説明

液体吐出装置、及び、液体吐出方法

【課題】 搬送される媒体から舞う粉体等によるノズルの目詰まりを安価な方法にて防止する液体吐出装置等を提供する。
【解決手段】 搬送方向に搬送される媒体に液体を吐出するノズルを備えたヘッドと、前記ヘッドと対向させて設けられ、前記媒体が沿わされる樹脂製のプラテンと、前記プラテンの前記媒体と接触する接触部に無色の液体を供給する無色液体供給部と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吐出装置、及び、液体吐出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
液体吐出装置としては、例えば、液体としてのインクを吐出して、搬送される媒体上に画像を形成するインクジェット方式の所謂インクジェットプリンターが知られており、また、このインクジェットプリンターを用いて画像を形成する方法も知られている。このようなインクジェットプリンターには、媒体の下面を支持するプラスチック製のプラテンが備えられており、インクを吐出する印字ヘッドがプラテンと対向するように設けられている(例えば、特許文献1参照)。そして、搬送される媒体とプラテンとの摩擦により生じる静電気により、媒体が通過する際に粉体等が舞って印字ヘッドに設けられたノズルが目詰まりする場合があるので、ノズルが目詰まりしないようにプラテンには、帯電防止処理が施されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−289290号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
インクジェットプリンターにて良好な画像を形成するためには、搬送される媒体とヘッドとの距離を適切に保ち、媒体を滑らかに搬送する必要がある。このため、媒体の搬送経路をなすプラテンは、媒体をプラテンに沿わせてヘッドとの距離を適切に保ため、プラテンの下方から媒体を吸引したり、また、搬送時の摩擦抵抗が小さくなるようにリブ等が設けられるなど形状が複雑である。このように形状が複雑なプラテンを帯電防止処理するために、導電性物質が混入された樹脂にて形成したり、静電防止塗料を表面に塗布すると、コストが高騰する虞があるという課題がある。また、プラテンを金属にて製造すると、複雑な形状のため加工が難しく更にコストが高騰する虞があるという課題がある。
【0005】
本発明は、かかる課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、搬送される媒体から舞う粉体等によるノズルの目詰まりを安価な方法にて防止する液体吐出装置、及び、液体吐出方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するための主たる発明は、
搬送方向に搬送される媒体に液体を吐出するノズルを備えたヘッドと、
前記ヘッドと対向させて設けられ、前記媒体が沿わされる樹脂製のプラテンと、
前記プラテンの前記媒体と接触する接触部に無色の液体を供給する無色液体供給部と、
を有することを特徴とする液体吐出装置である。
【0007】
本発明の他の特徴については、本明細書の記載及び添付図面により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施形態におけるインクジェットプリンターの斜視図である。
【図2】本実施形態におけるインクジェットプリンターの内部側面図である。
【図3】ヘッドの構成の説明図である。
【図4】本実施形態におけるプラテンユニットの斜視図である。
【図5】本実施形態におけるプラテンユニットを示す上面図である。
【図6】図5におけるA−A断面図である。
【図7】プラテンに小孔が設けられていないときの紙粉の状態を説明する図である。
【図8】小孔とグリセリンが含浸されたスポンジが設けられているときの紙粉の状態を説明する図である。
【図9】無色液体供給部の他の実施形態を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書の記載及び添付図面により、少なくとも、以下の事項が明らかになる。すなわち、
搬送方向に搬送される媒体に液体を吐出するノズルを備えたヘッドと、
前記ヘッドと対向させて設けられ、前記媒体が沿わされる樹脂製のプラテンと、
前記プラテンの前記媒体と接触する接触部に無色の液体を供給する無色液体供給部と、
を有することを特徴とする液体吐出装置である。
【0010】
