説明

液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置

【課題】接続基板を小型化できると共に、接続基板と配線部材との接合を容易に行える液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供する。
【解決手段】ノズル面30を有し、圧力発生手段20の駆動によりノズル29から液体を噴射するヘッド本体14と、該ヘッド本体14に一側の端部が電気的に接続され、当該ヘッド本体14に圧力発生手段20を駆動させる駆動信号を供給する配線部材21と、ヘッド本体14に対しノズル面30とは反対面側に配置され、配線部材21の他側の端部が電気的に接続される接続基板16と、を有し、該接続基板16は、ヘッド本体14側の面に形成されて配線部材21の配線端子36と接合される接合端子56と、該接合端子56が形成された面とは反対側の面において該接合端子56と対応して形成された表面端子57と、を備え、該表面端子57と接合端子56とを熱伝導部材58により接続基板16を貫通した状態で接続した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノズルから液体を噴射する液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
液体噴射装置は、液体噴射ヘッドや回路基板等を組み合わせてユニット化した液体噴射ヘッドユニットを備え、この噴射ヘッドユニットから各種の液体を噴射する装置である。この液体噴射装置としては、例えば、インクジェット式プリンターやインクジェット式プロッター等の画像記録装置があるが、最近ではごく少量の液体を所定位置に正確に着弾させることができるという特長を生かして各種の製造装置にも応用されている。例えば、液晶ディスプレイ等のカラーフィルタを製造するディスプレイ製造装置,有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイやFED(面発光ディスプレイ)等の電極を形成する電極形成装置,バイオチップ(生物化学素子)を製造するチップ製造装置に応用されている。そして、画像記録装置用の記録ヘッドユニットでは液状のインクを噴射し、ディスプレイ製造装置用の色材噴射ヘッドユニットではR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極形成装置用の電極材噴射ヘッドユニットでは液状の電極材料を噴射し、チップ製造装置用の生体有機物噴射ヘッドユニットでは生体有機物の溶液を噴射する。
【0003】
この種の液体噴射ヘッドユニットとしては、圧力室に開口したノズルからインクを噴射するヘッド本体と、ヘッド本体の上部に備えられた流路部材と、流路部材の上面に配置された接続基板と、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。ヘッド本体は、圧力室の容積を変動可能な圧電振動子と、圧電振動子に駆動信号を供給する配線部材とを有している。流路部材は、インク貯留部材からのインクをヘッド本体側に供給する供給流路を内部に備えている。そして、インク貯留部材から供給流路を介してヘッド本体に送られたインクは、圧電振動子を駆動することで生じる圧力室内の圧力変動により、ノズルから噴射される。
【0004】
接続基板は、流路部材の上方において配線部材と電気的に接合され、制御部からの駆動信号を配線部材に供給している。ここで、接続基板に配線部材を接合する方法としては、接合部分に半田を配置し、上方(ヘッド本体とは反対側)から発熱治具を用いて半田に熱を加えることで接続基板と配線部材を半田付けする方法が広く知られている。この場合、上方の発熱時具からの熱を半田等に効率よく伝えるために、接続基板の上面に配線部材を接続している。例えば、図8(a)に示すように、接続基板90に開設した配線部材91の幅よりも幅広な基板開口92に配線部材91の一端を挿通し、この基板開口92の縁において配線部材91と接続基板90とを半田等を挟んで重ね合わせた状態で、上方から熱を加えることでこれらを電気的に接合した液体噴射ヘッドユニット93が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−056920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記のような液体噴射ヘッドユニットでは、基板開口部分に配線を配置できないため、接続基板の大型化につながっていた。