰まりや膜面堆積物によって浸透量が減少する場合や、海水6と浸透した淡水7との混合度合いによって塩分濃度が変化して浸透量が変化する場合においても、水車発電機8への流入圧力、流入量を一定に保つことができるので、水車発電機8の運転を安定して行うことができる。
また、水車発電機8の入力側の海水圧力を一定に保つことにより、浸透装置2における浸透量に左右されずに、水車発電機8の発電出力を安定して運転することができる。
【0042】
さらに、図4に示したように、前述の実施の形態2(図3)の構成に海水圧力計10Bおよび制御装置14Bを追加することにより、前述の実施の形態1、2の効果に加えて、上記作用効果を奏することができる。
なお、図4においては、前述の実施の形態2の構成に海水圧力計10Bおよび制御装置14Bを追加した場合を示したが、前述の実施の形態1(図1)の構成に海水圧力計10Bおよび制御装置14Bを追加してもよい。
【0043】
実施の形態4.
また、図5に示すように、上記実施の形態3(図4参照)に、第4の浸透量維持調節手段をさらに設けて、海水流路および淡水流路に供給する海水と淡水とを入れ替え可能に構成してもよい。
図5において、第4の浸透量維持調節手段は、海水給水路32から分岐した海水給水分岐路34と、淡水給水路42から分岐した淡水給水分岐路44と、海水排水路33から分岐した海水排水分岐路35と、淡水排水路43から分岐した淡水排水分岐路45と、海水給水路32から海水給水分岐路34に給水経路を切り替える海水給水切替手段61と、淡水給水路42から淡水給水分岐路44に給水経路を切り替える淡水給水切替手段62と、海水排水路33から海水排水分岐路35に排水経路を切り替える海水排水切替手段63と、淡水排水路43から淡水排水分岐路45に排水経路を切り替える淡水排水切替手段64と、を備えている。
【0044】
図5はこの発明の実施の形態4に係る浸透圧発電システムの水路構成を概略的に示すブロック構成図であり、前述の実施の形態1〜3に係る第1〜第3の浸透量維持調節手段については、図示を省略している。また、前述(図4参照)と同様のものについては、前述と同一符号を付して詳述を省略する。
【0045】
なお、図5の浸透装置2Cにおいては、海水流路31と淡水流路41とを「並行流」とした例を示しているが、前述の実施の形態1で述べたように「対向流」としてもよい。
また、浸透装置2C内の半透膜1Cは、単層構造で形成されるか、または、表裏のない対称構造で形成され、膜のどちらの面から水を透過させても、膜の強度を維持できる構造とすることが好ましい。
【0046】
海水給水分岐路34の路上には、海水給水切替手段61が設けられており、海水給水分岐路34は、海水給水路32および淡水給水路42に接続されている。
淡水給水分岐路44の路上には、淡水給水切替手段62が設けられており、淡水給水分岐路44は、海水給水分岐路34よりも浸透装置2Cに近い位置で海水給水路32に接続され、海水給水分岐路34よりも浸透装置2Cに遠い位置で淡水給水路42に接続されている。
【0047】
海水排水分岐路35の路上には、海水排水切替手段63が設けられており、海水排水分岐路35は、海水排水路33および淡水排水路43に接続されている。
淡水排水分岐路45の路上には、淡水排水切替手段64が設けられており、淡水排水分岐路45は、海水排水分岐路35よりも浸透装置2Cに遠い位置で海水排水路33に接続され、海水排水分岐路35よりも浸透装置2Cに近い位置で淡水排水路43に接続されている。
【0048】
各切替手段61〜64は、たとえば三方弁が使用されており、これにより、各分岐路34、35、44、45に通水するときには、各水路32、33、42、43を閉じる構成となっている。なお、各水路32、33、42、43と各分岐路34、35、44、45と、のそれぞれに弁を設け、各水路32、33、42、43と各分岐路34、35、44、45との通水を排他的に行う構成としてもよい。
【0049】
半透膜1Cは、長期間の使用によって、浸透せずに残った微量の塩分が淡水側膜面に付着して、堆積することにより、または膜内に目詰まりすることにより、浸透量が減少するが、この状態を解消する方法としては、浸透の向きに対して逆方向から水を流して、膜面に堆積(または、膜内に目詰まり)した物質を排除する「逆流洗浄操作」を行うことが有効である。
【0050】
各給水切替手段61、62を操作すると、海水給水分岐路34に海水を、淡水給水分岐路44に淡水を給水して、浸透装置2Cの海水流路31が海水から淡水に入れ替わり、また淡水流路41が淡水から海水に入れ替わる。
この操作によって、浸透の向きが操作前とは反対となり、反対方向に淡水が浸透する過程で、半透膜1Cの膜面堆積物(または、目詰まりの原因物質)を剥離して浸透装置2Cから排除することができる。
【0051】
淡水流路41の海水は、淡水排水分岐路45に通水することによって海水排水路33に排水され、海水流路31の淡水は、海水排水分岐路35に通水することによって淡水排水路43に排水される。
なお、この逆流洗浄操作が行われている間も、水車発電機8には海水が供給され続けるので、水車発電機8の運転を停止させることなく、発電を継続することができる。
【0052】
流路切替操作の時期としては、膜面堆積物(または、目詰まり)によって浸透量が減少すると淡水給水ポンプ52の流量が減少することに注目して、淡水給水ポンプ52の流量が或る一定値を下回る時期を目安とすればよい。
【0053】
以上のように、この発明の実施の形態4に係る浸透圧発電システムは、海水給水路32から分岐した海水給水分岐路34と、海水排水路33から分岐した海水排水分岐路35と、淡水給水路42から分岐した淡水給水分岐路44と、淡水排水路43から分岐した淡水排水分岐路45と、海水給水切替手段61と、淡水給水切替手段62と、海水給水切替手段63と、海水排水切替手段64と、を備えている。
【0054】