このような液体吐出装置によれば、プラテンは、樹脂製なので複雑な形状であっても容易にかつ安価に製造することが可能である。また、搬送される媒体が沿わされるプラテンの媒体と接触する接触部に無色の液体を供給する無色液体供給部が設けられているので、搬送される媒体が接触部と接触すると湿潤される。このため、プラテンが樹脂製であっても、媒体との摩擦による静電気の発生を防止することが可能である。このため、搬送される媒体から粉体等が舞うことを防止することが可能であり、ヘッドに設けられたノズルの、粉体等による目詰まりの発生を安価に抑えることが可能である。このとき、接触部に供給される液体は透明なので、供給された液体により媒体が汚れることはない。
【0011】
かかる液体吐出装置であって、
前記プラテンの前記接触部は、上下方向に貫通する小孔を有し、前記小孔の下には前記無色の液体を染み込ませた無色液体含浸部材が設けられており、
前記無色液体含浸部材の前記無色の液体が毛管現象により前記小孔から前記接触部に供給されることが望ましい。
【0012】
このような液体吐出装置によれば、接触部が有する上下方向に貫通する小孔を通して、小孔の下に設けられた、無色の液体を染み込ませた無色液体含浸部材の無色の液体が、毛管現象により小孔から接触部に供給されるので、簡単な構造により接触部を湿潤させることが可能である。
【0013】
かかる液体吐出装置であって、
前記ヘッドは、前記無色の液体を吐出する無色液体吐出ノズルを備え、
前記無色液体吐出ノズルから前記接触部に前記無色の液体が吐出されて前記接触部に前記無色の液体が供給されることが望ましい。
【0014】
このような液体吐出装置によれば、搬送される媒体は、媒体に液体を吐出するノズルを備えたヘッドが備える無色液体吐出ノズルから無色の液体が吐出された接触部に接触するので、媒体に吐出す液体と同様にヘッドから無色の液体を吐出させて容易に接触部に無色の液体を供給することが可能である。
【0015】
かかる液体吐出装置であって、
前記接触部は、リブ状をなしていることが望ましい。
【0016】
このような液体吐出装置によれば、接触部はリブ状をなしているので、媒体とプラテンとの接触面積を小さくすることが可能であり、より静電気の発生を抑えることが可能である。また、無色の液体が供給される接触部はリブ状なので、供給する無色の液体の量を少なく抑えることが可能である。
【0017】
かかる液体吐出装置であって、
前記無色の液体には、グリセリンが含まれていることが望ましい。
【0018】
このような液体吐出装置によれば、無色の液体にグリセリンが含まれているので、無色の液体は蒸発しにくい。このため、媒体及びプラテンの湿潤状態を維持させることが可能である。
【0019】
また、樹脂製のプラテンの媒体と接触する接触部に無色の液体を供給し、
前記接触部に接触させつつ前記媒体を搬送方向に搬送し、
搬送される前記媒体に、前記プラテンと対向するノズルから液体を吐出することを特徴とする液体吐出方法である。
【0020】
このような液体吐出方法によれば、搬送される媒体が接触するプラテンの接触部は、無色の液体が供給されており、この接触部に接触しつつ媒体が搬送方向に搬送されるので、搬送される媒体が湿潤される。このため、プラテンが樹脂製であっても、媒体との摩擦による静電気の発生を防止することが可能である。このため、搬送される媒体から粉体等が舞うことを防止することが可能であり、ヘッドに設けられたノズルの、粉体等による目詰まりの発生を抑えることが可能である。このとき、接触部に供給される液体は無色なので、供給された液体により媒体が汚れることはない。また、プラテンが樹脂製なので複雑な形状であっても容易にかつ安価に製造することができるため、粉体等によるノズルの目詰まりを安価な方法にて防止する液体吐出方法を提供することが可能である。
【0021】
===実施形態===
図1は、本実施形態におけるインクジェットプリンター1の斜視図である。同図に示すように、このインクジェットプリンター1は、長手方向が水平に配置された記録部40と、記録部40に媒体(被記録媒体)としての用紙S(図2参照)を供給する供給部10と、記録部40の端部と供給部10とに装着されている筐体90と、記録部40にて記録された用紙Sが排出される排出部60と、記録部40、供給部10及び排出部60を下方から支持する脚部70とを備えている。
【0022】
供給部10は、長尺の用紙S(図2参照)を巻き重ねたロールRを含むロール組立体11(図2参照)を有している。図1においては、ロール組立体11は、筐体90のロールカバー91に覆われている。
【0023】
記録部40は、トップカバー42及びフロントカバー44によりその内部機構が覆われている。記録部40の内部には後述するヘッド41(図2参照)等が配置され、供給部10のロールRから引き出されて記録部40に給送された用紙Sに対して液体としてのインクが吐出されて画像が形成される。
