説明

液体噴出器

【課題】ポンプの機能低下や動作漏れの懸念がなく、組み付けも容易な、液体噴出器を提供する。
【解決手段】ヘッド3に嵌合保持される筒体6を有し、筒体6から垂下する下端5eを開口させてヘッド3に通じる内部通路rを形成するヘッドシリンダ5と、ヘッドシリンダ5の内側に形成された絞り孔8を開閉可能な弁体部11aを有し弁体部11aの周りに形成された環状のシール部12a,12bによってヘッドシリンダ5の内側に摺動可能に保持される第1ピストンプランジャ11及び第2ピストンプランジャ12とを備えるポンプユニットであって、ヘッドシリンダ5の内周面5fに、その下端5eに形作られる開口部Aの外縁Eを、第2ピストンプランジャ12のシール部先端径φ12aよりも大きく、かつ、ヘッドシリンダ内径φよりも小さく形作ると共に、当該開口部外縁Eからヘッド3に向かって縮径しながら内周面5fに繋がる傾斜面5sを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器からの内容液を外界に圧送するために用いられる液体噴出器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴出器としては、図4の要部断面図に示すように、容器の口部に固定されるシリンダからの内容液を外界に圧送・噴射するヘッド3に、このヘッド3から垂下する下端25eを開口させてヘッドシリンダ25とし、このヘッドシリンダ25の内側に形成された絞り孔28を開閉可能な弁体部11aを有する第1ピストンプランジャ11の外周に設けた第1ピストンプランジャ12の環状のシール部12a,12bを形成することによってヘッドシリンダ25の内側に摺動可能に保持したポンプユニットがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2000−218198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、こうした液体噴出器は、同図に示すように、ヘッドシリンダ25の下端25eに形成した開口部Aから第1ピストンプランジャ11の弁体部11aを挿入して組み付けを行う構成上、第2ピストンプランジャ12に設けたシール部12aの先端12a1が、破線に示すようにぶつかって捲れ上がった状態で組み付けられることが考えられる。この場合、ポンプがスムーズに動作しなかったり、液漏れを生じてしまう等、ポンプの機能低下や動作漏れが懸念される。
【0005】
本発明の目的とするところは、ポンプの機能低下や動作漏れの懸念がなく、組み付けも容易な、新規な液体噴出器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、容器の口部に固定されるシリンダからの内容液の圧送を生起させ、当該内容液を外界に噴射するヘッドと、当該ヘッドに嵌合保持される筒体を有し、当該筒体から垂下する下端を開口させてヘッドに通じる内部通路を形成するヘッドシリンダと、当該ヘッドシリンダの内側に形成された絞り孔を開閉可能な弁体部を有し当該弁体部の周りに形成された環状のシール部によってヘッドシリンダの内側に摺動可能に保持されるプランジャとを備える液体噴出器であって、
ヘッドシリンダの内周面に、当該ヘッドシリンダの下端に形作られる開口部の外縁を、プランジャのシール部先端径よりも大きく、かつ、ヘッドシリンダの内径よりも小さく形作ると共に、当該開口部の外縁からヘッドに向かって縮径しながらヘッドシリンダの内周面に繋がる傾斜面を設けたことを特徴とするものである。
【0007】
本発明によれば、ヘッドシリンダの内周面に、当該シリンダヘッドの傾斜面に至るまで切り欠かれる少なくとも1つの長溝を設けることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ヘッドシリンダの内周面に、当該ヘッドシリンダの下端に形作られる開口部の外縁を、プランジャのシール部先端径よりも大きく、かつ、ヘッドシリンダの内径よりも小さく形作ると共に、当該開口部の外縁からヘッドに向かって縮径しながらヘッドシリンダの内周面に繋がる傾斜面を設けたことで、この傾斜面がプランジャの挿入時においてシール部の先端の案内となることから、当該シール部の先端が引っ掛かることなく組み付けを行うことができる。
【0009】
従って、本発明によれば、ポンプの機能低下や動作漏れの懸念がなく、組み付けも容易な、新規な液体噴出器を提供することができる。
【0010】
ところで、こうした液体噴出器の場合、ユニット全体の液漏れの有無を検査すべく、シリンダ側から試験的に空気を送り込むことで、空気漏れの有無を検出することが一般的であるが、ヘッドシリンダとシール部との間での空気漏れが生じていれば、シール部の捲れの有無も併せて検査することができる。
【0011】
しかしながら、こうしたシール部は、プランジャ軸線方向に間隔を空けて二重に設けることが一般的であるため、一方のシール部(プランジャ先端側に位置するシール部)に捲れが生じても、他方のシール部(シリンダ側に位置にするシール部)でのシール性が確保されていると、空気漏れが生じないため、シール部の捲れを検査できないことがある。
【0012】
