消磁コイル調定方法、消磁管制方法、消磁管制装置、船舶及び消磁コイル調定プログラム
【課題】ミスフィットを低減できる消磁コイル調定方法およびこれを利用した消磁管制法法を得る。
【解決手段】消磁コイルとしてMコイル、Lコイル及びAコイルを有する船舶の消磁コイル調定方法において、前記Mコイルが上下方向の消磁に与える影響、前記Mコイルが前後方向の消磁に与える影響、前記Lコイルが前後方向の消磁に与える影響及び前記Lコイルが上下方向の消磁に与える影響を同時に評価する第1の評価ステップと、前記第1の評価ステップの結果に基づき、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を決定する第1の決定ステップと、前記Aコイルが左右方向の消磁に与える影響を評価する第2の評価ステップと、前記第2の評価ステップの結果に基づき、前記Aコイルの通電量を決定する第2の決定ステップとを有することを特徴とする。
【解決手段】消磁コイルとしてMコイル、Lコイル及びAコイルを有する船舶の消磁コイル調定方法において、前記Mコイルが上下方向の消磁に与える影響、前記Mコイルが前後方向の消磁に与える影響、前記Lコイルが前後方向の消磁に与える影響及び前記Lコイルが上下方向の消磁に与える影響を同時に評価する第1の評価ステップと、前記第1の評価ステップの結果に基づき、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を決定する第1の決定ステップと、前記Aコイルが左右方向の消磁に与える影響を評価する第2の評価ステップと、前記第2の評価ステップの結果に基づき、前記Aコイルの通電量を決定する第2の決定ステップとを有することを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、消磁コイルを有する船舶の消磁コイル調定方法、消磁管制方法、消磁管制装置、船舶及び消磁コイル調定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の消磁コイル通電量を調定する技術として、例えば『船舶の磁性体からなる船体のX,Y,Z方向の外部磁界を打ち消すために船体内に複数個の消磁コイル5を設けるとともに当該船体内に複数個の磁気検知器からなる磁気監視部1を設置し、各磁気検知器から測定された船内磁界に基づいて算出した船外磁気モーメントと、予め測定、算出した各消磁コイル効果による船外磁気モーメントとから、前記外部磁界を最小にする消磁電流を決定して、各消磁コイルに通電する構成であり、これにより常時最適な消磁状態を維持する。』というものが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−78234号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術では、各消磁コイルが1つの座標軸方向に発生させる磁場を前提に、各消磁コイルの通電量を調定していた。
ところが、実際には各消磁コイルは複数の座標軸方向に磁場を発生させており、これらの影響により、1つの座標軸方向に発生させる磁場を前提に調定した通電量は必ずしも最適なものとはならず、調定誤差、いわゆるミスフィットが大きくなるという課題があった。
【0004】
本発明は、上記のような課題を解決し、ミスフィットを低減できる消磁コイル調定方法等を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る消磁コイル調定方法は、
消磁コイルとしてMコイル、Lコイル及びAコイルを有する船舶の消磁コイル調定方法において、
前記Mコイルが上下方向の消磁に与える影響、前記Mコイルが前後方向の消磁に与える影響、前記Lコイルが前後方向の消磁に与える影響及び前記Lコイルが上下方向の消磁に与える影響を同時に評価する第1の評価ステップと、
前記第1の評価ステップの結果に基づき、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を決定する第1の決定ステップと、
前記Aコイルが左右方向の消磁に与える影響を評価する第2の評価ステップと、
前記第2の評価ステップの結果に基づき、前記Aコイルの通電量を決定する第2の決定ステップとを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る消磁コイル調定方法によれば、MコイルとLコイルを単独で調定する場合と比較して、ミスフィットを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る消磁コイル調定方法の、全体フローを示すものである。
(S101)
Mコイルが上下方向の消磁に与える影響、Mコイルが前後方向の消磁に与える影響、Lコイルが前後方向の消磁に与える影響及び前記Lコイルが上下方向の消磁に与える影響を同時に評価する。詳細は、後述の式2で述べる。
(S102)
ステップS101の結果に基づき、Mコイル及びLコイルの通電量を決定する。詳細は後述の図3及び図4で述べる。
(S103)
Aコイルが左右方向の消磁に与える影響を評価する。詳細は、後述の式4で述べる。
(S104)
ステップS103の結果に基づき、Aコイルの通電量を決定する。
【0008】
ここで、以後の説明の理解を容易にするために、従来の消磁コイル調定方法とその課題について説明する。
【0009】
図14は、船舶に搭載されている消磁コイルの様子を示すものである。
船体および船舶に積み込まれる磁性搭載品は、地磁気の影響を受け周辺に誘導磁場を生ずる。さらにこれらが永久磁気を帯びていると、これによっても磁場を生ずる。
機雷が敷設される可能性のある危険海域を航行する船舶ではその任務を遂行するため、搭載品の磁性管理を行い、できるだけ発生磁場を少なくするようにするとともに、複数の消磁コイルを搭載し、積極的に磁場を減らすことが行われている。
通常はMコイル、LコイルおよびAコイルと呼ばれるコイルが複数個搭載されており、それぞれ誘導分用と永久分用(APコイル、LPコイル)を持っている。各コイルの通電量は、船舶が周辺に発生する磁場を打ち消すよう調整される。
【0010】
図15は、消磁コイルによる各座標軸方向の消磁の様子を示すものである。
船舶の磁場の発生源である船体および磁性搭載品は、磁気ダイポールとみなして周辺磁場を評価することができる。一方、消磁コイルも一種の磁気ダイポールと見なすことができる。Mコイルは上下方向、Lコイルは前後方向、Aコイルは左右方向の磁気ダイポールとみなせるから、それぞれのコイルが搭載品の磁気ダイポールの各成分を消すように選べば良い。
具体的には、ある水深における船舶の発生磁場の各成分を計算、あるいは計測し、これらの磁場成分を消すよう各コイルの通電量を調整する。Mコイルは上下方向の成分、Lコイルは前後方向の成分、Aコイルは左右方向の成分を消すよう各コイルの通電量を調整する。
【0011】
コイル調定は、通電電流を試行錯誤で決定するか、あるいは、ミスフィットが最小となるよう最小自乗法を使って決定される。試行錯誤で通電量を決定する場合は、コイルの数が多いため経験と手間を要する。
【0012】
上述のコイル調定は、ある定まった方位と姿勢で行うが、実際の船舶は常にこの状態で走るわけではない。方位や姿勢が変化すると、それに応じて船舶の誘導磁気が変化するから、その変化に対応して通電量を調整しないと良好な消磁状態が維持できない。
このため船舶には消磁管制装置が搭載されており、船舶の方位・姿勢の変化に応じて自動的にコイル電流を調整し、常に良好な消磁状態を保つようにしている。
ロール、ピッチを無視し、方位のみに着目すると、各M、L、Aコイルの通電量は、次式のように調整される。
【数1】
すなわち、地磁気が一定であれば、誘導磁気の消磁のためのMコイル電流は方位に対して一定、Lコイル電流は方位のCos、A電流コイルは方位のSinで変化するよう管制される。
【0013】
消磁コイルの原理については上述のとおりであるが、設置できるコイルの数には限りがあるから、完全に発生磁場を消し去ることができず、常に消磁しきれない磁場(ミスフィット)が残る。特に問題となるのは、Mコイルは上下方向の成分、Lコイルは前後方向の成分、Aコイルは左右方向の成分を消すことを前提にコイル調定、および管制を実施している点である。
【0014】
図16は、Mコイルで上下方向の成分、Lコイルで前後方向の成分、Aコイルで左右方向の磁場の成分のみを消磁するように各コイルの通電量を単独で調定した(図16の上段)後、全コイルに調定した電流を流したときのミスフィット(図16の下段)を、非消磁の総合磁場の最大値で無次元化した値を示すものである。
【0015】
単独で調定したときには、各成分は十分消磁されているが、全コイルに通電した場合は却ってミスフィットが大きくなっている。これは、次のような理由による。
すなわち、Mコイルは上下方向の磁場のみを、またLコイルは前後方向の磁場のみを発生するとして単独で各成分を調定したが、実際はMコイルからは前後方向、Lコイルからは上下方向の成分が発生するため、全コイル通電時には、単独で調定したときとは異なった状態となってしまい、却ってミスフィットが大きくなったからである。
【0016】
上記のような課題を解決するため、本発明に係る消磁コイル調定方法では、以下のような考え方をとる。
現状の問題点は、Mコイルは上下方向の磁場のみを、またLコイルは前後方向の磁場のみを発生することを前提としていることが原因で発生しているから、この問題点を解決するためには次のように考えれば良い。
すなわち、MコイルとLコイルを使って、上下および前後方向の磁場を同時に消すように調定すれば良い。Aコイルに関しては従来どおりで良い。
【0017】
以降では、図1のステップS101〜ステップS104の各ステップの内容について説明する。
【0018】
図1のステップS101〜ステップS102について説明する。ここでは、永久磁場と誘導磁場の消磁を同時に考える。
図1のステップS101〜ステップS102では、調定水深において、船舶の発生磁場の計算値または計測値の成分と、各M、Lコイル発生磁場成分の合計から求めた誤差の自乗が最小となるよう、各M、Lコイルの通電量を決定する。
【0019】
図2は、調定水深について説明するものである。図2に示すように、船底下の所定距離の水深のことを調定水深と呼び、船舶の発生磁場の計算値または計測値は、この水深における値を用いる。
【0020】
ステップS101の内容を説明する。
ステップS101において、Mコイル、Lコイルの通電量初期値を適宜設定し、以下の式2を用いてミスフィットを求める。このミスフィットが小さいほど、最適な通電量に近いものと評価することができる。
【数2】
このとき、コイル通電量に制限があれば、以下の制限を課す。
【数3】
【0021】
次に、ステップS102において、式2のミスフィットの値が最小となるように、各Mコイル、Lコイルの通電量を定める。実際には、コイルの通電量には物理的な制約があるため、式3の制約条件を課す。
