説明

消火装置

【課題】消火作業に慣れていない一般人であっても、用意されている装置と部材を用いるだけで、火災発生直後の初期消火を確実に行うことのできる消化装置を提供する。
【解決手段】本発明の消化装置1は、収容する圧縮空気を噴射可能な圧縮空気タンク2と、圧縮空気タンク2から噴射される圧縮空気を受けることができるように圧縮空気タンク2に接続し、内容物を封入した消火ボール10に圧縮空気による圧力を加える加圧部3と、加圧部3に接続され、加圧部3での圧力を受けて移動を開始する消火ボール10を先端に案内する案内筒4と、案内筒4を移動する消火ボール10の外殻を破砕可能な破砕手段9と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の人間が使用できる消火装置であって、特に、近距離の火災の初期消火に適した消火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、都市の過密化や集合住宅の増加に伴い、火災の発生が増えている。また、放火も増加傾向にあり、都市部における不審火も増加している。このような火災においては、火災発生時の初期消火および消防隊による消火作業によって、鎮火される。
【0003】
初期消火においては、多くの場合消火器が用いられる。多くの住居や集合ビルなどには、消火器の設置が義務付けられているからである。しかしながら、消火器の能力には限界があり、多くの火災においては対応が困難である。また、室内の簡単な出火に対しての室内からの簡単な対応は可能であるが、消火器は、室外からの消火には不向きである。消火器は、例えば台所の調理油からの出火など、限られた用途に限定される。
【0004】
消防隊による消火作業は、火災の消火においては当然にもっとも重要である。しかしながら、都市型の火災の場合には、交通混雑、道路が狭いなどの事情、頻発する出動要請に対応できないキャパシティなど、消防隊が火災発生後に現場に短時間で到着することはますます難しくなっている。消防隊が現場に到着するまでには、火災規模が大きくなってしまい、消火作業に時間がかかることはもちろん、火災被害も大きくなってしまう。
【0005】
また、消防隊による消火作業は、消火栓などから消火用の水を得る必要があるが、都市部の火災では、消火栓を探すのが難しかったり、消防車が狭い道路に入りにくく消火栓をつなぐことが難しかったりする。特に、消防隊が到着するときには、火災規模が大きくなっていることが多いので(上述のように、交通混雑、道路事情などによって到着が遅くなりがちであるので)多くの消火栓を確保することが求められる。しかしながら、道路事情や建物との距離や角度によって、消火栓の確保が困難となることも多い。消火栓の確保に手間取ると、火災被害が大きくなってしまう。
【0006】
このように、都市型の火災が多い現代では、消防隊の到着までに火災規模を抑えたり、消火できたりする初期消火が重要となっている。(1)消防隊の到着の遅れ、(2)消火栓等の確保の困難、といった問題によって、消防隊による消火作業の開始が遅くなる傾向があるからである。これに対して、消火初期消火が十分であれば、消防隊の到着が遅れても火災規模の拡大が防止でき、火災被害を最小限に食い止めることができる。
【0007】
現代の都市型火災に対しては、初期消火の重要性がますます高まっているが、汎用の消火器では十分な初期消火に対応できない問題がある。また、消防隊員や消防団員のような消防のプロではなく、火災発生時に現場にいる一般人が初期消火できることが求められている。
【0008】
このような状況において、消防車ではなく、簡便な装置で消火用の水を放水する技術(例えば、特許文献1、特許文献2、特許文献3参照)が提案されたり、消火剤を封入した消火弾を発射する装置(例えば、特許文献4、特許文献5参照)が提案されたりしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2003−339898号公報
【特許文献2】特開2006−262326号公報
【特許文献3】特開2010−109778号公報
【特許文献4】特開2010−154202号公報
【特許文献5】特開2007−213121号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1〜特許文献3は、消火剤として水を噴射する消火装置を開示する。特許文献1は、貯留している水に電界を付与して霧状態にして火災に噴霧する消火装置を開示する。水のままであるよりも噴霧状態であることで、火災の広がりを抑えることができる。
【0011】
しかしながら、特許文献1の技術は、貯留している水に電界を付与する必要があり、消火装置が大掛かりになる問題がある。電界付与して霧状にした水を噴霧する手順は、一般人にとっては複雑であり、作業を滞りなく進めることが難しい。当然ながら、火災の時には精神的にパニックになっていたり焦燥感を感じていたりするのであるから、消防のプロでない一般人が、特許文献1に開示される複雑な消火装置を活用することは難しい。
【0012】
また、特許文献1に開示される消火装置は、タンクに水を貯留するために、消火栓に接続される必要がある。このため、特許文献1の消火装置は、火災発生現場に居る一般人が初期消火を行うのには適していない。
【0013】
特許文献2は、消化液を充填したポリタンクをカートリッジとして用いるバズーカタイプの消火装置を開示する。バズーカタイプの構成を有しているので、一般人が抱えて使用することができる。この点では、特許文献1に開示される消火装置と異なり、大掛かりな操作を必要としない。特許文献3も、特許文献2と同様の消火装置を開示する。
【0014】
しかしながら、特許文献2、3に開示される消火装置は、バズーカタイプであるので、使用者が肩に抱えるなどする必要があり、負担が大きい。長時間の使用には不向きである。道路や地面に設置して使用するのには、噴出対象となる火災現場への方向調整などもあり、困難を伴う。また、ポリタンクの水がなくなってしまうと、ポリタンクに水を供給する必要があり、結局、消火栓や水道を探さなくてはならない。
【0015】
消防隊員や消防団員のような消防のプロではない一般人は、火災現場において消火栓や水道を探したり確保したりすることは難しく、特許文献2、3に開示される消火装置は、プロにしか使いこなせない問題がある。あるいは、一般人は、ポリタンクに充填されている水の量だけを消火に用いることが限界である問題がある。
【0016】
特許文献4、5は、消火剤を封入した消火弾を発射して、火災現場に着弾させて火災を消火する消火装置を開示する。特許文献4,5に開示される消火装置は、消火弾をそのままで発射するのであるから、火災現場で消火弾を破壊させる必要がある。火災現場と消火装置との距離関係、位置関係は、火災の状況によって様々である。例えば、広い道路や川などの対岸の建物において火災が発生している場合には、火災現場と消火装置との距離が遠くならざるを得ない。逆に、火災現場の周囲が建物で囲われている場合には、火災現場と消火装置との距離は近くならざるを得ない。
【0017】
消火弾の外形は、樹脂等で形成されていることが多いが、衝撃の大きさによって割れたり割れなかったりする。このため、特許文献4,5に開示される消火装置が消火弾を発射する場合に、火災現場に着弾しても消火弾が割れなかったり、着弾前に割れてしまったりして、確実に消火できない問題もある。火災現場で確実に消火弾が破壊されるように消火弾を発射するのは、一般人にとっては難しい問題がある。
【0018】
更には、消火弾を着弾時に確実に破壊するには、消火装置と火災現場との距離が大きいことが必要であるので、特許文献4、5に開示される消火装置は、近距離の火災には不向きである。消火弾が火災現場で割れない場合には、消火が実現されない問題がある。
【0019】
特許文献4、5のような消火弾を発射する消火装置は、消防隊員や消防団員のような消火のプロが、消防車などを活用しにくい火災の消火作業に用いることを想定している。
【0020】
以上のように、従来技術の消火装置は、次のような問題を解決できない。
(問題1)消防隊員や消防団員のような消火のプロではなく、火災が発生した場所に居る一般人でも、容易に取り扱うことができない。
(問題2)火災が発生した場合に、火災現場が近距離の場合でも長距離の場合でも対応して消火することができない。
