説明

液体噴出容器

【課題】インジケータを中皿と底部材とに関連付けても、中皿本来の機能を損なうことなく、簡単な構成で内容物の残量を確認することができる新規な液体噴出容器を提供する。
【解決手段】口部111を有し胴部113の下端を底部材115で閉じた容器本体110と、ポンプ120と、ノズルヘッド130と、胴部113内側に摺動可能に配置され内容物の取り出しに伴い上昇する中皿140とを備え、中皿140と底部材115との間に、同一円上の対称の位置に形成された一対の円弧状スリット1が同心円状に複数形成され、その中心を持ち上げることで伸長可能なシート150を配置し、このシート150の中心を中皿140の下端に固定する一方、シート外縁152を底部材115に固定されるリング部材170によって、底部材115との間から離脱可能に挟持すると共に、この底部材115に、シート115の伸長状態及びその離脱状態を視認可能な窓部117を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器本体の中皿が上昇することで内容物の効率的な取り出しが可能な液体噴出容器に関し、内容物の残量確認するため技術である。
【背景技術】
【0002】
内容物の品質維持を目的に、容器に遮光性を持たせると、容器本体が不透明となることから、目視による内容物の残量確認が不可能となってしまう。
【0003】
これに対し、従来の液体噴出容器には、末端近くに識別子を付設したテープを用い、当該テープを容器本体の胴部下端を閉じる底部材に引き出し可能に巻き掛ける一方、このテープの先端を中皿の下端に連結し、当該テープの識別子をインジケータ(表示部)として底部材に設けた窓部より視認可能とするものがある(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2007−217038号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の容器は、インジケータとして巻きテープを採用しているため、その構成が複雑になることから、生産性やコスト性の面で改善の余地がある。
【0005】
また、巻きテープであるが故に、例えば、テープの巻きが緩いと、テープをスムースに引き出すことができないことが考えられる。また、テープを巻き付けた状態から引き出すことから、テープ同士が引っ掛かってしまうことも考えられる。
【0006】
こうした場合、テープが中皿から外れたり、破断してしまうため、インジケータとしての機能を発揮することができない。また、テープが外れたり、破断しない場合には、中皿の動きがテープによって規制されるため、最悪、中皿本来の機能が損なわれてしまうことも考えられる。
【0007】
本発明の目的とするところは、インジケータを中皿と底部材とに関連付けても、中皿本来の機能を損なうことなく、簡単な構成で内容物の残量を確認することができる新規な液体噴出容器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明である液体噴出容器は、内容物を充填する口部を有し胴部の下端を底部材で閉じた容器本体と、この容器本体の口部に装着されるポンプと、このポンプの動作を生起させて内容物が取り出されるノズルヘッドと、容器本体の胴部内側に摺動可能に配置され内容物の取り出しに伴い上昇する中皿とを備える液体噴出容器において、
中皿と底部材との間に、間欠的に形成された環状スリットが同心円状に複数形成され、その中心又は外縁を持ち上げることで伸長可能なシート部材を配置し、
このシート部材の中心及び外縁の一方を中皿の下端に固定する一方、当該シート部材の中心及び外縁の他方を当該底部材から離脱可能に保持すると共に、
この底部材に、シート部材の伸長状態及びその離脱状態を視認可能な窓部を設けたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明に係るシート部材は、その中心を中皿の下端に固定する一方、当該シート部材の外縁を保持することが好ましい。
【0010】
この場合、シート部材の外縁は、底部材に固定されるリング部材によって、当該底部材との間から離脱可能に挟持することが好ましい。
【0011】
また、この場合、シート部材の中心は、このシート部材を貫通して中皿に嵌合するピン部材で連結することが好ましい。
【0012】
環状スリットはそれぞれ、その間欠部分が同心円状に配置した互いに隣り合う環状スリットの間欠部分に対して90度の位相差をもって配置されるものであることが好ましい。
【0013】
また、環状スリットの端部は、その間欠部分の破断を防止するための丸穴として構成することが好ましい。
【0014】