各Mコイル、Lコイルの通電量を定める方法は種々あるが、本実施の形態1では、最急降下法を用いる例を説明する。
【0022】
図3は、最急降下法の実行イメージを示すものである。
最急降下法とは、評価関数曲線の勾配が最も大きい方向へ評価点を移動させることを所定回数繰り返す方法である。この方法によれば、比較的少ない反復回数で、求めたい評価点の近傍に到達することができる。
式2のミスフィットの値が最小となるような各Mコイル、Lコイルの通電量は、このような最急降下法による反復演算で求めることができる。
【0023】
図4は、非線形制約条件下における最急降下法の実行イメージを示すものである。
上述の式3のような制約条件が課された場合、最急降下法により評価点を反復移動させていくと、制約条件に相当する界面に到達する(図3の「制約条件」)。
この場合、制約条件を越えて反復移動を繰り返しても、当該制約条件に反する評価点しか得られない。そこで、かかる制約条件がある場合には、制約条件の界面に到達した時点で、移動方向を反転させ、制約違反とならないように反復移動を繰り返す(図4の「反射する」)ことで、制約条件を満たす近傍解を得ることができる。
図4に示す非線形最急降下法により、式3の制約条件を満たしつつ、式2のミスフィットの値が最小となるような各Mコイル、Lコイルの通電量を求めることができる。
【0024】
次に、図1のステップS103〜ステップS104について説明する。
図1のステップS103〜ステップS104では、調定水深において、船舶の発生磁場の計算値または計測値の成分と、各Aコイル発生磁場成分の合計から求めた誤差の自乗が最小となるよう、各Aコイルの通電量を決定する。
【0025】
まず、ステップS103において、Aコイルの通電量初期値を適宜設定し、以下の式4を用いてミスフィットを求める。このミスフィットが小さいほど、最適な通電量に近いものと評価することができる。
【数4】
このとき、コイル通電量に制限があれば、以下の制限を課す。
【数5】
【0026】
次に、ステップS104において、式4のミスフィットの値が最小となるように、各Aコイルの通電量を定める。実際には、コイルの通電量には物理的な制約があるため、式5の制約条件を課す。
各Aコイルの通電量は、M、Lコイルと同様に最急降下法を用いて求める。
【0027】
図5は、本実施の形態1に係る消磁コイル調定方法で調定を実際に行って磁場の実測値を測定した結果について、非消磁の総合磁場の最大値で無次元化したものである。
図5の右が今回の考え方で自動調定した結果の例で、左図は手動調定した結果を参考に示している。
図5のHx〜Htは、それぞれ船首尾方向磁場、左右方向磁場、上下方向磁場および
総合磁場(3方向を合成したもの)を示している。
【0028】
図6は、図5を成分毎に分けて示すものである。
図5〜図6に示すように、本実施の形態1に係る消磁コイル調定方法によれば、従来の手動による調定に比べミスフィットが小さくなっていることが分かる。
【0029】
次に、図1に示す消磁コイル調定方法を基に、船舶の方位に合わせて各コイルの通電量を動的に制御する、即ち消磁管制の方法について説明する。
【0030】
図7は、本実施の形態1に係る消磁管制方法の、全体フローを示すものである。
(S701)
図1の消磁コイル調定方法を用いて、磁気方位0度及び磁気方位180度におけるMコイル、Lコイルの通電量を調定する。
(S702)
図1の消磁コイル調定方法を用いて、磁気方位90度及び磁気方位270度におけるAコイルの通電量を調定する。
(S703)
ステップS701の結果に基づき、Mコイル、Lコイルの管制計算の比例定数を算定する。詳細は、後述の式7〜式11で述べる。
(S704)
ステップS702の結果に基づき、Aコイルの管制計算の比例定数を算定する。詳細は、後述の式12〜式16で述べる。
(S705)
ステップS703の結果に基づき、磁気方位に応じてMコイル、Lコイルの通電量を管制する。磁気方位が変動すれば、それに応じて管制することを繰り返す。
(S706)
ステップS704の結果に基づき、磁気方位に応じてAコイルの通電量を管制する。磁気方位が変動すれば、それに応じて管制することを繰り返す。
【0031】
ここで、以後の説明の理解を容易にするために、従来の消磁管制方法とその課題について説明する。
従来の消磁コイル調定方法においては、Mコイルは上下方向の磁場のみを、またLコイルは前後方向の磁場のみを発生することを前提として調定を行っているため、ミスフィットが大きくなってしまうことを説明した。
方位に応じて消磁コイル通電量を管制する際にも、上記と同様の前提を基に消磁管制を行っているため、やはり同様にミスフィットが大きくなるということが起こる。
【0032】
上記のような課題を解決するため、本発明に係る消磁管制方法では、以下のような考え方をとる。
すなわち、MコイルとLコイルを使って、磁場の上下および前後方向の磁場を同時に消す必要があり、誘導磁場の前後成分は方位のCosで変化するから、M、L各コイルの通電量は、方位に関する定数項と方位のCosに比例する項で管制する必要がある。
Aコイルについては従来どおり磁場の左右方向成分を消せば良く、左右成分は方位のSinで変化するから、各Aコイルの通電量は、方位に関する定数項と方位のSinに比例する項で管制すればよい。
【数6】
【0033】
次に、図7のステップS703の内容について説明する。
ステップS701で、磁気方位0度において、ミスフィットが最小となるように決定した各Ikを、MコイルとLコイルに分け、それぞれi番目のコイルの電流をIM0i、IL0iと表す。
同様に、磁気方位180度におけるi番目のコイルの電流をIM180i、IL180iと表す。
式6のIM、ILについて、各コイルに対し、
【数7】
とおくと、
【数8】
となる。
式8にψ=0を代入した左辺の値は上記IM0i、IL0iに他ならず、またψ=180を代入した左辺の値は上記IM180i、IL180iに他ならない。即ち、
【数9】
が導かれる。さらに式9の両辺を加減算することによって、次の式10が導かれる。
【数10】
したがって、式10で求められる値及び磁気方位ψを用いて、各M、Lコイルの通電量は、
【数11】
のように管制すればよいことになる。
【0034】
次に、図7のステップS704の内容について説明する。
ステップS702で、磁気方位90度において、ミスフィットが最小となるように決定した各Ikのうち、i番目のコイルの電流をIA90iと表す。
同様に、磁気方位270度におけるi番目のコイルの電流をIA270iと表す。
式6のIAについて、各Aコイルに対し、
【数12】
とおくと、
【数13】
となる。
式13にψ=90を代入した左辺の値は上記IA90iに他ならず、またψ=270を代入した左辺の値は上記IA270iに他ならない。即ち、
【数14】
が導かれる。さらに式14の両辺を加減算することによって、次の式15が導かれる。
【数15】
したがって、式15で求められる値及び磁気方位ψを用いて、各Aコイルの通電量は、
【数16】
のように管制すればよいことになる。
【0035】
図8及び図9は、本実施の形態1に係る消磁管制法を採用した時の消磁効果を示すものである。
図8は磁気方位90度に対する結果の総合磁場を非消磁の総合磁場の最大値で無次元化した値で、従来の管制方法に比べ消磁効果が大きくなっていることを示している。
図9は、本特許で求めた総合磁場の最大値と、従来の方法で求めた総合磁場の最大値との比を表し、方位が0、90、180、270度に対する結果である。各方位とも従来の方法に比べ消磁効果が大きいことを示している。
なお、図9の「N−Run」とは、北向きに航走した場合(方位0°に相当)を示しており、同図の「E−Run」とは東向きに航走した場合(方位90°)を示している。
【0036】
本実施の形態1では、最急降下法を用いた反復演算により、ミスフィットの値が最小となる各コイルの通電量を求める例を説明したが、ミスフィットを最小とする通電量の求め方はこれに限るものではなく、任意の解法を用いることができる。
【0037】
以上のように、本実施の形態1に係る消磁コイル調定方法によれば、
消磁コイルとしてMコイル、Lコイル及びAコイルを有する船舶の消磁コイル調定方法において、
前記Mコイルが上下方向の消磁に与える影響、前記Mコイルが前後方向の消磁に与える影響、前記Lコイルが前後方向の消磁に与える影響及び前記Lコイルが上下方向の消磁に与える影響を同時に評価する第1の評価ステップと、
前記第1の評価ステップの結果に基づき、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を決定する第1の決定ステップと、
前記Aコイルが左右方向の消磁に与える影響を評価する第2の評価ステップと、
前記第2の評価ステップの結果に基づき、前記Aコイルの通電量を決定する第2の決定ステップとを有するので、
MコイルとLコイルを単独で調定する場合と比較して、ミスフィットを低減させることができる。
【0038】
また、前記第1の評価ステップは、
調定水深において、前記Mコイル及び前記Lコイルが船底下の特定位置に発生させる磁場のX成分合計を求めるステップと、
前記調定水深において、前記特定位置の船舶磁場X成分と、前記X成分合計との誤差を求め、当該誤差を自乗してX成分誤差評価値を求めるステップと、
前記調定水深において、前記Mコイル及び前記Lコイルが船底下の特定位置に発生させる磁場のZ成分合計を求めるステップと、
前記調定水深において、前記特定位置の船舶磁場Z成分と、前記Z成分合計との誤差を求め、当該誤差を自乗してZ成分誤差評価値を求めるステップと、
前記X成分誤差評価値と前記Z成分誤差評価値の和を、船底下の複数の位置において求め、これらを合算してXZ成分評価値を求めるステップとを有するので、
Mコイルが上下方向の消磁に与える影響、Mコイルが前後方向の消磁に与える影響、Lコイルが前後方向の消磁に与える影響及びLコイルが上下方向の消磁に与える影響を同時に考慮し、総合的に最適となるように評価することができる。
【0039】
また、前記第1の決定ステップは、
前記XZ成分評価値が最小となるように、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を決定するので、
前記第1の決定ステップの結果に基づき、最急降下法などの反復演算手法を含む任意の解法を用いて、適切なMコイル及びLコイル通電量を決定できる。
【0040】
また、前記第2の評価ステップは、
前記調定水深において、前記Aコイルが船底下の特定位置に発生させる磁場のY成分合計を求めるステップと、
前記調定水深において、前記特定位置の船舶磁場Y成分と、前記Y成分合計との誤差を求め、当該誤差を自乗してY成分誤差評価値を求めるステップと、
前記Y成分誤差評価値を、船底下の複数の位置において求め、これらを合算してY成分評価値を求めるステップとを有するので、
Aコイルが左右方向の消磁に与える影響を適切に評価することができる。
【0041】
また、前記第2の決定ステップは、
前記Y成分評価値が最小となるように、前記Aコイルの通電量を決定するので、