そこで、ヘッドシリンダの内周面に、傾斜面に至るまで切り欠かれる少なくとも1つの長溝を設ければ、一方のシール部に捲れが生じて空気漏れがある場合、その空気は、他方のシール部の先端と当該長溝との間に形成された通路から傾斜面に形成された切り欠き開口部分を通して排出することができる。
【0013】
従って、ヘッドシリンダの内周面に、当該シリンダヘッドの傾斜面に至るまで切り欠かれる少なくとも1つの長溝を設ければ、万一に備えたシール部の捲れの有無を容易に検査することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一形態である、容器用ポンプユニットを一部断面で示す側面図である。
【図2】図1の要部拡大図である。
【図3】(a)〜(c)はそれぞれ、本発明に従う、ヘッドシリンダの上面図、同ヘッドシリンダを一部断面で示す側面図及び底面図である。
【図4】本発明の従来技術である、容器用ポンプユニットを一部分解した状態で示す要部断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明の一形態を詳細に説明する。
【0016】
図中、1は、図示せぬボトル形容器の口部上端に載置されるフランジ1aを有し、その本体1bが容器口部の内側を通って垂下するシリンダである。2は、フランジ1aを固定する肩部2aを有し、この肩部2aの内側からシリンダ1の内径よりも大きな内径の補助シリンダ2bが一体に起立する装着部材である。装着部材2は、補助シリンダ2bの周りが保護カバー2cで取り囲まれていると共に、その外側に、ねじ部2sを有して容器口部に着脱可能に螺合する筒体2dが一体に垂下する。
【0017】
3は、シリンダ1からの内容液の圧送を生起させ、当該内容液を外界に噴射するヘッドである。ヘッド3の下端には、内部通路を形成する凹部3aが設けられている。また、ヘッド3には、開孔3bを介して凹部3aに通じ、側面3fに開口する環状溝3cが形成されている。
【0018】
4は、環状溝3cに嵌合保持されるノズルチップである。ノズルチップ4は、図2に示すように。環状溝3cの内側領域に形作られた円筒部3dの端面3eを覆う隔壁4aを有し、この隔壁4aの内面(背面)から後方に向かって延在する筒壁4bが一体に設けられている。
【0019】
隔壁4aには、同図に示すように、内容液を噴射する貫通孔4cを有し、筒壁4bが環状溝3cに嵌合保持されることで、円筒部3dとの間に、凹部3aにより形作られた導入路r1と開孔3bを介して通じる複数の軸線流路r2及びスピン流路r3と、当該スピン流路r3を貫通孔4cに通じさせる合流室r4とが形成される。これにより、噴霧ヘッドHが形成される。
【0020】
5は、ヘッド3の凹部3aに嵌合保持される筒体6を有し、この筒体6から垂下する下端を開口させてヘッド3に通じる内部通路r5を形成するヘッドシリンダである。ヘッドシリンダ5は、筒体6と環状壁7を介して一体に繋がり、この環状壁7の外縁から一体に垂下する。また、ヘッドシリンダ5の内側には、環状壁7の内側に、絞り孔8が形成された仕切壁9が一体に設けられている。更に、ヘッドシリンダ5は、その下端部5aが補助シリンダ2bの内周面2fに摺動可能に保持されている。
【0021】
11は、シリンダ1との間に内容物の液室C1を形作る第1ピストンプランジャである。第1ピストンプランジャ11は、仕切壁9に接触することで絞り孔8を開閉可能に封止する弁体部11aを有し、その下端に、シリンダ1の本体1bの内側に保持される環状のピストン11bが形成されている。また、第1ピストンプランジャ11は、シリンダ1内に配置されたスペーサ13の周りに複数のフィン部13aを一体に設け、当該フィン部13aとの間に配置されたリターンスプリングSによって弾支されている。これにより、第1ピストンプランジャ11は、シリンダ1内に押し下げ及びその復元が可能なように弾支されている。
【0022】
12は、第1ピストンプランジャ11の周りに固定される第2ピストンプランジャである。第2ピストンプランジャ12は、弁体部11aを取り囲むように形成された環状のシール部12a及び12bを有し、これらシール部12a及び12bによって、ヘッドシリンダ5の内周面5fに摺動可能に保持される。これにより、ヘッドシリンダ5の内側には、第1ピストンプランジャ11及び第2ピストンプランジャ12とを一体的に動作させるための液室C2が形成される。
【0023】
また、第2ピストンプランジャ12は、第1ピストンプランジャ11との間に、液室C1に通じる連通流路r0が形成されている。これにより、ヘッド3の押し下げに伴い、液室C1の内容液が第1ピストンプランジャ11に形成された開孔11bから連通流路r0を通して液室C2に充填されることで、ヘッドシリンダ5に対して第1ピストンプランジャ11及び第2ピストンプランジャ12の押し下げを喚起し、絞り孔8の開放を可能にする。
【0024】
これに対し、ヘッドシリンダ5の内周面5fには、このヘッドシリンダ5の下端5eに形作られる開口部Aの外縁Eの径(以下、「開口部外縁径」)φEを、シール部12aの先端径φ12a(図4参照)よりも大きく、かつ、ヘッドシリンダ5の内径φ5よりも小さく形作ると共に、図2や図3(b)に示すように、当該開口部Aの外縁Eからヘッド3に向かって縮径しながら内周面5fに繋がる傾斜面5sが設けられている。
【0025】