【0024】
記録部40において画像が形成された用紙Sは、搬送方向において記録部40より下流側に形成された排出部60から外部に排出される。なお、脚部70は、排出部60を通過した用紙Sが床面に接しないようにする目的で設けられている。
【0025】
記録部40の端部に装着されている筐体90は、インクが吐出される記録領域から退避したヘッド41が待機するホームポジションのスペースを形成するとともに、その下部に、カートリッジホルダ20を覆っている。カートリッジホルダ20には、その表面を覆うホルダカバー22の内側に、ヘッド41に供給するインクを収容したインクカートリッジ(不図示)が装着される。
【0026】
また、筐体90の上面には、操作パネル80が配置されている。操作パネル80は、ユーザーが操作する複数のスイッチ82の他、インクジェットプリンター1の動作状態を示す表示部84も含まれている。従って、ユーザーは、操作パネル80及びカートリッジホルダ20が配置された側を前面として、この前面側からインクジェットプリンター1を操作する。
【0027】
図2は、本実施形態におけるインクジェットプリンター1の内部側面図である。
インクジェットプリンター1は、図2に示すように、ロールRを保持するスピンドル13と、ロールRから繰り出された用紙Sを搬送する搬送路14と、搬送されてくる用紙Sに対して画像を形成する記録部40と、画像形成を経た用紙Sを排出する排出部60と、排出部60から排出される用紙Sをせん断するカッター装置61とを備えている。搬送路14には、ロールRと記録部40との間に、用紙Sを搬送する搬送ローラー45と、を備えている。
【0028】
また、インクジェットプリンター1は、搬送されてくる用紙Sを後述するヘッド41の下方にて支持するプラテンユニット30を備えている。プラテンユニット30は、プラテン31、プラテンベース32、及び、支持部材33を有している。プラテンユニット30の詳細な構成は後述する。また、インクジェットプリンター1は、上記各構成器機の動作を統括的に制御する不図示の制御部を備えている。
【0029】
なお、以下の説明では、用紙Sの搬送方向、すなわち供給部10側から排出部60側に向かう方向をX軸方向と、X軸方向と直交する用紙Sの紙幅方向をY軸方向と、X軸方向及びY軸方向といずれも直交する鉛直方向をZ軸方向と称して説明する場合がある。
【0030】
記録部40は、搬送路14に沿って搬送されてくる用紙Sに対してインクを吐出するヘッド41を有している。ヘッド41は、搬送路14の紙幅方向、すなわち用紙Sの紙幅方向に移動自在なキャリッジ43に搭載されている。
【0031】
図3は、ヘッドの構成の説明図である。
ヘッド41は、図3に示すように、移動時にプラテン31と対向する面に複数のノズル列を有するノズルプレートを備えており、各ノズルから列毎に相違する所定の色(例えば、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K))のインクをそれぞれ吐出可能な構成となっている。各ノズル列が有する複数のノズルは、ノズルピッチDで搬送方向に沿って設けられている。
【0032】
ヘッド41は、プラテン31に支持され、ロールRから繰り出された用紙Sの記録面に対して、所定ノズルから所定のタイミングにてインクを吐出することにより所定の画像や文字等の情報を記録する画像形成を実施する。
【0033】
記録部40にて画像形成された用紙Sは、搬送路14の終端部を構成するニップ部50を通り排出部60から排出される。ニップ部50は、用紙Sをニップするとともに回転駆動して用紙Sを排出する排出ローラー51を複数備えている。排出ローラー51は、紙種によってニップするローラーをギザローラー51aあるいはコロローラー51bに切り替える機構を備えている。
【0034】
ニップ部50の下流側には、排出された用紙Sを所定サイズにせん断するカッター装置61が設けられている。カッター装置61は、排出された用紙Sの高さ位置を規制する規制部材62と、用紙Sの排出方向(X軸方向)と直交する紙幅方向(Y軸方向)に移動して用紙Sをせん断するカッターユニット63とを有している。
【0035】
図1に示すような大判のインクジェットプリンター1は、紙幅方向に長いため、用紙Sを支持するプラテン31を複数用いてプラテンユニット30として構成している。
【0036】
