説明

液体吹付け遮断器

【課題】環境負荷の小さい高電圧大電流通電遮断器を実現する。
【解決手段】動粘度が6mm/s以下の植物由来絶縁油を直接アーク12に吹付ける構成としたため、環境に配慮しつつ高い遮断能力を得ることができる。また、投入通電状態では、静止側固定電極1、駆動側固定電極2及び摺動接触子3を冷却効果の大きい植物由来絶縁油の中に常時置くことにより、高い冷却特性を得ることができるため、ひいては大電流通電も可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断性能、通電性能に優れ、かつ環境に悪影響を与えない絶縁液体を消弧媒体として使用することのできる液体吹付け遮断器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電力系統の保護機器である遮断器は、現在、主に真空遮断器(以下「VCB」と称する。)とSF等の絶縁ガスを使用したガス遮断器(以下「GCB」と称する。)が用いられている。VCBは、小形、低操作力、メンテナンスフリーの特性を生かして、主に72kV以下の電圧系統に用いられている。GCBは、その高耐電圧、大電流遮断・大電流通電の特性を活かして、主に72kV以上の電圧系統に用いられている。共に、その優れた性能により、現在の電力系統の高信頼度化を実現している重要機器である。
【0003】
また、GCB、VCB以外の遮断器として、従来、液体遮断器が用いられていた。その代表例として、非特許文献1記載のような、鉱油由来の絶縁油(以下「鉱油」と称する。)を用いた油遮断器(以下「OCB」と称する。)がある。なお、ここで言う鉱油とは、主として変圧器、遮断器等の受変電機器に用いられる絶縁油を指している。このOCBは図5に示すように、固定接触子36及び可動接触子37を鉱油38中に配置したものである。遮断原理はアーク熱で油を加熱気化して水素ガス39を発生させ、水素ガス39をアーク41に吹付け遮断するものであり、実質的には水素ガス遮断器であった。よって水素ガスの特性で遮断性能が決まっており、SFガスよりも性能が低く、さらに鉱油は環境負荷が大きいという問題もあった。
【0004】
このような経緯により、主に72kV以上の電圧系統ではVCB、OCBに代わりGCBが用いられているが、GCBに関してもOCBと同様に環境適合の面で問題がある。GCBの使用ガスとして主に利用されているSFガスの地球温暖化係数(GWP)は23900と高く、温暖化規制ガスに指定されている。このため使用量削減要求が強くなり、環境適合のSF代替(SFフリー)ガスを目指したGCBの開発が要請されている。
【0005】
この改善策として、GCBのSFガス使用量を削減するため、SFガスと他のガスとの混合ガスや、代替ガスを用いた遮断器が検討されている。例えば代替ガスとしてCOガスや、CFIガスなどを用いたGCB(特許文献1)が提案され研究開発が活発に行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−84768
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】電気学会編 電気学会大学講座 電力用遮断器(昭和50年発行)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上述のSFと他のガスとの混合ガス遮断器は、寒冷地対応などで実使用されているものの、完全なSFガス代替(SFガスフリー)とはなっておらず、環境適合の点で問題が残る。また、SF代替ガスは遮断器の性能の大幅な低下を招く。例えばCOガスの絶縁性能はSFガスの約1/3しかない。また、CFIに関しては液化温度が高いという問題がある。従来のガス絶縁遮断器において、SFガスはほぼ0.5MPaに充填されるが、0.5MPaでは、CFIの液化温度は20℃程度と高くなるため、ガス遮断器への適用は困難である。さらにはアークによる分解でSFガスのように再結合せず、有害分解生成物質を析出するなどの問題がある。
【0009】
一方、VCBにおいては、環境上の問題は無いが、特性上、高電圧化、大電流化(通電性能)が難しく、GCBとの代替可能分野には限界がある。高電圧化に関しては、直列多点構成で対応が可能であるが、VCBの遮断部全長の長尺化、操作機構の複雑大型化が避けられない。さらに、基幹系統で必要となる大電流通電(例えば6000A)は困難であり、VCBの外部に別途通電接触子を設ける必要がある等、絶縁協調や構造で複雑化が避けられないという問題がある。
