説明

液体クロマトグラフィ装置

【課題】カラムコーナー部の液の滞留を防止し、カラム内の液の流れを均一にすることができる液体クロマトグラフィ装置を提供する。
【解決手段】液体クロマトグラフィ装置1は、円筒形のカラム2と、該カラム2内に充填された充填剤3と、カラム2の上端側に配置された蓋体4と、下端側に配置された蓋体5と、蓋体4の下側に配置された上側フィルタ6と、下蓋体5の上側に配置された下側フィルタ7とを備えている。蓋体4の下面外周にテーパ状の環状部4bが設けられている。カラム2の下部内周にテーパ形の環状部2bが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体クロマトグラフィ装置に係り、特にカラム内の液の流れを均一化するよう構成された液体クロマトグラフィ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の物質を含む混合液から各成分を分離し、また精製するため、液体クロマトグラフィ装置が利用されている。液体クロマトグラフィ装置では、筒状のカラム内部に充填剤が保持され、カラム両端には蓋体が設けられている。
【0003】
流入側の蓋体には流入孔が設けられると共に、この流入孔から流入してきた液を蓋体の放射方向に分配するための流路が設けられている。流出側の蓋体には、流出孔が設けられると共に、充填剤内を流れてきた液を流出孔に向かって求心方向に集めるための集液用流路が設けられている。
【0004】
これらの蓋体の充填剤側には、それぞれ、フィルタ、スクリーン又はフリットと称される多孔質板状部材が配置されている。このフィルタ、スクリーン又はフリット(以下、フィルタという。)は、充填剤がカラム外部へ漏出しないようにカラム内部に保持する機能を有する。また、このフィルタは、分離・精製に供される液体試料をカラム横断面方向に分散させると共に、液体試料がカラム内を一端側から他端側へ逆流せずにピストンフローで流れるようにする機能を有する。
【0005】
かかる液体クロマトグラフィ装置の一例(特開2000−65813)を第5図に示す。
【0006】
円筒形のカラム20の上端に第1の蓋体21が設けられ、下端に第2の蓋体22が設けられている。
【0007】
蓋体21の流入孔21aからの流入液は、テーパ状の分配室21b、支持ディスク23、スクリーン(フィルタ)24を透過し、カラム20内の充填剤層内を下降し、クロマト分離される。
【0008】
この液は、下側のスクリーン24、支持ディスク23、テーパ状集液室22b及び流出孔22aを通って取り出される。
【特許文献1】特開2000−65813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記特開2000−65813号の液体クロマトグラフィ装置にあっては、スクリーン24とカラム20の内周面とのコーナー部C付近に液が滞留し易く、カラム内の液の流れの均一化が阻害される。
【0010】
本発明は、かかるカラムコーナー部の液の滞留を防止し、カラム内の液の流れを均一にすることができる液体クロマトグラフィ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の液体クロマトグラフィ装置は、充填剤が充填されたカラムの一端に第1の蓋体が装着され、他端に第2の蓋体が装着され、該第1の蓋体には液の流入口が設けられ、第2の蓋体には液の流出口が設けられている液体クロマトグラフィ装置において、該第1の蓋体の充填剤側の面とカラム内周面とのコーナー部に、第1の蓋体から離隔するほど内径が大きくなるテーパ形断面形状の第1の環状部を設けたことを特徴とするものである。
【0012】
請求項2の液体クロマトグラフィ装置は、請求項1において、前記第2の蓋体の充填剤側の面とカラム内周面とのコーナー部に、第2の蓋体から離隔するほど内径が大きくなるテーパ形断面形状の第2の環状部を設けたことを特徴とするものである。
【0013】
請求項3の液体クロマトグラフィ装置は、請求項1又は2において、前記環状部は蓋体と一体に設けられていることを特徴とするものである。
【0014】
請求項4の液体クロマトグラフィ装置は、請求項1又は2において、前記環状部は前記カラムと一体に設けられていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
本発明の液体クロマトグラフィ装置にあっては、流入側の第1の蓋体とカラム内周面とのコーナー部にテーパ形断面形状の環状部を設けているので、このコーナー部の液の滞留が防止され、充填剤層内の液の流れが均一になる。
