説明

液体吐出ヘッド、画像形成装置、液体吐出ヘッドの洗浄方法

【課題】共通液室内を洗浄するための洗浄工程の簡略化や共通液室内での気泡滞留を防止する。
【解決手段】共通液室部材は、第1部材21と、第2部材22と、第1、第2部材21、22の間に介在する第3部材である弾性部材23とが積層されて構成され、弾性部材23には、内部の共通液室10と外部とを連通する連通穴24が、インクの流れ方(矢印方向)向と直交する方向に設けられ、洗浄を行うときには連通穴24を開いて連通穴24から洗浄液を排出させ、洗浄後は連通穴24を閉じる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は液体吐出ヘッド、画像形成装置、液体吐出ヘッドの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ、ファクシミリ、複写装置、プロッタ、これらの複合機等の画像形成装置として、例えばインク液滴を吐出する記録ヘッドを用いた液体吐出記録方式の画像形成装置としてインクジェット記録装置などが知られている。この液体吐出記録方式の画像形成装置は、記録ヘッドからインク滴を、搬送される用紙に対して吐出して、画像形成(記録、印字、印写、印刷も同義語で使用する。)を行なうものであり、記録ヘッドが主走査方向に移動しながら液滴を吐出して画像を形成するシリアル型画像形成装置と、記録ヘッドが移動しない状態で液滴を吐出して画像を形成するライン型ヘッドを用いるライン型画像形成装置がある。
【0003】
なお、本願において、「画像形成装置」は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等の媒体にインクを着弾させて画像形成を行う装置を意味し、また、「画像形成」とは、文字や図形等の意味を持つ画像を媒体に対して付与することだけでなく、パターン等の意味を持たない画像を媒体に付与すること(単に液滴を媒体に着弾させること)をも意味する。また、「インク」とは、インクと称されるものに限らず、記録液、定着処理液、液体、樹脂などと称されるものなど、画像形成を行うことができるすべての液体の総称として用いる。また、「用紙」とは、材質を紙に限定するものではなく、上述したOHPシート、布なども含み、インク滴が付着されるものの意味であり、被記録媒体、記録媒体、記録紙、記録用紙などと称されるものを含むものの総称として用いる。また、「画像」とは平面的なものに限らず、立体的に形成されたものに付与された画像、また立体自体を三次元的に造形して形成された像も含まれる。
【0004】
液体吐出ヘッドとしては、液滴を吐出する複数のノズル、各ノズルが連通する複数の個別液室(個別流路)と、各個別液室に液体(インク)を供給する共通液室とを備えるものがある。
【0005】
ところで、ヘッドを組み立てるとき、ヘッド内部の液室などの流路に付着したゴミなどの異物を除去するためにヘッド内を洗浄する洗浄工程が行われる。つまり、組み立て工程で付着したゴミなどの異物がヘッド内に残存したままであると、ノズルの目詰まりなどを生じて滴吐出不良が発生することから、組み立て工程の終盤にそれまでの工程で付着した異物を除去するヘッド内洗浄を行うようにしている。
【0006】
このように、洗浄工程をヘッド組み立て工程の終盤で行うと、この段階でヘッドはほぼ完成に近い形態となっており、洗浄液の排出を行う排出経路の確保が必要になる。
【0007】
そこで、従来、例えば、予め洗浄用ポートとして専用に小さな開口部を設けたフレーム部材を用いて、洗浄後に洗浄用ポートに対しステンレス製の球状栓を嵌め込み、さらにその後熱カシメを行うことによって、洗浄用ポートを塞ぐことが行われている。
【0008】
また、共通液室部材を分割したものもある。この場合、液室は洗浄作業後にそれぞれの液室形成部材同士をつなぎ合わせる必要があることから、各々の部品(部材)を接合する開口部面積は洗浄後、再びゴミなどが混入しないよう液室断面積より小さく設けるものもある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−021996号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、上述したように、ステンレス製の球状栓の圧入・熱カシメを行う構成にあっては、部品点数の増加によるコストの増大、圧入・カシメの工数増加、更には球状栓に付着したゴミなどの異物を除去する必要があるなどの課題がある。
【0011】