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の目的は、環境負荷が大きいSFガスや鉱油を使用せず、かつ簡易な構造で高電圧化及び大電流化を実現した植物由来絶縁油を用いた液体吹付け遮断器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従来のOCBでは、一旦液体をガス化したが、気体よりも液体を直接吹付ける方が、冷却効果も十分発揮でき、アークへ作用する質量流量(massflow)も非常に大きく出来る点に着目した。しかし、鉱油をSF代替として使用することは環境対策とはならない。さらに、効率的な吹付けのためには、流動性の高い(粘性の低い)液体の方が格段に有利である。そこで、本発明の液体吹付け遮断器は、以下に述べる通り、動粘度が6mm/s以下の植物由来絶縁油を直接アークに吹付ける構成とした。なお、本文中における動粘度の値はすべて40℃条件下での値を示す。
【0012】
すなわち、本発明に係る遮断器は、絶縁媒体を充填する密閉容器内に操作器にて開閉操作される遮断部を配置し、前記遮断部は静止側及び駆動側の一対の固定電極と、前記操作器によって駆動され、前記静止側固定電極と前記駆動側固定電極間を橋絡する状態から、前記駆動側固定電極側に後退して、前記静止側固定電極から開離する摺動接触子と、前記摺動接触子が前記静止側固定電極から開離した際、前記両固定電極間に発生したアークに前期絶縁媒体を吹付ける吹付け手段とを備え、さらに前記絶縁媒体は、エステル化した植物由来絶縁油であることを特徴とする液体吹付け遮断器。
【0013】
前記植物由来絶縁油は、パームやし脂肪酸エステルであることを特徴とする。
【0014】
また、前記吹付け手段は、シリンダ及びピストンより成ることを特徴とする。
【0015】
また、前記吹付け手段はアキュームレータと、これに接続された制御弁及び配管から成ることを特徴とする。
【0016】
さらに、アーク吹付け後の植物由来絶縁油は、冷却手段及び、フィルターのいずれか一方又はその双方を介して前記密閉容器に循環されることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明の遮断器は、動粘度が6mm/s以下の植物由来絶縁油を直接アークに吹付ける構成としたため、環境に配慮しつつ高い遮断能力を得ることができる。また、投入(通電)状態では、通電接触部を冷却効果の大きい液体の中に置くことにより、高い冷却特性を得ることができ、ひいては大電流通電も可能となる。
【0018】
さらには、電流遮断時に発生したカーボンなどの分解生成物は電極間に滞留せず、電極内のフィルターで捕捉されるので、極間絶縁を低下させることはない。また、従来のガス遮断器のように電極間に流れ制御の絶縁物ノズルなどを配置しない構成であるため、これら絶縁物にカーボンが付着して極間の絶縁が低下することも防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係る流体吹付け遮断器の投入(通電)状態を示す一部断面図である。
【図2】図1の遮断動作中を示した一部断面図である。
【図3】図1の遮断(開極)状態を示した一部断面図である。
【図4】本発明に係る液体吹付け遮断器の他の実施例を示した一部断面図である。
【図5】従来のOCBの遮断部と消弧原理を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0020】
図1は、本発明による液体吹付け遮断器の1実施例における遮断部30の一部断面図である。遮断部30は図示しない密閉容器内に配置されている。密閉容器内は植物由来の絶縁油で満たされている。
【0021】
植物由来の絶縁油としてはパームヤシ油、菜種油等があるが、これらは原油の状態では動粘度が高い。例えば菜種油の原油は動粘度が70mm/s程度であり、遮断器に用いることは実用的ではない。このため、エステル交換反応により原油をエステル化することにより、低粘度化を図っている。なお、遮断器に用いる絶縁油の実用的な範囲として動粘度は6mm/s以下であれば良い。その代表例はパームヤシ脂肪酸エステル(以下「PFAE」と称する。)、菜種エステルであり、本実施例においてはPFAE40を用いた例について説明する。PFAE40は動粘度が5mm/s程度と低い。これは遮断器等の油圧操作器の作動油の動粘度が13mm/s程度であることと比べても約40%も小さい値である。このため、流動性が高く高速吹付けに適した油であると言える。
【0022】
次に、遮断部30の構造を図1に基づき説明する。1は静止側固定電極であり、これに対向して駆動側固定電極2が配置されている。静止側固定電極1は絶縁支持体を介して、密閉容器(共に図示せず)に固定されている。一方、駆動側固定電極2は絶縁筒10によって密閉容器に固定されている。
【0023】
