説明

消臭剤

【課題】アンモニア等のアルカリ性悪臭と、硫化水素とかメチルメルカプタン等のイオウ系悪臭の両方に対して効果があり、且つ消臭性能(容量)を従来品より更に向上させると共に、消臭性能の再生を可能にする。
【解決手段】下記式(1)
【化1】


(但し、式中、M2+はZnおよび/またはCuを、M3+はAlおよび/またはFe3+をそれぞれ示し、m、nおよびpはそれぞれ、1<m<20,1<n<100,0<pの範囲を示す)で表される複合金属ケイ酸塩、または、それと酸化チタンを併用する剤を有効成分として含有する消臭剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な消臭剤に関する。さらに詳しくは、硫化水素とかメチルカプタン等のイオウ系悪臭とアンモニア、トリメチルアミン等のアルカリ性悪臭の両方に効果が高い複合金属ケイ酸塩系消臭剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年のペットブームは目を見張るものがあり、その一方、ペット(動物)の尿および便による悪臭は解決しなければならない重要な問題である。また、老齢人口比率の増加と共に失禁者も増大し、その対策として、幼児用と同様紙オムツの使用量が増加し、その消臭対策も重要なテーマとなっている。動物、人間を含めて、尿および便の悪臭成分はアンモニア、トリメチルアミン等のアルカリ性成分と、硫化水素、メチルメルカプタン等のイオウ系成分が主たる成分である。
【0003】
アルカリ性悪臭成分に有効な消臭剤として、ケイ酸アルミニウム、ゼオライト、活性白土、無水ケイ酸、リン酸ジルコニウム等がある。しかしこれ等はイオウ系悪臭成分に対しては不活性である。
【0004】
イオウ系悪臭成分に対しては、酸化亜鉛、酸化第二銅等があるが、アルカリ性悪臭成分に対しては不活性である。アルカリ性およびイオウ系悪臭成分の両方に効果のある消臭剤として、ケイ酸亜鉛およびケイ酸第二銅がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ケイ酸亜鉛およびケイ酸第二銅は、アルカリ性およびイオウ系の両方の悪臭成分に対して活性があり、これ等以外の従来の消臭剤に比較し大変優れている。しかし、動物や人間から排出される尿と便は多く、それ等から発生する悪臭成分量から考えて、これ等消臭剤の能力では未だ不十分であり、より高性能の消臭剤の開発が求められている。したがって、本発明の目的は、ケイ酸亜鉛およびケイ酸第二銅を上回る汎用性の高い高性能消臭剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、下記式(1)
【化1】

