説明

液体マグネトグラフィー用現像剤、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置

【課題】磁性重合体粒子の分散性及び分散安定性が良く、画像のかぶり、滲み、及び乱れが抑制される液体マグネトグラフィー用現像剤、並びにそれを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することである。
【解決手段】磁性粉及び高分子化合物を含む磁性重合体母粒子を含有する磁性重合体粒子と、前記磁性重合体粒子を分散する分散媒と、を有し、前記分散媒は、水を含む液体であり、現像剤全体の表面張力は、27mN/m以上42mN/m以下であり、現像剤全体の粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることを特徴とする液体マグネトグラフィー用現像剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体マグネトグラフィー用現像剤、プロセスカートリッジ、及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、証券類のようにセキュリティーの目的を重視した印刷物等に、磁気インクを用いた印刷技術がよく用いられている。この磁気印刷の代表的なものとしては、文字読み取りを目的として磁気インク印刷文字がJIS X9002に記載されている。
また、磁気バーコード用の磁気インクを用いた磁気印刷技術も、よく知られている。この磁気印刷では、オフセット印刷、スクリーン印刷、グラビヤ印刷などにより、磁気インクを各種の媒体に印刷している。この場合、最適な印刷特性を得るため、磁気インク中に粒子サイズが0.5μmから数μmの大きさの黒色の磁性顔料を使用している。
【0003】
安価なプリンタの急速な普及により、インクジェット、バブルジェット(登録商標)などの方式で磁気印刷を行う技術が報告されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0004】
その他、磁性体を利用した画像形成方法として、表面に磁性体を有する磁気記録媒体に磁気ヘッドを操作して磁気潜像を形成し、この磁気潜像を磁性トナーで現像後、被転写媒体に加熱あるいは静電的に転写し、定着して印刷するいわゆるマグネトグラフィーがあり、この技術に磁性インクを用いる技術が報告されている。
【特許文献1】特開2000−211924号公報
【特許文献2】特開2000−212498号公報
【特許文献3】特開平3−29961号公報
【特許文献4】特開平3−59678号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、磁性重合体粒子の分散性及び分散安定性が良く、画像のかぶり、滲み、及び乱れが抑制される液体マグネトグラフィー用現像剤、並びにそれを用いたプロセスカートリッジ及び画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の本発明により達成される。
すなわち請求項1に係る発明は、
磁性成分及び高分子化合物を含む磁性重合体母粒子を含有する磁性重合体粒子と、前記磁性重合体粒子を分散する分散媒と、を有し、
前記分散媒は、水を含む液体であり、
現像剤全体の表面張力は、27mN/m以上42mN/m以下であり、
現像剤全体の粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることを特徴とする液体マグネトグラフィー用現像剤である。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記磁性重合体粒子のゼータ電位は、−200mV以上−20mV以下であることを特徴とする請求項1に記載の液体マグネトグラフィー用現像剤である。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記磁性重合体粒子は、前記磁性重合体母粒子と、前記磁性重合体母粒子の表面に外添される外添剤粒子と、を含む外添磁性重合体粒子であり、
前記外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、15nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体マグネトグラフィー用現像剤である。
【0009】
請求項4に係る発明は、
前記磁性重合体母粒子の個数平均粒子径が0.5μm以上10.0μm以下であり、かつ、前記個数平均粒子径の変動係数が0%以上30%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の液体マグネトグラフィー用現像剤である。
【0010】
請求項5に係る発明は、
磁気潜像保持体と、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
磁気潜像が形成された前記磁気潜像保持体に前記現像剤を供給する現像剤供給手段と、
を有することを特徴とするプロセスカートリッジである。
【0011】
請求項6に係る発明は、
磁気潜像保持体と、
前記磁気潜像保持体上に磁気潜像を形成する磁気潜像形成手段と、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
前記磁気潜像をトナー像として顕像化するために前記磁気潜像が形成された前記磁気潜像保持体に前記現像剤を供給する現像剤供給手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記磁気潜像保持体上の前記磁気潜像を消磁する消磁手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1に係る発明によれば、磁性重合体粒子の分散性及び分散安定性が良く、画像のかぶり、滲み、及び乱れが抑制される。
【0013】
請求項2に係る発明によれば、より磁性重合体粒子の分散性及び分散安定性が優れ、画像のかぶり、滲み、及び乱れが抑制される。
【0014】
請求項3に係る発明によれば、より磁性重合体粒子の分散性及び分散安定性が優れ、画像のかぶり、滲み、及び乱れが抑制される。
【0015】
請求項4に係る発明によれば、画像のかぶり、滲み、乱れが抑制され、より高画質な画像が形成される。
【0016】
請求項5に係る発明によれば、磁性重合体粒子の分散性及び分散安定性が良く、画像のかぶり、滲み、及び乱れが抑制される。
【0017】
請求項6に係る発明によれば、磁性重合体粒子の分散性及び分散安定性が良く、画像のかぶり、滲み、及び乱れが抑制される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<液体マグネトグラフィー用現像剤>
本実施形態の液体マグネトグラフィー用現像剤(以下、単に「現像剤」と称する場合がある。)は、磁性成分及び高分子化合物を含む磁性重合体母粒子を含有する磁性重合体粒子と、磁性重合体粒子を分散する分散媒と、を有し、分散剤は水を含む液体である。また、本実施形態の現像剤は、全体の表面張力が27mN/m以上42mN/m以下であり、全体の粘度が1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることを特徴とする。
【0019】
現像剤が上記構成であることにより、現像剤中における磁性重合体粒子の分散性及び分散安定性が良い。
また、現像剤が上記構成であることにより、形成された画像のかぶり、滲み、及び乱れが抑制される。よってその結果、画像部と非画像部とのコントラストも良好となる。
【0020】
その理由は定かではないが、以下のように推測される。
現像剤の表面張力が上記範囲であるため、表面張力が高すぎることによる磁性重合体粒子の局所的な凝集が抑制される。さらに現像剤の粘度が上記範囲であるため、分散媒内における磁性重合体粒子の移動度が高くなる。よって、現像剤中における磁性重合体粒子の分散性が良いと共に、経時的な分散安定性も良いと推測される。
【0021】
また、現像剤の表面張力が上記範囲であるため、磁気潜像保持体等表面の磁気潜像が形成されていない領域(以下、「非磁気潜像領域」という場合がある。)への現像剤の付着が抑制される。さらに上記の通り、磁性重合体粒子の移動度が高いため、磁性重合体粒子が磁気泳動により磁気潜像領域へ移動しやすくなり、非磁気潜像領域への現像剤の付着がより抑制される。よって、非画像部全体にわたるかぶり(面かぶり)が抑制されると推測される。また上記の通り、磁性重合体粒子の局所的な凝集が抑制され、かつ、磁性重合体粒子の移動度が高いことから、画像部周辺のかぶり、画像の滲み、及び乱れが抑制されると推測される。
【0022】
また、現像剤が上記構成であるため、磁性重合体粒子の移動度が高く、高速な現像を行っても良好な画像が形成される。さらに現像剤が上記構成であるため、磁気潜像保持体表面に磁性重合体粒子が付着しても剥離しやすく、磁気潜像保持体のクリーニング性が向上し、画像形成装置内の汚染が抑制される。
【0023】
以下、本発明の実施形態における現像剤について、その構成に沿って具体的に説明する。
【0024】
―磁性重合体粒子―
磁性重合体粒子は、上記の通り、磁性成分及び高分子化合物を含む磁性重合体母粒子を含有する。
磁性重合体粒子の形態としては、磁性重合体母粒子をそのまま磁性重合体粒子として用いる形態と、磁性重合体母粒子及び外添剤粒子を含む外添磁性重合体粒子を磁性重合体粒子として用いる形態と、が挙げられる。
以下、磁性重合体母粒子について説明する。
【0025】
――磁性重合体母粒子――
磁性重合体母粒子は、上記の通り、磁性成分及び高分子化合物を含み、必要に応じてその他の成分を含んでもよい。
【0026】
(磁性成分)
磁性成分としては、磁性粉及び磁性流体が挙げられる。
【0027】
[磁性粉]
磁性粉としては、磁性を示すMO・Fe又はM・Feの一般式で表されるマグネタイト、フェライト等が好ましく用いられる。ここで、Mは2価あるいは1価の金属イオン(具体的には、例えば、Mn、Fe、Ni、Co、Cu、Mg、Zn、Cd、Li等)であり、Mとしては単独あるいは複数の金属が用いられる。例えばマグネタイト、γ酸化鉄、Mn−Zn系フェライト、Ni−Zn系フェライト、Mn−Mg系フェライト、Li系フェライト、Cu−Zn系フェライトの如き鉄系酸化物が挙げられる。中でも安価なマグネタイトが、より好ましく用いられる。
【0028】
また磁性粉は、上記のような磁性を示す酸化物の他に、他の金属酸化物を含んでもよい。他の金属酸化物としては、例えば、Mg、Al、Si、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Cd、Sn、Ba、Pb等の金属を単独あるいは複数用いた非磁性の金属酸化物および上記磁性を示す金属酸化物が用いられる。具体的には、例えば、非磁性の金属酸化物として、Al、SiO、CaO、TiO、V、CrO、MnO、Fe、CoO、NiO、CuO、ZnO、SrO、Y、ZrO系等が用いられる。
【0029】
磁性粉の個数平均一次粒子径は、0.02μm以上2.0μm以下の範囲であることが好ましい。磁性粉の個数平均一次粒子径が上記範囲から外れる場合は、磁性粉が凝集し易くなり、高分子化合物中への均一な分散が難しくなる場合がある。
【0030】
磁性重合体母粒子中における磁性粉の含有率は、2.5質量%以上50質量%以下の範囲であることが好ましく、3.0質量%以上40質量%以下の範囲であることがより好ましく、5.0質量%以上30質量%以下の範囲であることがさらに好ましい。磁性粉の含有量を上記範囲とすることにより、十分な磁力が得られ、また重合体粒子として水性媒体に対する分散安定性が向上する。
【0031】
本実施形態において、前記磁性粉は磁性重合体母粒子中に均一に分散されていることが望ましい。ここで、分散に関する「均一」とは、系内に磁性粉の一次粒子が十数個集まった程度の大きさの凝集体が存在しないことをいう。以下も同様である。
この場合、磁性粉の含有率の粒径依存性が少ないこと(粒径により磁性粉の含有率が大きく変動しないこと)が好ましい。具体的には、個数平均粒子径が2μmの磁性重合体母粒子の磁性粉含有率(P質量%)と、5μmの磁性重合体母粒子の磁性粉含有率(Q質量%)との比の(P/Q)が0.5以上であることが望ましく、0.6以上1.0以下の範囲であることがより好適である。粒径によらず磁性粉の含有率を上記一定範囲とすることにより、例えば磁性重合体母粒子を磁性重合体粒子としてマグネトグラフィーに用いた場合に、現像性のコントロールがより行いやすくなるなどのメリットがある。
【0032】
また、磁性重合体母粒子表面の磁性粉の存在状態は、表面の電子顕微鏡観察により確認することができ、観察された磁性重合体母粒子すべての表面に飛び出した磁性粉が見られないことが望ましい。
【0033】
磁性粉は、表面が疎水化処理されていることが望ましい。疎水化処理を行っていない磁性粉の表面は基本的に親水性であり、後述する高分子化合物の単量体は疎水性であるため、磁性粉の疎水化処理を行うことにより、磁性粉と単量体との親和性が高くなる。よって、磁性重合体母粒子中における磁性粉の分散均一性及び含有量も高くなる。
