説明

液体クロマト用分離カラム

【課題】吸着剤の充填作業や抜き出し作業を簡単に行うことができる液体クロマト用分離カラムを提供する。
【解決手段】液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤用導管9が、上下の蓋板5の中央部分と有孔板4の中央部分とにそれぞれ貫通して、先端部がカラム本体102の内部102aに突出して配置されている。これにより、吸着剤スラリーが上側の吸着剤用導管9からカラム本体102の内部102aに導入されると、吸着剤スラリー中の溶離液が下側の原液用導管8から排出されて、吸着剤スラリー中の吸着剤がカラム本体102の内部102aに充填される。また、溶離液が上下の原液用導管8からカラム本体102の内部102aに導入されると、カラム本体102の内部102aに充填されている吸着剤が上下の吸着剤用導管9から排出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件発明は、生理活性を持つタンパク質や機能性を持つ食品成分を分取する際に使用される液体クロマト用分離カラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、生理活性を持つタンパク質や機能性を持つ食品成分を分取する際には、一般的に図18に示すような液体クロマト用分離カラム101が使用されている。この液体クロマト用分離カラム101は、カラム本体102を中心にして構成されている。
【0003】
カラム本体102は円筒状に形成され、その上下端は開口されている。カラム本体102の上下端部の周りには、それぞれ円環状のフランジ103が形成されている。フランジ103の外面側には、ガスケット110を介して有孔板104が配置されている。この有孔板104は、カラム本体102の開口部を覆うように形成され、吸着剤が通過不能となっている。有孔板104の外面には、ガスケット110を介して蓋板105が配置されている。この蓋板105は、有孔板104とともに締結部材120によりフランジ103に固定されている。また、蓋板105は、有孔板104との間に中空部105aを形成している。さらに、蓋板105の中央部分には、原液用導管106が貫通されている。原液用導管106の先端は、蓋板105の中空部105内に位置している。
【0004】
次に、原液の各成分の分取作業を説明する。最初に、カラム本体102の内部102aを溶離液(図示せず)で満たす。次に、カラム本体102の内部102aに吸着剤(図示せず)を充填する。さらに、所定量の原液(図示せず)を上側の原液用導管106からカラム本体102の内部102aに導入しながら下側の原液用導管106から溶離液を抜き出す。
【0005】
次に、溶離液を上側の原液用導管106からカラム本体102の内部102aに導入する。これにより、吸着剤に導入された各成分は溶離されながら吸着剤への親和力の違いによって、それぞれ違う速度で吸着剤層を下方に移動し、下側の原液用導管106から外部に排出される。このときに各成分は、吸着剤に対する親和力が弱い成分から順に排出されるので、これを利用して各成分が分取される。
【0006】
そして、上記のような液体クロマト用分離カラム101では、リザーバーや可動栓を用いてカラム本体102の内部102aに吸着剤を充填する方法が提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2707780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、リザーバーや可動栓を用いて吸着剤をカラム本体102の内部102aに充填する際には、予めカラム本体102から上側の締結部材120、ガスケット110、有孔板104、蓋板105を外さなければならないので面倒である。
【0009】
また、カラム本体102の内部102aから吸着剤を抜き出す際にも、予めカラム本体102から上下の締結部材120、ガスケット110、有孔板104、蓋板105を外さなければならないので面倒である。
【0010】
したがって、吸着剤の充填作業や抜き出し作業を簡単に行うことができる液体クロマト用分離カラムが求められていた。
【0011】
本件発明は、かかる従来の課題に鑑みてなされたものであり、吸着剤の充填作業や抜き出し作業を簡単に行うことができる液体クロマト用分離カラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本件発明の液体クロマト用分離カラムでは、吸着剤用導管を一方の蓋板の中央部分と有孔板の中央部分とに貫通して、その先端部をカラム本体の内部に突出して配置した。
【0013】
これにより、吸着剤スラリーを吸着剤用導管からカラム本体の内部に導入して、吸着剤スラリー中の溶離液を有孔板と中空部とを介して他方の原液用導管から外部に排出することにより、吸着剤スラリー中の吸着剤がカラム本体の内部に充填される。また、溶離液を少なくとも一方の原液用導管からカラム本体の内部に導入することにより、カラム本体の内部に充填されている吸着剤が吸着剤用導管から外部に排出される。
【0014】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤用導管を塞ぐ閉止プラグを備えた。したがって、原液を一方の原液用導管からカラム本体の内部に導入する前には、閉止プラグで吸着剤用導管を塞ぐことにより分離カラムの液溜まり部分をなくすことができるので、分離カラム全体を長時間にわたって清潔に保つことができる。
【0015】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、さらに吸着剤用導管を他方の蓋板の中央部分と有孔板の中央部分とに貫通して、その先端部をカラム本体の内部に突出して配置した。したがって、吸着剤をカラム本体の上下いずれの側からも充填することが可能になり、また吸着剤をカラム本体の上下いずれの側からも排出することが可能になる。
【0016】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤用導管と有孔板の貫通穴との間にシール材を設けた。したがって、カラム本体の内部に導入された吸着剤スラリーが吸着剤用導管と有孔板の貫通穴との間から漏れて中空部の方に流れるのを防ぐことができる。
