説明

液体収納容器及び液体収納容器の製造方法

【課題】生分解性の素材を使用した食品分野製品の容器であって、優れた耐水性を有する液体収納容器及びその製造方法を提供する。
【解決手段】液体収納容器10は、紙製の容器本体20と、容器本体の内側表面21を覆う、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料とした耐水コーティング層30と、を有する。また、その製造方法は、組立後に容器本体となる紙製の容器基材20Aの一面21Aに、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたフィルム状又は液状のコーティング材30Aを接着又は塗布して耐水コーティング層を形成し、耐水コーティング層を形成した容器基材を、耐水コーティング層を内側にして容器形状に組み立てるものである。また、他の液体収納容器50は、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料とした生分解性プラスチックで構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体収納容器及び当該液体収納容器の製造方法に関し、特に、生分解性の素材を使用して形成した液体収納容器及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、食品分野の製品に使用する容器においては、環境保護等の観点から、使用済み容器を回収してリサイクルすることが提案されている。しかしながら、当該食品分野製品の容器については、その使用量が多いために、使用済み容器の全回収が難しいという問題がある。また、食品分野製品の容器は、使用時に汚れが付着することが多いために、使用済み容器を回収しても回収後の処理が煩雑となるという問題もある。このように、食品分野製品の使用済み容器のリサイクルについては、種々の問題が指摘されている。
【0003】
そこで、リサイクルが困難な食品分野製品の容器を、使用後にゴミとして土中に埋めると二酸化炭素と水に分解されて無害化される生分解性の素材を使用して形成することが、リサイクル以外の環境保護対策として提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
なお、食品分野製品の容器では、収納するものが水分を含んでいることが多いため、多くの場合、容器に耐水性を有している必要がある。特に、牛乳パックやコーヒーミルクのポーション容器等の液体を収納する容器の場合には、容器が優れた耐水性を有している必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平7−97545号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、前記した特許文献1に記載したような生分解性の素材を使用した容器としては、生分解性の素材に澱粉を用いたものがあり、例えば、トウモロコシ種子からつくられたコーンスターチを用いたものがある。しかしながら、澱粉をベースとした素材から製造された容器は耐水性が低いものが多く、より耐水性の高い生分解性の素材を使用した容器が求められていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、生分解性の素材を使用した食品分野製品の容器であって、優れた耐水性を有する液体収納容器及び当該液体収納容器の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
かかる課題を解決するために、本発明の請求項1に記載の発明は、紙製の容器本体と、該容器本体の内側表面を覆う、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料とした耐水コーティング層と、を有する液体収納容器としたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記耐水コーティング層に、コーティング状態を安定化させる可塑剤が添加されている液体収納容器としたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明の請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記耐水コーティング層に、前記トウモロコシ蛋白の水への溶出を抑制する化学物質が添加されている液体収納容器としたことを特徴とする。
【0011】
また、本発明の請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3の何れか一つに記載の構成に加え、前記耐水コーティング層の上に、前記トウモロコシ蛋白の水への溶出を抑制する生分解性樹脂を含む第2コーティング層を有する液体収納容器としたことを特徴とする。
【0012】