前記第2の決定ステップの結果に基づき、最急降下法などの反復演算手法を含む任意の解法を用いて、適切なAコイル通電量を決定できる。
【0042】
また、本実施の形態1に係る消磁管制方法によれば、
上記の消磁コイル調定方法を用いて、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求める第1の調定ステップと、
上記の消磁コイル調定方法を用いて、前記Aコイルの通電量を求める第2の調定ステップと、
前記第1の調定ステップの結果に基づき、磁気方位に対する前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量の管制計算の比例定数値を求める第1の管制係数算定ステップと、
前記第2の調定ステップの結果に基づき、磁気方位に対する前記Aコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める第2の管制係数算定ステップと、
前記第1の管制係数算定ステップの結果に基づき、磁気方位に応じて前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を管制する第1の管制ステップと、
前記第2の管制係数算定ステップの結果に基づき、磁気方位に応じて前記Aコイルの通電量を管制する第2の管制ステップを有するので、
上記消磁コイル調定方法の結果を用いて、MコイルとLコイルを単独で調定する場合と比較してミスフィットを低減させ、より大きな消磁効果を得ることができる。
【0043】
また、前記第1の調定ステップにおいて、
磁気方位0度における前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求めるとともに、磁気方位180度における前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求め、
前記第1の管制係数算定ステップは、
磁気方位0度における前記Mコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Mコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してMコイル定数成分を求めるステップと、
磁気方位0度における前記Mコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Mコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してMコイル余弦比例成分を求めるステップと、
磁気方位0度における前記Lコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Lコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してLコイル定数成分を求めるステップと、
磁気方位0度における前記Lコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Lコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してLコイル余弦比例成分を求めるステップとを有するので、
磁気方位0度及び磁気方位180度におけるM、Lコイル管制係数を消磁管制開始前に予め求めておき、求めた値に基づき消磁管制を行うことができる。即ち、管制中の調定演算を行う手間が不要となる。
【0044】
また、前記第2の調定ステップにおいて、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量を求めるとともに、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量を求め、
前記第2の管制係数算定ステップは、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量と、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してAコイル定数成分を求めるステップと、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量と、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してAコイル正弦比例成分を求めるステップとを有するので、
磁気方位90度及び磁気方位270度におけるAコイル管制係数を消磁管制開始前に予め求めておき、求めた値に基づき消磁管制を行うことができる。即ち、管制中の調定演算を行う手間が不要となる。
【0045】
また、前記第1の管制ステップにおいては、
前記Mコイル定数成分と、
前記Mコイル余弦比例成分の磁気方位に対する余弦成分との和を基に、
前記Mコイルの通電量の管制を行い、
前記Lコイル定数成分と、
前記Lコイル余弦比例成分の磁気方位に対する余弦成分との和を基に、
前記Lコイルの通電量の管制を行うので、
前記第1の管制係数算定ステップの結果に基づき、磁気方位に応じてMコイル、Lコイルの通電量を管制することができる。
【0046】
また、前記第2の管制ステップにおいては、
前記Aコイル定数成分と、
前記Aコイル正弦比例成分の磁気方位に対する正弦成分との和を基に、
前記Aコイルの通電量の管制を行うので、
前記第2の管制係数算定ステップの結果に基づき、磁気方位に応じてAコイルの通電量を管制することができる。
【0047】
実施の形態2.
図10は、本発明の実施の形態2に係る消磁管制装置の機能ブロック図を示すものである。
消磁管制装置1000は、Mコイル・Lコイル調定部1001、Aコイル調定部1002、Mコイル・Lコイル管制係数算定部1003、Aコイル管制係数算定部1004、Mコイル・Lコイル管制部1005、Aコイル管制部1006を有する。
Mコイル・Lコイル調定部1001は、実施の形態1で述べた消磁コイル調定方法を用いて、Mコイル及びLコイルの通電量を求める。
Aコイル調定部1002は、実施の形態1で述べた消磁コイル調定方法を用いて、Aコイルの通電量を求める。
Mコイル・Lコイル管制係数算定部1003は、Mコイル・Lコイル調定部1001の処理結果に基づき、磁気方位に対するMコイル及びLコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める。
Aコイル管制係数算定部1004は、Aコイル調定部1002の処理結果に基づき、磁気方位に対するAコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める。
Mコイル・Lコイル管制部1005は、Mコイル・Lコイル管制係数算定部1003の処理結果及び磁気方位に基づき、Mコイル及びLコイルの通電量を管制する。
Aコイル管制部1006は、Aコイル管制係数算定部1004の処理結果及び磁気方位に基づき、Aコイルの通電量を管制する。
【0048】
なお、図10の各機能ブロック1001〜1006の動作は、図7のステップS701〜ステップS706にそれぞれ対応するものであるため、説明は省略する。
【0049】
以上のように、本実施の形態2に係る消磁管制装置によれば、実施の形態1で述べた消磁管制方法を実現する消磁管制装置を得ることができる。
【0050】
実施の形態3.
実施の形態1に係る消磁管制方法は、M、L、Aコイルの調定を行った後、調定後の各コイル通電量を用いて、磁気方位に合わせて消磁管制を行うものである。
本発明の実施の形態3に係る消磁管制方法では、磁気方位及び地磁気成分に合わせて消磁管制を行うことを繰り返すものである。
【0051】
(式6)から分かるように、コイルの通電量は方位のほかに、地磁気の垂直、水平成分の影響も受ける。地磁気の垂直、水平成分は場所によって変化するから、通電量もそれに応じて変化させなくてはならない。行動範囲が狭ければ地磁気は一定としても影響は少ないが、広ければ影響を受ける。
本実施の形態3に係る消磁管制方法では、誘導磁気の消磁管制については、方位のほかに、地磁気の垂直、水平成分を入力項目として、それらの信号で通電量を制御する。なお、永久磁気についてはAPコイル、LPコイルで消磁すればよい。
【0052】
図11は、本実施の形態3に係る消磁管制方法の全体フローを示すものである。
ステップS1101〜ステップS1104は、図7のステップS701〜ステップS704と同様であるため、説明を省略する。
(S1105)
ステップS1103の結果に基づき、磁気方位及び地磁気成分に応じてMコイル、Lコイルの通電量を管制する。磁気方位や地磁気成分が変動すれば、それに応じて管制することを、所定時間繰り返す。
(S1106)
ステップS1104の結果に基づき、磁気方位及び地磁気成分に応じてAコイルの通電量を管制する。磁気方位や地磁気成分が変動すれば、それに応じて管制することを、所定時間繰り返す。
【0053】
以上のように、本実施の形態3に係る消磁管制方法によれば、磁気方位及び地磁気成分の変化に基づき消磁管制を行うので、より精度の高い消磁管制を行うことができる。
【0054】
実施の形態4.
図12は、本発明の実施の形態4に係る消磁管制装置の機能ブロック図を示すものである。
消磁管制装置1000は、Mコイル・Lコイル調定部1001、Aコイル調定部1002、Mコイル・Lコイル管制係数算定部1003、Aコイル管制係数算定部1004、Mコイル・Lコイル管制部1005、Aコイル管制部1006を有する。
Mコイル・Lコイル調定部1001は、実施の形態1で述べた消磁コイル調定方法を用いて、Mコイル及びLコイルの通電量を求める。
Aコイル調定部1002は、実施の形態1で述べた消磁コイル調定方法を用いて、Aコイルの通電量を求める。
Mコイル・Lコイル管制係数算定部1003は、Mコイル・Lコイル調定部1001の処理結果に基づき、磁気方位及び地磁気成分に対するMコイル及びLコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める。
Aコイル管制係数算定部1004は、Aコイル調定部1002の処理結果に基づき、磁気方位及び地磁気成分に対するAコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める。
Mコイル・Lコイル管制部1005は、Mコイル・Lコイル管制係数算定部1003の処理結果、磁気方位及び地磁気成分に基づき、Mコイル及びLコイルの通電量を管制する。
Aコイル管制部1006は、Aコイル管制係数算定部1004の処理結果、磁気方位及び地磁気成分に基づき、Aコイルの通電量を管制する。
【0055】
なお、図12の各機能ブロック1001〜1006の動作は、図11のステップS1101〜ステップS1106にそれぞれ対応するものであるため、説明は省略する。
【0056】
以上のように、本実施の形態4に係る消磁管制装置によれば、実施の形態3で述べた消磁管制方法を実現する消磁管制装置を得ることができる。
【0057】
実施の形態5.