静止側固定電極1及び可動側固定電極2内には、後述する遮断動作時にアークにより熱せられたPFAE40を冷却するための冷却手段6と、遮断動作時に発生するPFAE40の分解生成物を補足するフィルター7とが設けられている。冷却手段6としては、例えば銅、アルミ、鉄等の金属よりなるフィンを用いる。なお、冷却手段6及びフィルター7の配置箇所は、本実施例のような電極内に限らず、アーク吹付け後のPFAE40が遮断部30内を経て再び密閉容器空間に至るまでの油の循環経路上に設ければ良い。
【0024】
駆動側固定電極2の同軸外周円上には、摺動接触子3が配置されており、これらは電気的に接続されている。摺動接触子3の外周にはシリンダ4が配置されている。摺動接触子3及びシリンダ4は別体に作られており、シリンダ4は摺動接触子3の上を摺動可能となっている。さらに、摺動接触子3の外周には、シリンダ4と、固定ピストン5からなる加圧室11が設けられている。また、9は操作ロッドであり、摺動接触子3に連結している。
【0025】
摺動接触子3には、後述する投入動作時において、シリンダ4と当接する突出部33が設けられている。さらに摺動接触子3には、引っ張りばね31の一方のばね係合部31aと係合するばね受け部材32が接続されている。
【0026】
シリンダ4には逆止弁34が設けられている。この逆止弁34は密閉容器側からシリンダ4の内部方向へのみPFAE40が流れ込むようになっており、逆方向からはPFAE40を封止する機能を持っている。さらにシリンダ4には、引っ張りばね31の他方のばね係合部31bが接続されている。すなわち、摺動接触子3及びシリンダ4は、引っ張りばね31、各ばね係合部31a、31b及びばね受け部材32を介して接続されている。なお、引っ張りばね31は周方向に複数、例えば4本を等間隔に配置している。
【0027】
前述のように、遮断器の密閉容器及び遮断部30はPFAE40で満たされている。すなわち、シリンダ4内の加圧室11や各固定電極1、2の内部にも、PFAE40が満たされている。
【0028】
次に本実施例における遮断器の動作を図1〜図3に基づき説明する。図1に示す投入(通電)状態では、電流は図示しない送電線、ブッシング、導体等を介して静止側固定電極1に流れる。さらに摺動接触子3、駆動側固定電極2及び図示しない導体等を介して機器系統へと流れる。
【0029】
遮断指令が出ると、図示しない操作器が操作ロッド9を図中右方向に駆動する。摺動接触子3は操作ロッド9と直結しているため、操作ロッド9の動きと共に右側に移動する。シリンダ4は、ばね受け部31b、引っ張りばね31及びをばね受け部31aによって摺動接触子3と連結しているため、これらを介して右方向への駆動力を受ける。しかしながら、摺動接触子3が静止側固定電極1と開離するまでの間、シリンダ4内の加圧室11はPFAE40で満たされた密閉空間となっているため、シリンダ4に右方向の駆動力が加わっても、加圧室11のPFAE40は容積が変動せず、シリンダ4は動かない状態となっている。この時、右方向へかかる駆動力はシリンダ4の代わりに、引っ張りばね31に蓄勢される。
【0030】
さらに摺動接触子3が静止側固定電極1上を右方向に摺動し、開極した後は、一旦静止側固定電極1と摺動接触子3の間で発弧する。その後、図2に示すようにPFAE40の作用でアーク12は各固定電極1、2間に移転する。この開極後のアーク発生時と同時に加圧室11は開放される。これに伴い引っ張りばね31に蓄勢されたばね力も開放され、シリンダ4が右方向へと急速に移動する。
【0031】
このように開極時にシリンダ4が右へと移動することに伴い、シリンダ4と固定ピストン5に囲まれた加圧室11内のPFAE40がいっそう加圧される。加圧されたPFAE40は、PFAE40流40aとなって直接アーク12に吹付けられる。これによりアーク12が消弧され、電流の遮断が行われる。このように、本実施例においては、摺動接触子3及びシリンダ4が引っ張りばね31を介して時間差で右方向へと移動することで加圧室11内のPFAE40をタイミング良くアークに吹付けている。
【0032】
遮断動作の終盤になると、摺動接触子3及びシリンダ4は更に右に移動し、図3に示すように遮断(開極)完了状態となって停止する。遮断時において熱せられたPFAE40は冷却手段6を通過する。また、PFAE40がアーク12と作用することで分解し、発生したカーボンなどの分解生成物は、各固定電極1、2内に設けられたフィルター7で捕獲される。
【0033】
PFAE40は各固定電極1、2に形成された排出穴8より密閉容器中に開放循環される。なお、摺動接触子3及び固定ピストン5にはそれぞれスリットが形成されているため、各固定電極1、2から排出されたPFAE40はスムーズに密閉容器中へ循環される。