また、共通液室部材を分割する構成にあっては、洗浄後に再び開口部からのゴミ混入を防止するために開口面積を小さくする必要がある。開口部はヘッドの共通液室内に設けられ、タンクからのインクをノズルへ供給する途中経路の一部を形成することから、開口面積が絞られた箇所が存在する場合、その分流体抵抗が大きくなって滴吐出時のインク供給が不足するおそれがある。
【0012】
また、完成したヘッドに対するインク初期充填時においては、絞られた領域は止水領域に該当するため、流路内へのインク充填を実現するために最適な充填条件を見つけ出すには大きな労力を要する。
【0013】
さらには、インク初期充填が完了後、流路内部の僅かな残存気泡、滴吐出や回復動作により消費されたインク充填のためにタンクから供給されるインク中に含まれる気泡がこの絞られた箇所に滞留してしまい、やがて滞留した気泡がノズルまで到達するとインクの不吐出を引き起こすという課題がある。
【0014】
本発明は上記の課題に鑑みてなされたものであり、共通液室内での流体抵抗の増加による液体供給不足や気泡の滞留を防止するとともに、ヘッド組み立て時の洗浄工程を簡略化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題を解決するため、本発明に係る液体吐出ヘッドは、
液滴を吐出する複数のノズルがそれぞれ連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を形成する共通液室部材を有し、
前記共通液室部材は、複数の部材で構成され、
前記複数の部材の内、少なくとも1つの部材は、弾性を有する弾性部材であり、
前記弾性部材には、前記共通液室と外部とを連通する連通穴が設けられている
構成とした。
【0016】
ここで、前記弾性部材の連通穴は加圧状態で閉塞されている構成とできる。
【0017】
また、前記弾性部材は前記共通液室部材を構成する他の部材と一体成型されている構成とできる。
【0018】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えたものである。
【0019】
本発明に係る液体吐出ヘッドの洗浄方法は、
本発明に係る液体吐出ヘッドを洗浄する液体吐出ヘッドの洗浄方法であって、
前記共通液室部材の弾性部材の連通穴を開いた状態にし、
前記共通液室内に洗浄液を供給して前記連通穴から排出させ、
洗浄終了後前記共通液室部材の弾性部材の連通穴を閉じた状態にする
構成とした。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る液体吐出ヘッドによれば、共通液室部材は、複数の部材で構成され、複数の部材の内、少なくとも1つの部材は、弾性を有する弾性部材であり、弾性部材には、共通液室と外部とを連通する連通穴が設けられている構成としたので、ヘッド組み立て時の洗浄工程では弾性部材の連通穴を開いた状態にして洗浄を行うことができて洗浄工程や洗浄設備を簡略化することができ、また、完成時には弾性部材の連通穴を閉じた状態にすることで、共通液室内の流体抵抗の増大や気泡の滞留が防止されて、初期充填を容易に行うことができ、気泡による滴吐出不良を低減できる。
【0021】
本発明に係る画像形成装置は、本発明に係る液体吐出ヘッドを備えているので、安定した滴吐出を行って高画質画像を形成できる。
【0022】
本発明に係る液体吐出ヘッドの洗浄方法によれば、共通液室部材の弾性部材の連通穴を開いた状態にし、共通液室内に洗浄液を供給して連通穴から排出させ、洗浄終了後共通液室部材の弾性部材の連通穴を閉じた状態にする構成としたので、洗浄工程や洗浄設備を簡略化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る液体吐出ヘッドの第1実施形態におけるヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)に沿う断面説明図である。
【図2】本発明に係る液体吐出ヘッドの第2実施形態におけるヘッドの共通液室部材部分の要部断面説明図である。
【図3】(a)は各実施形態における共通液室部材の部材構成の異なる例の説明に供する断面説明図、(b)は側面説明図である。
【図4】(a)は部品の一体成型の第1例の説明に供する断面説明図、(b)は同じく側面説明図である。
【図5】(a)は部品の一体成型の第2例の説明に供する断面説明図、(b)は同じく側面説明図である。
【図6】本発明に係る液体吐出ヘッドの洗浄方法の第1実施形態の説明に供する断面説明図である。
【図7】図6に続く工程の断面説明図である。
【図8】図7に続く工程の断面説明図である。
【図9】本発明に係る液体吐出ヘッドの洗浄方法の第2実施形態の説明に供する断面説明図である。
