説明

液体レンズ装置

【課題】液体の経時的減少をおさえるとともに、液体封入時の気泡発生を防止することができる液体レンズ装置を提供する。
【解決手段】導電性を有する第1の液体A3と、第1の液体に対して密度がほぼ等しいが屈折率が異なり、かつ絶縁性を有する第2の液体B4とを互いに混合することなくセル17内に保持し、界面の形状を変化させることで、焦点位置を変化させる液体レンズ装置であって、セル17は、伸縮性を持った部材9、14を具備することにより、セル17内の圧力を調整できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体レンズ装置に関し、詳しくは、ディジタルスチルカメラや携帯電話等に搭載されている撮像用レンズ装置に好適な焦点距離が可変の液体レンズ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、電子機器のディジタル化の進展とともに、ディジタルスチルカメラが普及してきている。ディジタルスチルカメラにおいて、薄型でコンパクトカメラが市場で求められている。また、携帯電話のカメラ装着率の拡大に伴い、より軽くかつより薄い携帯電話の撮像部のコンパクト化が強く要請されてきている。
【0003】
上記のようなカメラや撮像部にはオートフォーカス機能や光学ズーム機能の内蔵が必須となりつつある。したがって、これらのカメラや撮像部に含まれる撮像機能を持つ光学モジュールの実装空間を少なくしていくかがコンパクト化への大きな課題である。
【0004】
このコンパクト化を実現する手段として、液体レンズ装置が提案されている。液体レンズ装置に関しては、非特許文献1に記載の技術が知られている。非特許文献1には、平板電極の上に配置された誘電体フィルム上に置かれた導電性液体小滴を含むデバイスが開示されている。非特許文献1には、導電性液体小滴と電極との間に電圧を印加すると、小滴の接触角が変化することが記述されており、この現象はelectro−wettingと呼ばれている。また、この現象を用いた可変焦点レンズとして、特許文献1には電解制御によってレンズ部の焦点距離を連続的に変化させることができる液体レンズ装置が開示されており、商品化の発表も行われている。
【0005】
図1は、従来の液体レンズ装置の構成を示す断面図である。従来の液体レンズ装置は、透明板A1と、透明板B2と、液体A3と、液体B4と、電極A5と、電極B6と、絶縁層7と、セル17とを備える。
【0006】
セル17は、光線を透過させるための透明板A1と、透明板B2と電極A5、電極B6、絶縁層7より構成され、液体A3、液体B4がセル内に格納される体積は一定になっている。液体A3と液体B4とは、互いに混合することなく、密度がほぼ等しく、異なった屈折率を持つ。液体B4は、液体A3内部で小滴を形成しており、絶縁層7の内部の表面の領域に静止状態で配置されている。ここで、液体A3は導電性を有し、液体A4は絶縁性を有する。さらに、電極A5を介して、セル17中の液体A3と絶縁層7の表面上に配置された電極B6との間に電圧印加手段を持ち、印加電圧により、液体B4の小滴の形状を変化させ焦点を可変させる。
【非特許文献1】B.Bergeらの文献「Electrocapillarity and wetting of insulator films by water、C.R.A cad.Sci.Paris,137p.157(1993)」
【特許文献1】国際公開第99/18456号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来例の液体レンズ装置は、液体A3及び液体B4の温度が変化した場合、その体積が変化する。一般に、温度が上昇すれば液体は膨張し、下降すれば逆に収縮する。したがって、温度が変化すると、液体の膨張及び収縮により、液圧の上昇あるいは下降が起こり、液体B4の印加電圧による形状制御が正しく行われなくなる。また、液圧の上昇は、液体レンズ装置のセル17の構成部品の継ぎ目より液体が透失していく原因ともなる。さらに、従来例の液体レンズ装置は、液体の封入の際の気泡発生の防止や除去対策が施されていない。気泡が発生すると、液体レンズ装置として所期の特性を発揮し得ない。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑み、液体の経時的減少をおさえるとともに、液体封入時の気泡発生を防止することができる液体レンズ装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
導電性を有する第1の液体と、第1の液体に対して密度がほぼ等しいが屈折率が異なり、かつ絶縁性を有する第2の液体と、を互いに混合することなくセル内に保持し、界面の形状を変化させることで、焦点位置を変化させる液体レンズ装置であって、セルは、伸縮性を持った部材を具備することにより、セル内の圧力を調整できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、液体の経時的減少をおさえるとともに、液体封入時の気泡発生を防止することができる液体レンズ装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
[実施の形態1]
以下、図面を参照に本発明の実施の形態について詳細に説明する。図2は、実施の形態1に係る液体レンズ装置の断面図である。図2において、実施の形態1にかかる液体レンズ装置は、前述した従来の液体レンズ装置と概略同じ構成を有しているため、同一の機能部については図1と図2とで同一の符号を付してある。
【0012】
液体レンズ装置は、透明板A1と、透明板B2と、液体A3と、液体B4と、電極A5と、電極B6と、絶縁層7と、液封入栓8と、ダイヤフラムA9と、泡抜き栓10と、押さえ板A11と、電極C12と、ハウジング13と、セル17と、貫通孔B20とを備える。透明板A1と透明板B2は互いに平行になるよう配置されている。絶縁性液体B4は小滴を形成しており、透明板B2の上面に形成された絶縁層7に接している。一方、絶縁層7上には、セル17の内面に小滴と接触する小滴接触領域が形成されており、円形状をなしている。
【0013】