例えば、図8(b)に示すように、複数の配線部材91を接合基板上に接合し、配線部材91間の同種類の端子(例えば、共通電極端子)同士を接続基板90の配線を介して接続する場合、基板開口92を迂回して配線を引き回さなければならず、基板開口92と基板端との間隔が広がる傾向にあった。このため、接続基板の小型化に対応できず、液体噴射ヘッドユニットの小型化が困難になっていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、接続基板を小型化できると共に、接続基板と配線部材との接合を容易に行える液体噴射ヘッドユニット及び液体噴射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の液体噴射ヘッドユニットは、上記目的を達成するために提案されたものであり、ノズルが開設されたノズル面を有し、圧力発生手段の駆動によりノズルから液体を噴射するヘッド本体と、
該ヘッド本体に一側の端部が電気的に接続され、当該ヘッド本体に前記圧力発生手段を駆動させる駆動信号を供給する配線部材と、
前記ヘッド本体に対し前記ノズル面とは反対面側に配置され、前記配線部材の他側の端部が電気的に接続される接続基板と、を有し、
該接続基板は、前記ヘッド本体側の面に形成されて前記配線部材の配線端子と接合される接合端子と、該接合端子が形成された面とは反対側の面において該接合端子と対応して形成された表面端子と、を備え、
該表面端子と前記接合端子とを熱伝導部材により前記接続基板を貫通した状態で接続したことを特徴とする。
【0009】
本発明の液体噴射装置によれば、配線部材は、接続基板のヘッド本体側の面に接続されるため、接続基板に配線部材を挿通するための開口を設ける必要がなく、配線を迂回させる必要がない。これにより、接続基板を小型化することができ、ひいては液体噴射ヘッドユニットを小型化することができる。また、表面端子と接合端子とを熱伝導部材で接続したので、配線部材の配線端子と接合端子とを半田等を用いて接合する際に、表面端子側から効率よく熱を加えることができる。これにより、配線端子と接合端子とを容易に接合することができる。また、接続基板や配線部材の基材を介さずに、接合部分に熱を伝えることができるため、加熱温度および加熱時間を下げることができる。
【0010】
上記構成において、前記表面端子と前記接合端子との間を貫通する貫通孔を備え、
該貫通孔の内面に前記熱伝導部材を形成したことが望ましい。
【0011】
この構成によれば、貫通孔から表面端子と接合端子との接合状態を確認でき、接合不良を簡単に発見することができる。
【0012】
上記各構成において、前記熱伝導部材に金属を用いたことが望ましい。
【0013】
この構成によれば、接続基板を容易に作成することができる。また、表面端子と接合端子とを電気的に接続することもできる。
【0014】
また、上記各構成において、前記接合端子に対向する位置に保持面を有し、
該保持面上において前記接合端子と前記配線端子とを接合したことが望ましい。
【0015】
この構成によれば、発熱治具を用いて表面端子と接合端子とを熱圧着する際に、これらを容易に接合することができる。
【0016】
そして、本発明の液体噴射装置は、上記各構成の液体噴射ヘッドユニットを備えたことを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】プリンターの斜視図である。
【図2】記録ヘッドユニットの断面図である。
【図3】記録ヘッドの断面図である。
【図4】配線基板を接続した状態における接続基板の(a)平面図、(b)底面図である。
【図5】図4(a)における領域Aの拡大図である。
【図6】図5におけるB−B線の断面図である。
【図7】配線基板と接続基板の接合を説明する模式図である。
【図8】従来の記録ヘッドユニットの(a)断面図、(b)平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態を、添付図面を参照して説明する。なお、以下に述べる実施の形態では、本発明の好適な具体例として種々の限定がされているが、本発明の範囲は、以下の説明において特に本発明を限定する旨の記載がない限り、これらの態様に限られるものではない。また、以下においては、本発明の液体噴射装置として、インクジェット式記録装置1(以下、プリンター)を例に挙げて説明する。
【0019】
図1はプリンター1の構成を示す斜視図である。このプリンター1は、液体噴射ヘッドユニットの一種である記録ヘッドユニット2が取り付けられると共に、液体貯留部材の一種であるインクカートリッジ3が着脱可能に取り付けられるキャリッジ4を備えている。このキャリッジ4の後部には、キャリッジ4を記録紙5(記録媒体および着弾対象の一種)の紙幅方向、即ち、主走査方向に往復移動させるキャリッジ移動機構6を備えている。また、記録動作時における記録ヘッドユニット2の下方には、間隔を空けてプラテン7を備えている。このプラテン7上には、プリンター1の後方に備えた搬送機構8によって、記録紙5が主走査方向に直交する副走査方向に搬送される。