【0034】
次に、投入指令が出されると、操作器により操作ロッド9及びこれと連結する摺動接触子3は左方向に駆動される。この時、摺動接触子3に設けられた係合部32がシリンダ4と係合するため、シリンダ4は摺動接触子3によって左方向へと押されるように移動する。
【0035】
摺動接触子3が静止側固定電極1と接触すると、加圧室11は再び密閉空間となる。摺動接触子3及びシリンダ4がさらに左方向に進むにつれ、加圧室11の容積は大きくなるが、この時シリンダ4に設けられた逆止弁34が開くことで密閉容器側から加圧室11へPFAE40が流入する。また、逆止弁34により加圧室11側から密閉容器側へのPFAE40の流出は阻止される。このため、加圧室11は常にPFAE40で満たされた状態となる。このようにして摺動接触子3及びシリンダ4が左方向へ移動していくことで再び図1の投入状態に戻る。
【0036】
以上、説明したように、本発明の実施例1においては動粘度が5mm/s程度のPFAE40を液体状態で直接アーク12に吹付ける構成としたため、環境に配慮しつつ高い遮断能力を得ることができる。また、投入状態では、静止側固定電極1、駆動側固定電極2及び摺動接触子3といった通電接触部を冷却効果の大きい液体の中に置くことにより、高い冷却特性を得ることができ、ひいては大電流通電も可能となる。
【0037】
さらには、電流遮断時に発生したカーボンなどの分解生成物は、各固定電極1、2間に滞留せず、電極内のフィルター7で捕捉されるので、極間絶縁を低下させることはない。また、従来のガス遮断器のように電極間に流れ制御の絶縁物ノズルなどを配置しない構成であるため、これら絶縁物にカーボンが付着して極間の絶縁が低下することも防止できる。
【実施例2】
【0038】
実施例1は、PFAE40を、シリンダ4を駆動しアークに吹付けることで遮断動作を行っていた。図4に示す本実施例では、密閉容器26及び遮断部30にPFAE40が充填されているのは実施例1と同様であるが、PFAE40のアークへの吹付け手段が異なる。
【0039】
まず、本実施例の構成につき図4に基づき説明する。なお、実施例1と同一の構成については同一記号を付し、説明は省略する。
【0040】
29は絶縁支持体であり静止側固定電極1を密閉容器26に固定している。一方、駆動側固定電極2は絶縁筒20により固定されている。これらの固定電極1、2の内部には実施例1と同様に冷却手段6及びフィルター7が配置されている。
【0041】
22は油タンクであり、PFAE40が充填されている。油タンク22には排油用油流制御弁15を有する配管24と油ポンプ23が接続されている。油ポンプ23にはPFAE40が加圧されるアキュームレータ13が接続されている。さらにアキュームレータ13には、吹付用油流制御弁14を有する給油用絶縁管17と、投入用油流制御弁16を有する配管25が接続されている。配管24及び25は、配管35に直結しており、この配管35を介して操作シリンダ19と連結している。
【0042】
給油用絶縁管17の一端は消弧室18に接続されている。消弧室18は、その同軸内周円上に配置される摺動接触子3と別体で作られ、摺動接触子3は消弧室18の上を摺動可能となっている。さらに摺動接触子3は操作ロッド9に連結している。操作ロッド9は、一端が操作ピストン部9aを成している。この操作ピストン部9aと密閉容器26下部に形成された操作シリンダ19により、下部シリンダ室21を形成している。また、27は配管であり、油圧制御弁28を介して密閉容器26及び油タンク22を接続している。
【0043】
次に本実施例の動作につき説明する。図4に示す投入状態では、電流は図示しない送電線、ブッシング、導体等を介して静止側固定電極1に流れる。さらに、摺動接触子3、駆動側固定電極2へと流れ、図示しない導体等によって機器系統へと流れる。
【0044】
遮断指令があると、排油用油流制御弁15が開き、下部シリンダ室21内に蓄えられていた高圧のPFAE40は配管24を通って油タンク22に放出される。これにより、ピストン部9aを有する操作ロッド9も下方に駆動される。このとき、操作ロッド9と連結された摺動接触子3は下方に駆動され、絶縁筒20内に侵入する。
【0045】
このように摺動接触子3は静止側固定電極1上を下方に摺動した後、開極する。開極後は、PFAE40の作用で各固定電極1、2間にアークが点弧する。これと同時に、吹付け用制御弁14が開き、アキュームレータ13内で加圧されたPFAE40が給油用絶縁管17を通り消弧室18内に放出される。このPFAE40はアークに直接吹付けられ、アークを消弧することで、電流が遮断される。遮断が終了すると吹付け用制御弁14が閉じ、再びアキュームレータ13内でPFAE40が蓄圧される。