図4は、本実施形態におけるプラテンユニット30の斜視図である。図4には本実施形態のプラテンユニット30を構成する最小構成としての、プラテン31とプラテンベース32と支持部材33が示されている。なお、図4は、プラテンユニット30の構成の説明を容易にするために、プラテンユニット30の一部を示す斜視図としている。図5は、本実施形態におけるプラテンユニット30を示す上面図である。図5には、プラテン31が、第1プラテン31Aと第2プラテン31Bと第3プラテン31Cとからなり、紙幅方向に連ねられていることが示されている。ただし、プラテンユニット30を構成するプラテンの数はこれに限られない。また、プラテンの紙幅方向の長さもこれに限られない。
【0037】
以下、これらの図を参照しつつ、プラテンユニット30の概略について説明する。
支持部材33は、プラテンベース32をその上部で支持するための部材である。プラテンベース32は、第1プラテンベース32Aと第2プラテンベース32Bと図示しない第3プラテンベースを有し、紙幅方向に連ねられている。
【0038】
これらプラテンベース32A、32B等は、紙幅方向(Y軸方向)についてそれぞれ長さが異なるが、他の構成についてはほぼ同様の構成を有しているので、以下の説明においては、主に第1プラテンベース32Aを例に挙げて説明し、共通する部分についてはプラテンベース32として説明する。また、第1プラテンベース32Aと第2プラテンベース32Bと第3プラテンベースの上部には、第1プラテン31Aと第2プラテン31Bと第3プラテン31Cが設けられている。第1プラテン31Aと第2プラテン31Bと第3プラテン31Cも紙幅方向(Y軸方向)についてそれぞれ長さが異なるが、他の構成についてはほぼ同様の構成を有しているので、以下の説明においては、主に第1プラテン31Aを例に挙げて説明し、共通する部分についてはプラテン31として説明する。
【0039】
プラテン31とプラテンベース32は、ともに樹脂にて射出成形されている。ここで、プラテン31及びプラテンベース32を金属素材にて製造しなかったのは、プラテン31の形状が複雑な形状であるため、金属素材のプレス加工では工程が多く、また仮に板金で製造したとしても高い部品精度を確保することが困難なためである。
【0040】
第1プラテンベース32Aの底部は、底部開口部322を複数備えている。第1プラテンベース32Aの内部空間は、支持部材33の内部空間に連通する。他のプラテンベースも同様に支持部材33の内部空間に連通する底部開口部322を有しているため、第1プラテンベース32Aの内部空間と第2プラテンベース32Bの内部空間と第3プラテンベースの内部空間は、内部の空気外動可能に連通している。
【0041】
プラテン31には、搬送される用紙Sを支持する支持面312と、打ち捨てられたインクなどの液体を搬送中の用紙Sに触れさせないようにするための溝部313がプラテン31の長手方向に沿って複数並べて設けられている。
【0042】
溝部313には、インク吸引と紙吸引とを兼ねる第1吸引孔314が設けられている。第1吸引孔314は、プラテン31の上部から下部方向(Z軸方向)に貫通している。また。プラテン31Aには、搬送される用紙Sを支持する支持面312に第2吸引孔315と第3吸引孔316とが複数設けられている。
【0043】
そして、プラテン31の上面から溝部313、第2吸引孔315、第3吸引孔316などを除く支持面312に沿って用紙Sが搬送される。すなわち、プラテン31の支持面312には全域ではないが用紙Sが接触する。より具体的には、搬送される用紙Sは溝部313内に設けられた第1吸引孔314と第2吸引孔315及び第3吸引孔316により吸引されているので、少なくとも搬送方向において溝部313及び溝部313より下流側では用紙Sが支持面312に接触する。このため、支持面312のうち、少なくとも搬送方向において溝部313が設けられている部位及び溝部313が設けられている部位より下流側であって溝部313を除く部位が、用紙Sが接触する接触部となる。
【0044】
プラテン31の支持面312には、紙幅方向において隣り合う溝部313間にてリブ状をなしているリブ状部312aが形成されている部位に、搬送方向に沿って複数の小孔312bが設けられている。ここで、小孔312bは、隣り合う溝部313間のリブ状部312aに少なくとも設けられているが、リブ状部312aの、搬送方向における上流側及び下流側にも連ねて設けられていてもよく、また、リブ状部312aに1つもうけられていてもよい。更に、紙幅方向に、複数設けられているリブ状部312aの全てに小孔312bが設けられていなくともよい。
【0045】
図6は、図5におけるA−A断面図である。
