説明

消化汚泥の脱水処理方法

【課題】 低コストで消化汚泥の脱水性を改善し、もって消化汚泥の減量に寄与する。
【解決手段】 有機性汚泥を嫌気的に消化処理する消化処理設備10から排出された消化汚泥12を酸化処理槽14で予備的に酸化する。この予備酸化した消化汚泥12Aを可溶化槽18に送り、二酸化塩素20を添加して当該消化汚泥12Aを可溶化する。この可溶化によって脱水性が向上した消化汚泥12Bを脱水機22に送って脱水する。二酸化塩素20の添加量を消化汚泥12のVSSに対し重量比で0.2〜1%とすることが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は消化汚泥の脱水処理方法に係り、特に有機性汚泥を嫌気的に消化処理する消化処理設備から排出された消化汚泥に対して好適な消化汚泥の脱水処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機性汚泥の減量化を目的とした嫌気的消化処理法が知られている。この方法では、有機性汚泥を消化槽内で嫌気的な環境下で36℃前後又は55℃前後に加温し、30日程度の滞留日数をかけて消化処理する。消化処理の結果、汚泥の一部がメタンガスを主成分とする消化ガスとして回収され、汚泥が減量する。しかしながら、この種の嫌気的消化処理法ではほとんどの場合、汚泥の減量率が50〜60%に留まっており、十分な減量効果を挙げていない。
【0003】
このため、この種の有機性汚泥を嫌気的に消化処理する消化処理設備からは微生物を主要成分とした消化汚泥が大量に発生する。このような消化汚泥は脱水後にそのまま最終処分場に埋立てるか、又は焼却処理することが一般に行われている。しかしながら、最終処分場は立地難の問題を抱えており、焼却処理の場合には処理設備の建設と運転に多大な費用がかかる。このため、消化汚泥の減量化が強く求められている。
【0004】
消化汚泥を減量化するための慣用手段は脱水処理であるが、消化汚泥は嫌気性微生物を主要成分とした粘稠質な汚泥であり脱水性が悪い。このような脱水性が悪い汚泥に対して無機凝集剤や高分子凝集剤を添加し、脱水性を改善した後に脱水する方法が周知である(例えば、特許文献1参照。)。また、難脱水性汚泥を酸やオゾンなどの可溶化剤によって可溶化し、脱水性を改善する方法も知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【0005】
しかしながら、上記の凝集剤を添加する方法は凝集剤の選択、添加条件が難しく、上記した消化汚泥の脱水性を飛躍的に改善させる有効な方法は見当たらない。また、難脱水性汚泥を可溶化する方法では可溶化のためにオゾンなどの可溶化剤を必要とするので、オゾン発生器などの設備費が高額になるとともに、オゾン発生のための電力費が大きくなるという問題点がある。
【0006】
特許文献3には、無機や有機性の汚泥の脱水性を向上させるために二酸化塩素を用いる方法が開示されている。この方法も上記の可溶化法の一種であり、消化汚泥の脱水性を比較的低コストで改善する目的に対して有効と考えられる。
【特許文献1】特開2000−15300号公報
【特許文献2】特開2000−117299号公報
【特許文献3】特開平10−57999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、本発明者が特許文献3に記載された方法を消化汚泥に適用したところ、二酸化塩素の必要添加量が予想外に多大となることが判明した。すなわち、消化処理設備で長日数、嫌気条件下に置かれた消化汚泥には酸化を受け易い有機分や金属が相当量含まれている。このため、消化汚泥に酸化剤である二酸化塩素を直接に添加した場合には、添加した二酸化塩素の相当量が酸化を受け易い有機分や金属の酸化のために消費される。その結果、脱水性の改善に利用されるべき二酸化塩素の量が減少する。このため、十分な脱水性の改善効果を得るためには高価な二酸化塩素の必要添加量が多大となり、運転コストの増大を招く。
【0008】
