説明

消臭シートの製造方法

【課題】ヒドロキシアミン化合物の作用による消臭効果が一層高くなるとともに、消臭効果が長時間持続する消臭シートを製造する方法を提供する。
【解決手段】消臭シートの製造方法では、特定なヒドロキシアミン化合物、界面活性剤及び水と混和可能な有機溶剤を含む水性液を、多孔質体が繊維材料に担持されてなる活性炭担持シートに付与し、多孔質体にヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤を保持させる。有機溶剤は、極性を有し、かつ大気圧下における沸点が100℃未満である揮発性のものである。水性液は、有機溶剤を10〜50重量%含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多孔質体が担持されたシートに消臭剤が保持されてなる消臭シートの製造において、該多孔質体に消臭剤を効果的に保持させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願人は先に、アルデヒド系ガスや低級脂肪酸に対して効果的に安定した消臭性の発揮するフィルターとして、ヒドロキシアミン化合物が活性炭等の固体に担持されてなる消臭フィルターを提案した(特許文献1参照)。同文献には、ヒドロキシアミン化合物を固体に担持させる方法として、該化合物を水やエタノールに溶解や分散させてなる液を、固体と混合する方法が記載されている。しかし、ヒドロキシアミン化合物の有する優れた消臭効果を十分に発揮させるためには、該化合物を一層効果的に固体に担持させる必要がある。
【0003】
消臭剤を固体に担持させる方法に関し、特許文献2には、活性炭素の細孔内を、エタノール、イソプロピルアルコール、ベンゼン等の溶剤で予め満たした後、細孔内が溶剤で満たされた該活性炭素に対して、アニリン、p−トルイジン、アミノベンゼンスルホン酸、アミノ安息香酸等のアミン類の溶液を接触させる方法が提案されている。また、特許文献3には、活性炭素繊維紙に、鉱酸、有機酸、アミン類等の添着剤及びメタノール、エタノール、エピクロルヒドリン等の界面活性剤を含む水溶液を散布するか又は浸漬する方法が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−86436号公報
【特許文献2】特開平7−100370号公報
【特許文献3】特開平9−239267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記の特許文献2及び3に記載の方法を採用しても、ヒドロキシアミン化合物を効果的に固体に担持させることは容易ではない。
【0006】
本発明は、前述した従来技術が有する欠点を解消し得る消臭シートの製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物、界面活性剤及び水と混和可能な有機溶剤を含む水性液を、多孔質体が繊維材料に担持されてなる多孔質体担持シートに付与し、多孔質体にヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤を保持させる消臭シートの製造方法であって、
有機溶剤が極性を有し、かつ大気圧下における沸点が100℃未満である揮発性のものであり、
水性液が、有機溶剤を10〜50重量%含んでいる消臭シートの製造方法を提供するものである。
【0008】
【化1】

【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、ヒドロキシアミン化合物の作用による消臭効果が一層高くなるとともに、消臭効果が長時間持続する消臭シートを得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下本発明を、その好ましい実施形態に基づき説明する。本発明の製造方法は、多孔質体担持シート(以下、単に「担持シート」ともいう。)に、前記の(1)で表されるヒドロキシアミン化合物等を含む水性液を付与する工程を含むものである。この担持シートは、多孔質体が繊維材料に担持されてなるものである。この担持シートの詳細については後述する。
【0011】
本製造方法は、担持シートに付与する水性液の組成に特徴の一つを有するものである。詳細には、水性液は、(イ)ヒドロキシアミン化合物及び(ロ)界面活性剤を基本組成とする水を媒体とした液に、(ハ)水と混和可能な有機溶剤を配合した点に特徴の一つを有する。これら(イ)〜(ハ)の三成分を含む水性液を担持シートに付与して、該担持シート中の多孔質体にヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤を保持させることで、従来よりもヒドロキシアミン化合物の消臭作用が向上するとともに、消臭効果が長時間持続する担持シートを得ることができる。また、担持シートの厚さ方向全域にわたって、ヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤を、多孔質体に保持させることができる。更に、水性液を付与した後の乾燥時間を短縮化することも可能になる。