【図10】本発明に係る液体吐出ヘッドの洗浄方法の第3実施形態の説明に供する断面説明図である。
【図11】本発明に係る液体吐出ヘッドの第3実施形態における気泡排出方法の説明に供する共通液室部材部分の断面説明図である。
【図12】図11に続く工程の断面説明図である。
【図13】(a)は各実施形態に係る液体吐出ヘッドにおける弾性部材及び連通穴の形状の第1例の説明に供する断面説明図、(b)は側面説明図である。
【図14】(a)は同じく第2例の説明に供する断面説明図、(b)は側面説明図である。
【図15】(a)は同じく第3例の説明に供する断面説明図、(b)は側面説明図である。
【図16】(a)は同じく第4例の説明に供する断面説明図、(b)は側面説明図である。
【図17】(a)は同じく第5例の説明に供する断面説明図、(b)は側面説明図である。
【図18】本発明に係る画像形成装置の機構部を説明する側面説明図である。
【図19】同機構部の要部平面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。まず、本発明に係る液体吐出ヘッドの第1実施形態について図1を参照して説明する。なお、図1は同実施形態におけるヘッドのノズル配列方向と直交する方向(液室長手方向)に沿う断面説明図である。
【0025】
この液体吐出ヘッドは、流路板(流路部材、液室基板)1と、流路板1の一面に接合した振動板部材2と、流路板1の他面に接合したノズル板3とを有し、これらによって液滴(液体の滴)を吐出する複数のノズル4がそれぞれ連通する個別流路としての複数の液室(加圧液室、圧力室、加圧室、流路などとも称される。)6、液室6にインクを供給する供給路を兼ねた流体抵抗部7、この流体抵抗部7を介して液室6と連通する液体導入部8を形成し、液体導入部8に振動板部材2に形成した供給口9を介して共通液室部材であるフレーム部材20に形成した共通液室10からインクを供給する。
【0026】
振動板部材2の薄肉部である各振動領域(ダイアフラム部)2Aにはアクチュエータ手段(駆動手段、駆動素子、圧力発生手段などともいう。)としての積層型圧電部材12が接合され、積層型圧電部材12はベース部材13に接合している。なお、積層型圧電部材12は、図示しないが液室短手方向にハーフカットダイシングによって溝を加工することで柱状に形成されている。
【0027】
また、圧電部材12には駆動信号を与えるための可撓性を有する配線基板としてのFPC15が接続されている。
【0028】
さらに、これらの圧電部材12、ベース部材13及びFPC15などで構成される圧電アクチュエータの外周側には複数の部材からなる共通液室部材20を配設している。そして、この共通液室部材20には前述した共通液室10を形成している。また、この共通液室部材20の上流側には外部から共通液室10に供給するインクをろ過するフィルタ31を有するフィルタユニット32が設けられている。
【0029】
このように構成した液体吐出ヘッドにおいては、例えば圧電部材12に印加する電圧を基準電位から下げることによって圧電部材12が収縮し、振動板部材2の振動領域2Aが下降して液室6の容積が膨張することで、液室6内に例えばが流入し、その後圧電部材12に印加する電圧を上げて積層方向に伸長させ、振動領域2Aをノズル4方向に変形させて液室6の体積を収縮させることにより、液室6内のインクが加圧され、ノズル4からインク滴が吐出される。
【0030】
そして、圧電部材12に印加する電圧を基準電位に戻すことによって振動板領域2Aが初期位置に復元し、液室6が膨張して負圧が発生するので、このとき、共通液室10から液室6内にインクが充填される。そこで、ノズル4のメニスカス面の振動が減衰して安定した後、次の液滴吐出のための動作に移行する。
【0031】
なお、このヘッドの駆動方法については上記の例(引き−押し打ち)に限るものではなく、駆動波形の与えた方によって引き打ちや押し打ちなどを行うこともできる。
【0032】
次に、この液体吐出ヘッドにおける共通液室部材20の詳細について説明する。
共通液室部材20は、第1部材21と、第2部材22と、第1、第2部材21、22の間に介在する第3部材である弾性部材23とが積層されて構成されている。第1部材21及び第2部材22は、例えばエポキシ系樹脂或いはポリフェニレンサルファイトなどの熱可塑性樹脂の射出成形により形成している。また、弾性部材23はエラストマーで形成されている。
【0033】
そして、弾性部材23には、内部の共通液室10と外部とを連通する連通穴24が、インクの流れ方(矢印方向)向と直交する方向に設けられている。
【0034】
次に、この液体吐出ヘッドの組み立て時の洗浄工程について説明する。