(問題3)消火栓や水道などの確保をしなければならず、初期消火に適していない。
(問題4)早期の初期消火によって、火災規模の拡大を抑えることができない。
【0021】
本発明は、上記課題に鑑み、消火作業に慣れていない一般人であっても、用意されている装置と部材を用いるだけで、火災発生直後の初期消火を確実に行うことのできる消化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0022】
上記課題に鑑み、本発明の消化装置は、収容する圧縮空気を噴射可能な圧縮空気タンクと、圧縮空気タンクから噴射される圧縮空気を受けることができるように圧縮空気タンクに接続し、内容物を封入した消火ボールに圧縮空気による圧力を加える加圧部と、加圧部に接続され、加圧部での圧力を受けて移動を開始する消火ボールを先端に案内する案内筒と、案内筒を移動する消火ボールの外殻を破砕可能な破砕手段と、を備える。
【発明の効果】
【0023】
本発明の消火装置は、小型かつ簡便な装置であるので、建造物や集合ビルの入居テナントのそれぞれあるいは共同で保有しておくことが容易である。更には、消火に必要な消火剤を封入した消火ボールも、予め多量に保有しておくことが容易である。また、本発明の消火装置は、消火ボールを投入して発射するだけであるので、一般人であっても簡単に使用できる。また、消火ボールだけで消火を行うことができるので、消火栓や水道を確保する必要がない。
【0024】
これらが相まって、本発明の消火装置は、火災が発生した現場およびその直後に、初期消火を行うことができる。消火ボールは、消火弾として活用することもできるので、火災現場との距離によって、放水と投擲とを分けることができ、様々な火災に対応可能である。更には、消火ボールは、手で使用することもできるので、消火装置以外に利用することもでき、この結果、予め多くの消火ボールを保有しておくモチベーションも高まる。このため、火災発生時に、消火栓や水道の確保ができなくても、消火剤が不足することが少ない。
【0025】
また、本発明の消火装置は、火災現場の外部から使用することもできるので、消火器のような使用者への危険性も少なくなり、火災現場の一般人が使用するモチベーションが更に高まる。この点からも、初期消火が迅速に行われ、火災規模の拡大を防止できる。
【0026】
結果として、最適な状態で、消防隊の消火作業に引き継ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施の形態1における消火装置の模式図である。
【図2】本発明の実施の形態1における内容物の放出によって火災が消火される状態を示す説明図である。
【図3】本発明の実施の形態1における消火装置の模式図である。
【図4】本発明の実施の形態1における突出部材の斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態2における消火装置の模式図である。
【図6】本発明の実施の形態2における発射モードでの消火を説明する説明図である。
【図7】本発明の実施の形態3における案内筒の内面図である
【図8】本発明の実施の形態3における案内筒の側面図である。
【図9】本発明の実施の形態3におけるアタッチメントを備える案内筒の側面図である。
【図10】発明の実施の形態3にけるアタッチメントを備える案内筒の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の第1の発明に係る消火装置は、収容する圧縮空気を噴射可能な圧縮空気タンクと、圧縮空気タンクから噴射される圧縮空気を受けることができるように圧縮空気タンクに接続し、内容物を封入した消火ボールに圧縮空気による圧力を加える加圧部と、加圧部に接続され、加圧部での圧力を受けて移動を開始する消火ボールを先端に案内する案内筒と、案内筒を移動する消火ボールの外殻を破砕可能な破砕手段と、を備える。
【0029】
この構成により、消火装置は、消火ボールを投入するだけで、水や消火剤を放出して消化を行える。結果として、初期消火が効果的に行われる。
【0030】
本発明の第2の発明に係る消火装置では、第1の発明に加えて、破砕手段によって消火ボールの外殻を破砕する放出モードと、破砕手段による破砕を生じさせない発射モードと、を切り替えるモード切替手段を更に備える。
【0031】
この構成により、消火装置は、火災の特性に合わせて、内容物を放出したり、消火ボールを発射したりできる。
【0032】
本発明の第3の発明に係る消火装置では、第2の発明に加えて、放出モードが選択される場合には、案内筒の先端から、消火ボールに封入されている内容物が放出される。
【0033】
この構成により、火災に対して、直接的に水や消火剤を浴びせることができる。
【0034】
本発明の第4の発明に係る消火装置では、第2の発明に加えて、発射モードが選択される場合には、案内筒の先端から、消火ボールが発射される。
【0035】
この構成により、距離のある火災現場に、消火ボールを投擲できる。
【0036】
本発明の第5の発明に係る消火装置では、第1から第4のいずれかの発明に加えて、破砕手段は、案内筒を移動する消火ボールに電気的衝撃、物理的衝撃および化学的衝撃の少なくとも一つを付与する。
【0037】
この構成により、破砕手段は、確実に消火ボールの外殻を破砕できる。
【0038】
本発明の第6の発明に係る消火装置では、第5の発明に加えて、破砕手段は、案内筒の内側に突出可能であって、案内筒を移動する消火ボールに接触可能な突出部材である。
【0039】
この構成により、破砕手段は、確実に消火ボールの外殻を破砕できる。
【0040】
本発明の第7の発明に係る消火装置では、第6の発明に加えて、放出モードが選択される場合には、突出部材が、案内筒の内側であって案内筒を移動する消火ボールに接触可能な位置にまで突出する。
【0041】
本発明の第8の発明に係る消火装置では、第6の発明に加えて、発射モードが選択される場合には、突出部材は、案内筒の内側であって案内筒を移動する消火ボールに接触できない位置にある。
【0042】
これらの構成により、突出部材は、容易に放出モードと発射モードとを切り替えられる。
【0043】
本発明の第9の発明に係る消火装置では、第5の発明に加えて、破砕手段は、加圧部が、消火ボールの外殻の耐久度を超える圧力を加える。
【0044】
この構成により、放出モードにおいて、消火ボールの外殻が容易に破砕される。
【0045】
本発明の第10の発明に係る消火装置では、第1から第8のいずれかの発明に加えて、案内筒は、その内側に溝を有しており、溝は、消火ボールの外殻が破砕されて放出される内容物を、拡散もしくは収束させる。
【0046】
この構成により、消火装置による消火効率が更に上がる。
【0047】
本発明の第11の発明に係る消火装置では、第10の発明に加えて、溝は、表面に露出する形状を変更可能である。
【0048】
この構成により、消火装置は、高いフレキシビリティを有する。
【0049】
本発明の第12の発明に係る消火装置では、第1から第11のいずれかの発明に加えて、加圧部に対向する位置に、消火ボールを投入する投入部を更に備える。
【0050】
この構成により、消火装置は、一般人にとっても、容易に使用される。
【0051】
本発明の第13の発明に係る消火装置では、第12の発明に加えて、案内筒に突出部材が突出する場合に得られる内径よりも大きな直径を有する消火ボールと、該内径よりも小さな直径を有する消火ボールとが、投入部に投入可能である。
【0052】
この構成により、消火ボールの大きさによって、放出モードと発射モードとを切り替えることができる。
【0053】
以下、図面を用いて、本発明の実施の形態について説明する。
【0054】
(実施の形態1)
【0055】
実施の形態1について説明する。
(全体概要)
まず、実施の形態1における消火装置の全体概要について説明する。図1は、本発明の実施の形態1における消火装置の模式図である。図1は、消火装置を側面から見た状態を示している。消火装置1は、内容物を収容した消火ボールを用いて、火災現場における初期消火を実行する。なお、消火装置1は、初期消火に使用されることが好適であるが、初期消火に限定して用いられるわけではない。消火装置1の使用される状態によって、本発明の権利範囲が限定されるものではない。