【0012】
ヒドロキシアミン化合物としては、前記の式(1)で表されるものが用いられる。ヒドロキシアミン化合物は、アルデヒドや低級脂肪酸、硫化水素等のガスに対して効果的に安定した消臭性能を発揮する物質である。特にアルデヒド系ガスに対して有効である。例えば、アセトアルデヒドを含むタバコ臭、ノネナール、ノナナールを含む体臭や加齢臭、デカジエナールなどを含む加熱調理油の臭いなどに有効である。
【0013】
式(1)中、R1は、水素原子、炭素数1〜5のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖又は分岐鎖のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基、2−ヒドロキシプロピル基、3−ヒドロキシプロピル基、2−ヒドロキシブチル基、3−ヒドロキシブチル基、4−ヒドロキシブチル基等が挙げられる。特に、消臭性能及び入手性の観点から、R1は、水素原子、メチル基、エチル基、ヒドロキシメチル基、2−ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子や、ヒドロキシメチル基及び2−ヒドロキシエチル基等のヒドロキシアルキル基が好ましい。
【0014】
式(2)においてR2は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は炭素数1〜5のヒドロキシアルキル基を表す。アルキル基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれであってもよく、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、各種ブチル基、各種ペンチル基、各種ヘキシル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等が挙げられる。ヒドロキシアルキル基としては、R1の説明で例示したものが挙げられる。特に、消臭性能及び入手性の観点から、R2は、水素原子、炭素数1〜3のアルキル基、ヒドロキシエチル基が好ましく、特に水素原子が好ましい。
【0015】
式(2)においてR3及びR4は、炭素数1〜5のアルカンジイル基を表す。R3及びR4は、同一でも異なっていてもよい。アルカンジイル基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、プロパン−1,2−ジイル基、テトラメチレン基等が挙げられ、特にメチレン基が好ましい。
【0016】
ヒドロキシアミン化合物の具体例としては、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオール、4−アミノ−4−ヒドロキシプロピル−1,7−ヘプタンジオール、2−(N−エチル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−エチル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−1,3−プロパンジオール、2−(N−デシル)アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。これらのヒドロキシアミン化合物は、単独で又は2種以上を混合して用いることができる。特に、消臭性能等が高い観点から、2−アミノ−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−エチル−1,3−プロパンジオール、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール(トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン)、2−アミノ−2−ヒドロキシエチル−1,3−プロパンジオールを用いることが特に好ましい。
【0017】
ヒドロキシアミン化合物とともに用いられる界面活性剤は、多孔質体に保持されたヒドロキシアミン化合物の近傍に水を存在させやすくして、該化合物の消臭効果を持続的に発現させるために用いられる。したがって、界面活性剤としては、水分保持効果が高いものを用いることが好ましく、そのような効果を有するものであれば、陽イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、非イオン界面活性剤、両性界面活性剤のいずれでも用いることができる。
【0018】
陽イオン界面活性剤としては、第1級アミン塩、第2級アミン塩、第3級アミン塩、第4級アンモニウム塩が挙げられ、特に第4級アンモニウム塩を用いることが好ましい。陰イオン界面活性剤としては、エチレン又はプロピレンオキシド付加のポリオキシアルキレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、アルキル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸カリウム、アルケニルコハク酸ジカリウム、アルカンスルホン酸ナトリウム、脂肪酸ナトリウム石鹸、脂肪酸カリウム石鹸等が挙げられる。