図13は、本発明の実施の形態5に係る消磁コイル調定プログラムを実装したコンピュータと、消磁管制装置1000との連動イメージを示すものである。
コンピュータ1401は、演算手段1402、記憶手段1403を有する。
記憶手段1403は、消磁コイル調定プログラム1404を格納している。
演算手段1402は、消磁コイル調定プログラム1404の指示に従って、図1のフローチャートに示す調定演算を行い、その結果を消磁管制装置1000に渡す。
消磁管制装置1000は、Mコイル・Lコイル調定値入力部1007、Aコイル調定値入力部1008を有する。
Mコイル・Lコイル調定値入力部1007、Aコイル調定値入力部1008は、演算手段1402の調定演算結果を受け取る。
【0058】
消磁管制装置1000は、Mコイル・Lコイル調定値入力部1007、Aコイル調定値入力部1008にて演算手段1402の演算結果を受け取り、消磁管制を行う。
本実施の形態5においては、Mコイル・Lコイル調定部1001、Aコイル調定部1002は自ら消磁コイルの通電量調定を行う必要はなく、調定演算を外部のコンピュータ1401に委譲することができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態5に係る消磁コイル調定プログラムによれば、コンピュータで実施の形態1に係る消磁コイル調定方法を実現できるので、調定演算を外部のコンピュータに委譲することができ、消磁管制装置の調定演算処理を軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態1に係る消磁コイル調定方法の、全体フローを示すものである。
【図2】調定水深について説明するものである。
【図3】最急降下法の実行イメージを示すものである。
【図4】非線形制約条件下における最急降下法の実行イメージを示すものである。
【図5】実施の形態1に係る消磁コイル調定方法で調定を実際に行って磁場を計算した結果について、非消磁の総合磁場の最大値で無次元化したものである。
【図6】図5を成分毎に分けて示すものである。
【図7】実施の形態1に係る消磁管制方法の全体フローを示すものである。
【図8】実施の形態1に係る消磁管制法を採用した時の消磁効果を示すものである。
【図9】実施の形態1に係る消磁管制法を採用した時の消磁効果を示すものである。
【図10】実施の形態2に係る消磁管制装置の機能ブロック図を示すものである。
【図11】実施の形態3に係る消磁管制方法の全体フローを示すものである。
【図12】実施の形態4における消磁管制装置の機能ブロック図を示すものである。
【図13】実施の形態5に係る消磁コイル調定プログラムを実装したコンピュータと、消磁管制装置1000との連動イメージを示すものである。
【図14】船舶に搭載されている消磁コイルの様子を示すものである。
【図15】消磁コイルによる各座標軸方向の消磁の様子を示すものである。
【図16】ミスフィットを、非消磁の総合磁場の最大値で無次元化した値を示すものである。
【符号の説明】
【0061】
1000 消磁管制装置、1001 Mコイル・Lコイル調定部、1002 Aコイル調定部、1003 Mコイル・Lコイル管制係数算定部、1004 Aコイル管制係数算定部、1005 Mコイル・Lコイル管制部、1006 Aコイル管制部、1007 Mコイル・Lコイル調定値入力部、1008 Aコイル調定値入力部、1101 船舶磁場センサ、1401 コンピュータ、1402 演算手段、1403 記憶手段、1404 消磁コイル調定プログラム。
【技術分野】
【0001】
本発明は、消磁コイルを有する船舶の消磁コイル調定方法、消磁管制方法、消磁管制装置、船舶及び消磁コイル調定プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、船舶の消磁コイル通電量を調定する技術として、例えば『船舶の磁性体からなる船体のX,Y,Z方向の外部磁界を打ち消すために船体内に複数個の消磁コイル5を設けるとともに当該船体内に複数個の磁気検知器からなる磁気監視部1を設置し、各磁気検知器から測定された船内磁界に基づいて算出した船外磁気モーメントと、予め測定、算出した各消磁コイル効果による船外磁気モーメントとから、前記外部磁界を最小にする消磁電流を決定して、各消磁コイルに通電する構成であり、これにより常時最適な消磁状態を維持する。』というものが提案されている(特許文献1)。
【特許文献1】特開平8−78234号公報(要約)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来の技術では、各消磁コイルが1つの座標軸方向に発生させる磁場を前提に、各消磁コイルの通電量を調定していた。
ところが、実際には各消磁コイルは複数の座標軸方向に磁場を発生させており、これらの影響により、1つの座標軸方向に発生させる磁場を前提に調定した通電量は必ずしも最適なものとはならず、調定誤差、いわゆるミスフィットが大きくなるという課題があった。
【0004】
本発明は、上記のような課題を解決し、ミスフィットを低減できる消磁コイル調定方法等を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る消磁コイル調定方法は、
消磁コイルとしてMコイル、Lコイル及びAコイルを有する船舶の消磁コイル調定方法において、
前記Mコイルが上下方向の消磁に与える影響、前記Mコイルが前後方向の消磁に与える影響、前記Lコイルが前後方向の消磁に与える影響及び前記Lコイルが上下方向の消磁に与える影響を同時に評価する第1の評価ステップと、
前記第1の評価ステップの結果に基づき、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を決定する第1の決定ステップと、
前記Aコイルが左右方向の消磁に与える影響を評価する第2の評価ステップと、
前記第2の評価ステップの結果に基づき、前記Aコイルの通電量を決定する第2の決定ステップとを有することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る消磁コイル調定方法によれば、MコイルとLコイルを単独で調定する場合と比較して、ミスフィットを低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
実施の形態1.
図1は、本発明の実施の形態1に係る消磁コイル調定方法の、全体フローを示すものである。
(S101)
Mコイルが上下方向の消磁に与える影響、Mコイルが前後方向の消磁に与える影響、Lコイルが前後方向の消磁に与える影響及び前記Lコイルが上下方向の消磁に与える影響を同時に評価する。詳細は、後述の式2で述べる。
(S102)
ステップS101の結果に基づき、Mコイル及びLコイルの通電量を決定する。詳細は後述の図3及び図4で述べる。
(S103)
Aコイルが左右方向の消磁に与える影響を評価する。詳細は、後述の式4で述べる。
(S104)
ステップS103の結果に基づき、Aコイルの通電量を決定する。
【0008】
ここで、以後の説明の理解を容易にするために、従来の消磁コイル調定方法とその課題について説明する。
【0009】
図14は、船舶に搭載されている消磁コイルの様子を示すものである。
船体および船舶に積み込まれる磁性搭載品は、地磁気の影響を受け周辺に誘導磁場を生ずる。さらにこれらが永久磁気を帯びていると、これによっても磁場を生ずる。
機雷が敷設される可能性のある危険海域を航行する船舶ではその任務を遂行するため、搭載品の磁性管理を行い、できるだけ発生磁場を少なくするようにするとともに、複数の消磁コイルを搭載し、積極的に磁場を減らすことが行われている。
通常はMコイル、LコイルおよびAコイルと呼ばれるコイルが複数個搭載されており、それぞれ誘導分用と永久分用(APコイル、LPコイル)を持っている。各コイルの通電量は、船舶が周辺に発生する磁場を打ち消すよう調整される。
【0010】
図15は、消磁コイルによる各座標軸方向の消磁の様子を示すものである。
船舶の磁場の発生源である船体および磁性搭載品は、磁気ダイポールとみなして周辺磁場を評価することができる。一方、消磁コイルも一種の磁気ダイポールと見なすことができる。Mコイルは上下方向、Lコイルは前後方向、Aコイルは左右方向の磁気ダイポールとみなせるから、それぞれのコイルが搭載品の磁気ダイポールの各成分を消すように選べば良い。
具体的には、ある水深における船舶の発生磁場の各成分を計算、あるいは計測し、これらの磁場成分を消すよう各コイルの通電量を調整する。Mコイルは上下方向の成分、Lコイルは前後方向の成分、Aコイルは左右方向の成分を消すよう各コイルの通電量を調整する。
【0011】
コイル調定は、通電電流を試行錯誤で決定するか、あるいは、ミスフィットが最小となるよう最小自乗法を使って決定される。試行錯誤で通電量を決定する場合は、コイルの数が多いため経験と手間を要する。
【0012】
上述のコイル調定は、ある定まった方位と姿勢で行うが、実際の船舶は常にこの状態で走るわけではない。方位や姿勢が変化すると、それに応じて船舶の誘導磁気が変化するから、その変化に対応して通電量を調整しないと良好な消磁状態が維持できない。
このため船舶には消磁管制装置が搭載されており、船舶の方位・姿勢の変化に応じて自動的にコイル電流を調整し、常に良好な消磁状態を保つようにしている。
ロール、ピッチを無視し、方位のみに着目すると、各M、L、Aコイルの通電量は、次式のように調整される。
【数1】
すなわち、地磁気が一定であれば、誘導磁気の消磁のためのMコイル電流は方位に対して一定、Lコイル電流は方位のCos、A電流コイルは方位のSinで変化するよう管制される。
【0013】
消磁コイルの原理については上述のとおりであるが、設置できるコイルの数には限りがあるから、完全に発生磁場を消し去ることができず、常に消磁しきれない磁場(ミスフィット)が残る。特に問題となるのは、Mコイルは上下方向の成分、Lコイルは前後方向の成分、Aコイルは左右方向の成分を消すことを前提にコイル調定、および管制を実施している点である。
【0014】
図16は、Mコイルで上下方向の成分、Lコイルで前後方向の成分、Aコイルで左右方向の磁場の成分のみを消磁するように各コイルの通電量を単独で調定した(図16の上段)後、全コイルに調定した電流を流したときのミスフィット(図16の下段)を、非消磁の総合磁場の最大値で無次元化した値を示すものである。
【0015】
単独で調定したときには、各成分は十分消磁されているが、全コイルに通電した場合は却ってミスフィットが大きくなっている。これは、次のような理由による。
すなわち、Mコイルは上下方向の磁場のみを、またLコイルは前後方向の磁場のみを発生するとして単独で各成分を調定したが、実際はMコイルからは前後方向、Lコイルからは上下方向の成分が発生するため、全コイル通電時には、単独で調定したときとは異なった状態となってしまい、却ってミスフィットが大きくなったからである。
【0016】