【0056】
消火装置1は、内容物を収容した消火ボールを、加圧から発射の間にその外殻を破砕して、内容物を先端から放出したり、内容物を収容した消火ボールをそのまま先端から発射したりする。内容物が消火機能を有する場合には、消火装置1は、内容物の放出や消火ボールの発射によって、火災を消火する。
【0057】
消火装置1は、圧縮空気タンク2、加圧部3、案内筒4および破砕手段9を備える。圧縮空気タンク2は、圧縮空気を収容でき、収容している圧縮空気を噴射可能である。加圧部3は、圧縮空気タンク2に接続されており、圧縮空気タンク2から噴射される圧縮空気による圧力を、消火ボール10に加える。もちろん、加圧部3に消火ボール10以外が設置されれば、加圧部3は、消火ボール10以外の物体に圧力を加える。
【0058】
案内筒4は、加圧部3に接続されて、消火ボール10の移動(射出)を案内する。すなわち、案内筒4は、加圧部3での圧力を受けて移動を開始する消火ボール10を、案内筒4の先端に向けて案内する。消火ボール10は、加圧部3での圧力を受けて、この案内筒4内部を移動する。破砕手段9は、案内筒4を移動する消火ボール10の外殻を破砕可能である。破砕可能であるので、常に破砕するのではなく、必要に応じて(使用者の設定に応じて)破砕する。案内筒4の先端には射出口42が存在するが、ここで言う先端とは、射出口42を含んだ、案内筒4の先の領域を言う。当然ながら、破砕手段9で消火ボール10の外殻が破壊された場合には、消火ボール10は射出口42まで到達できないのであるから、案内筒4は、消火ボール10を必ずしも射出口42まで案内するわけではなく、先端方向に案内するということである。消火ボール10がそのまま発射される場合には、案内筒4は、消火ボール10を射出口42まで案内する。
【0059】
案内筒4は、設置位置41と射出口42を有する。設置位置41と射出口42のそれぞれは、案内筒4と接続する筒状の部材によって形成されても良い。設置位置41は、消火ボール10が設置される位置であり、消火ボール10に対して加圧部3が圧力を加える位置である。また、後述の投入部から消火ボール10が投入される場合には、消火ボール10は、この設置位置41に設置される。
【0060】
また、消火装置1は、案内筒4やその他の要素を支えつつ、消火装置1を移動させたり設置させたりするための台座6を備えている。台座6は、消火装置1全体を安定させて立脚させるので、一般人である使用者は、台座6で安定的に立脚する消火装置1を容易に使用できる。また、台座6は、車輪を備えていることで、使用者は消火に最適な場所に簡単に移動させることができる。従来技術のバズーカタイプの消火装置では、使用者が重たい装置を担いで運搬したり使用したりする必要があったが、実施の形態1の消火装置1は、このような手間や負担が少ない。もちろん、台座6が車輪を備えておらず、車輪のある台車に搭載されることでも良い。
【0061】
また、圧縮空気タンク2と加圧部3とは、圧縮空気の送り込みのための連絡路5を有していてもよい。圧縮空気タンク2と加圧部3とは、圧縮空気の送り込みができればよいのであるが、消火装置1の全体の構造上の特徴などによっては、連絡路5が設けられることもある。
【0062】
また、消火装置1は、操作ダイヤル11と操作ボタン12を備えている。図1においては、圧縮空気タンク2に操作ダイヤル11と操作ボタン12が備わっているように表されているが、案内筒4に備えられても良いし、電気ケーブルで接続された操作卓に備えられても良い。
【0063】
操作ダイヤル11は、後述の放出モードと発射モードの切り替えを行ったり、発射の際の圧力の調整を行ったり、発射間隔の調整を行ったりする。使用者は、操作ダイヤル11を操作して、操作ボタン12によって、発射等を実行する。
【0064】
(内容物の放出による消火)
次に、内容物の放出による消火について説明する。
【0065】
消火ボール10は、加圧部3で圧力を加えられることで、案内筒4内部を矢印Aに沿って移動する。圧縮空気の圧力を受けているので、高速に移動できる。消火ボール10は、案内筒4を移動する際に、破砕手段9によって、その外殻が破砕される。破砕手段9は、例えば突出部材である。案内筒4内部を高速で移動する消火ボール10は、この突出部材と接触して、その外殻が破砕される。
【0066】
消火ボール10の外殻が破砕されれば、消火ボール10の内容物が吐出される。消火ボール10に圧力が加えられた後で、消火ボール10の外殻が破砕されるので、吐出する内容物はその勢いを保っており図1に示されるように、案内筒4の先端42から内容物100が放出される。特に、放出される際には、拡散しつつも集中した状態で、内容物100は、対象である火災に到達する。消火ボール10が収容している内容物は、消火剤、鎮火剤、鎮静剤、水、染料および顔料の少なくとも一つである。これらの内容物が、消火ボール10の破砕によって、射出口42から放出されることで、火災を消火できる。
【0067】
消火ボール10が案内筒4内部で破砕されて、内容物100が火災に放出されることで、消火ボール10が着弾の際に割れないなどで、消火剤などの内容物100の効果が得られない問題はない。消火剤や水などの内容物100は、その状態で火災に到達して、消火機能を発揮するからである。また、加圧部3および案内筒4を消火ボール10が移動した後での、破砕による内容物100の放出であるので、内容物100は、通常の放水よりも距離、角度、照準を十分に有して、火災に到達できるメリットもある。
【0068】
図2は、本発明の実施の形態1における内容物の放出によって火災が消火される状態を示す説明図である。図2は、家屋50で火災が発生している状態を示しており、家屋50の火災60に対して、消火装置1が内容物100を放出する状態を示している。消火装置1の射出口42から、消火ボール10が破砕して吐出する内容物100が放出されている。この放出される内容物100は、高速に移動する消火ボール10の勢いを有しているので、火災60に向けて強い勢いをもって到達できる。内容物100は、水や消火剤を含んでいるので、火災60を消火できる。もちろん、内容物100は、霧状になって噴霧されるごとく放出されることもありえる。この場合には、内容物100が拡散しながら放出される。放出は、内容物100の特性に応じて、霧状の噴霧であったり、液体の発射であったり、粉体の拡散であったりする。
【0069】
また、消火ボール10が次々に投入されるだけで、射出口42から消火剤や水などが火災に向けて放出される。このため、消火栓や水道を確保する必要がなく、予め用意されていた消火ボール10が投入されるだけで、消火装置1は消火を行える。加えて、消火装置1は、強い勢いと正しい照準で内容物100を放出できるので、使用者には熟練が不要であるし、火災60と一定の距離を保って作業することもできる。この安心感によって、消防隊員や消防団員ではない一般人が、火災発生直後に、消火装置1を用いて初期消火の作業を行える。もちろん、消火栓や水道を確保したりつないだりする必要がないことは、使用者の手間や負担を軽減できると共に火災60と消火装置1との位置関係の最適な確保も実現できる。
【0070】
また、消火ボール10は、通常の消火弾として利用されたり、犯罪対策用のカラーボールとして利用されたりすることもできるので、様々な場所において、消火ボール10を保有しておくモチベーションが高い。このため、消火装置1と合わせて消火ボール10を多量に保有している可能性が高く、消火装置1が消火の際に用いられる場合には、保有されている消火ボール10が次々と投入されれば良いことになる。これは、消火栓や水道の確保、あるいは水道からカートリッジに水を汲むなどの作業を不要とできる。
【0071】
すなわち、実施の形態1の消火装置1は、次のようなメリットを提供できる。
(1)一般人でも簡単に操作できる。
(2)消火栓や水道の確保といった手間がないので、火災発生直後に消火活動を開始できる。消火開始が早いことで、火災規模の増加を効果的に抑えられる。
(3)消火ボール10が着弾時に破砕しないなどのリスクや不安を回避でき、確実に消火できる。
(4)火災現場に居る一般人による初期消火が効果的に行われることで、消防隊などの到着後による確実な消火作業も効率的かつ確実になり、火災被害が抑えられる。
【0072】
次に、各部の詳細について説明する。
【0073】
(圧縮空気タンク)