図6に示すように、小孔312bは、プラテンベース32内とプラテン31の上方とを連通しており、小孔312bが設けられている領域の、支持面312の裏面、すなわちプラテン31の下面31aには、プラテンベース32内に設けられている無色液体含浸部材としてのスポンジ35が当接されている。スポンジ35には、無色の液体としてのグリセリンが含浸されている。そして、スポンジ35に含浸されたグリセリンは毛管現象により小孔312bを通って支持面312に供給されるように構成されている。ここで、小孔312bは、無色の液体を供給する無色液体供給部に相当する。
【0046】
プラテンベース32には、用紙Sの搬送方向における両側に突出した突起部321が複数設けられており、プラテン31には、突起部321と係合するためのフック状部材311が設けられている。また、プラテンベース32の上部縁周囲には、延伸し連続したスポンジ34Aが設けられている。そして、フック状部材311が突起部321に係合してプラテン31がプラテンベース32に固定される。このとき、スポンジ34Aが圧縮されることにより、プラテン31とプラテンベース32との間の気密性が高められる。
【0047】
本実施形態のインクジェットプリンター1は、プラテン31の小孔312bの毛管現象によりスポンジ35から支持面312側にグリセリンが供給された、支持面312のリブ状部312aが形成されている部位にて、搬送ローラー45により搬送される用紙Sが通過する際に、グリセリンにより用紙Sを湿潤する。このため、搬送される用紙Sは、用紙Sが搬送されることにより用紙Sとプラテン31の接触部、例えばリブ状部312aとの間にて摩擦が生じても静電気が生じないように構成されている。ここで、プラテンに小孔が設けられておらず、接触部にグリセリンが供給されない場合に生じる現象について説明する。
【0048】
図7は、プラテン31’に小孔312bが設けられていないときの紙粉の状態を説明する図である。図7には、プラテン31’と、ヘッド41’のノズルプレートNP’と、プラテン31’上を搬送される用紙Sが示されている。
【0049】
プラテン31’に小孔312bが設けられていない場合には、プラテン31’上を用紙Sが通過するとプラテン31’と用紙Sとの間に生じる摩擦により静電気が発生する。
【0050】
特に、本実施形態のように大判のインクジェットプリンター1では、主に紙幅方向に幅広の用紙Sが搬送されるので、用紙Sが波打つなどしてプラテンから浮きやすい。このため、用紙Sのプラテン31’からの浮きを防止するために前述の第1吸引孔314〜第3吸引孔316から用紙Sを吸引する。この吸引により用紙Sとプラテン31’との摩擦力が大きくなり、プラテン31’に生じる静電気が大きなものとなる。このようにして、プラテン31’が帯電して除電が行われないと、ヘッド41’のノズルプレートNP’との間に電位差が生じ電界が生じる。
【0051】
一方、用紙Sが通過する際に、主に用紙Sの端部から紙粉Saが舞う。この紙粉Saが電界の間で舞うと、図7に示すように、この紙粉Saが誘電分極する。誘電分極した紙粉Saは、プラテン31’またはノズルプレートNP’に吸着される。
【0052】
ノズルプレートNP’には、インクを吐出する不図示のノズルが設けられている。しかしながら、紙粉SaがノズルプレートNP’に吸着されると、吸着された紙粉Saがノズルの目詰まりを生じさせる場合がある。ノズルが目詰まりすると、目詰まりしたノズルからはインクが吐出されないので、目詰まりしたノズルが担当する画素には、形成されるはずの所望のドットが形成されず、所謂ドット抜けが発生し、良好が画像を形成することができない。
【0053】
このようなドット抜けが発生しないように、たとえば、キャリッジ43の退避位置にてノズルから強制的にインクを吐出させるクリーニングが行われるが、クリーニングは無駄にインクが消費されてしまう。また、インクの強制的な吐出により廃液(廃インク)の排出量が増えるという不利益をもたらすことになる。よって、ノズルプレートNP’に紙粉Saが付着しないようにすることが望ましい。
【0054】
そして、上記のような紙粉Saの付着プロセスを考慮すると、プラテン31の帯電を抑制することが望ましい。このため、本実施形態のインクジェットプリンター1では、プラテン31の接触部に小孔312bと、プラテン31の小孔312bを備える部位の下面に当接させてグリセリンが含浸されたスポンジ35を備えることとしている。
【0055】
図8は、小孔とグリセリンが含浸されたスポンジ35が設けられているときの紙粉Saの状態を説明する図である。