【0019】
非イオン界面活性剤としては、アルキルグリコシド、エチレン又はプロピレンオキシド付加のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエステル、ポリオキシエチレングリセリド、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、ポリオキシエチレンアルキルアミド、アルキルアルカノールアミド等が挙げられる。特に、ポリオキシエチレンアルキルエーテルやアルキルアルカノールアミドを用いることが好ましい。
【0020】
両性界面活性剤としては、アルキルジメチルアミンオキシド等(アルキルアミド型を含む)のアミンオキシド型、ラウリルアミノ脂肪酸ベタインなどのアルキルベタイン型、アルキルジメチルアミノ脂肪酸ベタイン型、ラウロイルアミドプロピルベタインなどのアミドベタイン型、2−アルキル−N−カルボキシメチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシエチルイミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタイン等のイミダゾリン型、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−ラウリン酸アミドエチル−β−アラニン、N−2−ヒドロキシエチル−N−2−ヤシ油脂肪酸アミドエチル−β−アラニンなどのアミドアミン型、アルキルジエチレントリアミノ酢酸塩型等が挙げられる。特に、アルキルジメチルアミンオキシドやアルキルアミドジメチルアミンオキシドを用いることが好ましい。そのようなアルキルジメチルアミンオキシドとしては、例えばラウリルジメチルアミンオキシド等が挙げられる。アルキルアミドジメチルアミンオキシドとしては、例えばラウリルアミドプロピルアミン−N,N−ジメチル−N−オキシド等が挙げられる。
【0021】
以上の各界面活性剤のうち、特に非イオン界面活性剤及び両性界面活性剤を用いることが特に好ましく、とりわけ両性界面活性剤を用いることが好ましい。
【0022】
担持シートに付与する水性液中におけるヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤の濃度については、ヒドロキシアミン化合物は1〜30重量%、特に5〜20重量%であることが、所定量のヒドロキシアミン化合物を含む溶液を多孔質体担持シートに十分に保持できるとともに、水分の除去において乾燥負荷を少なくできる点から好ましい。一方、界面活性剤は、0.1〜20重量%、特に1〜10重量%であることが、同様の理由から好ましい。また、水性液中における界面活性剤の量は、ヒドロキシアミン化合物1gに対して、0.05〜2g、特に0.1〜1gであることが、良好な消臭性能が得られる点から好ましい。
【0023】
先に述べたとおり、担持シートに付与する水性液には水と混和可能な有機溶剤が配合される。該有機溶剤を、ヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤を含む水性液に配合し、該水性液を担持シートに付与することで、意外にも、ヒドロキシアミン化合物の作用に起因する消臭効果が長時間持続することが、本発明者らの検討の結果判明した。特に、水性液中に該有機溶剤を10〜50重量%、特に20〜45重量%配合することが、消臭効果の一層の持続の点から好ましいことが判明した。
【0024】
前記有機溶剤が水と混和可能となるためには、該有機溶剤は極性を有していることが好ましい。
【0025】
前記有機溶剤は、大気圧下における沸点が100℃未満である揮発性のものであることが必要であり、特に90℃以下である揮発性のものであることが好ましい。これによって、担持シートに付与する水溶液の乾燥負荷をより低くできるからである。
【0026】
好ましく用いられる有機溶剤としては、エタノール、2−ブタノール、2−メチル−2−プロパノール等のブタノール類、2−プロパノール、1−プロパノール、メタノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、アセトニトリル等のニトリル類、テトラヒドロフランなどが挙げられる。これらのうち、水との混和性が良好である点から、アルコール類を用いることが好ましく、とりわけ一価アルコールを用いることが好ましい。そのような一価アルコールとしては炭素数1〜5の低級アルコールが挙げられ、特にエタノールを用いることが好ましい。
【0027】
水性液中に含まれる有機溶剤の濃度は上述したとおりであるところ、水性液中における有機溶剤の量は、ヒドロキシアミン化合物1gに対して、0.1〜50gであることが、所定量のヒドロキシアミン化合物を水溶液に十分に溶解でき、かつ乾燥時の乾燥負荷を少なくできる点から必要である。この量は、特に1〜20gであることが好ましい。