上記のような課題を解決するため、本発明に係る消磁コイル調定方法では、以下のような考え方をとる。
現状の問題点は、Mコイルは上下方向の磁場のみを、またLコイルは前後方向の磁場のみを発生することを前提としていることが原因で発生しているから、この問題点を解決するためには次のように考えれば良い。
すなわち、MコイルとLコイルを使って、上下および前後方向の磁場を同時に消すように調定すれば良い。Aコイルに関しては従来どおりで良い。
【0017】
以降では、図1のステップS101〜ステップS104の各ステップの内容について説明する。
【0018】
図1のステップS101〜ステップS102について説明する。ここでは、永久磁場と誘導磁場の消磁を同時に考える。
図1のステップS101〜ステップS102では、調定水深において、船舶の発生磁場の計算値または計測値の成分と、各M、Lコイル発生磁場成分の合計から求めた誤差の自乗が最小となるよう、各M、Lコイルの通電量を決定する。
【0019】
図2は、調定水深について説明するものである。図2に示すように、船底下の所定距離の水深のことを調定水深と呼び、船舶の発生磁場の計算値または計測値は、この水深における値を用いる。
【0020】
ステップS101の内容を説明する。
ステップS101において、Mコイル、Lコイルの通電量初期値を適宜設定し、以下の式2を用いてミスフィットを求める。このミスフィットが小さいほど、最適な通電量に近いものと評価することができる。
【数2】
このとき、コイル通電量に制限があれば、以下の制限を課す。
【数3】
【0021】
次に、ステップS102において、式2のミスフィットの値が最小となるように、各Mコイル、Lコイルの通電量を定める。実際には、コイルの通電量には物理的な制約があるため、式3の制約条件を課す。
各Mコイル、Lコイルの通電量を定める方法は種々あるが、本実施の形態1では、最急降下法を用いる例を説明する。
【0022】
図3は、最急降下法の実行イメージを示すものである。
最急降下法とは、評価関数曲線の勾配が最も大きい方向へ評価点を移動させることを所定回数繰り返す方法である。この方法によれば、比較的少ない反復回数で、求めたい評価点の近傍に到達することができる。
式2のミスフィットの値が最小となるような各Mコイル、Lコイルの通電量は、このような最急降下法による反復演算で求めることができる。
【0023】
図4は、非線形制約条件下における最急降下法の実行イメージを示すものである。
上述の式3のような制約条件が課された場合、最急降下法により評価点を反復移動させていくと、制約条件に相当する界面に到達する(図3の「制約条件」)。
この場合、制約条件を越えて反復移動を繰り返しても、当該制約条件に反する評価点しか得られない。そこで、かかる制約条件がある場合には、制約条件の界面に到達した時点で、移動方向を反転させ、制約違反とならないように反復移動を繰り返す(図4の「反射する」)ことで、制約条件を満たす近傍解を得ることができる。
図4に示す非線形最急降下法により、式3の制約条件を満たしつつ、式2のミスフィットの値が最小となるような各Mコイル、Lコイルの通電量を求めることができる。
【0024】
次に、図1のステップS103〜ステップS104について説明する。
図1のステップS103〜ステップS104では、調定水深において、船舶の発生磁場の計算値または計測値の成分と、各Aコイル発生磁場成分の合計から求めた誤差の自乗が最小となるよう、各Aコイルの通電量を決定する。
【0025】
まず、ステップS103において、Aコイルの通電量初期値を適宜設定し、以下の式4を用いてミスフィットを求める。このミスフィットが小さいほど、最適な通電量に近いものと評価することができる。
【数4】
このとき、コイル通電量に制限があれば、以下の制限を課す。
【数5】
【0026】
次に、ステップS104において、式4のミスフィットの値が最小となるように、各Aコイルの通電量を定める。実際には、コイルの通電量には物理的な制約があるため、式5の制約条件を課す。
各Aコイルの通電量は、M、Lコイルと同様に最急降下法を用いて求める。
【0027】
図5は、本実施の形態1に係る消磁コイル調定方法で調定を実際に行って磁場の実測値を測定した結果について、非消磁の総合磁場の最大値で無次元化したものである。
図5の右が今回の考え方で自動調定した結果の例で、左図は手動調定した結果を参考に示している。
図5のHx〜Htは、それぞれ船首尾方向磁場、左右方向磁場、上下方向磁場および
総合磁場(3方向を合成したもの)を示している。
【0028】
図6は、図5を成分毎に分けて示すものである。
図5〜図6に示すように、本実施の形態1に係る消磁コイル調定方法によれば、従来の手動による調定に比べミスフィットが小さくなっていることが分かる。
【0029】
次に、図1に示す消磁コイル調定方法を基に、船舶の方位に合わせて各コイルの通電量を動的に制御する、即ち消磁管制の方法について説明する。
【0030】
図7は、本実施の形態1に係る消磁管制方法の、全体フローを示すものである。
(S701)
図1の消磁コイル調定方法を用いて、磁気方位0度及び磁気方位180度におけるMコイル、Lコイルの通電量を調定する。
(S702)
図1の消磁コイル調定方法を用いて、磁気方位90度及び磁気方位270度におけるAコイルの通電量を調定する。
(S703)
ステップS701の結果に基づき、Mコイル、Lコイルの管制計算の比例定数を算定する。詳細は、後述の式7〜式11で述べる。
(S704)
ステップS702の結果に基づき、Aコイルの管制計算の比例定数を算定する。詳細は、後述の式12〜式16で述べる。
(S705)
ステップS703の結果に基づき、磁気方位に応じてMコイル、Lコイルの通電量を管制する。磁気方位が変動すれば、それに応じて管制することを繰り返す。
(S706)
ステップS704の結果に基づき、磁気方位に応じてAコイルの通電量を管制する。磁気方位が変動すれば、それに応じて管制することを繰り返す。
【0031】
ここで、以後の説明の理解を容易にするために、従来の消磁管制方法とその課題について説明する。
従来の消磁コイル調定方法においては、Mコイルは上下方向の磁場のみを、またLコイルは前後方向の磁場のみを発生することを前提として調定を行っているため、ミスフィットが大きくなってしまうことを説明した。
方位に応じて消磁コイル通電量を管制する際にも、上記と同様の前提を基に消磁管制を行っているため、やはり同様にミスフィットが大きくなるということが起こる。
【0032】
上記のような課題を解決するため、本発明に係る消磁管制方法では、以下のような考え方をとる。
すなわち、MコイルとLコイルを使って、磁場の上下および前後方向の磁場を同時に消す必要があり、誘導磁場の前後成分は方位のCosで変化するから、M、L各コイルの通電量は、方位に関する定数項と方位のCosに比例する項で管制する必要がある。
Aコイルについては従来どおり磁場の左右方向成分を消せば良く、左右成分は方位のSinで変化するから、各Aコイルの通電量は、方位に関する定数項と方位のSinに比例する項で管制すればよい。
【数6】
【0033】
次に、図7のステップS703の内容について説明する。
ステップS701で、磁気方位0度において、ミスフィットが最小となるように決定した各Ikを、MコイルとLコイルに分け、それぞれi番目のコイルの電流をIM0i、IL0iと表す。
同様に、磁気方位180度におけるi番目のコイルの電流をIM180i、IL180iと表す。
式6のIM、ILについて、各コイルに対し、
【数7】
とおくと、
【数8】
となる。
式8にψ=0を代入した左辺の値は上記IM0i、IL0iに他ならず、またψ=180を代入した左辺の値は上記IM180i、IL180iに他ならない。即ち、
【数9】
が導かれる。さらに式9の両辺を加減算することによって、次の式10が導かれる。
【数10】
したがって、式10で求められる値及び磁気方位ψを用いて、各M、Lコイルの通電量は、
【数11】
のように管制すればよいことになる。
【0034】
次に、図7のステップS704の内容について説明する。
ステップS702で、磁気方位90度において、ミスフィットが最小となるように決定した各Ikのうち、i番目のコイルの電流をIA90iと表す。
同様に、磁気方位270度におけるi番目のコイルの電流をIA270iと表す。
式6のIAについて、各Aコイルに対し、
【数12】
とおくと、
【数13】
となる。
式13にψ=90を代入した左辺の値は上記IA90iに他ならず、またψ=270を代入した左辺の値は上記IA270iに他ならない。即ち、
【数14】
が導かれる。さらに式14の両辺を加減算することによって、次の式15が導かれる。
【数15】
したがって、式15で求められる値及び磁気方位ψを用いて、各Aコイルの通電量は、
【数16】
のように管制すればよいことになる。
【0035】
図8及び図9は、本実施の形態1に係る消磁管制法を採用した時の消磁効果を示すものである。
図8は磁気方位90度に対する結果の総合磁場を非消磁の総合磁場の最大値で無次元化した値で、従来の管制方法に比べ消磁効果が大きくなっていることを示している。
図9は、本特許で求めた総合磁場の最大値と、従来の方法で求めた総合磁場の最大値との比を表し、方位が0、90、180、270度に対する結果である。各方位とも従来の方法に比べ消磁効果が大きいことを示している。
なお、図9の「N−Run」とは、北向きに航走した場合(方位0°に相当)を示しており、同図の「E−Run」とは東向きに航走した場合(方位90°)を示している。
【0036】
本実施の形態1では、最急降下法を用いた反復演算により、ミスフィットの値が最小となる各コイルの通電量を求める例を説明したが、ミスフィットを最小とする通電量の求め方はこれに限るものではなく、任意の解法を用いることができる。
【0037】
以上のように、本実施の形態1に係る消磁コイル調定方法によれば、
消磁コイルとしてMコイル、Lコイル及びAコイルを有する船舶の消磁コイル調定方法において、
前記Mコイルが上下方向の消磁に与える影響、前記Mコイルが前後方向の消磁に与える影響、前記Lコイルが前後方向の消磁に与える影響及び前記Lコイルが上下方向の消磁に与える影響を同時に評価する第1の評価ステップと、
前記第1の評価ステップの結果に基づき、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を決定する第1の決定ステップと、
前記Aコイルが左右方向の消磁に与える影響を評価する第2の評価ステップと、
前記第2の評価ステップの結果に基づき、前記Aコイルの通電量を決定する第2の決定ステップとを有するので、
MコイルとLコイルを単独で調定する場合と比較して、ミスフィットを低減させることができる。
【0038】
また、前記第1の評価ステップは、
調定水深において、前記Mコイル及び前記Lコイルが船底下の特定位置に発生させる磁場のX成分合計を求めるステップと、
前記調定水深において、前記特定位置の船舶磁場X成分と、前記X成分合計との誤差を求め、当該誤差を自乗してX成分誤差評価値を求めるステップと、