疎水化処理の方法としては特に制限されず、各種カップリング剤、シリコーンオイル、樹脂などの疎水化剤を磁性粉の表面に被覆処理すること等により行う方法が挙げられるが、これらの中ではカップリング剤により表面被覆処理することが好ましい。
【0034】
[磁性流体]
磁性流体とは、磁性粒子として粒子径が5nm以上50nm以下の単磁区構造の超常磁性体が、必要に応じて界面活性剤等の添加によって凝集することなく溶媒中に分散している分散体のことであり、磁性流体中の磁性粒子は容易に回転が可能である。
【0035】
前記磁性粒子として用いることができる超常磁性体としては、マグネタイト、フェライトをはじめとする鉄、コバルト、ニッケル、マンガン等の強磁性を示す金属、もしくはこれらの元素を含む合金、または化合物が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0036】
前記磁性粒子の飽和磁化は200ガウス以上1000ガウス以下が望ましく、より好適には300ガウス以上1000ガウス以下である。また、本実施形態における磁性流体には、希土類金属、コバルト合金等の粒子 を添加して飽和磁化を増大することも可能である。添加金属としては、Coの他に、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Er等を挙げることができる。
【0037】
前記磁性流体に用いることができる溶媒としては、流動性の点で常温(20から25℃)で液状であるものが望ましいが、加熱して使用する場合には常温固体状のものでも構わない。このような溶媒としては、水、有機溶媒、シリコーン系溶媒、フッ素系溶媒等挙げられるが、これらに限定されるものではない。
具体的には、n−ヘプタン、n−ヘキサン、n−オクタン、イソオクタン、n−デカン、1−デセン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロヘキサン等の脂肪酸炭化水素、ベンゼン、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、テトラリン等の芳香族炭化水素、ジエチルエーテル、ジn−プロピルエーテル、ジイソプロピルエーテル、ジn−ブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アルキルジフェニルエーテル、ジアルキルテトラフェニルエーテル、アルキルジフェニルエーテル、オリゴフェニレンオキサイド等のエーテル類、酢酸エチル、フタル酸ブチル、セバチン酸ブチル、脂肪酸エステル油、等のエステル系油類、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン等のハロゲン化合物類、4−メチル−1−ブタノール、1−ブタノール、アセトン、エタノール、メタノール、アセトニトリル)、グリセリン等のアルコール類、ホワイトオイル(流動パラフィン) 、ケロシン、デカリン、ピリジン、鉱油、スピンドル油、灯油、軽油、ポリα−オレフィン油系、アルキルナフタレン系、高級アルキルベンゼン、高級アルキルナフタレン、ポリブテン(分子量約300以上2000以下)、ポリアルキレングリコール、エクソン社製のアイソパーH、L、M等の石油系溶剤、ジメチルポリシロキサン等のシリコン油、パーフルオロポリエーテル等のフッ素油分散媒等を挙げることができる。
【0038】
常温固体のものとしては、オクタデカニルナフタレン、ノナデカニルナフタレン、エイコシルナフタレン等のアルキルナフタレン類;n−ウンデカン、n−ドデカン、n−トリデカン、n−テトラデカン、n−ペンタデカン、n−ヘキサデカン、n−ヘプタデカン、n−オクタデカン、n−ノナデカン等の炭化水素及びそれらのハロゲン化物;シリコーンオイル類;変性シリコーン類;市販品では、エクソン社製のノルパー14、15、16等の直鎖脂肪族炭化水素類を挙げることができる。
【0039】
また磁性流体には、必要に応じて分散剤を用いることができる。分散剤としては、例えば高級脂肪酸などが有効であり、該高級脂肪酸としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、ベヘニン酸又はこれらの塩等が使用できる。これらの添加量は、磁性粒子に対して0.001質量%以上50質量%以下が望ましく、より好適には0.01質量以上10質量%以下である。添加量が上記範囲にあると、粘度を上昇させることなく分散媒中での磁性粒子の沈降を抑制することができる。
【0040】
磁性流体中の前記磁性粒子の含有量は、5質量%以上80質量%以下が望ましく、より好適には10質量%以上50質量%以下である。含有量が上記の範囲にあると、流体の流動性が良好であり磁区方向が揃いやすく、磁気応答性を含めた好適な磁気特性を発揮することができる。
また、磁性流体の沸点は80℃以上であることが望ましい。
【0041】
磁性流体の一例としては、(株)シグマハイケミカル社製の品番M−300、N−304、N−504、A−200、A−300、A−400、A−500、p−206、P−306、F−210、F−310、等が挙げられるがこれらに限定されるものではない。
【0042】
磁性流体を液体状態で独立に粒子中に存在させるためには、磁性流体はカプセルに封入されていることが望ましい。カプセルに封入することにより、磁性重合体母粒子の作製の際に他の成分と混合することを避けることができるからである。ただし、磁性流体を液体状態で保持させることができれば、特にカプセル化を行わなくてもよい。
上記カプセルの個数平均粒子径は0.05μm以上2.0μm以下であることが望ましく、0.07μm以上1.2μm以下であることがより好適である。個数平均粒子径がこの範囲にあることにより、粒子の取り扱いがしやすくなるとともに、画像形成材料として用いたときに高画質を得られる。ここで言う粒子径は粒子の個数平均粒径を示し、カプセル作製の際に顕微鏡観察で確認するか、磁性重合粒子の作製後の粒子の断面観察により確認する。具体的には測定した100個のカプセルの粒子径を平均したものである。
【0043】
カプセルの作製法は種々の方法があるが、ゼラチンを用いたコアセルベーション法、アクリルモノマーを使用するin−situ重合法、メラミンを主原料とするin−situ重合法等が挙げられる。また、粒子中の磁性流体のカプセルは、あらかじめ別途作製されるものであっても、磁性重合体母粒子のポリマー重合の際に作製されるものであってもいずれでも構わない。
【0044】
本実施形態における磁性重合体母粒子中の磁性流体の含有率は、1質量%以上60質量%以下であることが望ましく、2.0質量%以上40質量%以下であることがより望ましく、3.0質量%以上25質量%以下であることがさらに望ましい。
含有率が前記範囲にあると、必要な磁力を確保しつつ磁性流体カプセルの粒子中でのばらつきのない分散や重合体粒子の安定性を得ることができる。
【0045】
なお、磁性重合体母粒子中の磁性流体の含有率は、熱重量測定装置により重量の燃焼温度に伴う変化率を測定すること、もしくは振動試料型磁力計(VSM)を用いて磁性流体の飽和磁化と磁性重合粒子の飽和磁化を比較することにより求めることができる。
【0046】
(高分子化合物)
高分子化合物としては従来から磁気記録装置に使用されている樹脂が用いられる。具体的には、スチレン及びその置換体の単独重合体及びそれらの共重合体樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルとの共重合体樹脂、スチレンと(メタ)アクリル酸エステルと他のビニル系モノマーとの多元共重合体樹脂、スチレンと他のビニル系モノマーとのスチレン系共重合体樹脂、及び上記各樹脂の一部を架橋したものが用いられる。更にはポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、シリコーン樹脂、ポリブチラール樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、フェノール樹脂、脂肪族又は指環族炭化水素樹脂、石油樹脂、スチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂、ワックス系樹脂等の単体又はこれらの混合体などが挙げられる。
【0047】
高分子化合物としては、熱可塑性樹脂が望ましい。
上記の高分子化合物の中でも、熱可塑性樹脂として具体的には、例えば、(メタ)アクリレートモノマー及びスチレン系モノマーのうちの少なくとも1つを重合した重合体が挙げられる。
【0048】
(メタ)アクリレートモノマーにおいては、(メタ)アクリル酸エステルのアルコール残基が、炭素数1から18の置換又は無置換のアルキル基であることが好ましく、該アルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、n−オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基などが挙げられる。また上記アルコール残基は、アルキル基の他に、ベンジル基、ヒドロキシエチル基、水酸基をジヒドロピラン等の疎水性保護基で保護したヒドロキシエチル基、ポリオキシエチレン基等であってもよい。
磁性重合体粒子の分散媒への分散性を考慮すると、前記高分子化合物としてはヒドロキシエチルメタアクリレートを含む重合体を用いたり、前記(メタ)アクリレートの重合体にさらに(ポリ)エチレングリコールで修飾させたりすることが望ましい。
【0049】
前記スチレン系モノマーとしては、炭素数6から12の置換又は無置換のアリール基を有するビニル基含有モノマーが望ましく、該アリール基としては、例えば、フェニル基、ナフチル基、トリル基、p−n−オクチルオキシフェニル基等が挙げられるが、フェニルが望ましい。
【0050】
なお、前記(メタ)アクリレートモノマーのアルキル基、スチレン系モノマーのアリール基における置換基としては、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、アリール基等が挙げられる。
前記アルキル基としては、前述のアルキル基で例示したものに準じて挙げられる。前記アルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基等が挙げられ、これらの中ではメトキシ基、エトキシ基が好ましい。また、前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられるが、フッ素原子、塩素原子が好ましい。前記アリール基としては、前述のアリール基で例示したものに準じて挙げられる。
【0051】
モノマーとして(メタ)アクリレートモノマー及びスチレン系モノマーの双方を用いる場合には、混合物中の(メタ)アクリレートとスチレン系モノマーとの含有量の比は、モル比((メタ)アクリレートモノマー/スチレン系モノマー)で95/10から5/95の範囲が望ましく、90/10から10/90の範囲がさらに好適である。
【0052】
高分子化合物は、水酸基、カルボキシル基及びそのアルキルエステル基から選択される少なくとも1種を有することが望ましい。これにより、磁性重合体粒子の水分散性が大幅に改善される。高分子化合物が前記官能基を有するためには、前記高分子化合物を構成する単量体を選択することにより行うことができる。
【0053】
水酸基を有する単量体としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、1,6−ビス(3−アクリロキシ−2−ヒドロキシプロピル)−ヘキシルエーテル、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌル酸エステル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
尚ここで、上記(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートを表す表現であり、以下においてこれに準ずる。
【0054】
カルボキシル基を有する単量体としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、メタクリロイルオキシエチルモノフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノヘキサヒドロフタレート、メタクリロイルオキシエチルモノマレエートおよびメタクリロイルオキシエチルモノスクシネートなどが挙げられる。
【0055】
なお、上記各官能基の存在は、磁性重合体粒子について赤外吸収スペクトルを測定することにより確認することもできるが、磁性成分等の影響を受けるため、下記の方法により行うことが望ましい
すなわち、前記磁性重合体粒子における水酸基、カルボキシル基は、磁性成分によって異なるので、高分子化合物の水酸基等は、磁性成分を除いた重合体成分の水酸基量、カルボキシ基量として求めることにより確認することが望ましい。
【0056】
この場合、前記高分子化合物が前記のうち水酸基のみを有するときは、水酸基量は0.1から5.0mmol/gの範囲であることが望ましい。水酸基量がこの範囲あれば、重合体粒子が膨潤することなく良好な水性媒体への分散性が得られる。
水酸基量は、0.2から4.0mmol/gの範囲であることが望ましく、0.3から3.0mmol/gの範囲であることがより好適である。