【0016】
本発明の液体クロマトグラフィ装置では、第2の蓋体とカラム内周面とのコーナー部にもテーパ形断面形状の環状部を設けることにより、このコーナー部の液の滞留が防止され、充填剤層内の液の流れが均一になる。
【0017】
環状部は蓋体と一体に設けられてもよく、カラムと一体に設けられてもよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面を参照して実施の形態について説明する。
【0019】
第1図(a)は実施の形態に係る液体クロマトグラフィ装置の縦断面図、第1図(b)はその下部の拡大図、第2図は蓋体とフィルタとを示す分解斜視図、第3図は第1図の流入口部分の拡大図である。第4図は別の実施の形態を示す断面図である。
【0020】
液体クロマトグラフィ装置1は、円筒形のカラム2と、該カラム2内に充填された充填剤3と、カラム2の上端側に配置された上側蓋体(第1の蓋体)4と、下端側に配置された下側蓋体(第2の蓋体)5と、蓋体4の下側に配置された上側フィルタ6と、蓋体5の上側に配置された下側フィルタ7とを備えている。
【0021】
蓋体4,5はいずれも円板状であり、円板を厚み方向に貫通するようにして、蓋体4の中央部に流入口8が設けられ、蓋体5の中央部に流出口12が設けられている。
【0022】
蓋体4の下面には、円形の凹部4aが設けられている。この凹部4aは、蓋体4の下面の外周縁以外のほぼ全域に設けられている。この凹部4aの天井面には、流入口8から放射方向に延在する複数本の筋9が設けられていると共に、筋9同士の間には、蓋体4の外周側において放射方向に延在する筋10が設けられている。これら筋9,10は凹部4aの天井面から2mm程度の高さで突出している。
【0023】
この蓋体4の外周縁からは下方に環状部4bが突設されている。環状部4bの外周面はカラム2の内周面に重なるストレートな円筒面となっているが、内周面は、下方ほどカラム内周面に接近するテーパ面となっている。そのため、環状部4bは、下方ほど内径が大きくなるテーパ形断面形状となっている。
【0024】
下側の蓋体5の上面には、円板の凹部5aが設けられている。この凹部5aの上面には、流出口12から放射方向に延在する、筋9と同様の筋11が設けられると共に、筋11の間において蓋体5の外周側を放射方向に延在する、筋10と同様の筋(図示略)が設けられている。
【0025】
カラム2の下部のうち蓋体5の直上の内周面は、下方ほど内径が小さくなるテーパ形断面形状の環状部2bとなっている。なお、凹部5aはこの環状部2bの下端の内径と同一の直径を有している。
【0026】
フィルタ6は、凹部4aの直径と等しい直径を有した円板状であり、フィルタ7は凹部5aの直径と等しい直径を有した円板状である。
【0027】
この実施の形態では、フィルタ6,7はいずれも金属メッシュを積層して焼結した多孔質体よりなる。
【0028】
このフィルタ6の上面中央及びフィルタ7の下面中央には、それぞれ低透液性部分6a,7aが設けられている。低透液性部分6a,7aはフィルタ6,7の中央部に切削加工を施し、フィルタ6,7の気孔を詰まらせることにより形成されたものである。この切削加工は、砥石やドリルを回転させたり、彫刻刀の平刀のような刃を回転させて施すことができる。砥石や刃先を超音波振動させてもよい。
【0029】
なお、レーザー照射による部分溶融など他の手段によって低透液性部分を形成してもよい。
【0030】
低透液性部分6a,7aは円形領域となっており、低透液性部分6aの直径は流入口8の直径の好ましくは1〜10倍特に2〜5倍となっている。低透液性部分7aの直径は、流出口12の直径の好ましくは1〜10倍特に2〜5倍となっている。
【0031】
低透液性部分6a,7aを設けたフィルタ中央部の透水速度は、低透液性部分6a,7aを設けないフィルタ外周縁部の透水速度の50%以下特に3〜30%であることが好ましい。
【0032】
なお、蓋体4はカラム2に内嵌したピストン状である。蓋体5はカラム2の下端のフランジ2aに固定連結されている。蓋体4を下方に押圧することにより充填剤3が高密度化し、均密な充填剤層が形成される。
【0033】
環状部2bの内周側の下側には凹段部2cがカラム2の内周に沿って周設されている。蓋体5の上面には、この凹段部2cに係合する凸条5bが周設されている。凸条5bの上端面と凹段部2cの天井面とにそれぞれOリング収容溝が周設され、Oリング12が配置されている。
【0034】
なお、環状部4b、2bのテーパ角θは5〜85°特に20〜70°程度が好ましい。