また、本発明の請求項5に記載の発明は、紙製の容器本体の内側表面に耐水コーティング層を有する液体収納容器の製造方法であって、組立後に前記容器本体となる紙製の容器基材の一面に、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたフィルム状のコーティング材を接着して耐水コーティング層を形成し、該耐水コーティング層を形成した前記容器基材を、前記耐水コーティング層を内側にして容器形状に組み立てる液体収納容器の製造方法としたことを特徴とする。
【0013】
また、本発明の請求項6に記載の発明は、紙製の容器本体の内側表面に耐水コーティング層を有する液体収納容器の製造方法であって、組立後に前記容器本体となる紙製の容器基材の一面に、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料とした液状のコーティング材を塗布して耐水コーティング層を形成し、該耐水コーティング層を形成した前記容器基材を、前記耐水コーティング層を内側にして容器形状に組み立てる液体収納容器の製造方法としたことを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項7に記載の発明は、請求項5又は6に記載の構成に加え、前記耐水コーティング層を形成した前記容器基材を容器形状に組み立てる際に、ヒートシール技術を用いて組み立てるようになっており、前記容器基材の一面に前記耐水コーティング層を形成するに際し、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加したコーティング材を使用する液体収納容器の製造方法としたことを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項8に記載の発明は、請求項5乃至7の何れか一つに記載の構成に加え、前記耐水コーティング層を形成した前記容器基材を容器形状に組み立てる際に、ヒートシール技術を用いて組み立てるようになっており、前記容器基材の一面に前記耐水コーティング層を形成した後、該耐水コーティング層の上に、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加した第2コーティング材を使用して第2コーティング層を形成する液体収納容器の製造方法としたことを特徴とする。
【0016】
また、本発明の請求項9に記載の発明は、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料とした生分解性プラスチックで構成されている液体収納容器としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
請求項1に記載の発明によれば、液体収納容器が、紙製の容器本体の内側表面を耐水性を有する耐水コーティング層で覆ったものであるため、容器本体が水分に弱い紙製であっても、容器内部に牛乳等の液体を入れても十分な強度を保つことができる容器とすることができる。
【0018】
また、液体収納容器を構成する素材として、容器本体は紙で構成されており、かつ、耐水コーティング層は、耐水性の高い生分解性の素材である、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたもので構成されているため、優れた耐水性を有すると共に環境に優しい容器とすることができる。
【0019】
さらに、トウモロコシ蛋白は、トウモロコシから澱粉を製造する際に副産物として産出するものであり、従来は大部分を廃棄していたものであるため、このトウモロコシ蛋白を使って耐水コーティング層を形成することで、製造上の無駄をなくすことができ、環境にも優しく、コスト的にも優れた容器とすることができる。
【0020】
また、請求項2に記載の発明によれば、請求項1の効果に加え、耐水コーティング層に、コーティング状態を安定化させる可塑剤が添加されているため、より安定した耐水性能を有することができる。
【0021】
また、請求項3に記載の発明によれば、請求項1〜2の効果に加え、耐水コーティング層に、トウモロコシ蛋白の水への溶出を抑制する化学物質が添加されているため、より安定した耐水性能を有することができる。
【0022】
また、請求項4に記載の発明によれば、請求項1〜3の効果に加え、耐水コーティング層の上に、トウモロコシ蛋白の水への溶出を抑制する生分解性樹脂を含む第2コーティング層を有するため、より安定した耐水性能を有することができる。
【0023】
また、請求項5に記載の発明によれば、紙製の容器本体の内側表面に耐水コーティング層を有する液体収納容器の製造方法において、組立後に容器本体となる紙製の容器基材の一面に、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたフィルム状のコーティング材を接着して耐水コーティング層を形成し、耐水コーティング層を形成した容器基材を、耐水コーティング層を内側にして容器形状に組み立てるようにしたため、容器本体が水分に弱い紙製であっても、容器内部に牛乳等の液体を入れても十分な強度を保つことができる容器を形成することができる。
【0024】
また、液体収納容器を構成する素材として、容器本体は紙で構成されており、かつ、耐水コーティング層は、耐水性の高い生分解性の素材である、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたもので構成されているため、優れた耐水性を有すると共に環境に優しい容器を形成することができる。