共通液室10内の洗浄工程は、組み立て作業工程で付着したゴミ除去を目的としているため、この洗浄工程はヘッド組立工程の後半で行われる。この段階では前述したフィルタユニット32が組み付けられている。
【0035】
そこで、ノズル板3のノズル面(ノズル4が形成された面)をキャップ部材でキャッピングし、キャップ部材内に洗浄液を高圧で供給することにより、ノズル4からヘッド内流路に洗浄液を加圧注入する。注入された洗浄液は、ノズル4、加圧液室(個別液室)6などを通じて共通液室10内に到達し、共通液室10内が洗浄液で洗浄され、弾性部材23の形成された連通穴24から外部に排出され、この洗浄液の排出とともに共通液室10内に付着していたゴミなどの異物も排出される。
【0036】
このように、共通液室部材は、複数の部材で構成され、複数の部材の内、少なくとも1つの部材は、弾性を有する弾性部材であり、弾性部材には、共通液室と外部とを連通する連通穴が設けられている構成とすることで、ヘッド組み立て時の洗浄工程では弾性部材の連通穴を開いた状態にして洗浄を行うことができて洗浄工程や洗浄設備を簡略化することができる。
【0037】
また、完成時には、図示しない手段により弾性部材を押圧し、連通穴を閉じた状態にすることができる。このように洗浄時に洗浄液を外部に流出することができ、かつ容易に連通穴24を閉じることができるため、共通液室部材をつなぎ合わせるときに混入するゴミを防ぐために共通液室内に開口面積を絞った箇所を設ける必要がない。よって、共通液室内の流体抵抗の増大や気泡の滞留が防止されて、初期充填を容易に行うことができ、気泡による滴吐出不良を低減できる。
【0038】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドの第2実施形態について図2を参照して説明する。なお、図2は同実施形態におけるヘッドの共通液室部材部分の要部断面説明図である。
本実施形態では、前記第1実施形態において、第1部材21の外周面に爪部25が一体に形成され、第2部材22の外周面には爪部25を係止する突起部26a、26bがインクの流れ方向に間隔をおいて一体に形成されている。
【0039】
このように構成したので、図2(a)に示すように、第1部材21の爪部25が第2部材22の突起部26aに係止されている状態で、第1部材21及び第2部材22を上下から(第1部材21と第2部材23とで弾性部材23を押し潰す方向から)加圧することで、第1部材21と第2部材23とで弾性部材23が押し潰され、図2(b)に示すように爪部25が突起部26bを乗り越えて、弾性部材23の連通穴24が閉じるまで押し潰された状態で、図2(c)に示すように爪部23が突起部23bに係止されて、連通穴24が閉じた状態が保持される。
【0040】
このようにして、洗浄工程を終了した後に第1、第2部材21、22を加圧することで弾性部材23の連通穴24を塞ぐことにより、共通液室10内に流入するインクが連通穴18から排出されることがなくなる。そして、共通液室10の十分な開口を形成することができて、共通液室内の流体抵抗の増大や気泡の滞留が防止されているので、初期充填を容易に行うことができ、また、気泡の滞留による滴吐出不良も低減される。
【0041】
次に、上記各実施形態における共通液室部材の部材構成の異なる例について図3を参照して説明する。なお、図3は同共通液室部材の構成部品の組み立て前の状態を示す断面説明図である。
【0042】
図3(a)の例は、第1部材21、第2部材22及び第3部材である弾性部材23を、それぞれ別部品として3部品構成としたものである。
【0043】
図3(b)の例は、第1部材21と、第2部材22及び第3部材である弾性部材23を一体にした部材(部品)120との2部品構成としたものである。
【0044】
図3(c)の例は、第1部材21と及び第3部材である弾性部材23を一体にした部材(部品)121と、第2部材22との2部品構成としたものである。
【0045】
ここで、共通液室部材20の構成部品点数は組立て工数や部品管理の観点より、少ないほうが好ましく、図3(a)の構成よりも図3(b)、図3(c)の構成の方が好ましい。
【0046】
次に、部品の一体成型の異なる例について図4及び図5を参照して説明する。なお、各図(a)は同一体成型の説明に供する断面説明図、(b)は同じく側面説明図である。ここでは、上記図3(b)の2部品構成の例で説明する。
【0047】
図4に示す例は、予め成型した第1部材21を次工程で弾性部材23としてのゴムを成型するために、第1部材21をゴム型にセット・加硫工程を経て、第1部材21と弾性部材23を一体部品とした形態である。