【0017】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤用導管の先端部をカラム本体の内部に対して出没可能に構成した。したがって、原液の導入前に吸着剤用導管の先端部を有孔板側に引っ込めることにより、原液の導入時には原液の流れが吸着剤用導管で乱されるのを抑えることができる。
【0018】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤用導管の先端部の外周面に入出孔を設けるとともに、先端部の端面に、先端部が引っ込んだときに有孔板の貫通穴を塞ぐ閉塞部を設けた。したがって、吸着剤用導管の先端部を引っ込めたときには閉塞部が有孔板の貫通穴を塞ぐことにより、吸着剤用導管と原液用導管とが中空部を介して接続される。したがって、この状態で溶離液を原液用導管から導入することにより、吸着剤用導管内にある吸着剤を外部に排出して吸着剤用導管を洗浄することができる。
【0019】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤用導管の先端部の出没動作を補助するガイド手段を備えた。したがって、吸着剤用導管の先端部をスムーズに引っ込めることが可能になる。
【0020】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤用導管と同じ側にある原液用導管を吸着剤用導管の外周側に形成して吸着剤用導管と二重管を形成することにより、当該原液用導管をガイド手段として構成した。このため、部品点数を増やすことなくガイド手段を備えることが可能になる。
【発明の効果】
【0021】
本件発明の液体クロマト用分離カラムでは、吸着剤スラリーを吸着剤用導管からカラム本体の内部に導入することにより、吸着剤スラリー中の吸着剤がカラム本体の内部に充填されるようにした。また、本件発明の液体クロマト用分離カラムでは、溶離液を少なくとも一方の原液用導管からカラム本体の内部に導入することにより、カラム本体の内部に充填されている吸着剤が吸着剤用導管から外部に排出されるようにした。したがって、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、カラム本体から有孔板や蓋板を外さなくても吸着剤の充填作業や抜き出し作業が可能になるので、吸着剤の充填作業や抜き出し作業を簡単に行うことができる。
【0022】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、原液をカラム本体の内部に導入する前に閉止プラグで吸着剤用導管を塞ぐようにしたので、分離カラム全体を長時間にわたって清潔な状態に保つことが可能になる。よって、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、タンパク質や糖質などのように、分離カラムで液溜まりとなり易い部分に溜まったときに腐敗し易い性質がある原液の分離操作にも利用できる。
【0023】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤用導管を上下側に配置した場合には、吸着剤をカラム本体の上下いずれの側からも充填することが可能になり、また吸着剤をカラム本体の上下いずれの側からも排出することが可能になる。よって、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤の充填作業や抜き出し作業をさらに簡単に行うことができる。
【0024】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤用導管と有孔板の貫通穴との間にシール材を設けたので、カラム本体の内部に導入された吸着剤スラリーが吸着剤用導管と有孔板の貫通穴との間から漏れて中空部の方に流れるのを防ぐことができる。よって、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤の充填作業を効率良く行うことができる。
【0025】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、原液の導入前に吸着剤用導管の先端部を有孔板側に引っ込められるようにしたので、原液の導入時には原液の流れが吸着剤用導管で乱されるのを抑えることができる。よって、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、原液の分離作業を効率良く行うことができる。
【0026】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤用導管の先端部を引っ込めたときに吸着剤用導管と原液用導管とが中空部を介して接続されるようにした。したがって、この状態で溶離液を原液用導管から導入することにより、吸着剤用導管内にある吸着剤を外部に排出して吸着剤用導管を洗浄することができる。その結果、吸着剤用導管に閉止プラグを容易に挿入できるので、分離カラムで洗浄性が悪い部分の液溜まりを確実になくすことができる。よって、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、分離カラム全体を長時間にわたってより清潔に保つことができる。
【0027】
また、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、ガイド手段を用いて吸着剤用導管の出没動作を補助するようにしたので、吸着剤用導管の先端部をスムーズに引っ込めることが可能になる。よって、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤用導管の洗浄作業を迅速に行うことができる。
【0028】
さらに、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、原液用導管を吸着剤用導管の外周側に形成して二重管とすることにより原液用導管をガイド手段として構成したので、部品点数を増やすことなくガイド手段を備えることができる。よって、本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤用導管の洗浄作業を、コストを抑えつつ迅速に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本件発明の一実施の形態を示す液体クロマト用分離カラムの模式断面図である。