【0025】
さらに、トウモロコシ蛋白は、トウモロコシから澱粉を製造する際に副産物として産出するものであり、従来は大部分を廃棄していたものであるため、このトウモロコシ蛋白を使って耐水コーティング層を形成することで、製造上の無駄をなくすことができ、環境にも優しく、コスト的にも優れた容器を形成することができる。
【0026】
また、請求項6に記載の発明によれば、紙製の容器本体の内側表面に耐水コーティング層を有する液体収納容器の製造方法において、組立後に容器本体となる紙製の容器基材の一面に、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料とした液状のコーティング材を塗布して耐水コーティング層を形成し、耐水コーティング層を形成した容器基材を、耐水コーティング層を内側にして容器形状に組み立てるようにしたため、容器本体が水分に弱い紙製であっても、容器内部に牛乳等の液体を入れても十分な強度を保つことができる容器を形成することができる。
【0027】
また、液体収納容器を構成する素材として、容器本体は紙で構成されており、かつ、耐水コーティング層は、耐水性の高い生分解性の素材である、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたもので構成されているため、優れた耐水性を有すると共に環境に優しい容器を形成することができる。
【0028】
さらに、トウモロコシ蛋白は、トウモロコシから澱粉を製造する際に副産物として産出するものであり、従来は大部分を廃棄していたものであるため、このトウモロコシ蛋白を使って耐水コーティング層を形成することで、製造上の無駄をなくすことができ、環境にも優しく、コスト的にも優れた容器を形成することができる。
【0029】
また、請求項7に記載の発明によれば、請求項5〜6の効果に加え、耐水コーティング層を形成した容器基材を容器形状に組み立てる際に、ヒートシール技術を用いて組み立てるようになっており、容器基材の一面に耐水コーティング層を形成するに際し、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加したコーティング材を使用するようにしたため、そのヒートシール性の向上により容器の組み立てをスムーズに行うことができる。。
【0030】
また、請求項8に記載の発明によれば、請求項5〜7の効果に加え、耐水コーティング層を形成した容器基材を容器形状に組み立てる際に、ヒートシール技術を用いて組み立てるようになっており、容器基材の一面に耐水コーティング層を形成した後、耐水コーティング層の上に、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加した第2コーティング材を使用して第2コーティング層を形成するようにしたため、そのヒートシール性の向上により容器の組み立てをスムーズに行うことができる。
【0031】
また、請求項9に記載の発明によれば、液体収納容器を、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料とした生分解性プラスチックで構成されているものとしたため、容器内部に牛乳等の液体を入れても十分な強度を保つことができる容器とすることができる。
【0032】
また、容器を構成する素材として、耐水性の高い生分解性の素材である、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたもので構成されているため、優れた耐水性を有すると共に環境に優しい容器とすることができる。
【0033】
さらに、トウモロコシ蛋白は、トウモロコシから澱粉を製造する際に副産物として産出するものであり、従来は大部分を廃棄していたものであるため、このトウモロコシ蛋白を使って容器を形成することで、製造上の無駄をなくすことができ、環境にも優しく、コスト的にも優れた容器とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明の実施の形態1における液体収納容器の斜視図である。
【図2】図1の液体収納容器のB−B線における横断面図である。
【図3】本発明の実施の形態1における液体収納容器の製造工程を示す説明図である。
【図4】本発明の実施の形態2における液体収納容器の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
[発明の実施の形態1]
【0036】
まず、本発明の実施の形態1における液体収納容器について、図1〜図3を用いて説明する。図1は、本発明の実施の形態1における液体収納容器の斜視図であり、図2は、図1の液体収納容器のB−B線における横断面図であり、図3は、本発明の実施の形態1における液体収納容器の製造工程を示す説明図である。
【0037】