【0048】
図5に示す例は、第1部材21と弾性部材23を2色成型で同時に成型した例である。2色成型の場合、第1部材21を成型後、第1部材21用のキャビティと弾性部材23用のキャビティが入れ替わり再度射出を行って成型を行う。このため、2色成型で成型可能なよう、上下抜きの型構造をした形態となっている。
【0049】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドの洗浄方法の第1実施形態について図6ないし図8を参照して説明する。なお、図6及び図7は同洗浄方法の説明に供する断面説明図である。
図6(a)に示すように、第1部材21の爪部25は第2部材22の突起部26bに係止されて弾性部材23が押し潰されている状態となっている。この状態の直前までは共通液室10内は外気と連通しており、また組立ての途中工程で部品間の擦れなどによりゴミが混入しているが、共通液室部材20内の共通液室10内にはこれ以上外部からのゴミが入り込まない状態となっている。
【0050】
また、この段階で図示しないインクタンクとの接続ポート側の経路途中にはフィルタユニット32が組み付けられており、インクタンク側からのゴミなどは混入しない状態となっている。
【0051】
そこで、図6(b)に示すように、加圧キャップ51をノズル面3aに密着させて封止する。この加圧キャップ51には加圧ポンプ52が接続されている。
【0052】
同時に、第1部材21の爪部25を第2部材22の突起部26bから突起部26aに架け替えることで、弾性部材23の復元力によって連通穴24が開かれて、共通液室10内が外気(外部)と連通される。
【0053】
そして、図7(a)に示すように、弾性部材23の連通穴24に廃液チューブ53を接続し、加圧ポンプ52によって洗浄液を加圧注入する。これにより、洗浄液は、ノズル4からヘッド内注入されて、加圧液室6などを経て共通液室10に注入され、共通液室10内を洗浄した洗浄廃液は廃液チューブ53を介して回収される。
【0054】
洗浄液での洗浄後、加圧キャップ51から空気を加圧注入することにより共通液室10内に洗浄廃液が残存しないよう回収する。
【0055】
その後、図7(b)に示すように、洗浄工程を終了するため、廃液チューブ53を取り外し、洗浄された共通液室10内へのゴミ混入を防止するため、直ちに、第1部材21の爪部25を第2部材22の突起部26aから突起部26bに架け替えることで、弾性部材23を加圧して押し潰すことで連通穴24を閉じる。
【0056】
そして、図8に示すように、加圧キャップ部材51を取り外して、一連の洗浄工程を終了する。
【0057】
このように、共通液室部材の弾性部材の連通穴を開いた状態にし、共通液室内に洗浄液を供給して連通穴から排出させ、洗浄終了後共通液室部材の弾性部材の連通穴を閉じた状態にする構成とすることで、洗浄工程や洗浄設備を簡略化することができる。連通穴24を一般的な栓状のもので塞ぐ場合、その栓状の部材も十分に洗浄する必要があり、またその部材を取り付けることで新たにゴミが発生する場合がある。しかし、本実施形態のように洗浄した部分を押圧する構成であれば、新たにゴミが発生することはなく、例えゴミが発生したとしても弾性部材23により押圧されて埋め込まれるため、共通液室内に侵入することはない。
【0058】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドの洗浄方法の第2実施形態について図9を参照して説明する。なお、図9は同洗浄方法の説明に供する断面説明図である。
上記第1実施形態では、ノズル側から洗浄液を加圧注入しているので、洗浄液はノズル4から連通穴24へ向かって流れる。このとき、共通液室10内全体は洗浄液で満たされるが、共通液室10内の連通穴24より流路の上流側に相当する領域では洗浄液の流れが遅くなる(小さい)。そのため、共通液室10内の連通穴24より流路の下流側に相当する領域に比べて上流側に相当する領域の洗浄効果が弱くなるおそれがある。
【0059】
そこで、本実施形態では、共通液室10を洗浄するときに、加圧キャップ51、51でフィルタユニット32の開口部を密閉して、フィルタユニット32側(共通液室10の上流側)から洗浄液の加圧注入を行い、洗浄液の廃液を連通穴24に接続された廃液チューブ53より回収するようにしている。
【0060】
このようにすることで、共通液室10内の連通穴24より流路上流側に相当する領域の洗浄液の流れは小さくならず、確実に共通液室10内の連通穴24より流路上流側に相当する領域を洗浄することができる。
