説明

消臭装置

【課題】複雑な構成としなくても,臭い源もしくは空間に漂っている臭いを,消臭もしくは減臭できる簡便な構成の消臭装置の提供を目的としている。
【解決手段】キセノンランプ,メタルハライドランプ,キセノンフラッシュランプ,キセノンマーキュリーランプ,マーキュリーランプのいずれかの放電管を用いたアークライトの光を,臭いを発生している発生源,臭いを含んでいる雰囲気のいずれか片方,または両方に照射することで,当該臭いを低減,もしくは空間全体の消臭を実現する。
これに必要なアークライトからの光強度は0.1W/m2から10kW/m2で波長範囲は180nmから450nmの範囲である。アークライトの光照射面に螺旋状にした金属を取り付けることで消臭効果を増加させることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は臭いを消す消臭装置に関し,アークライトの光を用いて悪臭や不快な臭いを消臭もしくは減臭できる消臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
多数の人が集まって煙草臭や体臭などがこもり易いパチンコ店や映画館,劇場などでは,快適な空間を創造するために消臭対策が必要となってくる。また養鶏場や食肉処理,産業廃棄物処理場等,悪臭を出し易い施設の周辺に住む住民にとっては,その消臭対策は切実な問題となっている。
【0003】
このような際には芳香剤を用いて芳香で悪臭をマスキングしたり,悪臭の発生源に化学的な消臭剤を用いて悪臭を低減したりして,悪臭を低減している。しかしこれら化学物質を使用する場合は,臭い源に対して広範囲に直接使用する必要があるため,芳香剤や消臭剤そのものが新たな公害源になる可能性があり,多量に使用する事が困難である。
【0004】
このような不具合を解決する手段として,オゾンを用いた消臭装置が提案されており,例えば,下記の特許文献1〜3に開示されている。また下記の特許文献4にはオゾンと光触媒を組み合わせた消臭器について開示されている。
【0005】
特許文献1にはオゾンガスを閉鎖空間内で発生させて,当該空間内の臭気を消臭し,その後オゾンガス分解装置と,オゾン分解フィルタと外部の気体をオゾン分解フィルタに通過させる送風手段とからなるオゾン分解装置を備える消臭装置について記載されている。
【0006】
また,特許文献2には小型放電管,小型タイマー、小型ファン、インバーター回路からなるオゾン発生機構を用いた小型で携帯可能で、汎用性のある,小型で随所に取り付け可能な殺菌消臭装置について記載されている。
【0007】
しかしながら特許文献1,2に記載されている技術では消臭,殺菌のために,高濃度の人体に有害なオゾンを発生さるため,高濃度のオゾンの漏洩対策が必要となる。そのため装置の取り扱いに注意が必要になるとともに,オゾン処理のための機構も必要になり,装置が複雑になるなどの問題があった。
【0008】
特に特許文献1,2では高濃度のオゾンを用いるため,人体に有害なオゾンが漏れたり,また消臭するつもりが,逆にオゾン臭がもれたりするなどの問題点がある。また高濃度オゾンと消臭対象の雰囲気とを混合する必要があるため,そのための循環装置等が必要となったり,装置が複雑となり,また消臭できる雰囲気も限られたりする等の欠点がある。
【0009】
また,特許文献3には,負イオンクラスター(マイナスイオン)発生器とブラックライトもしくは紫外線発光ダイオードからなる紫外線照射装置とを組み合わせて,PCB等の有害物質を分解するとともに,タバコ、香水、糞尿等の悪臭物質の消臭も可能にする空気清浄装置について記載されている。
【0010】
また特許文献4には,消臭除菌機能を有する薄型の光触媒に,紫外線照射装置を組み合わせた空気清浄機について記載されている。
【0011】
しかしながら特許文献に記載されている技術では,紫外線の照射範囲が狭く,広い空間の消臭に適用できないと言う問題点が有った。また特許文献4に記載されている技術では,紫外線を照射した光触媒を用いたフィルタに臭いを含む空気を通す必要があるため,空気の循環装置が必要となり,消臭装置が大がかりで複雑になるという問題点がある。
【特許文献1】特許開2004−305264
【特許文献2】特許開2004−73696
【特許文献3】特許開2003−325651
【特許文献4】特許開2003−88571