なお、本発明に係る窓部は、底部材全体を透視可能な透明又は半透明からなる材料で構成した場合には、例えば、窓部を除く部分を遮光性フィルムで覆い、又は、窓部を残してマスク塗装することにより形成することができる。また、底部材の窓部を除く部分を不透明な材料で構成する一方、窓部を透視可能な材料で構成し、互いに組み付けてもよい。更に、底部材を透視可能な材料と不透明な材料とで一体成形してもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、中皿の上昇に従ってシート部材の中心又は外縁が持ち上がることで、当該シート部材が底部材から遠ざかるように伸長するため、かかる状態を底部材に設けた窓部からシート部材の変化を目視すれば、内容物の残量を確実に確認することができる。
【0016】
加えて、本発明では、シート部材が底部材から離脱可能に保持されていることから、例えば、中皿が上死点に達したときにシート部材が離脱するように構成すれば、シート部材が底部材から離脱して窓部から視認できなくことで、買い替えの時期を確認することができる。
【0017】
また、本発明のインジケータは、中皿と底部材との間を連結するシート部材にスリットを形成するという簡単な構成であることから、生産性やコスト性に優れる。
【0018】
しかも、シート部材の伸長は、シート部材に対して間欠的に形成された環状スリットに従って当該シート部材の一部が同心円状に順次持ち上げることで実現されることから、シート部材の伸長に際して引っ掛かり等を生じることがなく、スムースな伸長を実現することができる。
【0019】
従って、本発明によれば、インジケータを中皿と底部材とに関連付けても、中皿本来の機能を損なうことなく、簡単な構成で内容物の残量を確認することができる新規な液体噴出容器を提供することができる。
【0020】
特に、環状スリットをそれぞれ、その間欠部分が同心円状に配置した互いに隣り合う環状スリットの間欠部分に対して90度の位相差となるように配置すれば、シート部材が底部材から均等に遠ざかるため、内容物の残量が正確に測られることで、更に確実な残量確認が実現できる。
【0021】
また、環状スリットの端部を、その間欠部分の破断を防止するための丸穴として構成すれば、シート部材がその伸長に伴って破断することなく、更に確実な残量確認が実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面を参照して、本発明の好適な形態を詳細に説明する。
【0023】
図1は、本発明の一形態である液体噴出容器100の未使用状態を一部断面で示す側面図であり、図2は、その底部材115を拡大して示す要部断面図である。また、図3は、後述の中皿140の上昇により後述のシート部材150が底部材115側から離脱した状態を一部断面で示す側面図である。
【0024】
加えて、図4は、シート部材150を示す平面図であり、更に、図5は、シート部材150を伸長させた状態を示す斜視図である。
【0025】
図面において、符号110は、内容物を充填する口部111を有し、肩部112を介して胴部113が繋がる不透明な合成樹脂からなる本体上部114と、この本体上部114の下端を底部材115で閉じたボトル型の容器本体である。底部材115は、窓部117と外気導入孔hを有して胴部113と別体に固定されている。なお、本形態では、窓部117と外気導入孔hを別に形成するものを示すが、当該外気導入孔hについては、窓部117を底部材115に形成した貫通孔とすることで、外気導入孔として利用する場合には、必ずしも形成する必要はない。
【0026】
符号120は、口部111に装着され、押下げ及び復帰の繰り返しにより内容物の吸引、圧縮及び排出を行うポンプである。
【0027】
詳細には、ポンプ120は、カバー121を備え、このカバー121は、口部111外側で口部111に着脱可能にねじ止めされる装着筒部121aを有し、この装着筒部121aの内側には、口部111の内側を通って胴部113に垂下するシリンダ122が配置されている。なお、ポンプ120は口部111に対し取り外し不能に装着するものであってもよい。
【0028】
シリンダ122は、その内側に、複数の構成要素からなるポンプ機構を収納し、その先端部122aには吸引口Aが形成されている。なお、シリンダ122は、シールリングSを介してカバー121内に取り付けられ、口部111を通って胴部113内に垂下している。
【0029】
ポンプ機構は、既存のものであって、例えば、図示はしないが、シリンダ122内に収納され吸引口Aの開閉を行うポンププランジャと、ポンププランジャの上端部に摺動可能に保持されると共にスプリングを介してシリンダ122に弾支されるピストンガイドと、このピストンガイドとシリンダ122との間に摺動可能に保持されるピストンと、このピストンの上部でピストンガイドに固定されるステムとを有する。
【0030】
符号130は、ポンプ120のステムに繋がりその押下げ及び復帰の繰り返しにより当該ポンプ120を動作させて容器本体110の内容物が取り出されるノズルヘッドである。
【0031】
符号140は、胴部113内側に摺動可能に配置され内容物の取り出しに伴い上昇する中皿である。中皿140は、胴部113の内周面113fに摺動可能に保持される外周部141を有し、その内側に受圧部142が一体に形成されている。
【0032】