【0061】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドの洗浄方法の第3実施形態について図10を参照して説明する。なお、図10は同洗浄方法の説明に供する断面説明図である。
本実施形態は、前記第1実施形態及び第2実施形態の洗浄方法を組み合わせて、洗浄液の注入をノズル4とフィルタユニット32の両方から同時に行うことによって、共通液室10内全体に洗浄液の流れを生じさせるようにしたもので、これにより、より効率的に洗浄を行うことができる。なお、より洗浄力を向上させるためには、2つのポンプ52を交互に駆動し、共通液室10内の洗浄液に脈動を生じさせることが好ましい。
【0062】
なお、洗浄方法の手順は前記第1実施形態で説明したと同様である。
【0063】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドの第3実施形態について図11及び図12を参照して説明する。なお、図11及び図12は同実施形態における気泡排出方法の説明に供する共通液室部材部分の断面説明図である。
共通液室10内に空気(気泡)が混入した場合、気泡が加圧液室6やノズル4に侵入すると、滴吐出が不安定になったり、滴吐出ができなくなったりするので、共通液室10内にある一定量以上の空気が混入した場合には速やかに気泡を排出除去する必要がある。なお、共通液室10内への空気混入は、図示しないインクタンク内に含まれる気泡がインクと一緒に共通液室10内に供給されることによる混入や、外気より共通液室部材20(弾性部材23など)を透過して混入することなどが原因として生じる。
【0064】
そこで、ここでは、第2部材22の側壁面に気泡検知手段55を設けている。気泡検知手段55は、2本の電極から構成されており、これら電極間の通電(導電性であるインクが電極を浸している状態)の有無を判別することによって、気泡の有無を検知することができる。
【0065】
ここで、装置本体の制御部が気泡検知手段55の通電状態から共通液室10内への空気混入を検知したとき、例えば、図11(a)に示すように、共通液室10内にインク領域61と空気領域62が生じた場合、装置本体はヘッドをメンテナンス位置(維持回復位置)に移動させる。メンテナンス位置では、図示しないが、弾性部材23の連通穴24を開閉する開閉手段が備えられており、これにより弾性部材23の連通穴24を開放する。
【0066】
そして、図示しない加圧手段によって共通液室10内へのインクの加圧供給を行うことで、図11(b)に示すように、共通液室10内のインク液面が上昇するので、気泡検知手段55の電極部がインクに浸漬したときに、インク供給を停止する。
【0067】
その後、図12に示すように、図示しない開閉手段によって第1部材22と第2部材23とを相互に加圧して弾性部材23を押し潰すことで弾性部材23の連通穴24を閉じることで、気泡排出動作を完了する。
【0068】
なお、インク供給の停止位置は連通穴よりも下方となるので、連通穴24の位置は共通液室10内に混入する空気を極力排出するためには、共通液室10内の上方に配置することが好ましい。また、このインク供給動作を前述の廃液チューブ53を取り付けた状態で行うことで、連通穴24の高さまでインクを充填することができ、より空気の残留を少なくできる。
【0069】
次に、上記各実施形態に係る液体吐出ヘッドにおける弾性部材及び連通穴の形状の異なる例について図13ないし図17を参照して説明する。なお、各図(a)は断面説明図、(b)は側面説明図である。
【0070】
図13の第1例は、連通穴24を台形状とした例、図14の第2例は連通穴24を矩形状とした例であり、弾性部材23の厚み(液体の流れの方向の幅)は連通穴24の部分で薄くなっている。つまり、弾性部材23には連通穴24が形成されている厚みの薄い部分23aと連通穴24が形成されていない厚みの厚い部分23bとが生じている。
【0071】
図15の第3例は、弾性部材23の厚みを連通穴24に対応する部分を含めて同じにした例である。つまり、弾性部材23は連通穴24を形成する部分に凸部23cを形成することで、連通穴24を形成していない部分と同じ厚みにしている。
【0072】
図16の第4例も、弾性部材23の厚みを連通穴24に対応する部分を含めて同じにした例である。つまり、弾性部材23は連通穴24を形成する部分に凸部23c、23dを形成することで、連通穴24を形成していない部分と同じ厚みにしている。
【0073】
図17の第5例は、弾性部材23の厚みを連通穴24に対応する部分を連通穴24を形成していない部分より厚くした例である。つまり、弾性部材23は連通穴24を形成する部分に凸部23eを形成することで、連通穴24を形成していない部分より厚くしている。