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は上記課題に鑑みなされたもので,空気循環装置を用いず,また高濃度のオゾンを発生させることなく,空間の臭いを減臭もしくは消臭可能な消臭装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者は長年アークライトを使用してきた経験から,アークライトの光に消臭効果があることに気づき,産業廃棄物の臭いや鶏糞の臭い等で消臭効果の実験を試みてきた。そしてアークライトの光を臭いの存在する空間に照射するだけでほとんどの臭いが減少することを見いだし,本発明考案を完成させるに至った。なおこのアークライトの消臭効果は,主としてアークライトが発する紫外線により発生したオゾンの効果によるものと考えられる。
【発明の効果】
【0014】
出力5W〜50kWの出力を持つキセノンランプで構成されるアークライトからの強力な紫外線を臭いの充満した空間に照射することにより,その臭いの減少を調べた結果,魚類の廃棄物からの悪臭は人間の臭覚で数分の一以下に,またアンモニア臭も数分の一以下に減少することを確認した。
【0015】
このように本発明考案によると,空間にアークライトの光を直接照射するという簡単な操作により,当該空間の臭いを大きく減少させることができる。そして消臭の際に発生するオゾンの濃度は,通常のアークライト点灯時に発生する濃度であり,オゾンを抑制したタイプのアークライトにおいてその濃度は0.05ppm以下となっている。
【0016】
このように本発明考案の消臭方法では,人体に有害なオゾンの発生量を環境基準以下に抑えながら,広範囲の空間の消臭を可能にするもので,悪臭公害に悩んでいる被害者側の住民はもとより,加害者側となる企業関係者においても,重要な技術となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下,本発明に係るガス識別方法の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は消臭対象空間の広い範囲に,アークライトが発生する紫外線を含む光を直接に照射することで,消臭あるいは減臭を実現するための配置の概略を示した図である。
【0018】
図中1はキセノンランプからなるアークライトを用いた消臭装置の配置を示しており,上方に出力2kWのアークライト1が,下部には生ゴミや廃棄物等,悪臭を発する臭い源3がある。
【0019】
臭い源は悪臭4を周囲に向かって発しており,そのほとんどは上方に向かった後に風などで周囲に飛散し,悪臭公害を引き起こすことになる。この臭い源から発生した悪臭が漂う臭い源の上方の空間に,紫外線が照射されるようにアークライトの光軸が設定されている。
【0020】
アークライトに通電すると,紫外線2が悪臭の漂う空間に照射され(図では右から左方向へ),る。紫外線は悪臭の漂う空間全体にオゾンを発生させ,悪臭を分解することが可能になる。
【0021】
魚のアラや,残飯を中心とした産業廃棄物を処理している図1と同様の配置の施設にアークライトを設置したところ,設置前には悪臭作業に慣れた作業者ですら悪臭で長時間作業が困難であったが,設置後は悪臭に慣れていない一般人でも大きな苦痛無く長時間立ち入ることができる程度まで劇的に改善された。
【0022】
また図2には本発明考案の効果を実証するための別の実施形態を示す。下部に出力50Wのアークライト1を上向きに設置した本体筒5が垂直に立てられており,本体筒上部で観測者7が筒内の臭いを嗅げるようになっている。また本体筒の中間から枝分かれした枝筒6の下部に悪臭4を発する魚のアラ等の臭い源3が配置されている。アークライトを点灯した際に発せられる紫外線2は本体筒の上方に向かって照射され,臭い源には紫外線が照射されない配置となっている。
【0023】
今アークライトを点灯しない状態で魚のアラを臭い源として配置すると,臭い源から発せられる悪臭が枝筒へ,そして本体筒へと進入し,本体筒上部の観測者に悪臭として検知される。この状態でアークライトを点灯させると,紫外線が本体筒内空間に照射される。照射数分後には本体筒上部で観測者が筒内の臭いを検知できない程度にまで,筒内の悪臭が減少した。
【0024】
この実施形態では,アークライトから発せられる紫外線は,悪臭の漂う空間に照射されるのみで,臭い源を直接には照射していない。それにも関わらず本体筒内の臭いが観測者に検知できない程度にまで減少している。これは,本発明考案に基づく消臭装置が臭い源に直接作用することなく,空間に漂う悪臭に直接作用して,大きな消臭効果を持っている事を示している。
【0025】
図3に本発明考案をパチンコホールに適用した例について説明する。パチンコ台が並ぶ枠8の上面に出力500Wのアークライト1を取り付けて,アークライトからの紫外線2が,パチンコ店の客に照射されないように,光軸を水平に合わせて,パチンコホール上方の空間に効率よく照射されるようにされている。アークライト設置以前は,タバコ臭等がホール全体に充満しており,タバコ臭の嫌いな客には耐えられない環境になっていたが,アークライト設置後はタバコ臭が消え,快適な店内を実現できた。