前記調定水深において、前記Mコイル及び前記Lコイルが船底下の特定位置に発生させる磁場のZ成分合計を求めるステップと、
前記調定水深において、前記特定位置の船舶磁場Z成分と、前記Z成分合計との誤差を求め、当該誤差を自乗してZ成分誤差評価値を求めるステップと、
前記X成分誤差評価値と前記Z成分誤差評価値の和を、船底下の複数の位置において求め、これらを合算してXZ成分評価値を求めるステップとを有するので、
Mコイルが上下方向の消磁に与える影響、Mコイルが前後方向の消磁に与える影響、Lコイルが前後方向の消磁に与える影響及びLコイルが上下方向の消磁に与える影響を同時に考慮し、総合的に最適となるように評価することができる。
【0039】
また、前記第1の決定ステップは、
前記XZ成分評価値が最小となるように、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を決定するので、
前記第1の決定ステップの結果に基づき、最急降下法などの反復演算手法を含む任意の解法を用いて、適切なMコイル及びLコイル通電量を決定できる。
【0040】
また、前記第2の評価ステップは、
前記調定水深において、前記Aコイルが船底下の特定位置に発生させる磁場のY成分合計を求めるステップと、
前記調定水深において、前記特定位置の船舶磁場Y成分と、前記Y成分合計との誤差を求め、当該誤差を自乗してY成分誤差評価値を求めるステップと、
前記Y成分誤差評価値を、船底下の複数の位置において求め、これらを合算してY成分評価値を求めるステップとを有するので、
Aコイルが左右方向の消磁に与える影響を適切に評価することができる。
【0041】
また、前記第2の決定ステップは、
前記Y成分評価値が最小となるように、前記Aコイルの通電量を決定するので、
前記第2の決定ステップの結果に基づき、最急降下法などの反復演算手法を含む任意の解法を用いて、適切なAコイル通電量を決定できる。
【0042】
また、本実施の形態1に係る消磁管制方法によれば、
上記の消磁コイル調定方法を用いて、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求める第1の調定ステップと、
上記の消磁コイル調定方法を用いて、前記Aコイルの通電量を求める第2の調定ステップと、
前記第1の調定ステップの結果に基づき、磁気方位に対する前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量の管制計算の比例定数値を求める第1の管制係数算定ステップと、
前記第2の調定ステップの結果に基づき、磁気方位に対する前記Aコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める第2の管制係数算定ステップと、
前記第1の管制係数算定ステップの結果に基づき、磁気方位に応じて前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を管制する第1の管制ステップと、
前記第2の管制係数算定ステップの結果に基づき、磁気方位に応じて前記Aコイルの通電量を管制する第2の管制ステップを有するので、
上記消磁コイル調定方法の結果を用いて、MコイルとLコイルを単独で調定する場合と比較してミスフィットを低減させ、より大きな消磁効果を得ることができる。
【0043】
また、前記第1の調定ステップにおいて、
磁気方位0度における前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求めるとともに、磁気方位180度における前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求め、
前記第1の管制係数算定ステップは、
磁気方位0度における前記Mコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Mコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してMコイル定数成分を求めるステップと、
磁気方位0度における前記Mコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Mコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してMコイル余弦比例成分を求めるステップと、
磁気方位0度における前記Lコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Lコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してLコイル定数成分を求めるステップと、
磁気方位0度における前記Lコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Lコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してLコイル余弦比例成分を求めるステップとを有するので、
磁気方位0度及び磁気方位180度におけるM、Lコイル管制係数を消磁管制開始前に予め求めておき、求めた値に基づき消磁管制を行うことができる。即ち、管制中の調定演算を行う手間が不要となる。
【0044】
また、前記第2の調定ステップにおいて、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量を求めるとともに、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量を求め、
前記第2の管制係数算定ステップは、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量と、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してAコイル定数成分を求めるステップと、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量と、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してAコイル正弦比例成分を求めるステップとを有するので、
磁気方位90度及び磁気方位270度におけるAコイル管制係数を消磁管制開始前に予め求めておき、求めた値に基づき消磁管制を行うことができる。即ち、管制中の調定演算を行う手間が不要となる。
【0045】
また、前記第1の管制ステップにおいては、
前記Mコイル定数成分と、
前記Mコイル余弦比例成分の磁気方位に対する余弦成分との和を基に、
前記Mコイルの通電量の管制を行い、
前記Lコイル定数成分と、
前記Lコイル余弦比例成分の磁気方位に対する余弦成分との和を基に、
前記Lコイルの通電量の管制を行うので、
前記第1の管制係数算定ステップの結果に基づき、磁気方位に応じてMコイル、Lコイルの通電量を管制することができる。
【0046】
また、前記第2の管制ステップにおいては、
前記Aコイル定数成分と、
前記Aコイル正弦比例成分の磁気方位に対する正弦成分との和を基に、
前記Aコイルの通電量の管制を行うので、
前記第2の管制係数算定ステップの結果に基づき、磁気方位に応じてAコイルの通電量を管制することができる。
【0047】
実施の形態2.
図10は、本発明の実施の形態2に係る消磁管制装置の機能ブロック図を示すものである。
消磁管制装置1000は、Mコイル・Lコイル調定部1001、Aコイル調定部1002、Mコイル・Lコイル管制係数算定部1003、Aコイル管制係数算定部1004、Mコイル・Lコイル管制部1005、Aコイル管制部1006を有する。
Mコイル・Lコイル調定部1001は、実施の形態1で述べた消磁コイル調定方法を用いて、Mコイル及びLコイルの通電量を求める。
Aコイル調定部1002は、実施の形態1で述べた消磁コイル調定方法を用いて、Aコイルの通電量を求める。
Mコイル・Lコイル管制係数算定部1003は、Mコイル・Lコイル調定部1001の処理結果に基づき、磁気方位に対するMコイル及びLコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める。
Aコイル管制係数算定部1004は、Aコイル調定部1002の処理結果に基づき、磁気方位に対するAコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める。
Mコイル・Lコイル管制部1005は、Mコイル・Lコイル管制係数算定部1003の処理結果及び磁気方位に基づき、Mコイル及びLコイルの通電量を管制する。
Aコイル管制部1006は、Aコイル管制係数算定部1004の処理結果及び磁気方位に基づき、Aコイルの通電量を管制する。
【0048】
なお、図10の各機能ブロック1001〜1006の動作は、図7のステップS701〜ステップS706にそれぞれ対応するものであるため、説明は省略する。
【0049】
以上のように、本実施の形態2に係る消磁管制装置によれば、実施の形態1で述べた消磁管制方法を実現する消磁管制装置を得ることができる。
【0050】
実施の形態3.
実施の形態1に係る消磁管制方法は、M、L、Aコイルの調定を行った後、調定後の各コイル通電量を用いて、磁気方位に合わせて消磁管制を行うものである。
本発明の実施の形態3に係る消磁管制方法では、磁気方位及び地磁気成分に合わせて消磁管制を行うことを繰り返すものである。
【0051】
(式6)から分かるように、コイルの通電量は方位のほかに、地磁気の垂直、水平成分の影響も受ける。地磁気の垂直、水平成分は場所によって変化するから、通電量もそれに応じて変化させなくてはならない。行動範囲が狭ければ地磁気は一定としても影響は少ないが、広ければ影響を受ける。
本実施の形態3に係る消磁管制方法では、誘導磁気の消磁管制については、方位のほかに、地磁気の垂直、水平成分を入力項目として、それらの信号で通電量を制御する。なお、永久磁気についてはAPコイル、LPコイルで消磁すればよい。
【0052】
図11は、本実施の形態3に係る消磁管制方法の全体フローを示すものである。
ステップS1101〜ステップS1104は、図7のステップS701〜ステップS704と同様であるため、説明を省略する。
(S1105)
ステップS1103の結果に基づき、磁気方位及び地磁気成分に応じてMコイル、Lコイルの通電量を管制する。磁気方位や地磁気成分が変動すれば、それに応じて管制することを、所定時間繰り返す。
(S1106)
ステップS1104の結果に基づき、磁気方位及び地磁気成分に応じてAコイルの通電量を管制する。磁気方位や地磁気成分が変動すれば、それに応じて管制することを、所定時間繰り返す。
【0053】
以上のように、本実施の形態3に係る消磁管制方法によれば、磁気方位及び地磁気成分の変化に基づき消磁管制を行うので、より精度の高い消磁管制を行うことができる。
【0054】
実施の形態4.