本実施の形態における液体収納容器10は、図1に示すように、例えば牛乳等の液体を内部に収納してパック詰めにし、製品として出荷するための容器(所謂牛乳パック)である。当該液体収納容器10は、図2に示すように、容器本体20と、この容器本体20の内側表面21を覆う耐水コーティング層30と、を少なくとも有する構成となっている。
【0038】
容器本体20は、適宜の紙からなる素材で構成されており、液体を入れても型くずれしないで液体を長期間保持できる程度の適宜の厚み及び強度を有するものである。
【0039】
耐水コーティング層30は、容器本体20の内側表面21を覆うことで内部の液体と紙製の容器本体20との間に介在し、内部の液体によって紙製の容器本体が破れたり切れたりしないようにコーティングするものである。この耐水コーティング層30は、トウモロコシ種子から抽出される蛋白質であるゼインを含む素材を主材料として形成されたフィルム状のコーティング材30A(図3参照)で構成されており、当該フィルム状のコーティング材30Aが容器本体20の内側表面21に接着されて形成されているものである。
【0040】
なお、本実施の形態の耐水コーティング層30は、フィルム状のコーティング材30Aを、ラミネート加工等の技術により、接着剤(ゼインを主成分とする接着剤等、生分解性の接着剤が好ましい)を使ったり熱接着をしたりして容器本体20に接着する構成となっているが、これに限るものではない。例えば、液状のコーティング材30Aを容器本体20の内側表面21に塗布して乾燥させることで耐水コーティング層30を形成するようになっていても良い。
【0041】
また、トウモロコシ蛋白を含む素材とは、水不溶性のトウモロコシ蛋白を含むものであれば良い。具体的には、トウモロコシ種子等から含水エタノール等によって抽出されるゼイン画分、この抽出ゼイン画分を精製した高純度ゼインの他、トウモロコシからコーンスターチを生産する工程で得られるグルテンミールが挙げられ、さらには、水洗による水溶性成分の除去や酵素処理(アミラーゼ)による脱澱粉を施して蛋白含量を高めたグルテンミールも含まれる。なお、トウモロコシからコーンスターチを生産する工程で得られるグルテンミールを用いると、環境やコスト的に有利なものとすることができる。
【0042】
なお、前記した耐水コーティング層30のコーティング材30Aに、コーティング状態を安定化させる可塑剤が添加されていても良い。可塑剤として具体的には、グリセリンやポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどの多価アルコール、乳酸やリンゴ酸などの有機酸、尿素などを挙げることができる。この可塑剤を配合することにより、塑性を向上させ、また、生分解性や機械的物性を調整することができる。
【0043】
また、トウモロコシ蛋白は基本的には水不溶性であるが、前記した耐水コーティング層30のコーティング材30Aに、さらに、トウモロコシ蛋白の水等の液体への溶出を抑制する化学物質が添加されていても良い。
【0044】
また、液体収納容器10がヒートシール技術を用いて組み立てられるようになっている場合、組立後に容器本体20となる、組立前の紙製の容器基材20Aの状態において、前記した耐水コーティング層30のコーティング材30Aに、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加しておくと、組立時にシール性が良くなり、好ましい。
【0045】
また、耐水コーティング層30のコーティング材30Aに、さらに他の機能を有する物質が添加されていても良い。
【0046】
ここで、本実施の形態における耐水コーティング層30に用いるコーティング材30Aの一例を挙げる。耐水コーティング層30のコーティング材30Aとしては、例えば、80%エタノール10mlに対しゼイン1gの割合にして、約60℃で溶解させてから40〜50℃まで冷まし、その後、そのコーティング材30Aを容器本体20の内側表面21に塗布し、30℃の通風乾燥で乾燥させたものが挙げられる。また、コーティング材30Aとしては、70%アセトン10mlに対しゼイン1gの割合にして、約60℃で溶解させてから40〜50℃まで冷まし、その後、そのコーティング材30Aを容器本体20の内側表面21に塗布し、30℃の通風乾燥で乾燥させたものが挙げられる。さらに、前記した各ゼイン溶液に、ゼインの重量の10%に相当する乳酸を可塑剤として添加したものが挙げられる。また、前記したゼイン溶液に、ゼインの重量の10%に相当するグリセリンを可塑剤として添加したものが挙げられる。
【0047】
なお、前記したコーティング層30の上に、トウモロコシ蛋白の水等の液体への溶出を抑制する生分解性樹脂を含む第2コーティング層を有する構成となっていても良い。
【0048】
また、液体収納容器10がヒートシール技術を用いて組み立てられるようになっている場合で、組立後に容器本体20となる、組立前の紙製の容器基材20A(図3参照)の状態において、前記したように、耐水コーティング層30のコーティング材30Aに、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加しておく以外に、コーティング層30の上に、ヒートシール性を向上させる化学物質を含む第2コーティング層を有する構成となっていても良い。これによっても、組立時にシール性が良くなり、好ましいものとできる。