【0026】
図4に図3に示す実施例におけるパチンコホールのにおいレベルの変化を示す。本発明考案の装置稼働後に,ホールのにおいレベルが急激に低下し,稼働後約5時間でホールのにおいがほぼ完全に消滅していることを示している。
【0027】
上述の図1,図2,図3で示した実施例において,アークライト1の光源を,キセノンランプから紫外線を含まないハロゲンランプ等に変更すると,上記実施例で説明したような消臭効果は得られなかった。そのため本発明考案の消臭効果は,アークライトが発生する紫外線によるものと考えられる。
【0028】
また図5は上記実施例で用いるアークライトの構造図を示す。(a)は正面図であり,(b)は側面図である。紫外線を多量に含む強力な光を発生させるための光源と,光源を安定して点灯させるための電源回路,電源に電力を供給するコンセントと,放電管で発生した光を所望の範囲に集光させ,もしくは光を遠方まで到達させるために平行光線にするためするための放物面鏡9やレンズにより構成された光学系を備える。
【0029】
またアークライト下部にはアークライトの光源を安定して点灯するための電源装置を格納している構造体とケース10を設け,アークライトは構造体にユニバーサルジョイント等11で結合され,アークライトの向きを変えることにより,光を所定の方向に照射できるようになっている。
【0030】
また放物面鏡やレンズ系で構成される光学系は,アークライトとの距離を変化できるようになっており,アークライトの光を任意の点で焦点を結ばせて集光したり,平行光線にしたり,また距離が離れるほど広がるように設定することが可能となっており,アークライトの光を所望の範囲に照射して消臭できるようになっている。
【0031】
好ましくはアークライトの光の到達距離や拡散領域を変化させることのできる,調整可能な光学系を備え,消臭対象空間の形態に合わせて光を照射可能とする。レンズや反射鏡等の光学系でアークライトの光を平行光線にすることで,アークライトの光を数km遠方まで到達させることが可能となり,本手法では極めて広範囲の領域の消臭も可能となる。
【0032】
また好ましくは消臭対象雰囲気の状況に応じてアークライトの出力を調整できる電源回路を備え,臭いが強い時には光量を増加してオゾン発生量を増やして速やかに消臭し,また逆に臭いが強くないときは光量を絞って,オゾンの発生量を極力少なくして人体への影響を最小限に抑えることを可能にする。
【0033】
また図6には,消臭効果を増加させたアークライトの光源の構造を示す。アークライト1の光射出面12に,チタンやチタン合金等の金属で構成した螺旋状の構造帯13が設置されている。この構造体は帯状,もしくは棒状の金属を螺旋状にしたもので,この構造体の設置により,消臭効果が増加する。
【0034】
この際の螺旋は,滑らかな曲線を描くように形成する必要は無く,図7に示すような多角形状の金属13にすることも可能で,このような多角形状の螺旋を用いても,消臭効果の向上が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】消臭装置の構成図
【図2】消臭実験装置の概要図
【図3】パチンコホールでの実施例
【図4】パチンコホールでの消臭例
【図5】アークライトの概略図
【図6】アークライト照射面に着ける螺旋状金属
【図7】多角形螺旋の例
【符号の説明】
【0036】
1 アークライト
2 紫外線
3 臭い源
4 悪臭
5 本体筒
6 枝筒
7 観測者
8 パチンコ台
9 放物面鏡
10 構造体とケース
11 ユニバーサルジョイント

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キセノンランプ,メタルハライドランプ,キセノンフラッシュランプ,キセノンマーキュリーランプ,マーキュリーランプのいずれかの放電管を用いたアークライトの光を,臭いを発生している発生源,臭いを含んでいる雰囲気のいずれか片方,または両方に照射することで,当該臭いを低減,消臭するアークライト消臭装置。
【請求項2】
アークライトからの光強度が0.1W/m2から10kW/m2のであるように設定した請求項1記載のアークライト消臭装置。
【請求項3】
波長範囲が180nmから450nmの範囲にある光の一部もしくは全部を用いる請求項1記載のアークライト消臭装置
【請求項4】
光の射出面に螺旋状にした金属を取り付けたアークライトを用いた請求項1記載のアークライト招集装置

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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