本発明の目的は上記従来技術の問題点を改善し、低コストで消化汚泥の脱水性を改善し、もって消化汚泥の減量に寄与することができる消化汚泥の脱水処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明に係る消化汚泥の脱水処理方法は、有機性汚泥を嫌気的に消化処理する消化処理設備から排出された消化汚泥を予備的に酸化した後に、前記消化汚泥に二酸化塩素を添加して当該消化汚泥を可溶化し、この可溶化した消化汚泥を脱水することを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係る消化汚泥の脱水処理方法は、前記二酸化塩素の添加量を前記消化汚泥のVSSに対し重量比で0.5〜1%とすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、消化汚泥中の酸化を受け易い有機分や金属はまず前段で予備的な酸化処理を受ける。したがって、その後に添加された二酸化塩素は無駄に消費される割合が減り、本来の目的である汚泥の可溶化のために利用される割合が多くなる。このことは、高価な二酸化塩素の有効活用を意味しており、低コストで消化汚泥を可溶化して脱水性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は本発明に係る汚泥の消化処理方法の第1実施形態を示す系統図である。消化処理設備10は下水処理場で発生した余剰汚泥などの有機性汚泥を嫌気的に消化処理する設備であり、有機性汚泥を30日程度の滞留日数をかけて消化処理する。消化処理の結果、消化処理設備10から消化汚泥12が排出される。この消化汚泥12はまず酸化処理槽14に供給される。この酸化処理槽14には次亜塩素酸ナトリウム水溶液16が添加され、消化汚泥12と次亜塩素酸ナトリウムとが混合、攪拌される。その結果、消化汚泥12中の酸化を受け易い有機分や金属が次亜塩素酸ナトリウムの作用によって酸化する。このため、比較的安価な次亜塩素酸ナトリウムにより消化汚泥12の予備的な酸化処理が行われる。
【0013】
酸化処理槽14を経た消化汚泥12Aは次に可溶化槽18に供給される。この可溶化槽18には二酸化塩素20が添加され、消化汚泥12Aと二酸化塩素20とが混合、攪拌される。二酸化塩素は強力な酸化剤であり、その酸化力によって消化汚泥中の微生物の細胞壁を破壊し微生物細胞内に含まれる細胞水を溶出させる。また、微生物の細胞外にまとっている粘性の高い高分子有機物が二酸化塩素の強力な酸化作用によって酸化分解され、汚泥の粘性を低下させる。その結果、可溶化槽18での処理を経た消化汚泥12Bの脱水性が向上する。前記したように前段の酸化処理槽14では消化汚泥12中の酸化を受け易い有機分や金属が既に次亜塩素酸ナトリウムによって予備的な酸化処理を受けている。したがって、可溶化槽18に添加された二酸化塩素は上記の酸化を受け易い有機分や金属の酸化に消費される割合が減り、本来の目的である可溶化処理のために利用される割合が多くなる。このことは、高価な二酸化塩素の有効活用を意味しており、消化汚泥12を低コストで可溶化し、その脱水性を向上させることができる。
【0014】
可溶化槽18で可溶化処理を受けた後の消化汚泥12Bは後段の脱水機22に送られ、脱水ケーキ24と脱離水26に分離される。上記したように消化汚泥12Bは前段の可溶化処理によって脱水性が向上しているので、脱水機22では効果的な脱水処理が可能となり、脱水ケーキの含水率を大幅に低減して減量化に大きく寄与する。なお、脱水にあたっては脱水機22に供給する消化汚泥12Bに必要に応じて脱水助剤を添加してもよい。
【0015】
二酸化塩素は沸点が11℃であるため常温ではガス体であり、水に対する溶解度が非常に大きい。したがって、可溶化槽18には二酸化塩素20をガス体で添加してもよいが、取り扱いの便を考慮すると水溶液として添加することが望ましい。図2は二酸化塩素水溶液を用いる場合の二酸化塩素供給装置を例示した系統図である。供給タンク28には所定の液位を維持するように二酸化塩素水溶液が張り込まれている。この供給タンク28に貯留した二酸化塩素水溶液を注入ポンプ30付きの注入管32から可溶化槽18に注入する。可溶化槽18では流入した消化汚泥12Aと二酸化塩素水溶液が攪拌機34によって均一に混合され、所望の可溶化処理が進行する。通常は消化汚泥12の流量に比例して二酸化塩素水溶液の添加率が一定となるように注入ポンプ30の駆動を制御する。
【0016】