【0049】
また、本実施の形態では、図2及び図3に示すように、容器本体20の外側表面22にも、耐水コーティング機能を有する、あるいは他の機能を有するコーティング層40が設けられている。また、容器本体20の内側表面21や外側表面22に、前記した耐水コーティング層30、第2コーティング層以外の機能を有する(または、耐水コーティング層や第2コーティング層の機能を強化、補完する)コーティング層が、さらに設けられていても良い。
【0050】
このように、耐水コーティング層のコーティング材への添加剤や、耐水コーティング層以外の他のコーティング層は、液体収納容器の製造効率を向上させたり、製造過程における問題点を回避したりするような製造過程上で利点のあるものや、得られる液体収納容器の品質を向上させたり、液体収納容器のコストを低減したりするといった完成品である液体収納容器において利点のあるものを挙げることができる。これら添加剤や他のコーティング層は、液体収納容器の品質を大幅に低下させないようなものであれば、特に限定されるものではない。
【0051】
また、耐水コーティング層のコーティング材として、トウモロコシ蛋白であるゼインに対してデンプンを混合したものを使用しても良い。
【0052】
次に、本発明の実施の形態1における液体収納容器10の製造方法について、図3を用いて説明する。
【0053】
本実施の形態の液体収納容器10については、まず、図3の(a)に示すように、組立後に前記した液体収納容器10の容器本体20となる紙製の容器基材20Aを用意し、図3の(b)に示すように、その一面21A(容器本体20の内側表面21となる面)にトウモロコシ蛋白であるゼインを含む素材を主材料としたフィルム状のコーティング材30Aを接着して、耐水コーティング層30を形成する。また、容器基材20Aの他の面22A(容器本体20の外側表面22となる面)にも適宜のコーティング材40Aを接着して、コーティング層40を形成する。その後、耐水コーティング層30及びコーティング層40を形成した容器基材20Aを、耐水コーティング層30を内側にして容器形状に組み立てて、液体収納容器10を形成するものである。
【0054】
なお、前記したように、本実施の形態の耐水コーティング層30は、フィルム状のコーティング材30Aを容器基材20Aに接着する以外に、液状のコーティング材30Aを容器基材20Aに塗布することでも形成可能である。
【0055】
また、フィルム状又は液状のコーティング材30Aに、コーティング状態を安定化させる可塑剤を添加しても良い。また、フィルム状又は液状のコーティング材30Aに、トウモロコシ蛋白の水等の液体への溶出を抑制する化学物質を添加しても良い。また、液体収納容器10の組立を行う際に、ヒートシール技術を用いるようになっている場合、フィルム状又は液状のコーティング材30Aに、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加しておいても良い。また、フィルム状又は液状のコーティング材30Aに、さらに他の機能を有する物質を添加しても良い。
【0056】
また、耐水コーティング層30を形成した後、当該耐水コーティング層30の上に、トウモロコシ蛋白の水等の液体への溶出を抑制する生分解性樹脂を含む第2コーティング層を形成するようになっていても良い。また、液体収納容器10の組立を行う際に、ヒートシール技術を用いるようになっている場合には、フィルム状又は液状のコーティング材30Aに、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加しておく以外に、耐水コーティング層30の上に、ヒートシール性を向上させる化学物質を含む第2コーティング層を形成するようになっていても良い。
【0057】
また、本実施の形態では、容器基材20Aの一面21Aに耐水コーティング層30を形成する前又は後に、容器本体20の他の面22A(容器本体20の外側表面22となる面)に、耐水コーティング機能を有する、あるいは他の機能を有するコーティング層40を形成するようになっている。また、容器基材20Aの一面21Aや他の面22Aに、前記した耐水コーティング層、第2コーティング層以外の機能を有する(または、耐水コーティング層や第2コーティング層の機能を強化、補完する)コーティング層を、さらに形成するようになっていても良い。
【0058】
また、耐水コーティング層30のコーティング材30Aとして、トウモロコシ蛋白であるゼインに対してデンプンを混合したものを使用しても良い。
[発明の実施の形態2]
【0059】
以下、本発明の実施の形態2における液体収納容器について、図4を用いて説明する。図4は、本発明の実施の形態2における液体収納容器の斜視図である。
【0060】
本実施の形態における液体収納容器50は、図4に示すように、例えばコーヒーミルク等の液体を内部に収納してパック詰めにし、製品として出荷するための容器(所謂ポーション容器)である。当該液体収納容器50は、容器本体60蓋材70とで構成されている。
【0061】