これにより、容器本体110と中皿140との間には、内容物を充填する空間Rが形成される。充填空間Rは、中皿140の上昇により、ノズルヘッド130からの内容物の取り出し量に従って、その容積も減少する。
【0033】
中皿140の受圧部142は、内容物の残量を減らすべく、シリンダ122の先端形状に合わせて窪んで受圧部142の底部を形成する最底部142aと、この最底部142aを取り囲むように繋がり口部111に向かって環状に突出する膨出部142bとを有する。この最底部142aは、例えば、中皿140の上昇により、シリンダ122の先端部122aに接触して中皿140の上死点を決定する。
【0034】
符号150は、中皿140と底部材115との間に配置された薄肉の合成樹脂からなる円形のシート部材である。シート部材150は、図4に示すように、その中心に開口部151を有し、変形及びその復元の可能な柔軟性を有する。
【0035】
シート部材150は更に、開口部151の外側に、同一円上の線対称の位置に形成した2つの円弧状スリット1からなる、間欠的に形成された環状スリットが形成されている。この環状スリットを構成する一対の円弧状スリット1は、軸線Oの周りを同心円状に、径方向に向かって複数形成されている。
【0036】
これにより、シート部材150の開口部151付近、又は、シート部材150の外縁152を持ち上げれば、当該シート部材150は、一対の円弧状スリット1に従ってその一部が同心円状に順次持ち上がるため、図5に示すように伸長する。
【0037】
特に、本形態では、一対の円弧状スリット1が、同心円状に配置した互いに隣り合う一対の円弧状スリット1に対して90度の位相差となるように配置している。即ち、本形態では、環状スリットをそれぞれ、その間欠部分3が同心円状に配置した互いに隣り合う環状スリットの間欠部分に対して90度の位相差となるように配置している。
【0038】
加えて、一対の円弧状スリット1の端部2は、その間欠部分3の破断を防止するための丸穴として構成されている。
【0039】
符号160は、ヘッド161を有するピン部材である。ピン部材160は、その本体(ピン本体)162がシート150の開口部151を貫通して中皿140の下端に形成された筒状壁143に嵌合する。これにより、シート150の開口部151を形作る縁部分は、ピン部材160によって、中皿140に対して一体に連結される。
【0040】
なお、本形態では、筒状壁143の内側に環状リブ143aを形成すると共に、ピン本体162の外側に環状リブ143aが嵌合する環状溝163を設けることで、ピン部材160は中皿140に対して強固に固定されている。
【0041】
これに対し、シート部材150の外縁(以下、「シート外縁」という)152は、底部材115に保持されている。
【0042】
符号170は、シート外縁152を底部材115に固定するリング部材である。リング部材170は、底部材115の中心に設けられた上向きに膨出する棚壁116に嵌合する装着筒171と、この装着筒171の上端から内向きに折り返されてなるフランジ部172とを有する。
【0043】
フランジ部172は、シート部材150を棚壁116に嵌合させたとき、この棚壁116と共に、当該棚壁116との間から離脱可能にシート外縁152を挟持する。
【0044】
なお、本形態では、棚壁116の外側に環状リブ116aを形成すると共に、リング部材170の内側に環状リブ116aが嵌合する環状溝173を設けることで、リング部材170は底部材115に対して強固に固定されている。
【0045】
シート部材150の伸長状態及びその離脱状態は、底部材115の棚壁116に設けた窓部117により、ボトル底部側から視認することができる。
【0046】
本発明によれば、中皿140の上昇に従ってシート部材150の中心が持ち上がることで、シート部材150が底部材115から遠ざかるように伸長するため、かかる状態を底部材115に設けた窓部117からシート部材150の変化を目視すれば、内容物の残量を確実に確認することができる。
【0047】
加えて、本発明では、シート部材150が底部材115から離脱可能に保持されていることから、例えば、中皿140が上死点に達したときにシート部材150が離脱するように構成すれば、シート部材150が底部材115から離脱して窓部117から視認できなくことで、買い替えの時期を確認することができる。
【0048】
また、本発明のインジケータは、中皿140と底部材115との間を連結するシート部材150に円弧状スリット1を形成するという簡単な構成であることから、生産性やコスト性に優れる。
【0049】
しかも、シート部材150の伸長は、当該シート部材150における、同一円上の線対称の位置に形成された一対の円弧状スリット1に従って当該シート部材150の一部が同心円状に順次持ち上げることで実現されることから、シート部材150の伸長に際して引っ掛かり等を生じることがなく、スムースな伸長を実現することができる。
【0050】
従って、本発明によれば、インジケータを中皿140と底部材115とに関連付けても、中皿140本来の機能を損なうことなく、簡単な構成で内容物の残量を確認することができる新規な液体噴出容器を提供することができる。