【0057】
一方、高分子化合物がカルボキシル基を有する場合には、カルボキシル基量が0.005から0.5mmol/gの範囲であることが望ましい。カルボキシル基量が前記範囲にあると、水酸基に比べて少ない官能基数であっても良好な水性媒体への分散性、膨潤抑制効果が得られ、他の官能基が存在する場合の変動に対してもこれらの特性を維持できる。
カルボキシル基量は、0.008から0.3mmol/gの範囲がより望ましく、0.01から0.1mmol/gの範囲であることがさらに好適である。なおこの場合、水酸基も有するときは、水酸基量は、0.2から4.0mmol/gの範囲であることがより望ましく、0.3から3.0mmol/gの範囲であることがさらに好適である。
【0058】
上記水酸基量は、一般的な滴定法により求めることができる。例えば、上記高分子化合物に無水酢酸のピリジン溶液等の試薬を加え、加熱して、水を加えて加水分解し、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、該上澄みをフェノールフタレイン等の指示薬を用いて、エタノール性水酸化カリウム溶液等で滴定することにより、その水酸基量を求めることができる。
【0059】
一方、カルボキシル基量も一般的な滴定法により求めることができる。例えば、上記高分子化合物に水酸化カリウムのエタノール溶液等の試薬を加えて中和反応を行い、遠心分離機により粒子と上澄みとに分け、過剰の水酸化カリウムが含まれる該上澄みを自動滴定装置を用いて、イソプロパノール塩酸溶液等で滴定することにより、そのカルボキシル基量を求めることができる。
また、カルボキシル基が後述する塩構造(−COO−Y+:ここでY+はアルカリ金属イオンやアルカリ土類金属イオン、もしくはアンモニウムなどの有機カチオンを示す)を形成している場合は、塩酸等の酸で塩をカルボン酸に変換した後、上述の滴定を行いカルボキシル基量を求めることができる。
すなわち、本実施形態におけるカルボキシル基量とは、カルボキシル基が塩構造を形成している場合には、該塩構造に寄与しているカルボキシル基を含めたカルボキシル基量をいう。
【0060】
本実施形態における高分子化合物は、必要に応じて架橋性を有する単量体(架橋剤)をさらに共重合させたものであってもかまわない。具体的には、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル(メタ)アクリレート等の架橋剤が挙げられ、重合の際に架橋構造とするか、重合によるポリマー粒子化した後に架橋させてもよい。
また、モノマー混合物中の架橋剤の含有量は、(メタ)アクリレートモノマー及び/またはスチレン系モノマー合計量100質量部に対して0.05から20質量部の範囲が望ましく、0.5から10質量部の範囲がより好適である。
【0061】
さらに、高分子化合物には、定着性向上の観点から非架橋樹脂を含有させてもよい。非架橋樹脂としては、熱、紫外線、電子線等の外部エネルギー、あるいは溶剤蒸気、重合体からの溶剤揮発等で紙、フィルム等の被定着媒体に粒子を定着させる重合体であれば特に制限されない。
【0062】
具体的には、例えばスチレン、クロロスチレン等のスチレン類;エチレン、プロピレン、ブチレン、イソプレン等のモノオレフィン類;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、酢酸ビニル等のビニルエステル類;アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸フェニル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸ドデシル等のα−メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル類;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルブチルエーテル等のビニルエーテル類;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロペニルケトン等のビニルケトン類;などの単独重合体又は共重合体が挙げられる。
【0063】
高分子化合物が非架橋重合体を含む場合、該非架橋重合体の分子量(数平均分子量)は、5000から1000000の範囲が望ましく、10000から500000の範囲がより好適である。
なお、上記数平均分子量は、高分子化合物をTHFに溶解させ、溶解分として分離した成分について、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)を用いて測定される。
【0064】
(その他の成分)
磁性重合体母粒子には、高分子化合物の着色を目的として、更に染料、顔料、カーボンブラックなどを含有させてもよい。その場合には、磁性重合体母粒子の製造工程において、磁性成分が分散された単量体等の混合物に前記各添加剤を含ませてもよいし、磁性成分および前記単量体等とともにあらかじめ混合し、磁性成分の分散処理と前記各添加剤の分散処理とを同時に行ってもよい。
【0065】
(磁性重合体母粒子の製造方法)
本発明における磁性重合体粒子を得るには、公知の方法が利用され、例えば、懸濁重合法、乳化重合法、分散重合法、シード重合法等が好適に用いられる。さらに、膜乳化法として知られる乳化方法を使って懸濁重合してもよい。
具体的に、例えば前記懸濁重合法により磁性重合体粒子を作製する場合には、まず前記高分子化合物を構成する所望量のモノマー、磁性成分、さらに架橋剤、重合開始剤等を加えた混合物を調製する。
【0066】
架橋剤としては、公知の架橋剤を選択して用いることができ、好適なものとしては、例えばジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、メチレンビス(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、メタクリル酸2−([1’−メチルプロピリデンアミノ]カルボキシアミノ)エチル等が挙げられる。これらの中でも、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレートがより望ましく、更には、ジビニルベンゼンが特に好適である。また、重合開始剤としては、アゾ系重合開始剤、過酸化物系開始剤等が好適なものとして挙げられるが、中でも油溶性開始剤が望ましい。
【0067】
また、前記混合物には、更にポリマーの着色を目的とした染料、有機顔料、カーボンブラック、酸化チタンなど、さらには磁性成分としての磁性粉等を含有させてもよい。
上記磁性粉としては、磁性を示すMO・FeまたはM・Feの一般式で表されるマグネタイト、フェライト等を好適に用いられる。
【0068】
以上の各単量体等を含む混合物の作製方法としては、例えば、まず前記単量体、重合開始剤及びその他の必要な成分とを混合して単量体等の混合液を作製する。混合の方法は特に制限されない。
次いで、これに磁性成分を分散させる。上記混合液への磁性成分の分散には公知の方法が適用される。すなわち、例えばボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用される。なお、あらかじめ単量体成分を別途重合し、得られた重合体に磁性成分を分散させる場合には、ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー、エクストルーダー等の混練機が使用される。
なお、混合物の作製方法としては、上記に限られず、例えば前記混合液作製の際に磁性成分を混合したものを用いて、この段階で磁性成分を含有させてもよいし、前記単量体、磁性成分等を一度に混合して混合物としてもよい。
【0069】
次に、前記モノマー等を含む混合物の水性媒体への懸濁を行う。懸濁は、例えば以下のようにして行われる。
すなわち、無機塩類などの塩を溶解し且つ分散安定剤を存在させた水性媒体中に、前記混合物を投入し、懸濁させる。懸濁の方法としては、公知の懸濁方法が利用される。例えば、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ水性媒体中に単量体等を懸濁させる方法、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で懸濁する方法、超音波によって懸濁する方法等の機械的な懸濁方法が挙げられる。
【0070】
次いで、前記懸濁させた単量体及び磁性成分等を含む粒子を懸濁重合させることにより磁性重合体粒子を得る。重合反応は、大気下だけでなく、加圧下においても行うことができるが、これらその他の反応条件は、必要に応じて適用されるもので、特に限定されるものではない。
反応条件としては、例えば、大気圧下で、前記懸濁粒子が分散した懸濁液を攪拌しながら、40から100℃の反応温度で1から24時間反応させることが、80%程度以上の収率で重合体粒子を得る等の観点から好適である。
【0071】
(磁性重合体母粒子の特性)
磁性重合体母粒子は、個数平均粒子径(一次粒子径)が0.5μm以上10.0μmの範囲であることが好ましく、0.5μm以上5.0μm以下の範囲であることがより望ましく、1.0μm以上4.0μm以下の範囲であることがさらに好ましい。
また磁性重合体母粒子は、個数平均粒子径の変動係数が0%以上30%以下の範囲であることが好ましく、0%以上20%以下であることがより好ましい。
【0072】
磁性重合体母粒子の個数平均粒径が上記範囲にあると、粒子の取り扱いがしやすくなるとともに、画像形成材料として用いたときに高画質が得られる。また、変動係数が上記範囲にあると、実際の製造条件の範囲で粒子間での大きさのバラツキが抑えられ、高画質な画像が作成される。
【0073】
なお、上記個数平均粒子径は、乾燥させた磁性重合体母粒子を光学顕微鏡または電子顕微鏡にて写真撮影し、その中から無作為に選んだ100個から200個の粒子の粒子径を各々測定し、それらの合計を個数で除した値である。
また、前記変動係数とは、上記測定により得られた粒子径データを基に粒径分布の指標である標準偏差(μm)を求めたのち、標準偏差を個数平均粒子径で除して100倍することにより算出した無次元の変動係数(%)である。
【0074】
――外添磁性重合体粒子――
磁性重合体粒子は、上記の磁性重合体母粒子単独で構成されたもの(磁性重合体母粒子をそのまま磁性重合体粒子として用いる形態)であってもよいが、磁性重合体母粒子及び外添剤粒子を含む外添磁性重合体粒子であることが望ましい。
以下、外添磁性重合体粒子について説明する。
【0075】
外添磁性重合体粒子は、上記の磁性重合体母粒子と、磁性重合体母粒子の表面に外添される外添剤粒子と、を含み、外添剤粒子の個数平均一次粒子径は15nm以上500nm以下であることを特徴とする。
【0076】
外添磁性重合体粒子が上記構成であることにより、より磁性重合体粒子の分散性及び分散安定性が優れ、画像のかぶり、滲み、及び乱れが抑制される。
その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0077】
磁性重合体母粒子の表面が上記のような外添剤粒子によって外添されることにより、磁性重合体粒子の表面に不均一性が生じ凹凸が形成されるため、磁性重合体粒子の凝集が抑制される。よって、外添磁性重合体粒子が磁性体を含むため比重が大きい粒子であるにもかかわらず、良好な分散状態及び分散安定性が得られると推測される。
また、外添磁性重合体粒子が上記構成であることにより、画像形成装置内の磁気潜像保持体表面と外添磁性重合体粒子との接触面積が小さくなり、非磁気潜像領域への外添磁性重合体粒子の吸着が抑制される。よって、画像のかぶり等が抑制されると推測される。
【0078】
また、外添磁性重合体粒子が上記構成であることにより、磁気潜像保持体表面に外添磁性重合体粒子が付着しても剥離しやすく、磁気潜像保持体のクリーニング性が向上し、画像形成装置内の汚染が抑制される。
【0079】
(外添剤粒子)
外添剤粒子は、磁性重合体母粒子作製後に、その表面に添加し付着させた粒子のことを意味する。
外添剤粒子としては、具体的には、無機粒子及び高分子粒子が挙げられる。
無機粒子としては、例えば、シリカ、アルミナ、チタニア、その他公知のものが挙げられる。
高分子粒子としては、例えば、乳化重合法によって、(メタ)アクリレートモノマー、スチレン系モノマー等公知のモノマーを重合させたもの等が挙げられ、必要に応じて架橋性を有する単量体(架橋剤)をさらに共重合させたものであってもかまわない。
【0080】
外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、上記の通り、15nm以上500nm以下であるが、15nm以上300nm以下であることが望ましく、20nm以上200nm以下であることがより望ましい。
外添剤粒子の個数平均一次粒子径が上記範囲より小さいと、磁性重合体母粒子表面に外
添剤粒子が均一に付着し、磁性重合体粒子表面の不均一状態を作りにくく、外添磁性重合体粒子の上記凝集抑制効果が得られにくい場合がある。
一方、外添剤粒子の個数平均一次粒子径が上記範囲より大きいと、磁性重合体母粒子表面における外添剤粒子の吸着性が下がるために、磁性重合体粒子表面の不均一状態を作りにくい上に、剥離した外添剤粒子による画質欠陥が起こる場合がある。