容器本体60は、略円盤状の底板部61と当該底板部の周縁に設けられた略円筒状の周壁部62とからなり、上記周壁部の上端には円状のフランジ部63が開口部縁から外側に向かって形成されている。蓋材70は、略円盤状であり、上記フランジ部63の上面に接着されることによって、容器本体60の内部を密封している。
【0062】
また、本実施の形態の液体収納容器50は、容器本体60及び蓋材70のほぼ全体が、耐水性に優れたトウモロコシ蛋白であるゼインを含む素材を主材料とした生分解性プラスチックで構成されている。また、本実施の形態の液体収納容器50における容器本体60及び蓋材70は、トウモロコシ蛋白を含む素材及びエタノール(含水エタノールを含む)を含む成形材料を、110〜220℃の温度にて射出成形処理して成形したものである。
【0063】
ここでトウモロコシ蛋白を含む素材とは、水不溶性のトウモロコシ蛋白を含むものであればよく、素材の蛋白含量は50%以上であることが好ましい。具体的にはトウモロコシ種子等から含水エタノール等によって抽出されるゼイン画分、この抽出ゼイン画分を精製した高純度ゼインの他、トウモロコシからコーンスターチを生産する工程で得られるグルテンミールが挙げられ、さらには、水洗による水溶性成分の除去や酵素処理(アミラーゼ)による脱澱粉を施して蛋白含量を高めたグルテンミールも含まれる。
【0064】
また、液体収納容器50の容器本体60及び蓋材70を構成するトウモロコシ蛋白を含む素材には、種々の添加剤が含まれていても良い。例えば、塑性を向上させるための可塑剤が添加されていても良い。可塑剤として具体的には、グリセリンやポリエチレングリコールやポリプロピレングリコールなどの多価アルコール、乳酸やリンゴ酸などの有機酸、尿素などを挙げることができる。この可塑剤を配合することにより、塑性を向上させると共に、生分解性や機械的物性を調整することができる。
【0065】
また、トウモロコシ蛋白は基本的には水不溶性であるが、液体収納容器50の素材に、さらに、トウモロコシ蛋白の水等の液体への溶出を抑制する化学物質が添加されていても良い。
【0066】
また、液体収納容器50の容器本体60と蓋材70とがヒートシール技術を用いて接着されるようになっている場合、容器本体60及び蓋材70に、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加しておくと、接着時にシール性が良くなり、好ましい。
【0067】
また、液体収納容器50の容器本体60と蓋材70との少なくとも一方に、さらに他の機能を有する物質が添加されていても良い。
【0068】
これら添加剤は、上記液体収納容器50の製造効率を向上させたり、製造過程における問題点を回避したりするような製造過程上で利点のあるものや、得られる液体収納容器50の品質を向上させたり、液体収納容器50のコストを低減したりするといった完成品である液体収納容器50において利点のあるものを挙げることができる。これら添加剤は、液体収納容器50の品質を大幅に低下させないようなものであれば、特に限定されるものではない。
【0069】
また、液体収納容器50の容器本体60及び蓋材70の素材として、トウモロコシ蛋白であるゼインに対してデンプンを混合したものを使用しても良い。
【0070】
次に、本発明の実施の形態2における液体収納容器50の製造方法について説明する。
【0071】
成形処理としては、射出・押出・圧縮等種々の成形処理が挙げられるが、本実施の形態では、生産性の面から、射出成形処理が用いられている。一般的には、射出成形は高温、高圧で行われ、射出成形温度は、通常、110〜220℃である。また、このときの成形圧力は、通常、30〜150MPaである。
【0072】
本実施の形態における液体収納容器50の製造方法は、少なくとも、成形工程と、密封工程とを含む。
【0073】
成形工程では、まず、容器本体60が、例えば、成形装置(不図示)による射出成形処理により成形される。また、蓋材70についても、成形装置による射出成形処理により成形される。次に、成形装置の金型の1つを外した後、過剰の原料混合物をスクレーパーの刃等により除去する。そして、容器本体60及び蓋材70を金型から取り出す。さらに、容器本体60を60〜200℃、1分〜24時間、オーブン等に入れて、容器本体60から湿気を除去する。
【0074】
次に、密封工程では、内部にコーヒーミルク等の液体を注入した後、容器本体60のフランジ部63の上面に蓋材70を熱板等でヒートシールし、液体収納容器50を完成させる。
【0075】
以上のように、発明の実施の形態1の液体収納容器によれば、液体収納容器が、紙製の容器本体の内側表面を耐水性を有する耐水コーティング層で覆ったものであるため、容器本体が水分に弱い紙製であっても、容器内部に牛乳等の液体を入れても十分な強度を保つことができる容器とすることができる。
【0076】
また、液体収納容器を構成する素材として、容器本体は紙で構成されており、かつ、耐水コーティング層は、耐水性の高い生分解性の素材である、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたもので構成されているため、優れた耐水性を有すると共に環境に優しい容器とすることができる。