【0020】
キャリッジ4は、主走査方向に架設されたガイドロッド9に軸支された状態で取り付けられており、キャリッジ移動機構6の作動により、ガイドロッド9に沿って主走査方向に移動する。キャリッジ4の主走査方向の位置は、位置情報検出手段の一種であるリニアエンコーダー10によって検出され、その検出信号、即ち、エンコーダーパルス(位置情報の一種)をプリンター1の制御部に送信する。キャリッジ4の移動範囲内における記録領域よりも外側の端部領域には、キャリッジ4の走査の基点となるホームポジションが設定されている。プリンター1は、このホームポジションから反対側の端部へ向けてキャリッジ4が移動する往動時と、反対側の端部からホームポジション側にキャリッジ4が戻る復動時との双方向で記録紙5上に文字や画像等を記録する所謂双方向記録を行う。
【0021】
また、ホームポジションには、後述するヘッド本体14のノズル面30(ノズルプレート19:図3参照)を封止するキャッピング部材11と、ノズル面30を払拭するためのワイパー部材12とが配置されている。キャッピング部材11は、長方形状の底部とこの底部の周縁から起立する側壁部とを有する上面が開放したトレイ状の部材であり、ゴム等の弾性部材により形成される。また、キャッピング部材11には、その内側を減圧するポンプ(図示せず)が接続されている。これにより、ノズル面30をキャッピング部材11により封止した後でポンプを動作させることで、記録ヘッドユニット2内の気泡や増粘したインクを吸引することができる。
【0022】
記録ヘッドユニット2は、図2に示すように、インクを噴射するヘッド本体14と、ヘッド本体14の上部(ノズル面30とは反対側)に接続された保持部材15と、保持部材15の上部(ヘッド本体14とは反対面側)に配置される接続基板16と、を有している。なお、本実施形態の記録ヘッドユニット2は、後述するノズル列に直交する方向に並設された4つのヘッド本体14を1つの保持部材15に備えている。
【0023】
ヘッド本体14は、図3に示すように、流路基板18、ノズルプレート19、圧電振動子20、フレキシブルケーブル21(本発明における配線部材)、保護基板22、コンプライアンス基板23、およびヘッドケース24を備えている。
【0024】
流路基板18は、ノズル列方向に沿って長尺なシリコン単結晶基板からなり、長手方向に沿って細長な連通部26が2本形成されている。これらの連通部26に挟まれた領域には、複数の圧力室27が各連通部26ごとに、2列長手方向に並んだ状態で形成されている。各圧力室27は、圧力室27よりも狭い幅で形成されたインク供給路28を介して、連通部26と連通している。
【0025】
流路基板18の下面(圧電振動子20とは反対側の面)には、ノズルプレート19が、接着剤や熱溶着フィルム等を介して固着されている。ノズルプレート19は、ステンレス鋼(SUS)又はシリコン単結晶等で形成されており、各圧力室27のインク供給路28とは反対側で開口するノズル29が、例えば、360dpiのピッチで穿設されている。なお、ノズルプレート19の下面が本発明におけるノズル面30に相当する。
【0026】
流路基板18の上面(ノズルプレート19とは反対側の面)には、弾性膜31および絶縁体膜32が積層されている。この絶縁体膜32上において、下電極膜、圧電体層及び上電極膜が順次積層された圧電振動子20(本発明における圧力発生手段の一種)が、各圧力室27に対向した状態で、2列並設されている。この圧電振動子20の一側(中央側)の端部には、上電極膜と導通するリード電極34の一端が接続されている。このリード電極34の他端は、絶縁体膜32上においてヘッド本体14の中央部側に延在し、フレキシブルケーブル21と電気的に接続されている。本実施形態では、2列に列設された圧電振動子20の間にそれぞれ対応するリード電極34が延在しており、各リード電極34は1つのフレキシブルケーブル21の端子(本発明における一側の端部に相当)に接続されている。
【0027】
フレキシブルケーブル21は圧電振動子20に圧電振動子20を駆動させる駆動信号を供給する配線部材の一種であり、IC35が実装されると共に、接続基板16と接続される側の端部に金属製のパッドである配線端子36が等間隔に並設されている。また、フレキシブルケーブル21の配線端子並設方向の両端部には、ケーブル位置決め穴37が開口している(図4参照)。
【0028】