【0035】
このように構成された液体クロマトグラフィ装置1にあっては、被処理液は流入口8から内部に供給される。この液は第3図の如く、流入口8に対面する低透液性部分6aに当って放射方向に向きを変え、筋9,10に案内されてフィルタ6の上面全体に行き渡り、フィルタ6を透過し、充填剤3と接触し、クロマト分離処理がなされる。充填剤3を透過した液は、フィルタ7を透過し、筋11同士の間を通って流出口12から流出する。
【0036】
この実施の形態では、環状部4b、2bを設けているので、蓋体4,5とカラム2の内周面とのコーナー部における液の滞留が防止され、充填剤3の層内の液の流れが均一となる。
【0037】
なお、この実施の形態では、フィルタ6に低透液性部分6aを設けているので、流入口8からの液が放射方向に広く分散する。また、フィルタ7の中央部にも、流出口12に対面して低透液性部分7aが設けられているので、充填剤3の層内を下降してきた液も、フィルタ7の全域を均等に透過した後、筋11に案内され流出口12に集められる。従って、分離性能の高いクロマト処理を行うことができる。
【0038】
この実施の形態では、凸条部5bと凹段部2cとが係合している。そして、凸条部5bの外周面が凹段部2cの縦の内周面に密着することにより、Oリング12に加えられる液圧が軽減され、シール性が良好となる。
【0039】
[別の実施の形態]
上記実施の形態では下側(流出側)の環状部2bをカラム2に設けているが、蓋体5に環状部を設けてもよい。第4図はその一例を示すものであり、蓋体5Aの上面に、カラム2Aの内周面に沿って起立する環状部5cが設けられている。この環状部5cのフィルタ7よりも上側の内周面は、上方ほど内径が大きくなるテーパ面5dとなっている。カラム2Aの内周面はストレートな円筒形となっている。
【0040】
カラム2Aの下端面と蓋体5Aの環状部5cよりも外周側との間にOリング13が配置されている。この場合も、環状部5cの外周面がカラム2Aの内周面に密着するので、Oリング13に加えられる液圧が軽減される。
【0041】
図示は省略するが、カラム上端側においてもテーパ形の環状部をカラムに設けてもよい。
【0042】
上記実施の形態では蓋体4をピストン状の可動式とし、蓋体5,5Aを固定式としているが、逆としてもよい。また、上下の蓋体の双方をピストン状の可動式としてもよく、双方を固定式としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】実施の形態に係る液体クロマトグラフィ装置の縦断面図である。
【図2】蓋体とフィルタとを示す分解斜視図である。
【図3】第1図の流入口部分の拡大図である。
【図4】別の実施の形態に係る液体クロマトグラフィ装置の下部の縦断面図である。
【図5】従来例の断面図である。
【符号の説明】
【0044】
1 液体クロマトグラフィ装置
2 カラム
2b 環状部
3 充填剤
4,5 蓋体
4b 環状部
6,7 フィルタ
6a,7a 低透液性部分
8 流入口
9,10,11 筋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
充填剤が充填されたカラムの一端に第1の蓋体が装着され、他端に第2の蓋体が装着され、
該第1の蓋体には液の流入口が設けられ、第2の蓋体には液の流出口が設けられている液体クロマトグラフィ装置において、
該第1の蓋体の充填剤側の面とカラム内周面とのコーナー部に、第1の蓋体から離隔するほど内径が大きくなるテーパ形断面形状の第1の環状部を設けたことを特徴とする液体クロマトグラフィ装置。
【請求項2】
請求項1において、前記第2の蓋体の充填剤側の面とカラム内周面とのコーナー部に、第2の蓋体から離隔するほど内径が大きくなるテーパ形断面形状の第2の環状部を設けたことを特徴とする液体クロマトグラフィ装置。
【請求項3】
請求項1又は2において、前記環状部は蓋体と一体に設けられていることを特徴とする液体クロマトグラフィ装置。
【請求項4】
請求項1又は2において、前記環状部は前記カラムと一体に設けられていることを特徴とする液体クロマトグラフィ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−78419(P2010−78419A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246131(P2008−246131)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)