【0046】
アーク吹付け後のPFAE40は冷却筒6、フィルター7、排出穴8及び摺動接触子3のスリット部を通って密閉容器26内に開放循環される。なお、密閉容器26内の圧力が一定以上になると、図示しない油圧監視装置の指令により油圧制御弁28が開き、密閉容器26内のPFAE40が油タンク22に排出される。密閉容器26内が所定の圧力に戻ると油圧制御弁28が閉じる。
【0047】
一方、油タンク22に入ったPFAE40は、油ポンプ23で加圧されて、アキュームレータ13に戻る。投入動作時には、投入用制御弁16が開き、アキュームレータ13から下部シリンダ21に高圧のPFAE40が流れ込む。これにより操作ロッド9が上方に押し上げられることで、摺動接触子3及び静止側固定電極1が接触し、図4の投入状態に至る。
【0048】
本方式は、気体ではその圧縮性から、駆動、吹付けとも時間遅れが生じて、高速遮断動作を実現出来ないが、本発明では作動流体が非圧縮性の液体であるので実現可能となる。
【0049】
このように、本実施例によれば、動粘度が5mm/s程度のPFAE40を液体状態で直接アーク12に吹付ける流量が、実施例1に比べて大きくなるとともに、吹付け時間も長くできるため、環境に配慮しつつより高い遮断能力を得ることができる。また、投入状態では、静止側固定電極1、駆動側固定電極2及び摺動接触子3といった通電接触部を冷却効果の大きい液体の中に置くことにより、高い冷却特性を得ることができ、ひいては大電流通電も可能となる。
【0050】
さらには、電流遮断時に発生したカーボンなどの分解生成物は電極間に滞留せず、電極内のフィルターで捕捉されるので、極間絶縁を低下させることはない。また、従来のガス遮断器のように電極間に流れ制御の絶縁物ノズルなどを配置しない構成であるため、これら絶縁物にカーボンが付着して極間の絶縁が低下することも防止できる。
【符号の説明】
【0051】
1 静止側固定電極
2 駆動側固定電極
3 摺動接触子
4 シリンダ
5 固定ピストン
6 冷却手段
7 フィルター
8 排流穴
9 操作ロッド
11 加圧室
13 アキュームレータ
17 給油用絶縁管
18 消弧室
19 操作シリンダ
9a 操作ピストン
10、20 絶縁筒
21 下部シリンダ室
24、25、35 配管
30 遮断部
31 引っ張りばね
31a、31b ばね係合部
32 ばね受け部材
33 突出部
34 逆止弁
40 PFAE

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁媒体を充填する密閉容器内に操作器にて開閉操作される遮断部を配置し、前記遮断部は静止側及び駆動側の一対の固定電極と、前記操作器によって駆動され、前記静止側固定電極と前記駆動側固定電極間を橋絡する状態から、前記駆動側固定電極側に後退して、前記静止側固定電極から開離する摺動接触子と、前記摺動接触子が前記静止側固定電極から開離した際、前記両固定電極間に発生したアークに前期絶縁媒体を吹付ける吹付け手段とを備え、さらに前記絶縁媒体は、エステル化した植物由来絶縁油であることを特徴とする液体吹付け遮断器。
【請求項2】
前記植物由来絶縁油は、パームやし脂肪酸エステルであることを特徴とする請求項1記載の液体吹付け遮断器。
【請求項3】
前記アーク吹付け後の植物由来絶縁油は、冷却手段を介して前記密閉容器に循環されることを特徴とする請求項1または2記載の液体吹付け遮断器。
【請求項4】
前記アーク吹付け後の植物由来絶縁油は、フィルターを介して前記密閉容器に循環されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の液体吹付け遮断器。
【請求項5】
前記吹付け手段は、シリンダ及びピストンより成ることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吹付け遮断器。
【請求項6】
前記吹付け手段は、アキュームレータと、これに接続された制御弁及び配管から成ること特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液体吹付け遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−138236(P2012−138236A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289273(P2010−289273)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(501383635)株式会社日本AEパワーシステムズ (168)