圧縮空気タンク2は、圧縮空気を収容し、加圧部3に所定のタイミングで圧縮空気を噴射する。圧縮空気は、空気ボンベから供給されたり、コンプレッサーを用いて取り込んだ空気を圧縮したりして供給されたりする。圧縮空気タンク2は、このような経路で供給される圧縮空気を収容しておく。消火装置1は、その外形となる筐体に操作ボタン12や操作ダイヤル11を有しており、使用者は、これら操作ボタン12や操作ダイヤル11を操作することで、消火ボール10を発射(内容物100を放出)するために圧縮空気タンク2の圧縮空気の噴射を実行する。なお、ここで説明する操作ボタン12や操作ダイヤル11の操作は、一例であり、実際には消化装置1の仕様や作りこみによって種々の例があればよい。
【0074】
例えば、操作ダイヤル11は、圧縮空気の圧力の値を調整するのに用いられる。使用者が操作ダイヤル11を、その目盛りに合わせて調整することで、圧縮空気タンク2の圧縮空気の圧力を調整できる。また、消火ボール10の発射や発射角度などを調整するのに用いられる。使用者は、操作ボタン12を用いて、消火ボール10の加圧部3から案内筒4への射出を実行する。
【0075】
圧縮空気タンク2は、圧縮空気を収容可能な構造や機能を有するので、内部が中空であって圧力に耐えられる形状や構造を有する。例えば、圧力に耐えられるように金属や合金などの耐久性の高い素材で形成されることも好適である。一例として空気ボンベと同様の素材や構造を有している。また、消火装置1全体の形状や大きさに合わせた形状や大きさを有していることが好適であり、使用の態様を考慮すると、消火装置1の後方に位置することが適当である。
【0076】
また、圧縮空気タンク2は、圧縮空気を加圧部3に噴射するために噴射口を供えていることも好適である。すなわち、圧縮空気タンク2は、使用者の操作ボタン12の操作に基づいて瞬間的に開口して収容する圧縮空気を噴射する噴射口を備えている(噴射口は、図示せず)。噴射口は、圧縮空気を瞬間的に噴射して消火ボール10に十分な圧力を付与するために、操作ボタン12からの操作に連動して瞬間的に開口する機構を備えている。噴射口から圧縮空気が噴射されることで、加圧部3に設置される消火ボール10に圧力が付与される。
【0077】
また、圧縮空気タンク2と加圧部3とは直接的に接続されていても良いし、図1に示されるように連絡路5によって接続されていても良い。直接的に接続されている場合には、噴射口から噴射される圧縮空気は、直接的に加圧部3に導入されて消火ボール10に噴射される。一方、連絡路5によって接続される場合には、噴射口から噴射される圧縮空気は、連絡路5を通じて消火ボール10に噴射される。いずれの場合であっても消火ボール10には、圧縮空気が噴射されて圧縮空気による圧力が付与される。連絡路5があることで、圧縮空気タンク2の設置位置の自由度が高まるメリットがある。また、図示はしていないが、発射バルブが加圧部3と圧縮空気タンク2との間に存在し、発射バルブの作用によって、圧縮空気が加圧部3に送り込まれても良い。
【0078】
また、圧縮空気タンク2は、連続的に圧縮空気を加圧部3に噴射できるように、噴射後に空気ボンベやコンプレッサーを通じて圧縮空気が供給される。圧縮空気タンク2は、取り外し可能になっており、発射する消火ボール10の種類に応じた圧縮空気タンク2が取り付けられることも好適である。また、圧縮空気タンク2は、案内筒4などと共に、台座6に接続して設置されていることが好適である。台座6によって設置されることで、消火装置1全体が安定して操作できるようになるからである。
【0079】
(加圧部)
【0080】
加圧部3は、設置位置41に設置された消火ボール10に、噴射される圧縮空気による圧力を付与する。また、図には示していないが、圧縮空気タンク2と加圧部3との間には、発射バルブが備わっており、この発射バルブによって、圧縮空気タンク2から一つの消火ボール10を射出するだけの圧縮空気が加圧部3に投入される。このため、圧縮空気タンク2には、一つの消火ボール10を射出するに対応する量の圧縮空気が収容される。圧縮空気タンク2は、ボール一つ分の圧縮空気を排出すると、新たに空気の供給を受けて、圧縮空気を収容する。
【0081】
加圧部3は、圧縮空気タンク2と接続しつつ案内筒4とも接続し、設置位置41において消火ボール10を設置する。このため、加圧部3は、内部空間を有しており、消火ボール10が加圧部3から案内筒4に移動できる筒状であることが好ましい。また、加圧部3は、案内筒4に接続する筒状の部材であり、消火ボール10の直径と同径の内径を有して、消火ボール10によって密閉される構造であることが好ましい。
【0082】
加圧部3は、設置位置41に消火ボール10を設置するための、投入部7を更に備えても良い。
【0083】
図3は、本発明の実施の形態1における消火装置の模式図である。図3に示される消火装置1は、設置位置41に消火ボール10を設置するための(消火ボール10を供給するための)投入部7を備えている。この投入部7を通じて、使用者は消火ボール10(内部に内容物が収容されている)を、設置位置41に供給する。投入部7は、加圧部3に接続する部分にシャッターを有しており、シャッターが開くことで、投入部7から消火ボール10が加圧部3に投入される。このとき、シャッターは、加圧部3から消火ボールが射出されたことを認識して開き、次の消火ボール10が加圧部3に投入される。もちろん、連続的に消火ボール10が投入されてもよい。
【0084】
投入部7は、加圧部3の筐体に接続しており、加圧部3の内部空間につながっている。このため、投入部7の投入口71から消火ボール10が投入されると、投入された消火ボール10は、投入部7の内部空間を移動して加圧部3に入り込み、設置位置41において停止する。設置位置41には単体の消火ボール10のみが設置されるので、次の消火ボール10は、設置位置41に到達せず投入部7に残る。例えば、投入部7と加圧部3との接続部分は、開閉可能なドアやシャッターを備えており、このドアやシャッターによって消火ボール10は投入部7に留まる。このドアやシャッターが開くことで投入部7から加圧部3へ消火ボール10が供給される。すなわち、常に一つの消火ボール10が、設置位置41に供給されて設置される。加圧部3で圧縮空気が噴射されて消火ボール10が発射されると、投入部7のドアやシャッターが開いて、次の消火ボール10が設置位置41に供給される。
【0085】
あるいは、設置位置41は、センサーを備えておき、このセンサーが設置位置41に消火ボール10が設置されたことを認識すると、加圧部3は、自動的に圧力を付与して消火ボール10を案内筒4に射出する。射出後に、投入部7のドアやシャッターが開いて、次の消火ボール10の供給を可能とする。
【0086】
投入部7は、必要に応じて設けられれば良く、加圧部3に設けられた開口部から一つずつ手作業で消火ボール10が投入される構成であっても良い。
【0087】
加圧部3は、設置された消火ボール10に、噴射される圧縮空気の圧力を効果的に付与するために、加圧部3の内部空間は、消火ボール10の形状および大きさに合わせた形状や大きさを有することが適当である。すなわち、消火ボール10が球形である場合には、加圧部3の内部空間は円形の断面を有する筒状であることが好適である。また、噴射される圧縮空気が消火ボール10の周囲から案内筒4に漏れ出てしまわないように、加圧部3の内部空間は、消火ボール10の直径に略等しい(但し、消火ボール10が移動可能な程度の隙間を有している)ことも好適である。このような形状や大きさを有していれば、消火ボール10に対して、加圧部3は効果的に圧力を付与できる。
【0088】
また、加圧部3は、消火ボール10の大きさの変化に合わせて、その内径を変化可能であることも好適である。例えば、収縮リングなどを内面に備えており、この収縮リングの収縮や拡張に合わせて、加圧部3の内径が変更される。
【0089】
このように、加圧部3は、設置位置41に設置された消火ボール10に、噴射される圧縮空気による圧力を効果的に付与する。