そこで、本形態では、例えば、図2に示すように、ヘッドシリンダ5の径方向軸線に対する、傾斜面5sの角度θ1(実線で示す)に着目し、シール部12aの先端12a1が引っ掛からないよう、同図に示すように、当該角度θ1を従来の角度θ2(二点鎖線で示す)よりも小さくする。かかる構成によれば、傾斜面5sが第2ピストンプランジャ12の挿入時において、シール部12aの先端12a1の案内となることから、当該先端12a1が引っ掛かることなく組み付けを行うことができる。なお、本発明に従えば、ヘッドシリンダ5と第2ピストンプランジャ12との組み付け以外の、他のパーツの組み付け順序に関しては、特に限定されることなく、様々な順序で組み付けを行うことができる。
【0026】
従って、本形態によれば、ポンプの機能低下や動作漏れの懸念がなく、組み付けも容易な、新規な容器用ポンプユニットを提供することができる。
【0027】
ところで、こうした容器用ポンプユニットの場合、ユニット全体の液漏れの有無を検査すべく、シリンダ1側から試験的に空気を送り込むことで、空気漏れの有無を検出することが一般的であるが、ヘッドシリンダ5とシール部12a,12bとの間での空気漏れが生じていれば、シール部12aの捲れの有無も併せて検査することができる。
【0028】
しかしながら、こうしたシール部は、本形態のシール部12a,12bの如く、プランジャ軸線O方向に間隔を空けて二重に設けることが一般的であるため、一方のシール部(プランジャ先端側に位置するシール部)12aに捲れが生じても、他方のシール部(シリンダ側に位置にするシール部)12bでのシール性が確保されていると、空気漏れが生じないため、シール部12a,12bの捲れを検査できないことがある。
【0029】
そこで、本形態では、ヘッドシリンダ5の内周面5fに、プランジャ軸線Oに沿って傾斜面5sに至るまで切り欠かれる、4つの長溝5gを軸線O周りに間隔を空けて設けている。かかる構成によれば、一方のシール部12aに捲れが生じて空気漏れがある場合、その空気は、図2に示すように、他方のシール部12bの先端12b1と当該長溝5gとの間に形成された通路r6から傾斜面5sに形成された切り欠き開口部分5ga(図3(c)参照)を通して排出することができる。
【0030】
従って、本形態の如く、ヘッドシリンダ5の内周面5fに、当該シリンダヘッド5の傾斜面5sに至るまで切り欠かれる少なくとも1つの長溝5gを設ければ、万一に備えたシール部12aの捲れの有無を容易に検査することができる。
【0031】
上述したところは、本発明の一形態を示したに過ぎず、特許請求の範囲内において、種々の変更を加えることができる。例えば、本発明に従うヘッドとしては、上述した形態のように、噴霧を目的としたものに限定されるものではなく、内容液を注出できるものであれば、様々な種類のものを採用できる。また、本形態では、チューブ16を通してシリンダ1に内容液を吸入する際の弁17として、ボール弁を用いているが、本発明に従えば、これに限定されるものではない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、例えば、化粧水、整髪料等の化粧品、虫除け等の医薬品及び、美容・健康用品の分野に係る液体噴出器として採用することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 充填シリンダ
1a フランジ
1b 本体
2 装着部材
2b 補助シリンダ
3 ヘッド
4 ノズルチップ
5 ヘッドシリンダ
5a 下端部(環状のシール部)
5e 下端
5g 長溝
5ga 長溝切り欠き開口部
5s 傾斜面
5f 内周面
6 筒体
7 摺動部
8 絞り孔
9 仕切壁
11 第1ピストンプランジャ
11a 弁体部
11b 環状ピストン
11c 開孔
12 第2ピストンプランジャ
12a 環状のシール部
12b 環状のシール部
13 スペーサ
13a フィン
A ヘッドシリンダの下端開口部
1 液室
2 液室
E 開口部外縁
H 噴霧ヘッド
o 連通流路
φ5 ヘッドシリンダ内径
φ12a シール部先端径
φE 開口部外縁径

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の口部に固定されるシリンダからの内容液の圧送を生起させ、当該内容液を外界に噴射するヘッドと、当該ヘッドに嵌合保持される筒体を有し、当該筒体から垂下する下端を開口させてヘッドに通じる内部通路を形成するヘッドシリンダと、当該ヘッドシリンダの内側に形成された絞り孔を開閉可能な弁体部を有し当該弁体部の周りに形成された環状のシール部によってヘッドシリンダの内側に摺動可能に保持されるプランジャとを備える液体噴出器であって、
ヘッドシリンダの内周面に、当該ヘッドシリンダの下端に形作られる開口部の外縁を、プランジャのシール部先端径よりも大きく、かつ、ヘッドシリンダの内径よりも小さく形作ると共に、当該開口部の外縁からヘッドに向かって縮径しながらヘッドシリンダの内周面に繋がる傾斜面を設けたことを特徴とする、液体噴出器。
【請求項2】
請求項1において、ヘッドシリンダの内周面に、当該シリンダヘッドの傾斜面に至るまで切り欠かれる少なくとも1つの長溝を設けたことを特徴とする、液体噴出器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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