絶縁体膜32上には、圧電振動子20に対向する領域にその変位を阻害しない程度の大きさの空間となる圧電素子保持空間38を有する保護基板22が接合されている。この保護基板22には、連通部26に対向する位置に厚さ方向に貫通した長尺なリザーバー部39が2本設けられると共に、フレキシブルケーブル21とリード電極34を接続可能な配置空間40が中央部に設けられている。なお、リザーバー部39は各連通部26と連通し、圧力室27にインクを供給するリザーバー41を構成している。
【0029】
コンプライアンス基板23は、可撓性を有する封止膜42と金属等の硬質の部材からなる固定板43とを積層した基板であり、保護基板22の上側(流路基板18とは反対側)に接合されている。このコンプライアンス基板23には、リザーバー41にインクを導入するインク導入口44が厚さ方向に貫通して形成されている。また、コンプライアンス基板23のリザーバー41に対向する領域のうちインク導入口44以外の領域には、固定板43が除去された封止膜42のみからなる封止部45となっている。これにより、リザーバー41は可撓性を有する封止部45により封止され、コンプライアンスが得られることになる。
【0030】
ヘッドケース24は、コンプライアンス基板23の上側(保護基板22とは反対側)に接合された中空箱体状部材である。ヘッドケース24の内部には、保護基板22の配置空間40と連通する挿通空間47、およびケース流路48がその高さ方向に貫通して形成されている。この挿通空間47内には、フレキシブルケーブル21が挿通されている。ケース流路48は、保持部材15側からのインクをリザーバー41に供給するための流路であり、インク導入口44と連通している。また、ヘッドケース24の下面のうち封止部45に対向する部分には、封止膜42の可撓変形を阻害しない程度の封止空間49を備えている。
【0031】
保持部材15は、図2に示すように、下部に複数(本実施形態では4つ)のヘッド本体14(ヘッドケース24)がノズル列に直行する方向に並列した状態で接合され、各ヘッドケース24の挿通空間47と連通する保持空間50がその高さ方向に貫通して4つ形成されている。各保持空間50内には、フレキシブルケーブル21が挿通され、フレキシブルケーブル21の先端部が保持部材15の上面側に折り曲げられた状態で、その内部に保持されている。本実施形態では、図6に示すように、フレキシブルケーブル21の折り曲げられた先端部は、配線端子36が上側に向いた状態で、接着材51により保持空間50の上側の開口縁に接着されている。この接着材51によりフレキシブルケーブル21が接着される保持部材15の上面が、接合端子56(後述)に対向する配線端子36を保持する保持面52となる。
【0032】
また、保持部材15の内部には、各ヘッド本体14にインクを供給する供給流路53が設けられている。供給流路53は、下端部が各ケース流路48と連通し、上端部がインクカートリッジ3に接続されるインク導入針(図示せず)と連通している。本実施形態の供給流路53は、一部が斜めに形成され、その上部が保持部材15の上面から上方に向けて延在した接続管54の内部に形成されている。これにより、インクカートリッジ3からのインクは、供給流路53、ケース流路48、インク導入口44、リザーバー41、インク供給路28、を介して圧力室27に供給される。そして、圧力室27内の圧力変動によりノズル29からインクを噴射している。
【0033】
接続基板16は、保持部材15の上部に配置された、絶縁層と導電層の配線パターンとが積層された多層基板である。この接続基板16の下面(ヘッド本体14側の面)には、図6に示すように、フレキシブルケーブル21の先端部に設けられた配線端子36と接合(電気的に接続)される接合端子56が形成されている。また、接続基板16の上面(接合端子56が形成された面とは反対側の面)には、接合端子56と対応して形成された表面端子57が形成されている。この表面端子57と接合端子56とは、熱伝導部材58(本実施形態では金属)により接続基板16を貫通した状態で接続されている。
【0034】
具体的に説明すると、接続基板16の上面には、図4(a)に示すように、ヘッド本体14の並列方向における接続基板16の両端部に配置されるコネクター59と、接合端子56に対応して列設された表面端子57とを備えている。コネクター59は、一端がプリンター1の制御部と接続されたフラットケーブル(図示せず)の他端が接続され、制御部からの駆動信号等が入力される。表面端子57は、図5に示すように、金属からなる長方形状のパッドであり、中心部分には後述する貫通孔62が開口している。また、接続基板16の下面には、図4(b)に示すように、フレキシブルケーブル21の配線端子36に対応した接合端子56が複数列状に形成されている。本実施形態では、4つのヘッド本体14に対応して、4つのフレキシブルケーブル21が接続基板16に接合されるため、これに対応して接合端子56は4列に形成されている。この接合端子56は、表面端子57と同様に金属からなる長方形状のパッドであり、接続基板16の下面側の配線と電気的に接続されている。