【0081】
外添剤粒子の添加量としては、外添磁性重合体粒子全体に対し、0.5から15質量%が好ましく、より好ましくは0.5から7質量%の範囲になるように設定される。
【0082】
(外添方法)
外添剤粒子を磁性重合体母粒子表面に外添させる方法としては、例えば、高速混合機を用いる方法が挙げられる。具体的には、例えば、ヘンシェルミキサーやV型ブレンダー等を用いて、磁性重合体母粒子と外添剤粒子とを混合すればよい。
【0083】
――磁性重合体粒子の特性――
現像剤中における磁性重合体粒子の濃度は0.5質量%以上40質量%以下の範囲とすることが望ましく、1質量%以上20質量%以下の範囲とすることがより好適である。
磁性重合体粒子の濃度が上記範囲であると、液粘度が適正であるためハンドリングがしやすく、記録媒体上に画像として形成された磁性重合体粒子により十分な画像濃度が得られる。
【0084】
―分散媒―
分散媒は、水を含む液体であり、必要に応じて、磁性重合粒子の分散安定性の維持等を目的とした界面活性剤や分散剤、蒸発性制御や界面特性制御等を目的とした水溶性有機溶媒、その他の添加剤等を含んでもよい。
ここで「水」とは、蒸留水、イオン交換水、超純水等、精製した水を意味する。
【0085】
(界面活性剤)
界面活性剤としては、アニオン系界面活性剤、ノニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤等、いずれの公知の界面活性剤も使用可能である。
【0086】
アニオン性界面活性剤としては、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、高級脂肪酸エステルの硫酸エステル塩、高級脂肪酸エステルのスルホン酸塩、高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩及びスルホン酸塩、高級アルキルスルホコハク酸塩、高級アルキルリン酸エステル塩、高級アルコールエチレンオキサイド付加物のリン酸エステル塩等が挙げられる。
【0087】
ノニオン性界面活性剤としては、例えば、ポリプロピレングリコールエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等)、ポリオキシエチレンアルキルエーテル(ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル等)、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、脂肪酸アルキロールアミド、アセチレングリコールのオキシエチレン付加物等が挙げられる。
【0088】
カチオン性界面活性剤としては、例えば、テトラアルキルアンモニウム塩、アルキルアミン塩、ベンザルコニウム塩、アルキルピリジウム塩、イミダゾリウム塩等が挙げられる。
【0089】
界面活性剤としては、前述のほか、例えば、ポリシロキサンオキシエチレン付加物等のシリコーン系界面活性剤;パーフルオロアルキルカルボン酸塩、パーフルオロアルキルスルホン酸塩、オキシエチレンパーフルオロアルキルエーテル等のフッ素系界面活性剤;スピクリスポール酸やラムノリピド、リゾレシチン等のバイオサーファクタント;等も挙げられる。
【0090】
(分散剤)
分散剤としては、親水性構造部と疎水性構造部とを有する重合体であれば有効に用いられる。例えば、スチレン−スチレンスルホン酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−マレイン酸共重合体、ビニルナフタレン−メタクリル酸共重合体、ビニルナフタレン−アクリル酸共重合体、アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸、スチレン−メタクリル酸アルキルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−アクリル酸アルキルエステル−アクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸フェニルエステル−メタクリル酸共重合体、スチレン−メタクリル酸シクロヘキシルエステル−メタクリル酸共重合体等が挙げられ、これら共重合体は、ランダム、ブロックおよびグラフト共重合体等いずれの構造でもあってもよい。
【0091】
また、これらの重合体は、分散性や水溶性等を向上させるために、ポリオキシエチレン基、水酸基を有するモノマー、カチオン性の官能基を有するモノマーを共重合してもよく、親水基が酸性基である重合体においては塩基性の化合物との塩構造であってもよい。
【0092】
(水溶性有機溶媒)
水溶性有機溶媒は、水に添加したときに2相に分離しない有機溶剤のことを言い、具体的には、例えば、一価もしくは多価のアルコール類、含窒素溶媒、含硫黄溶媒、その他その誘導体等が挙げられる。
【0093】
多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、グリセリン等が挙げられる。
多価アルコール誘導体としては、例えば、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジグリセリンのエチレンオキサイド付加物等が挙げられる。
一価のアルコール類としては、例えば、エタノール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ベンジルアルコール等が挙げられる。
【0094】
含窒素溶媒としては、例えば、ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
硫黄溶媒としては、例えば、チオジエタノール、チオジグリセロール、スルホラン、ジメチルスルホキシド等が挙げられる。
水溶性有機溶媒として、上記に挙げられるものの他に、炭酸プロピレン、炭酸エチレン等が挙げられる。
水溶性有機溶媒を添加する場合の添加量は、分散媒全体に対し30質量%以下が望ましく、10質量%以下がより好適である。
【0095】
(その他の添加剤)
分散媒は、導電率、インクのpHの調整等を目的として、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム等のアルカリ金属類の化合物;水酸化アンモニウム、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、エタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1−プロパノール等の含窒素化合物;水酸化カルシウム等のアルカリ土類金属類の化合物;硫酸、塩酸、硝酸等の酸;硫酸アンモニウム等の強酸と弱アルカリの塩;等の添加が可能である。
【0096】
また、その他に、必要に応じて、防カビ、防腐、防錆等を目的として安息香酸、ジクロロフェン、ヘキサクロロフェン、ソルビン酸等を添加してもよい。また、酸化防止剤、粘度調整剤、導電剤、紫外線吸収剤、キレート化剤等を添加してもよい。
【0097】
―現像剤の製造方法―
本実施形態における現像剤の製造は、以下のような手順により行われるが、これに限られるものではない。
まず、主溶媒の水と前記各添加剤等とを含む分散媒をマグネチックスターラー等により調製し、これに前記磁性重合体粒子を分散させる。分散には公知の方法が適用される。すなわち、ボールミル、サンドミル、アトライター、ロールミル等の分散機が使用される。また、ミキサーのごとく、特殊な攪拌羽根を高速で回転させ分散させる方法、ホモジナイザーとして知られるローター・ステーターの剪断力で分散する方法、超音波によって分散する方法等が挙げられる。
【0098】
液中で磁性重合体粒子同士が単独の分散状態になったことを分取した分散液の顕微鏡観察等により確認し、その後、防腐剤等の添加物を加えて完全に溶解していることを確認した後、得られた分散液を、例えば孔径100μmの膜フィルターを用いて濾過し、ゴミ及び粗大粒子を除去することにより画像形成用記録液が得られる。
【0099】
―現像剤の特性―
(現像剤の表面張力)
現像剤の表面張力は、上記の通り、27mN/m以上42mN/m以下であり、28mN/m以上41mN/m以下が望ましく、30mN/m以上39mN/m以下がより望ましい。
【0100】
現像剤の表面張力が上記範囲であることにより、上記の通り画像のかぶり等が低減し、画像が改善される。現像剤の表面張力が上記範囲より小さいと、磁気潜像保持体表面の非磁気潜像領域にも現像剤が付着しやすくなるため、非画像部全面にかぶりが発生することにより画質が低下する場合がある。また現像剤の表面張力が上記範囲より大きいと、現像剤に含まれる磁性重合体粒子が部分的に凝集しやすくなるため、画像部周辺にかぶりが発生することにより画質が低下する場合がある。
【0101】
現像剤の表面張力は、現像剤の組成に依存するものであるため、現像剤の組成を調整することにより現像剤の表面張力が制御される。具体的には、例えば、磁性重合体粒子の特性に応じて、界面活性剤の種類及び濃度を調整することにより、現像剤の表面張力を制御する方法等が挙げられる。
【0102】
現像剤の表面張力を上記範囲に制御するために好適な界面活性剤の種類としては、上記の界面活性剤のうち、例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられ、その中でも高級脂肪酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルがより望ましい。
また、現像剤の表面張力を上記範囲に制御するために好適な界面活性剤の添加量としては、例えば、現像剤全体に対し0.001質量%以上15質量%以下の範囲が挙げられ、0.01質量%以上8質量%以下の範囲がより望ましく、0.05質量%以上3質量%以下がさらに望ましい。
【0103】
(現像剤の粘度)
現像剤の粘度は、上記の通り、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であり、1.0mPa・s以上5mPa・s以下が望ましく、1.0mPa・s以上4mPa・s以下がより望ましい。
現像剤の粘度が上記範囲であることにより、現像剤中における磁性重合体粒子の磁気泳動性が良好となる。現像剤の粘度が上記範囲より小さいと、分散媒が蒸発しやすくなるため、例えば現像剤を加熱する場合において分散媒の量が減少してしまう場合がある。また現像剤の粘度が上記範囲より大きいと、磁気重合体粒子が磁気潜像領域に向かって移動する速度が遅くなることにより画質が低下する場合がある。
【0104】
現像剤の粘度は、現像剤の組成に依存するものであるため、現像剤の組成を調整することにより現像剤の粘度が制御される。具体的には、界面活性剤の種類、界面活性剤の濃度制御、粘度調整剤の添加により、現像剤の粘度を制御する方法等が挙げられる。
【0105】
(磁性重合体粒子の分散状態)
現像剤中における磁性重合体粒子は、単独の分散状態となっていることが望ましい。よって、現像剤中における磁性重合体粒子の分散平均粒子径は、磁性重合体粒子の個数平均粒子径により近いことが理想的である。この観点から、磁性重合体粒子の分散平均粒子径A(μm)と前記個数平均粒子径B(μm)との比(A/B)を液分散性の指標とした場合に、A/Bを1.0以上3.0以下とすることが好ましく、1.0以上2.5以下とすることがより好ましい。
【0106】
A/Bが上記範囲にあると、磁性重合体粒子の分散性が良好であり高画質の画像形成が行われる。
なお、上記磁性重合体粒子の分散平均粒子径は、コールターカウンター マルチサイザー3(ベックマン・コールター(株))により求めた体積平均粒子径である。
【0107】
(磁性重合体粒子のゼータ電位)
現像剤中における磁性重合体粒子のゼータ電位は、−200mV以上−20mV以下であることが望ましく、−150mV以上−20mV以下であることがより望ましく、−100mV以上−20mV以下であることがさらに望ましい。
ここで、ゼータ電位とは、液体分散中の固体表面の表面電位を示す指標であり、正確には、溶液中の微粒子の周りに形成する電気二重層中の、液体流動が起こり始めるすべり面の電位として定義される。これがゼロに近づくと、微粒子の相互の反発力は弱まりやがて凝集する。
【0108】
ゼータ電位が上記範囲であることにより、より磁性重合体粒子の分散性及び分散安定性が優れ、画像のかぶり、滲み、及び乱れが抑制される。
その理由は定かではないが、以下のように推測される。
【0109】
ゼータ電位が上記範囲であると、粒子表面に良好な表面電位が存在するため、粒子間において静電的反発力が生じると考えられる。そのため、磁性重合体粒子が磁性体を含むため比重が大きい粒子であるにもかかわらず、良好な分散状態及び分散安定性が得られると推測される。
さらに、ゼータ電位が上記範囲であると、磁性重合体粒子が表面電位を有することから、磁気潜像保持体表面の非磁気潜像領域への磁性重合体粒子の吸着が抑制され、画像のかぶり等が抑制されると推測される。
【0110】
また、ゼータ電位が上記範囲であることにより、磁気潜像表面に磁性重合体粒子が付着しても剥離しやすく、磁気潜像保持体のクリーニング性が向上し、画像形成装置内の汚染が抑制される。
【0111】