【0028】
水性液中には、上述した各成分に加え、担持シートの各種性能を一層向上させる観点から、必要に応じ消泡剤、サイズ剤、湿潤剤、表面紙力向上剤、防腐剤、バインダー、顔料、染料、多孔質粉体、滑剤、填料、導電剤、増粘剤等を配合してもよい。
【0029】
水性液を担持シートに付与するには、例えば水性液を担持シートに散布ないし噴霧、塗工する方法や、水性液中に担持シートを浸漬する方法が挙げられる。前者の方法を採用する場合、担持シートへの水性液の付与量は、付与前の担持シートの重量100重量部に対して5〜200重量部、特に10〜100重量部とすることが好ましい。後者の方法を採用する場合には、浸漬後、水性液から引き上げた担持シートにおける水性液の含浸量が前記の範囲内となるように、余剰の水性液を除去することが好ましい。
【0030】
担持シートに水性液を付与したら、該担持シートを加熱等の手段によって乾燥させ、水を除去する。乾燥温度は、短時間での乾燥を行う観点からは50〜120℃とすることが好ましい。
【0031】
このようにして、担持シート中の多孔質体にヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤を保持させることができる。本製造方法に従い得られた担持シートにおいては、ヒドロキシアミン化合物が好ましくは1〜30重量%、更に好ましくは5〜20重量%含まれており、界面活性剤が好ましくは0.1〜20重量%、更に好ましくは1〜10重量%含まれている。そして、ヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤は、担持シートの厚さ方向全域にわたってほぼ均一に存在している。
【0032】
水性液が付与される担持シートについて説明すると、担持シートは、粉粒状又は繊維状の多孔質体及び繊維材料を主体として構成されている。多孔質体としては、特に消臭性多孔質体を用いることが好ましい。消臭性多孔質体としては、活性炭、ゼオライト、アモルファスシリカ、ベントナイト、活性アルミナ、活性白土等が用いられ、消臭シートの具体的な用途に応じて適切な物質が選択される。多孔質体は、一種又は二種以上を用いることができる。特に、消臭性能と価格とがバランスしている材料である活性炭を用いることが好ましい。
【0033】
活性炭としては、悪臭その他ガス状物質に対して高い吸着性を示すものであれば、原料、活性化法、形状等には制限されない。粒状の活性炭を用いる場合、その平均粒子径は0.1〜500μm、特に1〜200μmであることが好ましい。繊維状の活性炭を用いる場合、その繊維径は、3〜100μm、特に5〜50μmであることが好ましく、その繊維長は0.1〜30mm、特に1〜10mmであることが好ましい。また活性炭の比表面積(BET)は、500〜2000m2/g、特に1000〜1800m2/gであることが好ましい。
【0034】
担持シートにおける多孔質体の含有率は、十分な消臭効果の発現の点、及び担持シートの強度や柔軟性の確保の点から、1〜50重量%、特に3〜30重量%であることが好ましい。
【0035】
繊維材料としては、NBKP、LBKP等の木材パルプの他、藁、綿等の非木材パルプ等の公知の天然繊維が使用できる。担持シートにおける繊維材料の含有率は、該シートの重量に対して50〜99重量%、特に70〜97重量%であることが、十分な消臭効果を発現させる点、及び十分なシート強度及び柔軟性を確保する点から好ましい。また、シート強度を向上させる目的で、ポリビニルアルコール繊維等の合成繊維を適宜混合してもよい。更に、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂やカチオン澱粉、ポリエチレンイミン等の紙力増強剤やアニオン性ポリアクリルアミド、硫酸バンド等の凝集剤を適宜混合してもよい。
【0036】
担持シートは、その坪量が、15〜70g/m2、特に20〜50g/m2であることが、十分な柔軟性が確保でき、また十分な消臭性能が発現する量の消臭剤を保持させられる点から好ましい。また、担持シートは、その厚みが0.1〜10mm、特に0.2〜0.5mmであることが、多孔質体の確実な保持とシート自身の通気性確保との両立の点から好ましい。
【0037】
担持シートは例えば湿式抄造法によって製造するとこができる。具体的には、多孔質体及び繊維材料を含有するスラリーを、抄紙ネットによって漉き取り、該抄紙ネット上に湿潤状態の担持シートを形成し、形成された担持シートを脱水し、更に乾燥することで担持シートを製造することができる。
【0038】
本発明に従い製造された消臭シートは、例えば使い捨ておむつや生理用ナプキン、パンティライナ等の吸収性物品の構成材料、箪笥や下駄箱内に配される消臭材、マスクやフィルター類、家庭用、施設用、自動車用の空気清浄機、エアコンディショナー等に適用することができる。
【実施例】