【図2】図1のカラム本体の上側部分を中心とした拡大図である。
【図3】図2の要部の拡大図である。
【図4】同実施の形態において原液の各成分の分取作業の工程図である。
【図5】同実施の形態において吸着剤充填工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図6】同実施の形態において吸着剤の充填作業を示す図である。
【図7】同実施の形態において吸着剤用導管洗浄工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図8】同実施の形態において吸着剤用導管内に吸着剤が溜まっている状態を示す図である。
【図9】同実施の形態において上側の吸着剤用導管の引き上げ作業を示す図である。
【図10】同実施の形態において吸着剤用導管の洗浄作業を示す図である。
【図11】同実施の形態において原液導入工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図12】同実施の形態において原液の導入作業を示す図である。
【図13】同実施の形態において成分分取工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図14】同実施の形態において各成分の分取作業を示す図である。
【図15】同実施の形態において吸着剤排出工程の処理手順を示すフローチャートである。
【図16】同実施の形態において上側の吸着剤用導管の押し下げ作業を示す説明図である。
【図17】同実施の形態において吸着剤の排出作業を示す図である。
【図18】従来の液体クロマト用分離カラムの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本件発明の実施の形態を図にしたがって説明する。
【0031】
図1は、本件発明の一実施の形態を示す液体クロマト用分離カラム1の模式断面図である。本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1では、図18に示した従来の液体クロマト用分離カラム101と同じ部分には同じ符号を付し、従来の液体クロマト用分離カラム101と異なる部分を中心にして説明する。
【0032】
本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、カラム本体102の上下端側にそれぞれ、有孔板4と、蓋板5と、2枚の補強板6と、二重管設置用フランジ7と、原液用導管8と、吸着剤用導管9と、閉止プラグ10とを備えている。以下に、図1〜図3を用いて各部材の構成について説明する。
【0033】
<有孔板4>
有孔板4は、図1に示すように、カラム本体102のフランジ103の外面にガスケット110を介して配置されている。この有孔板4は、カラム本体102の上下の開口部をそれぞれ覆うように円形状に形成されている。また、この有孔板4は、吸着剤が通過不能に構成されている。これに関して、図2を用いて具体的に説明する。
【0034】
有孔板4は、遮水性を有する円環部40(図1参照)の内側に、目板41と、金網42とが積層されて構成されている。目板41は、有孔板4の外面側の部分を構成している。目板41の中央部分には貫通穴41aが設けられている。この貫通穴41aは円形状に形成されている。また、目板41において貫通穴41a以外の部分には、多数の網目が形成されている。各網目の大きさは、吸着剤が通過しない大きさに設定されている。
【0035】
一方、金網42は、有孔板4の内面側の部分を構成している。この金網42の中央部分には貫通穴42aが設けられている。この貫通穴42aは、円形状に形成されている。また、金網42は、5枚の金網(図示せず)が積層されて構成されている。この5枚の金網は、網目の大きさが異なっており、通常、液の流れ方向に網目が粗くなる順に積層されている。なお、各金網の網目の大きさは、吸着剤が通過しない大きさに設定されている。さらに、5枚の金網の中で一番網目が粗い金網の網目の大きさは、目板41の網目の大きさよりも小さく設定されている。
【0036】
また、目板41の貫通穴41aと金網42の貫通穴42aの大きさは同じであり、その位置が一致している。そして、双方の貫通穴41a、42aには、受け部43が装着されている。この受け部43は円環状に形成されており、その中心部分には、有孔板4の貫通穴4aが設けられている。また、貫通穴4aの外周面4bは、外側から内側に向けてテーパ状に形成されている。
【0037】
一方、蓋板5は、図1に示すように、有孔板4の外面にガスケット110を介して配置されている。この蓋板5は円形状に形成されている。図2に示すように、蓋板5の中央部分には、貫通穴5aが設けられている。この貫通穴5aは円筒状に形成されている。また、この貫通穴5aは、有孔板4の貫通穴4aに対して中心が一致するように対向している。また、貫通穴5aの下には、有孔板4との間に中空部5sが形成されている。この中空部5sは、貫通穴5aを中心にして断面山形状に形成されている。
【0038】
<補強板6>
2枚の補強板6,6は、それぞれ円環状に形成されている。この2枚の補強板6,6は、図1に示すように、蓋板5、有孔板4、フランジ103を挟んで配置されている。そして、これらの部材4〜6は、締結部材12により結合されている。
【0039】
また、図2に示すように、外側の補強板6の中央部分には、設置穴6aが設けられている。この設置穴6aは円形状に形成されている。また、この設置穴6aは、蓋板5の貫通穴5aと中心が一致するように対向している。さらに、この設置穴6aは、蓋板5の貫通穴5aよりも大きく形成されている。したがって、この設置穴6aには、蓋板5の外面5bが露出している。
【0040】
<二重管設置用フランジ7>
二重管設置用フランジ7は、円環状に形成されている。この二重管設置用フランジ7は、図2に示すように、外側の補強板6の設置穴6a内で、ガスケット13を介して、蓋板5の外面5bに載置されている。さらに、二重管設置用フランジ7は、締結部材11により蓋板5に固定されている。
【0041】