前述したように、プラテン31に設けられた小孔312bの毛管現象によりスポンジ35から支持面312側にグリセリンが供給されている。そして、支持面312のリブ状部312aが形成されている部位にて、搬送ローラー45により搬送される用紙Sが通過する際に、グリセリンにより用紙Sが湿潤される。
【0056】
このような構成とすることにより、搬送される用紙Sは、用紙Sとプラテン31の接触部とに摩擦が生じても静電気が発生しにくくなり、帯電されないので、ヘッド41のノズルプレートNPとプラテン31との間に電界が発生しない。このため、紙粉SaがノズルプレートNPに吸着されにくくなり、ノズルの目詰まりが生じ難くなるのでドット抜けが発生しにくいインクジェットプリンター1を提供することが可能である。
【0057】
本実施形態のインクジェットプリンター1によれば、プラテン31が樹脂製なので複雑な形状であっても容易にかつ安価に製造することが可能である。また、搬送される用紙Sが沿わされるプラテン31の用紙Sと接触する接触部、例えばリブ状部312aにグリセリンを供給する小孔312bが設けられているので、搬送される用紙Sがリブ状部312a等と接触すると湿潤される。このため、プラテン31が樹脂製であっても、用紙Sとの摩擦による静電気の発生を防止することが可能である。このため、搬送される用紙Sから脂粉Sa等が舞うことを防止することが可能であり、ヘッド41に設けられたノズルの、脂粉Sa等による目詰まりの発生を抑えることが可能である。このとき、リブ状部312a等に供給されるグリセリンは透明なので、供給されたグリセリンにより用紙Sが汚れることはない。
【0058】
また、リブ状部312a等が有する上下方向に貫通する小孔312bを通して、小孔312bの下に設けられた、グリセリンを染み込ませたスポンジ35のグリセリンが、毛管現象により小孔312bからリブ状部312a等に供給されるので、簡単な構造によりリブ状部312a等を湿潤させることが可能である。
【0059】
特に、搬送される用紙Sが接触される接触部がリブ状をなしているリブ状部312aの場合には、用紙Sとプラテン31との接触面積を小さくすることが可能であり、より静電気の発生を抑えることが可能である。また、グリセリンが供給される接触部はリブ状なので、供給するグリセリンの量を低減することが可能である。
【0060】
また、用紙Sを湿潤するためにリブ状部312a等に供給されるのは、グリセリンなので、リブ状部312a等において蒸発しにくい。このため、用紙Sの湿潤状態を維持させることが可能である。ここで、プラテン31の接触部に供給される無色の液体は、グリセリンにのみに限るものではない。例えば、無色の液体として水を用いても良いし、水とグリセリンとを混ぜて用いても良い。
【0061】
また、完全な無色の液体でなくても良い。例えば、搬送される用紙が再生紙等である場合、用紙は少し黒の混色した色調である。この場合は、少し黒の混色した液体を用いても良い。
【0062】
また、本実施形態の液体吐出方法によれば、搬送される用紙Sが接触するプラテン31のリブ状部312a等は、グリセリンが供給されており、このリブ状部312a等に接触しつつ用紙Sが搬送方向に搬送されるので、搬送される用紙Sが湿潤される。このため、プラテン31が樹脂製であっても、用紙Sとの摩擦による静電気の発生を防止することが可能である。このため、搬送される用紙Sから紙粉Sa等が舞うことを防止することが可能であり、ヘッド41に設けられたノズルの、紙粉Sa等による目詰まりの発生を抑えることが可能である。このとき、小孔312bから供給されるグリセリンは無色なので、供給されたグリセリンにより用紙Sが汚れることはない。また、プラテン31が樹脂製なので複雑な形状であっても容易にかつ安価に製造することができるため、粉体紙粉Sa等によるノズルの目詰まりを安価な方法にて防止する液体吐出方法を提供することが可能である。
【0063】
上記実施形態においては、プラテンに31に小孔312bを設けて、プラテン31の下面側に設けられたスポンジ35に含浸されたグリセリンをリブ状部312a等に供給する例について説明したが、これに限るものではない。
【0064】
図9は、無色液体供給部の他の実施形態を説明する図である。
たとえば、図9に示すように、インクを吐出するヘッド41’にグリセリンを吐出するノズル列CLを設け、ヘッド41’を紙幅方向に移動させつつ適宜位置にてグリセリンを吐出して用紙Sを湿らせる形態であっても構わない。
【0065】
このようなインクジェットプリンター1によれば、搬送される用紙Sは、用紙Sにグリセリンを吐出するノズル列CLを備えたヘッド41’が備える無色液体吐出ノズルとしてのノズル列CLからグリセリンが吐出されたリブ状部312a等に接触するので、用紙Sに吐出すインクと同様にヘッド41’ からグリセリンを吐出させて容易にリブ状部312a等の接触部にグリセリンを供給することが可能である。