【0035】
また、接続基板16には、その厚さ方向に貫通した流路用開口60、位置決め穴61、および貫通孔62が開設されている。流路用開口60は、内部に供給流路53の一部が形成された接続管54を挿通するための開口であり、各接続管54に対応する位置に設けられている。位置決め穴61は、ケーブル位置決め穴37と位置を揃えられており、それぞれ保持部材15の上面に突設された位置決め凸部(図示せず)に嵌め込まれている。これにより、フレキシブルケーブル21と接続基板16との位置決め、すなわち、配線端子36と接合端子56との位置決めをしている。貫通孔62は、図5、図6に示すように、表面端子57と接合端子56との間を貫通した穴であり、その内面に熱伝導部材58が形成されている。本実施形態の熱伝導部材58は、表面端子57および接合端子56と同じ金属で構成され、表面端子57および接合端子56と連続して貫通孔62の縁および内面を覆っている。
【0036】
そして、各接合端子56は、対応する各配線端子36と半田63を介在して接合されている。これにより、制御部からの駆動信号を、フラットケーブル、コネクター59、接続基板16内の配線、接合端子56、フレキシブルケーブル21、リード電極34を介して圧電振動子20に供給することができる。この駆動信号の供給により圧電振動子20を駆動させると、圧力室27内に圧力変動が生じる。そして、この圧力変動を利用することで、ノズル29からインクを噴射している。
【0037】
次に、フレキシブルケーブル21と接続基板16の接続方法について、図7を用いて説明する。なお、本実施形態では、4つのフレキシブルケーブル21を接続基板16に接続しているが、各フレキシブルケーブル21の接続方法は同じであるため、1のフレキシブルケーブル21に着目して説明する。まず、保持部材15の保持面52上に接着材51を塗布し、フレキシブルケーブル21の先端部分(本発明における他側の端部に相当)を、配線端子36が上面側に向いた状態で保持面52側に折り曲げる。そして、フレキシブルケーブル21のケーブル位置決め穴37を保持部材15の位置決め凸部に嵌め込んで位置決めし、接着材51によりフレキシブルケーブル21の配線端子36とは反対側の面を保持面52上に接着する。
【0038】
次に、各接合端子56に予め半田63を盛り付けた接続基板16を、接合端子56が保持面52側に対向するように配置する。このとき、位置決め穴61を保持部材15の位置決め凸部にフレキシブルケーブル21のケーブル位置決め穴37の上から嵌め込んで、接続基板16の位置決めをする。この状態で、所定の温度(例えば、半田63の融点)に設定された発熱治具65を表面端子57に当接すると共に、接続基板16を保持面52側に所定の時間押圧する。本実施形態では、表面端子57および接合端子56を貫通孔62の内面に形成された金属58を介して接続しているので、発熱治具65からの熱を接合端子56の表面にある半田63に効率よく伝えることができる。これにより、半田63が溶解して接合端子56と配線端子36の間に充填される。その後、発熱治具65を接続基板16から離隔して、半田63の熱が下がると、半田63が凝固して配線端子36と接合端子56とが接合され、上記構成の記録ヘッドユニット2が得られる。また、必要に応じて、表面端子57の上方から貫通孔62を介して、半田63の接合状態を確認する。
【0039】
そして、上記構成によれば、フレキシブルケーブル21は、接続基板16のヘッド本体14側の面に接続されるため、接続基板16にフレキシブルケーブル21を挿通するための開口を設ける必要がなく、配線を迂回させる必要がない。例えば、複数のフレキシブルケーブル21の共通の配線端子36同士を接続する共通配線を、迂回させることなく直線状に配線できる。これにより、接続基板16を小型化することができ、ひいては記録ヘッドユニット2を小型化することができる。また、表面端子57と接合端子56とを金属58で接続したので、フレキシブルケーブル21の配線端子36と接合端子56とを半田63を用いて接合する際に、表面端子57側から効率よく熱を加えることができる。これにより、配線端子36と接合端子56とを容易に接合することができる。また、接続基板16やフレキシブルケーブル21の基材を介さずに、接合部分に熱を伝えることができるため、加熱温度および加熱時間を下げることができる。
【0040】