ここで、設置位置41は、消火ボール10を安定的に設置できるように構成されており、消火ボール10を弱めに固定できる。例えば、設置位置41は、圧縮空気タンク2の噴射口と一体で形成されている開口可能なドアであり、この噴射口に寄りかかって消火ボール10は固定される。圧縮空気タンク2から圧縮空気が噴射される際にこの噴射口が開口し、開口される瞬間に消火ボール10に圧縮空気が噴射される。この結果、消火ボール10には圧力が加わり、案内筒4にかけて移動できる。また、加圧部3は、案内筒4と別体で成型されても良いし、一体で成型されても良い。また、機能に着目して加圧部3と案内筒4とを区別した要素として説明しているが、物理的・視覚的に別体として把握されなければならないわけではない。
【0090】
(案内筒)
【0091】
次に、案内筒4について説明する。
【0092】
案内筒4は、加圧部3で圧縮空気の圧力によって移動を開始した消火ボール10を、先端に向けて移動させる。案内筒4は、先端に向けて移動させるが、消火ボール10の外殻が破砕手段9で破砕される場合には、消火ボールは射出口42から発射されず、図1、図2のように、内容物100が放出される。あるいは、破砕手段9で消火ボール10の外殻が破砕されない場合には、射出口42から消火ボール10がそのまま発射される。すなわち、案内筒4は、消火ボール10を先端方向(射出口42までの場合もあるしその手前の場合もある)に向けて案内する。
【0093】
また、案内筒4は、消火ボール10を先端に向けて移動させる過程で、消火ボール10を加速する。消火ボール10は、加圧部3で受ける圧縮空気の圧力だけでなく、案内筒4を移動する間に加速されて、その発射時の速度を高める。これは、銃のバレル内部を移動する過程で、銃弾が加速することと同様である。
【0094】
案内筒4は、消火ボール10を案内するので、その方向や角度によって、放出される内容物100の方向や角度(あるいは到達距離)や発射される消火ボール10の方向や角度(あるいは到達距離)を決定できる。このため、案内筒4は、上下左右に角度を変更することが可能である。また、場合によってはその長さを伸縮させることも可能である。案内筒4の長さによって、内容物100や消火ボール10の到達距離が変化するからである。
【0095】
例えば、消火装置1に対して火災60の位置が下向きであれば、案内筒4の先端を下向きにし、消火装置1に対して火災60の位置が上向きであれば、案内筒4の先端を上向きに調整すれば良い。
【0096】
また、案内筒4は、加圧部3で付与された圧縮空気の圧力を利用して、その内部において高速に消火ボール10を移動させる。すなわち、消火ボール10は、加圧部3で圧縮空気の圧力を付与されるだけでなく、案内筒4においても圧縮空気の圧力を受けている。圧縮空気タンク2から噴射された圧縮空気は、加圧部3を基点に案内筒4内部でも伝わっていく。すなわち、圧縮空気は、加圧部3から案内筒4にかけて、消火ボール10を押し出す役割を果たす。圧縮空気が加圧部3から案内筒4にかけて消火ボール10を押し出すことで、消火ボール10は、案内筒4内部においても加速度を受けて速度を増していく。この結果、消火ボール10が破砕手段9で破砕される場合でも、飛び出す内容物100は、強い勢いを有しており、火災60に向けて十分な勢いを持って到達できる。もちろん、消火ボール10がそのままで発射される場合でも、火災60に向けて十分な勢いを持って到達できる。
【0097】
案内筒4は、消火ボール10が移動できる内部空間を有していることが好適である。特に、加圧部3と同様に、消火ボール10の形状や大きさに対応した内部空間を有していることが好適である。このため、案内筒4は筒状であることが好ましく、その内部空間の断面は、消火ボール10の形状と大きさとに略等しい形状と大きさを有していることが好ましい。もちろん、消火ボール10がスムーズに移動できるような外周の隙間は設けられてよい。但し、圧縮空気が消火ボール10の外周から漏れ出てしまわない程度の隙間であることが好ましい。
【0098】
案内筒4は、台座6に接続されており、この台座6によって案内筒4が支持されている。このとき、案内筒4が台座6に対して角度を変更できるように、角度調整機構を備えていることも好適である。例えば、ねじによって角度調整機構は実現される。案内筒4は、金属、合金、樹脂などで形成されている。
【0099】
(破砕手段)
破砕手段9は、消火ボール10の外殻を破砕する。外殻を破砕するとは、消火ボール10が収容する内容物100を、射出口42から放出可能な状態にすることである。破砕手段9は、消火ボール10の外殻を破砕すればよいので、案内筒4を移動する消火ボール10に対して、電気的衝撃、物理的衝撃および化学的衝撃の少なくとも一つを与える。これらの衝撃によって、破砕手段9は、消火ボール10の外殻を破砕する。
【0100】
電気的衝撃は、例えば移動中の消火ボール10に対して電流やプラズマを付与して、外殻を破砕する。物理的衝撃は、部材や圧力などの物理作用によって、外殻を破砕する。化学的衝撃は、消火ボール10の外殻を溶融させるような溶剤を吐出することで、外殻を破砕する。電気的衝撃、物理的衝撃および化学的衝撃のいずれであっても、消火ボール10が移動中にその外殻を破砕するので、破砕された消火ボール10から収容されていた内容物10は、図1に示されるように、射出口42から勢い良く放出される。
【0101】
物理的衝撃の一例として、破砕手段9は、図1や図3に示されるような案内筒4を移動する消火ボール10に接触可能な突出部材を有する。突出部材は、樹脂、金属、合金など硬質の素材で形成されていたり、先端がとがっていたり鋭くなっていたりすることで、移動する消火ボール10にこの突出部材が接触するだけで、破砕手段9は、消火ボール10の外殻を破砕できる。
【0102】
図4は、本発明の実施の形態1における突出部材の斜視図である。突出部材91は、先端92が尖っている(鋭くなっている)形状を有している。突出部材91は、例えば案内筒4に設けられた穴47に装着される。突出部材91は、この穴47を矢印Aのように上下移動可能である。突出部材91が穴47を上に移動している場合には、突出部材91の先端92は、案内筒4内部に到達しないか、到達しても消火ボール10に到達しない。一方、突出部材91が穴47を下に移動した場合には、先端92は、案内筒4内部を矢印Bに沿って移動する消火ボール10に接触する。先端92は、尖っているので、突出部材91は、消火ボール10を破砕することが可能である。
【0103】
突出部材91の穴47に対する突出量を増減することで、消火ボール10の破砕を調整することができる。
【0104】
また、案内筒4は、複数の穴47を備えておくことで、突出部材91の取り付け位置を変えることができる。特に、案内筒4の先端に近い側の穴47に突出部材91が取り付けられる場合、案内筒4の中央付近の穴47に取り付けられる場合、案内筒4の手前側の穴47に取り付けられる場合などに切り分けられると、突出部材91が消火ボール10を破砕する位置を切り替えることができる。例えば、内容物100を、より収束させて放出したい場合やより拡散させて放出したい場合などに応じて、突出部材91の取り付け位置を決定すればよい。
【0105】
あるいは、破砕手段9は、加圧部3で与えられる圧力が、消火ボール10の外殻の耐久度を超えることを利用しても良い。加圧部3は、圧力を与えて消火ボール10を案内筒4に射出する。このとき、加圧部3は圧縮空気による圧力を加えるのであるから、消火ボール10の外殻には圧力による力が加わる。この力が大きければ、外殻が破砕されることもある。外殻は樹脂などで形成されているので、耐久性を超える力が加わると、外殻は案内筒4での移動中に破砕される。この結果、内容物100が、射出口42から勢い良く放出される。
【0106】
これらの破砕手段9の具体例は一例であり、案内筒4を移動中に、外殻を破砕できる部材や方法を様々に含む。
【0107】
また、突出部材91が消火ボール10の外殻に届かない程度に引っ込んでいる場合には、消火ボール10の外殻が破砕されないので、消火装置1は、消火ボール10を消火弾として発射できる。破砕手段9は、消火ボール10が移動中にその外殻を破砕可能であって、常に破砕することを意図しているわけではない。
【0108】
なお、後述するが、消火装置1は、オプションとして、消火ボール10の外殻を破砕して内容物100を射出口42から放出する放出モードと、消火ボール10の外殻を破砕せずに消火ボール10をそのまま射出口42から発射する発射モードとを切り替え可能に備える。
【0109】