液体A3と液体B4とは少なくとも絶縁層7を介して反対側に配置された電極6と液体A3との間に電圧を印加する電圧印加手段を有している。このとき、液体A3は、電極C12を介して接しており、電極C12はハウジング13とは絶縁している。導電性液体A3と絶縁性液体B4の小滴とは互いに混合することなく、且つ互いに屈折率が異なり、電圧手段により印加電圧を変化させることで、液体A3と液体B4により形成される界面の形状を変化させることができる。
【0014】
図3は、実施の形態1に係る液体レンズ装置の部分拡大図である。図4は、実施の形態1に係る液体レンズ装置の部分断面図である。光線が通過する透明板A1及び透明板B2は、ハウジング13によって支えられ、平行を維持している。ハウジング13は、円筒状をなしている(図示せず)。
【0015】
このハウジング13に液封入口18が備えられ、貫通孔19によってセル17の外部に通じており、液封入栓8によって液体が封じられる。液封入栓8は、端面に伸縮自在な弾性材料例えば高分子材料で構成されたダイヤフラムA9が配置されている。セル17内部に、液体A3、液体B4が封入され、液封入栓8で密閉される。液体A3及び液体B4の温度変化により、セル内圧力の変化が生ずると、ダイヤフラムA9の伸縮により、内部圧力の調整がなされる。
【0016】
図5も、実施の形態1に係る液体レンズ装置の部分拡大図である。図5は、液封入時の液封入口18を示したものである。ダイヤフラムA9がハウジング13の外部に向かって膨らみ、この膨らみの程度によりセル17内部圧力が調整できる。
【0017】
前述したelectro−wetting現象により、液体A3と電極B6との間に電圧印加手段Vによる印加電圧の大きさに応じて、液体A3と液体B4の界面形状を制御する。このとき、焦点を可変させようとする場合、セル17の内部圧力が一定である必要が有る。セル17内部の圧力が一定にできれば、液体A3と液体B4の界面制御が容易となる。
【0018】
ダイヤフラムA9は、高分子材料で構成され、セル17内部の液体の透失を防ぐため、金属製の押さえ板A11により密閉されている。また、セル17内に液体A3、液体B4を封入する時、気泡の発生や脱泡を促すため、液挿入口18のとは別個の貫通孔20を設ける。貫通孔20は、液封入時は開口しており、液封入後は、液を透失させない金属製の泡抜き栓10で塞いでいる。なお、図2における貫通孔20の位置は、説明の都合上、液封入口18の反対位置に図示しているが、ハウジング13において、液封入口18の近傍に位置するのが望ましい。
【0019】
[実施の形態2]
次に液挿入口の別の実施の形態2について、図6及び7を用いて説明する。図6は、実施の形態2に係る液体レンズ装置の部分拡大図である。図7は、実施の形態2に係る液体レンズ装置の部分断面図である。図6及び図7において、ハウジング13に設けられた貫通孔A19(矩形型)により、セル17の外部に通じている。貫通孔A19の上部の縁部上にダイヤフラムB14が位置し、弾性スペ−サ15を通して押さえ板B16により固定されている。
【0020】
実施の形態2において、セル17の内部に、液体A3及び液体B4を封入し、ダイヤフラムB14を装着し、押さえ板16で固定すると、図7で示しているように、液体A3、液体B4の温度変化により、セル17の内部圧力が変化する。セル17の内部圧力が変化すると、ダイヤフラムB14は、伸縮し内部圧力の調整がなされる。実施の形態2の場合、ダイヤフラムB14の形状が矩形状であるため、円形より比較的面積が大きく取れ圧力の調整範囲が広く取れる。
【0021】
以上、説明したように、実施の形態1及び2の液体レンズ装置によれば、液体部分に温度変化が生じてセル内液体圧力が均一に維持され、液体小滴界面形状の制御が所定の印加電圧で行われ安定した可変焦点制御が実現できる。また、実施の形態1及び2の液体レンズ装置によれば、液体の長期的透失防止にもなる。さらに、液体封入時の気泡発生が低減されるため、気泡による光の散乱が防止でき、液体レンズ装置による性能劣化が回避できる。
【産業上の利用可能性】
【0022】
本発明の液体レンズ装置は、ディジタルスチルカメラや携帯電話等に搭載されている撮像用レンズ装置に好適である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】従来の液体レンズ装置の断面図
【図2】実施の形態1に係る液体レンズ装置の断面図
【図3】実施の形態1に係る液体レンズ装置の部分拡大図
【図4】実施の形態1に係る液体レンズ装置の部分断面図
【図5】実施の形態1に係る液体レンズ装置の別の部分拡大図
【図6】実施の形態2に係る液体レンズ装置の部分拡大図
【図7】実施の形態2に係る液体レンズ装置の部分断面図
【符号の説明】
【0024】
1 透明板A
2 透明板B
3 液体A
4 液体B
5 電極A
6 電極B
7 絶縁層
8 液封入栓
9 ダイヤフラムA
10 泡抜き栓
11 押さえ板A
12 電極C
13 ハウジング
14 ダイヤフラムB
15 弾性スペーサー
16 押さえ板B
17 セル
18 液封入口
19 貫通孔A
20 貫通孔B

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する第1の液体と、第1の液体に対して密度がほぼ等しいが屈折率が異なり、かつ絶縁性を有する第2の液体と、を互いに混合することなくセル内に保持し、界面の形状を変化させることで、焦点位置を変化させる液体レンズ装置であって、
前記セルは、伸縮性を持った部材を具備することにより、セル内の圧力を調整できることを特徴とする液体レンズ装置。
【請求項2】
前記セルは、開口部が2重の蓋構造をもつ、請求項1の液体レンズ装置。
【請求項3】
前記セルは、2個所以上の開口孔をもつ、請求項1の液体レンズ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−8449(P2010−8449A)
【公開日】平成22年1月14日(2010.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−164081(P2008−164081)
【出願日】平成20年6月24日(2008.6.24)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】