また、本実施形態では、表面端子57と接合端子56との間に貫通孔62を備え、貫通孔62の内面に金属58を形成したので、貫通孔62から表面端子57と接合端子56との接合状態を確認でき、接合不良を簡単に発見することができる。さらに、表面端子57と接合端子56との間を金属58を用いて接続しているため、接続基板16を容易に作成することができる。加えて、表面端子57と接合端子56とを電気的に接続することもできる。また、保持面52上において接合端子56と配線端子36とを接合したので、発熱治具65を用いて表面端子57と接合端子56とを熱圧着する際に、これらを容易に接合することができる。
【0041】
ところで、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載に基づいて種々の変形が可能である。例えば、上記実施形態では、表面端子と接合端子との間に貫通孔を備え、貫通孔の内面に金属を形成したが、これには限らず、貫通孔を設けず表面端子と接合端子との間を金属で接続しても良い。すなわち、表面端子と接合端子との間を貫通させた孔の内部を全て、金属で充填しても良い。このようにすれば、表面端子側から接合端子側により効率よく熱を伝えることができる。
【0042】
また、上記実施形態では、表面端子と接合端子との間を金属で接続したが、これには限らず、熱伝導率の大きい熱伝導部材(例えば、シリコーンゴム等)を用いることもできる。さらに、上記実施形態では、配線端子と接合端子とを半田を用いて接合したが、これには限らず、例えば、異方性導電フィルム(ACF)等を用いることもできる。
【0043】
そして、本発明は、圧力発生手段を用いて液体の噴射制御が可能な液体噴射装置であれば、プリンターに限らず、プロッター、ファクシミリ装置、コピー機等、各種のインクジェット式記録装置や、記録装置以外の液体噴射装置、例えば、ディスプレイ製造装置、電極製造装置、チップ製造装置等にも適用することができる。そして、ディスプレイ製造装置では、色材噴射ヘッドからR(Red)・G(Green)・B(Blue)の各色材の溶液を噴射する。また、電極製造装置では、電極材噴射ヘッドから液状の電極材料を噴射する。チップ製造装置では、生体有機物噴射ヘッドから生体有機物の溶液を噴射する。
【符号の説明】
【0044】
1…プリンター,2…記録ヘッドユニット,14…ヘッド本体,15…保持部材,16…接続基板,20…圧電振動子,21…フレキシブルケーブル,36…配線端子,52…保持面,56…接合端子,57…表面端子,58…熱伝導部材,62…貫通孔,63…半田,56…発熱時具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノズルが開設されたノズル面を有し、圧力発生手段の駆動によりノズルから液体を噴射するヘッド本体と、
該ヘッド本体に一側の端部が電気的に接続され、当該ヘッド本体に前記圧力発生手段を駆動させる駆動信号を供給する配線部材と、
前記ヘッド本体に対し前記ノズル面とは反対面側に配置され、前記配線部材の他側の端部が電気的に接続される接続基板と、を有し、
該接続基板は、前記ヘッド本体側の面に形成されて前記配線部材の配線端子と接合される接合端子と、該接合端子が形成された面とは反対側の面において該接合端子と対応して形成された表面端子と、を備え、
該表面端子と前記接合端子とを熱伝導部材により前記接続基板を貫通した状態で接続したことを特徴とする液体噴射ヘッドユニット。
【請求項2】
前記表面端子と前記接合端子との間を貫通する貫通孔を備え、
該貫通孔の内面に前記熱伝導部材を形成したことを特徴とする請求項1に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項3】
前記熱伝導部材に金属を用いたことを特徴とする1又は2に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項4】
前記接合端子に対向する位置に保持面を有し、
該保持面上において前記接合端子と前記配線端子とを接合したことを特徴とする請求項1から3の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニット。
【請求項5】
請求項1から4の何れか一項に記載の液体噴射ヘッドユニットを備えたことを特徴とする液体噴射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−103380(P2013−103380A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247709(P2011−247709)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】