破砕手段9によって内容物100が射出口42から放出されるのは、このオプションが存在する場合には、放出モードが洗濯されて居場合である。このオプションがそもそも設けられていない場合には、破砕手段9が外殻の破砕を行える状態になっていれば、破砕によって飛び出る内容物100が射出口42から放出される。
【0110】
なお、案内筒4内部で消火ボール10の外殻が破砕されることで内容物100が射出口42から勢い良く飛び出すことが求められるので、突出部材91などで構成される破砕手段9は、案内筒4における先端側に近い位置に設けられることが好適である。消火ボール10のスピードが加速して、案内筒4の射出口42から飛び出るだけとなった先端側で破砕されることで、射出口42から、勢い良く内容物100(液体の消火剤や水などであれば特に)が放出されるからである。
【0111】
以上のように、実施の形態1における消火装置1は、消火ボール10を案内筒4内部で破砕して、内容物100を放出することで容易に火災を消火できる。特に、消火装置1は、大掛かりでも複雑でもなく、抱えたりする必要もないので、火災現場に居る一般人が使用しやすい。また、消火栓や水道の確保も不要なので、火災発生直後に消火を開始できる。また、消火ボール10は、消火弾としても使用できるものであるから、保有や保管されていることが容易である。火災発生の建造物以外で所有している消火ボール10を利用することもできる。これらが相まって、一般人が即座に消火活動に入ることができ、初期消火の精度が上がり、火災被害の拡大を防止できる。
【0112】
また、実施の形態1における消火装置1は、火災が発生した現場に居合わせた一般人だけではなく、駆けつけた消防隊員や消防団員によって用いられることも好適である。初期消火のために駆けつけた消防隊員が、消火栓を探すことが難しい場合などには、消火装置1をまず用いて初期消火を行う。
【0113】
(実施の形態2)
【0114】
次に、実施の形態2について説明する。
【0115】
消火ボール10の外殻を破砕して内容物100を放出することが適している火災や火災現場の状況と、消火ボール10がそのまま発射されて着弾することが適している火災や火災現場の状況とがある。このため、消火装置1は、実施の形態1のように消火ボール10の外殻が破砕されることを前提とするだけでなく、内容物100の放出と消火ボール10の発射とを切り替えることを可能とすることも好適である。実施の形態2では、消火ボール10の外殻を破砕して内容物100を放出する放出モードと消火ボール10の外殻を破砕せずに、消火ボール10のままで発射する発射モードとを切り替える消火装置1を説明する。
【0116】
図5は、本発明の実施の形態2における消火装置の模式図である。消火装置1は、放出モードと発射モードとを切り替えるモード切替手段を備えており、図5に示すように、放出モードでは内容物100を放出し、発射モードでは消火ボール10を発射する。切替手段は、操作ダイヤル11によって実現され、操作ダイヤル11は、放出モードと発射モードを切り替える。例えば、操作ダイヤル11は、モード切替スイッチを備えており、このスイッチの切り替えによって、消火装置1は、モード切替を実現する。
【0117】
例えば、モード切替手段で放出モードが選択された場合には、突出部材91が案内筒4内部に対して、移動する消火ボール10に接触可能な程度にまで突出する。逆にモード切替手段で発射モードが選択された場合には、突出部材91が案内筒4において、消火ボール10と接触できない位置に移動する。あるいは、破砕手段9が、加圧部3での圧力の大きさを利用する場合には、モード切替手段で放出モードが選択された場合には、加圧部3での圧力が大きく、モード切替手段で発射モードが選択された場合には、加圧部での圧力が小さくなる。このような切り替えによって、消火ボール10の外殻が破砕されるか、されないかが、切り分けられる。
【0118】
発射モードが選択された場合には、破砕手段9が消火ボール10の外殻を破砕しないことになり、消火ボール10がそのまま射出口42から発射される。射出口42から消火ボール10がそのまま発射される場合には、消火ボール10は、火災現場に着弾する。着弾の際の衝撃によって、消火ボール10の外殻は破砕されて収容されている内容物100が火災現場で広がって消火できる。
【0119】
火災現場が、消火装置1に近い状態であると、消火ボール10が着弾しても衝撃が弱く破砕しない可能性もある。このような場合には、実施の形態1で説明したように、案内筒4の中で消火ボール10の外殻が破砕されて、内容物100が放出されるほうが好適である。特に、近距離の火災であれば、着弾の際に初めて内容物が広がるよりも、最初から内容物が放射されるほうが、消火効率も高いからである。内容物が液体の消火剤や水などの場合には、特にこの傾向がある。
【0120】
一方、火災現場が、消火装置1から遠いこともある。火災現場の立地状況や使用者が火災を恐れて火災現場に近づけない場合などである。このような場合に、水や消火剤などの内容物100を、射出口42から放出するよりも、遠い位置の火災現場に消火ボール10を発射して着弾させたほうがよい。このような場合に対応して、消火装置1は、発射モードによって消火ボール10を火災現場に発射して着弾させることのできるオプションを有している。
【0121】
図6は、本発明の実施の形態2における発射モードでの消火を説明する説明図である。発射モードが選択される場合には、消火装置1(射出口42)は、消火ボール10を発射する。住居50に発生している火災60に向けて、消火装置1は、消火ボール10を発射する。消火ボール10は、火災60に着弾して、その衝撃で破砕する。消火ボール10の破砕によって、内容物100が火災60の周囲に広がり、消火を行う。
【0122】
消火装置1は、発射モードが選択される場合には、突出部材91が消火ボール10に接触しない位置になり、消火ボール10をそのまま発射できる。また、消火装置1は、着弾時に確実に消火ボール10が破砕されるように、加圧部3での圧力を調整する。例えば、射出口42を出る際に、消火ボール10の速度が最大になるように調整する。
【0123】
消火装置1が、消火ボール10をそのままで発射できる機能をも有していると、消火弾として消火ボール10を保管しておくモチベーションが高まる。ある場合には、消火装置1は、消火弾としての消火ボール10を発射することを主として用いられることもありえるからである。この結果、火災現場となりうる建造物、住居、ビルなどで、多量の消火ボール10が保管されることになり、消火装置1を用いた初期消火の達成度が更に高まる。
【0124】
以上のように、消火装置1は、モード切替手段によって、火災環境に合わせた消火を実現できる。
なお、投入部7は、突出部材91が突出した状態で得られる内径よりも大きな直径を有する消火ボール10と、この内径よりも小さな直径を有する消火ボールとを、投入可能であることも好適である。内径より大きな直径を有する消火ボール10が投入される場合には、案内筒4を移動する消火ボール10は、突出部材91によってその外殻が破砕される。結果として射出口42から内容物100が放出される。内径より小さな直径を有する消火ボール10が投入される場合には、案内筒4を移動する消火ボール10は、突出部材91と接触しないので、射出口42から消火ボール10がそのまま発射される。この場合は、火災現場に着弾して、消火する。
【0125】
このように、モード切替手段によらず、投入する消火ボール10の直径によって、内容物100を放出する放出モードと消火ボール10をそのまま発射する発射モードとのいずれかを切り替えることも可能である。
【0126】
実施の形態2における消火装置1は、発射モードと放出モードとを切り替えることができるので、火災や火災現場の環境や状況に合わせて、最適な消火活動を行うことができる。このようなフレキシビリティにより、消火装置1および消火ボール10の普及が高まり、消火栓や水道を確保しにくい火災現場における初期消火が、より容易になる。
【0127】
(実施の形態3)
【0128】
次に、実施の形態3について説明する。
実施の形態3における消火装置1は、案内筒4における消化ボール10の移動や、内容物100の放出をより良くするための工夫を有する。
【0129】
(溝)