また、二重管設置用フランジ7の中央部分には、貫通穴7aが設けられている。この貫通穴7aは円筒状に形成されている。さらに、この貫通穴7aは、蓋板5の貫通穴5aに対して中心が一致するように対向している。
【0042】
<原液用導管8>
原液用導管8は、図2に示すように、原液用導管本体81と、接続導管82と、フランジ83とを備えている。
【0043】
原液用導管本体81は直線状の管状に形成されている。この原液用導管本体81は、二重管設置用フランジ7の貫通穴7aに通されて固定されている。原液用導管本体81の先端部811は、蓋板5の貫通穴5a内に位置している。先端部811の外周面には、複数の入出孔81aが上下に並んで設けられている。複数の入出孔81aは、原液用導管本体81の貫通路81bと、蓋板5の貫通穴5aとを接続している。
【0044】
また、接続導管82は直線状の管状に形成されている。この接続導管82の一端部は、原液用導管本体81の基端部の側面に結合されている。また、この接続導管82の内部には、貫通路82aが形成されている。
【0045】
また、フランジ83は、接続導管82の他端部の外周に設けられている。このフランジ83は円環状に形成されている。
【0046】
そして、以上のように構成されている原液用導管8の内部には、流路8aが形成されている。この流路8aは、原液用導管本体81の入出孔81aおよび貫通路81bと、接続導管82の貫通路82aとが接続されて構成されている。そして、この流路8aは、原液用導管8の外部と蓋板5の貫通穴5aとを接続している。
【0047】
<吸着剤用導管9>
吸着剤用導管9は、図2に示すように断面T字型に形成されている。この吸着剤用導管9は、吸着剤用導管本体91と、受け部用シール材92と、フランジ93とを備えている。
【0048】
吸着剤用導管本体91は直線状に形成されている。この吸着剤用導管本体91は、原液用導管本体81の貫通路81b、蓋板5の貫通穴5a、有孔板4の貫通穴4aに通されており、上下動が可能になっている。この吸着剤用導管本体91には、貫通路81bの上下部との間にシール91cが設けられている。また、吸着剤用導管本体91の先端部911は、カラム本体102の内部102aに対して出没可能に形成されている。図3に示すように、この先端部911の端面には、閉塞部94が設けられている。この閉塞部94は、上昇時に有孔板4の貫通穴4aを塞ぐように形成されている。
【0049】
また、吸着剤用導管本体91内には、流路9aが形成されている。図3に示すように、この流路9aは、流路本体91aと、入出孔91bとから構成されている。流路本体91aは、吸着剤用導管本体91の基端から先端部911に向けて延びており、基端側が開口されている。入出孔91bは、先端部911の外周面に設けられて流路本体91aの先端部に接続されている。
【0050】
また、図3に示すように、受け部用シール材92は、吸着剤用導管本体91の先端部911よりも基端側に外嵌して固着され、さらに有孔板4の貫通穴4aに内嵌している。この受け部用シール材92は円環状に形成されており、その外周面92aは外側から内側に向けてテーパ状に形成されている。これにより、受け部用シール材92は、吸着剤用導管本体91に追従して上下に移動することで、有孔板4の貫通穴4aに対して着脱可能となっている。
【0051】
また、図2に示すように、フランジ93は、吸着剤用導管本体91の基端部の外周に設けられている。このフランジ93は円環状に形成されている。
【0052】
<閉止プラグ10>
閉止プラグ10は、図1に示すように吸着剤用導管9を塞ぐ部材である。この閉止プラグ10は、図2にも示すように断面がT字型に形成されており、基部10aと、挿入部10bとを備えている。
【0053】
基部10aは、吸着剤用導管9のフランジ93に当接される部分である。この基部10aは、円形状に形成されている。基部10aの内面には、中央部分以外の部分にガスケット10cが設けられている。
【0054】
また、挿入部10bは、吸着剤用導管本体91の流路本体91aに挿入される部分である。この挿入部10bは、断面が円形の棒状に形成されている。そして、挿入部10bの一端は、基部10aの内面の中央部分に結合されている。また、挿入部10bの外周面全体にはシール材(図示せず)が設けられている。さらに、挿入部10bの長さは、挿入部10bが流路本体91aに根元まで挿入された際に、流路本体91aと入出孔91bとの接続状態を絶つように設定されている。
【0055】
以上のように構成されている液体クロマト用分離カラム1において、次に、原液の各成分の分取作業について説明する。図4は、原液の各成分の分取作業の工程図である。この分取作業は、吸着剤充填工程(ステップSA)、吸着剤用導管洗浄工程(ステップSB)、原液導入工程(ステップSC)、成分分取工程(ステップSD)、吸着剤排出工程(ステップSE)の順に行われる。以下に、各工程について説明する。
【0056】
<吸着剤充填工程>
図5と図6を用いて吸着剤充填工程を説明する。図5は、吸着剤充填工程の処理手順を示すフローチャートである。この吸着剤充填工程では、カラム本体102の内部102aに吸着剤Bを充填する。なお、吸着剤Bの充填前には、カラム本体102の内部102aを溶離液Cで満たしておくことが望ましい。以下に、各手順を具体的に説明する。
【0057】
(ステップSA1)
最初に、使用者は、上側の吸着剤用導管9を開放した状態にし、下側の吸着剤用導管9を閉止プラグ10で塞ぐ。
【0058】
(ステップSA2)
次に、使用者は、下側の吸着剤用導管9を引き下げて、受け部用シール材92を下側の原液用導管8の先端に係止させる。
【0059】
(ステップSA3)
次に、使用者は、下側の原液用導管8のフランジ83に、溶離液用排出管21の一端を接続する。この溶離液用排出管21の他端は溶離液Cの貯留タンクや排出タンク等(図示せず)に接続されている。
【0060】
(ステップSA4)
次に、使用者は、上側の吸着剤用導管9のフランジ93に、吸着剤用移送管22の一端を接続する。この吸着剤用移送管22の他端は、ポンプ等の移送手段(図示せず)を介して吸着剤スラリーAの貯留タンク(図示せず)に接続されている。なお、吸着剤スラリーAは、溶離液Cに吸着剤Bが分散されたものである。
【0061】
(ステップSA5)