【0066】
===その他の実施の形態===
上述の実施形態では、液体噴射装置としてインクジェットプリンター1が説明されていたが、これに限られるものではなくインク以外の他の流体(液体や、機能材料の粒子が分散されている液状体、ジェルのような流状体)を噴射したり吐出したりする液体吐出装置に具現化することもできる。例えば、カラーフィルタ製造装置、染色装置、微細加工装置、半導体製造装置、表面加工装置、三次元造形機、気体気化装置、有機EL製造装置(特に高分子EL製造装置)、ディスプレイ製造装置、成膜装置、DNAチップ製造装置などのインクジェット技術を応用した各種の装置に、上述の実施形態と同様の技術を適用してもよい。また、これらの方法や製造方法も応用範囲の範疇である。
【0067】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。
【0068】
<ヘッドについて>
インクを噴射する方式は、圧電素子を用いて噴射する方式に限られず、例えば、熱によりノズル内に泡を発生させる方式など、他の方式を用いてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1 インクジェットプリンター、
10 供給部、11 組立体、13 スピンドル、14 搬送路、
20 カートリッジホルダ、22 ホルダカバー、
30 プラテンユニット、31 プラテン、 31A 第1プラテン、
31B 第2プラテン、31C 第3プラテン、31a 下面、
32 プラテンベース、32A 第1プラテンベース、32B 第2プラテンベース、
33 支持部材、34A スポンジ、35 スポンジ、
40 記録部、41 ヘッド、42 トップカバー、43 キャリッジ、
44 フロントカバー、45 搬送ローラー、
50 ニップ部、51 排出ローラー、51a ギザローラー、
51b コロローラー、55 第1搬送ベルト、56 第2搬送ベルト、
60 排出部、61 カッター装置、62 規制部材、63 カッターユニット、
70 脚部、80 操作パネル、82 スイッチ、84 表示部、
90 筐体、91 ロールカバー、
311 フック状部材、312 支持面、312a リブ状部、312b 小孔、
313 溝部、314 第1吸引孔、
315 第2吸引孔、316 第3吸引孔、
321 突起部、322 底部開口部、
NP ノズルプレート、R ロール、S 用紙、Sa 紙粉

【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送方向に搬送される媒体に液体を吐出するノズルを備えたヘッドと、
前記ヘッドと対向させて設けられ、前記媒体が沿わされる樹脂製のプラテンと、
前記プラテンの前記媒体と接触する接触部に無色の液体を供給する無色液体供給部と、
を有することを特徴とする液体吐出装置。
【請求項2】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記プラテンの前記接触部は、上下方向に貫通する小孔を有し、前記小孔の下には前記無色の液体を染み込ませた無色液体含浸部材が設けられており、
前記無色液体含浸部材の前記無色の液体が毛管現象により前記小孔から前記接触部に供給されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項3】
請求項1に記載の液体吐出装置であって、
前記ヘッドは、前記無色の液体を吐出する無色液体吐出ノズルを備え、
前記無色液体吐出ノズルから前記接触部に前記無色の液体が吐出されて前記接触部に前記無色の液体が供給されることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の液体吐出装置であって、
前記接触部は、リブ状をなしていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれか記載の液体吐出装置であって、
前記無色の液体には、グリセリンが含まれていることを特徴とする液体吐出装置。
【請求項6】
樹脂製のプラテンの媒体と接触する接触部に無色の液体を供給し、
前記接触部に接触させつつ前記媒体を搬送方向に搬送し、
搬送される前記媒体に、前記プラテンと対向するノズルから液体を吐出することを特徴とする液体吐出方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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