ゼータ電位が上記範囲より大きく、かつ負の値であると、磁性重合体粒子の表面における表面電位が不足するため、磁性重合体粒子の分散性が低下する場合がある。
また、ゼータ電位が正の値であると、磁性重合体粒子の表面に正電荷を持つ事となる。すると、記録装置を構成する部材に用いられている材料の多くが、表面に負電荷を持つプラスチックであることから、磁性重合体粒子が装置内へ吸着することによる汚染が進む場合がある。
【0112】
一方、ゼータ電位が上記範囲よりも低いと、磁性重合体粒子の表面における表面電位が大きすぎることから、ハンドリング時に磁性重合体粒子が正電荷の材料に触れると急激に凝集する等、現像剤中における磁性重合体粒子の分散性が不安定になる場合や、界面活性剤の添加量を多くする必要があり泡立ちが生じてしまう場合等がありえる。
【0113】
ゼータ電位は、市販のゼータ電位計を用いて測定される。ゼータ電位計としては、例えば、日機装社のゼータ電位測定装置ゼータパルス、ゼータ電位測定装置ゼータプラス、大塚電子社製のELS−8000、ELS−6000、ELS−Z1、ELS−Z2、ZEECOM(TM)社のZC2000、マルバーン社のゼータサイザーナノや昭光通商社(Matec Applied Science社製)のESA−8000、ESA−9800等が挙げられる。この中でも分散液を希釈することなくそのまま測定できる高濃度対応タイプの装置で測定することが好ましい。
【0114】
なお、分散剤中における磁性重合体粒子のゼータ電位は、測定装置としてESA−8000(Matec Applied Science社製)を用い、現像剤400mlで測定セルを満たして測定用試料とし、測定用プローブを測定用試料に規定量浸漬させた状態で測定を行った。
【0115】
具体的には、温度22.0℃において、測定用試料に交流電場をかけ、粒子(磁性重合体粒子)の電気泳動により発生する圧力を圧電素子により測定し、以下の式にしたがってゼータ電位を求める。
式:ゼータ電位=[ESA×η×G(α)-1]/[ε×c×△ρ×V]
ここで、ESAは、測定によって求まる値で、単位電場当りの圧力を示す。ηは溶媒(分散媒)の粘度、G(α)-1は慣性力による作用の補正項、εは溶媒(分散媒)の誘電率、cは溶媒(分散媒)中の音速、Δρは溶媒(分散媒)と粒子(磁性重合体粒子)の密度差、Vは粒子(磁性重合体粒子)の体積分率を示す。
【0116】
ゼータ電位は、現像剤の組成に依存するものであるため、現像剤の組成を調整することにより、ゼータ電位が制御される。具体的には、例えば、界面活性剤としてアニオン性界面活性剤を用いる方法や、磁性重合体粒子の高分子化合物に塩構造を含ませる方法等が挙げられる。
【0117】
ゼータ電位を上記方法に制御するために好適に用いられる界面活性剤としては、上記のアニオン性界面活性剤が挙げられ、その中でも具体的に例えば、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルフェニルスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、等が望ましく、アルキルベンゼンスルホン酸塩、高級脂肪酸塩、がより望ましい。
【0118】
また、ゼータ電位を上記方法に制御するために、磁性重合体粒子の高分子化合物に塩構造を含ませる方法としては、例えば、高分子化合物の単量体としてカルボキシル基を有する単量体を用い、作製された磁性重合体粒子を、水酸化ナトリウム水溶液等のアルカリ溶液中和する方法等が挙げられる。なお、カルボキシル基を有する単量体は、上記のものが用いられる。
【0119】
<プロセスカートリッジ、画像形成装置>
本実施形態の画像形成装置はマグネトグラフィー方式の画像形成装置である。ここで、マグネトグラフィー方式とは、文字や画像などのパターン状の磁気潜像を形成し、それを磁性トナー(磁性重合体粒子)によって可視化しハードコピーを得る方式である。
【0120】
本実施形態の画像形成装置は、具体的には、磁気潜像保持体(以下、「像保持体」という場合がある)と、該磁気潜像保持体上に磁気潜像を形成する磁気潜像形成手段と、上記実施形態における現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、前記磁気潜像をトナー像として顕像化するために磁気潜像が形成された磁気潜像保持体に前記現像剤を供給する現像剤供給手段と、前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、前記磁気潜像保持体上の磁気潜像を消磁する消磁手段と、を有することを特徴とする。
【0121】
このようなマグネトグラフィー方式を採用した画像形成装置に、上記実施形態の現像剤を適用することにより、高画質の画像が得られるだけでなく、非水溶媒による作業環境の汚染も抑制される。
【0122】
本実施形態では、像保持体の表面が撥水性を有することが望ましい。本実施形態で用いられる現像剤は、上記の通り、水を含む分散媒を用いる。よって、像保持体の表面が撥水性を有することにより、現像の際に現像剤が像保持体と接触しても分散媒が像保持体に転移しにくく、分散媒を像保持体上に残さない状態でトナー像が記録媒体に転写される。したがって、像保持体上の残留溶媒を除去するためのスクイズローラ等が不要であり、トナー像が転写された記録媒体もほとんど乾燥させる必要がない。
【0123】
さらに、現像剤が上記構成を有するため、現像の際には、分散媒が像保持体表面に濡れ広がることはなく、磁性重合性粒子は、像保持体との接触と同時に磁気潜像領域のみに磁気力で転移するため、画像かぶりの発生しにくい現像環境がつくり出される。
【0124】
図1は、本実施形態の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。画像形成装置100は、磁気ドラム(磁気潜像保持体)10、磁気ヘッド(磁気潜像形成手段)12、現像装置(現像剤貯留手段及び現像剤供給手段)14、中間転写体(転写手段)16、クリーナ18、消磁装置(消磁手段)20、転写定着ローラ(転写手段)28を含んで構成される。磁気ドラム10は円柱形状を有し、該磁気ドラム10の外周に磁気ヘッド12、現像装置14、中間転写体16、クリーナ18及び消磁装置20が順次に設けられている。
以下、この画像形成装置100の動作について簡単に説明する。
【0125】
まず、磁気ヘッド12が、例えば図示しない情報機器と接続され、該情報機器から送られた2値化された画像データを受ける。磁気ヘッド12は、磁気ドラム10の側面上を走査しながら磁力線を放出することによって、磁気ドラム10に磁気潜像22を形成する。なお、図1では磁気潜像22は磁気ドラム10における斜線を付した部分で示される。
現像装置14は、現像ローラ(現像剤供給手段)14aと現像剤貯蔵容器(現像剤貯留手段)14bとを含んで構成される。現像ローラ14aは、現像剤貯蔵容器14bに貯蔵される液体現像剤(現像剤)24に一部が浸るようにして設けられる。
【0126】
液体現像剤24は、上記実施形態における現像剤であり上記のような構成を有するため、液体現像剤24中において磁性重合体粒子の分散性が高く、液体現像剤24中の磁性重合体粒子の濃度の位置ばらつきは低減される。よって、図の矢印A方向に回転する現像ローラ14aには、トナー粒子の濃度バラツキが低減された液体現像剤24が供給される。また、必要に応じて、例えば、現像剤貯蔵容器14b内に設けられる撹拌部材によって、液体現像剤24を所定の回転速度で撹拌し続けることで、液体現像剤24中における磁性重合体粒子の分散性をさらに向上させてもよい。
【0127】
現像ローラ14aに供給された液体現像剤24は、後述する規制部材によって一定の供給量に制限された状態で磁気ドラム10に搬送され、現像ローラ14aと磁気ドラム10とが近接(あるいは接触)する位置で磁気潜像22に供給される。これによって磁気潜像22は顕像化されてトナー像26となる。
【0128】
上記現像されたトナー像26は、図の矢印B方向に回転する磁気ドラム10に搬送され用紙(記録媒体)30に転写されるが、本実施形態では、用紙30に転写する前に、磁気ドラム10からのトナー像の剥離効率を含めた記録媒体への転写効率を向上させ、さらに記録媒体への転写と同時に定着を行うため、一旦中間転写体16にトナー像を転写する。なお、本実施形態は中間転写体16を用いる形態であるが、中間転写体16を用いず、磁気ドラム10から直接トナー像を用紙30に転写する形態でもよい。
【0129】
中間転写体16への転写は、磁性重合体粒子が電荷をほとんど有していないため、シアリング転写(非電界転写)により行うことが好適である。具体的には、矢印B方向に回転する磁気ドラム10と矢印C方向に回転する中間転写体16とを一定の接触部(移動方向の接触幅を有する接触面)を持って接触させ、トナー像26に対して磁気ドラム10との磁気力以上の吸着力により中間転写体上にトナー像26を移行させる。このとき、磁気ドラム10及び中間転写体16間に周速差を設けてもよい。
【0130】
次いで、中間転写体16により矢印C方向に搬送されたトナー像26は、中間転写体16と転写定着ローラ28との接触位置において用紙30に転写され、同時に定着される。具体的には、転写定着ローラ28及び中間転写体16によって用紙30を挟み、中間転写体16上のトナー像26を用紙30に密着させることにより、転写されると同時に定着される。
トナー像の定着は、トナーの特性により加圧によってのみ行ってもよいし、転写定着ローラ28に発熱体を設けて加圧及び加熱により行ってもよい。
【0131】
一方、中間転写体16にトナー像26を転写した磁気ドラム10では、転写残トナーがクリーナ18との接触位置まで運ばれ、クリーナ18によって回収される。クリーニング後、磁気潜像22を保持したまま磁気ドラム10は消磁位置まで回転移動する。
消磁装置20は、磁気ドラム10に形成された磁気潜像22を消去する。前記クリーナ18と消磁装置20とによって磁気ドラム10は画像形成前の磁性層の帯磁状態にばらつきがない状態に戻される。以上の動作を繰返すことによって、前記情報機器から次々に送られてくる画像を連続的に短時間で形成する。なお、上記画像形成装置100に備えられる磁気ヘッド12、現像装置14、中間転写体16、転写定着ローラ28、クリーナ18及び消磁装置20は、すべて磁気ドラム10の回転速度と同期をとって動作されている。
【0132】
次に、本実施形態の画像形成装置の各構成を順次説明する。
(磁気潜像保持体)
磁気ドラム(磁気潜像保持体)10の構成は、例えばアルミニウムなどの金属でできたドラム上に、Ni、Ni−Pなどの下地層をおよそ1〜30μmの厚さで形成し、この上にCo−Ni、Co−P、Co−Ni−P、Co−Zn−P、Co−Ni−Zn−Pなどの磁気記録層を0.1μm以上10μm以下程度の厚さで形成し、更にNi、Ni−Pなどの保護層を0.1μm以上5μm以下程度の厚さで形成する。下地層のメッキにピンホールなどの欠陥があると、磁気記録層にも欠陥ができてしまうので細密でむらのないメッキを行うことが好適である。メッキ以外にも、スパッタや蒸着などの方法もある。更に、下地層及び保護層については、非磁性であることが望ましい。各層の表面はテープ研磨などで表面精度を保つことが、磁気潜像を形成する磁気ヘッド12との間隙が精度良く維持する上で好適である。
【0133】
磁気記録層の膜厚は0.1μm以上10μm以下の範囲とすることが望ましく、磁気記録層の磁気特性は、保磁力が16000A/m以上80000A/m以下(200エルステッド以上1000エルステッド(Oe)以下)程度、残留磁束密度を100mT以上200mT以下(1000ガウス以上2000ガウス(G)以下)程度とすることが好適である。
以上は、水平磁気記録式の場合の磁気ドラム10の構成であるが、垂直磁気記録式の場合には、非磁性層の上にCo−Ni−Pなどの記録層を設けた構成としたり、該記録層の下に透磁率の高い軟磁性層を設けた構成としてもよく、いずれかに限定されるものではない。また磁気潜像保持体としては、本実施形態におけるドラム状のものに限られず、ベルト状に形成されたものでもよい。
【0134】
本実施形態では、撥水性を有する磁気ドラム10を用いることが望ましい。ここで撥水性とは水をはじく性質のことを意味し、具体的には純水との接触角が70度以上であることをいう。
また、本実施形態では磁気ドラム10の純水に対する接触角が、70度以上であることが望ましく、100度以上であることがより望ましい。接触角が70度に満たないと、後述する水性媒体を使用した液体現像剤により現像を行っても、現像後に磁気ドラム上に液体が残存したり画像かぶりが発生したりする場合がある。
【0135】
なお、上記磁気ドラム10表面の接触角は、接触角計(協和界面科学(株)製:CA−X)を用い、25℃、50%RHの環境下で、純水を磁気ドラムの表面に3.1μl滴下し、15秒後の接触角を求めた。なお、測定は端部、中央部で周方向に4点測定し、これらの平均値を接触角とした。
【0136】
磁気ドラム10の表面を上記好適な接触角を有する表面とするには、前記のようにして構成される磁気ドラム表面に表面コートを行うことが望ましい。
上記表面コートとしては、フッ素潤滑めっき、フッ素原子やシリコン原子を含有するポリマーを用いたコーティング等が挙げられる。フッ素潤滑メッキとは、無電解ニッケルめっきにフッ素樹脂(ポリ四弗化エチレン:PTFE)を複合・共析させた機能めっきであり、形成される皮膜中にはPTFE粒子が均一に析出しており無電解ニッケルめっきとPTFE樹脂の両特性を兼ね備える。