次に、使用者は、移送手段を駆動する。これにより、吸着剤スラリーAが、貯留タンクから、吸着剤用移送管22、上側の吸着剤用導管9の順に通ってカラム本体102の内部102aに導入されて、さらに下側の有孔板4で濾過される。具体的には、吸着剤スラリーA中の溶離液Cが下側の有孔板4を通過して、吸着剤スラリーA中の吸着剤Bがカラム本体102の内部102aに残る。
【0062】
下側の有孔板4を通過した溶離液Cは、下側の中空部5s、下側の蓋板5の貫通穴5a、下側の原液用導管8、溶離液用排出管21の順に通って、貯留タンクや排出タンク等に入る。そして、時間が経過していくと、吸着剤Bはカラム本体102の内部102aに蓄積されていき充填される。
【0063】
(ステップSA6)
使用者は、吸着剤Bがカラム本体102の内部102aに充填されたら移送手段を停止する。なお、吸着剤Bがカラム本体102の内部102aに充填されたか否かを判断する方法としては、カラム本体102を透明性の部材で形成して目視で判断する方法や、上側の吸着剤用導管9や吸着剤用移送管22にかかる圧力の変化で判断する方法等が挙げられる。
【0064】
<吸着剤用導管洗浄工程>
次に、図7〜図10を用いて吸着剤用導管洗浄工程を説明する。図7は、吸着剤用導管洗浄工程の処理手順を示すフローチャートである。吸着剤スラリーAの移送手段が停止したときには、図8に示すように吸着剤Bが上側の吸着剤用導管9内に溜まっていることが多い。この吸着剤用導管洗浄工程では、吸着剤充填工程の終了後に上側の吸着剤用導管9内に溜まっている吸着剤Bを抜き出す。以下に、各手順を具体的に説明する。
【0065】
(ステップSB1)
最初に、使用者は、吸着剤充填工程で使用した吸着剤用移送管22(図6参照)を上側の吸着剤用導管9から外す。次に、図8に示すように上側の吸着剤用導管9のフランジ93に、吸着剤用排出管23の一端を接続する。この吸着剤用排出管23の他端は、吸着剤スラリーAの貯留タンクや排出タンク等(図示せず)に接続されている。
【0066】
(ステップSB2)
次に、使用者は、図8に示すように、上側の原液用導管8のフランジ83に、溶離液用移送管24の一端を接続する。この溶離液用移送管24の他端は、ポンプ等の移送手段(図示せず)を介して溶離液Cの貯留タンク(図示せず)に接続されている。
【0067】
(ステップSB3)
次に、使用者は、図9に示すように上側の吸着剤用導管9を引き上げて、受け部用シール材92を原液用導管8の先端に係止させる。これに伴い、上側の吸着剤用導管9の先端部911は有孔板4側に引っ込められ、閉塞部94が有孔板4の貫通穴4aを塞ぐ。同時に、受け部用シール材92は受け部43から外れて受け部43との間に隙間Sを形成する。この隙間Sを介して、中空部5sと吸着剤用導管9の入出孔91bとが接続する。その結果、原液用導管8と吸着剤用導管9とが中空部5sを介して接続される。
【0068】
(ステップSB4)
次に、使用者は、移送手段を駆動する。これにより、図10に示すように、溶離液Cは、貯留タンクから、上側の原液用導管8、上側の蓋板5の貫通穴5a、上側の中空部5s、隙間Sの順に通って、上側の吸着剤用導管9に導入される。すると、上側の吸着剤用導管9内にある吸着剤Bは、溶離液Cで押し出されて吸着剤スラリーAとして吸着剤用導管9から排出され、さらに吸着剤用排出管23を通って貯留タンクや排出タンク等に入る。
【0069】
(ステップSB5)
使用者は、吸着剤Bが上側の吸着剤用導管9から排出されなくなったら移送手段を停止する。なお、上側の吸着剤用導管9を透明性の部材で形成し、上側の吸着剤用導管9から吸着剤Bが排出されたか否かを目視で判断しても良い。
【0070】
(ステップSB6)
次に、使用者は、上側の吸着剤用導管9を閉止プラグ10で塞ぐ。この結果、上下側の吸着剤用導管9がそれぞれ閉止プラグ10で塞がれた状態になる。
【0071】
<原液導入工程>
次に、図11と図12を用いて原液導入工程を説明する。図11は、原液導入工程の処理手順を示すフローチャートである。この原液導入工程では、吸着剤Bが充填されているカラム本体102の内部102aに原液Dを導入する。以下に、各手順を具体的に説明する。
【0072】
(ステップSC1)
最初に、使用者は、上側の原液用導管8のフランジ83に、原液用移送管25の一端を接続する。この原液用移送管25の他端は、ポンプ等の移送手段(図示せず)を介して原液Dの貯留タンク(図示せず)に接続されている。なお、下側の原液用導管8のフランジ83には、溶離液用排出管21の一端が接続されており、溶離液用排出管21の他端には、溶離液Cの貯留タンクや排出タンク等(図示せず)が接続されたままであるとする。
【0073】
(ステップSC2)
次に、使用者は、移送手段を所定時間駆動する。これにより、所定量の原液Dが、貯留タンクから、原液用移送管25、上側の原液用導管8、上側の蓋板5の貫通穴5a、上側の中空部5s、上側の有孔板4の順に通ってカラム本体102の内部102aに導入される。この時に、カラム本体102の内部102aにある溶離液Cは、下側の有孔板4、下側の中空部5s、下側の蓋板5の貫通穴5aを通り、下側の原液用導管8から溶離液Cの貯留タンクや排出タンク等に排出される。
【0074】
なお、使用者は、分離系によっては、原液Dの導入に先立ち、吸着剤Bの状態を原液Dの成分の分離に適した状態に整えるために、上側の原液用導管8から調整液を必要量流すことがある。この調整液は、カラム本体102の内部102aを流れて、下側の有孔板4、下側の中空部5s、下側の蓋板5の貫通穴5aを通り、下側の原液用導管8から排出される。必要量の調整液をカラム本体102の内部102aに流した後には、洗浄用の溶離液Cをカラム本体102の内部102aに流し、内部102aに残った調整液を洗浄する操作を行う。
【0075】
<成分分取工程>
次に、図13と図14を用いて成分分取工程を説明する。図13は、成分分取工程の処理手順を示すフローチャートである。この成分分取工程では、カラム本体102の内部102aに溶離液Cを導入して、吸着剤Bに導入された原液Dの各成分Eを取り出す。以下に、各手順を具体的に説明する。
【0076】
(ステップSD1)
最初に、使用者は、下側の原液用導管8のフランジ83に分取用移送管26の一端を接続する。この分取用移送管26の他端には、各成分Eの貯留タンク(図示せず)が接続されるようになっている。
【0077】
(ステップSD2)