案内筒4は、その内側(内周)に溝を有していることも好適である。この溝は、消火ボール10の外殻が破砕されて放出される内容物100を、拡散もしくは収束させる。図7は、本発明の実施の形態3における案内筒の内面図である。案内筒4は、その内周に溝48を備えている。溝48は、方向付けを行うことができるので、案内筒4内部で消火ボール10の外殻が破砕されて飛び出す内容物100を案内する。図7のように、溝48が案内筒4の根元から先端に向けて(射出口42に向けて)集まるようになっているので、内容物100を収束させやすい。
【0130】
溝48が内容物100を収束させると、その勢いを保ったまま射出口42から放出される内容物100は、収束した状態で放出される。例えば、火災が非常に小さいピンポイントの場合には、水や消火剤などの内容物100が収束して放出されることで、消火効率が高まる。
【0131】
また、溝48が、案内筒4の先端に向けて拡散するような形状を有している場合には、消火ボール10の破砕により飛び出る内容物100は、射出口42から拡散するように放出される。この拡散されながの放出によって、広い範囲に満遍なく放出物100を浴びせることができる。例えば、広めの火災に対しては、このように内容物100が拡散されて放出されることが好ましい。
【0132】
溝48の形状は、一例であり、様々な形状を有することで、内容物100の放出において、収束や拡散を実現する。この結果、火災の特性に応じた、内容物100の放出が可能となる。
【0133】
また、溝48の表面にスライド可能なカバーが設けられてもよい。カバーが移動すると、溝48を覆ったり露出させたりする。このカバーが溝48を覆っている場合には、溝48は案内筒4の内周に露出せずに溝48はその機能を発揮しない。逆に、カバーがスライドして溝48を露出させる場合には、溝48は、その機能を発揮できる。溝48の機能は、火災の特性や火災現場の環境に応じて、必要/不要が決まるので、カバーによって、溝48の露出が切り替えられることも好適である。
【0134】
また、カバーのスライドによって溝48の露出形状が変化することで、案内筒4は、拡散と収束とを切り替えることもよい。
【0135】
(空気通路)
また、案内筒4は、消火ボール10の移動方向に沿った空気通路を備えることも好適である。加圧部3は、空気通路に対して圧縮空気タンク2からの圧縮空気を送り込んで消火ボール10の移動をスムーズにする。図8は、本発明の実施の形態3における案内筒の側面図である。
【0136】
案内筒4は、空気通路45を備えている。空気通路45は、案内筒4における消火ボール10の移動方向に沿って形成されている。空気通路45は、案内筒4の内壁に設けられた溝状の凹部であり、消火ボール10で案内筒4内部が埋まる場合であっても、この空気通路45を空気が抜けることができる。このため、消火ボール10と案内筒4の内面との摩擦が低下して、消火ボール10の移動が容易となる。
【0137】
空気通路45は、案内筒4とつながっているので、消火ボール10が案内筒4を移動する際に、消火ボール10の回りに空気の流れを生じさせる。案内筒4は内部空間を有し、消火ボール10は、この内部空間を移動する。このとき、消火ボール10が内部空間にすっぽりとはまっている場合には(消火ボール10の直径と内部空間の直径とが略同一である場合)、案内筒4における消火ボール10の移動での安定性は高まるが、消火ボール10は、内部空間との摩擦によって移動しにくくなる。
【0138】
一方、案内筒4の内部空間の直径が消火ボール10よりも十分に大きい場合には、消火ボール10の移動は妨げられないが、消火ボール10の移動における方向性がそろわなくなり、消火ボール10の発射方向の制御が困難になる問題がある。
【0139】
空気通路45は、案内筒4にすっぽりとはまっている場合でも、消火ボール10の周囲に空気の抜け道を形成するので、消火ボール10と案内筒4の内壁との摩擦を低減できる。加えて、空気通路45は、圧縮空気を輸送するので、消火ボール10の案内筒4内部での移動を助ける。このため、案内筒4の内部空間の直径と消火ボール10の直径とが略同一でありながらも空気通路45によって消火ボール10の移動が促進される。結果として、案内筒4は、消火ボール10の移動を促進しつつも発射方向を正確に制御できるようになる。
【0140】
なお、空気通路45は、案内筒4内部に、単数および複数設けられてもよい。
(アタッチメント)
【0141】
案内筒4は、内部空間において消火ボール10に摩擦を与えるアタッチメントを更に備えていることも好適である。消火装置10は、案内筒4内部で消火ボール10の外殻を破砕して、内容物100を放出するが、実施の形態2で説明したように、火災の特性によっては消火ボール10をそのまま発射することもある。この場合には、アタッチメントを備えていることで、発射される消火ボール10の軌道制御が容易となる。
【0142】
図9は、本発明の実施の形態3におけるアタッチメントを備える案内筒の側面図である。図10は、本発明の実施の形態3にけるアタッチメントを備える案内筒の正面図である。いずれの図面も、案内筒4は、その内部に消火ボール10に摩擦を与えるアタッチメント8を備えている。アタッチメント8は、案内筒4を移動する消火ボール10の表面と接触して、消火ボール10に摩擦を与える。この摩擦によって消火ボール10には適当な回転が生じ、消火ボール10は、目標となる着弾位置に正確に到達する。
【0143】
球形の消火ボール10は、発射されて投擲される際に、全く回転を有していないと、重力に引きずられて下方に落ちてしまう。これに対して消火ボール10が回転をしていると、重力や空気抵抗に対する抵抗力を有することになるので、消火ボール10は、下方に落ちることなく目標となる着弾位置に到達しやすくなる。
【0144】
アタッチメント8は、消火ボール10の表面に接触可能な摩擦体83と、摩擦体83の表面に設けられる消火ボール10の表面と少なくとも2箇所で接触する凸部84、85と、を備える。凸部84、85の形状や構造は、図10に示される通りである。また、アタッチメント8は、取り付け具81によって案内筒4の内部空間に取り付けられる。
【0145】
アタッチメント8は、この摩擦体83および凸部84、85によって、消火ボール10を表面に接触することで、消火ボール10に回転を生じさせる。図9を用いて説明する。消火ボール10は、加圧部3(図示せず)によって圧縮空気の圧力を受けて移動を開始する。この移動を開始した消火ボール10は、案内筒4内部に入り込む。この位置での消火ボール10を、図9においては消火ボール10Fとして示す。消火ボール10は、初速および継続する圧縮空気の圧力によって、案内筒4内部を進む。
【0146】
案内筒4内部を進んだ消火ボール10は、やがて射出口42に近づく。射出口42の手前においてアタッチメント8が設けられている。このアタッチメント8の摩擦体83および凸部84、85の少なくとも一部と、消火ボール10は接触する。このときの消火ボール10の位置を、消火ボール10Gとして示す。消火ボール10は、摩擦体83等と接触することで摩擦を受け、この摩擦によって、消火ボール10は、回転しながら射出口42から発射される。この結果、消火ボール10は、回転しながら着弾位置に到達できる。消火ボール10は、回転しながら投擲されることで、空気抵抗や重力による影響を受けにくく、消火装置1が狙った位置に到達しやすくなる。これは、野球のボールが回転しながらまっすぐに飛ぶことと同様である。
【0147】
2つの凸部84、85は、それぞれ消火ボール10の移動方向に沿って接触面を有することが好適である。加えて、2つの凸部84、凸部85のそれぞれは、略平行であることが好適である。このような構造を有することで、凸部84、85は、消火ボール10に対して所定方向への回転を与えることができる。例えば、アタッチメント8が、案内筒4の上部に取り付けられている場合には、凸部84、85は、消火ボール10に対して縦回転を与えることができる。縦回転は、重力や空気抵抗に対しての抵抗力を有するので、消火ボール10は、落下することが少なくなって、目標とする着弾位置に正確に到達できるようになる。
【0148】
また、アタッチメント8が、案内筒4の左右のいずれかに取り付けられている場合には、消火ボール10には、横回転が与えられる。この横回転によって、消火ボール10は、カーブしながら着弾位置に到達できる。
【0149】