また、前記フッ素原子やシリコン原子を含有するポリマーを使用したコーティングとしては、例えば、含フッ素環状構造を有するポリマー、フルオロオレフィンとビニルエーテルとの共重合体、光重合型フッ素樹脂組成物等を前記保護層表面に塗布してもよいし、該保護層表面にフッ素原子含有ポリマーをスパッタリングし全面を被覆してもよい。
【0137】
これらのうちでは、下層のめっき層との密着性や耐久性等の観点から、フッ素潤滑めっきが好適である。なお、上記フッ素潤滑めっきやフッ素樹脂コーティングは、前記保護層を形成した上に行ってもよいし、フッ素潤滑めっき等により形成した層をそのまま保護層としてもよい。
表面コートにより形成される表面層の膜厚は0.1μm以上5μm以下とすることが望ましく、0.3μm以上3μm以下とすることがより望ましい。
【0138】
(磁気潜像形成手段)
磁気潜像形成装置(磁気潜像形成手段)は、基本的には磁気ヘッド12とその駆動回路から成る。磁気ヘッド12には、おもにフルライン型磁気ヘッドとマルチチャンネル型磁気ヘッドがあり、フルライン型磁気ヘッドの場合には磁気ヘッド12を走査する必要はないが、マルチチャンネル型磁気ヘッドの場合には磁気ドラム10に対して磁気ヘッド12を走査する必要がある。走査の方法にはシリアル走査とヘリカル走査とがあり、ヘリカル走査の方は潜像形成工程だけ特別に磁気ドラム12の回転速度を変更してやれば記録速度が速くすることが可能である。
【0139】
一方、フルライン型磁気ヘッドの場合としては、例えば解像度600dpiとするとA4サイズの紙の幅方向の記録幅をカバーするためには500チャネル程度のヘッドが必要である。それらを並べてフルライン化すればヘッドを走査する必要がなく極めて高速な記録が可能になる。また上記フルライン化するためには、ヘッドコアとヘッドコアとの重ね合わせが必要になるが、高解像度になるにしたがいトラックピッチも狭くなるためヘッドコアに挿入されるコイルも可能な限り薄いもの、例えば平面状のシートコイルが用いられる。
【0140】
磁気ヘッド12の各チャンネルのコイルに電流を流すことにより磁極先端部から漏洩磁束が生じ、これにより磁気記録媒体を磁化することによって磁気潜像を形成する。磁気ヘッド12からの出力は、磁気ドラム10における磁気記録層の保磁力の2から3倍必要である。ここで形成した磁気潜像は消磁装置20で消去しない限り消えることはなく、現像、転写、定着、クリーニングの各工程を繰り返せばマルチコピー機能を有する。また、磁気潜像は湿度の影響を受けにくいため、静電式に比べ環境安定性に優れている。
【0141】
(現像剤貯留手段、現像剤供給手段)
図2に、図1における現像領域を拡大した模式図を示す。
現像装置(現像剤供給手段)14は、現像剤貯蔵容器14bと、現像剤貯蔵容器14b内に貯留された液体現像剤24をトナー供給領域(以下、「供給領域」という場合がある)において磁気ドラム10へ供給する現像ローラ14aとを具備する。図2に示すように、現像ローラ14aはその周面上に層状の液体現像剤24を保持し、磁気ドラム10に対し離間位置に配置されている(例えば、この磁気ドラム及び現像装置によりプロセスカートリッジが構成される)。また供給領域の上流位置に液体現像剤24の層厚を所定の厚さに維持する規制部材13が配置されている。規制部材13は現像ローラ14aの軸線方向へ全幅にわたって延びる板状の部材であり、その一縁部が所望のトナー層厚に対応した所定距離だけ現像ローラ14aの周面から離間するよう配置されている。
【0142】
現像装置14では、トナー粒子(磁性重合体粒子)26aと水性媒体(分散媒)とを含む液体現像剤24が現像剤貯蔵容器14bに貯留されている。上記の通り、液体現像剤24は上記実施形態における現像剤であり、液体現像剤24中におけるトナー粒子26aの分散性が高いため、現像ローラ14aにはトナー粒子濃度のバラツキが低減された液体現像剤24が供給される。また上記の通り、必要に応じて、例えば、現像剤貯蔵容器14b内に撹拌部材を設け、所定の回転速度で撹拌し続けることで、液体現像剤24中のトナー粒子26aの濃度の位置ばらつきをさらに低減させてもよい。
なお、図2には示してないが、上記液体現像剤の現像ローラ14aへの供給のために、現像ローラ14aに接触あるいは近接して回転する供給ローラを具備してもよい。
【0143】
現像ローラ14aは、例えばその内部にS極の磁極とN極の磁極とを含む複数の磁極を周方向へ備え、これら磁極は現像ローラ14aと共に回転しないよう固定されている。これら磁極の一つは特に規制部材13及び前記供給領域間に配設されている。したがって、現像ローラ14aに保持された磁性トナーを含む液体現像剤24は、これらの磁極の磁力線(現像磁場)によって保持され磁気ドラム10方向へ搬送される。
なお、現像ローラ14aとしては、ローラ表面そのものに液体現像剤の搬送力があれば、磁性ローラである必要はなく、例えばアニロックスローラやスポンジローラなども使用される。
【0144】
規制部材13は、前記のように現像ローラ14aが現像剤貯蔵容器14bの液体現像剤14を保持してから、磁気ドラム10に供給するまでの位置に設けられる。規制部材13と現像ローラ14aとによって形成される間隙で磁気潜像22に供給される液体現像剤24の量が決定される。材質としては、ゴムやりん青銅などが好適である。規制部材13によって一定の供給量に制限された液体現像剤24が磁気ドラム10に搬送され、磁気潜像22に供給される。これによって磁気潜像22は顕像化されトナー像26となる。
【0145】
また前記現像に際しては、トナー粒子が磁性トナーであるため、現像ローラ14aに磁場を印加しなくても現像を行うことは可能であるが、より効率的な現像を行うために現像ローラ14aに磁場を印加してもよい。
【0146】
(転写手段、定着手段)
現像装置14で顕像化されたトナー像は、転写手段によって用紙30に転写される。前述のように、本実施形態では磁気ドラム10から直接用紙上にトナー像を転写するのではなく、中間転写体16に一旦転写した後、用紙30に転写定着する方式を用いている。まず、中間転写体16への転写について説明する。
【0147】
中間転写体16は、磁気ドラム10に接触してトナー像を転写する。転写方式としては、一般に静電転写方式、圧力転写方式、これらを併用した静電圧力方式などがあるが、前記のように、本実施形態ではトナー粒子が電荷を有していないため、静電転写方式や静電圧力方式は使用できない。一方、前記圧力転写方式は、通常は磁気ドラム10及び転写媒体間の圧力により、トナー像を塑性変形させながら転写媒体の表面に付着させ転写するものであり、シアリング転写と併用してもよい。
【0148】
本実施形態では、前記のように磁気ドラム10上のトナー像26に対して、磁気ドラム10との磁気力以上の吸着力により中間転写体上にトナー像26を移行させるため、中間転写体16に粘着性を持たせて粘着転写を行うことが好適である。このため、中間転写体16の表面には例えば低硬度シリコーンゴム層を形成することが望ましい。
【0149】
次いで、中間転写体16に転写されたトナー像26は用紙に転写される。
図1における中間転写体16を挟んで磁気ドラム10の反対側には、転写定着ローラ28が中間転写体16に対して接触部を形成するように配置されており、中間転写体16上のトナー像26にタイミングを合わせて、用紙30が中間転写体16及び転写定着ローラ28間の接触部へ送給される。転写定着ローラ28は、例えば、ステンレス基体、シリコーンゴム層、フッ素ゴム層により構成されており、接触部を通過する用紙30を中間転写体16に押圧することにより、中間転写体16上のトナー像が用紙30に転写される。
【0150】
本実施形態では、上記中間転写体16から用紙30にトナー像26が転写されると同時に、該トナー像26が用紙30に定着される構成となっている。具体的には、中間転写体16が図1に示すようにローラ形状であれば、転写定着ローラ28とローラ対を構成するため、中間転写体16、転写定着ローラ28が各々定着装置における定着ローラ、押圧ローラに準じた構成となって定着機能が発揮される。すなわち、用紙30が前記接触部を通過する際、トナー像26が転写されると同時に転写定着ローラ28により中間転写体16に対して押圧され、これにより、トナー像26を構成するトナー粒子が軟化すると共に用紙30の繊維中に浸潤して定着像29が形成される。
【0151】
なお、上記の通り、例えば転写定着ローラ28に発熱体を設け、前記発熱体によりトナー像を加熱することにより、トナー像が溶融し用紙30の繊維の中まで入り込み固着して定着像29が形成されてもよい。この状態では、用紙30を折り曲げたり、粘着テープを貼った後剥しても定着像29が剥がれることはない。
【0152】
なお、本実施形態では用紙30への転写と同時に定着を行っているが、転写工程と定着工程とを別々として、転写を行った後に定着を行ってもよい。この場合には、磁気ドラム10からトナー像を転写する転写ローラが、前記中間転写体16に準じた機能を有することとなる。
【0153】
(クリーナ)
一方、前記磁気ドラム10から中間転写体16へのトナー像の転写効率が100%に至らない場合には、転写後の磁気ドラム10上にトナー像26の一部分が残留することになる。これを除去するのがクリーナ18であり、基本的に、ゴムなどのクリーニングブレードと残留磁性トナーの容器とから構成される。
なお、転写効率が100%に近く、残留トナーが問題とならない場合は、クリーナ18は設ける必要がない。
【0154】
(消磁手段)
再度新しい画像形成を行なう場合には、磁気ヘッド12で磁気潜像を形成する前に磁気潜像を消去する必要がある。消磁装置20には、永久磁石式と電磁石式との2通りがある。永久磁石式の場合には、磁気ドラム10の円周方向に磁化して局所的に磁束が漏洩しないようにするもので、電力等のエネルギーが不要で安価である。ただし、磁気潜像を消去しない場合には、消磁装置20を磁気ドラム10に対して移動させ磁気的な距離を大きくして消去磁界を弱くする必要がある。これに対して電磁石式は、ヨークとコイルとから成り電流を流す必要があるが、磁気潜像を消去する必要がない場合には電流を切ることにより消去磁界がゼロになるため制御が比較的自由である。
本実施形態では、前記永久磁石式及び電磁石式のいずれも用いられる。
【0155】
以上に例示した本実施形態における画像形成装置100では、液体現像剤24として上記構成の現像剤を用いているため、画像のかぶり、滲み、及び乱れが抑制され、画像形成装置内の汚染が抑制される。特に、磁気ドラム10が撥水性を有する場合は、画像のかぶり、滲み、及び乱れ、並びに画像形成装置内の汚染がさらに抑制される。
【実施例】
【0156】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、これらは説明のための例示であり、本発明は下記実施例によって何等制限されるものではない。なお、実施例中に示した「部」及び「%」は、特に断りのない限りそれぞれ「質量部」及び「質量%」を表す。
【0157】
[実施例A]
<表面処理磁性粉A−1の作製>
磁性粉MTS−010(戸田工業(株)製)600部に、スチレンアクリル樹脂(エスレックP−SE−0020、積水化学(株)製)400部を加え、加圧ニーダーで混練して、表面が樹脂被覆処理された表面処理磁性粉A−1(磁性粉含有率:60%)を得た。
【0158】
<磁性重合体粒子の製造>
(磁性重合体粒子A−1の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)17部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)57部、及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、これに前記表面処理磁性粉A−1を40部加え、ボールミルで48時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)5部を加えて、単量体及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0159】
塩化ナトリウム(和光純薬(株)製)28部をイオン交換水160部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム(株)製、ルミナス)30部、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)製、セロゲン)3.5部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。
この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒子径は約2.5μmであった。
【0160】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。
反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1Lのイオン交換水で洗浄後、500mlのエタノール中に30分間超音波分散と遠心分離を3回繰り返して洗浄を行い、磁性重合体粒子を得た。
【0161】