次に、使用者は、上側の原液用導管8のフランジ83に、溶離液用移送管24の一端を接続する。この溶離液用移送管24の他端は、上記のステップSB2で説明したように、ポンプ等の移送手段(図示せず)を介して溶離液Cの貯留タンク(図示せず)に接続されている。
【0078】
(ステップSD3)
次に、使用者は、移送手段を駆動する。これにより、溶離液Cが、貯留タンクから、溶離液用移送管24、上側の原液用導管8、上側の蓋板5の貫通穴5a、上側の中空部5s、上側の有孔板4の順に通ってカラム本体102の内部102aに導入される。
【0079】
なお、溶離液Cは、1種類の溶離液Cを使用する他に、多くの種類の溶離液Cを段階的に使用しても良い。また、溶離液Cに含まれる成分の濃度が連続的に変化するような溶離液Cを流しても良い。
【0080】
(ステップSD4)
溶離液Cがカラム本体102の内部102aに導入されると、吸着剤Bに導入されていた原液D中の各成分Eは、溶離液Cによって溶離されながら吸着剤Bとの親和力の違いにより異なる速度で吸着剤B層を移動することにより分離し、下側の有孔板4、下側の中空部5s、下側の蓋板5の貫通穴5aを通り、下側の原液用導管8から分取用移送管26に排出される。
【0081】
つまり、吸着剤Bに対する親和力が弱い成分は吸着剤B層を早く移動し、吸着剤Bに対する親和力が強い成分は吸着剤B層を遅く移動して、それぞれ分取用移送管26に排出される。したがって、使用者は、吸着剤B層から溶出された各成分Eが分取用移送管26に排出されるときに、各成分Eの排出タイミングをみながら、分取用移送管26に各成分Eの貯留タンクを入れ替わりに接続して、各貯留タンクに各成分を貯める。
【0082】
(ステップSD5)
そして、使用者は、吸着剤Bに対して親和力が最も強い成分Eを貯留タンクに貯め終わったら移送手段を停止する。この後に、吸着剤Bに吸着されて残っている微量成分を取り除くために、洗浄用の溶離液Cを流して吸着剤Bを洗浄する。なお、この成分分取工程SDとその前の原液導入工程SCとは、吸着剤Bによる原液Dの分離性能が低下するまで繰り返し実施することができる。
【0083】
<吸着剤排出工程>
次に、図15〜図17を用いて吸着剤排出工程を説明する。図15は、吸着剤排出工程の処理手順を示すフローチャートである。この吸着剤排出工程では、カラム本体102の内部102aに充填されている吸着剤Bを抜き出す。以下に、各手順を具体的に説明する。
【0084】
(ステップSE1)
最初に、使用者は、上側の吸着剤導管9を吸着剤スラリーAの移送に使用する場合には、図16に示すように上側の吸着剤用導管9を押し下げて、受け部用シール材92を有孔板4の貫通穴4aに嵌め込む。これにより、吸着剤用導管9の先端部911はカラム本体102の内部102aに突き出される。したがって、図17に示すように、上側の吸着剤用導管9は、カラム本体102の内部102aに接続して、上側の原液用導管8とは接続が切られる。
【0085】
これと同様に、使用者は、下側の吸着剤導管9を吸着剤スラリーAの移送に使用する場合には、図示しないが、下側の吸着剤用導管9を押し上げて、先端部911をカラム本体102の内部102aに突き出す。これにより、図17に示すように、下側の吸着剤用導管9は、カラム本体102の内部102aに接続して、下側の原液用導管8とは接続が切られる。
【0086】
(ステップSE2)
次に、使用者は、下側の原液用導管8のフランジ83に、溶離液用移送管24の一端を接続する。この溶離液用移送管24の他端は、ポンプ等の移送手段(図示せず)を介して溶離液Cの貯留タンク(図示せず)に接続されている。なお、上側の原液用導管8のフランジ83には、溶離液用移送管24、移送手段(図示せず)、溶離液Cの貯留タンク(図示せず)が接続されたままであるとする。
【0087】
(ステップSE3)
次に、使用者は、図14で示した上下の閉止プラグ10をそれぞれ吸着剤用導管9から外し、上下の吸着剤用導管9のフランジ93に、それぞれ吸着剤用排出管23の一端を接続する。上下の吸着剤用排出管23の他端は、ステップSB1で説明したように、吸着剤スラリーAの貯留タンクや排出タンク等(図示せず)に接続されている。
【0088】
(ステップSE4)
次に、使用者は、上側の移送手段を駆動する。これにより、溶離液Cが、貯留タンクから、上側の溶離液用移送管24、上側の原液用導管8、上側の蓋板5の貫通穴5a、上側の中空部5s、上側の有孔板4の順に通ってカラム本体102の内部102aに導入される。すると、カラム本体102の内部102aの上側にある吸着剤Bは、溶離液Cとともに押し出されて吸着剤スラリーAとして上側の吸着剤用導管9から上側の吸着剤用排出管23を通って貯留タンクや排出タンク等に入る。
【0089】
(ステップSE5)
使用者は、吸着剤Bが上側の吸着剤用導管9から排出されなくなったら上側の移送手段を停止する。なお、上側の吸着剤用導管9を透明性の部材で形成して、上側の吸着剤Bが排出されたか否かを目視で判断しても良い。
【0090】
(ステップSE6)
次に、使用者は、下側の移送手段を駆動する。これにより、溶離液Cが、貯留タンクから、下側の溶離液用移送管24、下側の原液用導管8、下側の蓋板5の貫通穴5a、下側の中空部5s、下側の有孔板4の順に通ってカラム本体102の内部102aに導入される。すると、カラム本体102の内部102aの下側に残っている吸着剤Bは、溶離液Cとともに押し出されて吸着剤スラリーAとして下側の吸着剤用導管9から下側の吸着剤用排出管23を通って貯留タンクや排出タンク等に入る。
【0091】
(ステップSE7)
使用者は、吸着剤Bが下側の吸着剤用導管9から排出されなくなったら下側の移送手段を停止する。なお、上側の吸着剤用導管9の場合と同様に下側の吸着剤用導管9を透明性の部材で形成して、下側の吸着剤Bが排出されたか否かを目視で判断しても良い。
【0092】
以上説明してきたように本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤用導管9の先端部911をカラム本体102の内部102aに突出して配置した。これにより、吸着剤充填工程SAでは、吸着剤スラリーAをカラム本体102の内部102aに導入して吸着剤スラリーA中の溶離液Cを外部に排出することにより、吸着剤スラリーA中の吸着剤Bがカラム本体102の内部102aに充填される。したがって、カラム本体102から有孔板4や蓋板5を外さなくても吸着剤Bの充填作業が可能になる。