(但し、式中、M2+はZnおよび/またはCuを、M3+はAlおよび/またはFeを、好ましくはAlをそれぞれ示し、m、nおよびpはそれぞれ、1<m<20、好ましくは4≦m≦15、特に好ましくは6≦m≦12、1<n<100、好ましくは10<n<50,0<pの範囲を示す)で表される複合金属ケイ酸塩を有効成分として含有する新規な消臭剤を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の複合金属ケイ酸塩は、アルカリ性およびイオウ系悪臭の両方に最も優れているケイ酸第二銅よりも、更にその性能を上回り、両悪臭ガスを約3分の1にまで低減出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明の式(1)で表される複合金属ケイ酸塩は、非結晶性(無定形)である。液性は中性〜弱酸性であり、人間の肌に要求される条件に合っている。通常BET比表面積が約100〜400m/gあり、極めて高い表面積を有する化合物に属し、このことが高い消臭能力を示す一因でもある。
【0009】
本発明の式(1)で表され複合金属ケイ酸塩は、アンモニア等のアルカリ性悪臭成分に対して、ケイ酸亜鉛およびケイ酸第二銅よりも優れた消臭力を示すだけでなく、最も優れているケイ酸アルミニウムをも凌ぐ。同時に、イオウ系悪臭成分に対して優れているケイ酸亜鉛およびケイ酸第二銅に比べても更に優れた消臭性能を示す。したがって、本発明の消臭剤は、アルカリ性とイオウ系の悪臭成分両方に対して極めて優れた普遍性の高い(脂肪酸等の酸性悪臭を含む、殆どの悪臭成分に有効な)消臭剤と言える。
【0010】
本発明の消臭剤は、(ZnOおよび/またはCuO)/Alのモル比が特定の範囲、6〜12で最も消臭力が高くなる。
【0011】
本発明の消臭剤の製造は、Znおよび/またはCuの水溶性塩の水溶液と、Al等の、3価金属の水溶性塩の水溶液を混合後または別々に反応槽に供給し、これとほぼ当量のケイ酸ソーダ(NaO・aSiO[a=1〜5])水溶液を同時に供給し、共沈反応させることにより実施出来る。反応pHの調整は、例えば、ケイ酸ソーダの供給量を調整して行う。反応pH、温度に特別の制約は無いが、反応pHは約4以上、好ましくは4〜8で行う。反応に用いるZn、CuおよびAl等の3価金属の水溶性塩としては、例えばそれ等金属の塩化物、硝酸塩、硫酸塩等を挙げることが出来る。
【0012】
本発明の消臭剤は、それ自体汎用性の高いものであるが、既知の他の消臭剤と併用して用いることができ、その方がより効果が高まる場合もある。その様な他の消臭剤としては、例えば酸化亜鉛と酸化アルミニウムの固溶体(Zn1−xAlO[0<x<0.2])、活性炭、アナターゼ型酸化チタン(光触媒活性を有する酸化チタン)等を挙げることが出来る。酸化亜鉛と酸化アルミニウムの固溶体との併用は、この化合物の優れた抗菌性とイソ吉草酸等の脂肪酸を含む酸性悪臭に対する優れた消臭性能を本発明消臭剤に付加出来る。活性炭は中性の悪臭成分に対する活性の強化を、酸化チタンは消臭性能が飽和した後の光による再活性化に、それぞれ有効である。以上の本発明消臭剤と併用する剤の配合量は、本発明消臭剤100重量部に対し、好ましくは10〜100重量部である。
【0013】
本発明の消臭剤は、種々の消臭用途、例えば猫砂、ペットシート、ペット寝床、ペットトレー、消臭スプレー、紙オムツ、靴の下敷き、靴下、肌着、冷蔵庫、壁材、塗料、トイレ、下水処理場、鶏・豚・牛の飼養施設、鋳物工場、肥料製造工場等に使用出来る。
【0014】
本発明の消臭剤の使用形態としては、粉末、造粒物、アクリル酸エステル、スチレン・アクリル、エチレン・酢ビ、酢ビ・アクリル、酢酸ビニル等の有機系バインダーで添着したポリエチレン、ポリプロピレン、およびポリエステル等の不織布、紙、プラスチック成型品、木くず、天然パルプと一緒にして抄紙した紙、化学せんいに混合し紡糸した繊維、バインダーで添着した繊維、エアゾール、スティック、クリーム、乳液等である。
【0015】
以下、実施例に基づいて、本発明をより詳細に説明する。
【実施例1】
【0016】
塩化亜鉛と硝酸アルミニウムの混合水溶液(Zn=0.4モル/リットル、Al=0.1モル/リットル)と3号水ガラス(NaO=0.5モル/リットル)をそれぞれ、100ml/分、約100ml/分の流速で、容量3リットルのオーバーフロー付き反応槽に攪拌下に連続的に供給し、反応pHを約6.5〜7.0、温度を35〜37℃に保って共沈させた。生成した反応物を減圧ろ過、水洗後、水に分散し、90℃で1時間加熱し、脱水後、約120℃で20時間乾燥し、アトマイザーで粉砕した。この物の粉末X線回析は無定形(非晶質)であった。乾燥物を塩酸で溶解し、ろ過後、分離されたケーキを乾燥して、SiOを重量法で測定すると共に、ろ液中のZnとAlをキレート滴定法で定量し、TGAで結晶水量を測定し、化学組成を求めた結果は次の通りであった。8ZnOAl・36SiO・nHO[n≒13]。液体窒素吸着法で測定したBET比表面積は160m/g、水媒体中、超音波で5分間前処理後、レーザー回析法で測定した累積50%の平均2次粒子径は0.65μmであった。この乾燥粉末について、次に示す消臭試験を行った。その結果を表1に示す。
【0017】
[消臭試験]アンモニア;試料0.4g採り、これを容量1.5リットルのガス捕集管に入れ、その後、0.29%のアンモニア水を2ml加え密封し、5分後にガス検知管を用いて残存するアンモニア濃度を測定した。硫化水素;試料を0.1g採り、これを容量1リットルのガス捕集管に入れ真空にした後、100ppmのHSを導入し、5分後にガス検知管で残存する濃度を測定した。メチルメルカプタン;試料0.4gを容量1.5リットルのガス捕集管に入れた後、水溶液(濃度0.15%)を2ml加え密封し、5分後にガス検知管を用いて残存濃度を測定。
【実施例2】
【0018】
硫酸第2銅と硫酸アルミニウムの混合水溶液(Cu2+=0.5モル/リットル、Al3+=0.1モル/リットル)と3号水ガラス(NaO=0.5モル/リットル)をそれぞれ、100ml/分、約130ml/分の流速で、容量3リットルのオーバーフロー付き反応槽に連続的に供給し、反応pHを約6〜6.5、温度を40〜45℃に保って共沈させた。生成した反応物を減圧ろ過、水洗、脱水後、実施例1と同様に処理した。乾燥物の粉末X線回析は無定形であり、化学組成は次の通りであった。10CuOAl・42SiO・nHO[n≒23]。BET比表面積は320m/g、累積50%の平均2次粒子径は1.7μmであった。乾燥粉末物の消臭試験結果を表1に示す。
【実施例3】
【0019】
実施例1で得られた本発明消臭剤粉末とアナターゼ型酸化チタン(20m/g)を2:1の比率で混合したものから0.4gを採り、アンモニアの消臭試験を行った。その結果を表1に示す。この粉末に0.15%のアンモニア水を追加して加え、ガス検知管で残存アンモニア濃度が100ppm以上になったところで、アンモニア水の添加を止め、ガス捕集瓶を晴天の屋外に1時間暴露した。その後、再びアンモニアの消臭試験を行った。その結果を表1に示す。
【0020】
「比較例1」
実施例1において、硝酸アルミニウムを削除し、塩化亜鉛水溶液濃度をZn=0.5モル/リットルに変更する以外は実施例1と同様に行い、ケイ酸亜鉛を合成した。乾燥物のX線回析は無定形であり、BET比表面積は270m/g、累積50%の平均2次粒子径は1.8μm、化学組成は次の通りであった。ZnO・3.1SiO・nHO[n≒1.5]。乾燥物の消臭試験結果を表1に示す。
【0021】
「比較例2」
実施例2において、硫酸アルミニウムを削除し、硫酸第2銅水溶液濃度をCu2+=0.65モル/リットルに変更する以外は実施例2と同様に行い、ケイ酸第2銅を合成した。乾燥物のX線回析は無定形であり、BET比表面積は280m/g、累積50%の平均2次粒子径は1.72μm、化学組成は次の通りであった。CuO・3.2SiO・nHO[n≒1.6]。乾燥物の消臭試験結果を表1に示す。
【0022】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】