この磁性重合体粒子を60℃のオーブンで乾燥し、孔径5μmのメッシュを通して粗大粒子を分離した後、さらに孔径1μmのナイロンメッシュを用いて分離して、個数平均粒子径2.7μmの磁性重合体粒子A−1を得た。
【0162】
(磁性重合体粒子A−1の特性評価)
熱重量分析(TGA)において、加熱による重量減少量から磁性重合体粒子A−1中の磁性粉含有量を算出したところ、15%であった。
【0163】
また、磁性重合体粒子A−1の水酸基量は0.6mmol/gであった。この水酸基量の測定は、以下のようにして行った。
まず、磁性重合体粒子を秤量してキャップ付き試験管に入れ、あらかじめ調製した無水酢酸(和光純薬(株)製)のピリジン(和光純薬(株)製)溶液を加え、95℃の温度条件で24時間加熱した。更に、蒸留水を加えて試験管中の無水酢酸を加水分解させた後、3000rpmで5分間遠心分離して粒子と上澄みに分けた。分けられた粒子を更にエタノール(和光純薬(株)製)で超音波分散と遠心分離を繰り返し洗浄し、上澄みと洗浄液とをコニカルビーカーに集め、指示薬にフェノールフタレイン(和光純薬(株)製)を用いて0.1Mのエタノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬(株)製)で滴定した。
【0164】
磁性重合体粒子を用いないブランク実験も行い、その差分から下式(1)に従って水酸基量(mmol/g)を算出した。ここで、ブランク実験とは、磁性重合体粒子を用いない以外は、上記水酸基量の測定と同様の操作を行う実験を意味する。
水酸基量=((B−C)×0.1×f)/(w−(w×D/100)) : 式(1)
上記式(1)中、Bはブランク実験での滴下量(ml)、Cはサンプルの滴下量(ml)、fは水酸化カリウム溶液のファクター、wは磁性重合体粒子の質量(g)、Dは磁性重合体粒子中の磁性粉含有率(%)である。
【0165】
(磁性重合体粒子A−2の製造)
ヒドロキシエチルメタクリレート(和光純薬(株)製)6部、ポリエチレングリコールメタクリレート(日本油脂(株)製、ブレンマーPE200)1部、メタクリロオキシエチルモノフタレート(シグマ アルドリッチ(株)製)0.5部、スチレン単量体(和光純薬(株)製)15部、n−ブチルメタクリレート20部、スチレンアクリル樹脂(積水化学社製、商品名:エスレックP−SE−0020)55部、シクロヘキサノン30部及びジビニルベンゼン(和光純薬(株)製)1部を混合した後、前記表面処理処理磁性粉A−1を33部(磁性粉含有率:60%)加え、ボールミルで24時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株)製)1部を加えて、単量体及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0166】
塩化ナトリウム28部をイオン交換水132部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)48部及びカルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)2.0部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。
この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(IKA社製、ウルトラタラックス)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒子径は2.0μmであった。
【0167】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。
反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1000部のイオン交換水で洗浄後、1000部のエタノールで繰り返し洗浄した後、再度1000部のイオン交換水で置換した。0.5Nの水酸化ナトリウムでpH12に調整し、室温で1時間攪拌した。処理後、1000部のイオン交換水で洗浄し、さらに500部のエタノールとイオン交換水で洗浄を行い、磁性重合体粒子を得た。
【0168】
この磁性重合体粒子を60℃でオーブン乾燥した後、磁性重合体粒子の収量を測定したところ59部で、収率は82%であった。
この重合体粒子を孔径5μmのメッシュを通して粗大粒子を分離した後、さらに孔径1μmのナイロンメッシュを用いて分離して、平均粒子径2.1μmの磁性重合体粒子A−2を得た。
【0169】
(磁性重合体粒子A−2の特性評価)
磁性重合体粒子A−1と同様に磁性粉含有量を算出したところ、磁性重合体粒子A−2の磁性粉含有量は15質量%であった。
磁性重合体粒子A−2の水酸基量を磁性重合体粒子A−1と同じ方法で測定したところ、0.33mmol/gであった。
【0170】
磁性重合体粒子A−2のカルボキシル基量は0.01mmol/gであった。このカルボキシル基量の測定は、以下のようにして行った。
まず、磁性重合体粒子を秤量してキャップ付き試験管に入れ、N,N−ジメチルホルムアミド(和光純薬(株)製)中で1時間分散攪拌した。この分散液を全てコニカルビーカーに集め、指示薬にフェノールフタレイン(和光純薬(株)製)を用いて0.1Mのエタノール性水酸化カリウム溶液(和光純薬(株)製)で滴定した。
【0171】
磁性重合体粒子を用いないブランク実験も行い、その差分から下式(2)に従ってカルボキシル基量(mmol/g)を算出した。ここで、ブランク実験とは、磁性重合体粒子を用いない以外は、上記カルボキシル基量の測定と同様の操作を行う実験を意味する。
カルボキシル基量=((C−B)×0.1×f)/(w−(w×D/100)) : 式(2)
上記式(2)中、Bはブランク実験での滴下量(ml)、Cはサンプルの滴下量(ml)、fは水酸化カリウム溶液のファクター、wは磁性重合体粒子の質量(g)、Dは磁性重合体粒子中の磁性粉含有率(%)である。
【0172】
(磁性重合体粒子A−3の製造)
スチレン単量体(和光純薬(株))75部、ジビニルベンゼン(和光純薬(株))1部を混合した後、前記表面処理磁性粉A−1を40部加え、ボールミルで48時間分散した。この磁性粉分散液90部に、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(和光純薬(株))5部を加えて、単量体及び磁性粉を含む混合物を作製した。
【0173】
塩化ナトリウム(和光純薬(株))28部をイオン交換水160部に溶解させた水溶液に、分散安定剤として炭酸カルシウム(丸尾カルシウム社製、商品名:ルミナス)30部、カルボキシメチルセルロース(第一工業製薬(株)社製、商品名:セロゲン)3.5部を加え、ボールミルで24時間分散して分散媒体とした。
この分散媒体200部に前記混合物を投入して、乳化装置(エスエムテー社製、HIGH−FLEX HOMOGENIZER)にて8000rpmで3分間乳化し、懸濁液を得た。このときの懸濁粒子の個数平均粒子径は約2.5μmであった。
【0174】
一方、撹伴機、温度計、冷却管及び窒素導入管を備えたセパラブルフラスコに窒素導入管より窒素を導入し、フラスコ内を窒素雰囲気にした。ここに上記懸濁液を入れ、65℃で3時間反応させ、更に70℃で10時間加熱して冷却した。反応液は分散液となっており、目視では重合中に凝集塊は確認できなかった。
反応液に10%塩酸水溶液を加えて炭酸カルシウムを分解した後、遠心分離によって固液分離を行った。得られた粒子を1Lのイオン交換水で洗浄後、500mlのエタノール中に30分間超音波分散と遠心分離を3回繰り返して洗浄を行い、磁性重合体粒子を得た。
【0175】
この磁性重合体粒子を60℃のオーブンで乾燥し、孔径5μmのメッシュを通して粗大粒子を分離した後、さらに孔径1μmのナイロンメッシュを用いて分離して、平均粒子径2.7μmの磁性重合体粒子A−3を得た。
【0176】
(磁性重合体粒子A−3の特性評価)
磁性重合体粒子A−1と同様に磁性粉含有量を算出したところ、磁性重合体粒子A−3の磁性粉含有量は18質量%であった。
【0177】
<実施例A−1>
(現像剤A−1の作製)
・磁性重合体粒子A−1 5部
・ポリオキシエチレン(5)ラウリルエーテル
(エマレックス705:日本エマルジョン(株)製) 1部
・イオン交換水 94部
上記の組成で、ボールミルで3時間分散し、現像剤A−1を得た。
23℃での粘度をコーンロータータイプの粘度計TVE−22L(東機産業(株)製)で測定した。その結果を表1に示す。
また、室温(23℃)で表面張力をペンダントドロップ型接触角表面張力計(協和界面科学(株)社製)で測定した。その結果を表1に示す。
【0178】
<実施例A−2>
(現像剤A−2の作製)
・磁性重合体粒子A−2 5部
・ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル
(エマレックス710:日本エマルジョン(株)製) 1部
・イオン交換水 94部
上記の組成で、その他は実施例A−1と同様な方法で現像剤A−2を得た。粘度、表面張力を実施例A−1と同様に測定した。その結果を表1に示す。なお、上記「ポリオキシエチレン(10)ラウリルエーテル」に示される数字は、ポリオキシエチレン基の数を示し、以下同様である。
【0179】
<実施例A−3>
(現像剤A−3の作製)
・磁性重合体粒子A−3 5部
・ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬(株)製) 1部
・イオン交換水 94部
上記の組成で、その他は実施例A−1と同様な方法で現像剤A−3を得た。粘度、表面張力を実施例A−1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0180】
<実施例A−4>
(現像剤A−4の作製)
・磁性重合体粒子A−1 5部
・トリトンX100(界面活性剤)(和光純薬(株)製) 1部
・グリセリン (和光純薬(株)製) 34部
・イオン交換水 60部
上記の組成で、その他は実施例A−1と同様な方法で現像剤A−4を得た。粘度、表面張力を実施例A−1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0181】
<比較例A−1>
(現像剤A−5の作製)
・磁性重合体粒子A−1 5部
・トリトンX100(和光純薬(株)製) 1部
・グリセリン (和光純薬(株)製) 50部
・イオン交換水 44部
上記の組成で、その他は実施例A−1と同様な方法で現像剤A−5を得た。粘度、表面張力を実施例A−1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0182】
<比較例A−2>
(現像剤A−6の作製)
・磁性重合体粒子A−2 5部
・ポリオキシエチレン(20)ステアリルエーテル
(エレマックス620:日本エマルジョン(株)製) 1部
・イオン交換水 94部
上記の組成で、その他は実施例A−1と同様な方法で現像剤A−6を得た。粘度、表面張力を実施例A−1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0183】
<比較例A−3>
(現像剤A−7の作製)
・磁性重合体粒子A−3 5部
・エーロゾルOT(和光純薬(株)製) 1部
・イオン交換水 94部
上記の組成で、その他は実施例A−1と同様な方法で現像剤A−7を得た。粘度、表面張力を実施例A−1と同様に測定した。その結果を表1に示す。
【0184】
【表1】

【0185】
<現像剤の評価>
−磁性重合体粒子の個数平均粒子径(一次粒子径)及びその変動係数の評価−
現像剤を−20度凍結した後、常温真空環境にすることにより、乾燥させた磁性重合体粒子を得た。得られた磁性重合体粒子を走査型電子顕微鏡(キーエンス製VE−7800)により写真撮影し、無作為に選んだ400個の粒子の一次粒子径を測定し、それらの合計を個数で除した値を求め、個数平均粒子径とした。結果を表2に示す。400個の一次粒子径(μm)の分布から標準偏差(μm)を求め、上記個数平均粒子径で除して100倍することにより、変動係数(%)を求めた。結果を表2に示す。
【0186】
−現像剤中における磁性重合体粒子の分散性評価−
現像剤を0.1ml取り、測定液アイソトン(ベックマン・コールター(株)製)100mlに振とう攪拌することによって分散し、コールターカウンター マルチサイザー3(ベックマン・コールター(株)製)を用いて体積平均粒子径(分散平均粒子径)を測定した。この測定を、現像剤作製初期と30日放置後について行った。
なおこの測定においては、溶液中での粒子の存在状態が維持されているため、測定液による希釈によっても現像剤中の粒度分布と同等の結果が得られる。結果を表2に示す。
【0187】
【表2】

【0188】
−磁気泳動性評価−
現像剤0.5mlを容量3.5mlのねじ口試験管(アズワン(株)製)に取り、現像剤をボルテックスミキサー(アズワン(株)製)で1分間、超音波分散器(アズワン(株)製)で1分間分散させた後、表面磁束密度0.18Tのネオジ磁石(アズワン(株)製)上に置き、粒子が完全に移動し上澄みが透明になるまでの時間を測定した。上澄みの透明になる度合いは目視で判断した。その結果を表3に示す。
【0189】