【0093】
さらに、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤排出工程SEにおいて、溶離液Cをカラム本体102の内部102aに導入することにより、カラム本体102の内部102aに充填されている吸着剤Bを外部に排出するようにした。したがって、カラム本体102から有孔板4や蓋板5を外さなくても吸着剤Bの抜き出し作業が可能になる。
【0094】
よって、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤Bの充填作業や抜き出し作業を簡単に行うことができる。また、吸着剤Bの充填作業は、カラム本体102の上方の中央部分から行うので、カラム本体102の内部102aに吸着剤Bを均一に充填することができる。
【0095】
また、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、原液導入工程SCにおいて、原液Dの導入前に、閉止プラグ10で上下の吸着剤用導管9を塞ぐようにした。これにより、分離カラム1の液溜まり部分をなくすことができる。したがって、原液Dの分離作業を繰り返し行っても、分離カラム1全体を長時間にわたって清潔な状態に保つことが可能になる。よって、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、タンパク質や糖質などのように、分離カラムで液溜まりとなり易い部分に溜まったときに腐敗し易い性質がある原液の分離操作にも利用できる。
【0096】
なお、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤スラリーAを上側の吸着剤用導管9からカラム本体102の内部102aに導入するようにしたが、吸着剤スラリーAを下側の吸着剤用導管9からカラム本体102の内部102aに導入するようにしても良い。この場合には、上側の吸着剤用導管9を閉止プラグ10で塞ぐことになる。
【0097】
このように、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤Bをカラム本体102の上下いずれの側からも充填することが可能になる。さらに、カラム本体102の上下側に吸着剤用導管9がそれぞれ配置されたことで、吸着剤Bをカラム本体102の上下いずれの側からでも抜き出すことが可能になる。よって、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤Bの充填作業や抜き出し作業をさらに簡単に行うことができる。
【0098】
また、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤用導管9と有孔板4の貫通穴4aとの間に受け部用シール材92を設けた。これにより、吸着剤充填工程SAでは、カラム本体102の内部102aに導入された吸着剤スラリーAが吸着剤用導管9と有孔板4の貫通穴4aとの間から漏れて中空部5sの方に流れるのを防ぐことができる。よって、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤Bの充填作業を効率良く行うことができる。
【0099】
また、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤用導管9側に固着された受け部用シール材92が有孔板4の貫通穴4aに着脱することにより、吸着剤用導管9の先端部911をカラム本体102の内部102aに対して出没可能に構成した。したがって、吸着剤用導管洗浄工程SBでは、上側の吸着剤用導管9の先端部911を上側の有孔板4側に引っ込めたときには、上側の吸着剤用導管9と上側の原液用導管8とが接続される。このため、溶離液Cを上側の原液用導管8から導入することにより、吸着剤用導管9内にある吸着剤Bを外部に排出して吸着剤用導管9を洗浄することができる。その結果、吸着剤用導管9に閉止プラグ10を容易に挿入できるので、分離カラム1で洗浄性が悪い部分の液溜まりを確実になくすことができる。よって、本件発明の液体クロマト用分離カラム1は、分離カラム1全体を長時間にわたってより清潔に保つことができる。
【0100】
さらに、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤充填工程SAにおいて下側の吸着剤用導管9の先端部911を下側の有孔板4側に引っ込めている。したがって、原液導入工程SCに入る際には上下側の吸着剤用導管9の先端部911がカラム本体102の内部102aに突出していない状態となる。これにより、原液Dの導入時には、原液Dの流れが上下の吸着剤用導管9で乱されるのを抑えることができる。よって、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、原液Dの分離作業を効率良く行うことができる。
【0101】
また、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、上下の原液用導管8(原液用導管本体81)をそれぞれ吸着剤用導管9の外周側に形成して二重管とした。これにより、吸着剤用導管9は、原液用導管本体81に沿って上下動することにより先端部911がカラム本体102の内部102aに対して出没する。つまり、原液用導管8は吸着剤用導管の出没動作を補助するガイド手段になるので、吸着剤用導管9の先端部911をスムーズに引っ込めることが可能になる。よって、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤用導管9の洗浄作業を迅速に行うことができる。
【0102】
さらに、吸着剤用導管9の出没動作を補助するガイド手段として原液用導管8を用いたので、部品点数の増加を抑えることができる。よって、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1は、吸着剤用導管9の洗浄作業を、コストを抑えつつ迅速に行うことができる。
【0103】
以上、本件発明にかかる実施の形態を例示したが、これらの実施の形態は本件発明の内容を限定するものではない。また、本件発明の請求項の範囲を逸脱しない範囲であれば、各種の変更等は可能である。
【0104】