例えば、消火装置1の設置できる位置と着弾位置とがまっすぐにつなげられないような障害物がある状態では、このようなカーブによって消火ボール10を投擲することも適当である。例えば、火災現場の手前に建物や駐車中の車がある場合にも、これらの障害物を避けながら消火ボール10を着弾位置に到達させることができるようになる。
【0150】
また、消火ボール10の回転数や回転量は、アタッチメント8が付与する摩擦力によって定まる。この摩擦力は、摩擦体83や凸部84、85と消火ボール10との接触量とによって定まる。この接触量は、消火ボール10に対して摩擦体83がどれだけの力(距離)で押し当てられるかによって定まる。このため、アタッチメント8は、摩擦体83を消火ボール10に対して(案内筒4の内部空間に対して)上下可能にする調整部材82を更に備えることも好適である。
【0151】
図10に、調整部材82を備えるアタッチメント8が示される。
【0152】
調整部材82は、案内筒4の外側に突き出ており、取り付け具81を介してアタッチメント8を案内筒4の内部に設置するようにしている。調整部材82は、ねじによって回転可能で、この回転によって取り付け具81が前後して、摩擦体83を上下させる。摩擦体83が、案内筒4の内部空間により深く入り込む場合には、消火ボール10に対してより強く接触することになるので、消火ボール10には強い摩擦が加わることになる。この強い摩擦によって、消火ボール10は、より多い回転数で回転できるようになる。回転数が多いことで、直線的な投擲やカーブにおける角度がより強くなる。
【0153】
一方、摩擦体83が案内筒4の内部空間において消火ボール10から遠ざかる方向に移動する場合には、摩擦体83は、消火ボール10に弱い摩擦力を与える。弱い摩擦力の結果、消火ボール10の回転数は少なくなる。
【0154】
摩擦体83を上下させる調整部材82によって、アタッチメント8は、消火ボール10に対して与える摩擦力を調整でき、消火ボール10の回転数を調整できる。
【0155】
摩擦体83は、所定の幅と長さを有しており、基板となる基材と消火ボール10の表面と接触する接触面とを有する。基材は、取り付け具81と接続する金属、樹脂、合金で形成される。接触面は、ゴム、フェルトなどの素材やネオプレンスポンジなどの吸収性のある合成素材で形成される。また、基材の一部が盛り上がることで、この基材の表面に貼り付けられた接触面が、凸部84、85を形成できる。この結果、摩擦体83は、凸部84、85と一体的な構成を有し、この一体的な構成によってアタッチメント8は、消火ボール10に摩擦を与えることができる。
【0156】
なお、凸部84、85は、いずれか一方だけが設けられても良い。また、複数のアタッチメント8が、案内筒4に取り付けられても良い。
【0157】
以上のように、案内筒4がアタッチメントを備えることで、消火装置1は、消火ボール10に適切な回転を与えることができ、消火ボール10は、目標となる着弾位置に正確に投擲される。この結果、火災やテロなどの消火や沈静のために必要となる内容物を収容する消火ボール10を、目標とする着弾位置に、適切に発射できるようになる。
【0158】
以上のように、アタッチメントが備わることで、発射モードの際の消火ボール10の発射が、十分に制御される。
【0159】
なお、消火装置1を使用する使用方法も、本発明に含まれる。
【0160】
すなわち、実施の形態1〜3で説明された消火装置1を用いて、次の手順(1)〜(7)の一部若しくは全部を用いて、内容物100を放出したり、消火ボール10を発射したりすることは、本発明に含まれる。
(1)投入部7を介して(あるいは介さずに)消火ボール10を設置位置41に設置する、
(2)圧縮空気タンク2に収容されている圧縮空気を噴射するための手順を行う、
(3)噴射された圧縮空気が加圧部3において消火ボール10へ圧力を付与する、
(4)圧力を付与された消火ボール10が移動を開始する、
(5)移動を開始した消火ボール10は、案内筒4内部を進む、
(6)放出モードの際には、破砕手段9が消火ボール10の外殻を破砕し、発射モードの際には、消火ボール10はそのまま射出口42に進む
(7)射出口42から内容物100が放出されるか、消火ボール10が発射される。
【0161】
これらは、例えば操作ボタン等の操作によって実行される。
以上、実施の形態1〜3で説明された消火装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含む。
【符号の説明】
【0162】
1 消火装置
2 圧縮空気タンク
3 加圧部
4 案内筒
41 設置位置
42 射出口
45 空気通路
48 溝
5 連絡通路
6 台座
7 投入部
8 アタッチメント
81 取り付け具
82 調整部材
83 摩擦体
84、85 凸部
9 破砕手段
91 突出部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
収容する圧縮空気を噴射可能な圧縮空気タンクと、
前記圧縮空気タンクから噴射される圧縮空気を受けることができるように前記圧縮空気タンクに接続し、内容物を封入した消火ボールに圧縮空気による圧力を加える加圧部と、
前記加圧部に接続され、前記加圧部での圧力を受けて移動を開始する前記消火ボールを先端に案内する案内筒と、
前記案内筒を移動する前記消火ボールの外殻を破砕可能な破砕手段と、を備える消火装置。
【請求項2】
前記破砕手段によって前記消火ボールの外殻を破砕する放出モードと、前記破砕手段による破砕を生じさせない発射モードと、を切り替えるモード切替手段を更に備える、請求項1記載の消火装置。
【請求項3】
前記放出モードが選択される場合には、前記案内筒の先端から、前記消火ボールに封入されている内容物が放出される、請求項2記載の消火装置。
【請求項4】
前記発射モードが選択される場合には、前記案内筒の先端から、前記消火ボールが発射される、請求項2記載の消火装置。
【請求項5】
前記破砕手段は、前記案内筒を移動する前記消火ボールに電気的衝撃、物理的衝撃および化学的衝撃の少なくとも一つを付与する、請求項1から4のいずれか記載の消火装置。
【請求項6】
前記破砕手段は、前記案内筒の内側に突出可能であって、前記案内筒を移動する前記消火ボールに接触可能な突出部材である、請求項5記載の消火装置。
【請求項7】
前記放出モードが選択される場合には、前記突出部材が、前記案内筒の内側であって前記案内筒を移動する前記消火ボールに接触可能な位置にまで突出する、請求項6記載の消火装置。
【請求項8】
前記発射モードが選択される場合には、前記突出部材は、前記案内筒の内側であって前記案内筒を移動する前記消火ボールに接触できない位置にある、請求項6記載の消火装置。
【請求項9】
前記破砕手段は、前記加圧部が、前記消火ボールの外殻の耐久度を超える圧力を加える、請求項5記載の消火装置。
【請求項10】
前記案内筒は、その内側に溝を有しており、前記溝は、前記消火ボールの外殻が破砕されて放出される内容物を、拡散もしくは収束させる、請求項1から9のいずれか記載の消火装置。
【請求項11】
前記溝は、表面に露出する形状を変更可能である、請求項10記載の消火装置。
【請求項12】
前記加圧部に対向する位置に、前記消火ボールを投入する投入部を更に備える、請求項1から11のいずれか記載の消火装置。
【請求項13】
前記案内筒に前記突出部材が突出する場合に得られる内径よりも大きな直径を有する前記消火ボールと、該内径よりも小さな直径を有する前記消火ボールとが、前記投入部に投入可能である、請求項12記載の消火装置。
【請求項14】
前記消火ボールが封入する内容物は、消火剤、鎮火剤、鎮静剤、水、染料および顔料の少なくとも一つである、請求項1から13のいずれか記載の消火装置。
【請求項15】
前記案内筒は、前記消火ボールの移動方向に沿った空気通路を更に備え、前記加圧部は、前記空気通路に前記圧縮空気タンクからの圧縮空気を送り込む請求項1から14のいずれか記載の消火装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−63128(P2013−63128A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−202524(P2011−202524)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(596017602)共和技研株式会社 (5)