【0051】
特に、一対の円弧状スリット1を、同心円状に配置した互いに隣り合う一対の円弧状スリット1に対して90度の位相差となるように配置すれば、シート部材150が底部材115から均等に遠ざかるため、内容物の残量が正確に測られることで、更に確実な残量確認が実現できる。
【0052】
また、一対の円弧状スリット1の端部2を、その間欠部分3の破断を防止するための丸穴として構成すれば、シート部材150がその伸長に伴って破断することなく、更に確実な残量確認が実現できる。
【0053】
なお、本形態において、棚壁116の上端面118は、シール材外縁152が離脱し易いように平面を構成する。更に、本形態の棚壁116は、軸線Oを取り囲む環状をなし、その内側には、中皿140が下死点の位置にあるときに、ピン部材160のヘッド161を収納するための収納凹部119が形作られている。
【0054】
上述したところは、本発明の好適な形態を説明するものであるが、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。例えば、シート部材は、底部材から離脱可能に構成されるものであれば、中皿に対して接着等によって保持してもよい。また、中皿にシート部材を固定する構成も、上述の形態とは逆に、ピン部材の本体を中実のシャフトから筒状壁に変更すると共に、中皿の下端に形成した筒状壁を、中皿の下端から一体に垂下したピン本体(中実のシャフト)に変更することも当然可能である。
【0055】
また、シート部材は、その外縁を中皿に固定する一方、その中心を底部材に対して離脱可能に保持してもよい。更に、シート部材の外観形状は、円形のものに限ることなく、容器本体の形状等に応じて適宜選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の一形態である液体噴出容器の未使用状態を一部断面で示す側面図である。
【図2】同形態において、その底部材を拡大して示す要部断面図である。
【図3】同形態において、中皿の上昇によりシート部材が底部材側から離脱した状態を一部断面で示す側面図である。
【図4】同形態のシート部材を示す平面図である。
【図5】同形態のシート部材を伸長させた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0057】
1 円弧状スリット(間欠的に形成された環状スリット)
2 スリット端部
3 間欠部分
100 液体噴出容器
110 容器本体
111 口部
112 肩部
113 胴部
113f 胴部内周面
114 本体上部
115 底部材
116 棚壁
116a 環状リブ
117 窓部
118 棚壁上端面
119 ピンヘッド収納凹部
120 ポンプ
121 ポンプカバー
121a 装着筒部
122 シリンダ
130 ノズルヘッド
140 中皿
141 中皿外周部
142 受圧部
142a 最底部
142b 膨出部
143 筒状壁
143a 環状リブ
150 シート部材
151 シート部材開口部
152 シート外縁
160 ピン部材
161 ピンヘッド
162 ピン本体
163 環状溝
170 リング部材
171 装着筒
172 フランジ部
173 環状溝

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内容物を充填する口部を有し胴部の下端を底部材で閉じた容器本体と、この容器本体の口部に装着されるポンプと、このポンプの動作を生起させて内容物が取り出されるノズルヘッドと、容器本体の胴部内側に摺動可能に配置され内容物の取り出しに伴い上昇する中皿とを備える液体噴出容器において、
中皿と底部材との間に、間欠的に形成された環状スリットが同心円状に複数形成され、その中心又は外縁を持ち上げることで伸長可能なシート部材を配置し、
このシート部材の中心及び外縁の一方を中皿の下端に固定する一方、当該シート部材の中心及び外縁の他方を当該底部材から離脱可能に保持すると共に、
この底部材に、シート部材の伸長状態及びその離脱状態を視認可能な窓部を設けたことを特徴とする、液体噴出容器。
【請求項2】
請求項1において、環状スリットはそれぞれ、その間欠部分が同心円状に配置した互いに隣り合う環状スリットの間欠部分に対して90度の位相差をもって配置されるものであることを特徴とする、液体噴出容器。
【請求項3】
請求項1又は2において、環状スリットの端部は、その間欠部分の破断を防止するための丸穴として構成されたものであることを特徴とする、液体噴出容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−52768(P2010−52768A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−219857(P2008−219857)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】