例えば、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1では、原液用導管8と吸着剤用導管9とで二重管を構成したが、必ずしも双方の導管8、9で二重管を構成する必要はなく、双方の導管8、9をカラム本体102の上下側の中央部分で並列になるように配置しても良い。
【0105】
また、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1では、吸着剤用導管9をカラム本体102の上下側にそれぞれ配置したが、少なくともカラム本体102の上下側の一方に配置されれば良い。その場合でも、吸着剤Bの充填作業や抜き出し作業を簡単に行うことができる。
【0106】
また、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1では、吸着剤用導管側に固着された受け部用シール材92が有孔板4の貫通穴4aに着脱することで吸着剤用導管9の先端部911をカラム本体102の内部102aに対して出没可能に構成したが、先端部911をカラム本体102の内部102aに対して出没可能とする構成は、本実施の形態のような構成に限定しなくても良い。例えば、受け部用シール材が有孔板4の貫通穴4aに固定されるような場合には、この受け部用シール材の貫通穴に吸着剤用導管を上下動可能に嵌め込み、支持手段を用いて吸着剤用導管を上下動可能に支持しても良い。その場合でも、原液の導入前に吸着剤用導管の先端部を有孔板4側に引っ込めることにより、原液の導入時には原液の流れが吸着剤用導管で乱されるのが抑えられるので、原液の分離作業を効率良く行うことができる。
【0107】
また、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1では、吸着剤排出工程SEにおいて、上下両方の原液用導管8から溶離液Cをカラム本体102の内部102aに導入して内部102aに充填されている吸着剤Bを抜き出すようにしたが、一方の原液用導管8から溶離液Cをカラム本体102の内部102aに導入して吸着剤Bを抜き出すようにしても良い。
【0108】
また、本実施の形態の液体クロマト用分離カラム1では、工程毎に原液用導管8や吸着剤用導管9に各種の接続管を交換して接続していたが、その他の方法としては次のような方法がある。原液用導管8や吸着剤用導管9に分岐管の一端を接続し、各分岐管の他端に所定の各タンク(吸着剤スラリーA用のタンク、溶離液C用のタンク、原液D用のタンク、各成分E用のタンク)を接続する。そして、バルブを用いて、工程毎に原液用導管8や吸着剤用導管9と各タンクとを切り換えて接続する。
【産業上の利用可能性】
【0109】
以上説明したように本件発明の液体クロマト用分離カラムは、吸着剤の充填作業や抜き出し作業を簡単に行うことができる。したがって、本件発明の液体クロマト用分離カラムを、液体クロマト用分離カラムの技術分野で十分に利用することができる。
【符号の説明】
【0110】
1 液体クロマト用分離カラム
4 有孔板
4a 有孔板の貫通穴
5 蓋板
5s 中空部
8 原液用導管
9 吸着剤用導管
10 閉止プラグ
91b 入出孔
92 受け部用シール材
94 閉塞部
102 カラム本体
102a カラム本体の内部
911 吸着剤用導管の先端部
A 吸着剤スラリー
B 吸着剤
C 溶離液
D 原液

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下端が開口されている筒状のカラム本体と、このカラム本体の上下の開口部を覆って設けられて吸着剤が通過不能である一対の有孔板と、双方の有孔板の外側に中空部を形成して設けられた一対の蓋板と、双方の蓋板の中央部分を貫通して先端部が前記中空部内に位置する一対の原液用導管とを備えている液体クロマト用分離カラムにおいて、
吸着剤用導管を一方の蓋板の中央部分と有孔板の中央部分とに貫通して、その先端部を前記カラム本体の内部に突出して配置したことを特徴とする液体クロマト用分離カラム。
【請求項2】
請求項1に記載の液体クロマト用分離カラムにおいて、
前記吸着剤用導管を塞ぐ閉止プラグを備えたことを特徴とする液体クロマト用分離カラム。
【請求項3】
請求項2に記載の液体クロマト用分離カラムにおいて、
前記吸着剤用導管と同じ吸着剤用導管を、他方の蓋板の中央部分と有孔板の中央部分とに貫通して、その先端部を前記カラム本体の内部に突出して配置したことを特徴とする液体クロマト用分離カラム。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の液体クロマト用分離カラムにおいて、
前記吸着剤用導管と前記有孔板の貫通穴との間にシール材を設けたことを特徴とする液体クロマト用分離カラム。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の液体クロマト用分離カラムにおいて、
前記吸着剤用導管の先端部を前記カラム本体の内部に対して出没可能に構成したことを特徴とする液体クロマト用分離カラム。
【請求項6】
請求項5に記載の液体クロマト用分離カラムにおいて、
前記吸着剤用導管の先端部の外周面に入出孔を設けるとともに、前記先端部の端面に、当該先端部が引っ込んだときに前記有孔板の貫通穴を塞ぐ閉塞部を設けたことを特徴とする液体クロマト用分離カラム。
【請求項7】
請求項5または請求項6に記載の液体クロマト用分離カラムにおいて、
前記吸着剤用導管の先端部の出没動作を補助するガイド手段を備えたことを特徴とする液体クロマト用分離カラム。
【請求項8】
請求項7に記載の液体クロマト用分離カラムにおいて、
前記吸着剤用導管と同じ側にある前記原液用導管を前記吸着剤用導管の外周側に形成して前記吸着剤用導管と二重管を形成することにより、当該原液用導管を前記ガイド手段として構成したことを特徴とする液体クロマト用分離カラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2010−261799(P2010−261799A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−112543(P2009−112543)
【出願日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)