図12は、本発明の実施の形態4に係る消磁管制装置の機能ブロック図を示すものである。
消磁管制装置1000は、Mコイル・Lコイル調定部1001、Aコイル調定部1002、Mコイル・Lコイル管制係数算定部1003、Aコイル管制係数算定部1004、Mコイル・Lコイル管制部1005、Aコイル管制部1006を有する。
Mコイル・Lコイル調定部1001は、実施の形態1で述べた消磁コイル調定方法を用いて、Mコイル及びLコイルの通電量を求める。
Aコイル調定部1002は、実施の形態1で述べた消磁コイル調定方法を用いて、Aコイルの通電量を求める。
Mコイル・Lコイル管制係数算定部1003は、Mコイル・Lコイル調定部1001の処理結果に基づき、磁気方位及び地磁気成分に対するMコイル及びLコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める。
Aコイル管制係数算定部1004は、Aコイル調定部1002の処理結果に基づき、磁気方位及び地磁気成分に対するAコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める。
Mコイル・Lコイル管制部1005は、Mコイル・Lコイル管制係数算定部1003の処理結果、磁気方位及び地磁気成分に基づき、Mコイル及びLコイルの通電量を管制する。
Aコイル管制部1006は、Aコイル管制係数算定部1004の処理結果、磁気方位及び地磁気成分に基づき、Aコイルの通電量を管制する。
【0055】
なお、図12の各機能ブロック1001〜1006の動作は、図11のステップS1101〜ステップS1106にそれぞれ対応するものであるため、説明は省略する。
【0056】
以上のように、本実施の形態4に係る消磁管制装置によれば、実施の形態3で述べた消磁管制方法を実現する消磁管制装置を得ることができる。
【0057】
実施の形態5.
図13は、本発明の実施の形態5に係る消磁コイル調定プログラムを実装したコンピュータと、消磁管制装置1000との連動イメージを示すものである。
コンピュータ1401は、演算手段1402、記憶手段1403を有する。
記憶手段1403は、消磁コイル調定プログラム1404を格納している。
演算手段1402は、消磁コイル調定プログラム1404の指示に従って、図1のフローチャートに示す調定演算を行い、その結果を消磁管制装置1000に渡す。
消磁管制装置1000は、Mコイル・Lコイル調定値入力部1007、Aコイル調定値入力部1008を有する。
Mコイル・Lコイル調定値入力部1007、Aコイル調定値入力部1008は、演算手段1402の調定演算結果を受け取る。
【0058】
消磁管制装置1000は、Mコイル・Lコイル調定値入力部1007、Aコイル調定値入力部1008にて演算手段1402の演算結果を受け取り、消磁管制を行う。
本実施の形態5においては、Mコイル・Lコイル調定部1001、Aコイル調定部1002は自ら消磁コイルの通電量調定を行う必要はなく、調定演算を外部のコンピュータ1401に委譲することができる。
【0059】
以上のように、本実施の形態5に係る消磁コイル調定プログラムによれば、コンピュータで実施の形態1に係る消磁コイル調定方法を実現できるので、調定演算を外部のコンピュータに委譲することができ、消磁管制装置の調定演算処理を軽量化できる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施の形態1に係る消磁コイル調定方法の、全体フローを示すものである。
【図2】調定水深について説明するものである。
【図3】最急降下法の実行イメージを示すものである。
【図4】非線形制約条件下における最急降下法の実行イメージを示すものである。
【図5】実施の形態1に係る消磁コイル調定方法で調定を実際に行って磁場を計算した結果について、非消磁の総合磁場の最大値で無次元化したものである。
【図6】図5を成分毎に分けて示すものである。
【図7】実施の形態1に係る消磁管制方法の全体フローを示すものである。
【図8】実施の形態1に係る消磁管制法を採用した時の消磁効果を示すものである。
【図9】実施の形態1に係る消磁管制法を採用した時の消磁効果を示すものである。
【図10】実施の形態2に係る消磁管制装置の機能ブロック図を示すものである。
【図11】実施の形態3に係る消磁管制方法の全体フローを示すものである。
【図12】実施の形態4における消磁管制装置の機能ブロック図を示すものである。
【図13】実施の形態5に係る消磁コイル調定プログラムを実装したコンピュータと、消磁管制装置1000との連動イメージを示すものである。
【図14】船舶に搭載されている消磁コイルの様子を示すものである。
【図15】消磁コイルによる各座標軸方向の消磁の様子を示すものである。
【図16】ミスフィットを、非消磁の総合磁場の最大値で無次元化した値を示すものである。
【符号の説明】
【0061】
1000 消磁管制装置、1001 Mコイル・Lコイル調定部、1002 Aコイル調定部、1003 Mコイル・Lコイル管制係数算定部、1004 Aコイル管制係数算定部、1005 Mコイル・Lコイル管制部、1006 Aコイル管制部、1007 Mコイル・Lコイル調定値入力部、1008 Aコイル調定値入力部、1101 船舶磁場センサ、1401 コンピュータ、1402 演算手段、1403 記憶手段、1404 消磁コイル調定プログラム。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
消磁コイルとしてMコイル、Lコイル及びAコイルを有する船舶の消磁コイル調定方法において、
前記Mコイルが上下方向の消磁に与える影響、前記Mコイルが前後方向の消磁に与える影響、前記Lコイルが前後方向の消磁に与える影響及び前記Lコイルが上下方向の消磁に与える影響を同時に評価する第1の評価ステップと、
前記第1の評価ステップの結果に基づき、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を決定する第1の決定ステップと、
前記Aコイルが左右方向の消磁に与える影響を評価する第2の評価ステップと、
前記第2の評価ステップの結果に基づき、前記Aコイルの通電量を決定する第2の決定ステップとを有することを特徴とする消磁コイル調定方法。
【請求項2】
前記第1の評価ステップは、
調定水深において、前記Mコイル及び前記Lコイルが船底下の特定位置に発生させる磁場のX成分合計を求めるステップと、
前記調定水深において、前記特定位置の船舶磁場X成分と、前記X成分合計との誤差を求め、当該誤差を自乗してX成分誤差評価値を求めるステップと、
前記調定水深において、前記Mコイル及び前記Lコイルが船底下の特定位置に発生させる磁場のZ成分合計を求めるステップと、
前記調定水深において、前記特定位置の船舶磁場Z成分と、前記Z成分合計との誤差を求め、当該誤差を自乗してZ成分誤差評価値を求めるステップと、
前記X成分誤差評価値と前記Z成分誤差評価値の和を、船底下の複数の位置において求め、これらを合算してXZ成分評価値を求めるステップとを有することを特徴とする請求項1に記載の消磁コイル調定方法。
【請求項3】
前記第1の決定ステップは、
前記XZ成分評価値が最小となるように、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を決定することを特徴とする請求項2に記載の消磁コイル調定方法。
【請求項4】
前記第2の評価ステップは、
前記調定水深において、前記Aコイルが船底下の特定位置に発生させる磁場のY成分合計を求めるステップと、
前記調定水深において、前記特定位置の船舶磁場Y成分と、前記Y成分合計との誤差を求め、当該誤差を自乗してY成分誤差評価値を求めるステップと、
前記Y成分誤差評価値を、船底下の複数の位置において求め、これらを合算してY成分評価値を求めるステップとを有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の消磁コイル調定方法。
【請求項5】
前記第2の決定ステップは、
前記Y成分評価値が最小となるように、前記Aコイルの通電量を決定することを特徴とする請求項4に記載の消磁コイル調定方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の消磁コイル調定方法を用いて、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求める第1の調定ステップと、
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の消磁コイル調定方法を用いて、前記Aコイルの通電量を求める第2の調定ステップと、
前記第1の調定ステップの結果に基づき、磁気方位に対する前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める第1の管制係数算定ステップと、
前記第2の調定ステップの結果に基づき、磁気方位に対する前記Aコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める第2の管制係数算定ステップと、
前記第1の管制係数算定ステップの結果に基づき、磁気方位に応じて前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を管制する第1の管制ステップと、
前記第2の管制係数算定ステップの結果に基づき、磁気方位に応じて前記Aコイルの通電量を管制する第2の管制ステップを有することを特徴とする消磁管制方法。
【請求項7】
前記第1の調定ステップにおいて、
磁気方位0度における前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求めるとともに、磁気方位180度における前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求め、
前記第1の管制係数算定ステップは、
磁気方位0度における前記Mコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Mコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してMコイル定数成分を求めるステップと、
磁気方位0度における前記Mコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Mコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してMコイル余弦比例成分を求めるステップと、
磁気方位0度における前記Lコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Lコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してLコイル定数成分を求めるステップと、
磁気方位0度における前記Lコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Lコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してLコイル余弦比例成分を求めるステップとを有することを特徴とする請求項6に記載の消磁管制方法。
【請求項8】
前記第2の調定ステップにおいて、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量を求めるとともに、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量を求め、
前記第2の管制係数算定ステップは、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量と、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してAコイル定数成分を求めるステップと、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量と、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してAコイル正弦比例成分を求めるステップとを有することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の消磁管制方法。
【請求項9】
前記第1の管制ステップにおいては、
前記Mコイル定数成分と、
前記Mコイル余弦比例成分の磁気方位に対する余弦成分との和を基に、
前記Mコイルの通電量の管制を行い、
前記Lコイル定数成分と、
前記Lコイル余弦比例成分の磁気方位に対する余弦成分との和を基に、
前記Lコイルの通電量の管制を行うことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の消磁管制方法。
【請求項10】
前記第2の管制ステップにおいては、
前記Aコイル定数成分と、
前記Aコイル正弦比例成分の磁気方位に対する正弦成分との和を基に、
前記Aコイルの通電量の管制を行うことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の消磁管制方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の消磁コイル調定方法を用いて、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求める第1の調定手段と、
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の消磁コイル調定方法を用いて、前記Aコイルの通電量を求める第2の調定手段と、
前記第1の調定手段の処理結果に基づき、磁気方位に対する前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める第1の管制係数算定手段と、
前記第2の調定手段の処理結果に基づき、磁気方位に対する前記Aコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める第2の管制係数算定手段と、
前記第1の管制係数算定手段の処理結果に基づき、磁気方位に応じて前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を管制する第1の管制手段と、
前記第2の管制係数算定手段の処理結果に基づき、磁気方位に応じて前記Aコイルの通電量を管制する第2の管制手段を有することを特徴とする消磁管制装置。
【請求項12】
前記第1の調定手段は、
磁気方位0度における前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求めるとともに、磁気方位180度における前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求め、
前記第1の管制係数算定手段は、
磁気方位0度における前記Mコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Mコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してMコイル定数成分を求め、
磁気方位0度における前記Mコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Mコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してMコイル余弦比例成分を求め、
磁気方位0度における前記Lコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Lコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してLコイル定数成分を求め、