(但し、式中、M2+はZnおよび/またはCuを、M3+はAlおよび/またはFe3+をそれぞれ示し、m、nおよびpはそれぞれ、1<m<20,1<n<100,0<pの範囲を示す)で表される複合金属ケイ酸塩を有効成分として含有することを特徴とする消臭剤。
【請求項2】
請求項1の式(1)において、M3+がAlであることを特徴とする請求項1記載の消臭剤。
【請求項3】
請求項1の式(1)において、mの範囲が6≦m≦15であることを特徴とする請求項1記載の消臭剤。
【請求項4】
請求項1の式(1)で表される複合金属ケイ酸塩の累積50%の平均2次粒子径が1.0μm以下であることを特徴とする請求項1記載の消臭剤。
【請求項5】
請求項1の式(1)で表される複合金属ケイ酸塩とアナターゼ型酸化チタンを併用することを特徴とする、再生可能な消臭剤。
【請求項6】
請求項1記載の消臭剤が有機系バインダーで添着されていることを特徴とする消臭機能を有する不織布。
【請求項7】
下記式(2)
【化2】

(但し、式中、xは次の範囲、0<x<0.2を満足する)で表される酸化亜鉛系固溶体と式(1)で表される複合金属ケイ酸塩を併用することを特徴とする消臭と抗菌を有する剤。

【公開番号】特開2006−223645(P2006−223645A)
【公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−42442(P2005−42442)
【出願日】平成17年2月18日(2005.2.18)
【出願人】(391001664)株式会社海水化学研究所 (26)
【Fターム(参考)】