二酸化塩素水溶液は反応性が高く分解も早い。したがって、貯留期間中にその酸化力が低下すると危惧される場合には、オンサイトにて二酸化塩素水溶液を製造することが好ましい。二酸化塩素は例えば化1に示した2液法や化2に示した3液法によって製造することができる。
【化1】

【化2】

【0017】
図2の供給タンク28の液位が所定値以下に達した段階で、そのつどオンサイトで製造した二酸化塩素水溶液を供給タンク28にこまめに供給すれば、二酸化塩素水溶液の貯留期間を短縮させることができる。したがって、常に酸化力の強い二酸化塩素を可溶化槽18に注入することができる。化2に示した3液法の場合には原料の一部である次亜塩素酸ナトリウム(NaClO)を前記酸化処理槽14で添加する次亜塩素酸ナトリウム用の貯留タンクから共用して引き出せるので便利である。
【0018】
二酸化塩素の添加量は前段における予備的酸化のレベルによって左右されるが、通常は消化処理設備10から排出される消化汚泥12のVSS(浮遊性強熱減量)に対し重量比で0.2〜1%にすることが好ましい。二酸化塩素の添加量が0.2%以下では可溶化処理が不十分となる。また、1%を越えると可溶化槽18から排出される消化汚泥12B中に二酸化塩素が残存し、後段の脱水機22の構成材料を腐食させるなどの悪影響を及ぼす。
【0019】
上記二酸化塩素の添加量は前段の予備的な酸化処理をしない場合に比べて約2分の1で済む。すなわち、予備的な酸化処理をせずに、消化汚泥12に直接に二酸化塩素を添加し、本実施形態と同レベルの可溶化を達成しようとすると可溶化槽18に流入する消化汚泥12のVSSに対して重量比で1〜2%程度の二酸化塩素の添加が必要である。本実施形態の上記二酸化塩素の添加量0.2〜1%はその半分程度である。したがって、本実施形態の方法によれば、前段の予備的な酸化処理に要する諸費用を配慮しても、消化汚泥を可溶化するための処理コストを少なくとも2〜3割程度、削減することができる。
【0020】
図3は本発明に係る汚泥の消化処理方法の第2実施形態を示す系統図である。図3において図1と同一の符号を付した要素は第1実施形態と同様の要素であり、説明を省略する。本実施形態では可溶化槽18と脱水機22との間に中和槽40が配設されている。この中和槽40では流入した消化汚泥12Bに対して亜硫酸ナトリウムなどの還元剤42が添加される。すなわち、可溶化槽18では可溶化処理を安定に促進させるために、やや過剰の二酸化塩素を添加する場合が多い。しかしながら、この場合には可溶化槽18から流出した消化汚泥12B中に過剰分の二酸化塩素が残存することになり、このような消化汚泥12Bをそのまま脱水機22に送ると、前記したように脱水機22の構成材料を腐食させるなどの悪影響を及ぼす。そこで、中和槽40では流入した消化汚泥12Bに還元剤42を添加し、残存した二酸化塩素を中和する。還元剤42の添加量は例えば中和槽40に流出入する消化汚泥の酸化還元電位に基いて調節すればよい。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る汚泥の消化処理方法の第1実施形態を示す系統図である。
【図2】二酸化塩素水溶液を用いる場合の二酸化塩素供給装置を例示した系統図である。
【図3】本発明に係る汚泥の消化処理方法の第2実施形態を示す系統図である。
【符号の説明】
【0022】
10……消化処理設備、12……消化汚泥、14,14A……酸化処理槽、16……次亜塩素酸ナトリウム水溶液,18……可溶化槽、20……二酸化塩素、22……脱水機、24……脱水ケーキ、26……脱離水、28……(二酸化塩素の)供給タンク、30……注入ポンプ、32……注入管、40……中和槽、42……還元剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性汚泥を嫌気的に消化処理する消化処理設備から排出された消化汚泥を予備的に酸化した後に、前記消化汚泥に二酸化塩素を添加して当該消化汚泥を可溶化し、この可溶化した消化汚泥を脱水することを特徴とする消化汚泥の脱水処理方法。
【請求項2】
前記二酸化塩素の添加量を前記消化汚泥のVSSに対し重量比で0.2〜1%とすることを特徴とする請求項1に記載の消化汚泥の脱水処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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