【0074】
これらの第1ないし第5例において、第1、第2例のような形状の場合、肉厚箇所の潰し量が大きくなり、連通穴24を隙間なく閉じることが難しい場合がある。これに対し、第3例、第4例のように連通穴24の領域の厚みをそれ以外の領域の厚みと同じすることによって、あるいは、第5例のように連通穴24の領域の厚みをそれ以外の領域の厚みより厚くすることによって、加圧による連通穴24を確実に閉じることができる。
【0075】
次に、本発明に係る液体吐出ヘッドを備える本発明に係る画像形成装置の一例について図18及び図19を参照して説明する。なお、図18は同装置の機構部の側面説明図、図19は同じく要部平面説明図である。
この画像形成装置はシリアル型画像形成装置であり、左右の側板221A、221Bに横架したガイド部材である主従のガイドロッド231、232でキャリッジ233を主走査方向に摺動自在に保持し、図示しない主走査モータによってタイミングベルトを介して矢示方向(キャリッジ主走査方向)に移動走査する。
【0076】
このキャリッジ233には、イエロー(Y)、シアン(C)、マゼンタ(M)、ブラック(K)の各色のインク滴を吐出するための本発明に係る液体吐出ヘッドからなる記録ヘッド234を複数のノズルからなるノズル列を主走査方向と直交する副走査方向に配列し、インク滴吐出方向を下方に向けて装着している。
【0077】
記録ヘッド234は、それぞれ2つのノズル列を有する液体吐出ヘッド234a、234bを1つのベース部材に取り付けて構成したもので、一方のヘッド234aの一方のノズル列はブラック(K)の液滴を、他方のノズル列はシアン(C)の液滴を、他方のヘッド234bの一方のノズル列はマゼンタ(M)の液滴を、他方のノズル列はイエロー(Y)の液滴を、それぞれ吐出する。なお、ここでは2ヘッド構成で4色の液滴を吐出する構成としているが、各色毎の液体吐出ヘッドを備えることもできる。
【0078】
また、キャリッジ233には、記録ヘッド234のノズル列に対応して各色のインクを供給するためのサブタンク235a、235b(区別しないときは「サブタンク235」という。)を搭載している。このサブタンク235には各色の供給チューブ236を介して、供給ユニット224によって各色のインクカートリッジ210から各色のインクが補充供給される。
【0079】
一方、給紙トレイ202の用紙積載部(圧板)241上に積載した用紙242を給紙するための給紙部として、用紙積載部241から用紙242を1枚ずつ分離給送する半月コロ(給紙コロ)243及び給紙コロ243に対向し、摩擦係数の大きな材質からなる分離パッド244を備え、この分離パッド244は給紙コロ243側に付勢されている。
【0080】
そして、この給紙部から給紙された用紙242を記録ヘッド234の下方側に送り込むために、用紙242を案内するガイド部材245と、カウンタローラ246と、搬送ガイド部材247と、先端加圧コロ249を有する押さえ部材248とを備えるとともに、給送された用紙242を静電吸着して記録ヘッド234に対向する位置で搬送するための搬送手段である搬送ベルト251を備えている。
【0081】
この搬送ベルト251は、無端状ベルトであり、搬送ローラ252とテンションローラ253との間に掛け渡されて、ベルト搬送方向(副走査方向)に周回するように構成している。また、この搬送ベルト251の表面を帯電させるための帯電手段である帯電ローラ256を備えている。この帯電ローラ256は、搬送ベルト251の表層に接触し、搬送ベルト251の回動に従動して回転するように配置されている。この搬送ベルト251は、図示しない副走査モータによってタイミングを介して搬送ローラ252が回転駆動されることによってベルト搬送方向に周回移動する。
【0082】
さらに、記録ヘッド234で記録された用紙242を排紙するための排紙部として、搬送ベルト251から用紙242を分離するための分離爪261と、排紙ローラ262及び排紙コロ263とを備え、排紙ローラ262の下方に排紙トレイ203を備えている。
【0083】
また、装置本体の背面部には両面ユニット271が着脱自在に装着されている。この両面ユニット271は搬送ベルト251の逆方向回転で戻される用紙242を取り込んで反転させて再度カウンタローラ246と搬送ベルト251との間に給紙する。また、この両面ユニット271の上面は手差しトレイ272としている。
【0084】