また、海水給水分岐路34を介して淡水流路41に海水を給水し、また、淡水給水分岐路44を介して海水流路31に淡水を給水し、海水排水分岐路35を介して海水流路31から淡水を排水し、淡水排水分岐路45を介して淡水流路41から海水を排水することによって、反対方向の浸透を利用して逆流洗浄を行う。
【0055】
これにより、半透膜1Cの目詰まりや膜面堆積物の除去(逆流洗浄操作)を、水車発電機8を停止させることなく、発電を継続しながら行うことができる。
なお、上述の構成による第4の浸透量維持装置は、前述の実施の形態1(図1)または実施の形態2(図3)に追加してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】この発明の実施の形態1に係る浸透圧発電システムの水路構成を概略的に示すブロック構成図である。
【図2】この発明の実施の形態1による制御実行時の淡水流路内の圧力分布を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る浸透圧発電システムの水路構成を概略的に示すブロック構成図である。
【図4】この発明の実施の形態3に係る浸透圧発電システムの水路構成を概略的に示すブロック構成図である。
【図5】この発明の実施の形態4に係る浸透圧発電システムの水路構成を概略的に示すブロック構成図である。
【符号の説明】
【0057】
1、1C 半透膜、2、2C 浸透装置、6 海水、7 淡水、8 水車発電機、9 淡水排水流量調節手段、10 淡水圧力計、10B 海水圧力計、11 淡水圧力計測値、11B 海水圧力計測値、12 塩分濃度計、13 塩分濃度計測値、14 第1の制御装置、14A 第2の制御装置、14B 第3の制御装置、15、15A 操作量指令値、31 海水流路、32 海水給水路、33 海水排水路、34 海水給水分岐路、35 海水排水分岐路、41 淡水流路、42 淡水給水路、43 淡水排水路、44 淡水給水分岐路、45 淡水排水分岐路、51、51B 海水給水ポンプ、52 淡水給水ポンプ、61 海水給水切替手段、62 淡水給水切替手段、63 海水排水切替手段、64 淡水排水切替手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
半透膜と、前記半透膜の一方の膜面側に形成された海水流路と、前記半透膜の他方の膜面側に形成された淡水流路とを有する浸透装置と、
前記海水流路に海水を給水する海水給水路と、
前記海水流路から海水を排水する海水排水路と、
前記淡水流路に淡水を給水する淡水給水路と、
前記淡水流路から淡水を排水する淡水排水路と、
前記海水給水路に設けられた海水給水ポンプと、
前記淡水給水路に設けられた淡水給水ポンプと、
前記海水排水路に設けられて海水排水の流動により回転して発電する水車発電機と、
を備えた浸透圧発電システムにおいて、
前記淡水流路から前記海水流路に浸透する浸透量を維持調節する浸透量維持調節手段を設けたことを特徴とする浸透圧発電システム。
【請求項2】
前記浸透量維持調節手段としての第1の浸透量維持調節手段は、
前記淡水排水路における淡水圧力を検出する淡水圧力計を備え、
前記淡水圧力計により検出された圧力計測値に応じて、前記淡水給水ポンプの流量を調節することにより、前記淡水流路における圧力を正圧に維持することを特徴とする請求項1に記載の浸透圧発電システム。
【請求項3】
前記浸透量維持調節手段としての第2の浸透量維持調節手段は、
前記淡水排水路における淡水排水流量を調節する淡水排水流量調節手段と、
前記淡水排水路における淡水排水の塩分濃度を検出する塩分濃度計と、
を備え、
前記塩分濃度計により検出された塩分濃度計測値に応じて、前記淡水排水流量調節手段による前記淡水排水流量を調節することにより、前記半透膜における前記淡水流路から前記海水流路への浸透圧を正圧に維持することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の浸透圧発電システム。
【請求項4】
前記浸透量維持調節手段としての第3の浸透量維持調節手段は、
前記海水排水路における前記水車発電機の入力側の海水圧力を検出する海水圧力計を備え、
前記海水圧力計により検出された海水圧力計測値に応じて、前記海水給水ポンプの流量を調節することにより、前記海水排水路における圧力値を一定に維持することを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の浸透圧発電システム。
【請求項5】
前記浸透量維持調節手段としての第4の浸透量維持調節手段は、
前記海水給水路から分岐した海水給水分岐路と、
前記海水給水路から前記海水給水分岐路に給水経路を切り替える海水給水切替手段と、
前記淡水給水路から分岐した淡水給水分岐路と、
前記淡水給水路から前記淡水給水分岐路に給水経路を切り替える淡水給水切替手段と、
前記海水排水路から分岐した海水排水分岐路と、
前記海水排水路から前記海水排水分岐路に排水経路を切り替える海水排水切替手段と、 前記淡水排水路から分岐した淡水排水分岐路と、
前記淡水排水路から前記淡水排水分岐路に排水経路を切り替える淡水排水切替手段と、
を備え、
前記海水流路および前記淡水流路に供給する海水と淡水とを入れ替え可能に構成したことを特徴とする請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の浸透圧発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−47012(P2009−47012A)
【公開日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−211376(P2007−211376)
【出願日】平成19年8月14日(2007.8.14)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000156938)関西電力株式会社 (1,442)
【出願人】(304021417)国立大学法人東京工業大学 (1,821)