【0039】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明する。しかしながら本発明の範囲は、かかる実施例に制限されない。特に断らない限り、「%」は「重量%」を意味する。
【0040】
〔実施例1〕
(1)担持シートの製造
パルプ繊維、ポリビニルアルコール繊維、活性炭(粒径45μm)、ポリアミドエピクロルヒドリン樹脂(紙力増強剤)、アニオン性アクリルアミド樹脂(凝集剤)を含む水性スラリーを調製し、湿式抄造法によって活性炭担持シートを製造した。このシートにおける活性炭の割合は50%、ポリビニルアルコール繊維の割合は10%、紙力増強剤の割合は0.3%、凝集剤の割合は0.11%であり、残部はパルプ繊維であった。坪量は120g/m2であった。
(2)水性液の調製
ヒドロキシアミン化合物として、2−アミノ−2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールを用いた。界面活性剤として、ラウリルアミドプロピルアミン−N,N−ジメチル−N−オキシドを用いた。また有機溶剤としてエタノールを用いた。これらを水に溶解して水性液を調製した。水性液におけるヒドロキシアミン化合物の濃度は10%、界面活性剤の濃度は3%、エタノールの濃度は40%であった。
(3)消臭シートの製造
前記の(1)で製造した活性炭担持シートの一方の面の全域に、前記の(2)で調製した水性液を噴霧して、これを含浸させた。噴霧量は、活性炭担持シート100重量部の重量に対して125重量部とした。水性液が含浸された活性炭担持シートを温度105℃で乾燥して目的とする消臭シートを得た。この消臭シートにおけるヒドロキシアミン化合物の割合は10.8%、界面活性剤の割合は3.2%であった。
【0041】
〔実施例2〜9及び比較例1〜7〕
水性液として、以下の表1に示すものを用いた以外は、実施例1と同様にして消臭シートを得た。
【0042】
【表1】

【0043】
〔評価〕
実施例及び比較例で得られた消臭シートについてその消臭効果を、テスト臭い源としてアセトアルデヒドを用いて次の方法で測定した。2つのプラスティック製50mL注射筒(長さ11cm×3cm、開口部の直径3cm)を用いて消臭シート(6cm×4cm)を挟み込み固定した。注射筒の先端をシリコンチューブを介してパーミエーター(悪臭ガス発生装置;ガステック製)に接続し、悪臭ガス(アセトアルデヒドを30ppm含む空気)を0.2L/分の速度で流入させた。ガスの入り口濃度と消臭シート通過後の濃度を経時的に測定した。ガス濃度は、ガス検知管(ガステック製)を用いて測定した。入り口濃度と消臭シート通過後の濃度との差分を、入り口濃度で除して消臭率(%)を求めた。その結果を以下の表2に示す。
【0044】
【表2】

【0045】
表2に示す結果から明らかなように、実施例の方法に従い製造された消臭シートは、比較例の方法に従い製造された消臭シートに比べて、アセトアルデヒドに対する消臭効果が高く、しかも消臭効果が長時間持続することが判る。なお、表には示していないが、実施例の方法に従い製造された消臭シートの断面をTOF−SIMSで測定したところ、シートの厚さ方向全域にわたってヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤が均一に分布していることが確認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の式(1)で表されるヒドロキシアミン化合物、界面活性剤及び水と混和可能な有機溶剤を含む水性液を、多孔質体が繊維材料に担持されてなる多孔質体担持シートに付与し、多孔質体にヒドロキシアミン化合物及び界面活性剤を保持させる消臭シートの製造方法であって、
有機溶剤が極性を有し、かつ大気圧下における沸点が100℃未満である揮発性のものであり、
水性液が、有機溶剤を10〜50重量%含んでいる消臭シートの製造方法。
【化1】

【請求項2】
有機溶剤が、炭素数1〜5の一価の低級アルコールである請求項1記載の製造方法。
【請求項3】
界面活性剤が、両性界面活性剤である請求項1又は2記載の製造方法。
【請求項4】
両性界面活性剤がアルキルジメチルアミンオキシドである請求項3記載の製造方法。
【請求項5】
ヒドロキシアミン化合物が、2−アミノ−2ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオールである請求項1ないし4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
多孔質体が活性炭である請求項1ないし5のいずれかに記載の製造方法。

【公開番号】特開2011−115403(P2011−115403A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−275855(P2009−275855)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(000000918)花王株式会社 (8,290)
【Fターム(参考)】