−画像評価−
図1に示した構成の画像形成装置100を用意し、磁気ドラム10として市販の磁気プリンター(岩崎通信機(株)製)の磁気ドラムを用い、現像剤として上記現像剤A−1から現像剤A−7を用いた。印字条件を下記のように設定し、ソリッドパッチと細線の現像性の評価を行った。具体的には、ソリッド画像(べた画像)及び細線画像を現像し、記録用紙に転写後の画像において、非画像部におけるかぶりの有無及び画像部における画質を目視により評価した。その結果を表3に示す。
【0190】
・磁気ドラム線速:100mm/秒。
・現像ローラ周速/磁気ドラム周速比:1.2。
・転写条件(中間転写):中間転写体の磁気ドラムへの押圧力を0.147MPa(1.5kgf/cm)に設定。
・転写定着条件:中間転写体に対する転写定着ローラの押圧力を0.245MPa(2.5kgf/cm)に設定。
【0191】
【表3】

【0192】
表3に示すように、実施例A−1から実施例A−4における現像剤は、比較例A−1における現像剤と比較して磁性重合体粒子の移動速度が速いものであった。
また、実施例A−1から実施例A−4の現像剤は、比較例A−1から比較例A−3の現像剤に比べ磁気ドラム上の磁気潜像に対し、かぶりも無く細線まで良好に現像するものであった。
【0193】
[実施例B]
(磁性重合体粒子B−1、磁性重合体粒子B−2)
実施例Aで作製した磁性重合体粒子A−1及び磁性重合体粒子A−2をそのまま、実施例Bにおいてはそれぞれ、磁性重合体粒子B−1及び磁性重合体粒子B−2として用いた。
【0194】
(磁性重合体粒子B−3)
実施例Aで作製した磁性重合体粒子A−2を1mol/lの水酸化ナトリウムで中和し、カルボキシル基をナトリウム塩化した磁性重合体粒子B−3を得た。この粒子のカルボキシル基量は、0.0mmol/gであり、カルボキシル基が全て中和されていることが確認できた。
【0195】
<実施例B−1>
(現像剤B−1の作製)
・磁性重合体粒子B−1 5部
・ドデシル硫酸ナトリウム(和光純薬(株)製) 1部
・イオン交換水 94部
上記の組成で、ボールミルで3時間分散し、現像剤B−1を得た。粘度及び表面張力を実施例A−1と同様に測定した。その結果を表4に示す。
【0196】
<実施例B−2>
(現像剤B−2の作製)
磁性重合体粒子B−1のかわりに磁性重合体粒子B−2を用いた以外は、実施例B−1と同様にして、現像剤B−2を得た。粘度及び表面張力を実施例A−1と同様に測定した。その結果を表4に示す。
【0197】
<実施例B−3>
(現像剤B−3の作製)
・磁性重合体粒子B−3 5部
・TritonX100(和光純薬(株)製) 1部
・イオン交換水 94部
上記の組成で、その他は実施例B−1と同様な方法で現像剤B−3を得た。粘度及び表面張力を実施例A−1と同様に測定した。その結果を表4に示す。
【0198】
<比較例B−1>
(現像剤B−4の作製)
・磁性重合体粒子B−1 5部
・イオン交換水 95部
上記の組成で、その他は実施例B−1と同様な方法で現像剤B−4を得た。粘度及び表面張力を実施例A−1と同様に測定した。その結果を表4に示す。
【0199】
<実施例B−4>
(現像剤B−5の作製)
・磁性重合体粒子B−2 5部
・BL−4.2(ポリオキシエチレン(4.2)ラウリルエーテル)
(日光ケミカルズ(株)製) 1部
・イオン交換水 94部
上記の組成で、その他は実施例B−1と同様な方法で現像剤B−5を得た。粘度及び表面張力を実施例A−1と同様に測定した。その結果を表4に示す。
【0200】
<現像剤の評価>
−ゼータ電位評価−
ゼータ電位は、測定装置として、ESA−8000( Matec Applied Science社製)を用いて行った。具体的には、現像剤400mlで測定セルを満たし、測定用プローブを規定量浸漬させた状態で、所定の測定法に従ってゼータ電位測定を行った。結果を表4に示す。
【0201】
【表4】

【0202】
−磁性重合体粒子の個数平均粒子径(一次粒子径)及びその変動係数の評価−
実施例Aにおける磁性重合体粒子の個数平均粒子径及びその変動係数の評価と同様にして、実施例Bにおける磁性重合体粒子の個数平均粒子径及びその変動係数の評価を行った。結果を表5に示す。
【0203】
−磁性重合体粒子の粒度分布評価−
実施例Aの現像剤中における磁性重合体粒子の粒度分布評価と同様にして、実施例Bの現像剤中における磁性重合体粒子の粒度分布評価を行った。結果を表5に示す。
【0204】
【表5】

【0205】
−画像評価−
実施例Aの画像評価と同様にして、実施例Bの画像評価を行った。結果を表6に示す。
【0206】
【表6】

【0207】
表6に示すように、実施例B−1から実施例B−3における現像剤は、比較例B−1における現像剤に比べ分散安定性が良く、実施例B−4及び比較例B−1における現像剤に比べさらにかぶりが抑制され細線の現像性が良好であった。
【0208】
[実施例C]
(磁性重合体母粒子C−1、磁性重合体母粒子C−2)
実施例Aで作製した磁性重合体粒子A−3及び磁性重合体粒子A−1をそのまま、実施例Cにおいてはそれぞれ、磁性重合体母粒子C−1及び磁性重合体母粒子C−2として用いた。
【0209】
<実施例C−1>
(外添磁性重合体粒子C−1の作製)
・SiO(OX50、日本アエロジル社製、個数平均一次粒子径40nm) 5部
・磁性重合体母粒子C−1 95部
上記の組成で、ブレンダーミキサー(アズワン社製)にて2分間混合し、外添磁性重合体粒子C−1を調製した。
【0210】
(現像剤C−1の作製)
・外添磁性重合体粒子C−1 5部
・BL−4.2(ポリオキシエチレン(4.2)ラウリルエーテル) 1部
・イオン交換水 94部
上記の組成で、ボールミルで3時間分散し、現像剤C−1を得た。現像剤の粘度、表面張力、及びゼータ電位を実施例B−1と同様に測定した。その結果を表7に示す。
【0211】
<実施例C−2>
(外添磁性重合体粒子C−2、現像剤C−2の作製)
磁性重合体母粒子C−1の代わりに磁性重合体母粒子C−2を用いた以外は、実施例C−1と同様にして、外添磁性重合体粒子C−2及び現像剤C−2を得た。現像剤の粘度、表面張力、及びゼータ電位を実施例B−1と同様に測定した。その結果を表7に示す。
【0212】
<実施例C−3>
(外添磁性重合体粒子C−3、現像剤C−3の作製)
磁性重合体母粒子C−1の代わりに磁性重合体母粒子C−2を用い、「SiO(OX50、日本アエロジル社製、個数平均一次粒子径40nm)」の代わりにポリスチレン粒子「スタデックス 個数平均一次粒子径:200nm(JSR社製、分散液を乾燥粉砕したもの)」を用いた以外は、実施例C−1と同様にして、外添磁性重合体粒子C−3及び現像剤C−3を得た。現像剤の粘度、表面張力、及びゼータ電位を実施例B−1と同様に測定した。その結果を表7に示す。
【0213】
<実施例C−4>
(現像剤C−4の作製)
外添磁性重合体粒子C−1の代わりに、磁性重合体母粒子C−1をそのまま用いた以外は、実施例C−1と同様にして、現像剤C−4を得た。現像剤の粘度、表面張力、及びゼータ電位を実施例B−1と同様に測定した。その結果を表7に示す。
【0214】
<実施例C−5>
(外添磁性重合体粒子C−5、現像剤C−5の作製)
磁性重合体母粒子C−1の代わりに磁性重合体母粒子C−2を用い、「SiO(OX50、日本アエロジル社製、個数平均一次粒子径40nm)」の代わりに「SiO(A200、日本アエロジル社製、個数平均一次粒子径12nm)」を用いた以外は、実施例C−1と同様にして、外添磁性重合体粒子C−5及び現像剤C−5を得た。現像剤の粘度、表面張力、及びゼータ電位を実施例B−1と同様に測定した。その結果を表7に示す。
【0215】
<実施例C−6>
(外添磁性重合体粒子C−6、現像剤C−6の作製)
磁性重合体母粒子C−1の代わりに磁性重合体母粒子C−2を用い、「SiO(OX50、日本アエロジル社製、個数平均一次粒子40nm)」の代わりにポリスチレン粒子「スタデックス 個数平均一次粒子径:600nm(JSR社製)」を用いた以外は、実施例C−1と同様にして、外添磁性重合体粒子C−6及び現像剤C−6を得た。現像剤の粘度、表面張力、及びゼータ電位を実施例B−1と同様に測定した。その結果を表7に示す。
【0216】
【表7】

【0217】
−磁性重合体母粒子の個数平均粒子径(一次粒子径)及びその変動係数の評価−
現像剤をトリトンX100の1重量%水溶液に入れ、超音波分散と遠心分離を繰り返して過剰な外添剤を取り除いて乾燥させ、最小限の外添剤を付着させた磁性重合体母粒子を得た。得られた磁性重合体母粒子を走査型電子顕微鏡(キーエンス(株)製VE−7800)により写真撮影し、無作為に選んだ400個の粒子について、母粒子の外殻にそっての一次粒子径を測定し、それらの合計を個数で除した値を求め、個数平均粒子径とした。結果を表8に示す。
また、上記測定により得られた400個の一次粒子径(μm)の分布から標準偏差(μm)を求め、上記個数平均粒子径で除して100倍することにより、変動係数(%)を求めた。結果を表8に示す。
【0218】
−外添磁性重合体粒子の粒度分布評価−
実施例Aの現像剤中における磁性重合体粒子の粒度分布評価と同様にして、実施例Cの現像剤中における外添磁性重合体粒子の粒度分布評価を行った。結果を表8に示す。
【0219】
【表8】

【0220】
−画像評価−
実施例Aの画像評価と同様にして、実施例Cの画像評価を行った。結果を表9に示す。
【0221】
【表9】

【0222】
表9に示すように、実施例C−1から実施例C−3における現像剤は、実施例C−4及び実施例C−6における現像剤に比べ、分散性及び分散安定性が良く、分散粒子径が一次粒子径を再現するものであった。
また、実施例C−1から実施例C−3における現像剤は、実施例C−4から実施例C−6における現像剤に比べ、さらにかぶりが抑制され細線の現像性が良好であった。
【図面の簡単な説明】
【0223】
【図1】本発明の画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明の画像形成装置の一例における現像領域の拡大模式図である。
【符号の説明】
【0224】
10 磁気ドラム(磁気潜像保持体)
12 磁気ヘッド(磁気潜像形成手段)
13 規制部材
14 現像装置(現像剤供給手段)
16 中間転写体
18 クリーナ
20 消磁装置(消磁手段)
22 磁気潜像
24 液体現像剤(現像剤)
26 トナー像
26a トナー粒子(磁性重合体粒子)
28 転写定着ローラ(転写手段)
29 定着像
30 用紙(記録媒体)
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁性成分及び高分子化合物を含む磁性重合体母粒子を含有する磁性重合体粒子と、前記磁性重合体粒子を分散する分散媒と、を有し、
前記分散媒は、水を含む液体であり、
現像剤全体の表面張力は、27mN/m以上42mN/m以下であり、
現像剤全体の粘度は、1.0mPa・s以上10.0mPa・s以下であることを特徴とする液体マグネトグラフィー用現像剤。
【請求項2】
前記磁性重合体粒子のゼータ電位は、−200mV以上−20mV以下であることを特徴とする請求項1に記載の液体マグネトグラフィー用現像剤。
【請求項3】
前記磁性重合体粒子は、前記磁性重合体母粒子と、前記磁性重合体母粒子の表面に外添される外添剤粒子と、を含む外添磁性重合体粒子であり、
前記外添剤粒子の個数平均一次粒子径は、15nm以上500nm以下であることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の液体マグネトグラフィー用現像剤。
【請求項4】
前記磁性重合体母粒子の個数平均粒子径が0.5μm以上10.0μm以下であり、かつ、前記個数平均粒子径の変動係数が0%以上30%以下であることを特徴とする請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載の液体マグネトグラフィー用現像剤。
【請求項5】
磁気潜像保持体と、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
磁気潜像が形成された前記磁気潜像保持体に前記現像剤を供給する現像剤供給手段と、
を有することを特徴とするプロセスカートリッジ。
【請求項6】
磁気潜像保持体と、
前記磁気潜像保持体上に磁気潜像を形成する磁気潜像形成手段と、
請求項1から請求項4までのいずれか1項に記載の現像剤を貯留する現像剤貯留手段と、
前記磁気潜像をトナー像として顕像化するために前記磁気潜像が形成された前記磁気潜像保持体に前記現像剤を供給する現像剤供給手段と、
前記トナー像を記録媒体に転写する転写手段と、
前記磁気潜像保持体上の前記磁気潜像を消磁する消磁手段と、
を有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−210809(P2009−210809A)
【公開日】平成21年9月17日(2009.9.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−53662(P2008−53662)
【出願日】平成20年3月4日(2008.3.4)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】