さらに、キャリッジ233の走査方向一方側の非印字領域には、記録ヘッド234のノズルの状態を維持し、回復するための維持回復機構281を配置している。この維持回復機構281には、記録ヘッド234の各ノズル面をキャピングするための各キャップ部材(以下「キャップ」という。)282a、282b(区別しないときは「キャップ282」という。)と、ノズル面をワイピングするためのブレード部材であるワイパーブレード283と、増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け284などを備えている。
【0085】
また、キャリッジ233の走査方向他方側の非印字領域には、記録中などに増粘したインクを排出するために記録に寄与しない液滴を吐出させる空吐出を行うときの液滴を受ける空吐出受け288を配置し、この空吐出受け288には記録ヘッド234のノズル列方向に沿った開口部289などを備えている。
【0086】
このように構成したこの画像形成装置においては、給紙トレイ202から用紙242が1枚ずつ分離給紙され、略鉛直上方に給紙された用紙242はガイド245で案内され、搬送ベルト251とカウンタローラ246との間に挟まれて搬送され、更に先端を搬送ガイド247で案内されて先端加圧コロ249で搬送ベルト251に押し付けられ、略90°搬送方向を転換される。
【0087】
このとき、帯電ローラ256に対してプラス出力とマイナス出力とが交互に繰り返すように、つまり交番する電圧が印加され、搬送ベルト251が交番する帯電電圧パターン、すなわち、周回方向である副走査方向に、プラスとマイナスが所定の幅で帯状に交互に帯電されたものとなる。このプラス、マイナス交互に帯電した搬送ベルト251上に用紙242が給送されると、用紙242が搬送ベルト251に吸着され、搬送ベルト251の周回移動によって用紙242が副走査方向に搬送される。
【0088】
そこで、キャリッジ233を移動させながら画像信号に応じて記録ヘッド234を駆動することにより、停止している用紙242にインク滴を吐出して1行分を記録し、用紙242を所定量搬送後、次の行の記録を行う。記録終了信号又は用紙242の後端が記録領域に到達した信号を受けることにより、記録動作を終了して、用紙242を排紙トレイ203に排紙する。
【0089】
このように、この画像形成装置では本発明に係る液体吐出ヘッドを記録ヘッドとして備えているので、安定した滴吐出特性が得られ、安定して高画質画像を形成することができる。
【0090】
なお、上記実施形態では本発明の画像形成装置としてシリアル型画像形成装置を例に説明しているが、ライン型画像形成装置にも同様に実施することができる。また、狭義のインク以外の液体や定着処理液などを用いる画像形成装置にも適用することができる。
【符号の説明】
【0091】
1 流路板
2 振動板部材
3 ノズル板
4 ノズル
6 液室
10 共通液室
12 圧電部材
20 共通液室部材
21 第1部材
22 第2部材
23 第3部材(弾性部材)
24 連通穴
25 爪部
26a、26b 突起部
233…キャリッジ
234…記録ヘッド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液滴を吐出する複数のノズルがそれぞれ連通する複数の液室に液体を供給する共通液室を形成する共通液室部材を有し、
前記共通液室部材は、複数の部材で構成され、
前記複数の部材の内、少なくとも1つの部材は、弾性を有する弾性部材であり、
前記弾性部材には、前記共通液室と外部とを連通する連通穴が設けられている
ことを特徴とする液体吐出ヘッド。
【請求項2】
前記弾性部材の連通穴は加圧状態で閉塞されていることを特徴とする請求項1に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項3】
前記弾性部材は前記共通液室部材を構成する他の部材と一体成型されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の液体吐出ヘッド。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを備えていることを特徴とする画像形成装置。
【請求項5】
請求項1ないし3のいずれかに記載の液体吐出ヘッドを洗浄する液体吐出ヘッドの洗浄方法であって、
前記共通液室部材の弾性部材の連通穴を開いた状態にし、
前記共通液室内に洗浄液を供給して前記連通穴から排出させ、
洗浄終了後前記共通液室部材の弾性部材の連通穴を閉じた状態にする
ことを特徴とする液体吐出ヘッドの洗浄方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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