【0077】
さらに、トウモロコシ蛋白は、トウモロコシから澱粉を製造する際に副産物として産出するものであり、従来は大部分を廃棄していたものであるため、このトウモロコシ蛋白を使って耐水コーティング層を形成することで、製造上の無駄をなくすことができ、環境にも優しく、コスト的にも優れた容器とすることができる。
【0078】
また、発明の実施の形態1の液体収納容器によれば、上記効果に加え、耐水コーティング層に、コーティング状態を安定化させる可塑剤が添加されているため、より安定した耐水性能を有することができる。
【0079】
また、発明の実施の形態1の液体収納容器によれば、上記効果に加え、耐水コーティング層に、トウモロコシ蛋白の水への溶出を抑制する化学物質が添加されているため、より安定した耐水性能を有することができる。
【0080】
また、発明の実施の形態1の液体収納容器によれば、上記効果に加え、耐水コーティング層の上に、トウモロコシ蛋白の水への溶出を抑制する生分解性樹脂を含む第2コーティング層を有するため、より安定した耐水性能を有することができる。
【0081】
また、発明の実施の形態1の液体収納容器の製造方法によれば、紙製の容器本体の内側表面に耐水コーティング層を有する液体収納容器の製造方法において、組立後に容器本体となる紙製の容器基材の一面に、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたフィルム状のコーティング材を接着して耐水コーティング層を形成し、耐水コーティング層を形成した容器基材を、耐水コーティング層を内側にして容器形状に組み立てるようにしたため、容器本体が水分に弱い紙製であっても、容器内部に牛乳等の液体を入れても十分な強度を保つことができる容器を形成することができる。
【0082】
また、液体収納容器を構成する素材として、容器本体は紙で構成されており、かつ、耐水コーティング層は、耐水性の高い生分解性の素材である、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたもので構成されているため、優れた耐水性を有すると共に環境に優しい容器を形成することができる。
【0083】
さらに、トウモロコシ蛋白は、トウモロコシから澱粉を製造する際に副産物として産出するものであり、従来は大部分を廃棄していたものであるため、このトウモロコシ蛋白を使って耐水コーティング層を形成することで、製造上の無駄をなくすことができ、環境にも優しく、コスト的にも優れた容器を形成することができる。
【0084】
また、発明の実施の形態1の液体収納容器の製造方法によれば、紙製の容器本体の内側表面に耐水コーティング層を有する液体収納容器の製造方法において、組立後に容器本体となる紙製の容器基材の一面に、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料とした液状のコーティング材を塗布して耐水コーティング層を形成し、耐水コーティング層を形成した容器基材を、耐水コーティング層を内側にして容器形状に組み立てるようにしたため、容器本体が水分に弱い紙製であっても、容器内部に牛乳等の液体を入れても十分な強度を保つことができる容器を形成することができる。
【0085】
また、液体収納容器を構成する素材として、容器本体は紙で構成されており、かつ、耐水コーティング層は、耐水性の高い生分解性の素材である、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたもので構成されているため、優れた耐水性を有すると共に環境に優しい容器を形成することができる。
【0086】
さらに、トウモロコシ蛋白は、トウモロコシから澱粉を製造する際に副産物として産出するものであり、従来は大部分を廃棄していたものであるため、このトウモロコシ蛋白を使って耐水コーティング層を形成することで、製造上の無駄をなくすことができ、環境にも優しく、コスト的にも優れた容器を形成することができる。
【0087】
また、発明の実施の形態1の液体収納容器の製造方法によれば、上記効果に加え、耐水コーティング層を形成した容器基材を容器形状に組み立てる際に、ヒートシール技術を用いて組み立てるようになっており、容器基材の一面に耐水コーティング層を形成するに際し、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加したコーティング材を使用するようにしたため、そのヒートシール性の向上により容器の組み立てをスムーズに行うことができる。
【0088】
また、発明の実施の形態1の液体収納容器の製造方法によれば、上記効果に加え、耐水コーティング層を形成した容器基材を容器形状に組み立てる際に、ヒートシール技術を用いて組み立てるようになっており、容器基材の一面に耐水コーティング層を形成した後、耐水コーティング層の上に、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加した第2コーティング材を使用して第2コーティング層を形成するようにしたため、そのヒートシール性の向上により容器の組み立てをスムーズに行うことができる。
【0089】