磁気方位0度における前記Lコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Lコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してLコイル余弦比例成分を求めることを特徴とする請求項11に記載の消磁管制装置。
【請求項13】
前記第2の調定手段は、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量を求めるとともに、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量を求め、
前記第2の管制係数算定手段は、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量と、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してAコイル定数成分を求め、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量と、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してAコイル正弦比例成分を求めることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の消磁管制装置。
【請求項14】
前記第1の管制手段は、
前記Mコイル定数成分と、
前記Mコイル余弦比例成分の磁気方位に対する余弦成分との和を基に、
前記Mコイルの通電量の管制を行い、
前記Lコイル定数成分と、
前記Lコイル余弦比例成分の磁気方位に対する余弦成分との和を基に、
前記Lコイルの通電量の管制を行うことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の消磁管制装置。
【請求項15】
前記第2の管制手段は、
前記Aコイル定数成分と、
前記Aコイル正弦比例成分の磁気方位に対する正弦成分との和を基に、
前記Aコイルの通電量の管制を行うことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の消磁管制装置。
【請求項16】
請求項6ないし請求項10のいずれかに記載の消磁管制方法を用いて消磁コイルの管制を行う管制手段を有することを特徴とする船舶。
【請求項17】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の消磁コイル調定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする消磁コイル調定プログラム。
【請求項1】
消磁コイルとしてMコイル、Lコイル及びAコイルを有する船舶の消磁コイル調定方法において、
前記Mコイルが上下方向の消磁に与える影響、前記Mコイルが前後方向の消磁に与える影響、前記Lコイルが前後方向の消磁に与える影響及び前記Lコイルが上下方向の消磁に与える影響を同時に評価する第1の評価ステップと、
前記第1の評価ステップの結果に基づき、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を決定する第1の決定ステップと、
前記Aコイルが左右方向の消磁に与える影響を評価する第2の評価ステップと、
前記第2の評価ステップの結果に基づき、前記Aコイルの通電量を決定する第2の決定ステップとを有することを特徴とする消磁コイル調定方法。
【請求項2】
前記第1の評価ステップは、
調定水深において、前記Mコイル及び前記Lコイルが船底下の特定位置に発生させる磁場のX成分合計を求めるステップと、
前記調定水深において、前記特定位置の船舶磁場X成分と、前記X成分合計との誤差を求め、当該誤差を自乗してX成分誤差評価値を求めるステップと、
前記調定水深において、前記Mコイル及び前記Lコイルが船底下の特定位置に発生させる磁場のZ成分合計を求めるステップと、
前記調定水深において、前記特定位置の船舶磁場Z成分と、前記Z成分合計との誤差を求め、当該誤差を自乗してZ成分誤差評価値を求めるステップと、
前記X成分誤差評価値と前記Z成分誤差評価値の和を、船底下の複数の位置において求め、これらを合算してXZ成分評価値を求めるステップとを有することを特徴とする請求項1に記載の消磁コイル調定方法。
【請求項3】
前記第1の決定ステップは、
前記XZ成分評価値が最小となるように、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を決定することを特徴とする請求項2に記載の消磁コイル調定方法。
【請求項4】
前記第2の評価ステップは、
前記調定水深において、前記Aコイルが船底下の特定位置に発生させる磁場のY成分合計を求めるステップと、
前記調定水深において、前記特定位置の船舶磁場Y成分と、前記Y成分合計との誤差を求め、当該誤差を自乗してY成分誤差評価値を求めるステップと、
前記Y成分誤差評価値を、船底下の複数の位置において求め、これらを合算してY成分評価値を求めるステップとを有することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の消磁コイル調定方法。
【請求項5】
前記第2の決定ステップは、
前記Y成分評価値が最小となるように、前記Aコイルの通電量を決定することを特徴とする請求項4に記載の消磁コイル調定方法。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の消磁コイル調定方法を用いて、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求める第1の調定ステップと、
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の消磁コイル調定方法を用いて、前記Aコイルの通電量を求める第2の調定ステップと、
前記第1の調定ステップの結果に基づき、磁気方位に対する前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める第1の管制係数算定ステップと、
前記第2の調定ステップの結果に基づき、磁気方位に対する前記Aコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める第2の管制係数算定ステップと、
前記第1の管制係数算定ステップの結果に基づき、磁気方位に応じて前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を管制する第1の管制ステップと、
前記第2の管制係数算定ステップの結果に基づき、磁気方位に応じて前記Aコイルの通電量を管制する第2の管制ステップを有することを特徴とする消磁管制方法。
【請求項7】
前記第1の調定ステップにおいて、
磁気方位0度における前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求めるとともに、磁気方位180度における前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求め、
前記第1の管制係数算定ステップは、
磁気方位0度における前記Mコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Mコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してMコイル定数成分を求めるステップと、
磁気方位0度における前記Mコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Mコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してMコイル余弦比例成分を求めるステップと、
磁気方位0度における前記Lコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Lコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してLコイル定数成分を求めるステップと、
磁気方位0度における前記Lコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Lコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してLコイル余弦比例成分を求めるステップとを有することを特徴とする請求項6に記載の消磁管制方法。
【請求項8】
前記第2の調定ステップにおいて、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量を求めるとともに、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量を求め、
前記第2の管制係数算定ステップは、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量と、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してAコイル定数成分を求めるステップと、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量と、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してAコイル正弦比例成分を求めるステップとを有することを特徴とする請求項6又は請求項7に記載の消磁管制方法。
【請求項9】
前記第1の管制ステップにおいては、
前記Mコイル定数成分と、
前記Mコイル余弦比例成分の磁気方位に対する余弦成分との和を基に、
前記Mコイルの通電量の管制を行い、
前記Lコイル定数成分と、
前記Lコイル余弦比例成分の磁気方位に対する余弦成分との和を基に、
前記Lコイルの通電量の管制を行うことを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の消磁管制方法。
【請求項10】
前記第2の管制ステップにおいては、
前記Aコイル定数成分と、
前記Aコイル正弦比例成分の磁気方位に対する正弦成分との和を基に、
前記Aコイルの通電量の管制を行うことを特徴とする請求項8又は請求項9に記載の消磁管制方法。
【請求項11】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の消磁コイル調定方法を用いて、前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求める第1の調定手段と、
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の消磁コイル調定方法を用いて、前記Aコイルの通電量を求める第2の調定手段と、
前記第1の調定手段の処理結果に基づき、磁気方位に対する前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める第1の管制係数算定手段と、
前記第2の調定手段の処理結果に基づき、磁気方位に対する前記Aコイルの通電量の管制計算の比例定数を求める第2の管制係数算定手段と、
前記第1の管制係数算定手段の処理結果に基づき、磁気方位に応じて前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を管制する第1の管制手段と、
前記第2の管制係数算定手段の処理結果に基づき、磁気方位に応じて前記Aコイルの通電量を管制する第2の管制手段を有することを特徴とする消磁管制装置。
【請求項12】
前記第1の調定手段は、
磁気方位0度における前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求めるとともに、磁気方位180度における前記Mコイル及び前記Lコイルの通電量を求め、
前記第1の管制係数算定手段は、
磁気方位0度における前記Mコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Mコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してMコイル定数成分を求め、
磁気方位0度における前記Mコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Mコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してMコイル余弦比例成分を求め、
磁気方位0度における前記Lコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Lコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してLコイル定数成分を求め、
磁気方位0度における前記Lコイルの通電量と、磁気方位180度における前記Lコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してLコイル余弦比例成分を求めることを特徴とする請求項11に記載の消磁管制装置。
【請求項13】
前記第2の調定手段は、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量を求めるとともに、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量を求め、
前記第2の管制係数算定手段は、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量と、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量を合算し、当該合算値を2で除算してAコイル定数成分を求め、
磁気方位90度における前記Aコイルの通電量と、磁気方位270度における前記Aコイルの通電量の差分を求め、当該差分値を2で除算してAコイル正弦比例成分を求めることを特徴とする請求項11又は請求項12に記載の消磁管制装置。
【請求項14】
前記第1の管制手段は、
前記Mコイル定数成分と、
前記Mコイル余弦比例成分の磁気方位に対する余弦成分との和を基に、
前記Mコイルの通電量の管制を行い、
前記Lコイル定数成分と、
前記Lコイル余弦比例成分の磁気方位に対する余弦成分との和を基に、
前記Lコイルの通電量の管制を行うことを特徴とする請求項12又は請求項13に記載の消磁管制装置。
【請求項15】
前記第2の管制手段は、
前記Aコイル定数成分と、
前記Aコイル正弦比例成分の磁気方位に対する正弦成分との和を基に、
前記Aコイルの通電量の管制を行うことを特徴とする請求項13又は請求項14に記載の消磁管制装置。
【請求項16】
請求項6ないし請求項10のいずれかに記載の消磁管制方法を用いて消磁コイルの管制を行う管制手段を有することを特徴とする船舶。
【請求項17】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の消磁コイル調定方法をコンピュータに実行させることを特徴とする消磁コイル調定プログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
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【図4】
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【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2007−245791(P2007−245791A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−68523(P2006−68523)
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年3月14日(2006.3.14)
【出願人】(502116922)ユニバーサル造船株式会社 (172)
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