また、発明の実施の形態2の液体収納容器によれば、液体収納容器を、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料とした生分解性プラスチックで構成されているものとしたため、容器内部に牛乳等の液体を入れても十分な強度を保つことができる容器とすることができる。
【0090】
また、容器を構成する素材として、耐水性の高い生分解性の素材である、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたもので構成されているため、優れた耐水性を有すると共に環境に優しい容器とすることができる。
【0091】
さらに、トウモロコシ蛋白は、トウモロコシから澱粉を製造する際に副産物として産出するものであり、従来は大部分を廃棄していたものであるため、このトウモロコシ蛋白を使って容器を形成することで、製造上の無駄をなくすことができ、環境にも優しく、コスト的にも優れた容器とすることができる。
【0092】
なお、以上説明した各実施の形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。
【符号の説明】
【0093】
10 液体収納容器
20 容器本体
20A 容器基材
21 内側表面
21A 一面
22 外側表面
22A 他の面
30 耐水コーティング層
30A コーティング材
40 コーティング層
40A コーティング材
50 液体収納容器
60 容器本体
61 底板部
62 周壁部
63 フランジ部
70 蓋材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
紙製の容器本体と、
該容器本体の内側表面を覆う、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料とした耐水コーティング層と、
を有することを特徴とする液体収納容器。
【請求項2】
前記耐水コーティング層に、コーティング状態を安定化させる可塑剤が添加されていることを特徴とする請求項1に記載の液体収納容器。
【請求項3】
前記耐水コーティング層に、前記トウモロコシ蛋白の水への溶出を抑制する化学物質が添加されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体収納容器。
【請求項4】
前記耐水コーティング層の上に、前記トウモロコシ蛋白の水への溶出を抑制する生分解性樹脂を含む第2コーティング層を有することを特徴とする請求項1乃至3の何れか一つに記載の液体収納容器。
【請求項5】
紙製の容器本体の内側表面に耐水コーティング層を有する液体収納容器の製造方法であって、
組立後に前記容器本体となる紙製の容器基材の一面に、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料としたフィルム状のコーティング材を接着して耐水コーティング層を形成し、
該耐水コーティング層を形成した前記容器基材を、前記耐水コーティング層を内側にして容器形状に組み立てることを特徴とする液体収納容器の製造方法。
【請求項6】
紙製の容器本体の内側表面に耐水コーティング層を有する液体収納容器の製造方法であって、
組立後に前記容器本体となる紙製の容器基材の一面に、トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料とした液状のコーティング材を塗布して耐水コーティング層を形成し、
該耐水コーティング層を形成した前記容器基材を、前記耐水コーティング層を内側にして容器形状に組み立てることを特徴とする液体収納容器の製造方法。
【請求項7】
前記耐水コーティング層を形成した前記容器基材を容器形状に組み立てる際に、ヒートシール技術を用いて組み立てるようになっており、
前記容器基材の一面に前記耐水コーティング層を形成するに際し、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加したコーティング材を使用することを特徴とする請求項5又は6に記載の液体収納容器の製造方法。
【請求項8】
前記耐水コーティング層を形成した前記容器基材を容器形状に組み立てる際に、ヒートシール技術を用いて組み立てるようになっており、
前記容器基材の一面に前記耐水コーティング層を形成した後、該耐水コーティング層の上に、ヒートシール性を向上させる化学物質を添加した第2コーティング材を使用して第2コーティング層を形成することを特徴とする請求項5乃至7の何れか一つに記載の液体収納容器の製造方法。
【請求項9】
トウモロコシ蛋白を含む素材を主材料とした生分解性プラスチックで構成されていることを特徴とする液体収納容器。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−254351(P2010−254351A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−107796(P2009−107796)
【出願日】平成21年4月27日(2009.4.27)
【出願人】(592046817)
【Fターム(参考)】